説明

非水電解液およびそれを用いた非水電解液二次電池

【課題】活物質と電解液との間における電荷移動抵抗が小さく、サイクル寿命特性に優れた非水電解液二次電池を提供する。
【解決手段】非水電解液は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、およびジメチルカーボネートの混合溶媒と、混合溶媒に溶解する支持塩とを含み、混合溶媒中におけるジメチルカーボネートのモル比率が75%以上であり、プロピレンカーボネートに対するエチレンカーボネートのモル比が2以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解液二次電池に関し、特にこれに用いられる非水電解液に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、正極活物質として、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、リン酸鉄リチウムなどの遷移金属酸化物を用い、負極活物質として、人造黒鉛、天然黒鉛などの層状化合物を用いたリチウムイオン電池に代表される非水電解液二次電池の開発が行われている。
非水電解液二次電池を高容量化するために、例えば、限られた容積の電池容器内に正極活物質および負極活物質をできるだけ多く充填する必要がある。また、正極活物質および負極活物質を高容量化する必要がある。
【0003】
電池容器内への活物質の充填量が増大すると、正極および負極における空隙率が減少し、注入可能な電解液の量が減少する。したがって、活物質上での電荷移動抵抗が大きくなるとともに、電極内および電極間においてイオンが拡散し難くなる。電荷移動抵抗および拡散抵抗を小さくするための手法としては、一般的に、低粘度の電解液を用いることが考えられる。
例えば、特許文献1では、非水電解液二次電池の低温特性を改良するために、エチレンカーボネート(以下、ECと略記)とプロピレンカーボネート(以下、PCと略記)とジメチルカーボネート(以下、DMCと略記)とを含む非水電解液を用いることが提案されている。さらに、特許文献1では、10〜20体積%のEC、5〜40体積%のPC、50〜85体積%のDMCを含む非水電解液が提案されているが、ECをPCより多く含む電解液は記載されていない。
【0004】
特許文献2では、ECとPCとDMCとを含む非水電解液を用いることが提案されている。これにより、非水電解液二次電池において、高電位での電解液の分解が抑制され、ガス発生や内部抵抗の上昇が抑制される。特許文献3では、ECとPCとDMCとを含む非水電解液と、負極活物質として粉砕された黒鉛とを用いることが提案されている。
【特許文献1】特許第3201414号明細書
【特許文献2】特許第3157209号明細書
【特許文献3】特開平7−235327号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1〜3記載の非水電解液を用いた二次電池について充放電サイクルを行うと、DMCが負極活物質上で分解し、電池内で次第にガスが発生し、これが電極間に溜まる。このため、電流が電極の一部に集中して流れ、充電時に負極上に比表面積の大きいリチウム金属が析出しやすくなり、ガス発生量が増大し、サイクル寿命特性が低下するという問題がある。
電池内でのガス発生を抑制する手法としては、DMCの量を減らす、DMCに代わる低粘度溶媒を使用する、またはDMCの分解を阻止する添加剤を非水電解液に加えるなどの手法が考えられる。しかし、小さい電荷移動抵抗や高いイオン拡散性は、いずれの手法でも高い比率のDMCを使用する非水電解液には及ばない。
【0006】
そこで、本発明では、上記従来の問題を解決するため、活物質との界面における電荷移動抵抗が小さく、正負極内および正負極間において電池反応に寄与するイオンが容易に拡散(移動)可能な非水電解液を提供することを目的とする。また、充放電時のガス発生が抑制され、サイクル寿命特性に優れた非水電解液二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の非水電解液は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、およびジメチルカーボネートの混合溶媒と、前記混合溶媒に溶解する支持塩とを含み、前記混合溶媒中における前記ジメチルカーボネートのモル比率が75%以上であり、前記プロピレンカーボネートに対する前記エチレンカーボネートのモル比が2以上であることを特徴とする。
【0008】
前記プロピレンカーボネートに対する前記エチレンカーボネートのモル比が3以上であるのが好ましい。
前記支持塩はリチウム塩であり、前記エチレンカーボネートおよび前記プロピレンカーボネートの合計に対する前記リチウム塩のモル比が1/4以上であるのが好ましい。
【0009】
また、本発明は、正極活物質を含む正極、負極活物質を含む負極、および上記の非水電解液を備えた二次電池に関する。
前記負極活物質は、リチウムと合金化可能な元素および酸素を含むのが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、非水電解液と活物質との間における電荷移動抵抗を低減することができる。また、正負極内および正負極間において電池反応に寄与するイオンが拡散し易くなる。また、充放電時においてガス発生が抑制されるため、正負極の反応面積の減少による負荷特性の低下が緩和され、サイクル寿命特性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の非水電解液は、EC、PC、およびDMCの混合溶媒および前記混合溶媒に溶解する支持塩を含み、前記混合溶媒中におけるDMCのモル比率が75%以上であり、PCに対するECのモル比が2以上である点に特徴を有する。
上記非水電解液を用いた場合、電解液と活物質との間における電荷移動抵抗が小さくなる。正負極内および正負極間において電池反応(充放電)に寄与するイオンが拡散し易くなる。
また、ECやPCは負極活物質上で還元され、良好なイオン伝導性皮膜を形成し、負極のサイクル寿命特性が向上するため、混合溶媒中におけるDMCのモル比率は95%以下であるのが好ましい。
【0012】
PCに対するECのモル比は、3以上5以下であることが好ましい。ECとPCは、DMCに比べて、リチウムイオンに配位し易く、リチウム塩を解離し易い。正極活物質や負極活物質の表面ではECやPCに配位したリチウムイオンが吸着していると考えられる。PC分子よりもサイズが小さいEC分子では外部ヘルムホルツ層が薄い点、およびEC分子は易運動性を有する点から、一つのリチウムイオンに配位するECの数が多くなると、非水電解質と活物質との間における電荷移動抵抗が小さくなる。リチウムイオンに配位しているPCはDMCと相溶すると考えられ、低粘度のDMCとの相互作用によって、ECやPCが配位したリチウムイオンは容易に拡散する。また、ECはリチウム塩を解離するだけでなく、負極上で安定な皮膜を形成し、DMCの分解を抑制する。PCの量がECの量より多くなると、DMCの分解を抑制することが困難になる。
【0013】
ECとPCの合計に対する非水電解液中に支持塩として含まれるリチウム塩のモル比は、1/4以上であることが好ましい。1つのリチウムイオンに配位するEC分子とPC分子の数の合計は、4であると推定される。ECとPCの合計に対する非水電解液中に含まれるリチウムのモル比が1/4未満であると、リチウムイオンに配位していないEC分子やPC分子が非水電解液中に存在する。リチウムイオンに配位していないEC分子やPC分子は、リチウムイオンに配位しているEC分子やPC分子よりも、負極において還元により分解されやすいため、分解による生成物が負極表面上に堆積し、電池の内部抵抗が増大し、負荷特性が低下する場合がある。
また、非水電解液中のリチウム塩が多くなりすぎると、ECやPCによるリチウム塩の解離効果が低下するため、ECとPCの合計に対するリチウム塩のモル比は、2以下であるのがより好ましい。
【0014】
電極上で皮膜を形成し、電池特性を安定化させる目的で、上記非水電解液に、さらに添加剤を加えてもよい。
C=O結合以外は飽和結合を有する環状カーボネートとしては、フルオロエチレンカーボネートなどが挙げられる。C=C不飽和結合を有する環状カーボネートとしては、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、ジビニルエチレンカーボネート、フェニルエチレンカーボネート、ジフェニルエチレンカーボネートなどが挙げられる。
C=O結合以外は飽和結合を有する環状エステルとしては、γ−ブチロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトンなどが挙げられる。C=C不飽和結合を有する環状エステルとしては、フラノン、3−メチル−2(5H)−フラノン、α−アンゲリカラクトンなどが挙げられる。
【0015】
C=C不飽和結合を有する鎖状カーボネートとしては、メチルビニルカーボネート、エチルビニルカーボネート、ジビニルカーボネート、アリルメチルカーボネート、アリルエチルカーボネート、ジアリルカーボネート、アリルフェニルカーボネート、ジフェニルカーボネートなどが挙げられる。
C=O結合以外は飽和結合を有する鎖状カーボネートであるジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネートなどの混合は、電解液の粘度を下げるためには有効である。しかし、炭素数が2以上のアルキル基は負極と反応して還元活性な負極面をできやすくし、結果としてメタンガスなどを発生することになるので、混合は避けた方がよい。
【0016】
上記混合溶媒に溶解するリチウム塩としては、LiPF6、LiBF4、LiClO4、リチウム・ビス[オキサレート(2−)]ボレート(以下、LiBOBと略記)、リチウム・ビス[トリフルオロメタンスルホニル]イミド、リチウム・ビス[ペンタフルオロエタンスルホニル]イミド、リチウム・[トリフルオロメタンスルホニル][ノナフルオロブタンスルホニル]イミド、リチウム・シクロヘキサフルオロプロパン−1,3−ビス[スルホニル]イミド、リチウム・トリフルオロメチルトリフルオロボレート、リチウム・ペンタフルオロエチルトリフルオロボレート、リチウム・ヘプタフルオロプロピルトリフルオロボレート、リチウム・トリス[ペンタフルオロエチル]トリフルオロホスフェートなどを用いることができる。LiBOBは、添加量が微量でも、負極上で皮膜を形成する添加剤としての効果を発揮することができる点で好ましい。
【0017】
負極活物質としては、リチウム金属のほか、カーボンブラック、難黒鉛化カーボン、表面が非晶質の炭素質で被覆された人造および天然黒鉛、カーボンナノチューブ、フラーレンなどの炭素材料、ポリアセチレンやポリパラフェニレンなどの導電性高分子、リチウムと合金化できる金属(例えば、Ag、Au、Zn、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、Bi)、SiやSnなどを含む酸化物、リチウム含有遷移金属酸化物(例えば、Li4Ti512)などが用いられる。リチウムと反応して、金属と酸化リチウムに分解するCoO、NiO、MnO、Fe23などの金属酸化物が用いられる。
【0018】
DMCの還元分解が抑制され、メタンガスなどの発生が抑制されるため、これらの中でも、充電でリチウムイオンが挿入し、放電でリチウムイオンが放出される負極活物質が好ましい。例えば、SiやSnを含む酸化物のように、リチウムと合金化する元素と酸素とを含む材料を負極活物質に用いることが好ましい。SiやSnを含む酸化物としては、例えば、SiOx(0.1≦x≦1.2)やSnOy(1.0≦y≦2.0)が好ましい。初回の充電時に、負極活物質表面上にリチウム酸化物の皮膜が形成されるため、DMCの還元による分解がさらに抑制される。また、SiやSnの酸化物を用いた場合、良好な負荷特性が得られる。リチウム酸化物の皮膜は、ECやPCの皮膜とともに、溶媒と負極活物質との直接的な接触の機会を低減すると推察される。
【0019】
正極活物質としては、例えば、リチウム遷移金属酸化物、炭素材料、導電性高分子が用いられる。リチウム遷移金属酸化物としては、例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、リン酸鉄リチウムが挙げられる。炭素材料としては、例えば、活性炭、カーボンブラック、難黒鉛化カーボン、人造および天然黒鉛、カーボンナノチューブ、フラーレンが挙げられる。導電性高分子としては、例えば、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェンが挙げられる。
【0020】
ここで、遷移金属酸化物、炭素材料、および導電性高分子の充放電時の反応について説明する。遷移金属酸化物では、充電時に遷移金属酸化物中のリチウムイオンが電解液中に放出され、放電時に電解液中のリチウムイオンが遷移金属酸化物に挿入される。これに対して、炭素材料や導電性高分子では、充電時に電解液中のアニオンが炭素材料や導電性高分子に挿入され、放電時に炭素材料や導電性高分子中にあるアニオンが電解液に放出される。いずれの材料の場合でも、負極は、充電で電解液中のリチウムイオンが電子を受け取り、放電で電子が取り出されてリチウムイオンを電解液に放出する。
【実施例】
【0021】
以下に、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
《実施例1》
(i)非水電解液の調製
LiPF6、EC、PC、およびDMCを、LiPF6:EC:PC:DMC=10:15:5:80のモル比で混合し、非水電解液を得た。
【0022】
(ii)正極シートの作製
正極活物質であるコバルト酸リチウム(LiCoO2)粉末93重量部と、導電剤であるアセチレンブラック3重量部と、結着剤であるポリフッ化ビニリデン樹脂4重量部とを混合した。この混合物を脱水N−メチル−2−ピロリドンに分散させてスラリー状の正極合剤を調製した。この正極合剤をアルミニウム箔からなる正極集電体上に塗布し、乾燥後、圧延して、正極シートを得た。
【0023】
(iii)負極シートの作製
負極活物質である難黒鉛化カーボン粉末97重量部と、導電剤である気相成長炭素繊維1重量部と、結着剤であるポリフッ化ビニリデン樹脂2重量部とを混合した。この混合物を脱水N−メチル−2−ピロリドンに分散させてスラリー状の負極合剤を調製した。この負極合剤を銅箔からなる負極集電体上に塗布し、乾燥後、圧延して、負極シートを得た。
【0024】
(iv)電池の組み立て
正極シートおよび負極シートを35mm×35mmの大きさに切りだし、それぞれリード付きアルミニウム板および銅板に超音波溶接した。ポリエチレン製のセパレータを、正極シートと負極シートとの間に配置し、正極シートと負極シートが対向するように、アルミニウム板および銅板をテープで固定して一体化した。次に、この一体化物を両端が開口した筒状のアルミニウムラミネートフィルムに納め、正極リードおよび負極リードの一部を、この筒状フィルムの一方の開口部から露出させた状態で、筒状フィルムの一方の開口部を溶着した。そして、他方の開口部から上記で調製した電解液を滴下した。
【0025】
上記で作製した電池を、20℃において、7mAの定電流で1時間充電した。その後、10mmHgで5秒間脱気し、筒状フィルムの他方の開口部を溶着した。このようにして、一体化物を袋状のアルミニウムラミネートフィルム内に密封した。
そして、20℃において、充放電電流:7mA、上限電圧:4.2V、および下限電圧:3.0Vの条件で予備充放電を5サイクル行った。さらに、電池を、電池の閉路電圧が4.2Vに達するまで25mAで定電流充電し、その後、4.2Vで定電圧充電した。定電流充電および定電圧充電の充電時間の合計は2時間とした。この後、この電池を7mAで定電流放電(終止電圧:3.0V)した。その結果、正極活物質量1gあたりの電池容量として118mAh/gが得られた。
【0026】
(v)電池における極間抵抗および電荷移動抵抗の測定
上記で作製した電池を、再び、20℃において、電池の閉路電圧が4.2Vに達するまで25mAで定電流充電し、その後、4.2Vで定電圧充電した。定電流充電および定電圧充電の充電時間の合計は2時間とした。この充電状態の電池について、20℃において、100kHz〜10mHzの範囲で、交流インピーダンス測定を行い、Cole−Coleプロットを作成した。その結果、10kHzにおいて複素平面での虚部がゼロになり、実部の値から正極と負極との間の抵抗は0.4Ωであることがわかった。また、Cole−Coleプロットにおいて10kHz〜1Hzの範囲に現れる略半円の形状の大きさから、電荷移動抵抗は1.24Ωであることがわかった。なお、上記の充電状態の電池をインピーダンス測定することにより得られる電荷移動抵抗は、主に負極活物質と電解液との界面における電荷移動抵抗であるが、正極活物質と電解液との界面における電荷移動抵抗も含まれる。
【0027】
《実施例2》
電解液中の各成分のモル比を表1に示す値に変えた以外、実施例1と同様の方法により非水電解液二次電池を作製した。そして、実施例1と同様の方法により、交流インピーダンス測定を行い、電荷移動抵抗を求めた。その測定結果を表1に示す。
【0028】
《比較例2》
電解液中の各成分のモル比を表1に示す値に変えた以外、実施例1と同様の方法により非水電解液二次電池を作製した。そして、実施例1と同様の方法により、交流インピーダンス測定を行い、電荷移動抵抗を求めた。その測定結果を表1に示す。
【0029】
【表1】

【0030】
DMCのモル比率が75%以上であってPCに対するECのモル比が2以上である電解液を用いた実施例2−1〜2−9の電池では、電荷移動抵抗が小さいことがわかった。PCに対するECのモル比が3〜5の範囲内である実施例2−1〜2−3、実施例2−5〜2−7、および実施例2−9の電池では、電荷移動抵抗が大幅に減少した。電解液中のPC量が少ない実施例2−1の電池では、電荷移動抵抗が若干上昇した。これは、ECに配位されたリチウムイオンとDMCの相溶性が低下し、活物質表面においてイオンの動き難くなったためであると考えられる。
また、ECとPCとDMCの合計(混合溶媒)に対するDMCのモル比率が75%未満である比較例2−5の電池では、電荷移動抵抗が大きいことがわかった。
【0031】
《実施例3》
電解液中の各成分のモル比を表2に示す値に変えた以外、実施例1と同様の方法により非水電解液二次電池を作製した。そして、20℃において、充放電を50サイクル行った。充放電条件を以下に示す。
充電条件:電池の閉路電圧が4.2Vに達するまで53mAで定電流充電し、その後、4.2Vで定電圧充電した。定電流充電および定電圧充電の充電時間の合計は40分とした。
放電条件:電池の閉路電圧が3.0Vに達するまで53mAで定電流放電した。
50サイクル後、電池内で発生したガスを採取し、その量を測定した。その結果を表2に示す。
【0032】
《比較例3》
電解液中の各成分のモル比を表2に示す値に変えた以外、実施例3と同様の方法により非水電解液二次電池を作製し、充放電サイクル後のガス発生量を測定した。その結果を表2に示す。
【0033】
【表2】

【0034】
実施例3の電池では、ガス発生量が少なかった。また、電池内のガスを採取した後、電池を分解して負極表面を観察した。その結果、比較例3の電池では、いずれも、負極表面にリチウム金属が析出していた。一方、実施例3の電池では、負極表面にリチウム金属の析出は見られなかった。このことから、実施例3の非水電解液の電池は負荷特性に優れていることがわかった。
また、実施例3および比較例3の電池について、5サイクル目の放電容量に対する50サイクル目の放電容量の比率(=50サイクル目の放電容量/5サイクル目の放電容量×100)を調べたところ、実施例3の電池では約96%であるのに対し、比較例3の電池では約40%であった。比較例3の電池では、負極表面にリチウム金属が析出し不活性となったために、電池容量が低下したと考えられる。
【0035】
《実施例4》
電解液中の各成分のモル比を表3に示す値に変えた以外、実施例1と同様の方法により非水電解液二次電池を作製した。そして、実施例1と同様の方法により、交流インピーダンス測定を行い、電荷移動抵抗を求めた。その結果を表3に示す。
【0036】
【表3】

【0037】
実施例4−1〜4−8より、ECとPCの合計に対するリチウム塩(LiPF6)のモル比が1/4以上であれば、電荷移動抵抗が小さいことがわかった。また、実施例4−9〜4−11より、ECとPCの合計に対するリチウム塩のモル比が2以下であれば、電荷移動抵抗が小さいことがわかった。
【0038】
《実施例5》
表4に示す負極活物質を用いて以下のように負極を作製した。
負極活物質がLi、Al、Sn、またはPbの場合、これらの負極活物質を箔状に圧延し、それぞれリード付きのステンレス鋼製の網に圧着させることにより、リード付き負極を得た。
負極活物質がSiOまたはSnO2の場合、スパッタ法により銅箔上に負極活物質の薄膜を形成し、銅箔シートの一片をリード付きの銅板に超音波溶接して、リード付き負極を得た。SiOまたはSnO2を使用する場合については、あらかじめ、実施例1と同じ非水電解液中で、リチウム金属を対極にして、SiO+2Li→Si+Li2O、および、SnO2+4Li→Sn+2Li2Oの化学量論比となるようにカソード電流を通電した。
【0039】
上記負極を用いた以外、実施例1と同様の方法により電池を作製した。そして、20℃において、各電池を、充放電を50サイクル行った。充放電条件を以下に示す。
充電条件:電池の閉路電圧が上限電圧に達するまで35mAで定電流充電し、その後、上限電圧で定電圧充電した。定電流充電および定電圧充電の充電時間の合計は60分とした。上限電圧は、負極活物質がLiの場合4.3Vとし、負極活物質がLi以外の場合4.0Vとした。
放電条件:電池の閉路電圧が3.0Vに達するまで53mAで定電流放電した。
50サイクル後、電池内で発生したガスを採取し、その量を測定した。その結果を表4に示す。
【0040】
【表4】

【0041】
負極活物質にAl、Sn、Pbを使用した実施例5−2〜5−4の電池のガス発生量は、負極活物質にLiを使用した実施例5−1の電池の場合の約2/3であった。SiOやSnO2を使用した実施例5−5および5−6の電池のガス発生量は、実施例5−1の電池の場合の1/3〜1/4であった。このように、実施例5−2〜5−6の電池においてガス発生量が大幅に減少するのは、Al、Sn、およびPbの場合では、活物質表面に生成したLi2Oを含む若干の酸化物がDMCの分解を抑制する皮膜として働くためであると考えられ、SiOやSnO2の場合では、カソード電流を通電したときに生じたLi2OがDMCの分解を抑制するためであると考えられる。また、生成したLi2Oは負荷特性を低下させる阻害要因となり得ると考えられるが、特に、SiOやSiO2の薄膜を用いた場合では、35mAの大電流で充放電が可能であり、ガス発生量が少なく、良好な負荷特性が得られることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の非水電解液二次電池は、移動体通信機器および携帯機器等の電子機器の電源として好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、およびジメチルカーボネートの混合溶媒と、前記混合溶媒に溶解する支持塩とを含み、
前記混合溶媒中における前記ジメチルカーボネートのモル比率が75%以上であり、
前記プロピレンカーボネートに対する前記エチレンカーボネートのモル比が2以上であることを特徴とする非水電解液。
【請求項2】
前記プロピレンカーボネートに対する前記エチレンカーボネートのモル比が3以上である請求項1記載の非水電解液。
【請求項3】
前記支持塩はリチウム塩であり、
前記エチレンカーボネートおよび前記プロピレンカーボネートの合計に対する前記リチウム塩のモル比が1/4以上である請求項1または2記載の非水電解液。
【請求項4】
正極活物質を含む正極、負極活物質を含む負極、および非水電解液を備えた二次電池であって、
前記非水電解液が請求項1〜3のいずれかに記載の非水電解液であることを特徴とする非水電解液二次電池。
【請求項5】
前記負極活物質は、リチウムイオンを挿入・放出可能である請求項4記載の非水電解液二次電池。
【請求項6】
前記負極活物質は、リチウムと合金化可能な元素および酸素を含む請求項4記載の非水電解液二次電池。

【公開番号】特開2009−43624(P2009−43624A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−208498(P2007−208498)
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】