説明

非水電解質二次電池

【課題】正極塗工部の幅方向中央部と幅方向端部との温度差を小さくすることによって、正極塗工部の温度ムラを小さくすることができ、且つ、電池の内部抵抗上昇を小さくすることができる非水電解質二次電池を提供する。
【解決手段】非水電解質二次電池100は、帯状の正極130、負極120、及びセパレータ150を捲回した電極体110を備える。正極130は、帯状の正極集電部材138、帯状の正極合材層131、及び、正極集電部材138と正極合材層131との間に配置された帯状の中間層139を有する。中間層139は、正極集電部材138よりも熱伝導率が高く、正極合材層131の一部であって正極合材層131の幅方向中央部131bを含む幅方向一部131dに対向する領域に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池などの非水電解質二次電池は、携帯機器の電源として、また、電気自動車やハイブリッド自動車などの電源として注目されている。特許文献1には、非水電解質二次電池として、帯状の正極(正極板)、負極(負極板)、及びセパレータを捲回した電極体(電極群)を備えたリチウムイオン二次電池が開示されている。このうち、正極は、帯状の正極集電部材、帯状の正極合材層、及び、正極集電部材と正極合材層との間に配置された帯状の中間層を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−149924号公報
【0004】
特許文献1では、中間層として、グラファイトを主成分とした中間層を設けている。このような中間層を設けることにより、過充電状態に陥った場合でも、正極活物質の発熱反応を緩やかにすることができ、その結果、セパレータのシャットダウン機能を確実に発現させることができると記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1では、発明の効果を高めるべく、中間層を、正極合材層全面に対向する全領域に中間層を配置することにより、電池の内部抵抗が大きく上昇する虞があった。これにより、電池の出力特性が大きく低下する虞があった。
【0006】
ところで、非水電解質二次電池では、充放電を行うことにより、正極の幅方向について温度ムラが発生する。具体的には、正極のうち正極合材層が塗工されている部位(正極塗工部ともいう)の温度分布を調べると、幅方向中央部が最も高温となり、幅方向端部に向かうにしたがって温度が低下し、幅方向端部が最も低温となる傾向にあった。このように、正極塗工部に温度ムラが生じると、これに起因して、充放電反応ムラが発生してしまう。この充放電反応ムラが大きくなると、電池の寿命特性が低下する虞があった。
【0007】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、正極塗工部の幅方向中央部と幅方向端部との温度差を小さくすることによって、正極塗工部の温度ムラを小さくすることができ、且つ、電池の内部抵抗上昇を小さくすることができる非水電解質二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、帯状の正極、負極、及びセパレータを捲回した電極体、を備え、上記正極は、帯状の正極集電部材、帯状の正極合材層、及び、上記正極集電部材と上記正極合材層との間に配置された帯状の中間層、を有する非水電解質二次電池であって、上記中間層は、上記正極集電部材よりも熱伝導率が高く、上記正極合材層の一部であって上記正極合材層の幅方向中央部を含む幅方向一部に対向する領域に配置されてなる非水電解質二次電池である。
【0009】
上述の非水電解質二次電池は、正極集電部材と正極合材層との間に帯状の中間層を備えている。しかも、この中間層は、正極集電部材よりも熱伝導率が高い。また、この中間層は、「正極合材層の一部であって、正極合材層の幅方向中央部を含む幅方向一部(詳細には、正極合材層の一部分であって、正極合材層の幅方向中央部とこれの両側に位置する部位からなる帯状部位)」に対向する領域に配置されている。
【0010】
このため、電極体において、中間層を通じて、正極塗工部(正極のうち正極合材層が塗工されている部位をいう)の幅方向中央部(最も高温となる部位)から幅方向端部(最も低温となる部位)側への熱伝導を促進させることができる。これにより、電極体において、正極塗工部の幅方向中央部と幅方向端部との温度差を低減し、正極塗工部の温度ムラを小さくすることができる。
【0011】
従って、上述の非水電解質二次電池によれば、充放電反応ムラを低減することができ、その結果、電池の寿命特性を向上させることができる。
【0012】
また、上述の非水電解質二次電池は、中間層を、「正極合材層の一部であって、正極合材層の幅方向中央部を含む幅方向一部(詳細には、正極合材層の一部分であって、正極合材層の幅方向中央部とこれの両側に位置する部位からなる帯状部位)」に対向する領域にのみ配置している。例えば、正極合材層の幅寸法をW1、中間層の幅寸法をW2としたとき、W1>W2としている。
【0013】
このように、正極合材層の一部分(幅方向一部)に対向する領域にのみ、中間層を配置することで、正極合材層全面に対向する全領域に中間層を配置する場合(W1=W2とした場合)に比べて、電池の内部抵抗を小さくすることができる。これにより、電池の出力特性を向上させることができる。
【0014】
さらに、上記の非水電解質二次電池であって、前記正極合材層の幅寸法W1と前記中間層の幅寸法W2とは、0.4≦W2/W1≦0.8の関係を満たす非水電解質二次電池とすると良い。
【0015】
0.4≦W2/W1≦0.8の関係を満たす幅寸法の中間層を設けることで、正極塗工部の幅方向中央部と幅方向端部との温度差を効果的に低減することができ、且つ、電池の内部抵抗上昇を効果的に低減することができる。なお、正極合材層の幅方向中心と中間層の幅方向中心とを一致させるのが好ましい。
【0016】
さらに、上記いずれかの非水電解質二次電池であって、前記中間層は、高結晶性グラファイトとバインダにより形成されてなる非水電解質二次電池とすると良い。
【0017】
高結晶性グラファイトは、熱伝導率が極めて高い材料である。高結晶性グラファイトとしては、例えば、鱗片状をなし、その表面に沿った沿面方向に結晶成長したグラファイト粒子であり、沿面方向寸法が5μmで、厚み方向(沿面方向に直交する方向)寸法が60nmの大きさを有し、沿面方向の熱伝導率が1000W/mK以上(例えば、1500W/mK)のものを挙げることができる。
【0018】
このような高結晶性グラファイトとバインダにより中間層を形成することで、電極体において、中間層を通じて、正極塗工部の幅方向中央部(最も高温となる部位)から幅方向端部(最も低温となる部位)側への熱伝導を促進させることができる。
【0019】
なお、このような中間層は次のようにして作製することができる。まず、高結晶性グラファイトとバインダと溶媒とを混合して、スラリーを作製する。このスラリーを正極集電部材の表面に塗布し、乾燥させて、溶媒を取り除く。これにより、高結晶性グラファイトとバインダとからなる中間層が形成される。但し、スラリーは、正極集電部材の表面のうち、幅方向について、後に正極合材層を形成する領域よりも狭い領域に塗布する。その後、中間層の表面及び正極集電部材の表面(中間層が形成されていない部位)に正極合材層を形成することで、正極集電部材と正極合材層との間に中間層を設けることができる。
【0020】
上述のように形成した中間層では、高結晶性グラファイトの沿面方向(表面に沿った方向)が、正極(正極塗工部)の幅方向に一致する(配向する)ので、正極塗工部の幅方向についての熱伝導性が極めて良好になる。この中間層の熱伝導率(幅方向の熱伝導率)は、例えば、800W/mK程度になる。アルミニウムの熱伝導率が237W/mKであるから、アルミニウム製の正極集電部材を用いた電池では、正極集電部材よりも極めて熱伝導率の高い中間層が配置されることになる。従って、中間層を通じて、正極塗工部の幅方向中央部(最も高温となる部位)から幅方向端部(最も低温となる部位)側への熱伝導が良好になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施形態にかかる非水電解質二次電池の斜視図である。
【図2】同非水電解質二次電池の正極の斜視図である。
【図3】同正極の平面図である。
【図4】同非水電解質二次電池の負極の斜視図である。
【図5】同非水電解質二次電池の電極体(正極塗工部)の温度分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態の非水電解質二次電池100は、図1に示すように、電極体110と、これを収容する電池ケース180とを備える、リチウムイオン二次電池である。電極体110は、正極130、負極120、及びセパレータ150を備えている。
【0023】
電池ケース180は、アルミニウムからなり、直方体形状をなしている。この電池ケース180は、電池ケース本体181と封口蓋182を有する。このうち、電池ケース本体181は、有底矩形箱形状をなしている。なお、電池ケース本体181と電極体110との間には、樹脂からなり、箱状に折り曲げた絶縁フィルム(図示しない)を介在させている。
【0024】
また、封口蓋182は、矩形板状であり、電池ケース本体181の開口を閉塞して、この電池ケース本体181に溶接されている。この封口蓋182には、矩形板状の安全弁197が封着されている。
【0025】
また、電極体110の正極130には、クランク状に屈曲した板状の正極接続部材191が溶接されている(図1参照)。さらに、負極120には、クランク状に屈曲した板状の負極接続部材192が溶接されている。正極接続部材191及び負極接続部材192のうち、それぞれの先端に位置する正極端子部191A及び負極端子部192Aは、封口蓋182を貫通して蓋表面182Aから突出している。なお、正極端子部191Aと封口蓋182との間、及び、負極端子部192Aと封口蓋182との間には、それぞれ、電気絶縁性の樹脂からなる絶縁部材195を介在させている。
【0026】
電極体110は、帯状の正極130と帯状の負極120が、帯状のセパレータ150を介して扁平形状に捲回されてなる捲回型電極体である(図1参照)。詳細には、長手方向DAに延びる帯状の正極130、負極120、及びセパレータ150を、長手方向DAに捲回して、捲回型の電極体110を形成している(図1〜図4参照)。
【0027】
正極130は、図2に示すように、長手方向DAに延びる帯状で、アルミニウム箔からなる正極集電部材138と、この正極集電部材138の両面に、それぞれ長手方向DAに延びる帯状に配置された2つの正極合材層131,131とを有している。正極合材層131は、正極活物質137と、アセチレンブラックからなる導電材と、PTFE(結着剤)と、CMC(増粘剤)とを、重量比100:5:4:1の割合で含んでいる。
【0028】
なお、正極活物質137として、LiNi1/3Mn1/3Co1/32を用いている。また、正極130のうち正極合材層131が塗工されている部位を、正極塗工部130bという。また、正極集電部材138(アルミニウム箔)は、厚さ15μm、長さ(長手方向DAの寸法)2700mm、幅(幅方向DBの寸法)116mmである。また、正極合材層131は、厚さ65μm、長さ(長手方向DAの寸法)2700mm、幅(幅方向DBの寸法)100mmである。
【0029】
ところで、非水電解質二次電池では、充放電を行うことにより、正極の幅方向について温度ムラが発生する傾向にある。具体的には、正極塗工部の温度分布を調べると、幅方向中央部が最も高温となり、幅方向端部に向かうにしたがって温度が低下し、幅方向端部が最も低温となる傾向にある。このように、正極塗工部に温度ムラが生じると、これに起因して、充放電反応ムラが発生してしまう。この充放電反応ムラが大きくなると、電池の寿命特性が低下する虞があった。
【0030】
これに対し、本実施形態の非水電解質二次電池100では、正極130が、正極集電部材138と正極合材層131との間に配置された帯状の中間層139を有している。この中間層139は、「正極合材層131の一部であって、正極合材層131の幅方向中央部131bを含む幅方向一部131d(詳細には、正極合材層131の一部分であって、正極合材層131の幅方向中央部131bとこれの両側に位置する部位131cとからなる帯状部位)」に対向する位置にのみ形成されている(図2、図3参照)。具体的には、正極合材層131の幅寸法をW1、中間層139の幅寸法をW2としたとき、W1>W2としている(図3参照)。なお、中間層139の幅方向中心は、正極合材層131の幅方向中心と一致している。また、中間層139の厚み(片面の厚み)は3μmである。
【0031】
具体的には、中間層139は、高結晶性グラファイト132とバインダ(PVdF)により形成されている。本実施形態の中間層139では、高結晶性グラファイト132とバインダ(PVdF)とが、重量比100:10の割合で混合されている。
【0032】
高結晶性グラファイト131は、熱伝導率が極めて高い材料である。この高結晶性グラファイト131は、鱗片状(層構造)をなし、その表面に沿った沿面方向に結晶成長したグラファイト粒子であり、沿面方向寸法が5μmで、厚み方向(沿面方向に直交する方向)寸法が60nmの大きさを有している。高結晶性グラファイト132の沿面方向の熱伝導率は、1500W/mKである。
【0033】
本実施形態の中間層139では、高結晶性グラファイト132の沿面方向(表面に沿った方向、結晶成長方向及びグラファイト層の面方向に一致する)が、正極130(正極塗工部130b)の幅方向DBに一致する(配向する)ので、正極塗工部130bの幅方向DBについての熱伝導性が極めて良好になる。本実施形態の中間層139の熱伝導率(幅方向DBの熱伝導率)は、約800W/mKである。
【0034】
本実施形態の正極集電部材138は、アルミニウム箔からなる。アルミニウムの熱伝導率が237W/mKであるから、本実施形態の中間層139は、正極集電部材138よりも極めて熱伝導率が高くなっている。
【0035】
従って、本実施形態の非水電解質二次電池100では、電極体110において、中間層139を通じて、正極塗工部130bの幅方向中央部130c(最も高温となる部位)から幅方向端部130d(最も低温となる部位)側への熱伝導を促進させることができる。これにより、電極体110において、正極塗工部130bの幅方向中央部130cと幅方向端部130dとの温度差を低減し、正極塗工部130bの温度ムラを小さくすることができる。これにより、本実施形態の非水電解質二次電池100では、充放電反応ムラを低減することができ、その結果、電池の寿命特性を向上させることができる。
【0036】
また、負極120は、図4に示すように、長手方向DAに延びる帯状で銅箔からなる負極集電部材128と、この負極集電部材128の両面上に、それぞれ長手方向DAに延びる帯状に配置された2つの負極合材層121,121とを有している。負極合材層121は、負極活物質127とSBR(スチレンブタジエンゴム)とCMC(カルボキシメチルセルロース)を、重量比100:1:1の割合で含んでいる。
【0037】
なお、負極活物質127として、黒鉛を用いている。また、負極集電部材128(銅箔)は、厚さ10μm、長さ(長手方向DAの寸法)2900mm、幅(幅方向DBの寸法)119mmである。また、負極合材層121は、厚さ80μm、長さ(長手方向DAの寸法)2900mm、幅(幅方向DBの寸法)106mmである。
【0038】
セパレータ150は、PP(ポリプロピレン)/PE(ポリエチレン)/PP(ポリプロピレン)の3層からなる厚み24μmのセパレータである。このセパレータ150は、、正極130と負極120との間に介在して、これらを離間させている。セパレータ150には、リチウムイオンを有する非水電解液160を含浸させている。
【0039】
非水電解液160は、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを、体積比で3:3:4に調整した混合有機溶媒に、溶質としてLiPF6を添加した非水電解液である。なお、非水電解液160中のLiPF6の濃度は、1mol/Lとしている。
【0040】
次に、実施形態にかかる非水電解質二次電池100の製造方法について説明する。
まず、正極130及び負極120を有する電極体110を形成する。具体的には、まず、高結晶性グラファイト132とバインダ(PVdF)とを、重量比100:10の割合で混合し、これに溶媒(NMP)を混合して、スラリーを作製する。次いで、このスラリーを正極集電部材138の表面(両面)に塗布し、乾燥させて、溶媒を取り除く。これにより、中間層139が形成される。
【0041】
但し、スラリーは、正極集電部材138の表面のうち、幅方向DBについて、後に正極合材層131を形成する領域よりも狭い領域に塗布する。具体的には、後に形成する正極合材層131の幅寸法をW1、中間層139の幅寸法をW2としたとき、W1>W2とする(図3参照)。なお、中間層139は、その幅方向中心が、後に形成する正極合材層131の幅方向中心と一致する位置に形成している。
【0042】
次いで、正極活物質137とアセチレンブラック(導電材)とPTFE(結着剤)とCMC(増粘剤)とを、重量比100:5:4:1の割合で混合し、これに溶媒を混合して、正極スラリを作製した。次いで、この正極スラリを、中間層139の表面及び正極集電部材138の表面(中間層139が形成されていない部位)に塗工し、乾燥させた後、プレス加工を施した。これにより、正極集電部材138と正極合材層131との間に中間層139を有する正極130を得た(図2参照)。
【0043】
また、負極活物質127(黒鉛)とSBR(スチレンブタジエンゴム)とCMCと(カルボキシメチルセルロース)とを、100:1:1(重量比)の割合で水中で混合して、負極スラリを作製した。次いで、この負極スラリを、銅箔からなる負極集電部材128の表面(両面)に塗工し、乾燥させた後、プレス加工を施した。これにより、負極120を得た。
【0044】
その後、負極120と正極130との間にセパレータ150を介在させて、長手方向DAに捲回し、電極体110を形成する。このようにして、捲回型の電極体110を形成した(図1参照)。
【0045】
次に、負極120(負極集電部材128)に負極接続部材192を溶接し、正極130(正極集電部材138)に正極接続部材191を溶接する。次いで、負極接続部材192及び正極接続部材191を溶接した電極体110を、電池ケース本体181内に挿入した後、非水電解液160を注入する。その後、封口蓋182で電池ケース本体181の開口を閉塞した状態で、封口蓋182と電池ケース本体181とを溶接する。これにより、本実施形態の非水電解質二次電池100が完成する。
【0046】
(実施例1)
実施例1の非水電解質二次電池100では、正極合材層131の幅寸法W1と中間層139の幅寸法W2とが、W2/W1=0.3の関係を満たすようにした(図3参照)。すなわち、中間層139の幅寸法W2を、正極合材層131の幅寸法W1の0.3倍とした。具体的には、正極合材層131の幅寸法W1=100mm、中間層139の幅寸法W2=30mmとした。
【0047】
(実施例2)
実施例2の非水電解質二次電池100では、正極合材層131の幅寸法W1と中間層139の幅寸法W2とが、W2/W1=0.4の関係を満たすようにした(図3参照)。すなわち、中間層139の幅寸法W2を、正極合材層131の幅寸法W1の0.4倍とした。具体的には、正極合材層131の幅寸法W1=100mm、中間層139の幅寸法W2=40mmとした。
【0048】
(実施例3)
実施例3の非水電解質二次電池100では、正極合材層131の幅寸法W1と中間層139の幅寸法W2とが、W2/W1=0.6の関係を満たすようにした(図3参照)。すなわち、中間層139の幅寸法W2を、正極合材層131の幅寸法W1の0.6倍とした。具体的には、正極合材層131の幅寸法W1=100mm、中間層139の幅寸法W2=60mmとした。
【0049】
(実施例4)
実施例4の非水電解質二次電池100では、正極合材層131の幅寸法W1と中間層139の幅寸法W2とが、W2/W1=0.8の関係を満たすようにした(図3参照)。すなわち、中間層139の幅寸法W2を、正極合材層131の幅寸法W1の0.8倍とした。具体的には、正極合材層131の幅寸法W1=100mm、中間層139の幅寸法W2=80mmとした。
【0050】
(実施例5)
実施例5の非水電解質二次電池100では、正極合材層131の幅寸法W1と中間層139の幅寸法W2とが、W2/W1=0.9の関係を満たすようにした(図3参照)。すなわち、中間層139の幅寸法W2を、正極合材層131の幅寸法W1の0.9倍とした。具体的には、正極合材層131の幅寸法W1=100mm、中間層139の幅寸法W2=90mmとした。
【0051】
(比較例1)
比較例1の非水電解質二次電池では、正極合材層131の幅寸法W1と中間層139の幅寸法W2とが、W2/W1=1.0の関係を満たすようにした。すなわち、中間層139の幅寸法W2を、正極合材層131の幅寸法W1と同等にした。具体的には、正極合材層131の幅寸法W1=100mm、中間層139の幅寸法W2=100mmとした。それ以外は、実施形態の非水電解質二次電池100と同等にした。
【0052】
(比較例2)
比較例2の非水電解質二次電池では、高結晶性グラファイト132の代わりにアセチレンブラックを用いて、中間層を形成した。また、正極合材層131の幅寸法W1と中間層の幅寸法W2とが、W2/W1=1.0の関係を満たすようにした。すなわち、中間層の幅寸法W2を、正極合材層131の幅寸法W1と同等にした。具体的には、正極合材層131の幅寸法W1=100mm、中間層139の幅寸法W2=100mmとした。それ以外は、実施形態の非水電解質二次電池100と同等にした。
【0053】
(比較例3)
比較例3の非水電解質二次電池では、中間層を有しない正極を用いた。それ以外は、実施形態の非水電解質二次電池100と同等にした。
【0054】
(サイクル充放電試験)
次に、実施例1〜5及び比較例1〜3の電池についてサイクル充放電試験を行い、各々の電池について、サイクル充放電後の電極体(正極塗工部)の温度分布、及び、電池内部抵抗の値を調査した。なお、電極体(正極塗工部)の温度分布を調査するため、各電池では、予め、正極塗工部の複数箇所に、熱電対を配置している。
【0055】
まず、各々の電池について、25℃の温度環境下で、充放電サイクルを行った。具体的には、2.5Vの電池電圧値が4.2Vになるまで、5Cの一定電流値で充電を行う。次いで、10分間休止した後、4.2Vの電池電圧値が2.5Vになるまで、5Cの一定電流値で放電を行う。その後、10分間休止した。この充放電を1サイクルとして、各電池について5サイクルの充放電を行った。なお、各電池の定格容量は5.0Ahであるので、1C=5.0Aとなる。
【0056】
5サイクルの充放電を終えた後、各々の電池について、熱電対によって、正極塗工部(幅方向DBの複数箇所)の温度を測定した。さらに、各々の電池について、正極塗工部の幅方向中央部と幅方向端部との温度差ΔTを算出した。これらの結果を表1に示す。また、実施例3の電池と比較例3の電池について、サイクル充放電後の正極塗工部の温度分布を調査した。その結果を図5に示す。なお、図5では、実施例3の温度分布を実線で、比較例3の温度分布を破線で示している。
【0057】
【表1】

【0058】
さらに、各々の電池について、内部抵抗値(IV抵抗値)を測定した。具体的には、各々の電池について、SOC60%の状態に調整し、25℃の温度環境下で、10Cの一定電流値で、10秒間放電を行った。この放電期間の電池電圧値の低下量ΔVと、放電電流値I(10C)とに基づいて、IV抵抗値R(=ΔV/I)を算出した。これらの結果を表1に示す。
【0059】
まず、図5に示す結果について考察する。比較例3の非水電解質二次電池では、充放電サイクルを行うことにより、正極塗工部の幅方向について大きな温度ムラが発生した。具体的には、正極塗工部の幅方向中央部が最も高温となり、幅方向端部に向かうにしたがって温度が低下し、幅方向端部が最も低温となった。詳細には、幅方向中央部と幅方向端部との温度差ΔTが、17℃と大きくなった(表1参照)。このように、正極塗工部に大きな温度ムラが生じると、これに起因して、充放電反応ムラが大きくなり、電池の寿命特性が低下する虞があった。
【0060】
これに対し、実施例3の非水電解質二次電池100では、充放電サイクルを行うことにより、正極塗工部の幅方向について温度ムラが発生したが、その温度ムラは、比較例3に比べて非常に小さかった。詳細には、幅方向中央部130cと幅方向端部130dとの温度差ΔTが、4℃と小さくなった(表1参照)。このように、電極体110において、正極塗工部130bの幅方向中央部130cと幅方向端部130dとの温度差を低減し、正極塗工部130bの温度ムラを小さくすることで、充放電反応ムラを低減することができ、その結果、電池の寿命特性を向上させることができる。
【0061】
以上の結果より、正極集電部材138と正極合材層131との間に、正極集電部材138よりも熱伝導率が高い中間層139を配置することで、正極塗工部130bの温度ムラを小さくすることができるといえる。これにより、充放電反応ムラを低減することができ、その結果、電池の寿命特性を向上させることができるといえる。その理由は、電極体110において、中間層139を通じて、正極塗工部130bの幅方向中央部130c(最も高温となる部位)から幅方向端部130d(最も低温となる部位)側への熱伝導を促進させることができるからであると考えている。
【0062】
次に、表1の結果について考察する。
まず、比較例1,2の結果について考察する。比較例1と比較例2とでは、中間層を構成する材料が異なり、その他については同等とされた関係にある。具体的には、比較例1では、高結晶性グラファイト132を用いて、中間層を形成している。これに対し、比較例2では、アセチレンブラックを用いて中間層を形成している。両電池について、正極塗工部の幅方向中央部と幅方向端部との温度差ΔTを比較すると、比較例1ではΔTが3℃であったのに対し、比較例2ではΔTが12℃と大きくなった。
【0063】
この差は、中間層を構成する材料の違いによるものであるといえる。具体的には、高結晶性グラファイト132の沿面方向の熱伝導率は、1500W/mKである。従って、高結晶性グラファイト132とバインダにより中間層を形成した比較例1では、中間層の熱伝導率(幅方向の熱伝導率)が約800W/mKとなり、正極集電部材138よりも熱伝導率が高い中間層を配置することができた。これにより、中間層139を通じて、正極塗工部の幅方向中央部(最も高温となる部位)から幅方向端部(最も低温となる部位)側への熱伝導を促進させ、正極塗工部130bの温度ムラを小さくすることができたと考えている。
【0064】
一方、アセチレンブラックの熱伝導率(沿面方向の熱伝導率)は、200W/mK以下である。従って、アセチレンブラックとバインダにより中間層を形成した比較例2では、中間層の熱伝導率(幅方向の熱伝導率)が200W/mKより小さくなり、正極集電部材138よりも熱伝導率が低い中間層が配置されることになる。このため、比較例1に比べて、正極塗工部の幅方向中央部と幅方向端部との温度差ΔTが大きくなったと考えられる。
【0065】
次に、実施例1〜5及び比較例1の結果について考察する。実施例1〜5及び比較例1は、中間層の幅寸法W2のみが異なり(従って、W2/W1の値が異なる)、その他については同等とされた関係にある。これらの電池について、正極塗工部の幅方向中央部と幅方向端部との温度差ΔTを比較すると、W2/W1の値を大きくするにしたがって、温度差ΔTを小さくすることができることがわかる。従って、温度差ΔTを小さくする(正極塗工部の温度ムラを小さくする)には、W2/W1の値を大きくするのが好ましいことがわかる。但し、W2/W1=0.9とした実施例5とW2/W1=1.0とした比較例1とでは、温度差ΔTは同等であった。
【0066】
また、これらの電池について、内部抵抗値(IV抵抗値R)を比較すると、W2/W1の値を大きくするにしたがって、内部抵抗値(IV抵抗値R)が大きくなることがわかる。従って、電池の内部抵抗を小さくするには、W2/W1の値を小さくするのが好ましいことがわかる。ここで、W2/W1=0.9とした実施例5とW2/W1=1.0とした比較例1とを比較すると、温度差ΔTは同等であったが、内部抵抗値(IV抵抗値R)は実施例5のほうが小さくなった。
【0067】
以上の結果より、正極合材層の一部分(幅方向一部)に対向する領域にのみ中間層を配置すること(実施例1〜5)で、正極合材層全面に対向する全領域に中間層を配置する場合(比較例1)に比べて、電池の内部抵抗を小さくすることができるといえる。すなわち、W1>W2とすることで、電池の内部抵抗上昇を低減することができるといえる。これにより、電池の出力特性を向上させることができるといえる。
【0068】
従って、正極合材層131の一部分(幅方向一部)に対向する領域に中間層139を配置した実施例1〜5では、正極塗工部130bの幅方向中央部130cと幅方向端部130dとの温度差ΔTを小さくすることによって、正極塗工部130bの温度ムラを小さくすることができ、且つ、電池の内部抵抗上昇を小さくすることができるといえる。
【0069】
さらに、実施例1〜5の結果について考察すると、W2/W1の値を大きくするにしたがって、温度差ΔTを小さくすることができるが、その反面、電池の内部抵抗値(IV抵抗値R)が大きくなる。電池の内部抵抗を考慮すると、W2/W1の値は0.8以下とするのが好ましい。反対に、W2/W1の値を小さくするにしたがって、電池の内部抵抗値(IV抵抗値R)を小さくすることができるが、その反面、温度差ΔTが大きくなる(正極塗工部の温度ムラが大きくなる)。温度差ΔT(正極塗工部の温度ムラ)を考慮すると、W2/W1の値は0.4以上とするのが好ましい。
【0070】
以上より、0.4≦W2/W1≦0.8の関係を満たす幅寸法の中間層139を設けることで、正極塗工部130bの幅方向中央部130cと幅方向端部130dとの温度差ΔTを効果的に低減することができ、且つ、電池100の内部抵抗上昇を効果的に低減することができるといえる。なお、正極合材層131の幅方向中心と中間層139の幅方向中心とは、一致させている。
【0071】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0072】
例えば、実施形態(実施例1〜5)では、高結晶性グラファイト132として、沿面方向の熱伝導率が1500W/mKであるものを用いた。しかしながら、中間層に用いる高結晶性グラファイトは、このようなものに限定されるものではなく、中間層の幅方向DBの熱伝導率を、正極集電部材の幅方向DBの熱伝導率よりも高くできるものであれば良い。具体的には、例えば、沿面方向の熱伝導率が1000W/mK以上の高結晶性グラファイトを用いれば、中間層の幅方向DBの熱伝導率を、正極集電部材138(アルミニウム箔)の幅方向DBの熱伝導率よりも高くできる。従って、高結晶性グラファイトとして、沿面方向の熱伝導率が1000W/mK以上の高結晶性グラファイトを用いるようにすれば良い。
【符号の説明】
【0073】
100 非水電解質二次電池
110 電極体
120 負極
121 負極合材層
127 負極活物質
128 負極集電部材
130 正極
130b 正極塗工部
130c 正極塗工部の幅方向中央部
130d 正極塗工部の幅方向端部
131 正極合材層
131b 正極合材層の幅方向中央部
131d 正極合材層の幅方向一部
132 高結晶性グラファイト
137 正極活物質
138 正極集電部材
139 中間層
150 セパレータ
160 非水電解液
180 電池ケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の正極、負極、及びセパレータを捲回した電極体、を備え、
上記正極は、帯状の正極集電部材、帯状の正極合材層、及び、上記正極集電部材と上記正極合材層との間に配置された帯状の中間層、を有する
非水電解質二次電池であって、
上記中間層は、
上記正極集電部材よりも熱伝導率が高く、
上記正極合材層の一部であって上記正極合材層の幅方向中央部を含む幅方向一部に対向する領域に配置されてなる
非水電解質二次電池。
【請求項2】
請求項1に記載の非水電解質二次電池であって、
前記正極合材層の幅寸法W1と前記中間層の幅寸法W2とは、0.4≦W2/W1≦0.8の関係を満たす
非水電解質二次電池。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の非水電解質二次電池であって、
前記中間層は、高結晶性グラファイトとバインダにより形成されてなる
非水電解質二次電池。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−20784(P2013−20784A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152599(P2011−152599)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】