説明

非水電解質二次電池用正極及びその製造方法

【課題】物性が異なる複数種の正極活物質材料を用いた、ガスの発生が少なく、充放電サイクル特性及び放電負荷特性に優れた非水電解質二次電池用正極及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の非水電解質二次電池用正極は、物性の異なる複数種の正極活物質材料と、炭素質材料からなる導電剤と、バインダーとを含む正極活物質合剤を用いた非水電解質二次電池用正極において、前記物性の異なる正極活物質材料のうち充放電時に劣化し易い方の正極活物質材料の表面は前記導電剤とバインダーとの複合被膜により被覆されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池用正極及びその製造方法に関し、特に、物性が異なる複数種の正極活物質材料を用いた、ガスの発生が少なく、充放電サイクル特性及び放電負荷特性に優れた非水電解質二次電池用正極及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯型の電子機器の急速な普及に伴い、それに使用される電池への要求仕様は、年々厳しくなり、特に小型・薄型化、高容量でサイクル特性が優れ、性能の安定したものが要求されている。そして、二次電池分野では他の電池に比べて高エネルギー密度であるリチウム非水電解質二次電池が注目され、このリチウム非水電解質二次電池の占める割合は二次電池市場において大きな伸びを示している。
【0003】
図3は、従来から作製されている円筒形の非水電解質二次電池を縦方向に切断して示す斜視図である。この非水電解質二次電池10は、正極11と負極12とがセパレータ13を介して巻回された巻回電極体14を、この巻回電極体14の上下にそれぞれ絶縁板15及び16を配置した後、負極端子を兼ねるスチール製の円筒形の電池外装缶17の内部に収容し、負極12の集電タブ12aを電池外装缶17の内側底部17aに溶接するとともに正極11の集電タブ11aを安全装置が組み込まれた電流遮断封口体18の底板部に溶接し、この電池外装缶17の開口部から所定の非水電解液を注入した後、電流遮断封口体18によって電池外装缶17を密閉することにより製造されている。このような非水電解質二次電池は、電池性能や電池の信頼性が高いという優れた効果を奏するものである。
【0004】
この非水電解質二次電池に使用される負極活物質としては、黒鉛、非晶質炭素などの炭素質材料がリチウム金属やリチウム合金に匹敵する放電電位を有しながらも、デンドライトが成長することがないために安全性が高く、さらに初期効率に優れ、電位平坦性も良好であり、また、密度も高いという優れた性質を有していることから広く用いられている。
【0005】
また、非水電解液の非水溶媒としては、カーボネート類、ラクトン類、エーテル類、エステル類などが単独であるいは2種類以上が混合されて使用されているが、これらの中では特に誘電率が大きく、非水電解液のイオン伝導度が大きいカーボネート類が多く使用されている。
【0006】
一方、正極活物質としては、LiCoO(コバルト酸リチウム)、LiNiO(ニッケル酸リチウム)、LiMnO(マンガン酸リチウム)、LiMn(四酸化二マンガン酸リチウム)、LiFeO(鉄酸リチウム)等のリチウム遷移金属複合酸化物が炭素材料からなる負極と組み合わせることにより高エネルギー密度の4V級の非水電解質二次電池が得られることが知られている。このうち、特に各種電池特性が他のものに対して優れていることから、コバルト酸リチウムや異種元素を添加したコバルト酸リチウム(以下、両者を合わせて「リチウムコバルト複合酸化物」という。)が多く使用されているが、コバルトは高価であると共に資源としての存在量が少ないため、このリチウムコバルト複合酸化物を非水電解質二次電池の正極材料として使用し続けるには非水電解質二次電池のさらなる高性能化及び高寿命化が望まれている。
【0007】
このようなリチウムコバルト複合酸化物を正極活物質として用いた非水電解質二次電池の更なる高性能化及び高寿命化には、電池の高容量化及び安全性の向上が必須の課題である。このうち、下記特許文献1には、平均粒径が異なる2種のコバルト酸リチウムを用いることにより高密度充填ができるようにして、電池容量の増大化を図った非水電解質二次電池用正極の発明が開示されている。
【0008】
更に、下記特許文献2には、正極活物質として異種元素を添加したコバルト酸リチウムと層状ニッケルコバルトマンガン酸リチウムを混合したものを使用した、安定して高充電電圧を達成できる非水電解質二次電池の発明が開示されている。この正極活物質は、コバルト酸リチウムに少なくともZr、Mgの異種元素を添加することで高電圧(〜4.5V)での構造安定性を向上させ、更に高電圧で熱安定性の高い層状ニッケルコバルトマンガン酸リチウムを混合することで安全性を確保するようにしたものであり、この正極活物質を使用した正極と炭素材料からなる負極活物質を有する負極とを組み合わせると、充電電圧が4.3V以上4.5V以下(正極充電終止電位がリチウム基準で4.4V以上4.6V以下)の高電圧で安定して充電可能な非水電解質二次電池が得られている。
【0009】
なお、従来より、リチウム遷移金属複合酸化物と導電剤としての炭素材料を含む正極合剤スラリーを調製する際、リチウム遷移金属複合酸化物と炭素材料を予め乾式混合し、得られた混合物をバインダーを含む非水溶液中に添加することが行われている。これは、炭素材料の粉末を直接バインダーを含む非水溶液中に添加すると、炭素材料と非水溶液との馴染みが悪いため、炭素材料が非水溶液中で凝集した状態となり、炭素材料からなる導電剤が良好に分散した正極合剤スラリー及び正極が得られないからである。リチウム遷移金属複合酸化物と炭素材料を予め乾式混合することにより、リチウム遷移金属複合酸化物の粉末の表面に炭素材料を付着させることができ、これによって正極合剤スラリー中での分散状態を改善することができるわけである(下記特許文献3参照)。
【0010】
【特許文献1】特開平9−306546号公報(特許請求の範囲、段落[0010]、[0018]〜[0024])
【特許文献2】特開2005−317499号公報(特許請求の範囲、段落[0027]〜[0044])
【特許文献3】特開2004−311423号公報(特許請求の範囲、段落[0006]〜[0008])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述のように、従来からリチウムコバルト複合酸化物を正極活物質として含む非水電解質二次電池の高性能化及び高寿命化のために種々の改良が行われているが、上記特許文献1に開示されている非水電解質二次電池用正極の発明においては、平均粒径の小さい方のコバルト酸リチウムは充放電反応性がよいため、選択的に平均粒径が小さい方のコバルト酸リチウムの劣化が速く、ガスの発生による電池の膨れが生じるとともに、サイクル特性の劣化が大きいという問題点が存在している。
【0012】
また、上記特許文献2に開示されている非水電解質二次電池の発明によれば、特に高充電電圧領域ではニッケルコバルトマンガン酸リチウムの劣化は少ないが、異種元素を添加したコバルト酸リチウムの劣化が速く、同じくガスの発生による電池の膨れが生じるとともに、サイクル特性の劣化が大きいという問題点が存在している。
【0013】
本願の発明者等は、上述の従来技術の問題点を解決すべく種々実験を行った結果、正極活物質材料中の劣化し易い活物質材料を選択的に導電剤及びバインダーからなる複合被膜でコーティングすることにより、これらの劣化し易い活物質材料の表面の反応性を抑えることができ、結果として、他の電池特性の劣化を招くことなく、ガスの発生を低下させて良好な充放電サイクル特性を示すとともに放電負荷特性に優れた非水電解質二次電池が得られることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0014】
なお、上記特許文献3には、リチウム遷移金属複合酸化物とリチウムマンガン酸化物とを活物質として含み、かつ炭素材料を導電剤として含む非水電解質二次電池用電極の製造に際し、リチウム遷移金属複合酸化物と炭素材料を予め乾式混合し、この混合物とリチウムマンガン酸化物とをバインダーを含む溶液中に添加し混合してスラリーを調製し、該スラリーを集電体上に塗布する方法が開示されているが、このような方法を採用しても導電剤だけでは活物質表面の反応性が高いところが残るので、本願発明の上記目的を達成することはできない。
【0015】
したがって、本発明は、物性の異なる複数種の正極活物質材料と、炭素質材料からなる導電剤と、バインダーとを含む正極活物質合剤を用いた非水電解質二次電池用正極の製造に際し、劣化し易い活物質材料を選択的に導電剤及びバインダーからなる複合被膜でコーティングすることにより、他の電池特性の劣化を招くことなく、ガスの発生を低下させて電池の膨れを抑制できるとともに良好なサイクル特性を示す非水電解質二次電池用正極及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記第1の目的を達成するため、本願の請求項1に係る非水電解質二次電池用正極の発明は、物性の異なる複数種の正極活物質材料と、炭素質材料からなる導電剤と、バインダーとを含む正極活物質合剤を用いた非水電解質二次電池用正極において、前記物性の異なる正極活物質材料のうち充放電時に劣化し易い方の正極活物質材料の表面は前記導電剤とバインダーとの複合被膜により被覆されていることを特徴とする。
【0017】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の非水電解質二次電池用正極において、前記物性が異なる複数種の正極活物質材料が、それぞれ異なる平均粒径を有する同一組成の活物質材料であり、前記充放電時に劣化し易い方の正極活物質材料が最も平均粒径が小さい活物質材料であることを特徴とする。この発明においては、正極活物質として平均粒径が異なるものであれば、従来から非水電解質二次電池用正極活物質として普通に使用されているリチウムコバルト複合酸化物、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、四酸化二マンガン酸リチウム、鉄酸リチウム等のリチウム遷移金属複合酸化物を用いることができる。
【0018】
また、請求項3に係る発明は、請求項1に記載の非水電解質二次電池用正極において、前記物性が異なる複数種の正極活物質材料が、リチウムコバルト複合酸化物とニッケルコバルトマンガン酸リチウムであり、前記充放電時に劣化し易い方の正極活物質材料がリチウムコバルト複合酸化物であることを特徴とする。
【0019】
また、請求項4に係る発明は、請求項1に記載の非水電解質二次電池用正極において、前記物性が異なる複数種の正極活物質材料が、リチウムコバルト複合酸化物とマンガン酸リチウムであり、前記劣化し易い方の正極活物質材料がリチウムコバルト複合酸化物であることを特徴とする。
【0020】
また、請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の非水電解質二次電池用正極において、前記バインダーが、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンから選択された少なくとも1種であることを特徴とする。
【0021】
更に、上記第2の目的を達成するため、請求項6に係る非水電解質二次電池用正極の製造方法の発明は、物性の異なる複数種の正極活物質材料と、炭素質材料からなる導電剤と、バインダーとを含む正極活物質合剤を含む非水電解質二次電池用正極の製造方法において、前記物性の異なる正極活物質材料のうち充放電時に劣化し易い方の正極活物質材料と導電剤及びバインダーを乾式混合した後に、残りの正極活物質材料を添加して湿式混練した正極活物質合剤を用いて正極を作製したことを特徴とする。
【0022】
また、請求項7に係る発明は、請求項6に記載の非水電解質二次電池用正極の製造方法において、前記物性が異なる複数種の正極活物質材料が、それぞれ異なる平均粒径を有する同一組成の活物質材料であり、前記充放電時に劣化し易い方の正極活物質材料が最も平均粒径が小さい活物質材料であることを特徴とする。
【0023】
また、請求項8に係る発明は、請求項6に記載の非水電解質二次電池用正極の製造方法において、前記物性が異なる複数種の正極活物質材料が、リチウムコバルト複合酸化物とニッケルコバルトマンガン酸リチウムであり、前記充放電時に劣化し易い方の正極活物質材料がリチウムコバルト複合酸化物であることを特徴とする。
【0024】
また、請求項9に係る発明は、請求項6に記載の非水電解質二次電池用正極の製造方法において、前記物性が異なる複数種の正極活物質材料が、リチウムコバルト複合酸化物とマンガン酸リチウムであり、前記劣化し易い方の正極活物質材料がリチウムコバルト複合酸化物であることを特徴とする。
【0025】
また、請求項10に係る発明は、請求項6〜9のいずれかに記載の非水電解質二次電池用正極の製造方法において、前記バインダーが、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンから選択された少なくとも1種であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
請求項1に係る発明によれば、正極活物質のうち劣化の速い成分の表面が炭素質材料からなる導電剤とバインダーとからなる複合被膜によって覆われ、この複合被膜が保護膜として作用するために、充放電サイクル時に劣化の速い成分の選択的な劣化を防ぐことができるようになる。加えて、充放電サイクル時に劣化の速い成分の表面活性が抑制されているために非水電解質二次電池に用いると、非水電解液の分解が抑制されるために、ガスの発生が少なく、かつ、サイクル特性の劣化も少ない非水電解質二次電池が得られる。
【0027】
また、請求項2に係る発明によれば、同一組成の活物質材料であっても平均粒径が小さい方が表面活性が高いために劣化し易いが、この平均粒径が小さい方の正極活物質の表面が炭素質材料からなる導電剤とバインダーとからなる複合被膜によって覆われ、この複合被膜が保護膜として作用するために、劣化の速い平均粒径が小さい方の正極活物質の選択的な劣化を防ぐことができるようになる。更に、この発明においては、同一組成であるが平均粒径の大きい正極活物質材料と平均粒径の小さい正極活物質材料を用いたため、正極活物質材料を高密度に充填することができるようになるため、電池の容量が大きい非水電解質二次電池が得られるようになる。なお、リチウムコバルト複合酸化物としてはジルコニウム、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛等の異種元素を含有したものであってもよい。
【0028】
また、リチウムコバルト複合酸化物とニッケルコバルトマンガン酸リチウムを正極活物質として混合使用すると、特に高充電電圧で安定して充電でき、しかも高容量な非水電解質二次電池が得られることが知られており、このうちニッケルコバルトマンガン酸リチウムは高充電電圧でも安定であるがリチウムコバルト複合酸化物は高充電電圧時に選択的に劣化し易い。しかしながら、請求項3に係る発明によれば、リチウムコバルト複合酸化物の表面が炭素質材料からなる導電剤とバインダーとからなる複合被膜によって覆われており、この複合被膜が保護膜として作用するために、リチウムコバルト複合酸化物の選択的劣化が防止された正極が得られる。なお、リチウムコバルト複合酸化物としてはジルコニウム、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛等の異種元素を含有したものであってもよい。このような異種元素を添加したリチウムコバルト複合酸化物を使用すると、より高充電電圧時の劣化が防止される。
【0029】
また、リチウムコバルト複合酸化物とマンガン酸リチウムを正極活物質として混合使用すると、安全性が高い非水電解質二次電池が得られることが知られているが、このうちリチウムコバルト複合酸化物は充放電時にマンガン酸リチウムよりも劣化し易い。しかしながら、請求項4に係る発明によれば、リチウムコバルト複合酸化物の表面が炭素質材料からなる導電剤とバインダーとからなる複合被膜によって覆われており、この複合被膜が保護膜として作用するために、リチウムコバルト複合酸化物の選択的劣化が防止された正極が得られる。なお、この請求項4に係る発明に於いても、リチウムコバルト複合酸化物としてはジルコニウム、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛等の異種元素を含有したものであってもよい。
【0030】
また、請求項5に係る発明によれば、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンから選択された少なくとも1種を使用すると、劣化し易い方の正極活物質材料の表面に炭素質材料からなる導電剤とバインダーとからなる複合被膜を安定的に形成できるので、劣化し易い方の正極活物質材料の表面を良好に保護できるようになる。
【0031】
更に、請求項6〜10によれば、それぞれ請求項1〜5に係る発明の効果を奏することができる非水電解質二次電池用正極が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本願発明を実施するための最良の形態を実施例及び比較例を用いて詳細に説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための非水電解質二次電池用正極の具体例を例示するものであって、本発明をこの実施例に特定することを意図するものではなく、本発明は特許請求の範囲に示した技術思想を逸脱することなく種々の変更を行ったものにも均しく適用し得るものである。
【0033】
[正極の製造方法]
最初に各実施例及び比較例の正極の製造方法について説明する。実施例1、比較例1及び2では、同一組成であるが平均粒径が異なる2種類の正極活物質を用いてそれぞれ正極を作成し、また、実施例2、比較例3及び4では、平均粒径はほぼ等しいが組成が異なる2種類の正極活物質を用いてそれぞれ正極を作成した。各実施例及び比較例の正極の製造方法は以下に示すとおりである。なお、以下の実施例及び比較例における粒径の測定は、全て島津製作所製のレーザー回折式粒度分布測定器SALD−2000Jを用いて行った。
【0034】
[実施例1]
粒径の小さなコバルト酸リチウム(平均粒径:5μm)を70質量%、導電剤としてカーボンブラック2質量%、及び、バインダーとしてのポリフッ化ビニリデン(PVdf)粉末3質量%を乾式混合しながら加圧力及び剪断力を加えて前記粒径の小さなコバルト酸リチウムの表面にカーボンブラックとPVdfを付着させて複合化処理を行った。その後、この複合化処理を行った正極合剤に、粒径が大きなコバルト酸リチウム(平均粒径:30μm)を25質量%とN−メチルピロリドン(NMP)溶剤とを投入し、湿式混練することにより実施例1の正極活物質合剤スラリーを得た。次いで、この正極活物質合剤スラリーを厚さ20μmのアルミニウム製の集電体の両面にドクターブレード法により塗布、乾燥して、正極集電体の両面に活物質層を形成した。その後、圧縮ローラーを用いて厚さ160μmに圧縮し、短辺の長さが55mm、長辺の長さが500mmの実施例1の正極を作製した。なお、実施例1の正極活物質合剤の模式的拡大図は図1Aに示すとおりとなる。
【0035】
[比較例1]
粒径の小さなコバルト酸リチウム(平均粒径:5μm)70質量%、粒径が大きなコバルト酸リチウム(平均粒径:30μm)25質量%、及び、カーボンブラック2質量%を、バインダーとしてのPVdf粉末が3質量%となるように溶剤としてのNMPに溶解させた溶液中に投入して湿式混練し、比較例1の正極合剤スラリーを得た。この比較例1の正極合剤スラリーを用いて、実施例1の場合と同様にして同サイズの比較例1の正極を作成した。なお、比較例1の正極活物質合剤の模式的拡大図は図2Aに示すとおりとなる。
【0036】
[比較例2]
粒径の小さなコバルト酸リチウム(平均粒径:5μm)70質量%、粒径が大きなコバルト酸リチウム(平均粒径:30μm)25質量%、カーボンブラック2質量%、及び、バインダーとしてのPVdf粉末3質量%となるような割合で同時に乾式混合しながら加圧力及び剪断力を加えて粒径の小さなコバルト酸リチウム及び粒径が大きなコバルト酸リチウムの表面に同時にカーボンブラックとPVdfを付着させて複合化処理を行なった。次いで、この複合化処理を行った正極合剤に溶剤としてのNMPを投入し、湿式混練することにより比較例2の正極合剤スラリーを得た。この比較例2の正極合剤スラリーを用いて、実施例1の場合と同様にして同サイズの比較例2の正極を作成した。
【0037】
[実施例2]
高電位領域でニッケルコバルトマンガン酸リチウムと比較して活性の高いコバルト酸リチウム(平均粒径:10μm)を60質量%、導電剤としてカーボンブラック2質量%、及び、バインダーとしてのPVdf粉末3質量%を乾式混合しながら加圧力及び剪断力を加えて高いコバルト酸リチウムの表面にカーボンブラックとPVdfを付着させて複合化処理を行った。その後、この複合化処理を行った正極合剤に、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム(平均粒径:11μm)を35質量%と溶剤としてのNMPを投入し、湿式混練することにより実施例2の正極活物質合剤スラリーを得た。次いで、この正極活物質合剤スラリーを用いて、実施例1の場合と同様にして同サイズの実施例2の高電圧仕様の正極を作成した。なお、実施例2の正極活物質合剤の模式的拡大図は図1Bに示すとおりとなる。
【0038】
[比較例3]
コバルト酸リチウム(平均粒径:10μm)60質量%、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム(平均粒径:11μm)35質量%、及び、カーボンブラック2質量%を、バインダーとしてのポリフッ化ビニリデン(PVdf)粉末が3質量%となるように溶剤としてのNMPに溶解させた溶液中に投入して湿式混練し、比較例3の正極合剤スラリーを得た。この比較例3の正極合剤スラリーを用いて、実施例1の場合と同様にして同サイズの比較例3の正極を作成した。なお、比較例3の正極活物質合剤の模式的拡大図は図2Bに示すとおりとなる。
【0039】
[比較例4]
コバルト酸リチウム(平均粒径:10μm)60質量%、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム(平均粒径:11μm)35質量%、カーボンブラック2質量%、及び、バインダーとしてのポリフッ化ビニリデン(PVdf)粉末3質量%となるような割合で同時に乾式混合しながら加圧力及び剪断力を加えてコバルト酸リチウム及びニッケルコバルトマンガン酸リチウムの表面に同時にカーボンブラックとPVdfを付着させて複合化処理を行なった。次いで、この複合化処理を行った正極合剤に溶剤としてのNMPを投入し、湿式混練することにより比較例4の正極合剤スラリーを得た。この比較例4の正極合剤スラリーを用いて、実施例1の場合と同様にして同サイズの比較例4の正極を作成した。
【0040】
[負極の作製]
天然黒鉛粉末が95質量部、ポリフッ化ビニリデン粉末が5質量部となるように混合し、これをNMP溶液と混合してスラリーを調整し、このスラリーを厚さ18μmの銅製の集電体の両面にドクターブレード法により塗布、乾燥して、負極集電体の両面に活物質層を形成した。その後、圧縮ローラーを用いて155μmに圧縮し、短辺の長さが57mm、長辺の長さが550mmの負極を作製した。なお、黒鉛の電位はリチウム基準で0.1Vである。また、正極及び負極の活物質充填量は、設計基準となる正極活物質の電圧(満充電電位がリチウム金属基準で4.3V(実施例1、比較例1及び2)又は4.5V(実施例2、比較例3及び4))において、正極と負極の充電容量比(負極充電容量/正極充電容量)を1.1となるように調整した。
【0041】
[電解液の作製]
エチレンカーボネート(EC)20体積%、メチルエチルカーボネート(MEC)30体積%、ジエチルカーボネート(DEC)30体積%の混合溶媒にLiPFを1モル/Lとなる割合で溶解して電解液とし、これを電池作製に供した。
【0042】
[電池の作製]
上記の正極、負極及び電解液を用い、また、セパレータとしてポリプロピレン製微多孔膜を用い、実施例1、2及び比較例1〜4の円筒形の非水電解質二次電池(高さ65mm、直径18mm)を作製した。
【0043】
[ガス発生量の測定]
上述のようにして作製された実施例1、比較例1及び2の正極を用いた電池については、25℃において1It(1C)=2000mAの定電流で充電し、電池電圧が4.2Vに達した後は4.2Vの定電圧で充電電流値が1/50Itになるまで初期充電し、同じく実施例2、比較例3及び4の正極を用いた電池については、25℃において1Itの定電流で充電し、電池電圧が4.4Vに達した後は4.4Vの定電圧で充電電流値が1/50Itになるまで初期充電した。その後、これらの電池から正極を取り出し、密閉容器内にEC20体積%、MEC30体積%、DEC30体積%の混合溶媒にLiPFを1モル/Lとなる割合で溶解して電解液とともに密閉して80℃の高温下に24時間放置した際に発生したガス量を測定した。測定結果を表1にまとめて示す。
【0044】
【表1】

【0045】
表1に示した結果から以下のことが分かる。すなわち、表面活性が高い平均粒径が小さい方のコバルト酸リチウムとカーボンブラックとPVdfのみを乾式混合した後に他の材料を湿式混練した正極合剤を用いた実施例1及び2の正極によれば、80℃という高温で電解液に接触させた際のガス発生量は0.16ml/g及び0.15ml/gであったが、全ての正極活物質材料を湿式混練した正極合剤を用いた比較例1及び3の正極では同条件下でガス発生量1.14ml/g及び1.51ml/gと最もガス発生量が多く、更に、全ての正極活物質材料を乾式混合した正極合剤を用いた比較例2及び4の正極ではガス発生量は0.98ml/g及び1.15ml/gと実施例1及び2と比較例1及び3の中間の値が得られた。
【0046】
コバルト酸リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム等の正極活物質材料とカーボンブラックとPVdfを乾式混合処理すると、正極活物質材料の平均粒径の大小にかかわらず、正極活物質材料の表面がカーボンブラックとPVdfの複合化膜によって覆われることは明らかである。したがって、表面活性が高い方の正極活物質材料のみをカーボンブラックとPVdfを乾式混合処理した実施例1及び2の正極を用いた電池では、正極活物質材料の表面が絶縁体であるPVdfが覆っているため、電解液との反応性が低下し、ガス発生量の低下に繋がったものと考えられる。
【0047】
これに対し、全ての正極活物質材料を同時に乾式混合処理した正極合剤を用いた比較例2及び4の正極では、表面活性が低い正極活物質材料の表面にもカーボンブラックとPVdfの複合化膜に覆われることとなる。そのため、比較例2及び4の正極は、表面活性が高い方の正極活物質材料の表面に形成されたカーボンブラックとPVdfの複合化膜の厚さは薄いため、表面活性が高い方の正極活物質材料の表面活性の抑制効果が小さく、ガス発生量が実施例1及び2の正極と比すると大きくなったものと考えられる。また、全ての正極活物質材料を湿式混練した正極合剤を用いた比較例1及び3の正極では、表面活性が高い方の正極活物質材料の表面に実質的にカーボンブラックとPVdfの複合化膜が形成されないため、表面活性が高い方の正極活物質材料の表面活性の抑制効果が小さく、ガス発生量が実施例1及び2や比較例3及び4の正極を用いた場合と比すると最も多くなったものと考えられる。
【0048】
[電池特性の測定]
別途上述のようにして作製した実施例1、2及び比較例1〜4の電池を用いて充放電サイクル特性を測定するとともに、実施例1及び2、比較例2及び4の電池については更に放電負荷特性の測定を行った。まず、実施例1、比較例1及び2の正極を用いた電池については、25℃において1It=2000mAの定電流で充電し、電池電圧が4.2Vに達した後は4.2Vの定電圧で充電電流値が1/50Itになるまで初期充電し、その後1Itの定電流で電池電圧が2.75Vになるまで放電を行い、このときの放電容量を初期容量として求めた。同様に、実施例2、比較例3及び4の正極を用いた電池については、同じく25℃において1Itの定電流で充電し、電池電圧が4.4Vに達した後は4.4Vの定電圧で充電電流値が1/50Itになるまで初期充電し、その後1Itの定電流で電池電圧が3.0Vになるまで放電を行い、このときの放電容量を初期容量として求めた。
【0049】
この初期容量を測定した電池について、実施例1、比較例1及び2の正極を用いた電池については、25℃において1Itの定電流で充電し、電池電圧が4.2Vに達した後は4.2Vの定電圧で充電電流値が1/50Itになるまで充電し、その後1Itの定電流で電池電圧が2.75Vになるまで放電を行う操作を500回繰り返し、500回目の放電容量を500サイクル後の放電容量として求めた。同様に、実施例2、比較例3及び4の正極を用いた電池については、同じく25℃において1Itの定電流で充電し、電池電圧が4.4Vに達した後は4.4Vの定電圧で充電電流値が1/50Itになるまで充電し、その後1Itの定電流で電池電圧が3.0Vになるまで放電を行う操作を500回繰り返し、500回目の放電容量を500サイクル後の放電容量として求めた。そして、以下の式に基づいて500サイクル後のサイクル特性値(%)を求めた。結果をまとめて表2に示した。
サイクル特性値(%)=(500サイクル後の放電容量/初期放電容量)×100
【0050】
また、初期容量を測定した電池について、実施例1、比較例1及び2の正極を用いた電池については、25℃において1Itの定電流で充電し、電池電圧が4.2Vに達した後は4.2Vの定電圧で充電電流値が1/50Itになるまで充電し、その後3It=6000mAの定電流で電池電圧が2.75Vになるまで放電を行い、このときの放電容量を3It放電容量として求めた。同様に、実施例2、比較例3及び4の正極を用いた電池については、同じく25℃において1Itの定電流で充電し、電池電圧が4.4Vに達した後は4.4Vの定電圧で充電電流値が1/50Itになるまで初期充電し、その後3Itの定電流で電池電圧が3.0Vになるまで放電を行い、このときの放電容量を3It放電容量として求めた。そして、以下の式に基づいて3It放電時の放電負荷特性を求めた。結果をまとめて表2に示した。
3It放電負荷特性=(3It放電容量/初期放電容量)×100
【0051】
【表2】

【0052】
表2に示した結果より以下のことが分かる。すなわち、表面活性が高い平均粒径が小さい方のコバルト酸リチウムとカーボンブラックとPVdfのみを乾式混合した後に他の材料を湿式混練した正極合剤を用いた実施例1及び2の正極を用いた電池によれば、サイクル特性値は93.9%及び79.3%であったが、全ての正極活物質材料を湿式混練した正極合剤を用いた比較例1及び3の正極では同条件下でサイクル特性値は85.3%及び74.8%であり、更に、全ての正極活物質材料を乾式混合した正極合剤を用いた比較例2及び4の正極ではサイクル特性値は86.7%及び78.9%であった。また、放電負荷特性は、実施例1及び2の正極を用いた電池によれば84.3%及び86.4%であり、比較例2及び4の正極を用いた電池によれば76.7%及び77.3%であった。したがって、表面活性が高い方の正極活物質材料とカーボンブラックとPVdfのみを乾式混合した後に他の材料を湿式混練した正極合剤を用いた実施例1及び2の正極を用いた電池によれば、サイクル特性は比較例1〜4の正極を用いた電池に比すると優れており、また、放電負荷特性は比較例2及び4の正極を用いた電池に比すると優れていることが確認できた。
【0053】
このうち、実施例1及び2の正極を用いた電池におけるサイクル特性の向上効果は、表面活性が大きい方、すなわち充放電サイクル時に劣化し易い方の正極活物質材料の表面がカーボンブラックとPVdfの複合化膜によって覆われているため、上述のようにガス発生量が少ないことによる正極及び負極間の分離が少なく、しかも、充放電サイクル時の正極活物質の膨張/収縮によるストレスを受け難いために充放電サイクル時に劣化が少なく、正極活物質の抵抗の上昇が少なくなってサイクル特性の向上に繋がったものと考えられる。
【0054】
これに対し、全ての正極活物質材料を同時に乾式混合処理した正極合剤を用いた比較例2及び4の正極では、表面活性が低い正極活物質材料の表面にもカーボンブラックとPVdfの複合化膜に覆われるため、表面活性が高い方の正極活物質材料の表面に形成されたカーボンブラックとPVdfの複合化膜の厚さは十分ではなく、表面活性が高い方の正極活物質材料の表面活性の抑制効果が小さいので、発生したガスによる正極及び負極間の分離が生じること、及び、充放電サイクル時の正極活物質の膨張/収縮によるストレスによって劣化するため、抵抗が大きくなることによりサイクル特性が実施例1及び2の正極を用いた電池と比すると悪くなったものと考えられる。
【0055】
更に、全ての正極活物質材料を湿式混練した正極合剤を用いた比較例1及び3の正極では、表面活性が高い方の正極活物質材料の表面に実質的にカーボンブラックとPVdfの複合化膜が形成されないため、表面活性が高い方の正極活物質材料の表面活性の抑制効果が小さく、ガス発生量が他の実施例や比較例と比すると最も多くなること、充放電サイクル時の正極活物質の膨張/収縮によるストレスによる正極活物質の劣化が大きく、抵抗の上昇が最も大きくなることからサイクル特性が実施例1及び2や比較例3及び4の正極を用いた電池と比すると最も悪化したものと考えられる。
【0056】
また、実施例1及び2の正極は、表面活性が大きい方の正極活物質の表面はカーボンブラックとPVdfの複合化膜によって覆われているが、表面活性が小さい方の正極活物質の表面はカーボンブラックとPVdfの複合化膜によって覆われていない。これに対し、比較例3及び4の正極は、表面活性が大きい方の正極活物質の表面及び表面活性が小さい方の正極活物質の表面ともにカーボンブラックとPVdfの複合化膜によって覆われている。したがって、大電流放電過程の律速段階は、正極活物質の表面にカーボンブラックとPVdfの複合化膜が形成されていない成分の存在の有無によって定まるため、上述のような実施例1及び2の正極を用いた電池の方が比較例3及び4の正極を用いた電池よりも3It放電負荷特性の向上に繋がったものと考えられる。
【0057】
なお、上記実施例2では、物性が異なる複数種の正極活物質材料としてリチウムコバルト複合酸化物及びニッケルコバルトマンガン酸リチウムを含むものを用いた例を示したが、物性が異なる複数種の正極活物質材料としてリチウムコバルト複合酸化物及びマンガン酸リチウムを含むものについても同様の効果が得られる。この場合もリチウムコバルト複合酸化物が表面活性が大きい正極活物質材料、すなわち、充放電時に劣化し易い正極活物質材料となる。また、上記実施例1及び2においてはバインダーとしてPVdfのみを用いた例を示したが他にポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン等も使用し得る。また、集電体への合剤の結着力が不足するときには、正極活物質に被覆した結着剤とは別に、合剤スラリーを調製する時に結着剤を添加してもよい。
【0058】
以上述べたように、本発明の正極を用いた非水電解質二次電池によれば、非水電解質二次電池の高出力化を達成することができるとともに電池の充放電サイクル特性を大幅に向上させることができるため、工業的価値は非常に大きい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】図1Aは実施例1の正極活物質合剤の模式的拡大図であり、図1Bは実施例2の正極活物質合剤の模式的拡大図である。
【図2】図2Aは比較例1の正極活物質合剤の模式的拡大図であり、図2Bは比較例3の正極活物質合剤の模式的拡大図である。
【図3】従来例の非水電解質二次電池の一部破断断面図である。
【符号の説明】
【0060】
10 非水電解質二次電池
11 正極
11a 正極の集電タブ
12 負極
12a 負極の集電タブ
13 セパレータ
14 巻回電極体
17 電池外装缶
18 電流遮断封口体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物性の異なる複数種の正極活物質材料と、炭素質材料からなる導電剤と、バインダーとを含む正極活物質合剤を用いた非水電解質二次電池用正極において、
前記物性の異なる正極活物質材料のうち充放電時に劣化し易い方の正極活物質材料の表面は前記導電剤とバインダーとの複合被膜により被覆されていることを特徴とする非水電解質二次電池用正極。
【請求項2】
前記物性が異なる複数種の正極活物質材料が、それぞれ異なる平均粒径を有する同一組成の活物質材料であり、前記充放電時に劣化し易い方の正極活物質材料が最も平均粒径が小さい活物質材料であることを特徴とする請求項1に記載の非水電解質二次電池用正極。
【請求項3】
前記物性が異なる複数種の正極活物質材料が、リチウムコバルト複合酸化物とニッケルコバルトマンガン酸リチウムであり、前記充放電時に劣化し易い方の正極活物質材料がリチウムコバルト複合酸化物であることを特徴とする請求項1に記載の非水電解質二次電池用正極。
【請求項4】
前記物性が異なる複数種の正極活物質材料が、リチウムコバルト複合酸化物とマンガン酸リチウムであり、前記劣化し易い方の正極活物質材料がリチウムコバルト複合酸化物であることを特徴とする請求項1に記載の非水電解質二次電池用正極。
【請求項5】
前記バインダーが、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンから選択された少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の非水電解質二次電池用正極。
【請求項6】
物性の異なる複数種の正極活物質材料と、炭素質材料からなる導電剤と、バインダーとを含む正極活物質合剤を含む非水電解質二次電池用正極の製造方法において、
前記物性の異なる正極活物質材料のうち充放電時に劣化し易い方の正極活物質材料と導電剤及びバインダーを乾式混合した後に、残りの正極活物質材料を添加して湿式混練した正極活物質合剤を用いて正極を作製したことを特徴とする非水電解質二次電池用正極の製造方法。
【請求項7】
前記物性が異なる複数種の正極活物質材料が、それぞれ異なる平均粒径を有する同一組成の活物質材料であり、前記充放電時に劣化し易い方の正極活物質材料が最も平均粒径が小さい活物質材料であることを特徴とする請求項6に記載の非水電解質二次電池用正極の製造方法。
【請求項8】
前記物性が異なる複数種の正極活物質材料が、リチウムコバルト複合酸化物とニッケルコバルトマンガン酸リチウムであり、前記充放電時に劣化し易い方の正極活物質材料がリチウムコバルト複合酸化物であることを特徴とする請求項6に記載の非水電解質二次電池用正極の製造方法。
【請求項9】
前記物性が異なる複数種の正極活物質材料が、リチウムコバルト複合酸化物とマンガン酸リチウムであり、前記劣化し易い方の正極活物質材料がリチウムコバルト複合酸化物であることを特徴とする請求項6に記載の非水電解質二次電池用正極の製造方法。
【請求項10】
前記バインダーが、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンから選択された少なくとも1種であることを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載の非水電解質二次電池用正極の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−265668(P2007−265668A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−86043(P2006−86043)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】