非水電解質および非水電解質電池
【課題】充放電性能が向上し、特にハイレート(高率放電)性能に優れる非水電解質電池を製造できる非水電解質、およびそれを用いた非水電解質電池を提供する。
【解決手段】リチウム塩が有機溶媒に溶解してなる非水電解質が、下記一般式(1)
(式中、R1、R2およびR3は、同一または異なって、炭素数1から4の直鎖または分岐のアルキル基を示し、R1とR2とが環を形成してもよい。R4は、メチル基またはエチル基を示す。mは、1または2を示す。X−は、含フッ素アニオンを示す。)で表される第4級アンモニウム塩を0.05mol/L以上0.5mol/L以下含有していることを特徴とする非水電解質。
【解決手段】リチウム塩が有機溶媒に溶解してなる非水電解質が、下記一般式(1)
(式中、R1、R2およびR3は、同一または異なって、炭素数1から4の直鎖または分岐のアルキル基を示し、R1とR2とが環を形成してもよい。R4は、メチル基またはエチル基を示す。mは、1または2を示す。X−は、含フッ素アニオンを示す。)で表される第4級アンモニウム塩を0.05mol/L以上0.5mol/L以下含有していることを特徴とする非水電解質。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質および非水電解質電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非水電解質電池、特にリチウム二次電池は、携帯電話、PHS(簡易携帯電話)、小型コンピューター等の携帯機器類用電源、電力貯蔵用電源、電気自動車用電源として注目されている。リチウム二次電池は、一般に、正極活物質を主要構成成分とする正極と、負極材料を主要構成成分とする負極と、非水電解質とから構成され、前記正極および負極を少なくとも有する発電要素を外装体で覆って作製される。リチウム二次電池を構成する正極活物質としては、リチウム含有遷移金属酸化物が、負極材料としては、炭素質材料が主に用いられている。中でも、グラファイトは電位特性が平坦であるため、高エネルギー密度の電池とするために好適な負極材料である。非水電解質としては、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)等の電解質がエチレンカーボネートを主構成成分とする有機溶媒に溶解されたものが広く知られている。
【0003】
ここで、エチレンカーボネートは融点が高く、低温で電解質が凝固し易いため、低温特性等の諸特性を向上させるため、誘電率が高く、より融点の低い有機溶媒(プロピレンカーボネート等)を用いる方法が知られている。しかしながら、特に負極にグラファイトを用いた場合には、プロピレンカーボネート等の有機溶媒がグラファイト負極上で分解するため、充放電を高い効率で行うことができない、という問題があった。
【0004】
この問題を解決する手段として、非水電解質中にビニレンカーボネート等を添加して有機溶媒の上記分解を抑制する技術が開示されている(特許文献1)。すなわち、電池組み立て後最初に行う充電時にビニレンカーボネート等をグラファイト負極上で選択的に分解させることにより、グラファイト負極表面にリチウムイオン透過性の保護被膜が形成され、プロピレンカーボネート等の有機溶媒の分解が抑制されるとされている。しかしながら、この方法によっても、初充電時における有機溶媒の分解を抑制する効果は充分ではなかった。さらに、ビニレンカーボネートは耐酸化性に劣り、正極側で分解するため、多量に添加すると電池性能を低下させるという問題があった。
【0005】
これに対して、特許文献2では、リチウムイオン電池において非水電解質中に第4級アンモニウム塩を少量添加することにより、初期充放電効率や高率放電特性が向上することが提案されている。しかしながら、特許文献2の技術においても、非水電解質電池のハイレート性能をより向上させるための工夫の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−67266号公報
【特許文献2】再公表特許WO2004/051784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記現状に鑑み、充放電性能が向上し、特にハイレート(高率放電)性能に優れる非水電解質電池を製造できる非水電解質、およびそれを用いた非水電解質電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意研究を重ねた結果、第4級アンモニウム塩の添加により非水電解質電池において非水電解質を構成する有機溶媒の分解を抑制でき、電池の充放電性能を向上させることができるが、第4級アンモニウム塩の中でもエーテル側鎖を有するものを使用すると、該非水電解質を用いて製造される非水電解質電池の充放電効率やハイレート(高率放電)特性等の充放電性能がより向上することを見出した。また、エーテル側鎖を有する第4級アンモニウム塩の添加量を非水電解質中に0.05mol/L以上0.5mol/L以下とすると、特にハイレート(高率放電)性能に優れる非水電解質電池を製造できることを見出した。
本発明者らは、上記知見に基づきさらに研究を重ね、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は以下の発明に関する。
項1. リチウム塩が有機溶媒に溶解してなる非水電解質が、下記一般式(1)
【0010】
【化1】
【0011】
(式中、R1、R2およびR3は、同一または異なって、炭素数1から4の直鎖または分岐のアルキル基を示し、R1とR2とが環を形成してもよい。R4は、メチル基またはエチル基を示す。mは、1または2を示す。X−は、含フッ素アニオンを示す。)で表される第4級アンモニウム塩を0.05mol/L以上0.5mol/L以下含有していることを特徴とする非水電解質。
項2. 第4級アンモニウム塩が、下記一般式(2)
【0012】
【化2】
【0013】
(式中、R3は、炭素1から4の直鎖または分岐のアルキル基を示し、R4は、メチル基またはエチル基を示す。mは、1または2を示す。X−は、含フッ素アニオンを示す。)で表される化合物であることを特徴とする項1に記載の非水電解質。
項3. 項1または2に記載の非水電解質を用いた非水電解質電池。
項4. 項1または2に記載の非水電解質を用いたリチウムイオン電池。
項5. 項1または2に記載の非水電解質を用いたリチウム金属電池。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、充放電性能、特にハイレート性能に優れた非水電解質電池を製造できる非水電解質、およびそれを用いた非水電解質電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の一実施の形態に係るラミネート型のリチウムイオン電池の構成を模式的に表す図である。
【図2】図2は、図1に示す巻回電極体(20)のII−II線に沿った断面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の非水電解質は、リチウム塩が有機溶媒に溶解してなる非水電解質であり、下記一般式(1)
【0017】
【化3】
【0018】
(式中、R1、R2およびR3は、同一または異なって、炭素数1から4の直鎖または分岐のアルキル基を示し、R1とR2とが環を形成してもよい。R4は、メチル基またはエチル基を示す。mは、1または2を示す。X−は、含フッ素アニオンを示す。)で表される第4級アンモニウム塩を約0.05mol/L以上0.5mol/L以下含有している(本発明において、Lはリットルの略称である)。
【0019】
一般式(1)で表わされる第4級アンモニウム塩において、R1およびR2は、同一または異なって、炭素数1から3の直鎖または分岐のアルキル基であることが好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基等がより好ましい。R1とR2とが環を形成している場合、環は、5〜6員環が好ましく、中でも、5員環が好ましい。
R3は、炭素数1から4の直鎖または分岐のアルキル基であることが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基等がより好ましい。
【0020】
本発明における第4級アンモニウム塩として、下記一般式(2)
【0021】
【化4】
【0022】
(式中、R3は、炭素1から4の直鎖または分岐のアルキル基を示し、R4は、メチル基またはエチル基を示す。mは、1または2を示す。X−は、含フッ素アニオンを示す。)で表される化合物等が好ましい。一般式(2)で表わされる化合物は、一般式(1)で表わされる化合物においてR1とR2とが環を形成している第4級アンモニウム塩である。
【0023】
本発明において、非水電解質に添加する第4級アンモニウム塩は、上記一般式(1)および一般式(2)で表されるように、第4級アンモニウムカチオンと、含フッ素アニオンとから構成されるものである。第4級アンモニウムカチオンの具体例としては、一般式(1)における第4級アンモニウムカチオンとして、例えば、N,N,N−トリメチル−N−メトキシメチルアンモニウムカチオン、N−エチル−N,N−ジメチル−N−メトキシメチルアンモニウムカチオン、N,N−ジエチル−N−メチル−N−メトキシメチルアンモニウムカチオン、N,N,N−トリエチル−N−メトキシメチルアンモニウムカチオン、N−プロピル−N,N−ジメチル−N−メトキシメチルアンモニウムカチオン、N−プロピル−N,N−ジエチル−N−メトキシメチルアンモニウムカチオン、N−ブチル−N,N−ジメチル−N−メトキシメチルアンモニウムカチオン、N−ブチル−N,N−ジエチル−N−メトキシメチルアンモニウムカチオン、N,N,N−トリメチル−N−メトキシエチルアンモニウムカチオン、N−エチル−N,N−ジメチル−N−メトキシエチルアンモニウムカチオン、N,N−ジエチル−N−メチル−N−メトキシエチルアンモニウムカチオン、N,N,N−トリエチル−N−メトキシエチルアンモニウムカチオン、N−プロピル−N,N−ジメチル−N−メトキシエチルアンモニウムカチオン、N−プロピル−N−ジエチル−N−メトキシエチルアンモニウムカチオン、N−ブチル−N,N−ジメチル−N−メトキシエチルアンモニウムカチオン、N−ブチル−N,N−ジエチル−N−メトキシエチルアンモニウムカチオン等が挙げられる。
【0024】
また、一般式(1)においてR1とR2とが環を形成している化合物における第4級アンモニウムカチオンとして、一般式(2)で表わされる第4級アンモニウム塩における第4級アンモニウムカチオンが好適である。一般式(2)で表わされる第4級アンモニウム塩における第4級アンモニウムカチオンとして、例えば、N−メチル−N−メトキシメチルピロリジニウムカチオン、N−エチル−N−メトキシメチルピロリジニウムカチオン、N−エトキシメチル−N−メチルピロリジニウムカチオン、N−エチル−N−エトキシメチルピロリジニウムカチオン、N−エチル−N−メトキシエチルピロリジニウムカチオン、N−メチル−N−メトキシエチルピロリジニウムカチオン、N−エトキシエチル−N−メチルピロリジニウムカチオン、N−エチル−N−エトキシエチルピロリジニウムカチオン等が挙げられる。
【0025】
第4級アンモニウム塩における第4級アンモニウムカチオンとして、好ましくは、一般式(2)で表わされる第4級アンモニウム塩における第4級アンモニウムカチオンである。中でも、好ましくは、N−メチル−N−メトキシメチルピロリジニウムカチオン、N−エチル−N−メトキシメチルピロリジニウムカチオン、N−エトキシメチル−N−メチルピロリジニウムカチオン、N−エチル−N−エトキシメチルピロリジニウムカチオン、N−メチル−N−メトキシエチルピロリジニウムカチオン、N−エチル−N−メトキシエチルピロリジニウムカチオンなどが挙げられる。さらに好ましくは、N−メチル−N−メトキシメチルピロリジニウムカチオン、N−エチル−N−メトキシメチルピロリジニウムカチオン、N−エトキシメチル−N−メチルピロリジニウムカチオン、N−メチル−N−メトキシエチルピロリジニウムカチオンなどが挙げられる。
【0026】
含フッ素アニオンの具体例としては、例えばCF3CO2−、CF3SO3−、N(FSO2)2−、N(CF3SO2)2−、N(CF3CF2SO2)2−、N(FSO2)(CF3SO2)−、N(CF3SO2)(CF3CF2SO2)−、C(CF3SO2)3−、N(CF3SO2)(CF3CO)−、CF3BF3−、C2F5BF3−、(CF3)2BF2−、(CF3)(C2F5)BF2−、(C2F5)2BF2−、(CF3)3BF−、BF4−、PF6−などが挙げられる。中でも好ましくは、N(FSO2)2−、N(CF3SO2)2−、N(CF3CF2SO2)2−、BF4−である。更に好ましくは、N(FSO2)2−、N(CF3SO2)2−、BF4−である。
【0027】
本発明において、上記第4級アンモニウム塩は、1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を混合して用いてもよい。
本発明において、一般式(1)で表わされる第4級アンモニウム塩は、非水電解質中に約0.05mol/L以上0.5mol/L以下となるように添加される。上記範囲であると、本発明の効果を十分に奏することができ、電池の内部抵抗の増加を抑制して高率放電特性を十分に高いものとすることができる。一般式(1)で表わされる第4級アンモニウム塩は、より好ましくは、非水電解質中に0.05mol/L以上0.3mol/L以下であり、更に好ましくは、非水電解質中に約0.1mol/L以上0.3mol/L以下である。
【0028】
本発明の非水電解質は、上記第4級アンモニウム塩と共に、有機溶媒と、この有機溶媒に溶解されたリチウム塩とを含有している。本発明の非水電解質は、電解液等として好適に使用されるものである。本発明の好ましい態様の1つは、液状の非水電解質(以下、非水電解液ともいう)である。
【0029】
有機溶媒としては、例えば、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン、炭酸ビニレン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチル、炭酸ジエチル、アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、N,N−ジメチルフォルムアミド、N−メチルピロリジノン、N−メチルオキサゾリジノン、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、ニトロメタン、ニトロエタン、スルホラン、ジメチルスルフォキシド、燐酸トリメチルなどが挙げられる。有機溶媒には、1種を単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。中でも、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチル、炭酸ジエチル、炭酸ブチレン、γ−ブチロラクトン等が好ましい。
【0030】
リチウム塩としては、例えば、LiAsF6、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiN(FSO2)2、LiN(CF3SO2)2、LiN(CF3CF2SO2)2、LiB(C6H5)4、LiCH3SO3、LiCF3SO3、LiC(CF3SO2)3、LiAlCl4、Li2SiF6、LiCl、LiBrなどのリチウム塩が挙げられる。リチウム塩は、いずれか1種または2種以上を混合して用いてもよい。中でも、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiN(FSO2)2、LiN(CF3SO2)2、LiN(CF3CF2SO2)2等が好ましい。
【0031】
本発明の非水電解質におけるリチウム塩の含有量は、非水電解質に対して約0.5mol/L以上3mol/L以下の範囲内であることが好ましい。この範囲内であれば、高いイオン伝導度を維持でき、十分な電池特性が得られる。より好ましくは、リチウム塩の含有量は、非水電解質に対して約0.5mol/L以上1.5mol/L以下である。上記リチウム塩の添加量は、通常、液状の非水電解質(非水電解液)に対する量である。
【0032】
本発明の非水電解質は、これを保持する高分子化合物を含んでもよく、いわゆるゲル状のものによって構成されていても構わない。また、高分子化合物の原料である重合性化合物および重合開始剤等を含んでいてもよい。高分子化合物を含む非水電解質は、通常、第4級アンモニウム塩、有機溶媒及び該有機溶媒に溶解されたリチウム塩を含有する非水電解液に高分子化合物を添加して製造される。
【0033】
高分子化合物としては、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデンの共重合体(例えば、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、ポリスチレン、ポリカーボネート等が挙げられる。特に、電気化学的安定性の点からは、高い電池特性を得ることができるため、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンの共重合体またはポリエチレンオキサイドの構造を持つ高分子化合物を用いることが好ましい。中でも、ポリフッ化ビニリデン、またはフッ化ビニリデンの共重合体が好ましく、その共重合体モノマーとしては、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレンなどが、高い電池特性を得ることができるので好ましく、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体が特に好ましい。
非水電解液に対する高分子化合物の添加量は両者の相溶性によっても異なるが、通常、上記非水電解液の約5質量%〜50質量%に相当する高分子化合物を添加することが好ましい。
【0034】
高分子化合物の原料である重合性化合物としては、重合反応により上述した高分子化合物を形成できる化合物であればよく、特に限定されない。重合開始剤は、通常使用されるものを用いることができる。
【0035】
本発明の非水電解質の製造方法は特に限定されない。例えば、液状の非水電解質(非水電解液)は、通常、有機溶媒にリチウム塩を溶解させ、これに添加剤として一般式(1)で表わされる第4級アンモニウム塩を混合することにより製造される。所望により、非水電解質に高分子化合物を含有させたり、高分子化合物の原料である重合性化合物および重合開始剤等を混合したりしてもよい。
【0036】
本発明の非水電解質は、非水電解質電池用の電解液または電解質として好適に使用されるものである。上記非水電解質を用いた非水電解質電池も、本発明の1つである。
本発明の非水電解質電池は、正極および負極と共に上記非水電解質を備えるものであり、該非水電解質を適用して組み立てたられたものである。
【0037】
本発明における非水電解質電池として、リチウムイオン電池、およびリチウム金属電池(一次電池および二次電池)が好適である。すなわち上記非水電解質は、リチウムイオン電池、およびリチウム金属電池の電解液または電解質組成物として好適なものである。上記非水電解質を用いたリチウムイオン電池、および上記非水電解質を用いたリチウム金属電池も、本発明に包含される。
【0038】
(リチウムイオン電池の作製)
本発明におけるリチウムイオン電池は、負極の容量が電極反応物質であるリチウムの吸蔵および放出による容量成分により表わされる二次電池であり、通常、フィルム状の外装部材の内部に正極および負極と共に上記非水電解質を備えたものである。本発明のリチウムイオン電池として、例えば、正極リードおよび負極リードが取り付けられた巻回電極体をフィルム状の外装部材の内部に収納した構成を有しているものが挙げられる。
【0039】
図1は、本発明の一実施の形態に係るラミネート型のリチウムイオン電池の構成を模式的に表す図である。
正極リード(11)および負極リード(12)は、それぞれ例えば短冊状であり、外装部材(31)の内部から外部に向かい例えば同一方向にそれぞれ導出されている。正極リード(11)は、例えばアルミニウム(Al)などの金属材料により構成されており、負極リード(12)は、例えばニッケル(Ni)などの金属材料により構成されている。
【0040】
外装部材(31)は、例えば、ナイロンフィルム、アルミニウム箔およびポリプロピレンフィルムをこの順に張り合わせた矩形状のラミネートフィルムにより構成されていることが好ましい。外装部材(31)は、例えば、ポリプロピレンフィルム側と巻回電極体(20)とが対向するように配設されており、通常各外縁部が融着または接着剤により互いに密着されている。
【0041】
外装部材(31)と正極リード(11)および負極リード(12)との間には、正極リードおよび負極リードと、外装部材の内側との密着性を向上させ、外気の侵入を防止するための密着フィルム(32)が挿入されていることが好ましい。密着フィルム(32)は、通常、正極リード(11)および負極リード(12)に対して密着性を有する材料により構成され、例えば、正極リードおよび負極リードが上述した金属材料により構成される場合には、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリエチレンあるいは変性ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂により構成されることが好ましい。
【0042】
図1に示した巻回電極体(20)のII−II線に沿った断面構造の一例を、図2に示す。
巻回電極体(20)は、正極(21)と負極(22)とをセパレータ(23)を介して積層し、巻回したものであり、最外周部は、通常保護テープ(24)により保護されている。
【0043】
正極(21)は、例えば、正極集電体(21A)と、この正極集電体(21A)の両面あるいは片面に設けられた正極活物質層(21B)とを有していることが好ましい。正極集電体(21A)には、例えば長手方向における一方の端部に正極活物質層(21B)が設けらず露出している部分があり、通常、この露出部分に正極リード(11)が取り付けられている。
正極集電体(21A)は、例えば、アルミニウムなどの金属材料により構成されていることが好ましい。
【0044】
正極活物質層(21B)は、例えば、正極活物質として、電極反応物質であるリチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料の1種または2種以上を含んで構成されていることが好ましい。リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、例えば、リチウム酸化物、リチウムリン酸化物、リチウム硫化物、リチウムを含む層間化合物などのリチウム含有化合物が好適であり、2種以上を混合して用いてもよい。特に、エネルギー密度を高くするには、一般式LixMIO2またはLiyMIIPO4で表されるリチウム複合酸化物またはリチウムリン酸化物が好ましい。なお、式中、MIおよびMIIは1種類以上の遷移金属を表し、例えば、コバルト(Co)、ニッケル、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、アルミニウム、バナジウム(V)、チタン(Ti)およびジルコニウム(Zr)のうちの少なくとも1種であることが好ましい。xおよびyの値は電池の充放電状態によって異なり、通常、0.05≦x≦1.1、0.05≦y≦1.1の範囲内の値である。LixMIO2で表されるリチウム複合酸化物の具体例としては、LiCoO2、LiNiO2、LiNi0.5Co0.5O2、LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2、またはスピネル型結晶構造を有するLiMn2O4などが挙げられる。また、LiyMIIPO4で表されるリチウムリン酸化物の具体例としては、LiFePO4、LiFe0.5Mn0.5PO4などが挙げられる。
【0045】
正極活物質層(21B)は、また、例えば導電剤を含んでおり、必要に応じて更に結着剤を含んでいてもよい。導電剤としては、例えば、黒鉛、カーボンブラック、ケッチェンブラックなどの炭素材料が挙げられ、1種または2種以上が混合して用いられる。また、炭素材料の他にも、導電性を有する材料であれば金属材料または導電性高分子材料などを用いてもよい。結着剤としては、例えば、スチレンブタジエン系ゴム、フッ素系ゴム、エチレンプロピレンジエンゴムなどの合成ゴム;ポリフッ化ビニリデンなどの高分子材料が好適であり、1種または2種以上が混合して用いられる。
【0046】
負極(22)は、例えば、正極(21)と同様に、負極集電体(22A)と、この負極集電体(22A)の両面あるいは片面に設けられた負極活物質層(22B)とを有していることが好ましい。負極集電体(22A)には、例えば長手方向における一方の端部に負極活物質層(22B)が設けられず露出している部分があり、通常、この露出部分に負極リード(12)が取り付けられている。負極集電体(22A)は、例えば、銅(Cu)などの金属材料により構成されていることが好ましい。
【0047】
負極活物質層(22B)は、例えば、負極活物質として、電極反応物質であるリチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料のいずれか1種または2種以上を含んで構成されていることが好ましく、必要に応じて、例えば正極活物質層(21B)と同様の結着剤を含んでいてもよい。
【0048】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、黒鉛、難黒鉛化性炭素、易黒鉛化性炭素などの炭素材料が好適である。これら炭素材料は、充放電時に生じる結晶構造の変化が非常に少なく、高い充放電容量を得ることができると共に、良好な充放電サイクル特性を得ることができるので好ましい。特に黒鉛は、質量あたりの容量が大きく、高いエネルギー密度を得ることができるので好ましい。
【0049】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、また、リチウムを吸蔵および放出することが可能であり、金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を構成元素として含む材料も挙げられる。このような材料を用いれば、高いエネルギー密度を得ることができる。この負極材料は、金属元素または半金属元素の単体、合金および化合物のいずれであってもよく、またこれらの1種または2種以上の相を少なくとも一部に有するようなものでもあってもよい。なお、本発明において、合金には2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とを含むものも含める。また、非金属元素を含んでいてもよい。その組織には固溶体、共晶(共融混合物)、金属間化合物またはそれらのうちの2種以上が共存するものがある。
【0050】
この負極材料を構成する金属元素または半金属元素としては、例えば、リチウムと合金を形成可能なマグネシウム(Mg)、ホウ素(B)、アルミニウム、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム、イットリウム(Y)、パラジウム(Pd)または白金(Pt)が挙げられる。これらは結晶質のものでもアモルファスのものでもよい。
【0051】
中でも、この負極材料としては、短周期型周期表における4B族の金属元素または半金属元素を構成元素として含むものが好ましく、特に好ましくはケイ素およびスズの少なくとも一方を構成元素として含むものである。ケイ素およびスズは、リチウムを吸蔵および放出する能力が大きく、高いエネルギー密度を得ることができるため好ましい。
【0052】
スズの合金としては、例えば、スズ以外の第2の構成元素として、ケイ素、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモン(Sb)およびクロム(Cr)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。ケイ素の合金としては、例えば、ケイ素以外の第2の構成元素として、スズ、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモンおよびクロムからなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。
【0053】
スズの化合物またはケイ素の化合物としては、例えば、酸素(O)または炭素(C)を含むものが挙げられ、スズまたはケイ素に加えて、上述した第2の構成元素を含んでいてもよい。
【0054】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、更に、他の金属化合物または高分子材料も挙げられる。他の金属化合物としては、酸化鉄、酸化ルテニウムまたは酸化モリブデンなどの酸化物、またはLi3Nなどが挙げられる。高分子材料としてはポリアセチレンなどが挙げられる。
【0055】
また、負極(22)には、前述したようなリチウムを吸蔵および放出することが可能な材料の他に、金属リチウムを用いてもよい。具体的には、例えば金属リチウムを集電体に圧着して負極としてもよい。
【0056】
セパレータ(23)は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの合成樹脂製の多孔質膜、またはセラミック製の多孔質膜により構成されており、これら2種以上の多孔質膜を積層した構造とされていてもよい。中でも、ポリオレフィン製の多孔質膜はショート防止効果に優れ、かつシャットダウン効果による電池の安全性向上を図ることができるので好ましい。特に、ポリエチレンは、約100℃以上160℃以下の範囲内においてシャットダウン効果を得ることができ、かつ電気化学的安定性にも優れているので、セパレータを構成する材料として好ましい。また、ポリプロピレンも好ましく、他にも化学的安定性を備えた樹脂であればポリエチレンまたはポリプロピレンと共重合させたり、またはブレンド化することで用いることができる。
【0057】
本発明におけるリチウムイオン電池(二次電池)は、例えば、次のようにして製造することができる。
まず、例えば、正極活物質と結着剤と導電剤とを混合して正極合剤を調製し、N−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させることにより正極合剤スラリーを作製する。次いで、この正極合剤スラリーを正極集電体(21A)の両面または片面に塗布し乾燥させ、圧縮成型して正極活物質層(21B)を形成し正極(21)を作製する。続いて、正極集電体(21A)に正極リード(11)を、例えば超音波溶接またはスポット溶接により接合する。
【0058】
また、例えば、負極活物質と結着剤とを混合して負極合剤を調製し、N−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させることにより負極合剤スラリーを作製する。次いで、この負極合剤スラリーを負極集電体(22A)の両面または片面に塗布し乾燥させ、圧縮成型して負極活物質層(22B)を形成し、負極(22)を作製する。続いて、負極集電体(22A)に負極リード(12)を、例えば超音波溶接またはスポット溶接により接合する。
【0059】
次いで、正極(21)と負極(22)とをセパレータ(23)を介して積層して巻回し、最外周部に保護テープ(24)を接着して巻回電極体(20)を形成する。
次いで、この巻回電極体(20)を外装部材(31)で挟み、一辺を除く外周縁部を熱融着して袋状とし、外装部材(31)の内部に収納する。続いて、上記非水電解質を電解液として外装部材(31)の内部に注入する。
非水電解質を注入したのち、外装部材(31)の開口部を真空雰囲気下で熱融着などにより密閉させ電池を組み立てる。その際、正極リード(11)および負極リード(12)と外装部材(31)との間には密着フィルム(32)を挿入することが好ましい。このようにして、フィルム状の外装部材の内部に正極および負極と共に上記非水電解質を備えたリチウムイオン電池が製造される。
【0060】
(リチウム金属一次、二次電池の作製)
また、本発明の非水電解質は前述のようなリチウムイオン二次電池の他に、リチウム金属電池に用いることもできる。リチウム金属電池は、例えば次のような方法によって作製することができる。
【0061】
正極には、通常、二酸化マンガンを活物質とする正極を使用することができる。具体的には、活物質である二酸化マンガンと、導電助剤と、バインダーとを含有する正極合剤層を、正極集電体の片面または両面に形成した構成の正極等を使用することができる。導電助剤としては、例えば、カーボンブラック、鱗片状黒鉛、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、繊維状炭素などが用いられ、バインダーとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、カルボキシメチルセルロース、スチレンブタジエンラバーなどが用いられる。
【0062】
二酸化マンガン正極の作製にあたっては、例えば、二酸化マンガンと導電助剤とバインダーとを混合して調製した正極合剤を水または有機溶剤に分散させてペースト状やスラリー状の正極合剤含有組成物を調製し、その正極合剤含有組成物を集電体に塗布し、乾燥した後、加圧成形する方法が好適に採用できる。
【0063】
正極集電体には、ステンレス鋼製のものを使用することが好ましい。具体的には、例えば、SUS316、SUS430、SUS444などのステンレス鋼製の金属箔、エキスパンドメタル、平織り金網などが使用できる。正極集電体の厚みは、例えば、約5〜200μmであることが好ましい。
【0064】
負極には、リチウム(金属リチウム)、またはリチウム−アルミニウム、リチウム−鉛、リチウム−ビスマス、リチウム−インジウム、リチウム−ガリウム、リチウム−インジウム−ガリウムなどのリチウム合金で構成されるものを用いることが好ましい。具体的には、これらのリチウムまたはリチウム合金を、集電体に圧着して負極としてもよい。リチウム合金の場合、リチウムの含有量が約90質量%以上であることが好ましい。また、リチウムとリチウム合金とを併用して負極を構成してもよい。負極に係るリチウムやリチウム合金を含有する負極剤層の厚みは、例えば、約20〜200μmであることが好ましい。
【0065】
負極集電体としては、銅製または銅合金製の金属箔、金属網などが好適に使用できる。負極集電体の厚みは、例えば、約5〜50μmであることが好ましい。
【0066】
本発明のリチウム金属電池におけるセパレータとしては、従来公知のリチウム金属電池で使用されているセパレータ、すなわち、微孔性樹脂フィルムからなるセパレータ、樹脂不織布からなるセパレータなどが使用できる。その材質としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィンの他、耐熱用として、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)などのフッ素樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などが挙げられる。また、前記材質の微孔性フィルムと不織布とを複数積層するか、または微孔性フィルム同士や不織布同士を複数積層することによって構成される複層構造のセパレータを用いることにより、高温環境下で使用する場合の信頼性を高めることもできる。
【0067】
セパレータの厚みは、例えば、約10〜500μmであることが好ましい。また、セパレータの空孔率は、好ましくは約20%以上90%以下である。
【0068】
電池の組み立てはリチウムイオン電池と同様にして行うことができる。通常、正極と負極とをセパレータを介して積層して巻回し、最外周部に保護テープを接着して巻回電極体を形成する。次いで、この巻回電極体を外装部材で挟み、一辺を除く外周縁部を熱融着して袋状とし、外装部材の内部に収納する。続いて、上記非水電解質を電解液として外装部材の内部に注入する。上記非水電解質を注入したのち、外装部材の開口部を真空雰囲気下で熱融着して密閉し電池を組み立てる。このように、外装部材の内部に正極および負極と共に上記非水電解質を備えるリチウム金属電池が製造される。
【0069】
上記ではラミネートタイプの電池形態について説明しているが、本発明のリチウムイオン電池およびリチウム金属電池の形態はそれに限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、後述する実施例では、正極および負極を巻回する場合について説明したが、正極と負極とを複数積層するようにしてもよく、また、折り畳むようにしてもよい。更に、本発明は、円筒型、角型、コイン型、ボタン型などの形状を有する電池にも適用することができる。
【0070】
また、上記では、非水電解質をそのまま電解液として電池に用いる場合について説明したが、液状の非水電解質を上述した高分子化合物などの保持体に保持させて、いわゆるゲル状とするようにしてもよい。
【0071】
非水電解質電池の製造において上記非水電解質を適用する方法および手順は、上述したものに限定されるものではない。上述したように正極、負極およびセパレータを有する発電要素をまず組立て、非水電解質を注液してもよく、また、正極または負極に非水電解質を含浸(場合によっては含浸後ゲル化)後、発電要素を組み立ててもよい。注液法としては、常圧で注液してもよく、真空含浸方法、加圧含浸方法を使用してもよい。
【0072】
ゲル状の非水電解質を電池に使用する場合は、例えば、上述したように正極、負極およびセパレータを有する発電要素をまず組立て、非水電解質を外装部材の内部に注液した後に高分子化合物を添加してゲル状としてもよい。また、高分子化合物の原料である重合性の化合物と重合開始剤とを非水電解質に添加し、外装部材内部に非水電解質を注液後に該化合物を重合させて非水電解質をゲル状としてもよい。また、非水電解質と高分子化合物を混合したものを電極に塗布した後に、発電要素を組み立ててもよい。
【実施例】
【0073】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。
【0074】
負極の容量が、リチウムの吸蔵および放出による容量成分により表される電池、いわゆるリチウムイオン二次電池を作製した。
[第一実施例]
まず、正極活物質であるコバルト酸リチウム(LiCoO2)と、導電剤であるグラファイトと、結着剤であるポリフッ化ビニリデンとを混合して正極合剤を調製し、この正極合剤を溶剤であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させて正極合剤スラリーとしたのち、これをアルミニウム箔よりなる正極集電体(21A)に均一に塗布して乾燥させ、ロールプレス機で圧縮成型して正極活物質層(21B)を形成し正極(21)を作製した。そののち、正極集電体(21A)に正極リード(11)を取り付けた。
【0075】
また、負極活物質である人造黒鉛と、結着剤であるポリフッ化ビニリデンとを混合して負極合剤を調製し、この負極合剤を溶剤であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させて負極合剤スラリーとしたのち、これを銅箔よりなる負極集電体(22A)に均一に塗布して乾燥させ、ロールプレス機で圧縮成型して負極活物質層(22B)を形成し負極(22)を作製した。なお、負極の容量がリチウムの吸蔵および放出による容量成分により表されるように、正極と負極との容量比を設計した。そののち、負極集電体(22A)に負極リード(12)を取り付けた。
【0076】
続いて、溶媒である炭酸エチレンと炭酸プロピレンとを、炭酸エチレン:炭酸プロピレン=5:5の質量比で混合した溶媒に、電解質塩であるLiPF6を溶解し、更に、添加剤を混合して電解液として用いる非水電解質を作製した。その際、LiPF6の濃度は、1mol/Lとなるようにした。添加剤には、エーテル側鎖を有する4級アンモニウム塩を用い、非水電解質における含有量が0.05〜0.5mol/Lとなるようにした。実施例および比較例で添加剤として使用した化合物およびその添加量を、表1および表2にそれぞれに示す。
【0077】
そののち、正極(21)と負極(22)とを、厚み20μmのポリエチレンフィルムからなるセパレータ(23)を介して積層し、巻回し、最外周部に保護テープ(24)を貼り付けて巻回電極体(20)を作製した。
得られた巻回電極体(20)をラミネートフィルムよりなる外装部材(31)に挟み込み、非水電解質を注液後、減圧封止することにより、リチウムイオン二次電池を作製した。
【0078】
得られた二次電池について、高率放電特性を次のようにして調べた。まず、23℃で0.1Cの定電流定電圧充電を上限4.2Vまで総充電時間を12時間として行い、続いて23℃で0.2Cの定電流放電を終止電圧3.0Vまで行うことにより初回の充放電を行った。更に、23℃で1Cの定電流定電圧充電を上限4.2Vまで総充電時間を3時間として行い、続いて23℃で1Cの定電流放電を終止電圧3.0Vまで行った。更に、23℃で1Cの定電流定電圧充電を上限4.2Vまで総充電時間を3時間として行い、続いて23℃で2Cの定電流放電を終止電圧3.0Vまで行った。
なお、0.1C、0.2C、1C、2Cは、理論容量を、それぞれ10時間、5時間、1時間、0.5時間で放電しきる電流値である。
【0079】
高率放電特性は、0.2Cの放電のエネルギー(0.2C平均放電電圧×0.2C放電容量)に対する2Cの放電のエネルギー(2C平均放電電圧×2C放電容量)の維持率、すなわち(2C放電エネルギー/0.2C放電エネルギー)×100(%)から求めたものを2cとして表1〜2にそれぞれ示し、0.2Cの放電のエネルギー(0.2C平均放電電圧×0.2C放電容量)に対する1Cの放電のエネルギー(1C平均放電電圧×1C放電容量)の維持率、すなわち(1C放電エネルギー/0.2C放電エネルギー)×100(%)から求めたものを1Cとして表1〜2にそれぞれ示す。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
表1および表2中の記載は、以下のとおりである。
Py1,1O1:N−メチル−N−メトキシメチルピロリジニウムカチオン
Py1,1O2:N−メチル−N−メトキシエチルピロリジニウムカチオン
DEME:N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウム
Py13:N−メチル−N−プロピルピロリジニウムカチオン
Py14:N−メチル−N−ブチルピロリジニウムカチオン
BF4:テトラフルオロボレート
TFSI:ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド
【0083】
[第二実施例]
まず、正極活物質であるコバルト酸リチウム(LiCoO2)と、導電剤であるグラファイトと、結着剤であるポリフッ化ビニリデンとを混合して正極合剤を調製し、この正極合剤を溶剤であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させて正極合剤スラリーとしたのち、これをアルミニウム箔よりなる正極集電体(21A)に均一に塗布して乾燥させ、ロールプレス機で圧縮成型して正極活物質層(21B)を形成し正極(21)を作製した。そののち、正極集電体(21A)に正極リード(11)を取り付けた。
【0084】
また、負極活物質であるチタン酸リチウム(Li4Ti5O12)と、結着剤であるポリフッ化ビニリデンとを混合して負極合剤を調製し、この負極合剤を溶剤であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させて負極合剤スラリーとしたのち、これを銅箔よりなる負極集電体(22A)に均一に塗布して乾燥させ、ロールプレス機で圧縮成型して負極活物質層(22B)を形成し負極(22)を作製した。なお、負極の容量がリチウムの吸蔵および放出による容量成分により表されるように、正極と負極との容量比を設計した。そののち、負極集電体(22A)に負極リード(12)を取り付けた。
【0085】
続いて、溶媒である炭酸エチレンと炭酸プロピレンとを、炭酸エチレン:炭酸プロピレン=5:5の質量比で混合した溶媒に、電解質塩であるLiPF6を溶解し、更に、添加剤を混合して電解液として用いる非水電解質を作製した。その際、LiPF6の濃度は、1mol/Lとなるようにした。添加剤には、エーテル側鎖を有する4級アンモニウム塩を用い、非水電解質における含有量が0.05〜0.5mol/Lとなるようにした。実施例および比較例で添加剤として使用した化合物およびその添加量を、表3および表4にそれぞれに示す。
【0086】
そののち、正極(21)と負極(22)とを、厚み20μmのポリエチレンフィルムからなるセパレータ(23)を介して積層し、巻回し、最外周部に保護テープ(24)を貼り付けて巻回電極体(20)を作製した。
得られた巻回電極体(20)をラミネートフィルムよりなる外装部材(31)に挟み込み、非水電解質を注液後、減圧封止することにより、リチウムイオン二次電池を作製した。
【0087】
得られた二次電池について、高率放電特性を次のようにして調べた。まず、23℃で0.1Cの定電流定電圧充電を上限2.8Vまで総充電時間を12時間として行い、続いて23℃で0.2Cの定電流放電を終止電圧1.3Vまで行うことにより初回の充放電を行った。更に、23℃で1Cの定電流定電圧充電を上限2.8Vまで総充電時間を3時間として行い、続いて23℃で1Cの定電流放電を終止電圧1.3Vまで行った。更に、23℃で1Cの定電流定電圧充電を上限2.8Vまで総充電時間を3時間として行い、続いて23℃で2Cの定電流放電を終止電圧1.3Vまで行った。
なお、0.1C、0.2C、1C、2Cは、理論容量を、それぞれ10時間、5時間、1時間、0.5時間で放電しきる電流値である。
【0088】
高率放電特性は、0.2Cの放電のエネルギー(0.2C平均放電電圧×0.2C放電容量)に対する2Cの放電のエネルギー(2C平均放電電圧×2C放電容量)の維持率、すなわち(2C放電エネルギー/0.2C放電エネルギー)×100(%)から求めたものを2cとして表3〜4にそれぞれ示し、0.2Cの放電のエネルギー(0.2C平均放電電圧×0.2C放電容量)に対する1Cの放電のエネルギー(1C平均放電電圧×1C放電容量)の維持率、すなわち(1C放電エネルギー/0.2C放電エネルギー)×100(%)から求めたものを1Cとして表3〜4にそれぞれ示す。
【0089】
【表3】
【0090】
【表4】
【0091】
表3および表4中の記載は、以下のとおりである。
Py1,1O1:N−メチル−N−メトキシメチルピロリジニウムカチオン
Py1,1O2:N−メチル−N−メトキシエチルピロリジニウムカチオン
DEME:N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウム
Py13:N−メチル−N−プロピルピロリジニウムカチオン
Py14:N−メチル−N−ブチルピロリジニウムカチオン
BF4:テトラフルオロボレート
TFSI:ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド
【0092】
表1および表3から分かるように、添加剤としてエーテル側鎖を有する4級アンモニウム塩を添加した実施例1〜4および実施例8〜11では、4級アンモニウム塩を添加していない、またはエーテル側鎖を持たない4級アンモニウム塩を添加した比較例1〜3および比較例6〜8よりも高率放電特性が向上した。
【0093】
すなわち、非水電解質にエーテル側鎖を有する第4級アンモニウム塩のうちの少なくとも1種を含有させれば、高率放電特性などの電池特性を向上させることができることが分かった。特性向上の原因について詳細は明らかではないが、Li+イオン伝導が可能なエーテル側鎖を有するアンモニウムカチオンが電極表面に吸着することにより電極/非水電解質界面の電荷移動抵抗が減少するといった理由により充放電性能が向上したものと思われる。
【0094】
また、表2および表4から分かるように、エーテル側鎖を有する第4級アンモニウム塩の添加量が大きくなるに伴い、高率放電特性は向上し、極大値を示したのち低下した。すなわち、エーテル側鎖を有する第4級アンモニウム塩の添加量は、非水電解質中において0.05mol/L以上0.5mol/L以上以下の範囲内が好ましいことが分かった。これは、前記アンモニウム塩の添加量は少なすぎても効果を十分に発揮することができず、また、多過ぎる場合は、電極表面に過剰な被膜を形成すると共に、アンモニウムカチオンなどのLi+イオン以外のカチオン比率が大きくなることにより、Li+イオンの輸率が低下するためと思われる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の非水電解質は、リチウムイオン電池、リチウム金属電池等の非水電解質電池の電解質として有用である。
【符号の説明】
【0096】
11 正極リード
12 負極リード
20 巻回電極体
21 正極
21A 正極集電体
21B 正極活物質層
22 負極
22A 負極集電体
22B 負極活物質層
23 セパレータ
24 保護テープ
31 外装部材
32 密着フィルム
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質および非水電解質電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非水電解質電池、特にリチウム二次電池は、携帯電話、PHS(簡易携帯電話)、小型コンピューター等の携帯機器類用電源、電力貯蔵用電源、電気自動車用電源として注目されている。リチウム二次電池は、一般に、正極活物質を主要構成成分とする正極と、負極材料を主要構成成分とする負極と、非水電解質とから構成され、前記正極および負極を少なくとも有する発電要素を外装体で覆って作製される。リチウム二次電池を構成する正極活物質としては、リチウム含有遷移金属酸化物が、負極材料としては、炭素質材料が主に用いられている。中でも、グラファイトは電位特性が平坦であるため、高エネルギー密度の電池とするために好適な負極材料である。非水電解質としては、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)等の電解質がエチレンカーボネートを主構成成分とする有機溶媒に溶解されたものが広く知られている。
【0003】
ここで、エチレンカーボネートは融点が高く、低温で電解質が凝固し易いため、低温特性等の諸特性を向上させるため、誘電率が高く、より融点の低い有機溶媒(プロピレンカーボネート等)を用いる方法が知られている。しかしながら、特に負極にグラファイトを用いた場合には、プロピレンカーボネート等の有機溶媒がグラファイト負極上で分解するため、充放電を高い効率で行うことができない、という問題があった。
【0004】
この問題を解決する手段として、非水電解質中にビニレンカーボネート等を添加して有機溶媒の上記分解を抑制する技術が開示されている(特許文献1)。すなわち、電池組み立て後最初に行う充電時にビニレンカーボネート等をグラファイト負極上で選択的に分解させることにより、グラファイト負極表面にリチウムイオン透過性の保護被膜が形成され、プロピレンカーボネート等の有機溶媒の分解が抑制されるとされている。しかしながら、この方法によっても、初充電時における有機溶媒の分解を抑制する効果は充分ではなかった。さらに、ビニレンカーボネートは耐酸化性に劣り、正極側で分解するため、多量に添加すると電池性能を低下させるという問題があった。
【0005】
これに対して、特許文献2では、リチウムイオン電池において非水電解質中に第4級アンモニウム塩を少量添加することにより、初期充放電効率や高率放電特性が向上することが提案されている。しかしながら、特許文献2の技術においても、非水電解質電池のハイレート性能をより向上させるための工夫の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−67266号公報
【特許文献2】再公表特許WO2004/051784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記現状に鑑み、充放電性能が向上し、特にハイレート(高率放電)性能に優れる非水電解質電池を製造できる非水電解質、およびそれを用いた非水電解質電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意研究を重ねた結果、第4級アンモニウム塩の添加により非水電解質電池において非水電解質を構成する有機溶媒の分解を抑制でき、電池の充放電性能を向上させることができるが、第4級アンモニウム塩の中でもエーテル側鎖を有するものを使用すると、該非水電解質を用いて製造される非水電解質電池の充放電効率やハイレート(高率放電)特性等の充放電性能がより向上することを見出した。また、エーテル側鎖を有する第4級アンモニウム塩の添加量を非水電解質中に0.05mol/L以上0.5mol/L以下とすると、特にハイレート(高率放電)性能に優れる非水電解質電池を製造できることを見出した。
本発明者らは、上記知見に基づきさらに研究を重ね、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は以下の発明に関する。
項1. リチウム塩が有機溶媒に溶解してなる非水電解質が、下記一般式(1)
【0010】
【化1】
【0011】
(式中、R1、R2およびR3は、同一または異なって、炭素数1から4の直鎖または分岐のアルキル基を示し、R1とR2とが環を形成してもよい。R4は、メチル基またはエチル基を示す。mは、1または2を示す。X−は、含フッ素アニオンを示す。)で表される第4級アンモニウム塩を0.05mol/L以上0.5mol/L以下含有していることを特徴とする非水電解質。
項2. 第4級アンモニウム塩が、下記一般式(2)
【0012】
【化2】
【0013】
(式中、R3は、炭素1から4の直鎖または分岐のアルキル基を示し、R4は、メチル基またはエチル基を示す。mは、1または2を示す。X−は、含フッ素アニオンを示す。)で表される化合物であることを特徴とする項1に記載の非水電解質。
項3. 項1または2に記載の非水電解質を用いた非水電解質電池。
項4. 項1または2に記載の非水電解質を用いたリチウムイオン電池。
項5. 項1または2に記載の非水電解質を用いたリチウム金属電池。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、充放電性能、特にハイレート性能に優れた非水電解質電池を製造できる非水電解質、およびそれを用いた非水電解質電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の一実施の形態に係るラミネート型のリチウムイオン電池の構成を模式的に表す図である。
【図2】図2は、図1に示す巻回電極体(20)のII−II線に沿った断面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の非水電解質は、リチウム塩が有機溶媒に溶解してなる非水電解質であり、下記一般式(1)
【0017】
【化3】
【0018】
(式中、R1、R2およびR3は、同一または異なって、炭素数1から4の直鎖または分岐のアルキル基を示し、R1とR2とが環を形成してもよい。R4は、メチル基またはエチル基を示す。mは、1または2を示す。X−は、含フッ素アニオンを示す。)で表される第4級アンモニウム塩を約0.05mol/L以上0.5mol/L以下含有している(本発明において、Lはリットルの略称である)。
【0019】
一般式(1)で表わされる第4級アンモニウム塩において、R1およびR2は、同一または異なって、炭素数1から3の直鎖または分岐のアルキル基であることが好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基等がより好ましい。R1とR2とが環を形成している場合、環は、5〜6員環が好ましく、中でも、5員環が好ましい。
R3は、炭素数1から4の直鎖または分岐のアルキル基であることが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基等がより好ましい。
【0020】
本発明における第4級アンモニウム塩として、下記一般式(2)
【0021】
【化4】
【0022】
(式中、R3は、炭素1から4の直鎖または分岐のアルキル基を示し、R4は、メチル基またはエチル基を示す。mは、1または2を示す。X−は、含フッ素アニオンを示す。)で表される化合物等が好ましい。一般式(2)で表わされる化合物は、一般式(1)で表わされる化合物においてR1とR2とが環を形成している第4級アンモニウム塩である。
【0023】
本発明において、非水電解質に添加する第4級アンモニウム塩は、上記一般式(1)および一般式(2)で表されるように、第4級アンモニウムカチオンと、含フッ素アニオンとから構成されるものである。第4級アンモニウムカチオンの具体例としては、一般式(1)における第4級アンモニウムカチオンとして、例えば、N,N,N−トリメチル−N−メトキシメチルアンモニウムカチオン、N−エチル−N,N−ジメチル−N−メトキシメチルアンモニウムカチオン、N,N−ジエチル−N−メチル−N−メトキシメチルアンモニウムカチオン、N,N,N−トリエチル−N−メトキシメチルアンモニウムカチオン、N−プロピル−N,N−ジメチル−N−メトキシメチルアンモニウムカチオン、N−プロピル−N,N−ジエチル−N−メトキシメチルアンモニウムカチオン、N−ブチル−N,N−ジメチル−N−メトキシメチルアンモニウムカチオン、N−ブチル−N,N−ジエチル−N−メトキシメチルアンモニウムカチオン、N,N,N−トリメチル−N−メトキシエチルアンモニウムカチオン、N−エチル−N,N−ジメチル−N−メトキシエチルアンモニウムカチオン、N,N−ジエチル−N−メチル−N−メトキシエチルアンモニウムカチオン、N,N,N−トリエチル−N−メトキシエチルアンモニウムカチオン、N−プロピル−N,N−ジメチル−N−メトキシエチルアンモニウムカチオン、N−プロピル−N−ジエチル−N−メトキシエチルアンモニウムカチオン、N−ブチル−N,N−ジメチル−N−メトキシエチルアンモニウムカチオン、N−ブチル−N,N−ジエチル−N−メトキシエチルアンモニウムカチオン等が挙げられる。
【0024】
また、一般式(1)においてR1とR2とが環を形成している化合物における第4級アンモニウムカチオンとして、一般式(2)で表わされる第4級アンモニウム塩における第4級アンモニウムカチオンが好適である。一般式(2)で表わされる第4級アンモニウム塩における第4級アンモニウムカチオンとして、例えば、N−メチル−N−メトキシメチルピロリジニウムカチオン、N−エチル−N−メトキシメチルピロリジニウムカチオン、N−エトキシメチル−N−メチルピロリジニウムカチオン、N−エチル−N−エトキシメチルピロリジニウムカチオン、N−エチル−N−メトキシエチルピロリジニウムカチオン、N−メチル−N−メトキシエチルピロリジニウムカチオン、N−エトキシエチル−N−メチルピロリジニウムカチオン、N−エチル−N−エトキシエチルピロリジニウムカチオン等が挙げられる。
【0025】
第4級アンモニウム塩における第4級アンモニウムカチオンとして、好ましくは、一般式(2)で表わされる第4級アンモニウム塩における第4級アンモニウムカチオンである。中でも、好ましくは、N−メチル−N−メトキシメチルピロリジニウムカチオン、N−エチル−N−メトキシメチルピロリジニウムカチオン、N−エトキシメチル−N−メチルピロリジニウムカチオン、N−エチル−N−エトキシメチルピロリジニウムカチオン、N−メチル−N−メトキシエチルピロリジニウムカチオン、N−エチル−N−メトキシエチルピロリジニウムカチオンなどが挙げられる。さらに好ましくは、N−メチル−N−メトキシメチルピロリジニウムカチオン、N−エチル−N−メトキシメチルピロリジニウムカチオン、N−エトキシメチル−N−メチルピロリジニウムカチオン、N−メチル−N−メトキシエチルピロリジニウムカチオンなどが挙げられる。
【0026】
含フッ素アニオンの具体例としては、例えばCF3CO2−、CF3SO3−、N(FSO2)2−、N(CF3SO2)2−、N(CF3CF2SO2)2−、N(FSO2)(CF3SO2)−、N(CF3SO2)(CF3CF2SO2)−、C(CF3SO2)3−、N(CF3SO2)(CF3CO)−、CF3BF3−、C2F5BF3−、(CF3)2BF2−、(CF3)(C2F5)BF2−、(C2F5)2BF2−、(CF3)3BF−、BF4−、PF6−などが挙げられる。中でも好ましくは、N(FSO2)2−、N(CF3SO2)2−、N(CF3CF2SO2)2−、BF4−である。更に好ましくは、N(FSO2)2−、N(CF3SO2)2−、BF4−である。
【0027】
本発明において、上記第4級アンモニウム塩は、1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を混合して用いてもよい。
本発明において、一般式(1)で表わされる第4級アンモニウム塩は、非水電解質中に約0.05mol/L以上0.5mol/L以下となるように添加される。上記範囲であると、本発明の効果を十分に奏することができ、電池の内部抵抗の増加を抑制して高率放電特性を十分に高いものとすることができる。一般式(1)で表わされる第4級アンモニウム塩は、より好ましくは、非水電解質中に0.05mol/L以上0.3mol/L以下であり、更に好ましくは、非水電解質中に約0.1mol/L以上0.3mol/L以下である。
【0028】
本発明の非水電解質は、上記第4級アンモニウム塩と共に、有機溶媒と、この有機溶媒に溶解されたリチウム塩とを含有している。本発明の非水電解質は、電解液等として好適に使用されるものである。本発明の好ましい態様の1つは、液状の非水電解質(以下、非水電解液ともいう)である。
【0029】
有機溶媒としては、例えば、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン、炭酸ビニレン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチル、炭酸ジエチル、アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、N,N−ジメチルフォルムアミド、N−メチルピロリジノン、N−メチルオキサゾリジノン、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、ニトロメタン、ニトロエタン、スルホラン、ジメチルスルフォキシド、燐酸トリメチルなどが挙げられる。有機溶媒には、1種を単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。中でも、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチル、炭酸ジエチル、炭酸ブチレン、γ−ブチロラクトン等が好ましい。
【0030】
リチウム塩としては、例えば、LiAsF6、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiN(FSO2)2、LiN(CF3SO2)2、LiN(CF3CF2SO2)2、LiB(C6H5)4、LiCH3SO3、LiCF3SO3、LiC(CF3SO2)3、LiAlCl4、Li2SiF6、LiCl、LiBrなどのリチウム塩が挙げられる。リチウム塩は、いずれか1種または2種以上を混合して用いてもよい。中でも、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiN(FSO2)2、LiN(CF3SO2)2、LiN(CF3CF2SO2)2等が好ましい。
【0031】
本発明の非水電解質におけるリチウム塩の含有量は、非水電解質に対して約0.5mol/L以上3mol/L以下の範囲内であることが好ましい。この範囲内であれば、高いイオン伝導度を維持でき、十分な電池特性が得られる。より好ましくは、リチウム塩の含有量は、非水電解質に対して約0.5mol/L以上1.5mol/L以下である。上記リチウム塩の添加量は、通常、液状の非水電解質(非水電解液)に対する量である。
【0032】
本発明の非水電解質は、これを保持する高分子化合物を含んでもよく、いわゆるゲル状のものによって構成されていても構わない。また、高分子化合物の原料である重合性化合物および重合開始剤等を含んでいてもよい。高分子化合物を含む非水電解質は、通常、第4級アンモニウム塩、有機溶媒及び該有機溶媒に溶解されたリチウム塩を含有する非水電解液に高分子化合物を添加して製造される。
【0033】
高分子化合物としては、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデンの共重合体(例えば、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、ポリスチレン、ポリカーボネート等が挙げられる。特に、電気化学的安定性の点からは、高い電池特性を得ることができるため、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンの共重合体またはポリエチレンオキサイドの構造を持つ高分子化合物を用いることが好ましい。中でも、ポリフッ化ビニリデン、またはフッ化ビニリデンの共重合体が好ましく、その共重合体モノマーとしては、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレンなどが、高い電池特性を得ることができるので好ましく、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体が特に好ましい。
非水電解液に対する高分子化合物の添加量は両者の相溶性によっても異なるが、通常、上記非水電解液の約5質量%〜50質量%に相当する高分子化合物を添加することが好ましい。
【0034】
高分子化合物の原料である重合性化合物としては、重合反応により上述した高分子化合物を形成できる化合物であればよく、特に限定されない。重合開始剤は、通常使用されるものを用いることができる。
【0035】
本発明の非水電解質の製造方法は特に限定されない。例えば、液状の非水電解質(非水電解液)は、通常、有機溶媒にリチウム塩を溶解させ、これに添加剤として一般式(1)で表わされる第4級アンモニウム塩を混合することにより製造される。所望により、非水電解質に高分子化合物を含有させたり、高分子化合物の原料である重合性化合物および重合開始剤等を混合したりしてもよい。
【0036】
本発明の非水電解質は、非水電解質電池用の電解液または電解質として好適に使用されるものである。上記非水電解質を用いた非水電解質電池も、本発明の1つである。
本発明の非水電解質電池は、正極および負極と共に上記非水電解質を備えるものであり、該非水電解質を適用して組み立てたられたものである。
【0037】
本発明における非水電解質電池として、リチウムイオン電池、およびリチウム金属電池(一次電池および二次電池)が好適である。すなわち上記非水電解質は、リチウムイオン電池、およびリチウム金属電池の電解液または電解質組成物として好適なものである。上記非水電解質を用いたリチウムイオン電池、および上記非水電解質を用いたリチウム金属電池も、本発明に包含される。
【0038】
(リチウムイオン電池の作製)
本発明におけるリチウムイオン電池は、負極の容量が電極反応物質であるリチウムの吸蔵および放出による容量成分により表わされる二次電池であり、通常、フィルム状の外装部材の内部に正極および負極と共に上記非水電解質を備えたものである。本発明のリチウムイオン電池として、例えば、正極リードおよび負極リードが取り付けられた巻回電極体をフィルム状の外装部材の内部に収納した構成を有しているものが挙げられる。
【0039】
図1は、本発明の一実施の形態に係るラミネート型のリチウムイオン電池の構成を模式的に表す図である。
正極リード(11)および負極リード(12)は、それぞれ例えば短冊状であり、外装部材(31)の内部から外部に向かい例えば同一方向にそれぞれ導出されている。正極リード(11)は、例えばアルミニウム(Al)などの金属材料により構成されており、負極リード(12)は、例えばニッケル(Ni)などの金属材料により構成されている。
【0040】
外装部材(31)は、例えば、ナイロンフィルム、アルミニウム箔およびポリプロピレンフィルムをこの順に張り合わせた矩形状のラミネートフィルムにより構成されていることが好ましい。外装部材(31)は、例えば、ポリプロピレンフィルム側と巻回電極体(20)とが対向するように配設されており、通常各外縁部が融着または接着剤により互いに密着されている。
【0041】
外装部材(31)と正極リード(11)および負極リード(12)との間には、正極リードおよび負極リードと、外装部材の内側との密着性を向上させ、外気の侵入を防止するための密着フィルム(32)が挿入されていることが好ましい。密着フィルム(32)は、通常、正極リード(11)および負極リード(12)に対して密着性を有する材料により構成され、例えば、正極リードおよび負極リードが上述した金属材料により構成される場合には、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリエチレンあるいは変性ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂により構成されることが好ましい。
【0042】
図1に示した巻回電極体(20)のII−II線に沿った断面構造の一例を、図2に示す。
巻回電極体(20)は、正極(21)と負極(22)とをセパレータ(23)を介して積層し、巻回したものであり、最外周部は、通常保護テープ(24)により保護されている。
【0043】
正極(21)は、例えば、正極集電体(21A)と、この正極集電体(21A)の両面あるいは片面に設けられた正極活物質層(21B)とを有していることが好ましい。正極集電体(21A)には、例えば長手方向における一方の端部に正極活物質層(21B)が設けらず露出している部分があり、通常、この露出部分に正極リード(11)が取り付けられている。
正極集電体(21A)は、例えば、アルミニウムなどの金属材料により構成されていることが好ましい。
【0044】
正極活物質層(21B)は、例えば、正極活物質として、電極反応物質であるリチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料の1種または2種以上を含んで構成されていることが好ましい。リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、例えば、リチウム酸化物、リチウムリン酸化物、リチウム硫化物、リチウムを含む層間化合物などのリチウム含有化合物が好適であり、2種以上を混合して用いてもよい。特に、エネルギー密度を高くするには、一般式LixMIO2またはLiyMIIPO4で表されるリチウム複合酸化物またはリチウムリン酸化物が好ましい。なお、式中、MIおよびMIIは1種類以上の遷移金属を表し、例えば、コバルト(Co)、ニッケル、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、アルミニウム、バナジウム(V)、チタン(Ti)およびジルコニウム(Zr)のうちの少なくとも1種であることが好ましい。xおよびyの値は電池の充放電状態によって異なり、通常、0.05≦x≦1.1、0.05≦y≦1.1の範囲内の値である。LixMIO2で表されるリチウム複合酸化物の具体例としては、LiCoO2、LiNiO2、LiNi0.5Co0.5O2、LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2、またはスピネル型結晶構造を有するLiMn2O4などが挙げられる。また、LiyMIIPO4で表されるリチウムリン酸化物の具体例としては、LiFePO4、LiFe0.5Mn0.5PO4などが挙げられる。
【0045】
正極活物質層(21B)は、また、例えば導電剤を含んでおり、必要に応じて更に結着剤を含んでいてもよい。導電剤としては、例えば、黒鉛、カーボンブラック、ケッチェンブラックなどの炭素材料が挙げられ、1種または2種以上が混合して用いられる。また、炭素材料の他にも、導電性を有する材料であれば金属材料または導電性高分子材料などを用いてもよい。結着剤としては、例えば、スチレンブタジエン系ゴム、フッ素系ゴム、エチレンプロピレンジエンゴムなどの合成ゴム;ポリフッ化ビニリデンなどの高分子材料が好適であり、1種または2種以上が混合して用いられる。
【0046】
負極(22)は、例えば、正極(21)と同様に、負極集電体(22A)と、この負極集電体(22A)の両面あるいは片面に設けられた負極活物質層(22B)とを有していることが好ましい。負極集電体(22A)には、例えば長手方向における一方の端部に負極活物質層(22B)が設けられず露出している部分があり、通常、この露出部分に負極リード(12)が取り付けられている。負極集電体(22A)は、例えば、銅(Cu)などの金属材料により構成されていることが好ましい。
【0047】
負極活物質層(22B)は、例えば、負極活物質として、電極反応物質であるリチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料のいずれか1種または2種以上を含んで構成されていることが好ましく、必要に応じて、例えば正極活物質層(21B)と同様の結着剤を含んでいてもよい。
【0048】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、黒鉛、難黒鉛化性炭素、易黒鉛化性炭素などの炭素材料が好適である。これら炭素材料は、充放電時に生じる結晶構造の変化が非常に少なく、高い充放電容量を得ることができると共に、良好な充放電サイクル特性を得ることができるので好ましい。特に黒鉛は、質量あたりの容量が大きく、高いエネルギー密度を得ることができるので好ましい。
【0049】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、また、リチウムを吸蔵および放出することが可能であり、金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を構成元素として含む材料も挙げられる。このような材料を用いれば、高いエネルギー密度を得ることができる。この負極材料は、金属元素または半金属元素の単体、合金および化合物のいずれであってもよく、またこれらの1種または2種以上の相を少なくとも一部に有するようなものでもあってもよい。なお、本発明において、合金には2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とを含むものも含める。また、非金属元素を含んでいてもよい。その組織には固溶体、共晶(共融混合物)、金属間化合物またはそれらのうちの2種以上が共存するものがある。
【0050】
この負極材料を構成する金属元素または半金属元素としては、例えば、リチウムと合金を形成可能なマグネシウム(Mg)、ホウ素(B)、アルミニウム、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム、イットリウム(Y)、パラジウム(Pd)または白金(Pt)が挙げられる。これらは結晶質のものでもアモルファスのものでもよい。
【0051】
中でも、この負極材料としては、短周期型周期表における4B族の金属元素または半金属元素を構成元素として含むものが好ましく、特に好ましくはケイ素およびスズの少なくとも一方を構成元素として含むものである。ケイ素およびスズは、リチウムを吸蔵および放出する能力が大きく、高いエネルギー密度を得ることができるため好ましい。
【0052】
スズの合金としては、例えば、スズ以外の第2の構成元素として、ケイ素、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモン(Sb)およびクロム(Cr)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。ケイ素の合金としては、例えば、ケイ素以外の第2の構成元素として、スズ、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモンおよびクロムからなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。
【0053】
スズの化合物またはケイ素の化合物としては、例えば、酸素(O)または炭素(C)を含むものが挙げられ、スズまたはケイ素に加えて、上述した第2の構成元素を含んでいてもよい。
【0054】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、更に、他の金属化合物または高分子材料も挙げられる。他の金属化合物としては、酸化鉄、酸化ルテニウムまたは酸化モリブデンなどの酸化物、またはLi3Nなどが挙げられる。高分子材料としてはポリアセチレンなどが挙げられる。
【0055】
また、負極(22)には、前述したようなリチウムを吸蔵および放出することが可能な材料の他に、金属リチウムを用いてもよい。具体的には、例えば金属リチウムを集電体に圧着して負極としてもよい。
【0056】
セパレータ(23)は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの合成樹脂製の多孔質膜、またはセラミック製の多孔質膜により構成されており、これら2種以上の多孔質膜を積層した構造とされていてもよい。中でも、ポリオレフィン製の多孔質膜はショート防止効果に優れ、かつシャットダウン効果による電池の安全性向上を図ることができるので好ましい。特に、ポリエチレンは、約100℃以上160℃以下の範囲内においてシャットダウン効果を得ることができ、かつ電気化学的安定性にも優れているので、セパレータを構成する材料として好ましい。また、ポリプロピレンも好ましく、他にも化学的安定性を備えた樹脂であればポリエチレンまたはポリプロピレンと共重合させたり、またはブレンド化することで用いることができる。
【0057】
本発明におけるリチウムイオン電池(二次電池)は、例えば、次のようにして製造することができる。
まず、例えば、正極活物質と結着剤と導電剤とを混合して正極合剤を調製し、N−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させることにより正極合剤スラリーを作製する。次いで、この正極合剤スラリーを正極集電体(21A)の両面または片面に塗布し乾燥させ、圧縮成型して正極活物質層(21B)を形成し正極(21)を作製する。続いて、正極集電体(21A)に正極リード(11)を、例えば超音波溶接またはスポット溶接により接合する。
【0058】
また、例えば、負極活物質と結着剤とを混合して負極合剤を調製し、N−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させることにより負極合剤スラリーを作製する。次いで、この負極合剤スラリーを負極集電体(22A)の両面または片面に塗布し乾燥させ、圧縮成型して負極活物質層(22B)を形成し、負極(22)を作製する。続いて、負極集電体(22A)に負極リード(12)を、例えば超音波溶接またはスポット溶接により接合する。
【0059】
次いで、正極(21)と負極(22)とをセパレータ(23)を介して積層して巻回し、最外周部に保護テープ(24)を接着して巻回電極体(20)を形成する。
次いで、この巻回電極体(20)を外装部材(31)で挟み、一辺を除く外周縁部を熱融着して袋状とし、外装部材(31)の内部に収納する。続いて、上記非水電解質を電解液として外装部材(31)の内部に注入する。
非水電解質を注入したのち、外装部材(31)の開口部を真空雰囲気下で熱融着などにより密閉させ電池を組み立てる。その際、正極リード(11)および負極リード(12)と外装部材(31)との間には密着フィルム(32)を挿入することが好ましい。このようにして、フィルム状の外装部材の内部に正極および負極と共に上記非水電解質を備えたリチウムイオン電池が製造される。
【0060】
(リチウム金属一次、二次電池の作製)
また、本発明の非水電解質は前述のようなリチウムイオン二次電池の他に、リチウム金属電池に用いることもできる。リチウム金属電池は、例えば次のような方法によって作製することができる。
【0061】
正極には、通常、二酸化マンガンを活物質とする正極を使用することができる。具体的には、活物質である二酸化マンガンと、導電助剤と、バインダーとを含有する正極合剤層を、正極集電体の片面または両面に形成した構成の正極等を使用することができる。導電助剤としては、例えば、カーボンブラック、鱗片状黒鉛、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、繊維状炭素などが用いられ、バインダーとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、カルボキシメチルセルロース、スチレンブタジエンラバーなどが用いられる。
【0062】
二酸化マンガン正極の作製にあたっては、例えば、二酸化マンガンと導電助剤とバインダーとを混合して調製した正極合剤を水または有機溶剤に分散させてペースト状やスラリー状の正極合剤含有組成物を調製し、その正極合剤含有組成物を集電体に塗布し、乾燥した後、加圧成形する方法が好適に採用できる。
【0063】
正極集電体には、ステンレス鋼製のものを使用することが好ましい。具体的には、例えば、SUS316、SUS430、SUS444などのステンレス鋼製の金属箔、エキスパンドメタル、平織り金網などが使用できる。正極集電体の厚みは、例えば、約5〜200μmであることが好ましい。
【0064】
負極には、リチウム(金属リチウム)、またはリチウム−アルミニウム、リチウム−鉛、リチウム−ビスマス、リチウム−インジウム、リチウム−ガリウム、リチウム−インジウム−ガリウムなどのリチウム合金で構成されるものを用いることが好ましい。具体的には、これらのリチウムまたはリチウム合金を、集電体に圧着して負極としてもよい。リチウム合金の場合、リチウムの含有量が約90質量%以上であることが好ましい。また、リチウムとリチウム合金とを併用して負極を構成してもよい。負極に係るリチウムやリチウム合金を含有する負極剤層の厚みは、例えば、約20〜200μmであることが好ましい。
【0065】
負極集電体としては、銅製または銅合金製の金属箔、金属網などが好適に使用できる。負極集電体の厚みは、例えば、約5〜50μmであることが好ましい。
【0066】
本発明のリチウム金属電池におけるセパレータとしては、従来公知のリチウム金属電池で使用されているセパレータ、すなわち、微孔性樹脂フィルムからなるセパレータ、樹脂不織布からなるセパレータなどが使用できる。その材質としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィンの他、耐熱用として、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)などのフッ素樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などが挙げられる。また、前記材質の微孔性フィルムと不織布とを複数積層するか、または微孔性フィルム同士や不織布同士を複数積層することによって構成される複層構造のセパレータを用いることにより、高温環境下で使用する場合の信頼性を高めることもできる。
【0067】
セパレータの厚みは、例えば、約10〜500μmであることが好ましい。また、セパレータの空孔率は、好ましくは約20%以上90%以下である。
【0068】
電池の組み立てはリチウムイオン電池と同様にして行うことができる。通常、正極と負極とをセパレータを介して積層して巻回し、最外周部に保護テープを接着して巻回電極体を形成する。次いで、この巻回電極体を外装部材で挟み、一辺を除く外周縁部を熱融着して袋状とし、外装部材の内部に収納する。続いて、上記非水電解質を電解液として外装部材の内部に注入する。上記非水電解質を注入したのち、外装部材の開口部を真空雰囲気下で熱融着して密閉し電池を組み立てる。このように、外装部材の内部に正極および負極と共に上記非水電解質を備えるリチウム金属電池が製造される。
【0069】
上記ではラミネートタイプの電池形態について説明しているが、本発明のリチウムイオン電池およびリチウム金属電池の形態はそれに限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、後述する実施例では、正極および負極を巻回する場合について説明したが、正極と負極とを複数積層するようにしてもよく、また、折り畳むようにしてもよい。更に、本発明は、円筒型、角型、コイン型、ボタン型などの形状を有する電池にも適用することができる。
【0070】
また、上記では、非水電解質をそのまま電解液として電池に用いる場合について説明したが、液状の非水電解質を上述した高分子化合物などの保持体に保持させて、いわゆるゲル状とするようにしてもよい。
【0071】
非水電解質電池の製造において上記非水電解質を適用する方法および手順は、上述したものに限定されるものではない。上述したように正極、負極およびセパレータを有する発電要素をまず組立て、非水電解質を注液してもよく、また、正極または負極に非水電解質を含浸(場合によっては含浸後ゲル化)後、発電要素を組み立ててもよい。注液法としては、常圧で注液してもよく、真空含浸方法、加圧含浸方法を使用してもよい。
【0072】
ゲル状の非水電解質を電池に使用する場合は、例えば、上述したように正極、負極およびセパレータを有する発電要素をまず組立て、非水電解質を外装部材の内部に注液した後に高分子化合物を添加してゲル状としてもよい。また、高分子化合物の原料である重合性の化合物と重合開始剤とを非水電解質に添加し、外装部材内部に非水電解質を注液後に該化合物を重合させて非水電解質をゲル状としてもよい。また、非水電解質と高分子化合物を混合したものを電極に塗布した後に、発電要素を組み立ててもよい。
【実施例】
【0073】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。
【0074】
負極の容量が、リチウムの吸蔵および放出による容量成分により表される電池、いわゆるリチウムイオン二次電池を作製した。
[第一実施例]
まず、正極活物質であるコバルト酸リチウム(LiCoO2)と、導電剤であるグラファイトと、結着剤であるポリフッ化ビニリデンとを混合して正極合剤を調製し、この正極合剤を溶剤であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させて正極合剤スラリーとしたのち、これをアルミニウム箔よりなる正極集電体(21A)に均一に塗布して乾燥させ、ロールプレス機で圧縮成型して正極活物質層(21B)を形成し正極(21)を作製した。そののち、正極集電体(21A)に正極リード(11)を取り付けた。
【0075】
また、負極活物質である人造黒鉛と、結着剤であるポリフッ化ビニリデンとを混合して負極合剤を調製し、この負極合剤を溶剤であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させて負極合剤スラリーとしたのち、これを銅箔よりなる負極集電体(22A)に均一に塗布して乾燥させ、ロールプレス機で圧縮成型して負極活物質層(22B)を形成し負極(22)を作製した。なお、負極の容量がリチウムの吸蔵および放出による容量成分により表されるように、正極と負極との容量比を設計した。そののち、負極集電体(22A)に負極リード(12)を取り付けた。
【0076】
続いて、溶媒である炭酸エチレンと炭酸プロピレンとを、炭酸エチレン:炭酸プロピレン=5:5の質量比で混合した溶媒に、電解質塩であるLiPF6を溶解し、更に、添加剤を混合して電解液として用いる非水電解質を作製した。その際、LiPF6の濃度は、1mol/Lとなるようにした。添加剤には、エーテル側鎖を有する4級アンモニウム塩を用い、非水電解質における含有量が0.05〜0.5mol/Lとなるようにした。実施例および比較例で添加剤として使用した化合物およびその添加量を、表1および表2にそれぞれに示す。
【0077】
そののち、正極(21)と負極(22)とを、厚み20μmのポリエチレンフィルムからなるセパレータ(23)を介して積層し、巻回し、最外周部に保護テープ(24)を貼り付けて巻回電極体(20)を作製した。
得られた巻回電極体(20)をラミネートフィルムよりなる外装部材(31)に挟み込み、非水電解質を注液後、減圧封止することにより、リチウムイオン二次電池を作製した。
【0078】
得られた二次電池について、高率放電特性を次のようにして調べた。まず、23℃で0.1Cの定電流定電圧充電を上限4.2Vまで総充電時間を12時間として行い、続いて23℃で0.2Cの定電流放電を終止電圧3.0Vまで行うことにより初回の充放電を行った。更に、23℃で1Cの定電流定電圧充電を上限4.2Vまで総充電時間を3時間として行い、続いて23℃で1Cの定電流放電を終止電圧3.0Vまで行った。更に、23℃で1Cの定電流定電圧充電を上限4.2Vまで総充電時間を3時間として行い、続いて23℃で2Cの定電流放電を終止電圧3.0Vまで行った。
なお、0.1C、0.2C、1C、2Cは、理論容量を、それぞれ10時間、5時間、1時間、0.5時間で放電しきる電流値である。
【0079】
高率放電特性は、0.2Cの放電のエネルギー(0.2C平均放電電圧×0.2C放電容量)に対する2Cの放電のエネルギー(2C平均放電電圧×2C放電容量)の維持率、すなわち(2C放電エネルギー/0.2C放電エネルギー)×100(%)から求めたものを2cとして表1〜2にそれぞれ示し、0.2Cの放電のエネルギー(0.2C平均放電電圧×0.2C放電容量)に対する1Cの放電のエネルギー(1C平均放電電圧×1C放電容量)の維持率、すなわち(1C放電エネルギー/0.2C放電エネルギー)×100(%)から求めたものを1Cとして表1〜2にそれぞれ示す。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
表1および表2中の記載は、以下のとおりである。
Py1,1O1:N−メチル−N−メトキシメチルピロリジニウムカチオン
Py1,1O2:N−メチル−N−メトキシエチルピロリジニウムカチオン
DEME:N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウム
Py13:N−メチル−N−プロピルピロリジニウムカチオン
Py14:N−メチル−N−ブチルピロリジニウムカチオン
BF4:テトラフルオロボレート
TFSI:ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド
【0083】
[第二実施例]
まず、正極活物質であるコバルト酸リチウム(LiCoO2)と、導電剤であるグラファイトと、結着剤であるポリフッ化ビニリデンとを混合して正極合剤を調製し、この正極合剤を溶剤であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させて正極合剤スラリーとしたのち、これをアルミニウム箔よりなる正極集電体(21A)に均一に塗布して乾燥させ、ロールプレス機で圧縮成型して正極活物質層(21B)を形成し正極(21)を作製した。そののち、正極集電体(21A)に正極リード(11)を取り付けた。
【0084】
また、負極活物質であるチタン酸リチウム(Li4Ti5O12)と、結着剤であるポリフッ化ビニリデンとを混合して負極合剤を調製し、この負極合剤を溶剤であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させて負極合剤スラリーとしたのち、これを銅箔よりなる負極集電体(22A)に均一に塗布して乾燥させ、ロールプレス機で圧縮成型して負極活物質層(22B)を形成し負極(22)を作製した。なお、負極の容量がリチウムの吸蔵および放出による容量成分により表されるように、正極と負極との容量比を設計した。そののち、負極集電体(22A)に負極リード(12)を取り付けた。
【0085】
続いて、溶媒である炭酸エチレンと炭酸プロピレンとを、炭酸エチレン:炭酸プロピレン=5:5の質量比で混合した溶媒に、電解質塩であるLiPF6を溶解し、更に、添加剤を混合して電解液として用いる非水電解質を作製した。その際、LiPF6の濃度は、1mol/Lとなるようにした。添加剤には、エーテル側鎖を有する4級アンモニウム塩を用い、非水電解質における含有量が0.05〜0.5mol/Lとなるようにした。実施例および比較例で添加剤として使用した化合物およびその添加量を、表3および表4にそれぞれに示す。
【0086】
そののち、正極(21)と負極(22)とを、厚み20μmのポリエチレンフィルムからなるセパレータ(23)を介して積層し、巻回し、最外周部に保護テープ(24)を貼り付けて巻回電極体(20)を作製した。
得られた巻回電極体(20)をラミネートフィルムよりなる外装部材(31)に挟み込み、非水電解質を注液後、減圧封止することにより、リチウムイオン二次電池を作製した。
【0087】
得られた二次電池について、高率放電特性を次のようにして調べた。まず、23℃で0.1Cの定電流定電圧充電を上限2.8Vまで総充電時間を12時間として行い、続いて23℃で0.2Cの定電流放電を終止電圧1.3Vまで行うことにより初回の充放電を行った。更に、23℃で1Cの定電流定電圧充電を上限2.8Vまで総充電時間を3時間として行い、続いて23℃で1Cの定電流放電を終止電圧1.3Vまで行った。更に、23℃で1Cの定電流定電圧充電を上限2.8Vまで総充電時間を3時間として行い、続いて23℃で2Cの定電流放電を終止電圧1.3Vまで行った。
なお、0.1C、0.2C、1C、2Cは、理論容量を、それぞれ10時間、5時間、1時間、0.5時間で放電しきる電流値である。
【0088】
高率放電特性は、0.2Cの放電のエネルギー(0.2C平均放電電圧×0.2C放電容量)に対する2Cの放電のエネルギー(2C平均放電電圧×2C放電容量)の維持率、すなわち(2C放電エネルギー/0.2C放電エネルギー)×100(%)から求めたものを2cとして表3〜4にそれぞれ示し、0.2Cの放電のエネルギー(0.2C平均放電電圧×0.2C放電容量)に対する1Cの放電のエネルギー(1C平均放電電圧×1C放電容量)の維持率、すなわち(1C放電エネルギー/0.2C放電エネルギー)×100(%)から求めたものを1Cとして表3〜4にそれぞれ示す。
【0089】
【表3】
【0090】
【表4】
【0091】
表3および表4中の記載は、以下のとおりである。
Py1,1O1:N−メチル−N−メトキシメチルピロリジニウムカチオン
Py1,1O2:N−メチル−N−メトキシエチルピロリジニウムカチオン
DEME:N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウム
Py13:N−メチル−N−プロピルピロリジニウムカチオン
Py14:N−メチル−N−ブチルピロリジニウムカチオン
BF4:テトラフルオロボレート
TFSI:ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド
【0092】
表1および表3から分かるように、添加剤としてエーテル側鎖を有する4級アンモニウム塩を添加した実施例1〜4および実施例8〜11では、4級アンモニウム塩を添加していない、またはエーテル側鎖を持たない4級アンモニウム塩を添加した比較例1〜3および比較例6〜8よりも高率放電特性が向上した。
【0093】
すなわち、非水電解質にエーテル側鎖を有する第4級アンモニウム塩のうちの少なくとも1種を含有させれば、高率放電特性などの電池特性を向上させることができることが分かった。特性向上の原因について詳細は明らかではないが、Li+イオン伝導が可能なエーテル側鎖を有するアンモニウムカチオンが電極表面に吸着することにより電極/非水電解質界面の電荷移動抵抗が減少するといった理由により充放電性能が向上したものと思われる。
【0094】
また、表2および表4から分かるように、エーテル側鎖を有する第4級アンモニウム塩の添加量が大きくなるに伴い、高率放電特性は向上し、極大値を示したのち低下した。すなわち、エーテル側鎖を有する第4級アンモニウム塩の添加量は、非水電解質中において0.05mol/L以上0.5mol/L以上以下の範囲内が好ましいことが分かった。これは、前記アンモニウム塩の添加量は少なすぎても効果を十分に発揮することができず、また、多過ぎる場合は、電極表面に過剰な被膜を形成すると共に、アンモニウムカチオンなどのLi+イオン以外のカチオン比率が大きくなることにより、Li+イオンの輸率が低下するためと思われる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の非水電解質は、リチウムイオン電池、リチウム金属電池等の非水電解質電池の電解質として有用である。
【符号の説明】
【0096】
11 正極リード
12 負極リード
20 巻回電極体
21 正極
21A 正極集電体
21B 正極活物質層
22 負極
22A 負極集電体
22B 負極活物質層
23 セパレータ
24 保護テープ
31 外装部材
32 密着フィルム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム塩が有機溶媒に溶解してなる非水電解質が、下記一般式(1)
【化1】
(式中、R1、R2およびR3は、同一または異なって、炭素数1から4の直鎖または分岐のアルキル基を示し、R1とR2とが環を形成してもよい。R4は、メチル基またはエチル基を示す。mは、1または2を示す。X−は、含フッ素アニオンを示す。)で表される第4級アンモニウム塩を0.05mol/L以上0.5mol/L以下含有していることを特徴とする非水電解質。
【請求項2】
第4級アンモニウム塩が、下記一般式(2)
【化2】
(式中、R3は、炭素1から4の直鎖または分岐のアルキル基を示し、R4は、メチル基またはエチル基を示す。mは、1または2を示す。X−は、含フッ素アニオンを示す。)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の非水電解質。
【請求項3】
請求項1または2に記載の非水電解質を用いた非水電解質電池。
【請求項4】
請求項1または2に記載の非水電解質を用いたリチウムイオン電池。
【請求項5】
請求項1または2に記載の非水電解質を用いたリチウム金属電池。
【請求項1】
リチウム塩が有機溶媒に溶解してなる非水電解質が、下記一般式(1)
【化1】
(式中、R1、R2およびR3は、同一または異なって、炭素数1から4の直鎖または分岐のアルキル基を示し、R1とR2とが環を形成してもよい。R4は、メチル基またはエチル基を示す。mは、1または2を示す。X−は、含フッ素アニオンを示す。)で表される第4級アンモニウム塩を0.05mol/L以上0.5mol/L以下含有していることを特徴とする非水電解質。
【請求項2】
第4級アンモニウム塩が、下記一般式(2)
【化2】
(式中、R3は、炭素1から4の直鎖または分岐のアルキル基を示し、R4は、メチル基またはエチル基を示す。mは、1または2を示す。X−は、含フッ素アニオンを示す。)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の非水電解質。
【請求項3】
請求項1または2に記載の非水電解質を用いた非水電解質電池。
【請求項4】
請求項1または2に記載の非水電解質を用いたリチウムイオン電池。
【請求項5】
請求項1または2に記載の非水電解質を用いたリチウム金属電池。
【図1】
【図2】
【図2】
【公開番号】特開2012−18916(P2012−18916A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117772(P2011−117772)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(000206901)大塚化学株式会社 (55)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(000206901)大塚化学株式会社 (55)
【Fターム(参考)】
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