説明

非水系顔料インク組成物

【課題】印字後において、優れた密着性、耐アルコール性を有する非水系顔料インク組成物を提供することにある。
【解決手段】本発明は、(1)有機溶剤、(2)高分子化合物、(3)顔料を必須成分とする非水系顔料インク組成物において、(1)有機溶剤が(1a)グリコールエーテル類とグリコールエーテルアセテート類からなる群から選ばれたの少なくとも一種以上と、(1b)
1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンであり、かつ前者(1a)の含有量が全インク組成中35〜94wt%、後者(1b)の含有量が全インク組成物中3〜30wt%の範囲内にあり、さらに(2)高分子化合物として塩化ビニル酢酸ビニル共重合体を全インク組成物中1〜15wt%含み、(3)顔料濃度が全インク組成中2〜20wt%であることを特徴とする非水系顔料インク組成物に関するものである。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は非水系顔料インク組成物、特にインクジェット印刷用インクに適したインク組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット印刷技術の発展に伴い、普通紙以外の多種の媒体に対して印字ができるようになっている。またその印字可能な媒体も様々な種類のものに印字できるようになり市場は拡大している。これに伴い、印字後の印字物は屋外などにおいて使用する機会が増えその需要が高まっている。
【0003】
屋外等で使用する広告や看板等の印字に用いられる一般的な媒体のひとつとして塩化ビニル樹脂シートが知られている。従来、塩化ビニル樹脂シートにおいては、表面にインクの受像層があり、この層にインクが吸収され発色をするようになっていた。しかし、最近、印字媒体の技術進歩と低価格というメリットから、インクの受像層のない無処理の塩化ビニル樹脂シートが開発され、受像層のある塩化ビニル樹脂シートに比べて発色性を上げる機能や、インク密着機能は劣るものの、需要が大きくなっている。このため、印字するインクに対して、より濃色を示す機能や、塩化ビニル樹脂シートに密着する機能が望まれている。
【0004】
また、塩化ビニル樹脂シート等の媒体を屋外で使用した場には、汚れが付着し宣伝広告機能等が弱くなる。このため、汚れを除去する必要があるが、一般的に汚れを除去する方法として、アルコールを染み込ませた布等で媒体の表面を拭く方法が取られており、媒体表面に乾燥付着したインク塗膜には耐アルコール性が必須の要件として求められている。
【0005】
従来は、着色剤として油溶性染料を使用した非水系インクが用いられていたが、耐候性等の諸耐性が弱いため、屋外で長期に使用することが困難であった。このため、油溶性染料よりも耐候性等の強い顔料が着目され、顔料を使用した非水系インクの開発が行われている。
【0006】
たとえば、分散媒体として高級脂肪族炭化水素溶剤やオレイルアルコール等の有機溶剤を用いた油性顔料インクが提案されている(特許文献1、2、3参照)。しかし、提案の溶剤は沸点が高く揮発性が低いので、この種のインクを塩化ビニル樹脂シートに印刷するとインクの乾燥速度が遅く、経済的な速度での印刷ができず、提案の技術範囲では、仮に乾燥させてもインク塗膜の塩化ビニル樹脂シートへの密着性は得られない。すなわち、特許文献1〜3には、本発明の有機溶剤と密着剤及びその併用に関する示唆は認められない。また、特許文献4には、グリコールエーテルエステルを有機溶剤として用いた油性顔料インクが提案されている。しかし、この提案にはインクと印刷基材である塩化ビニル樹脂シートとの密着を実現する密着樹脂や、塩化ビニル樹脂シート表面を溶解または膨潤させる溶剤の併用については一切触れていないしなんらの示唆も無い。当然の帰結として、当該提案の技術範囲では本発明の目的は達成不可能であった。
【0007】
特許文献5には、特定のポリエステル樹脂を使用しアルキレングリコール系溶剤に顔料を分散した非水系インク組成物が記載されている。しかし、このインクにおける樹脂は顔料の分散剤であり、インクと印刷基材である塩化ビニル樹脂シートとの密着を実現する密着剤樹脂やシート表面を溶解または膨潤させる溶剤の併用については一切触れていないしなんら示唆も無い。この公知技術の範囲では本発明の目的は達成不可能であった。
【0008】
特許文献6では、顔料とそれを分散しやすい高沸点有機溶剤、及び該溶剤に溶解性の密着剤樹脂からなるインク組成物が開示されている。そこでは顔料に特別な規定は無く公知の顔料が使用可能で、有機溶剤と密着樹脂に関しては、沸点150℃以上で顔料を分散しやすい有機溶剤とそれに均一溶解する密着剤樹脂の組み合わせを用いるとしている。密着樹脂やそれと有機溶剤の組み合わせの例を開示しているが、紙等の浸透性材料に印刷するのに用いるインクの目的としてなされた発明であるため、不浸透性材料である塩ビシート用インクへの言及や示唆は一切ないし、当該技術の範囲で想定されるインクでは、塩ビシート用への密着性や耐久性の確保が不可能である。
【0009】
特許文献7では、着色剤として顔料、分散媒体として有機溶剤ポリアルキレンジアルキルエーテル20〜90wt%とN-アルキル-2-ピロリドン1〜30wt%、顔料分散剤及び定着剤としてポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ニトロセルロースのいずれかを必須成分とし、引火点が63℃以上である油性顔料インク組成物を請求項1に記述している。塩ビシートを溶かす有機溶剤としてN-アルキル-2-ピロリドン、特にN-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドンを用い、密着樹脂やそれと有機溶剤の例を開示している。この提案では、塩ビシートを溶かす有機溶剤としてN-アルキル-2-ピロリドン以外の溶剤については一切触れられていないしなんら示唆も無い。また、このインクで用いる樹脂として、ガラス転移温度(Tg)の高い樹脂を用いると、樹脂自体の塩ビシートへの密着性、耐アルコール性が劣り、結果としてインクの密着性が得られない。また、ポリビニルブチラール樹脂などアルコールに溶解するものを用いると耐アルコール性を得られない。さらに、分子量の低い樹脂を用いると耐アルコール性が劣る。
【0010】
特許文献8では、これらの油性顔料インクとは異なる、水系溶媒を使用し、塩ビシートを溶かすN-メチル-2-ピロリドンを含有する水系顔料インクが提案されている。しかし、このインクでは、塩ビシートへの優れた密着性や耐アルコール性を得ることは難しい。また当該技術は、水系顔料インクであり本発明とは別発明である。
【0011】
特許文献9では、塩ビシートを溶かす有機溶剤としてシクロヘキサノンやイソホロンを用いたインクジェット印刷用インクが提案されている。しかし、シクロヘキサノンやイソホロンは取扱いや臭気が強い問題がある。この提案では塩ビシートを溶かす有機溶剤として、シクロヘキサノンやイソホロン以外の有機溶剤については一切触れられていないしなんら示唆も無い。
【0012】
また、プリンターヘッド等の進歩により、顔料濃度のより高濃度のものが登場しており、さらなる高い密着性、耐アルコール性のインクが期待されている。さらに、このような技術進歩がなされている一方、プリンターヘッド中におけるインク乾燥に起因する目詰まりの対策は、従来通り、主としてインク組成で対応することが必要となっている。
【特許文献1】特表平10−507487号公報
【特許文献2】特開2000−38533号公報
【特許文献3】特開2001−329193号公報
【特許文献4】特開2003−96370号公報
【特許文献5】特開平10−77432号公報
【特許文献6】特開2002−302629号公報
【特許文献7】特開2006−9027号公報
【特許文献8】特開2002−363468号公報
【特許文献9】特開2006−56991号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
印字後において、優れた密着性、耐アルコール性を有する非水系顔料インク組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは(1)有機溶剤、(2)高分子化合物、(3)顔料を必須成分とする非水系顔料インク組成物において、(1)有機溶剤が(1a)グリコールエーテル類とグリコールエーテルアセテート類からなる群から選ばれたの少なくとも一種以上と、(1b)
1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンであり、かつ前者(1a)の含有量が全インク組成中35〜94wt%、後者(1b)の含有量が全インク組成物中3〜30wt%の範囲内にあり、さらに(2)高分子化合物として塩化ビニル酢酸ビニル共重合体を全インク組成物中1〜15wt%含み、(3)顔料濃度が全インク組成中2〜20wt%であることを特徴とする非水系顔料インク組成物を提供するに至った。
【発明の効果】
【0015】
このように、(1)有機溶剤、(2)高分子化合物、(3)顔料を必須成分とする非水系顔料インク組成物において、(1)有機溶剤が(1a)グリコールエーテル類とグリコールエーテルアセテート類からなる群から選ばれたの少なくとも一種以上と、(1b)
1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンであり、かつ前者(1a)の含有量が全インク組成中35〜94wt%、後者(1b)の含有量が全インク組成物中3〜30wt%の範囲内にあり、さらに(2)高分子化合物として塩化ビニル酢酸ビニル共重合体を全インク組成物中1〜15wt%含み、(3)顔料濃度が全インク組成中2〜20wt%であることにより、インクの受像層のない無処理のポリ塩化ビニル樹脂シート等に対しても優れた密着性があり、印字されたシートの汚れ除去するための必須要件である耐アルコール性においても優れ、臭気の少ない、非水系顔料インク組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を説明する。
【0017】
本発明における非水系顔料インク組成物は必須成分として(1)有機溶剤、(2)高分子化合物、(3)顔料を含む。本発明の組成により発明が解決しようとする課題を達成することができる。以下、本発明の各組成について説明する。
【0018】
本発明の非水系顔料インク組成物において、有機溶剤として1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンを使用するのがよい。これは塩ビシート等の表面を僅かに溶かし、インクの密着性を著しく高めるからである。
【0019】
塩ビを溶解する有機溶剤には、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンなどのケトン系化合物、ピロリドンなどの含窒素複素環化合物などがある。このうち、ケトン系化合物は労働安全基準法の有機溶剤に指定されており、また、強い臭気があるなど取扱い上難がある。
【0020】
一方、含窒素複素環化合物は労働安全基準法の有機溶剤に該当しないものが多く、安全性に優れ、しかも臭気も少ないため、インクに使用した場合に、安全性や臭気の点で優れている。すなわち、含窒素複素環化合物は、ケトン系化合物に比べて、インクの有機溶剤として非常に適した性能を備えている。
【0021】
このような含窒素複素環化合物の中で、臭気が少なく、定着性に優れているのはN-メチル-2-ピロリドンと1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンである。しかしながらN-メチル-2-ピロリドンは、上述のように、ケトン系化合物よりは安全性、臭気性は優れているものの、生殖毒性や発生毒性等の結果が認められており、使用による人体への影響が懸念される。一方、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンはN-メチル-2-ピロリドンと比較して、安全面で優れている。
【0022】
また、本発明者らの検討により、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンを使用した場合には、N-メチル-2-ピロリドンを使用した場合よりも、塩ビシートへの強い密着性を得られることを見出した。これにより、塩化ビニル樹脂シートを溶解させる有機溶剤として1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンを用いることで公知技術よりも密着性のあるインクの提供が可能となった。さらに、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンは沸点が約220℃とN-メチル-2-ピロリドンの約202℃よりも高いため、プリンターヘッドの乾燥防止溶剤としても有効である。
【0023】
本発明の非水系顔料インク組成物において、有機溶剤として1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンは全インク組成物中3〜30wt%含有するのがよい。1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンの含有量が少なすぎると、密着性が得られず、多すぎるとインクの乾燥性が悪くなるため、塩ビシート上でインク塗膜が形成しにくくなり、密着性が悪くなるとともに表面に凹凸が生じ光沢の低下を招く。なお、本発明の非水系顔料インク組成物において、有機溶剤として1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンと併用してN-アルキル-2-ピロリドンを使用することができる。
【0024】
また、有機溶剤として上述1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンと併用してグリコールエーテル類、グリコールエーテルアセテート類からなる群から選ばれた少なくとも一種以上を使用するのがよい。
【0025】
グリコールエーテル類はジエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、トリエチレングリコールモノアルキルエーテル、トリエチレングリコールジアルキルエーテル、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル、グリコールエーテルアセテート類はエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノアルキルアセテート、ジエチレングリコールモノアルキルアセテート、ジプロピレングリコールモノアルキルアセテートから最適なものを一種以上を併用して用いることができる。これらの溶剤は、沸点が100℃以上250℃以下であるため印字後の乾燥性がよく、経済的な速度での印刷が可能となり、溶剤の臭気が小さいため人体への影響が少ないからである。
【0026】
本発明の非水系顔料インク組成物において、高分子化合物は塩化ビニル酢酸ビニル共重合体がよい。塩化ビニル酢酸ビニル共重合体は水やアルコールに溶解しないため、当該重合体の溶解したインクの乾燥後は耐水性、耐アルコール性を有する。また、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体はポリ塩化ビニル樹脂を組成として持つため、塩化ビニル樹脂シートと相溶性がよく、インク乾燥後は密着性が高くなる。さらに塩化ビニル酢酸ビニル共重合体のポリマー組成によっては顔料分散の効果があるものもあり、密着樹脂として機能すると共に顔料分散樹脂として機能できる。このため、分散剤が使用しなくてもよい場合や、分散剤の量を減らすことができる場合があり、これらの場合には低分子量である分散剤の量が減ることにより、さらに高い耐アルコール性、密着性が得られる点で有利な効果がある。
【0027】
本発明の塩化ビニル酢酸ビニル共重合体のポリマー組成は、塩化ビニル樹脂組成が80〜90%、酢酸ビニル樹脂組成が10〜20%であることが好ましい。塩化ビニル酢酸ビニル共重合体を顔料分散樹脂としてインクに用いる場合には、塩化ビニル樹脂組成が88〜90%、酢酸ビニル樹脂組成が10〜12%であることがよい。塩化ビニル樹脂組成が高いと顔料分散機能が大きくなるからである。
【0028】
本発明の非水系顔料インク組成物における塩化ビニル酢酸ビニル共重合体において、重量平均分子量が25,000〜50,000であることがよい。分子量が低すぎると、アルコールが乾燥後のインク塗膜に浸透しやすくなるため、密着が悪化し耐アルコール性が悪くなる。一方、分子量が高すぎるとインク自体の粘度が高くなり、インクジェットインクの基本的要件である流動性が得られない。
【0029】
また、本発明の非水系顔料インク組成物における塩化ビニル酢酸ビニル共重合体において、高分子化合物のガラス転移温度(Tg)は70℃以上90℃以下であることがよい。ガラス転移温度が低すぎると、印字後のインクの乾燥性が悪くなり、経済的な印刷ができなくなる。また、インクの乾燥後においても、ブロッキング性が悪くなり、室温で使用する場合でも印字物がべとつき、表面に凹凸ができ光沢の低下を招く。一方、ガラス転移温度が高すぎると乾燥後のインクの塗膜が硬くなり、割れやすくなるとともに塩ビシートとの密着性が得られにくい。
【0030】
当該塩化ビニル酢酸ビニル共重合体を全インク組成物中1〜15wt%含有するのがよいが、さらに好ましくは1〜10wt%含有するのがよい。印字後に特に耐アルコール性において優れた効果があるとともに、塩化ビニル樹脂シート等と密着性においても優れた効果が見られる。この樹脂の量が少ないと、耐アルコール性、密着性が得られず、多すぎるとインク自体の粘度が高くなり、インクジェットインクの基本的要件である流動性が得られない。
【0031】
本発明ではさらに密着性、耐アルコール性、耐水性、分散安定性、印字性を上げるため、高分子化合物を添加することができる。使用できる高分子化合物としては、アクリル樹脂、スチレン−アクリル共重合体、スチレンーマレイン酸共重合体、エチレンー酢ビ共重合体、石油樹脂、テルペンフェノール樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、セルロース樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、塩ビ樹脂、アルキッド樹脂、ブチラール樹脂、マレイン酸樹脂等が挙げられる。これらのなかから最適なものを1種、または、複数種を併用して用いることができる。
【0032】
本発明の非水系顔料インク組成物において、顔料濃度は、顔料濃度2〜20wt%であるのがよい。顔料濃度が低すぎると、濃度が薄くなりすぎ、印字物に十分な発色をえることができず、濃度が高すぎると、粘度が高くなり、インクジェットインクの基本的要件である流動性が得られない。
【0033】
顔料はカーボンブラック、シアン、マゼンタ、イエローの顔料を用いることができる。
【0034】
カーボンブラックは、三菱化学社製のHCF、MCF、RCF、LFF、OCF、キャボット社製のモナーク、リーガル、デグサ社製のカラーブラック、スペシャルブラック、プリンテックス、東海カーボン社製のトーカブラック、コロンビア社製のラヴェンなどを用いることができる。
【0035】
シアンは、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15:1、15:2、15:3、15:4、16、22、60などを用いることができる。
【0036】
マゼンタは、C.I.ピグメントレッド5、7、12、57:1、112、122、123、168、184、202、209、254などを用いることができる。
【0037】
イエローは、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、13、16、17、73、74、75、83、93、95、97、98、109、110、114、120、128、129、130、138、139、147、150、151、154、155、180、185、213、214などを用いることができる。
【0038】
本発明の非水系顔料インク組成物において、分散剤を添加することができる。使用できる分散剤としては味の素ファインテクノ株式会社社製のアジスパー、日本ルーブリゾール株式会社社製のソルスパース、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社社製のEFKA、ビックケミー・ジャパン株式会社社製のDisperbyk、楠本化成株式会社製のディスパロンDA等が挙げられ、これらのなかから顔料の種類により分散性、安定性を考慮し、最適なものを1種、または、複数種を併用して用いることができる。
【0039】
本発明の非水系顔料インク組成物は種々のインクジェットプリンタに使用することができる。このようなインクジェットプリンタとしては例えば、オンデマンド方式によりインクを噴出させる方式のものをあげることができる。本発明のインクは特にラージフォーマットを用いた大型インクジェットプリンタによる印刷に好適に適用できる。
【0040】
本発明のインクを使用できる媒体は、インクの受像層のない無処理の塩化ビニル樹脂シートに限定されるものではなく、光沢塩化ビニル樹脂シート、ポリエステル合成紙マット、クリアフィルム、ターポリン、多積層を有する媒体等、多種の媒体に使用することができる。
【実施例】
【0041】
以下に実施例を挙げて本発明実施の態様例を具体的に示す。なお、実施例や比較例における部は重量部である。
【0042】
実施例1
250ccのプラスチック製ビンに顔料としてMA-8(三菱化学社製)を8部、高分子化合物として塩化ビニル酢酸ビニル共重合体VYNS(ダウ・ケミカル社製、重量平均分子量44000、Tg79℃)を4部、分散剤としてソルスパース32000(アビシア社製)を3部、有機溶剤としてエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート66部、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンを19部加え直径0.5mmジルコニアビーズ400部を計り取りペイントコンディショーナーにより3時間分散し定性濾紙No.5C(ADVANTEC社製)にて濾過してインク組成物を調整した。
【0043】
実施例2
有機溶剤として1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンを5部、ジエチレングリコールジエチルエーテル50部、ジエチレングリコールジメチルエーテル30部に代え実施例1と同様にして、インク組成物を調整した。
【0044】
実施例3
塩化ビニル酢酸ビニル共重合体ソルバインCN(日信化学工業社製、重量平均分子量42000、Tg75℃)に代え実施例1と同様にして、インク組成物を調整した。
【0045】
比較例1
有機溶剤として1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンをN-メチル-2-ピロリドンに代え実施例1と同様にして、インク組成物を調整した。
【0046】
比較例2
有機溶剤として1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンを1部、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート84部に代え実施例1と同様にしてインク組成物を調整した。
【0047】
比較例3
有機溶剤として1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンを40部、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート45部に代え実施例1と同様にしてインク組成物を調整した。
【0048】
比較例4
定着樹脂として塩化ビニル酢酸ビニル共重合体ソルバインCNL(日信化学工業社製、重量平均分子量12,000、Tg76℃)に代え実施例1と同様にして、インク組成物を調整した。
【0049】
比較例5
定着樹脂として塩化ビニル酢産ビニル共重合体VAGC(ダウ・ケミカル社製、重量平均分子量24,000、Tg65℃)に代え実施例1と同様にして、インク組成物を調整した。
【0050】
比較例6
定着樹脂としてポリエステルウレタン樹脂バイロンUR-1400(東洋紡社製、重量平均分子量40,000、Tg83℃)に代え実施例1と同様にして、インク組成物を調整した。
【0051】
比較例7
定着樹脂としてセルロースエステル樹脂CAB-531-1(イーストマン社製、重量平均分子量40,000、Tg115℃)に代え実施例1と同様にして、インク組成物を調整した。
【0052】
<ノズルの詰まり>
ラージフォーマット用インクジェットプリンタで画像を印刷し、正常に印字できたものを○、ノズル詰まりを生じて正常に印刷できなかったものを×と評価した。
【0053】
<定着性>
インク組成物を、No.6ワイヤーバーを用いて無処理塩化ビニル樹脂シートに塗布し、2時間後、指によるスクラブ試験を60秒行った。試験後、スクラブ痕がなかったものを◎、スクラブ痕が若干発生したものを○、スクラブ痕が発生したものを△、スクラブ痕が発生し基材が見えるものを×、と評価した。
【0054】
<耐アルコール性>
インク組成物を、No.6ワイヤーバーを用いて無処理塩化ビニル樹脂シートに塗布し、2時間後、エタノール液を染み込ませた綿棒で塗布面を擦った。これにより塗布面が全く擦り取られなかったものを○、擦り取られたものを×、と評価した。
【0055】
表1

【0056】
上記の表1の結果より実施例1〜3のインク組成物は優れた定着性、耐アルコール性を示し、塩化ビニル樹脂シートに対する印字性に関して問題はなく、優れていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)有機溶剤、(2)高分子化合物、(3)顔料を必須成分とする非水系顔料インク組成物において、(1)有機溶剤が(1a)グリコールエーテル類とグリコールエーテルアセテート類からなる群から選ばれたの少なくとも一種以上と、(1b)
1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンであり、かつ前者(1a)の含有量が全インク組成中35〜94wt%、後者(1b)の含有量が全インク組成物中3〜30wt%の範囲内にあり、さらに(2)高分子化合物として塩化ビニル酢酸ビニル共重合体を全インク組成物中1〜15wt%含み、(3)顔料濃度が全インク組成中2〜20wt%であることを特徴とする非水系顔料インク組成物。
【請求項2】
グリコールエーテル類はジエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、トリエチレングリコールモノアルキルエーテル、トリエチレングリコールジアルキルエーテル、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル、グリコールエーテルアセテート類はエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノアルキルアセテート、ジエチレングリコールモノアルキルアセテート、ジプロピレングリコールモノアルキルアセテートから選ばれた少なくとも一種以上である請求項1に記載の非水系顔料インク組成物。
【請求項3】
塩化ビニル酢酸ビニル共重合体の重量平均分子量が25,000〜50,000の範囲で、かつ、ガラス転移温度が70〜90℃の範囲にある請求項1に記載の非水系顔料インク組成物。

【公開番号】特開2008−297324(P2008−297324A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−141464(P2007−141464)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【出願人】(591075467)冨士色素株式会社 (24)
【Fターム(参考)】