説明

非水電解質二次電池

【課題】高温条件での長期サイクル後においてもセパレータのシャットダウン応答速度の低下や過充電特性の低下が少なく、しかも高温サイクル特性に優れた非水電解質二次電池を提供する。
【解決手段】この非水電解質二次電池は、カルボン酸エステルとニトリル化合物とを含む非水電解質と、気孔率が28〜54%であり、透気度が86〜450秒/デシリットルに規制されたセパレータを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池に関し、より詳しくは非水電解質二次電池の高温サイクル特性や過充電特性などの電池特性の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、携帯電話、ノートパソコン等の移動情報端末の高性能化及び小型軽量化が急速に進展している。これらの端末の移動電源として、高エネルギー密度で高容量なリチウムイオン二次電池に代表される非水電解質二次電池が利用されている。
【0003】
これらの二次電池の非水電解質に用いられる非水溶媒としては、エチレンカーボネート(EC)またはプロピレンカーボネート(PC)などカーボネート類が用いられているが、これらの溶媒は過充電状態での安定性が低い。よって、これらの溶媒を用いた電池は過充電特性が悪い。
【0004】
このため、カーボネート系溶媒よりも充放電耐性が高いカルボン酸エステルを、非水溶媒に含有させることにより、過充電に対する安全性を高めることが考えられる。
しかし、カルボン酸エステルは、負極皮膜を脆弱化させ電池の高温サイクル特性を低下させる。このため、例えば60℃より高い温度環境下で、充放電を繰り返すと電池容量が大幅に低下する。
【0005】
ところで、特許文献1には、環状カーボネートおよび/または環状エステルと、アルキン誘導体と、第3級カルボン酸エステルとを含む電解質を用いたリチウム二次電池が記載されている。そしてこの文献には、カルボン酸エステルは鎖状カーボネート類より沸点が低いため、カルボン酸エステルの蒸気発生により電池膨れなどを起こしやすいことが記載されている(特許文献1の段落0004)。
【0006】
特許文献2及び3には、非水電解質に脂肪族ニトリル化合物を添加することで、電池の発火の防止や電解液の粘度上昇及び低温性能の低下を抑制できることが記載されている。しかし、特許文献2及び3は、カルボン酸エステルとニトリル化合物との組み合わせについては記載していない。
【0007】
他方、特許文献4には、非水電解液にカルボン酸エステル(ピバリン酸-n-ブチル)とアジポニトリルを添加した非水電解質二次電池が開示されている(特許文献4の段落0050、段落0051)。しかし、この文献は、高温条件下での長期サイクル後におけるセパレータのシャットダウン応答速度の低下や過充電特性の低下に着目した技術ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−59529
【特許文献2】特表2007−510270
【特許文献3】特表2007−519186
【特許文献4】特開2004−179146
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
非水電解質にカルボン酸エステルを含めると、過充電特性が向上する一方、高温サイクル特性が低下する。本発明者は、カルボン酸エステルを含む非水電解質を用いた場合における高温サイクル特性の低下について鋭意検討した。
【0010】
その結果、カルボン酸エステルとニトリル化合物とを組み合わせることにより、高温サイクル特性に優れた電池が得られることを見出した。またこれと同時に、カルボン酸エステルを含む非水電解質にニトリル化合物を添加すると、高温長期サイクル後におけるセパレータのシャットダウン応答速度及び過充電特性が顕著に低下するという新たな問題点を見出した。
【0011】
本発明はこれらの知見を踏まえてなされた発明である。本発明は、高温サイクル後のセパレータのシャットダウン機能及び過充電特性の低下を防ぎつつ、高温サイクル特性などの電池特性を改良し得た非水電解質二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する本発明は、次のように構成されている。
正極と、負極と、前記正負極を離間するセパレータと、非水溶媒と電解質塩とを含む非水電解質と、を備える非水電解質二次電池において、前記非水電解質は、カルボン酸エステルを含んだ非水溶媒と、ニトリル化合物と、電解質塩とを有し、前記セパレータは、気孔率が28〜54%であり、透気度が86〜450秒/デシリットルであることを特徴とする非水電解質二次電池。
【0013】
上記構成の気孔率は、セパレータ単位体積あたりの気孔体積の占める割合を意味する。また、上記透気度は、セパレータの細孔の状態を把握する数値であり、一定圧において1デシリットルの空気がセパレータを全て透過するのにかかる秒数(秒/デシリットル)を意味する。また、上記セパレータは、正負極を確実に絶縁でき、しかもリチウムイオンが自由に行き来できる細孔を備える必要があり、また電池温度が異常に上昇したときには、上記細孔を自動的に閉鎖しイオンの通過を遮断するシャットダウン機能を備えている。
【0014】
上記本発明基本構成の技術的意義を説明する。本発明は、カルボン酸エステルとニトリル化合物とを含む非水電解質を用いている。これにより、高温サイクル特性を向上させる。しかし、非水電解質にニトリル化合物を含めると、電池のシャットダウン機能が低下する。このため、本発明では、カルボン酸エステルとニトリル化合物とを含む非水電解質を用いると共に、気孔率が28〜54%であり、透気度が86〜450秒/デシリットルであるセパレータを用いる。この構成であると、ニトリル化合物を用いることによるシャットダウン応答速度の低下及び過充電特性の低下という負の効果を抑制することができる。
【0015】
すなわち、上記本発明基本構成によると、高温サイクル特性に優れ、しかもシャットダウン応答特性及び過充電特性に優れた非水電解質電池を実現することができる。
【0016】
上記本発明構成において、前記非水溶媒に含まれるカルボン酸エステルは、非水溶媒に対して5〜80質量%である、とすることができる。
【0017】
また、前記非水溶媒に含まれるカルボン酸エステルは、非水溶媒に対して10〜70質量%である、とすることができる。
【0018】
また、前記非水溶媒に含まれるカルボン酸エステルは、第3級カルボン酸エステルである、とすることができる。
【0019】
また、前記非水溶媒に含まれるカルボン酸エステルは、メチルトリメチルアセテート、エチルトリメチルアセテートからなる群より選択される第3級カルボン酸エステルである、とすることができる。
【0020】
また、前記ニトリル化合物は、前記非水溶媒の全体質量100部に対して、0.3〜5質量部添加されている、とすることができる。
また、前記ニトリル化合物は、前記非水溶媒の全体質量100部に対して、1〜3質量部添加されている、とすることができる。
また、前記ニトリル化合物は、式1で表されるジニトリル化合物である、とすることができる。
【0021】
CN−R−CN (式1)
ただし、Rは炭素数2〜8のアルキレン基を示す。
【0022】
また、前記ニトリル化合物は、アジポニトリル、ピメロニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリルからなる群より選択されるジニトリル化合物である、とすることができる。
【0023】
また、前記セパレータの平均孔径は、気液法による測定において0.04〜0.17μmの範囲内である、とすることができる。
【0024】
また、前記セパレータは、ポリオレフィン製である、とすることができる。このセパレータは、110℃〜145℃の温度でシャットダウンが開始されるものが好ましく、120℃〜140℃の温度でシャットダウンが開始されるものがより好ましい。
【0025】
上記した本発明構成において使用することのできるカルボン酸エステルとしては、例えば、ピバリン酸メチル、ピバリン酸エチル、ピバリン酸プロピル、ピバリン酸イソプロピル、ピバリン酸ブチル、ピバリン酸イソブチル、ピバリン酸ヘキシル、ピバリン酸オクチル、ピバリン酸ドデシル、トリメチル酢酸第2ブチル、トリメチル酢酸第3ブチル、2,2−ジメチルブタン酸メチル、2,2−ジメチルブタン酸エチルなどの3級カルボン酸エステル;メチルイソブチレート、エチルイソブチレート、プロピルイソブチレート、tert−ブチルイソブチレートなどの2級カルボン酸エステル;メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、イソプロピルアセテート、tert−ブチルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、イソプロピルプロピオネート、tert−ブチルプロピオネートなどの1級カルボン酸エステル;トリフルオロメチルプロピオネート、トリフルオロエチルプロピオネートなどのフッ化カルボン酸エステル;γ−ブチロラクトン及びγ−バレロラクトンなどの環状カルボン酸エステルを挙げることができる。
【0026】
この中でもピバリン酸メチル(メチルトリメチルアセテート)及びピバリン酸エチル(エチルトリメチルアセテート)などの3級カルボン酸エステルが特に好ましい。これらのカルボン酸エステルは2種以上を混合して用いても良い。
【0027】
また、本発明で使用することのできるニトリル化合物としては、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、バレロニトリル、ヘキサンニトリル、オクタンニトリル、ウンデカンニトリル、シクロヘキサンカルボニトリル、ベンゾニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、2−メチルグルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、スベロニトリル、アゼラニトリル、セバコニトリル、ウンデカンジニトリル、ドデカンジニトリル、1,2,3−プロパントリカルボニトリル、1,2,3−トリス(2−シアノエトキシ)プロパン、1,3,5−シクロヘキサントリカルボニトリル、1,3,5−ペンタントリカルボニトリル、tert−ブチルマロノニトリル、マロノニトリル、3,3´−オキシジプロピオニトリル、3,3´−チオジプロピオニトリル、1,2−ジシアノベンゼン、1,3−ジシアノベンゼン及び1,4−ジシアノベンゼンなどが挙げられる。これらのニトリル化合物は、2種以上を混合して用いても良い。
【0028】
また、本発明で使用するニトリル化合物は、式1で表されるジニトリル化合物が好ましく、アジポニトリル、ピメロニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリルがより好ましく、特にアジポニトリルが好ましい。
【0029】
CN−R−CN (式1)
ただし、Rは炭素数2〜8のアルキレン基を示す。
【0030】
ところで、カルボン酸エステルを含む非水電解質にニトリル化合物を添加すると、シャットダウン機能が阻害されシャットダウン応答速度が低下する。この原因は明確ではないが、一応次のように考えることができる。カルボン酸エステルを含む非水電解質にニトリル化合物を添加すると、充電時にニトリル化合物が正極と反応して被膜を形成し、その一部が被膜片となって充放電に伴って移動してセパレータの細孔内やその近傍に堆積し、この堆積物がセパレータの熱溶融による細孔の閉鎖を邪魔する。この仮説に立って、本発明で規定するセパレータ物性の技術的意義を次に説明する。
【0031】
非水電解質電池用セパレータには、イオン透過性と絶縁という相反する機能が要求され、かつ非常時にはイオン透過性を不可逆的に遮断してしまう機能(シャットダウン機能)が要求されている。しかし、従来構成の電池においては、被膜片堆積物に原因するシャットダウン応答速度の遅延という課題がなかった。それゆえ、当然に被膜片堆積物とシャットダウン応答速度との関係は全く知られていなかった。本発明者は、ニトリル化合物由来の被膜片についてセパレータの気孔率と透気度に着目して種々検討した。
【0032】
一般に、セパレータの気孔率が高くなる、あるいは透気度が低くなると、被膜片による細孔の目詰まりが少なくなると考えられ、この結果としてシャットダウン応答速度の低下が防止されるはずである。しかし、このようにはならなかった。すなわち、セパレータの気孔率を高め、透気度を低くしても必ずしも良好な結果が得られなかった。この事実から、セパレータの気孔率が高すぎる、および/または透気度が低すぎると、被膜片が短時間でセパレータ内部にまで浸透して堆積する結果、却ってシャットダウン機能が邪魔されることが考えられた。
【0033】
また、セパレータの気孔率が低すぎる、および/または透気度が高すぎると、被膜片が正極側のセパレータ表面近傍により多くの被膜片が堆積するために、やはりシャットダウンによる細孔の閉鎖を妨害すると考えられた。これに対し、セパレータの気孔率を28〜54%とし、かつ透気度を86〜450秒/デシリットルに規制すると、シャットダウン機能への悪作用が顕著に緩和された。この効果は、被膜片の性質、形状、大きさなどの特質との関係において、気孔率28〜54%でかつ透気度86〜450秒/デシリットルである物性値が特異的作用を及ぼした結果であると考えられる。
【0034】
すなわち、気孔率28〜54%でかつ透気度86〜450秒/デシリットルであるセパレータの作用効果は、ニトリル化合物由来の被膜片に対する特異的効果であると考えられる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、高温サイクル後のセパレータのシャットダウン機能及び過充電特性を好適に維持しつつ、高温サイクル特性などの電池特性に優れた非水電解質二次電池を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
実施例に基づいて、本発明を実施する好ましい形態を説明する。なお、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することができる。
【0037】
<第一実施例群>
第一実施例群(実施例1〜21及び比較例1〜5)では、同一のセパレータを使用し、非水溶媒の組成、添加剤の種類及び量と電池特性との関係を調べた。
【0038】
(実施例1)
1.電池の作製
<正極の作製>
正極活物質としての95質量%のコバルト酸リチウム(LiCoO2)と、2.5質量%のカーボンブラック(導電剤)と、2.5質量%のポリフッ化ビニリデン(結着剤)とを混合し、さらにN−メチルピロリドン(NMP)と混合してスラリーを調製した。このスラリーを集電体としてのアルミニウム箔(厚さ:12μm)の上に塗布した(塗布量:380g/m2)。その後、乾燥してNMPを除去し、加圧成形(充填密度3.70g/cc)して正極板を作製した。
【0039】
<負極の作製>
負極活物質としての95質量%の人造黒鉛(d=0.335nm)と、3質量%のカーボンブラック(導電剤)と、1質量%のCMC(結着剤)と、1質量%のSBR(結着剤)とを混合し、これに水を加えてスラリーとした。このスラリーを集電体としての銅箔(厚さ:8μm)に塗布した(塗布量:165g/m2)。その後、乾燥して水分を除去し、加圧成形(充填密度1.60g/cc)して負極板を作製した。
【0040】
<非水電解質の作製>
エチレンカーボネート(EC)と、プロピレンカーボネート(PC)と、メチルトリメチルアセテート(MTMA)との混合物である非水溶媒(質量%比 EC:PC:MTMA=30:20:50)を調製した。この非水電解質用非水溶媒100質量部に対してアジポニトリル(ADPN)を1質量部添加した。さらにこの混合溶液に電解質塩となるLiPF6を1mol/Lとなるように溶解させ、非水電解質とした。
【0041】
〈セパレータA〉
厚さ12μm、気孔率35%、透気度390秒/デシリットルである、ポリエチレン製の微多孔性セパレータを用意した。このセパレータをセパレータAと称することとする。
【0042】
<電池の作製>
上記で作製した正極極板と負極極板を所定寸法に切断し、各極板に集電タブを溶接で取り付けた。この正負極板の間に、上記セパレータAを介在させ、捲回して電極体とした。この電極体を外装缶に収納した後、上記で作製した非水電解質を注液し、リチウムイオン二次電池(理論容量:750mAh、電極面積:450cm2)を完成させた。
【0043】
2.試験・測定
<高温サイクル特性試験>
電池のサイクル特性試験を次のように行なった。60℃において、作製した電池を750mAの定電流で電池電圧が4.20Vに達するまで充電した。さらに4.20Vとしたまま電流値が37mAになるまで充電した。次いで、750mAの定電流で、電圧が2.75Vになるまで放電した。この充放電の過程を1サイクルとし、300サイクルまで充放電を繰り返した。1サイクル目及び300サイクル目の放電容量を測定し、以下の計算式に基づいて、サイクル特性を示す値として求めた。
【0044】
サイクル特性値(%)
=(300サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100
【0045】
<過充電特性>
常温において放電状態から種々の電流レートで充電を行い、破裂・発火・発煙が生じない最大電流値を限界電流として、過充電特性を表す数値とした。測定は、完成後すぐの電池(フレッシュ品)及びサイクル試験終了後の電池に対して行なった。
<シャットダウン特性>
試験条件:放電状態の電池を2.5℃/分の速度で160℃まで昇温し、その間の電池のインピーダンスを測定した。
【0046】
シャットダウン応答速度(Ω・cm2/sec)
=1秒当りのインピーダンス上昇速度の最大値(Ω/sec)×電極面積(cm2
【0047】
<気孔率>
気孔率は、次のような方法で決定した。フレッシュ品から取り出したセパレータを20cm2の大きさに切り取り、その体積(cm3)と質量(g)を求め、得られた値より、次式を用いて算出した。
【0048】
気孔率(%)=
(体積(cm3)−質量(g)/密度(g/cm3))/体積(cm3)×100
【0049】
ここで、密度(g/cm3)は、微多孔膜が単一の素材からなる場合はその素材の密度を用いる。本願において、ポリエチレン製微多孔性膜を用いた各実施例及び各比較例では、高密度ポリエチレンの密度0.950g/cm3を用いた。また、微多孔膜が複合樹脂材料からなる場合は、微多孔膜を溶融させ、溶融後の質量及び体積から密度を求める。
【0050】
<透気度測定>
透気度は、ガーレー式透気度(JIS P8117準拠)を測定した。
試験条件
圧力:0.01224atm
膜面積:6.395cm2
透過空気量:100cc(1デシリットル)
【0051】
<平均孔径測定>
平均孔径は、次のように測定した。キャピラリー内部の流体は、流体の平均自由行程がキャピラリーの孔径より小さいときはポアズイユの流れ、大きいときはクヌーセンの流れに従うことが知られている。ここで、JIS P−8117準拠の透気度測定における空気の流れがクヌーセンの流れ、常温での透水度測定における水の流れがポアズイユの流れに従うと仮定すると、平均孔径d(m)は、空気の透過速度定数Rgas、水の透過速度定数Rliq、水の粘度η(Pa・sec)、標準圧力Ps(101325Pa)、気体の分子速度ν(m/sec)から、次式(1)を用いて求めることが出来る。
【0052】
d=2ν(Rliq /Rgas )(16η/3)(1/Ps)・・・ (1)
【0053】
ここで、Rgasは、透気度Pgas(sec)から次式(2)を用いて求められる。
【0054】
Rgas(m3/(m2・sec・Pa))=0.0001/Pgas/0.0006395/(0.01224×101325)・・・(2)
【0055】
また、Rliqは、透水度Pliq(cm3/(cm2・sec・atm))から次式(3)を用いて求められる。
【0056】
Rliq(m3/(m2・sec・Pa))=Pliq/1000000/0.0001/101325・・・(3)
【0057】
さらに、νは、気体定数R(8.314)、絶対温度T(K)、円周率π、気体の平均分子量M(kg/mol)から次式(4)を用いて求められる。
【0058】
ν2=8RT/πM・・・(4)
【0059】
(実施例2)
上記した非水電解質用非水溶媒(100質量部)に対しアジポニトリルを3質量部添加したこと以外は、実施例1と同様にして電池を作製した。
【0060】
(実施例3)
上記した非水電解質用非水溶媒(100質量部)に対しアジポニトリルを5質量部添加したこと以外は、実施例1と同様にして電池を作製した。
【0061】
(実施例4)
上記した非水電解質用非水溶媒(100質量部)に対しアジポニトリルを0.3質量部添加したこと以外は、実施例1と同様にして電池を作製した。
【0062】
(実施例5)
アジポニトリルの代わりにスクシノニトリルを1質量部添加したこと以外は、実施例1と同様にして電池を作製した。
【0063】
(実施例6)
アジポニトリルの代わりにセバコニトリルを1質量部添加したこと以外は、実施例1と同様にして電池を作製した。
【0064】
(実施例7)
アジポニトリルの代わりにウンデカンジニトリルを1質量部添加したこと以外は、実施例1と同様にして電池を作製した。
【0065】
(実施例8)
アジポニトリルの代わりにブチロニトリルを1質量部添加したこと以外は、実施例1と同様にして電池を作製した。
【0066】
(実施例9)
非水電解質用非水溶媒の組成を、EC:PC:MTMA=20:10:70(質量%比)としたこと以外は、実施例1と同様にして電池を作製した。
【0067】
(実施例10)
非水電解質用非水溶媒の組成を、EC:PC:MTMA=30:30:40(質量%比)としたこと以外は、実施例1と同様にして電池を作製した。
【0068】
(実施例11)
非水電解質用非水溶媒の組成を、EC:PC:MTMA=35:25:40(質量%比)としたこと以外は、実施例1と同様にして電池を作製した。
【0069】
(実施例12)
非水電解質用非水溶媒の組成を、EC:PC:MTMA=35:30:35(質量%比)としたこと以外は、実施例1と同様にして電池を作製した。
【0070】
(実施例13)
非水電解質用非水溶媒の組成を、EC:PC:MTMA=50:20:30(質量%比)としたこと以外は、実施例1と同様にして電池を作製した。
【0071】
(実施例14)
非水電解質用非水溶媒の組成を、EC:PC:MTMA=50:40:10(質量%比)としたこと以外は、実施例1と同様にして電池を作製した。
【0072】
(実施例15)
非水電解質用非水溶媒の組成を、EC:PC:MTMA=50:45:5(質量%比)とした以外は、実施例1と同様にして電池を作製した。
【0073】
(実施例16)
非水電解質用非水溶媒の組成を、EC:MTMA=20:80(質量%比)としたこと以外は、実施例1と同様にして電池を作製した。
【0074】
(実施例17)
非水電解質用非水溶媒の組成を、EC:ブチレンカーボネート(BC):MTMA=30:20:50(質量%比)としたこと以外は、実施例1と同様にして電池を作製した。
【0075】
(実施例18)
非水電解質用非水溶媒の組成を、EC:PC:エチルトリメチルアセテート(ETMA)=30:20:50(質量%比)としたこと以外は、実施例1と同様にして電池を作製した。
【0076】
(実施例19)
非水電解質用非水溶媒の組成を、EC:PC:2,2−ジメチルメチルブチレート(DMMB)=30:20:50(質量%比)としたこと以外は、実施例1と同様にして電池を作製した。
【0077】
(実施例20)
非水電解質用非水溶媒の組成を、EC:PC:メチルイソブチレート(MIB)=30:20:50(質量%比)としたこと以外は、実施例1と同様にして電池を作製した。
【0078】
(実施例21)
非水電解質用非水溶媒の組成を、EC:PC:エチルイソブチレート(EIB)=30:20:50(質量%比)としたこと以外は、実施例1と同様にして電池を作製した。
【0079】
(比較例1)
非水電解質にアジポニトリルを全く添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして電池を作製した。
【0080】
(比較例2)
非水電解質用非水溶媒にMTMAを使用しないで、その組成をEC:PC=55:45としたこと以外は、実施例1と同様にして電池を作製した。
【0081】
(比較例3)
非水電解質用非水溶媒にMTMAを使用しないで、その組成をEC:PC:ジエチルカーボネート(DEC)=30:20:50とした以外は、実施例1と同様にして電池を作製した。
【0082】
(比較例4)
非水電解質用非水溶媒にMTMAを使用せず、アジポニトリルを全く添加しないで、その組成をEC:PC=55:45とした以外は、実施例1と同様にして電池を作製した。
【0083】
(比較例5)
非水電解質用非水溶媒にMTMAを使用せず、アジポニトリルを全く添加しないで、その組成をEC:PC:DEC=30:20:50とした以外は、実施例1と同様にして電池を作製した。
以上の実施例1〜21及び比較例1〜5の電池特性にかかる結果を表1および表2にまとめた。
【0084】
【表1】

【0085】
【表2】

【0086】
EC:エチレンカーボネート
PC:プロピレンカーボネート
BC:ブチレンカーボネート
DEC:ジエチルカーボネート
MTMA:メチルトリメチルアセテート(ピバリン酸メチル)
ETMA:エチルトリメチルアセテート(ピバリン酸エチル)
DMMB:2,2-ジメチルメチルブチレート
MIB:メチルイソブチレート
EIB:エチルイソブチレート
ADPN:アジポニトリル
SCN:スクシノニトリル
SBN:セバコニトリル
UDDN:ウンデカンジニトリル
BN:ブチロニトリル
使用したセパレータAの気孔率35%、透気度390秒/デシリットル
【0087】
〔実施例1と比較例1〜2の比較〕
MTMAを含むが、ADPNを含まない比較例1は、実施例1に比較し、60℃、300サイクル試験におけるサイクル特性(高温サイクル特性と称する)の低下が大きく、また過充電限界電流値(It)が若干劣っていた。
【0088】
また、ADPNを含むが、MTMAを含まない比較例2は、実施例1に比較し、フレッシュ品及300サイクル品とも過充電限界電流値(It)が悪く、高温サイクル特性の低下が顕著であった。
他方、MTMAとADPNの双方を含む実施例1は、表1に示す全ての項目において良好な結果が得られた。
【0089】
〔比較例2〜比較例5の比較〕
比較例2〜比較例5から、MTMAを含まないものは、フレッシュ品及300サイクル品とも過充電限界電流値(It)が低く、また比較例2と比較例4との比較から、カルボン酸エステルを含まない非水溶媒にADPNを添加しても高温サイクル特性の向上が認められなかった。
【0090】
〔実施例1〜4の比較〕
実施例1〜4は、ADPNの添加量を0.3質量部から5質量部の範囲で変化させた電池である。実施例1〜4は良好な電池特性を示した。よって、少なくともADPNの添加量を0.3質量部〜5質量部とすればよいことが判る。
ただし、ADPN添加量が5質量部の実施例3は、実施例1および2に比較し高温サイクル特性の低下が大きかった。また、ADPN添加量が0.3質量部の実施例4は、実施例1および2に比較しシャットダウン応答速度の低下が大きかった。この結果から、ADPN添加量は、1〜3質量部(実施例1及び2)とするのがより好ましいことが判る。
【0091】
〔実施例1と実施例5〜8の比較〕
実施例5〜8は、ADPN(アジポニトリル)の代わりに、それぞれスクシノニトリル、セバコニトリル、ウンデカンジニトリルまたはブチロニトリルが用いられている。実施例5〜8においても、実施例1と概ね同様な良好な結果が得られた。ただし、ジニトリルでないブチロニトリルを用いた実施例8は、他の実施例に比較して、300サイクル試験結果がやや悪かった。
【0092】
〔実施例1と実施例9〜16の比較〕
実施例1、実施例9〜16により、非水電解質用非水溶媒中のMTMAの割合について検討した。MTMAの割合が35〜70質量%の実施例1、9〜12は、全ての特性が良好であった。他方、MTMAの割合が80質量%の実施例16は、高温サイクル特性および300サイクル後の過充電限界電流値(It)がやや低かった。また、MTMAの割合が30質量%、10質量%の実施例13、14は、高温サイクル特性がやや低かった。さらに、MTMAの割合が5質量%の実施例15においては、全ての特性値の低下傾向が認められた。
【0093】
これらの結果から、非水溶媒の全質量中に占めるカルボン酸エステル量を、好ましくは10〜70質量%とし、より好ましくは35〜70質量%とするのがよいことが判る。
【0094】
〔実施例1と実施例18〜21の比較〕
実施例18〜21は、MTMA(実施例1)の代わりに、カルボン酸エステルとしてETMA(実施例18)、DMMB(実施例19)、MIB(実施例20)またはEIB(実施例21)を用いた電池である。これらの実施例においても、各比較例に比較し特性値の向上が認められた。ただし、3級カルボン酸エステルでないMIB(実施例20)及びEIB(実施例21)は、これら以外の実施例に比較し特性値の向上程度が小さかった。
【0095】
以上の結果から、カルボン酸エステルを含む非水溶媒にニトリル化合物を添加することにより、カルボン酸エステルに起因する高温サイクル特性の低下を防止することができることが判る。これは、次の理由によると考えられる。
【0096】
非水電解質にカルボン酸エステルを含めると、負極表面に形成される被膜が脆弱化し、負極保護機能が低下する。このため、正極表面において生成した酸化生成物が負極表面へと移動し、負極表面で還元反応を受け、この還元反応により生成した還元分解生成物が負極上に堆積する。この還元分解生成物が負極にインピーダンス分布を生じさせ、不均一な電気化学反応を起こす。このため、長期サイクル特性が低下するが、非水電解質にニトリル化合物を添加すると、正極表面に被膜が形成され、正極表面における酸化生成物の生成が抑制される。このため負極表面における還元分解生成物の生成が少なくなり、この結果として不均一反応の発生が防止されるので、高温サイクル特性の低下が抑制されると考えられる。
【0097】
〈セパレータB群〉
表1の実施例群および比較例群は気孔率35%で透気度390秒/デシリットルのセパレータAが使用されているが、これに代えて、気孔率35%で透気度465秒/デシリットルのセパレータBを用い、比較例6〜18を作製した。そして、表1の場合と同様な方法で電池特性を評価し、その結果を表3にまとめた。
【0098】
【表3】

【0099】
表3において、比較例6とその他の比較例との対比により、以下のことが明らかになった。カルボン酸エステル(MTMA)を含む非水溶媒を用いた比較例6〜14において、ニトリル化合物を含まない比較例6で高温サイクル特性の低下が大きかったが、セパレータのシャットダウン応答速度や過充電限界電流値(It)は良好であった。他方、カルボン酸エステルとニトリル化合物の双方を含む比較例7〜14では高温サイクル特性の低下が十分に抑制されていたが、300サイクル後のセパレータのシャットダウン応答速度及び過充電限界電流値(It)の低下が大きかった。
【0100】
また、比較例6〜18の相互比較において、300サイクル後のセパレータのシャットダウン応答速度の低下は、非水電解質にカルボン酸エステルとニトリル化合物の双方を含めた場合にのみ生じることが認められた。
【0101】
以上から、セパレータBを用いた電池では、高温サイクル特性及び過充電特性が共に良好なものは得られないことが判る。
【0102】
<第二実施例群>
上記表3の比較例6〜18の結果から、セパレータの条件が電池特性に大きく影響を及ぼすことが明らかになった。そこで第二実施例群(実施例22〜27及び比較例19〜25)では、非水溶媒の組成、ニトリル化合物の種類及び量を実施例1と同一とし、セパレータの条件(気孔率及び透気度)を変えて電池特性との関係を調べた。
【0103】
セパレータの気孔率及び透気度を表4に示す値としたこと以外は、実施例1と同様にして各電池を作製した。各電池の特性にかかるデータを表4にまとめた。
【0104】
【表4】

【0105】
表4に挙げた各電池のフレッシュ品におけるシャットダウン応答速度は、すべて>3000(Ω・cm2/sec)であった。また、表4からわかるように、フレッシュ品は全て過充電限界電流値(It)が良好であった。しかし、300サイクル試験において、比較例電池はシャットダウン応答速度及び過充電限界電流値(It)が大きく低下した。このことを更に詳しく説明する。
【0106】
〔実施例1,23〜27及び比較例21〜23の比較〕
(1)表4において、気孔率が35〜36%とほぼ同様であり、透気度が各々異なる実施例1,23,24、及び比較例21、22において、透気度が60秒/デシリットルの比較例21、および透気度が465秒/デシリットルの比較例22は、300サイクル後のシャットダウン応答速度が顕著に低下した。他方、透気度が160〜450秒/デシリットルの範囲にある、実施例1,23,24については、シャットダウン応答速度の低下が殆ど認められなかった。
【0107】
この結果から、望ましい透気度を与える下限値は、60秒/デシリットル〜160秒/デシリットルの間にあり、上限値は450秒/デシリットルであることが判る。
【0108】
(2)実施例25〜27および比較例23は、気孔率が54%(共通)であり、透気度(80〜380秒/デシリットル)が異なる電池群である。比較例23と実施例25の比較から、これらの電池間の透気度(80←→86)の差は小さいが、300サイクル後のシャットダウン応答速度と過充電限界電流値(It)の低下程度に顕著な開きが認められた。すなわち、比較例23の300サイクル後のシャットダウン応答速度は実施例25の1/2.7倍であり、過充電限界電流値(It)は1/3.4倍であった。
【0109】
(3)以上の結果から、300サイクル後のシャットダウン応答速度の大幅な低下を防止するためには、透気度を86秒/デシリットル以上とし、好ましくは160秒/デシリットル以上とし、その上限を450秒/デシリットルとするのがよい。
【0110】
〔実施例22、26〜27、比較例19〜20、24〜25の比較〕
(1)比較例19と比較例20とは、気孔率が同じ(26%)であるが、透気度が大きく異なる電池である。これらの電池は何れも300サイクル後のシャットダウン応答速度と過充電限界電流値(It)の低下が大きかった。他方、気孔率が28%、透気度が360秒/デシリットルの実施例22については、300サイクル後のシャットダウン応答速度と過充電限界電流値(It)の低下がなかった。
【0111】
ここで、比較例20の透気度は、310秒/デシリットルであるが、上記したように透気度が160秒/デシリットル以上であれば300サイクル試験における電池特性の低下が認められなかったので、比較例20と実施例22の300サイクル後電池特性の違いは、気孔率の違い(26←→28)に起因する。この結果から、セパレータの気孔率は28%以上とする必要があることが判る。
【0112】
(2)実施例26〜27、比較例24〜25の比較において、比較例24の300サイクル後のシャットダウン応答速度と過充電限界電流値(It)は、実施例26及び実施例27のそれに比較し顕著に低かった。比較例24の透気度290秒/デシリットルは、実施例26(透気度270)と実施例27(透気度380)の間にあるので、実施例26〜27と比較例24の電池特性の差は、気孔率の違い(54と58の違い)に起因すると言える。すなわち、気孔率が54%を超えると、300サイクル後のシャットダウン応答速度と過充電限界電流値(It)が大きく低下する。よって、セパレータの気孔率は54%以下とする必要がある。
【0113】
(3)以上から、セパレータの気孔率は、28%以上54%以下とする必要がある。
【0114】
ところで、非水電解質にカルボン酸エステルとニトリル化合物の双方が含まれる場合における60℃、300サイクル後のシャットダウン応答速度及び過充電特性の低下原因としては、充放電サイクル中に、正極表面に形成された正極被膜が剥がれ、この被膜片がセパレータの細孔内やその近傍に堆積することにより、セパレータ細孔を塞ぎリチウムイオンの円滑な通過を阻害すると共に、この堆積物がシャットダウン機能を低下させたものと考えられる。他方、気孔率%と透気度が適正に規制されたセパレータでは、堆積物の悪作用(リチウムイオンを透過させる機能およびリチウムイオンの透過をシャットダウンする機能を阻害する悪作用)が緩和され、その結果として、長期サイクル後のシャットダウン応答速度及び過充電限界電流値(It)が改善されたものと考えられる。
【0115】
<第三実施例群>
第三実施例群(実施例28〜34)では、セパレータの細孔径と電池特性との関係を調べた。各実施例は、以下の表5に示す気孔率、透気度及び孔径を有するセパレータを用いたこと以外は、実施例1と同様にして電池を作製し、これらの電池について実施例1の場合と同様な方法で電池特性を調べた。その結果を表5にまとめた。
【0116】
【表5】

【0117】
実施例28〜34の電池特性は何れも良好であったが、平均孔径が0.04〜0.17μmの範囲にある実施例29〜33と、この範囲外の実施例28及び実施例34との間に、300サイクル後の過充電限界電流値(It)に差が認められた。すなわち、平均孔径が0.04〜0.17μmの範囲にある実施例29〜33の300サイクル後の過充電限界電流値(It)は3.0〜3.3Itであるのに対し、平均孔径がこの範囲外の実施例28及び実施例34のそれは、2.1〜2.0であった。
【0118】
この結果から、セパレータの平均細孔径は、0.04〜0.17μmとするのがより好ましいことが判る。
【0119】
(追加事項)
本発明の非水電解質用非水溶媒は、カルボン酸エステルに加えて、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート及びブチレンカーボネートなどの環状カーボネート類;ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)などの鎖状カーボネート;テトラヒドロフラン及び1,4−ジオキサンなどの環状エーテル;N,N−ジメチルホルムアミド及びN−メチルオキサゾリジノンなどのアミド化合物、スルホランなどの硫黄化合物、テトラフルオロ硼酸1−エチル−3−メチルイミダゾリウム及びテトラフルオロ硼酸1−ブチルピリジニウムなどの常温溶融塩などを用いることができ、これらを2種類以上組み合わせて用いることもできる。
【0120】
また、非水電解質用非水溶媒には、正極の高電位下における溶媒の分解抑制のためにハロゲン原子を有する環状炭酸エステル誘導体を添加することができる。環状炭酸エステル誘導体の例としては、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−クロロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンなどが挙げられる。中でも、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンが好適に用いられる。これらは、2種類以上混合して用いても良い。
【0121】
更にまた、非水電解質用非水溶媒には、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、無水コハク酸、無水マレイン酸、グリコール酸無水物、1,3−プロパンスルトン、1,3−プロペンスルトン、エチレンサルファイト(ES)、ジビニルスルホン、ビニルアセテート(VA)、ビニルピバレート、tert−アミルベンゼン(t−AB)、tert−ブチルベンゼン(t−BB)、1,3−ジオキサン(1,3−DOX)、1,3−ジオキソラン(1,3−DOXL)、カテコールカーボネート、シクロヘキシルベンゼン(CHB)、ビフェニルなどを添加することができる。これらは、2種類以上混合して用いても良い。
【0122】
本発明で使用することのできる正極活物質としては、LiCoO2、LiNiO2、LiMn24、LiMnO2、LiNi1-xMnx2(0<x<1)、LiNi1-xCox2(0<x<1)、LiNixMnyCoz2(0<x,y,z<1、x+y+z=1)などのリチウム複合酸化物、LiFePO4などのオリビン構造を有するリン酸化合物が好ましい。
【0123】
本発明で使用することができる負極活物質としては、黒鉛、難黒鉛化性炭素及び易黒鉛化性炭素などの炭素原料、LiTiO2及びTiO2などのチタン酸化物、ケイ素及びスズなどの半金属元素、またはSn-Co合金が好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明によれば、高温サイクル後のセパレータのシャットダウン応答速度及び過充電特性を低下させずに安全性を確保しつつ、高温サイクル特性に優れた非水電解質二次電池が得られる。よって、その産業上の利用可能性は大きい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、負極と、前記正負極を離間するセパレータと、非水溶媒と電解質塩とを含む非水電解質と、を備える非水電解質二次電池において、
前記非水電解質は、カルボン酸エステルを含んだ非水溶媒と、ニトリル化合物と、電解質塩とを有し、
前記セパレータは、気孔率が28〜54%であり、透気度が86〜450秒/デシリットルである、
ことを特徴とする非水電解質二次電池。
【請求項2】
請求項1に記載の非水電解質二次電池において、
前記非水溶媒に含まれるカルボン酸エステルは、非水溶媒に対して5〜80質量%である、
ことを特徴とする非水電解質二次電池。
【請求項3】
請求項1に記載の非水電解質二次電池において、
前記非水溶媒に含まれるカルボン酸エステルは、非水溶媒に対して10〜70質量%である、
ことを特徴とする非水電解質二次電池。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れかに記載の非水電解質二次電池において、
前記非水溶媒に含まれるカルボン酸エステルは、第3級カルボン酸エステルである、
ことを特徴とする非水電解質二次電池。
【請求項5】
請求項4に記載の非水電解質二次電池において、
前記第3級カルボン酸エステルは、メチルトリメチルアセテート、エチルトリメチルアセテートからなる群より選択される第3級カルボン酸エステルである、
ことを特徴とする非水電解質二次電池。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れかに記載の非水電解質二次電池において、
前記ニトリル化合物は、前記非水溶媒の全体質量100部に対して、0.3〜5質量部添加されている、
ことを特徴とする非水電解質二次電池。
【請求項7】
請求項6に記載の非水電解質二次電池において、
前記ニトリル化合物は、式1で表されるジニトリル化合物である、
ことを特徴とする非水電解質二次電池。
CN−R−CN ・・・(式1)
ただし、Rは、炭素数2〜8のアルキレン基を示す。
【請求項8】
請求項6に記載の非水電解質二次電池において、
前記ニトリル化合物は、アジポニトリル、ピメロニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリルからなる群より選択されるジニトリル化合物である、
ことを特徴とする非水電解質二次電池。
【請求項9】
請求項1ないし8の何れかに記載の非水電解質二次電池において、
前記セパレータの平均孔径は、気液法による測定において0.04〜0.17μmの範囲内である、
ことを特徴とする非水電解質二次電池。
【請求項10】
請求項9に記載の非水電解質二次電池において、
前記セパレータは、ポリオレフィン製セパレータである、
ことを特徴とする非水電解質二次電池。

【公開番号】特開2010−56076(P2010−56076A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−170918(P2009−170918)
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】