説明

非水系顔料インク

【課題】印刷物の裏抜けを抑制して印刷濃度を高め、かつ、貯蔵安定性にも優れた非水系顔料インクを提供する。
【解決手段】顔料と、非水系溶剤と、顔料分散能を有する非水系樹脂分散微粒子とを含み、非水系樹脂分散微粒子は、油長50質量%以上である油変性アルキド樹脂及び/または脂肪酸変性アルキド樹脂にウレタン基が導入されたウレタン変性アルキド樹脂であって、ウレタン変性アルキド樹脂は、油変性アルキド樹脂及び/または脂肪酸変性アルキド樹脂の二重結合に対してアミノアルコールが結合し、アミノアルコールと多価イソシアネート化合物との反応によりウレタン基が導入されたものである、非水系顔料インク。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系顔料インクに関し、特にインクジェット記録システムへの使用に適した非水系顔料インクに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録システムに用いられるインクの色材としては、顔料を利用したものと染料を利用したものに大別されるが、高画質印刷に必要な耐光性、耐候性および耐水性に優れていることから、顔料を色材とするインクが増加する傾向にある。
【0003】
溶剤からみると、インクは大きく、水系タイプインクと非水系タイプインクに分けられる。揮発性溶剤を主体とする溶剤系インクや不揮発性溶剤を主体とするオイル系インクのように、インク用溶媒として水を使用しない非水系インクは、水系インクに比べ乾燥性が良く、印刷適性にも優れている。
【0004】
非水系タイプインクでは、一般に、溶剤に溶解する顔料分散剤を用いるところ、この顔料分散剤が溶剤と顔料との親和性を高めるため、溶剤が記録紙に浸透する際に顔料も記録紙内部に引き込まれやすい傾向がある。その結果、印刷濃度が低くなり、裏抜けが発生しやすい。
【0005】
そこで、特許文献1には、顔料分散能を有する非水系樹脂分散微粒子(NAD=Non Aqua Dispersion)を分散剤として用いる非水系顔料インクが提案されている。この非水系インクは、溶剤に溶解しない顔料分散剤を使用することで、普通紙への印刷物の高濃度化が図られている。しかし、顔料の分散安定性の点で、さらなる改良が求められる。
【0006】
また、顔料分散剤としてNADを使用するとインク粘度が高くなる傾向があるが、高粘度のインクではインクジェット記録システムにおいて貯蔵安定性や吐出安定性が損なわれるという問題がある。また、顔料の添加量が制限され、高濃度の印刷画像を得にくいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−197500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、印刷物の裏抜けを抑制して印刷濃度を高め、かつ、貯蔵安定性にも優れた非水系顔料インクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面によれば、顔料と、非水系溶剤と、顔料分散能を有する非水系樹脂分散微粒子とを含み、前記非水系樹脂分散微粒子は、油長50質量%以上である油変性アルキド樹脂及び/または脂肪酸変性アルキド樹脂にウレタン基が導入されたウレタン変性アルキド樹脂であって、前記ウレタン変性アルキド樹脂は、前記油変性アルキド樹脂及び/または脂肪酸変性アルキド樹脂の二重結合に対してアミノアルコールが結合し、前記アミノアルコールと多価イソシアネート化合物との反応によりウレタン基が導入されたものである、非水系顔料インクが提供される。
【0010】
本発明の別の側面によれば、油長50質量%以上である油変性アルキド樹脂及び/または脂肪酸変性アルキド樹脂にウレタン基が導入され、50%留出点が150℃以上の溶剤に対し不溶性であるウレタン変性アルキド樹脂からなり、前記ウレタン変性アルキド樹脂は、前記油変性アルキド樹脂及び/または脂肪酸変性アルキド樹脂の二重結合に対してアミノアルコールが結合し、前記アミノアルコールと多価イソシアネート化合物との反応によりウレタン基が導入されたものである、非水系顔料インク用顔料分散剤が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、印刷物の裏抜けを抑制して印刷濃度を高め、かつ、貯蔵安定性にも優れた非水系顔料インクを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る非水系インク(以下、単に「インク」と記す場合もある。)は、必須成分として、顔料と、非水系溶剤(以下、単に「溶剤」ともいう。)と、顔料分散剤としての顔料分散能を有する非水系樹脂分散微粒子(NAD=Non Aqua Dispersion、以下「NAD微粒子」ともいう。)とを含む。
【0013】
このNAD微粒子は、油長50質量%以上である油変性アルキド樹脂及び/または脂肪酸変性アルキド樹脂にウレタン基が導入されたウレタン変性アルキド樹脂であって、油変性アルキド樹脂及び/または脂肪酸変性アルキド樹脂の二重結合に対してアミノアルコールが結合し、アミノアルコールと多価イソシアネート化合物との反応によりウレタン基が導入されたものであり、インクに用いられる非水系溶剤に対し不溶性であり、インク中で微粒子を形成する。
【0014】
このNAD微粒子は、インクの非水系溶剤に対し、溶解しないコア部(極性部分)と、溶剤側に配向して溶媒和するシェル部(低極性部分)とを備えたコア/シェル構造を形成している。溶剤に不溶であるコア部は、印刷後に溶剤と顔料との分離性を高め、溶剤と共に顔料が紙の内部に沈み込むのを防いで顔料を紙表面に留まらせ、印刷濃度を向上させる役割を果たすと考えられ、一方、シェル部(立体反発層)は溶剤への分散安定性を高め、粒子分散系を形成する役割を果たすと考えられる。
【0015】
したがって、このNAD微粒子は、顔料との相互作用(吸着力)が高いため、印刷物における画像の裏抜けを抑制して印刷濃度を高め、かつ、インクの貯蔵安定性を高めることができる。さらに、このNAD微粒子は、少ない配合量で充分な顔料分散効果を発揮することができるため、インクの粘度を低く抑え、インクジェット用インクとして用いた際には吐出安定性を向上させることができる。
【0016】
油変性アルキド樹脂及び/または脂肪酸変性アルキド樹脂は、多塩基酸と多価アルコールとを構成単位として含有し、油及び/または脂肪酸によって変性されたものである。油変性アルキド樹脂及び脂肪酸変性アルキド樹脂をそれぞれ単独で使用してもよく、2種を組み合わせて使用してもよい。
【0017】
油変性アルキド樹脂及び/または脂肪酸変性アルキド樹脂は、油長50質量%以上であることで、油変性アルキド樹脂及び/または脂肪酸変性アルキド樹脂が非水系溶剤に対し溶解性を高め、導入されるウレタン基が非水系溶剤に対し不溶性であるため、溶剤と顔料の分離性が高まり、印刷濃度を高めることができる。ここで、油長は分子中に含まれる油及び脂肪酸の質量分率(質量%)を示すものである(以下同じ)。なお、本発明において、油変性アルキド樹脂及び/または脂肪酸変性アルキド樹脂の油長は、油変性アルキド樹脂及び/または脂肪酸変性アルキド樹脂の固形分で換算して求める。
さらに、油変性アルキド樹脂及び/または脂肪酸変性アルキド樹脂の油長は、65質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることが一層好ましい。
【0018】
また、油変性アルキド樹脂及び/または脂肪酸変性アルキド樹脂のヨウ素価としては、80gI/100g以上であることが好ましく、さらに100gI/100g以上であることがより好ましく、150gI/100g以上であることが一層好ましい。ここで、ヨウ素価は、分子中に含まれる二重結合の多さの程度を示す指標である(以下同じ)。なお、本発明において、油変性アルキド樹脂及び/または脂肪酸変性アルキド樹脂のヨウ素価は、油変性アルキド樹脂及び/または脂肪酸変性アルキド樹脂の固形分で換算して求める。また、油変性アルキド樹脂及び/または脂肪酸変性アルキド樹脂のヨウ素価は、油変性アルキド樹脂及び/または脂肪酸変性アルキド樹脂に用いる油及び/または脂肪酸のヨウ素価に、油変性アルキド樹脂及び/または脂肪酸変性アルキド樹脂の油長を乗じることで求めることができる。
【0019】
上記した範囲で、油変性アルキド樹脂及び/または脂肪酸変性アルキド樹脂の油長、及び油変性アルキド樹脂及び/または脂肪酸変性アルキド樹脂のヨウ素価が調整されることで、導入されるウレタン基が適正量となり、溶剤と顔料との分離性が高まり、印刷画像の濃度低下を防止することができる。また、ウレタン基が適性量であることで、インクの低粘度化が可能となり、NAD微粒子を分散剤として含有しても貯蔵安定性及び吐出安定性を良好に維持することができる。また、インクの低粘度化が可能であるため、インク中の顔料の含有量を増加させ、印刷画像の一層の高濃度化を図ることができる。
【0020】
さらに、油変性アルキド樹脂及び/または脂肪酸変性アルキド樹脂の油長、及び油変性アルキド樹脂及び/または脂肪酸変性アルキド樹脂のヨウ素価が増加すると、導入されるウレタン基の量が増加するが、これを含むインクを用いることで、インクジェットヘッドのノズルプレート面の撥インク性を向上することができる。この効果を十分に得るためには、例えば、油変性アルキド樹脂及び/または脂肪酸変性アルキド樹脂の油長が65質量%以上、かつ油変性アルキド樹脂及び/または脂肪酸変性アルキド樹脂のヨウ素価が150gI/100g以上となるように調整するとよい。
【0021】
ここで、ノズルプレート面はフッ素加工等で撥インク処理され、ノズルプレート面のクリーニングは、インクを少量吐出させ、吸引機で吸い取り、ワイピングブレードで掻き取ることで行われる。ワイピングブレードによってノズルプレート面が磨耗すると、ノズルプレート面の撥インク性が低下することがある。ノズルプレート面の撥インク性が低下した場合、インクとの濡れ性が増加し、ノズルプレート面にインクが付着し、吐出不良につながることがある。そのため、ノズルプレート面の撥インク性を向上させる非水系顔料インクを提供することが重要である。
【0022】
油変性アルキド樹脂及び/または脂肪酸変性アルキド樹脂に用いる油及び/または脂肪酸としては、それぞれヨウ素価が100gI/100g以上であることが好ましく、さらに140gI/100g以上であることがより好ましく、180gI/100g以上であることが一層好ましい。
【0023】
油変性アルキド樹脂及び/または脂肪酸変性アルキド樹脂に用いる油としては、例えば、亜麻仁油(ヨウ素価197gI/100g)、大豆油(ヨウ素価131gI/100g)、トール油(ヨウ素価135gI/100g)、桐油(ヨウ素価163gI/100g)、綿実油(ヨウ素価109gI/100g)等を使用することができる。
【0024】
また、油変性アルキド樹脂及び/または脂肪酸変性アルキド樹脂に用いる脂肪酸としては、例えば、亜麻仁油脂肪酸(ヨウ素価180gI/100g)、大豆油脂肪酸(ヨウ素価118gI/100g)、トール油脂肪酸(ヨウ素価103gI/100g)等を使用することができる。
【0025】
これらの油及び脂肪酸は、単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0026】
構成単位である多塩基酸としては、特に限定されず、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等の飽和多塩基酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水シトラコン酸等の不飽和多塩基酸等、及びこれらの組み合わせを使用することができる。
【0027】
構成単位である多価アルコールとしては、特に限定されず、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等、及びこれらの組み合わせを使用することができる。
【0028】
油変性アルキド樹脂及び/または脂肪酸変性アルキド樹脂としては、例えば、亜麻仁油変性アルキド樹脂、大豆油変性アルキド樹脂、トール油変性アルキド樹脂、桐油変性アルキド樹脂、綿実油変性アルキド樹脂等のアルキド樹脂を使用することができる。これらは、単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0029】
油変性アルキド樹脂及び/または脂肪酸変性アルキド樹脂の市販品としては、例えば、アラキード310(荒川化学工業株式会社)、アラキード5001(荒川化学工業株式会社)等の亜麻仁油変性アルキド樹脂、アラキード3145−80(荒川化学工業株式会社)等の大豆油変性アルキド樹脂、アラキード1465−60(荒川化学工業株式会社)等のトール油変性アルキド樹脂等を好ましく使用することができる。これらは、単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0030】
ウレタン変性アルキド樹脂に導入されるウレタン基は、極性が高く顔料を吸着させるウレタン基(ウレタン結合)、すなわちカルバミン酸エステル(HNCOOR、RNHCOOR)部を有することにより、顔料を取り込んでNAD微粒子のコア部(溶剤への不溶性部)を形成する。
【0031】
ウレタン変性アルキド樹脂の主鎖(幹)に対し、ウレタン基は、上記長鎖アルキル基と共に側鎖(枝)を構成するものである。このウレタン基を含む枝は、ウレタン結合が繰り返されたポリウレタンとなって、枝ポリマーを形成していてもよい。
【0032】
ウレタン変性アルキド樹脂の分子量(質量平均分子量)は、特に限定されないが、インクジェット用インクとして用いる場合には、インクの吐出性の観点から3000〜50000程度であることが好ましく、5000〜20000程度であることがより好ましい。
【0033】
ウレタン変性アルキド樹脂のガラス転移温度(Tg)は、常温以下であることが好ましく、さらには0℃以下であることがより好ましい。これにより、インクが記録媒体上で定着する際に、常温で成膜を促進させることができる。
【0034】
NAD微粒子の粒径についても、特に限定されないが、インクジェット用インクとして用いる場合には、ノズル径に対して充分に小さいものである必要があり、一般に0.3μm以下、より好ましくは0.1μm以下である。
【0035】
ウレタン変性アルキド樹脂は、上記した油変性アルキド樹脂及び/または脂肪酸変性アルキド樹脂(幹ポリマー)の二重結合に対してアミノアルコールが結合し、アミノアルコールと多価イソシアネート化合物との反応によりウレタン基が導入されることにより、好ましく製造することができる。
【0036】
この反応では、アミノアルコールのアミノ基が油変性及び/または脂肪酸変性アルキド樹脂の不飽和二重結合と反応して結合する。そして、このアミノアルコールのヒドロキシ基に、多価イソシアネート化合物のイソシアン酸エステル基(RN=C=O)が次のように付加反応し、ウレタン基(ウレタン結合)(カルバミン酸エステル:RNHCOOR)が得られる。
N=C=O+R−OH→ROCONHR
ここでR−は、幹ポリマーの官能基に結合したアミノアルコール部を示す。
上記により、顔料吸着能を持たない幹ポリマーに対して、顔料吸着基として作用するウレタン基が導入される。
【0037】
アミノアルコールとしては、モノメチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等を例示できる。なかでも、2個のヒドロキシ基を提供して形成されるウレタン基の数を増やせることから、一般式(HOR)NH(Rは2価の炭化水素基)で示されるジアルカノールアミン(2級アルカノールアミン)であることが好ましい。これらのアミノアルコールは、複数種を組み合わせて用いることもできる。
【0038】
このアミノアルコールは、上記油変性アルキド樹脂及び/または脂肪酸変性アルキド樹脂の二重結合に対し、適切な量のウレタン基を導入する観点から、0.05〜1モル当量で反応させることが好ましく、0.1〜1モル当量で反応させることがより好ましい。アミノアルコールが1モル当量より少ない場合は、このアルキド樹脂において未反応の二重結合が残ることになる。なお、ウレタン変性アルキド樹脂はインク中に分散微粒子状態として存在するため、残存する二重結合によって酸化重合が起こることは抑制され、インクの増粘及びゲル化が発生することは防止される。
【0039】
多価イソシアネート化合物としては、1,6−ジイソシアネートへキサン、1,3−ビス(イソシアネートメチル)ベンゼン、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,5−ナフタレンジイソシアネート等の脂肪族系、脂環式系、芳香族系のものが挙げられ、複数種を使用することもできる。
【0040】
多価イソシアネート化合物は、ヒドロキシ基との反応でウレタン基を導入する際に未反応原料などが残らないようにするために、仕込んだ原料に含まれるヒドロキシ基に対してほぼ当量(0.98〜1.02モル当量)で反応させることが好ましい。
【0041】
このようにして、溶剤に可溶な油変性アルキド樹脂及び/または脂肪酸変性アルキド樹脂(幹ポリマー)に対し、二重結合に結合したアミノアルコールを基点として、溶剤に不溶なウレタン側鎖部(グラフト部)が形成され、これが分散粒子核を形成する。このプロセスによって、最終的に、溶剤に溶媒和可能なシェル構造体(幹ポリマー)にくるまれた重合体粒子(NAD微粒子)が形成される。
【0042】
上記の反応において、さらに多価アルコールを加え、多価アルコールと多価イソシアネート化合物とを反応させることも好ましい。多価アルコールの添加により、ウレタン基の形成が繰り返されて、より極性の高い側鎖となるポリウレタン側鎖(枝ポリマー)を得ることができる。
【0043】
多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3プロパンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられ、複数種を使用することもできる。
【0044】
多価アルコールは、NAD粒子サイズを制御するためにも重要であり、多価アルコールが多く含まれるとNAD粒子が大きくなる。一方、極端に粒子サイズが大きくなってしまうとインクの吐出安定性、顔料分散性が損なわれるため、アミノアルコールに対して多価アルコールは0〜20モル当量で反応させることが好ましく、1〜10モル当量で反応させることがより好ましい。
【0045】
ウレタン変性アルキド樹脂におけるアルキド樹脂部(幹ポリマー)と、導入されたウレタン基部(枝または枝ポリマー)との質量比率は、60:40〜99:1であることが好ましく、さらに85:15〜99:1であることがより好ましく、90:10〜99:1であることが一層好ましい。インク粘度の観点から、ウレタン基部の質量比率を40以下とすることが好ましい。ウレタン変性アルキド樹脂におけるアルキド樹脂部の質量は、原料の油変性アルキド樹脂及び/または脂肪酸変性アルキド樹脂の合計質量であり、導入されたウレタン基部の質量は、反応に使用したアミノアルコールと多価イソシアネート化合物の質量であり、多価アルコールを使用した場合はこれも加えた合計質量である。
【0046】
得られたNAD微粒子は、それ自身に高い顔料分散能があるため従来の顔料分散剤よりも少量を配合することで足り、かつ、別に顔料分散剤を添加しなくてもよい。その結果、通常は高分子化合物である顔料分散剤の配合による弊害、すなわちインクの高粘度化および保存安定性の低下を抑制することができ、インクジェット記録システムにおいては吐出安定性を向上させることができる。さらに、通常使用環境下における保存安定性のみならず、高温環境下条件における保存安定性をも確保することができる。
【0047】
次に、黒色インク用の顔料としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック類;銅、鉄、酸化チタン等の金属類または金属酸化物;オルトニトロアニリンブラック等の有機顔料を挙げることができる。これらは単独で、または任意に混合して使用することができる。
【0048】
カラーインク用顔料としては、トルイジンレッド、パーマネントカーミンFB、ジスアゾオレンジPMP、レーキレッドC、ブリリアントカーミン6B、キナクリドンレッド、ジオキサンバイオレット、オルトニトロアニリンオレンジ、ジニトロアニリンオレンジ、バルカンオレンジ、トルイジンレッド、塩素化パラレッド、ブリリアントファーストスカーレット、ナフトールレッド23、ビラゾロンレッド、バリウムレッド2B、カルシウムレッド2B、ストロンチウムレッド2B、マンガンレッド2B、バリウムリソームレッド、ピグメントスカーレッド3Bレーキ、レーキボルドー10B、アンソシン3Bレーキ、アンソシン5Bレーキ、ローダミン6Gレーキ、エオシンレーキ、べんがら、ファフトールレッドFGR、ローダミンBレーキ、メチルバイオレッドレーキ、ジオキサジンバイオレッド、ナフトールカーミンFB、ナフトールレッドM、ファストイエローAAA、ファストイエロー10G、ジスアゾイエローAAMX、ジスアゾイエローAAOT、ジスアゾイエローAAOA、ジスアゾイエローHR、イソインドリンイエロー、ファストイエローG、ジスアゾイエローAAA、フタロシアニンブルー、ピクトリアピュアブルー、ベーシックブルー5Bレーキ、ベーシックブルー6Gレーキ、ファストスカイブルー、アルカリブルーRトナー、ピーコックブルーレーキ、紺青、群青、レフレックスブルー2G、レフレックスブルーR、アルカリブルーGトナー、ブリリアントグリーンレーキ、ダイアモンドグリーンチオフラビンレーキ、フタロシアニングリーンG、グリーンゴールド、フタロシアニングリーンY、酸化鉄粉、さびこ、亜鉛華、酸化チタン、炭酸カルシウム、クレー、硫酸バリウム、アルミナホワイト、アルミニウム粉、ブロンズ粉、昼光蛍光顔料、パール顔料等を例示できる、これらは単独で、または任意混合して用いることができる。
【0049】
顔料の平均粒径は、吐出安定性と保存安定性の観点から300nm以下であることが好ましく、150nm以下であることがより好ましく、100nm以下であることがさらに好ましい。ここで、顔料の平均粒径は、(株)堀場製作所製の動的光散乱式粒度分布測定装置LB−500により測定された値である。
【0050】
非水系溶剤とは、非極性有機溶剤および極性有機溶剤であって、50%留出点が150℃以上の溶剤をいう。50%留出点は、JIS K0066「化学製品の蒸留試験方法」に従って測定される、質量で50%の溶剤が揮発したときの温度を意味する。安全性の観点からは、50%留出点が160℃以上、好ましくは230℃以上のものを用いることが好ましい。
【0051】
たとえば、非極性有機溶剤としては、脂肪族炭化水素溶剤、脂環式炭化水素系溶剤、芳香族炭化水素溶剤等を好ましく挙げることができる。脂肪族炭化水素溶剤、脂環式炭化水素系溶剤としては、たとえば、日本石油(株)製「テクリーンN−16、テクリーンN−20、テクリーンN−22、日石ナフテゾールL、日石ナフテゾールM、日石ナフテゾールH、0号ソルベントL、0号ソルベントM、0号ソルベントH、日石アイソゾール300、日石アイソゾール400、AF−4、AF−5、AF−6、AF−7」、Exxon社製「Isopar(アイソパー)G、IsoparH、IsoparL、IsoparM、ExxsolD40、ExxsolD80、ExxsolD100、ExxsolD130、ExxsolD140」等を好ましく挙げることができる。芳香族炭化水素溶剤としては、日本石油(株)製「日石クリーンソルG」(アルキルベンゼン)、Exxon社製「ソルベッソ200」等を好ましく挙げることができる。
【0052】
極性有機溶剤としては、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、高級脂肪酸系溶剤、エーテル系溶剤、およびこれらの混合溶剤を用いることができる。より具体的には、
ラウリル酸メチル、ラウリル酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソステアリル、パルミチン酸イソオクチル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸イソプロピル、オレイン酸ブチル、リノール酸メチル、リノール酸イソブチル、リノール酸エチル、イソステアリン酸イソプロピル、大豆油メチル、大豆油イソブチル、トール油メチル、トール油イソブチル、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、モノカプリン酸プロピレングリコール、トリ2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリルなどの、1分子中の炭素数が14以上のエステル系溶剤;
イソミリスチルアルコール、イソパルミチルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコールなどの、1分子中の炭素数が12以上であるアルコール系溶剤;
イソノナン酸、イソミリスチン酸、ヘキサデカン酸、イソパルミチン酸、オレイン酸、イソステアリン酸などの高級脂肪酸系溶剤;
ジエチルグリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテルなどのエーテル系溶剤、が好ましく挙げられる。
これらの非水系溶剤は、単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0053】
インクは、本発明の効果を阻害しない範囲内で、任意の成分を含むことができる。
たとえば、上記NAD微粒子以外の樹脂として、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、スチレン−マレイン酸系樹脂、ロジン系樹脂、ロジンエステル系樹脂、エチレン−酢ビ系樹脂、石油樹脂、クマロンインデン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂、塩酢ビ系樹脂、キシレン樹脂、アルキッド樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、ブチラール樹脂、マレイン酸樹脂、フマル酸樹脂、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエステルポリアミン、ステアリルアミンアセテート等を含むことができる。
【0054】
ノズルの目詰まり防止剤、酸化防止剤、導電率調整剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、酸素吸収剤などを適宜添加することもできる。これらの種類は、特に限定されることはなく、当該分野で使用されているものを用いることができる。
【0055】
インク中の顔料の含有量は、通常0.01〜20質量%であり、印刷濃度とインク粘度の観点から1〜15質量%であることが好ましく、5〜10質量%であることが一層好ましい。
【0056】
インク中におけるNAD微粒子の含有量は、顔料分散性を確保する観点から0.1質量%以上であることが好ましく、2.0質量%以上であることがより好ましい。一方、NAD微粒子の含有量が高すぎると、インクの粘度が高くなるばかりでなく、高温環境下での保存安定性が悪くなる恐れがあるため、20.0質量%以下であることが好ましく、10.0質量%以下であることがより好ましい。さらには、インク中におけるNAD微粒子の含有量は、3.0〜8.0質量%であることが一層好ましい。
【0057】
非水系樹脂分散微粒子を含む樹脂の質量(NAD微粒子以外の樹脂を含む場合はそれも加えた総量)は顔料の質量を1として0.3以上1.0以下であることが好ましい。顔料分散性の効果を確保する観点から、0.3以上であることが好ましく、さらに0.4以上であることがより好ましく、0.5以上であることが一層好ましい。一方、インク粘度の向上と経時変化による吐出不良を回避する観点から1.0以下であることが好ましい。
【0058】
インクの粘度は、インクジェット記録システム用の場合、吐出ヘッドのノズル径や吐出環境等によってその適性範囲は異なるが、一般に、25℃において5〜30mPa・sであることが好ましく、5〜15mPa・sであることがより好ましく、約10mPa・s程度であることが、インクジェット記録装置用として適している。ここで粘度は、25℃において0.1Pa/sの速度で剪断応力を0Paから増加させたときの10Paにおける値を表す。
【0059】
本発明に係る非水系顔料インク用顔料分散剤は、油長50質量%以上である油変性アルキド樹脂及び/または脂肪酸変性アルキド樹脂にウレタン基が導入され、50%留出点が150℃以上の溶剤に対し不溶性であるウレタン変性アルキド樹脂からなる。
【0060】
ウレタン変性アルキド樹脂は、油変性アルキド樹脂及び/または脂肪酸変性アルキド樹脂の二重結合に対してアミノアルコールが結合し、アミノアルコールと多価イソシアネート化合物との反応によりウレタン基が導入されたものであることが好ましい。さらに、多価イソシアネート化合物と多価アルコールとの反応を含むことが好ましい。
【0061】
このようなウレタン変性アルキド樹脂は、溶剤に可溶な油変性アルキド樹脂及び/または脂肪酸変性アルキド樹脂(幹ポリマー)に対し、二重結合に結合したアミノアルコールを基点として、溶剤に不溶なウレタン側鎖部(グラフト部)が形成され、これが分散粒子核を形成する。このプロセスによって、最終的に、溶剤に溶媒和可能なシェル構造体(幹ポリマー)にくるまれた重合体粒子(NAD微粒子)が形成される。
【0062】
この顔料分散剤は、非水系顔料インクに配合するとNAD微粒子を形成し、上述のような顔料分散効果を発揮する。その結果、印刷物の印刷濃度を高めることができ、かつ、貯蔵安定性にも優れた非水系顔料インクを提供する。
【0063】
本発明に係るインクを用いた印刷方法は、特に限定されないが、インクジェット記録装置を用いて行われることが好ましい。インクジェットプリンタは、ピエゾ方式、静電方式、サーマル方式など、いずれの方式のものであってもよい。インクジェット記録装置を用いる場合は、デジタル信号に基づいてインクジェットヘッドから本発明に係るインクを吐出させ、吐出されたインク液滴を記録媒体に付着させるようにする。
【0064】
本発明に係るインクは、低温環境下でも良好に使用することができ、かつインクジェット記録システムに使用した場合には吐出安定性にも優れている。
【0065】
得られる印刷物は、インク中の顔料が印刷用紙の内部に入り込みにくく、用紙表面に留まりやすくなるため、印刷濃度の高いものとなる。
【実施例】
【0066】
以下に、本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、「質量%」を単に「%」と記す。
【0067】
(1)幹ポリマー
幹ポリマーa〜cとして表1に示す油変性アルキド樹脂を使用した。
幹ポリマーのヨウ素価は、次の式によって算出した。
(幹ポリマーのヨウ素価)=(幹ポリマーの油成分のヨウ素価)×(幹ポリマーの油長)
【0068】
【表1】

【0069】
(2)NAD微粒子を含む非水系分散液の製造
表2に示す組成で非水系分散液を製造した。300mLの四つ口フラスコに、アラキード310を61.24g、プロピレングリコール(旭硝子株式会社製)を0.44g、ジエタノールアミン(日本触媒株式会社製)を0.60g、溶剤としてパルミチン酸イソオクチル(IOP、日光ケミカルズ株式会社製、以下同じ)を111.9gで仕込み、窒素ガスを通気し攪拌しながら、110℃まで昇温した。その後、110℃で2時間保持した。触媒としてジラウリン酸ジブチル錫を0.04g添加した後、2.25gのタケネート600(1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、三井化学ポリウレタン株式会社製)と20.25gのIOPとの混合物を30分かけて滴下ロートで滴下した。滴下後、18.42gのIOPで滴下ロートを洗浄した。温度を110℃に保ちながら6時間反応させ、冷却して、固形分(NAD微粒子)30%の非水系分散液D1を得た。
【0070】
同様にして、表2に示す組成で非水系分散液D2〜D4を製造した。表2に示す幹ポリマーの量は固形分量である。
【0071】
得られた各ウレタン変性アルキド樹脂(枝ポリマーを含む)の質量平均分子量(GPC法、標準ポリスチレン換算)は、D1:6300、D2:6900、D3:7500、D4:6600であった。
【0072】
【表2】

【0073】
各非水系分散液D1〜D4の固形分と溶剤組成は次のとおりである。
D1:固形分30%、IOP 70.0%
D2:固形分30%、IOP 70.0%
D3:固形分30%、IOP 62.9%、ターペン 7.1%
D4:固形分30%、IOP 70.0%
【0074】
(3)インクの調製
<実施例1>
得られた分散液D1を16.67g、顔料(カーボンブラック、三井化学株式会社製MA11)を10g、AF−7(AFソルベント7号、ナフテン系溶剤、新日本石油株式会社製、以下同じ)を10g、IOPを13.3gで混合し、ジルコニアビーズ(直径0.5mm)を入れて、ロッキングミル(株式会社セイワ技研製)により120分間分散した。分散後ジルコニアビーズを除去し、3.0μmおよび0.8μmのメンブランフィルターで順に濾過してゴミおよび粗大粒子を取り除き、AF−7を30g、IOPを20gで加えて希釈して、NAD微粒子で顔料分散したインク(顔料分10%)を得た。顔料1に対する樹脂(固形分)の質量比を表1に併せて示す。
【0075】
<実施例2〜4、比較例1〜4>
表3に示す配合で、上記実施例1と同様にして各実施例および比較例のインクを得た。
比較例1〜4では、非水系分散液に代わり、それぞれ幹ポリマーa溶液、幹ポリマーb溶液、幹ポリマーc溶液、及びS28000(ソルスパース28000、日本ルーブリゾール株式会社製、固形分100%)を使用した。
【0076】
【表3】

【0077】
<インクの平均粒子径・粘度>
得られた各実施例のインクは、全て、インクジェット用インクとしての適正範囲の平均粒子径・粘度を備えたものであった。インクの平均粒子径は、株式会社堀場製作所製の動的光散乱式粒径分布装置LB−500により測定した。インクの粘度は、25℃において0.1Pa/sの速度で剪断応力を0Paから増加させたときの10Paにおける粘度であり、TAインスツルメント社製レオメータAR−G2(コーン角度2°、直径40mm)で測定した。
【0078】
<インクの貯蔵(保存)安定性(70℃)>
得られた各実施例及び比較例のインクを密閉容器に入れて、70℃の環境下で4週間放置し、その後インクの粘度変化を測定し、その測定結果を以下のように評価した。
粘度変化率:
[(4週間後の粘度×100)/(粘度の初期値)]−100(%)
粘度変化率が5%未満のものをA、粘度変化率が5%以上10%未満のものをB、粘度変化率が10%以上のものをCとした。
【0079】
<撥インク性>
得られた各実施例及び比較例のインクをインクジェットプリンタ「オルフィスHC5500」(理想科学工業株式会社製)に装填し、ヘッドメンテナンスの「ノーマルクリーニング」により、ヘッドクリーニングを4000回実施し、ノズルプレート面のうちワイピングブレードが接した部分の撥インク性を目視で観察し、以下の基準で評価した。「ノーマルクリーニング」では、インク経路を加圧してヘッドノズルからインクを排出した後、ゴム製のワイピングブレードでノズル面を擦ると同時にノズルプレート上に残ったインクを吸引式により吸い取る動作を実施する。
AA:ワイピングブレードが接した全ての部分の撥インク性が保たれ、ヘッドクリーニング後、即座にインクが完全にはじかれた。
A:ワイピングブレードが接した全ての部分の撥インク性が保たれ、ヘッドクリーニング後、20秒以内でインクが完全にはじかれた。
B:ワイピングブレードが接した一部分の撥インク性が低下した。
C:ワイピングブレードが接した全ての部分の撥インク性が低下した。
【0080】
<インクによる印刷>
得られた各実施例及び比較例のインクをインクジェットプリンタ「オルフィスHC5500」(理想科学工業株式会社製)に装填し、普通紙(理想用紙薄口、理想科学工業株式会社製)に印字することにより、印刷濃度と吐出安定性を評価した。なお、HC5500は、300dpiのライン型インクジェットヘッド(各ノズルが約85μm間隔で並ぶ)を使用し、主走査方向(ノズルが並んでいる方向)に直交する副走査方向に用紙を搬送して印字を行うシステムである。
【0081】
<インクの吐出安定性>
主走査方向約51mm(ノズル600本分)×副走査方向260mmのベタ画像を、100枚連続して印刷した。インクの不吐出による非印字部分は白いスジとなって観察されるが、この白スジが100枚の印刷物(延べでノズル6万本に相当)中に何本発生するかによって、吐出安定性を以下のように評価した。
不吐出なし:A、5本未満:B、5本以上:C
【0082】
<印刷物の濃度>
上記と同様にして得られたベタ画像の表面と裏面のOD値を、光学濃度計(RD920、マクベス社製)を用いて測定し、以下の基準で評価した。表面のOD値が高ければ画像濃度が高く、裏面のOD値が低ければ裏抜けが少ないために、それぞれ好ましい。
印刷濃度(表OD)
A:1.17以上、B:1.12〜1.16、C:1.08〜1.11、D:1.07以下
印刷濃度(裏OD)
A:0.28以下、B:0.29〜0.33、C:0.34以上
以上の評価結果を、表3に併せて示す。
【0083】
各実施例のインクは、顔料分散剤を別途添加しなくても、高温環境下での保存安定性に優れ、印刷物の高濃度化及び裏抜けの防止を実現しながら、吐出安定性をも確保することができた。
【0084】
さらに、実施例1、2及び4では、幹ポリマーの油長、及び幹ポリマーのヨウ素価がいずれもより高く、印刷濃度(裏OD)が一層良好になり、裏抜けをより防止することができた。これは、インク中の溶剤と顔料の離脱性が促進されたためと考えられる。
【0085】
また、実施例1及び4では、幹ポリマーの油長、及び幹ポリマーのヨウ素価がいずれもさらに高く、撥インク性が一層優れたものとなった。これは、幹ポリマーの不飽和二重結合に導入されたウレタン基の割合が高まったためと考えられる。
【0086】
一方、比較例1〜3は、幹ポリマーに対して枝ポリマー(ウレタン基部)を結合させていない樹脂で分散を行ったものであるが、顔料分散性が悪く、吐出安定性および貯蔵安定性も低く、印刷物の高濃度化及び裏抜けの防止を図ることができなかった。
【0087】
比較例4は、市販の顔料分散剤を用いた従来の顔料インクであるが、この場合には、貯蔵安定性及び吐出安定性は確保されたものの、顔料が溶剤および顔料分散剤と共に紙に浸透してしまうため、裏抜けの防止を図ることができなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料と、非水系溶剤と、顔料分散能を有する非水系樹脂分散微粒子とを含み、
前記非水系樹脂分散微粒子は、油長50質量%以上である油変性アルキド樹脂及び/または脂肪酸変性アルキド樹脂にウレタン基が導入されたウレタン変性アルキド樹脂であって、
前記ウレタン変性アルキド樹脂は、前記油変性アルキド樹脂及び/または脂肪酸変性アルキド樹脂の二重結合に対してアミノアルコールが結合し、前記アミノアルコールと多価イソシアネート化合物との反応によりウレタン基が導入されたものである、非水系顔料インク。
【請求項2】
前記油変性アルキド樹脂及び/または脂肪酸変性アルキド樹脂は、ヨウ素価が80gI/100g以上である、請求項1に記載の非水系顔料インク。
【請求項3】
前記油変性アルキド樹脂及び/または脂肪酸変性アルキド樹脂は、ヨウ素価が100gI/100g以上である、請求項2に記載の非水系顔料インク。
【請求項4】
前記油変性アルキド樹脂及び/または脂肪酸変性アルキド樹脂は、ヨウ素価が150gI/100g以上である、請求項3に記載の非水系顔料インク。
【請求項5】
前記ウレタン変性アルキド樹脂におけるアルキド樹脂部と導入されたウレタン基部との質量比率は、60:40〜99:1である、請求項1から4のいずれか1項に記載の非水系顔料インク。
【請求項6】
前記多価イソシアネート化合物と多価アルコールとの反応をさらに含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の非水系顔料インク。
【請求項7】
前記非水系樹脂分散微粒子を含む樹脂の質量は前記顔料の質量を1として0.3以上1.0以下である、請求項1から6のいずれか1項に記載の非水系顔料インク。
【請求項8】
油長50質量%以上である油変性アルキド樹脂及び/または脂肪酸変性アルキド樹脂にウレタン基が導入され、50%留出点が150℃以上の溶剤に対し不溶性であるウレタン変性アルキド樹脂からなり、
前記ウレタン変性アルキド樹脂は、前記油変性アルキド樹脂及び/または脂肪酸変性アルキド樹脂の二重結合に対してアミノアルコールが結合し、前記アミノアルコールと多価イソシアネート化合物との反応によりウレタン基が導入されたものである、
非水系顔料インク用顔料分散剤。

【公開番号】特開2011−46801(P2011−46801A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−195364(P2009−195364)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】