説明

非水電解質電池用正極活物質、非水電解質電池、高出力電子機器および自動車

【課題】高い電池容量と、サイクル特性を両立する。
【解決手段】オリビン化合物からなる平均粒径D1の第1の正極活物質と、酸化物からなる平均粒径D2の第2の正極活物質とを混合して用い、オリビン化合物の平均粒径D1が8μm以下であり、かつオリビン化合物の平均粒径D1と酸化物の平均粒径D2との粒径比D2/D1が1.5以上となるようにする。第1の正極活物質は、オリビン化合物の一次粒子を複数集合してなる二次粒子とされることが好ましく、一次粒子間に電子導電性物質が介在した二次粒子からなることがさらに好ましい。このとき、一次粒子の平均粒径は10μm以上600μm以下であることが好ましい。第1の正極活物質の混合量は15重量%以上70重量%以下、第2の正極活物質の混合量は30重量%以上85重量%以下であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、正極活物質としてリチウム複合酸化物を用いた正極および非水電解質電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ビデオカメラ、携帯電話、ノート型パソコンなどのポータブル機器の普及に伴い、その電源として小型かつ軽量で高容量の二次電池に対する需要が高まりつつある。そのような需要に応える二次電池を構成する正極活物質として、コバルト酸リチウム(LiCoO2)の他、コバルト酸リチウム(LiCoO2)と同じ空間群R3m/層構造を有するニッケル酸リチウム(LiNiO2)、正スピネル型構造を持ち、空間群Fd3mを有するマンガン酸リチウム(LiMn24)等が実用化されている。
【0003】
このようなニッケル酸リチウムにおいては、コバルト酸リチウムの放電容量が150mAh/g程度であるのに対して、180〜200mAh/g程度の放電容量が得られる。また、ニッケル酸リチウムの原材料であるニッケル(Ni)の価格はコバルト(Co)に比べ安価であるため、ニッケル酸リチウムはコスト面においてもコバルト酸リチウムよりも優れている。さらに、ニッケルは原料の供給安定性がコバルトよりも良い。このため、原料の供給安定性の面でもニッケル酸リチウムの方が優れている。
【0004】
しかしながら、ニッケル酸リチウムを用いた正極活物質は、理論容量が大きく、かつ高放電電位を有するという長所があるものの、充放電サイクルが繰り返されることに伴ってニッケル酸リチウムの結晶構造が崩壊してしまう。その結果、ニッケル酸リチウムを正極活物質として用いた電池では、放電容量の低下や熱安定性の劣化等の問題点が生じていた。
【0005】
そこで、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)およびニッケル(Ni)等の遷移金属のリン酸化合物を正極活物質として用いたリチウム電池が提案されている。この正極活物質はオリビン型結晶構造を有しており、オリビン型結晶構造を有するリン酸化合物としては、例えば資源的に豊富かつ安価な金属である鉄(Fe)を用いたリン酸鉄リチウム(LiFePO4)が挙げられる。例えば下記の特許文献1に示すように、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)を正極活物質として用いたリチウム電池が提案されている。
【0006】
これらのオリビン化合物は二次電池の正極活物質として使われた際、充放電に伴う結晶構造変化が少ないためサイクル特性に優れる。また結晶中の酸素原子がリン(P)との共有結合により安定して存在するため、電池が高温環境下に晒された際にも酸素放出の可能性が小さく安全性に優れるというメリットがある。
【0007】
しかしながら、オリビン化合物は前述のような長所をもつ一方、エネルギー密度が低いという欠点がある。すなわち、重量当たりの放電容量は、一般的にリチウムイオン二次電池に用いられているコバルト酸リチウムが150mAh/g程度、ニッケル酸リチウムが180〜200mAh/g程度である。これに対して、オリビン化合物の重量当たりの放電容量は、充放電能力の高いものでもせいぜいコバルト酸リチウムと同等程度でしかない。さらに、材料の真密度はコバルト酸リチウムが5.1g/cm3、ニッケル酸リチウムが4.8g/cm3であるのに対して、オリビン化合物の真密度は3.5g/cm3程度であり、約30%も低い。
【0008】
このため、オリビン化合物を単独で正極活物質として用いた場合には、電池の体積当たりのエネルギー密度が低くなってしまう。加えて、オリビン化合物は電子伝導性が低いという欠点があることから、オリビン化合物を単独で使用した場合には、負荷特性がコバルト酸リチウムやニッケル酸リチウムに比べて劣るという問題がある。
【0009】
このような問題点を解決するために、特許文献2には、LiFePO4またはLiFe0.4Mn0.6PO4と、LiMO2(ただし、MはCoおよびNiの少なくとも一方である。)またはLiMn24とを混合した正極活物質を用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平9−134724号公報
【特許文献2】特許3959929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述の特許文献2では、従来よりも低コストなリチウムイオン電池を構築しつつ、過放電や充放電中の不連続な電圧変化を最小限に抑え、安定した充放電特性を確保することが提案されている。しかしながら、エネルギー密度を高める具体的な実現手段は示されていない。
【0012】
したがって、この発明は、上述のような課題に鑑みて、高いエネルギー密度を実現し、かつ高いサイクル特性を有する非水電解質二次電池用正極活物質、非水電解質二次電池およびそれを用いた高出力電子機器、自動車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決するために、第1の発明は、平均組成が化1で表される平均粒径D1の第1の正極活物質と、平均組成が化2で表される平均粒径D2の第2の正極活物質とを含み、
平均粒径D1が8μm以下であり、
平均粒径D1と平均粒径D2との粒径比D2/D1が1.5以上である
非水電解質電池用正極活物質である。
(化1)
LiaMnbFecdPO4
(式中、0≦a≦2、b+c+d≦1、0≦b≦1、0≦c≦1、0≦d≦1であり、マンガン(Mg)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、ニオブ(Nb)、チタン(Ti)、シリコン(Si)、クロム(Cr)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)から選択される少なくとも一種である。)
(化2)
LivwM’xM’’yz
(式中、0<v<2、w+x+y≦1、0≦w≦1、0≦x≦1、0≦y≦1、0<z<3であり、M、M’およびM’’はNi(ニッケル)、Co(コバルト)、Fe(鉄)、Mn(マンガン)、Cu(銅)、Zn(亜鉛)、Al(アルミニウム)、Cr(クロム)、V(バナジウム)、Ti(チタン)、Mg(マグネシウム)、Zr(ジルコニウム)から選択される少なくとも1種以上である。)
【0014】
上述の第1の正極活物質は、平均組成が化1で表される一次粒子を複数集合してなる二次粒子からなり、一次粒子間に電子伝導性物質が介在されることが好ましい。また、一次粒子の平均粒径が10μm以上600μm以下と小さいことが好ましい。さらに、第1の正極活物質の混合量が15重量%以上70重量%以下であり、第2の正極活物質の混合量が30重量%以上85重量%以下であることが好ましい。
【0015】
第2の発明は、平均組成が化1で表される平均粒径D1の第1の正極活物質と、平均組成が化2で表される平均粒径D2の第2の正極活物質とを含み、
平均粒径D1が8μm以下であり、
平均粒径D1と平均粒径D2との粒径比D2/D1が1.5以上である正極活物質を含む正極と、
負極と、
非水電解質と
を備える非水電解質電池である。
【0016】
第3の発明は、平均組成が化1で表される平均粒径D1の第1の正極活物質と、平均組成が化2で表される平均粒径D2の第2の正極活物質とを含み、
平均粒径D1が8μm以下であり、
平均粒径D1と平均粒径D2との粒径比D2/D1が1.5以上である正極活物質を含む正極と、
負極と、
非水電解質と
を備える非水電解質電池を用いた高出力電子機器である。
【0017】
第4の発明は、平均組成が化1で表される平均粒径D1の第1の正極活物質と、平均組成が化2で表される平均粒径D2の第2の正極活物質とを含み、
平均粒径D1が8μm以下であり、
平均粒径D1と平均粒径D2との粒径比D2/D1が1.5以上である正極活物質を含む正極と、
負極と、
非水電解質と
を備える非水電解質電池を用いた自動車である。
【0018】
この発明では、安定性の高い第1の正極活物質と、放電容量の大きい第2の正極活物質とを混合し、やや電子伝導性に劣る第1の正極活物質の平均粒径を小さくして第1の正極活物質における電子伝導性の低下を抑制すると共に、粒径比D2/D1を調整することにより、正極活物質の体積密度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、エネルギー密度を向上し、高い放電容量を得るとともに、正極活物質の安定性を高めて優れたサイクル特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の一実施形態による正極活物質を用いた非水電解質二次電池の第1の例の概略断面図である。
【図2】この発明の一実施形態による正極活物質を用いた非水電解質二次電池の第2の例の概略図である。
【図3】図2に示した電池素子の一部の拡大断面である。
【図4】実施例1における放電容量の測定結果を示すグラフである。
【図5】実施例1における容量維持率の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。以下に説明する実施の形態はこの発明の具体的な例であり、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、この発明の範囲は、以下の説明において特にこの発明を限定する旨の記載がない限り実施の形態に限定されないものとする。なお、説明は、以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(非水電解質電池の第1の例)
2.第2の実施の形態(非水電解質電池の第2の例)
【0022】
1.第1の実施の形態(非水電解質電池の第1の例)
【0023】
[非水電解質電池の構成]
図1は、この発明の一実施の形態による方法で製造された正極活物質を用いた非水電解質電池の断面構造を表すものである。
【0024】
この非水電解質電池はいわゆるコイン型といわれるものであり、正極缶5内に収容された円板状の正極2と、負極缶6内に収容された円板状の負極3とが、セパレータ4を介して積層されたものである。セパレータ4には液状の電解質である非水電解液が含浸されており、正極缶5および負極缶6の周縁部はガスケット7を介してかしめられることにより密閉されている。ガスケット7は、正極缶5および負極缶6内に充填された非水電解液の漏出を防止するためのものであり、負極缶5に組み込まれ一体化されている。また、非水電解液と共に、もしくは非水電解液の替わりに固体電解質やゲル電解質を用いる場合には、固体電解質層やゲル電解質層を正極2および負極3上に形成する。
【0025】
[外装缶]
正極缶5および負極缶6は、例えば、ステンレスあるいはアルミニウム(Al)などの金属によりそれぞれ構成されている。正極缶5は正極2を収容するものであり、非水電解質電池1の正極側外部端子としての機能を兼ねている。負極缶6は負極3を収容するものであり、非水電解質電池1の負極側外部端子としての機能を兼ねている。
【0026】
[正極]
正極2は、例えば、正極集電体2Aと、正極集電体2A上に設けられた正極活物質層2Bとを有している。正極集電体2Aは、例えば、アルミニウム(Al)箔などの金属箔により構成されている。正極活物質層2Bは正極活物質を含有しており、必要に応じて、カーボンブラックあるいはグラファイトなどの導電剤と、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)などの結着剤とを含んでいても良い。
【0027】
正極活物質としては、下記の(化1)で示すオリビン型結晶構造を有する第1の正極活物質と、下記の(化2)で示す層状構造、もしくはスピネル構造を有する第2の正極活物質とを混合して用いる。
【0028】
(化1)
LiaMnbFecdPO4
(式中、0≦a≦2、b+c+d≦1、0≦b≦1、0≦c≦1、0≦d≦1であり、マンガン(Mg)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、ニオブ(Nb)、チタン(Ti)、シリコン(Si)、クロム(Cr)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)から選択される少なくとも一種である。)
【0029】
(化2)
LivwM’xM’’yz
(式中、0<v<2、w+x+y≦1、0≦w≦1、0≦x≦1、0≦y≦1、0<z<3であり、M、M’およびM’’はNi(ニッケル)、Co(コバルト)、Fe(鉄)、Mn(マンガン)、Cu(銅)、Zn(亜鉛)、Al(アルミニウム)、Cr(クロム)、V(バナジウム)、Ti(チタン)、Mg(マグネシウム)、Zr(ジルコニウム)から選択される少なくとも1種以上である。)
【0030】
なお、(化1)で示されるオリビン型結晶構造を有する第1の正極活物質は、オリビン化合物の一次粒子を二次粒子化したものである。また、二次粒子化する前の一次粒子は、粒子表面の電子伝導性を向上させる目的で、例えば炭素材料等の電子伝導性物質で被覆されることが好ましい。第1の正極活物質の構成については、後述する。
【0031】
また、この発明では、(化1)で示されるオリビン型結晶構造を有する第1の正極活物質の平均粒径D1と、(化2)で示される層状構造もしくはスピネル構造を有する第2の正極活物質の平均粒径D2との粒径比D2/D1が1.5以上であることを特徴としている。
【0032】
[第1の正極活物質および第2の正極活物質の特性]
一般式LivwM’xM’’yzで表され、層状もしくはスピネル構造を有する第2の正極活物質は、活物質の重量当たりの放電容量が大きいという特性を有している。その反面、二次電池の正極活物質として使われた際に充電状態での安定性が低くなってしまう。これは、充電時に生成する遷移金属周りの正八面体結晶構造の安定性が低く、電解液との反応性が高いためである。
【0033】
これに対して、一般式LiaMnbFecdPO4で表され、オリビン型結晶構造を有する第1の正極活物質は、二次電池の正極活物質として使われた際に、充放電に伴う結晶構造変化が少ないためサイクル特性に優れるという特性を有している。また、結晶中の酸素原子がリン(P)との共有結合により安定して存在するため、電池が高温環境下に晒された際にも酸素放出の可能性が小さく安全性に優れるという利点がある。さらに、オリビン化合物は、コバルト(Co)よりも資源的に豊富で安価な材料である鉄(Fe)やマンガン(Mn)をベースとした材料であるため、安価な非水電解質電池が実現できる。
【0034】
その反面、第1の正極活物質は単独で正極活物質として用いた場合には体積当たりのエネルギー密度が低く、高容量化を満たすことができない。オリビン化合物の重量当たりの放電容量は、充放電能力の高いものでもせいぜいコバルト酸リチウムと同等程度でしかない。さらに、オリビン化合物の真密度はコバルト酸リチウムやニッケル酸リチウムに対して30%程度も低い。また、オリビン化合物は抵抗が高く、電子伝導性が低いという問題もある。
【0035】
したがって、正極活物質として第1の正極活物質と、第2の正極活物質とを混合することにより、サイクル特性およびエネルギー密度に優れた非水電解質電池を構成することができる。上述の酸化物は高い電子伝導性を有するため、酸化物とオリビン化合物とが混合されることにより、オリビン化合物自体の電子伝導性の低さが補われる。
【0036】
このとき、第1の正極活物質の電子伝導性を向上させるために、平均粒径を小さくする。具体的には、オリビン化合物の一次粒子を二次粒子化して第1の正極活物質とし、第1の正極活物質(オリビン化合物の二次粒子)の平均粒径D1が、第2の正極活物質よりも小さくなる(D2/D1≧1.5)ようにする。これにより、酸化物の隙間にオリビン化合物が混入して正極活物質の体積密度が向上し、体積当たりの放電容量が向上する。
【0037】
ここで、2種類の正極活物質の体積密度を向上させるには、一方の正極活物質の平均粒径が他方の平均粒径に対して小さくなっていればよい。しかしながら、この発明では、オリビン化合物と酸化物とのそれぞれの正極活物質としての特性に鑑み、オリビン化合物が酸化物の粒径よりも小さくなるように制御する。
【0038】
オリビン化合物の一次粒子の平均粒径は、例えば10nm以上600nm以下とすることが好ましい。また、オリビン化合物の二次粒子である第1の正極活物質の平均粒径は、例えば8μm以下であることが好ましい。第1の正極活物質の平均粒径は、二次粒子を造粒する際の条件、および造粒後の二次粒子の分級等により調整することができる。
【0039】
オリビン化合物を二次粒子化して用いるのは、電子伝導性を得ると共に、結着剤の使用量を少なくするためである。粒子を小さくすると比表面積が大きくなるため、例えば平均粒径が10nm以上600nm以下の粒子を正極活物質として用いる場合に多量の結着剤が必要となる。このため、一次粒子間に電子伝導性物質を介在させた二次粒子を第1の正極活物質として用いることで、結着剤の使用量を増やすことなくエネルギー密度を格段に向上させることができる。
【0040】
一方、酸化物は、電子伝導性が高いため、平均粒径D2がやや大きい場合でも充分な電池特性を得ることができる。酸化物の平均粒径は、粒径比D2/D1が1.5以上の条件を満たす領域において、20μm以下程度とすることが好ましい。
【0041】
また、第1の正極活物質表面の電子伝導性を向上させるために、オリビン化合物の一次粒子表面に炭素材料を被覆・被着することが好ましい。第1の正極活物質を、一次粒子が複数集合してなり、一次粒子間に電子伝導性物質が介在した二次粒子とすることにより、電子伝導性を向上させることができる。
【0042】
なお、オリビン化合物の二次粒子は、例えば噴霧乾燥(スプレードライ)法により造粒することができる。また、一次粒子の表面に炭素質材料を被覆・被着させる場合には、二次粒子の造粒時に、分散媒に炭素質材料と一次粒子とを合わせて分散させ二次粒子を造粒することにより、炭素質材料で被覆された一次粒子が複数集まった二次粒子とすることができる。
【0043】
ここで、この発明において、上述の「平均粒径D1」および「平均粒径D2」は、それぞれ第1の正極活物質および第2の正極活物質のメジアン径(D50)を示す。なお、第1の正極活物質の95体積%以上の粒子が、平均粒径D1の0.3倍以上2.5倍以下の範囲に存在することが好ましい。また、第2の正極活物質の95体積%以上の粒子が、平均粒径D2の0.3倍以上2.5倍以下の範囲に存在することが好ましい。
【0044】
この発明では、第1の正極活物質LiaMnbFecdPO4の混合量が15重量%以上70重量%の範囲であり、かつ第2の正極活物質LivwM’xM’’yzの混合量が30重量%以上85重量%以下であることが好ましい。すなわち、第1の正極活物質と第2の正極活物質との重量混合比が、15:85〜70:30の範囲内であることが好ましい。第1の正極活物質の混合量が小さすぎると、正極活物質全体としての安定性が低下し、サイクル特性が低下してしまう。一方、第2の正極活物質の混合量が小さすぎると、放電容量が低下してしまう。
【0045】
結着剤としては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を用いることができる。導電剤としては、繊維状炭素やカーボンブラック等の炭素材料を用いることができる。
【0046】
[負極]
負極3は、例えば、負極集電体3Aと、負極集電体3Aに設けられた負極活物質層4Bとを有している。負極集電体3Aは、例えば、銅(Cu)箔などの金属箔により構成されている。
【0047】
負極活物質層4Bは、例えば、負極活物質として、リチウムを吸蔵および離脱可能な負極材料、金属リチウム、リチウムと合金あるいは化合物を形成可能な金属あるいは半導体、またはこれらの合金あるいは化合物から選択されるいずれか1種または2種以上を含んでおり、必要に応じて、ポリフッ化ビニリデンなどの結着剤と共に構成されている。
【0048】
リチウムを吸蔵および離脱可能な負極材料としては、例えば、炭素質材料、金属化合物、スズ、スズ合金、ケイ素、ケイ素合金あるいは導電性ポリマが挙げられ、これらのいずれか1種または2種以上が混合して用いられる。この発明の一実施の形態による正極活物質を用いる場合、負極材料としては、炭素質材料が好ましく用いられる。
【0049】
炭素質材料としては、例えば難黒鉛化性炭素、人造黒鉛、天然黒鉛、熱分解炭素類、ピッチコークス、ニードルコークス、石油コークス等のコークス類、グラファイト類、ガラス状炭素類、フェノール樹脂やフラン樹脂等を適当な温度で焼成し炭素化した有機高分子化合物焼成体、炭素繊維、活性炭、カーボンブラック類等が挙げられる。炭素質材料の電子伝導性が集電の目的に対して充分でない場合、導電剤を添加することも好ましい。
【0050】
金属リチウム、リチウムと合金あるいは化合物としては、例えば、化学式DsEtLiu(式中、Dはリチウムと合金あるいは化合物を形成可能な金属元素および半導体元素の少なくとも一種であり、EはリチウムおよびD以外の金属元素および半導体元素の少なくとも1種である。また、s、tおよびuの値は、それぞれs>0、t≧0、u≧0である。)で表される材料が挙げられる。
【0051】
化学式DsEtLiuで表される材料の中でも、特にリチウムと合金あるいは化合物を形成可能な金属元素あるいは半導体元素としては、4B族の金属元素あるいは半導体元素が好ましく、特に好ましくはケイ素(Si)あるいはスズ(Sn)であり、最も好ましくはケイ素(Si)である。酸化鉄、酸化ルテニウム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化チタン、酸化スズ等の比較的電位が卑な電位でリチウムをドープ脱ドープする酸化物やその他窒化物なども同様に使用可能である。
【0052】
また、負極活物質としては、チタン含有金属複合酸化物またはチタン系酸化物のようなチタン含有酸化物でもよい。チタン含有金属複合酸化物としては、例えば酸化物合成時はリチウムを含まないチタン系酸化物、リチウムチタン酸化物、リチウムチタン酸化物の構成元素の一部を異種元素で置換したリチウムチタン複合酸化物などを挙げることができる。リチウムチタン酸化物としては、例えばスピネル構造を有するチタン酸リチウム(例えばLi4+xTi512(xは0≦x≦3))、ラムステライド型のチタン酸リチウム(例えばLi2+yTi37(yは0≦y≦3)などを挙げることができる。これらのチタン酸リチウムは、リチウムの電極電位に対して約1.5Vの電位でリチウムイオンを吸蔵し、アルミニウム箔もしくはアルミニウム合金箔の集電体に対して電気化学的に非常に安定な材料であるため好ましい。
【0053】
[セパレータ]
セパレータ4は、正極2と負極3とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。セパレータ4の材料としては、従来の電池に使用されてきたものを利用することが可能であり、そのなかでも、ショート防止効果に優れ、かつシャットダウン効果による電池の安全性向上が可能なポリオレフィン製微孔性フィルムを使用することが特に好ましい。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン樹脂からなる微多孔膜が好ましい。
【0054】
さらに、セパレータ4の材料としては、シャットダウン温度がより低いポリエチレンと耐酸化性に優れるポリプロピレンを積層または混合したものを用いることもできる。このような材料からなるセパレータは、シャットダウン性能とフロート特性との両立が図れる点からより好ましい。なお、電解質として固体電解質、ゲル電解質を用いた場合には、セパレータ4は必ずしも必要でない。
【0055】
[非水電解液]
非水電解液は、非水溶媒に電解質塩を溶解させたものであり、電解質塩が電離することによりイオン伝導性を示すようになっている。電解液はセパレータ4に含浸されている。セパレータ4としては、特に限定されることなく従来の非水溶媒系電解液などが用いられる。
【0056】
電解質塩としては、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドリチウム(Li(C25SO22N)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiSO3CF3)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(Li(CF3SO22N)、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチルリチウム(LiC(SO2CF33)、塩化リチウム(LiCl)、臭化リチウム(LiBr)、LiB(C654、LiCH3SO3、LiCF3SO3、LiN(SO2CF32、LiAlCl4、LiSiF6、ジフルオロ[オキソラト−O,O’]ホウ酸リチウム、あるいはリチウムビスオキサレートボレートなどが挙げられる。中でも、LiPF6 は、高いイオン伝導性を得ることができると共にサイクル特性を向上させることができるので特に好ましい。電解質塩には、上述から選択されるいずれか1種を単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。
【0057】
電解質塩を溶解する非水溶媒としては、例えば、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン、炭酸ビニレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、N,N−ジメチルフォルムアミド、N−メチルピロリジノン、N−メチルオキサゾリジノン、ニトロメタン、ニトロエタン、スルホラン、ジメチルスルフォキシド、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、エチレンスルフィト、あるいはビストリフルオロメチルスルホニルイミド、トリメチルヘキシルアンモニウムなどの常温溶融塩が挙げられる。中でも、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ビニレン、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチルあるいはエチレンスルフィトは、優れた充放電容量特性および充放電サイクル特性を得ることができるので好ましい。溶媒には、いずれか1種を単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。
【0058】
この非水電解質電池では、放電を行うと、例えば、負極3からリチウムイオンが離脱するかまたはリチウム金属がリチウムイオンとなって溶出し、電解液を介して正極活物質層2Bと反応する。充電を行うと、例えば、正極活物質層2Bからリチウムイオンが離脱し、電解液を介して負極3に吸蔵されるかまたはリチウム金属となって析出する。
【0059】
(1−2)非水電解質電池の製造方法
次に、第1の例による非水電解質電池の製造方法について説明する。
【0060】
[正極の製造方法]
正極2は、以下に述べるようにして作製する。まず、この発明の第1の正極活物質の合成について説明する。
【0061】
第1の正極活物質は、オリビン化合物LiaMnbFecdPO4(式中、0≦a≦2、b+c+d≦1、0≦b≦1、0≦c≦1、0≦d≦1であり、Mは、マンガン(Mg)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、ニオブ(Nb)、チタン(Ti)、シリコン(Si)、クロム(Cr)、銅(Cu)、亜鉛(Zn))からなる一次粒子を複数集合してなる二次粒子であり、一次粒子間に電子伝導性物質が介在することが好ましい。
【0062】
まず、水を主成分とする溶媒に、Li源、Mn源、Fe源、M源(Mはマンガン(Mg)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、ニオブ(Nb)、チタン(Ti)、シリコン(Si)、クロム(Cr)、銅(Cu)、亜鉛(Zn))、PO4源、さらには、電子伝導性物質またはこの電子伝導性物質の前駆体を加え、次いで、この溶液または懸濁液を噴霧乾燥(スプレードライ)法等により二次粒子化して乾燥状態の粒子を形成する。
【0063】
次に、乾燥状態の粒子を350〜1150℃、好ましくは350〜1100℃にて熱処理する。熱処理により、この発明の第1の正極活物質が形成される。
【0064】
水を主成分とする溶媒としては、純水、水−アルコール溶液、水−ケトン溶液、水−エーテル溶液、のいずれかを用いることができるが、使い易さ、安全性の点から純水が好ましい。
【0065】
電極材料の原料は特に限定されないが、Li源としては、例えば、塩化リチウム、臭化リチウム、炭酸リチウム、硝酸リチウム、硫酸リチウム、リン酸リチウム、水酸化リチウムなどのリチウム無機酸塩、酢酸リチウム、蓚酸リチウムなどのリチウム有機酸塩、あるいは、リチウムエトキシドなどのリチウムアルコキシドなどのリチウム含有有機金属化合物が用いられる。
【0066】
Fe源としては、例えば、蓚酸鉄(II)二水和物、リン酸鉄(II)八水和物、塩化鉄(II)水和物、硫酸鉄(II)七水和物、酢酸鉄(II)四水和物、リン酸鉄(III)水和物などが用いられる。
【0067】
Mn源としては、例えば塩化マンガン(II)、酢酸マンガン(II)、リン酸マンガン(II)・三水和物などの塩が用いられる。
【0068】
PO4源としては、例えば、オルトリン酸、メタリン酸などのリン酸、リン酸水素二アンモニウム((NH42HPO4)、リン酸二水素アンモニウム(NH42PO4)などのリン酸水素アンモニウム塩が用いられる。
【0069】
M源としては、特に限定されることはないが、例えばアルミニウム(Al)であれば、水酸化アルミニウム、アルミニウムアルコキシド等の塩が挙げられる。
【0070】
電子伝導性物質としては、炭素(C)、もしくは、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、チタン(Ti)、V(バナジウム)、Sn(スズ)、Nb(ニオブ)、Zr(ジルコニウム)、Mo(モリブデン)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)またはこれらの酸化物の群から選択された1種または2種以上の元素を含む化合物であることが好ましく、これらの中でも、化学的安定性、安全性および製造コストなどから炭素が最も好ましい。炭素以外では、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)などの貴金属が好ましく、これらの中でも銀(Ag)がより好ましい。
【0071】
炭素としては、炭素単体が用いられる。炭素単体としては、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、グラファイトなどを用いることができるが、特に、カーボンブラック、アセチレンブラックが好ましい。
【0072】
電子伝導性物質の前駆体としては、加熱により電子伝導性物質となるものが用いられ、このような物質の中でも、有機化合物、金属塩、金属のアルコキシド、金属の錯体などが好適に用いられる。有機化合物としては、加熱時に揮発しないものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンイミン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸メチル、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドンなどの高分子化合物、糖アルコール、糖エステル、セルロースなどの糖類、ポリグリセリン、ポリグリセリンエステル、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンソルビタンなどの水溶性有機界面活性剤、リン酸エステル、リン酸エステル塩などが好適に用いられる。
【0073】
なお、電子伝導性物質として炭素を用いるために、上述の溶液または懸濁液に電子伝導性物質の前駆体として有機化合物を配合する場合には、有機化合物として溶媒に可溶なものを使用することが好ましい。これにより、他の成分だけでなく、炭素も溶液中に分子レベルで均一に分散、混合され、二次粒子を生成する際に、この二次粒子中により均一に炭素を存在させることができる。
【0074】
噴霧乾燥(スプレードライ)法では、一次粒子を被覆する炭素質材料とともに溶媒中に分散し、高温雰囲気下に噴霧することにより、瞬時に溶媒を飛ばして電子伝導性物質が被覆された一次粒子が凝集した二次粒子を形成することができる。一次粒子を分散させる溶媒の濃度、その他の造粒条件の調整および二次粒子の分級により、第1の正極活物質の平均粒径を変化させることができる。
【0075】
次に、上述のようにして二次粒子化したオリビン化合物からなる第1の正極活物質と、酸化物からなる第2の正極活物質とを、所定の重量混合比となるようにそれぞれ秤量し、混合する。このとき、第1の正極活物質の平均粒径D1と、第2の正極活物質の平均粒径D2の粒径比D2/D1が1.5以上となるように調整される。そして、混合した正極活物質と、導電剤と、結着剤とを混合して正極合剤を調製し、この正極合剤をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)などの溶剤に分散させて正極合剤スラリーとする。
【0076】
続いて、正極合剤スラリーを正極集電体2Aに塗布し溶剤を除去した後、ロールプレス機などにより圧縮成型して正極活物質層2Bを形成し、ペレット状に打ち抜くことにより正極2を作製する。
【0077】
[負極の製造方法]
負極3は、以下に述べるようにして作製する。まず、例えば、負極活物質と、結着剤とを混合して負極合剤を調製し、この負極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させて負極合剤スラリーとする。次に、この負極合剤スラリーを負極集電体3Aに塗布し溶剤を除去した後、ロールプレス機などにより圧縮成型して負極活物質層4Bを形成し、ペレット状に打ち抜くことにより負極3を作製する。
【0078】
また、負極活物質層4Bは、例えば、気相法、液相法、焼成法により形成してもよく、それらの2以上を組み合わせてもよい。なお、気相法としては、例えば、物理堆積法あるいは化学堆積法を用いることができ、具体的には、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法、熱CVD(Chemical Vapor Deposition;化学気相成長)法あるいはプラズマCVD法などが利用可能である。液相法としては電解鍍金あるいは無電解鍍金などの公知の手法が利用可能である。焼成法に関しても公知の手法が利用可能であり、例えば、雰囲気焼成法、反応焼成法あるいはホットプレス焼成法が利用可能である。
【0079】
[非水電解質電池の組み立て]
続いて、負極缶6の中央部に負極3およびセパレータ4をこの順に収容し、セパレータ4の上から電解液を注液する。続いて、正極2を入れた正極缶5を負極缶6に被せてガスケット7を介してかしめて正極缶5と負極缶6とを固定する。以上により、図1に示すような非水電解質電池1が形成される。
【0080】
第1の実施の形態で作製した非水電解質電池は、二次粒子化させたオリビン化合物化からなる第1の正極活物質と、酸化物からなり、第1の正極活物質よりも平均粒径の大きい第2の正極活物質とを混合して正極に用いる。これにより、高いエネルギー密度とサイクル特性を両立することができる。また、このような性能を有するこの発明の非水電解質電池は、この性能を活かして高機能化に伴う消費電力の大きな携帯機器や、駆動に大電流が必要とされる自動車、電動自転車、オートバイ、電動工具のような高出力電子機器などの電源の用途に好適に用いることができる。
【0081】
2.第2の実施の形態(非水電解質電池の第2の例)
第2の実施の形態では、ラミネートフィルムで外装された非水電解質電池について説明する。
【0082】
[非水電解質電池の構成]
図2は、この発明の一実施の形態による正極活物質を用いた非水電解質電池の構造を示す。図2に示すように、この非水電解質電池は、電池素子10を防湿性ラミネートフィルムからなる外装材19に収容し、電池素子10の周囲を溶着することにより封止してなる。電池素子10には、正極端子15および負極端子16が備えられ、これらのリードは、外装材19に挟まれて外部へと引き出される。正極端子15および負極端子16のそれぞれの両面には、外装材19との接着性を向上させるために密着フィルム17が被覆されている。
【0083】
外装材19は、例えば、接着層、金属層、表面保護層を順次積層した積層構造を有する。接着層は高分子フィルムからなり、この高分子フィルムを構成する材料としては、例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、無延伸ポリプロピレン(CPP)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)が挙げられる。金属層は金属箔からなり、この金属箔を構成する材料としては、例えばアルミニウム(Al)が挙げられる。また、金属箔を構成する材料としては、例えばアルミニウム(Al)以外の金属を用いることも可能である。表面保護層を構成する材料としては、例えばナイロン(Ny)、ポリエチレンテレフタレート(PET)が挙げられる。なお、接着層側の面が、電池素子10を収納する側の収納面となる。
【0084】
電池素子10は、例えば、図3に示すように、両面にゲル電解質層13が設けられた帯状の負極12と、セパレータ14と、両面にゲル電解質層13が設けられた帯状の正極11と、セパレータ14とを積層し、長手方向に巻回されてなる巻回型の電池素子10である。
【0085】
正極11は、帯状の正極集電体11Aと、この正極集電体11Aの両面に形成された正極活物質層11Bとからなる。正極活物質層11Bは、第1の実施の形態と同様にして形成することができる。
【0086】
正極11の長手方向の一端部には、例えばスポット溶接または超音波溶接で接続された正極端子15が設けられている。この正極端子15の材料としては、例えばアルミニウムなどの金属を用いることができる。
【0087】
負極12は、帯状の負極集電体12Aと、この負極集電体12Aの両面に形成された負極活物質層12Bとからなる。負極活物質層12Bは、第1の実施の形態と同様にして形成することができる。
【0088】
また、負極12の長手方向の一端部にも正極11と同様に、例えばスポット溶接または超音波溶接で接続された負極端子16が設けられている。この負極端子16の材料としては、例えば銅(Cu)、ニッケル(Ni)などを用いることができる。
【0089】
正極集電体11A、正極活物質層11B、負極集電体12A、負極活物質層12Bは、上述の第1の例と同様である。
【0090】
ゲル電解質層13は、電解液と、この電解液を保持する保持体となる高分子化合物とを含み、いわゆるゲル状となっている。ゲル電解質層13は高いイオン伝導率を得ることができるとともに、電池の漏液を防止できるので好ましい。電解液の構成(すなわち液状の溶媒、電解質塩)は、第1の例と同様である。
【0091】
高分子化合物としては、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、ポリスチレンあるいはポリカーボネートを挙げることができる。特に電気化学的な安定性の点からは、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレンあるいはポリエチレンオキサイドが好ましい。
【0092】
[非水電解質電池の製造方法]
次に、第2の例による非水電解質電池の製造方法について説明する。まず、正極11および負極12のそれぞれに、溶媒と、電解質塩と、高分子化合物と、混合溶剤とを含む前駆溶液を塗布し、混合溶剤を揮発させてゲル電解質層13を形成する。なお、予め正極集電体11Aの端部に正極端子15を溶接により取り付けるとともに、負極集電体12Aの端部に負極端子16を溶接により取り付けるようにする。
【0093】
次に、ゲル電解質層13が形成された正極11と負極12とを、セパレータ14を介して積層し積層体とした後、この積層体をその長手方向に巻回して、巻回型の電池素子10を形成する。
【0094】
次に、ラミネートフィルムからなる外装材19を深絞り加工することで凹部18を形成し、電池素子10をこの凹部18に挿入し、外装材19の未加工部分を凹部18上部に折り返し、凹部18の外周部分を熱溶着し密封する。以上により、第2の例による非水電解質電池が作製される。
【実施例】
【0095】
以下、この発明を具体的な実験結果に基づいてさらに詳細に説明する。以下では、本発明を適用した正極活物質を作製し、得られた正極活物質を用いて電池を作製して、その特性を評価した。なお、本発明は以下の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0096】
以下の実施例では、二次粒子化されたLiaMnbFecdPO4オリビン化合物と、一次粒子からなるLivwM’xM’’yz酸化物とを混合して正極活物質として用いた二次電池の特性を評価した。
【0097】
[実施例1]
<サンプル1−1>〜<サンプル1−6>
[正極の作製]
正極活物質として、平均粒径D1が0.58μmのオリビン化合物LiFePO4と、平均粒径D2が13.2μmの層状酸化物LiNi0.8Co0.15Al0.052とを混合した材料を用いた。このとき、レーザ回折式粒度分布計によるオリビン化合物の平均粒径D1と層状酸化物の平均粒径D2との平均粒径との比(D2/D1)は22.8であった。
【0098】
なお、オリビン化合物は、一次粒子(一次粒子径:150nm)を複数集合してなり、一次粒子間に電子伝導性物質が介在した二次粒子を用いた。上述のオリビン化合物の平均粒径D1は、二次粒子の平均粒径である。また、層状酸化物は一次粒子である。
【0099】
オリビン化合物LiFePO4と、層状酸化物LiNi0.8Co0.15Al0.052との重量混合比(オリビン化合物:層状酸化物)は、サンプル1−1が70:30、サンプル1−2が60:40、サンプル1−3が40:60、サンプル1−4が20:80、サンプル1−5が75:25、サンプル1−6が10:90となるようにした。
【0100】
上述のような正極活物質90.8質量部と、導電剤であるグラファイト4.2質量部と、結着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)5質量部とを混合し、正極合剤を調製した。この正極合剤を溶剤であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させてペースト状の正極合剤スラリーとした。次に、正極合剤スラリーを厚さ15μmの帯状アルミニウム箔よりなる正極集電体の一方の面に均一に塗布して乾燥させ、ロールプレス機で圧縮成型して正極活物質層を形成した。最後に、正極活物質層を形成した正極集電体を所定の寸法の円板状に打ち抜いてペレット状の正極を形成した。
【0101】
[負極の作製]
負極活物質である粉砕した黒鉛粉末95質量部と、結着剤であるポリフッ化ビニリデン5質量部とを混合して負極合剤を調製した。この負極合剤を溶剤であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させてペースト状の負極合剤スラリーとした。次に、負極合剤スラリーを、厚さ15μmの銅箔よりなる負極集電体の一方の面に均一に塗布して乾燥させ、ロールプレス機で圧縮成型して負極活物質層を形成した。最後に、負極活物質層を形成した負極集電体を所定の寸法の円板状に打ち抜いてペレット状の負極を形成した。
【0102】
[電解液の作製]
電解液として、炭酸エチレン(EC)と炭酸エチルメチル(EMC)と炭酸ジメチル(DMC)とを2:2:6の体積比で混合した混合溶媒と、電解質塩としての六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)とを含むものを用いた。電解液中における六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)の濃度は1mol/dm3とした。
【0103】
[セパレータ]
セパレータとして、厚さ23μmのポリエチレン製の多孔質膜を用いた。
【0104】
[試験用電池の作製]
作製したペレット状の正極と負極とをセパレータ介して正極活物質層と負極活物質層とが対向するようにして積層し、外装カップおよび外装缶の内部に収容させてガスケットを介してかしめた。これにより、直径20mm、高さ1.6mmのコイン型非水電解質電池からなる試験用電池を作製した。
【0105】
<サンプル1−7>〜<サンプル1−12>
正極活物質として、平均粒径D1が2.0μmのオリビン化合物LiFePO4を用いた。このとき、レーザ回折式粒度分布計によるオリビン化合物の平均粒径D1と層状酸化物の平均粒径D2との平均粒径との比(D2/D1)は6.6であった。
【0106】
なお、オリビン化合物は、一次粒子(一次粒子径:150nm)を複数集合してなり、一次粒子間に電子伝導性物質が介在した二次粒子を用い、上述のオリビン化合物の平均粒径D1は、二次粒子の平均粒径である。オリビン化合物の二次粒子は、噴霧乾燥(スプレードライ)法により造粒した。オリビン化合物の平均粒径D1は、分散媒にオリビン化合物の一次粒子を分散させ、噴霧乾燥して二次粒子を造粒する際の条件を調整するとともに、造粒後の二次粒子を分級することにより変化させた。また、層状酸化物は一次粒子である。
【0107】
そして、オリビン化合物LiFePO4と、層状酸化物LiNi0.8Co0.15Al0.052との重量混合比(オリビン化合物:層状酸化物)を、サンプル1−7が70:30、サンプル1−8が60:40、サンプル1−9が40:60、サンプル1−10が20:80、サンプル1−11が75:25、サンプル1−12が10:90となるようにした以外は、サンプル1−1と同様にして試験用二次電池を作製した。
【0108】
<サンプル1−13>〜<サンプル1−18>
正極活物質として、平均粒径D1が5.9μmのオリビン化合物LiFePO4を用いた。このとき、レーザ回折式粒度分布計によるオリビン化合物の平均粒径D1と層状酸化物の平均粒径D2との平均粒径との比(D2/D1)は2.2であった。
【0109】
そして、オリビン化合物LiFePO4と、層状酸化物LiNi0.8Co0.15Al0.052との重量混合比(オリビン化合物:層状酸化物)を、サンプル1−13が70:30、サンプル1−14が60:40、サンプル1−15が40:60、サンプル1−16が20:80、サンプル1−17が75:25、サンプル1−18が10:90となるようにした以外は、サンプル1−1と同様にして試験用二次電池を作製した。
【0110】
<サンプル1−19>〜<サンプル1−24>
正極活物質として、平均粒径D1が13μmのオリビン化合物LiFePO4を用いた。このとき、レーザ回折式粒度分布計によるオリビン化合物の平均粒径D1と層状酸化物の平均粒径D2との平均粒径との比(D2/D1)は1.0であった。
【0111】
そして、オリビン化合物LiFePO4と、層状酸化物LiNi0.8Co0.15Al0.052との重量混合比(オリビン化合物:層状酸化物)を、サンプル1−19が70:30、サンプル1−20が60:40、サンプル1−21が40:60、サンプル1−22が20:80、サンプル1−23が75:25、サンプル1−24が10:90となるようにした以外は、サンプル1−1と同様にして試験用二次電池を作製した。
【0112】
[試験用電池の評価]
(a)放電容量
各実施例および比較例の試験用電池を、25℃の恒温槽中で、電流密度15mA/gの条件で定電流充電を行い、電池電圧が4.2Vとなった時点で定電圧充電に切り替えた。その後、電流密度150mA/gの条件で電池電圧が2.0Vとなるまで定電流放電を行い、放電時の電池容量を測定した。
【0113】
なお、放電容量は正極体積当たりの放電容量とし、次式により求めた。
体積あたりの放電容量[mAh/cc]=電流値150mA/g時の放電容量[mAh/g]×正極体積密度[g/cc]
【0114】
放電容量測定時の電流値を150mA/gとしたのは、実施例1で用いる正極活物質の粒子径の範囲では、電流値150mA/gでの活物質あたりの放電容量に大きな差がなく、正極の体積密度による電池性能の差を評価しやすくなるためである。
【0115】
(b)充放電サイクル特性
各実施例および比較例の試験用電池を、60℃の恒温槽中で、電流密度15mA/gの条件で定電流充電を行い、電池電圧が4.2Vとなった時点で定電圧充電に切り替えた。その後、電流密度150mA/gの条件で電池電圧が2.0Vとなるまで定電流放電を行い、初回放電時の電池容量(初回放電容量)を測定した。
【0116】
上述の条件での充放電を100サイクル繰り返し、100サイクル目における容量維持率を次式により求めた。
容量維持率[%]=(100サイクル目の放電容量/初回放電容量)×100
【0117】
下記の表1に、実施例1の結果を示す。
【0118】
【表1】

【0119】
また、図4は実施例1の放電容量の評価結果のグラフであり、図5は実施例1の充放電サイクル特性の評価結果のグラフである。なお、図4および図5のグラフは、オリビン化合物と層状酸化物との混合比が同じである場合(例えばサンプル1−1、1−7、1−13、サンプル1−19)に、粒径比によって放電容量、容量維持率がどのように変化するかを示すグラフとした。
【0120】
図4において、参照符号21は、重量混合比(オリビン化合物:層状酸化物)が70:30のサンプルの放電容量の測定結果を示す。参照符号22は、重量混合比(オリビン化合物:層状酸化物)が60:40のサンプルの放電容量の測定結果を示す。参照符号23は、重量混合比(オリビン化合物:層状酸化物)が40:60のサンプルの放電容量の測定結果を示す。参照符号24は、重量混合比(オリビン化合物:層状酸化物)が20:80のサンプルの放電容量の測定結果を示す。参照符号25は、重量混合比(オリビン化合物:層状酸化物)が75:25のサンプルの放電容量の測定結果を示す。参照符号26は、重量混合比(オリビン化合物:層状酸化物)が10:90のサンプルの放電容量の測定結果を示す。
【0121】
図5において、参照符号31は、重量混合比(オリビン化合物:層状酸化物)が70:30のサンプルの放電容量の測定結果を示す。参照符号32は、重量混合比(オリビン化合物:層状酸化物)が60:40のサンプルの放電容量の測定結果を示す。参照符号33は、重量混合比(オリビン化合物:層状酸化物)が40:60のサンプルの放電容量の測定結果を示す。参照符号34は、重量混合比(オリビン化合物:層状酸化物)が20:80のサンプルの放電容量の測定結果を示す。参照符号35は、重量混合比(オリビン化合物:層状酸化物)が75:25のサンプルの放電容量の測定結果を示す。参照符号36は、重量混合比(オリビン化合物:層状酸化物)が10:90のサンプルの放電容量の測定結果を示す。
【0122】
表1および図4、図5のグラフから分かるように、各混合比において、混合粒径比が大きいものについては、格段に体積当たりの放電容量が向上する。オリビン化合物と層状酸化物との重量混合比が同じ場合に、混合粒径比が所定値、具体的には実施例1において2.2以上であれば、粒径の大きい粒子の間に粒径の小さい粒子が入り込み、体積密度が格段に向上し、体積当たりの放電容量も著しく向上する。
【0123】
実施例1では、粒径が大きく電子伝導性の高い酸化物の周りに、粒径が小さく酸化物よりも電子伝導性に劣るが安定性の高いオリビン化合物が存在する。これにより、体積当たりの放電容量が向上し、かつサイクル特性についても100サイクルで80%以上という極めて良好な特性を有する。
【0124】
一方、混合粒径比が小さすぎる場合、すなわち酸化物とオリビン化合物との粒径に大きな差がない領域においては体積当たりの放電容量が混合重量比に関わらず低下すると共に、どの混合重量比領域においても容量維持率が80%未満と低くなる。
【0125】
また、粒径比が2.2以上の場合、オリビン化合物と酸化物との混合重量比が20:80〜70:30の領域で特に放電容量と容量維持率の両立の観点から特に顕著な効果が得られることが分かる。オリビン化合物の混合重量比が大きすぎる場合には、容量維持率は顕著に高くなるものの、放電容量が低下してしまう。これは、安定性が高い反面、エネルギー密度の点で酸化物に劣るオリビン化合物が多く含まれるためである。また、酸化物の混合重量比が大きすぎる場合には、放電容量が大きくなるものの容量維持率が低下してしまう。これは、充放電に伴う結晶構造変化が少ないという特有の性質を有するオリビン化合物の混合量が少ないため、サイクル特性が良好である性質が消失してしまうためである。
【0126】
[実施例2]
実施例2では、オリビン化合物と酸化物の材料を変えて試験用電池を作製し評価する。
<サンプル2−1>〜<サンプル2−6>
正極活物質として、平均粒径D1が0.6μmのオリビン化合物LiMn0.75Fe0.25PO4と、平均粒径D2が13.2μmの層状酸化物LiNi0.8Co0.15Al0.052とを用いた。このとき、レーザ回折式粒度分布計によるオリビン化合物の平均粒径D1と層状酸化物の平均粒径D2との平均粒径との比(D2/D1)は22であった。
【0127】
なお、オリビン化合物は、一次粒子(一次粒子径:150nm)を複数集合してなり、一次粒子間に電子伝導性物質が介在した二次粒子を用いた。上述のオリビン化合物の平均粒径D1は、二次粒子の平均粒径である。また、層状酸化物は一次粒子である。
【0128】
そして、オリビン化合物LiMn0.75Fe0.25PO4と、層状酸化物LiNi0.8Co0.15Al0.052との重量混合比(オリビン化合物:層状酸化物)を、サンプル2−1が70:30、サンプル2−2が60:40、サンプル2−3が40:60、サンプル2−4が20:80、サンプル2−5が75:25、サンプル2−6が10:90となるようにした以外は、サンプル1−1と同様にして試験用二次電池を作製した。
【0129】
<サンプル2−7>〜<サンプル2−12>
正極活物質として、平均粒径D1が2.9μmのオリビン化合物LiMn0.75Fe0.25PO4と、平均粒径D2が13.2μmの層状酸化物LiNi0.8Co0.15Al0.052とを用いた。このとき、レーザ回折式粒度分布計によるオリビン化合物の平均粒径D1と層状酸化物の平均粒径D2との平均粒径との比(D2/D1)は4.6であった。
【0130】
そして、オリビン化合物LiMn0.75Fe0.25PO4と、層状酸化物LiNi0.8Co0.15Al0.052との重量混合比(オリビン化合物:層状酸化物)を、サンプル2−7が70:30、サンプル2−8が60:40、サンプル2−9が40:60、サンプル2−10が20:80、サンプル2−11が75:25、サンプル2−12が10:90となるようにした以外は、サンプル2−1と同様にして試験用二次電池を作製した。
【0131】
<サンプル2−13>〜<サンプル2−18>
正極活物質として、平均粒径D1が6.5μmのオリビン化合物LiMn0.75Fe0.25PO4と、平均粒径D2が13.2μmの層状酸化物LiNi0.8Co0.15Al0.052とを用いた。このとき、レーザ回折式粒度分布計によるオリビン化合物の平均粒径D1と層状酸化物の平均粒径D2との平均粒径との比(D2/D1)は2.0であった。
【0132】
そして、オリビン化合物LiMn0.75Fe0.25PO4と、層状酸化物LiNi0.8Co0.15Al0.052との重量混合比(オリビン化合物:層状酸化物)を、サンプル2−13が70:30、サンプル2−14が60:40、サンプル2−15が40:60、サンプル2−16が20:80、サンプル2−17が75:25、サンプル2−18が10:90となるようにした以外は、サンプル2−1と同様にして試験用二次電池を作製した。
【0133】
<サンプル2−19>〜<サンプル2−24>
正極活物質として、平均粒径D1が13.5μmのオリビン化合物LiMn0.75Fe0.25PO4と、平均粒径D2が13.2μmの層状酸化物LiNi0.8Co0.15Al0.052とを用いた。 このとき、レーザ回折式粒度分布計によるオリビン化合物の平均粒径D1と層状酸化物の平均粒径D2との平均粒径との比(D2/D1)は0.98であった。
【0134】
そして、オリビン化合物LiMn0.75Fe0.25PO4と、層状酸化物LiNi0.8Co0.15Al0.052との重量混合比(オリビン化合物:層状酸化物)を、サンプル2−19が70:30、サンプル2−20が60:40、サンプル2−21が40:60、サンプル2−22が20:80、サンプル2−23が75:25、サンプル2−24が10:90となるようにした以外は、サンプル2−1と同様にして試験用二次電池を作製した。
【0135】
[試験用電池の評価]
(a)放電容量
各実施例および比較例の試験用電池について、実施例1と同様に、放電時の電池容量を測定し、次式により体積あたりの放電容量を求めた。
放電容量[mAh/cc]=電流値150mA/g時の放電容量[mAh/g]×正極体積密度[g/cc]
【0136】
(b)充放電サイクル特性
各実施例および比較例の試験用電池について、実施例1と同様に、100サイクル目における容量維持率を次式により求めた。
容量維持率[%]=(100サイクル目の放電容量/初回放電容量)×100
【0137】
下記の表2に、実施例2の結果を示す。
【0138】
【表2】

【0139】
[実施例3]
実施例3でも、オリビン化合物と層状酸化物の材料を変えて試験用電池を作製し評価する。
【0140】
<サンプル3−1>〜<サンプル3−6>
正極活物質として、平均粒径D1が0.58μmのオリビン化合物LiFePO4と平均粒径D2が16.5μmの層状酸化物LiCo0.98Al0.01Mg0.012とを用いた。このとき、レーザ回折式粒度分布計によるオリビン化合物の平均粒径D1と層状酸化物の平均粒径D2との平均粒径との比(D2/D1)は28.4であった。
【0141】
なお、オリビン化合物は、一次粒子(一次粒子径:150nm)を複数集合してなり、一次粒子間に電子伝導性物質が介在した二次粒子を用いた。上述のオリビン化合物の平均粒径D1は、二次粒子の平均粒径である。また、層状酸化物は一次粒子である。
【0142】
そして、オリビン化合物LiFePO4と、層状酸化物LiCo0.98Al0.01Mg0.012との重量混合比(オリビン化合物:層状酸化物)を、サンプル3−1が70:30、サンプル3−2が60:40、サンプル3−3が40:60、サンプル3−4が20:80、サンプル3−5が75:25、サンプル3−6が10:90となるようにした以外は、サンプル1−1と同様にして試験用二次電池を作製した。
【0143】
<サンプル3−7>〜<サンプル3−12>
正極活物質として、平均粒径D1が2.0μmのオリビン化合物LiFePO4と、平均粒径D2が16.5μmの層状酸化物LiMn0.75Fe0.25PO4とを用いた。このとき、レーザ回折式粒度分布計によるオリビン化合物の平均粒径D1と層状酸化物の平均粒径D2との平均粒径との比(D2/D1)は8.3であった。
【0144】
そして、オリビン化合物LiFePO4と、層状酸化物LiCo0.98Al0.01Mg0.012との重量混合比(オリビン化合物:層状酸化物)を、サンプル3−7が70:30、サンプル3−8が60:40、サンプル3−9が40:60、サンプル3−10が20:80、サンプル3−11が75:25、サンプル3−12が10:90となるようにした以外は、サンプル3−1と同様にして試験用二次電池を作製した。
【0145】
<サンプル3−13>〜<サンプル3−18>
正極活物質として、平均粒径D1が5.9μmのオリビン化合物LiFePO4と、平均粒径D2が16.5μmの層状酸化物LiMn0.75Fe0.25PO4とを用いた。このとき、レーザ回折式粒度分布計によるオリビン化合物の平均粒径D1と層状酸化物の平均粒径D2との平均粒径との比(D2/D1)は2.8であった。
【0146】
そして、オリビン化合物LiFePO4と、層状酸化物LiCo0.98Al0.01Mg0.012との重量混合比(オリビン化合物:層状酸化物)を、サンプル3−13が70:30、サンプル3−14が60:40、サンプル3−15が40:60、サンプル3−16が20:80、サンプル3−17が75:25、サンプル3−18が10:90となるようにした以外は、サンプル3−1と同様にして試験用二次電池を作製した。
【0147】
<サンプル3−19>〜<サンプル3−24>
正極活物質として、平均粒径D1が13μmのオリビン化合物LiFePO4と、平均粒径D2が16.5μmの層状酸化物LiMn0.75Fe0.25PO4とを用いた。このとき、レーザ回折式粒度分布計によるオリビン化合物の平均粒径D1と層状酸化物の平均粒径D2との平均粒径との比(D2/D1)は1.3であった。
【0148】
そして、オリビン化合物LiFePO4と、層状酸化物LiCo0.98Al0.01Mg0.012との重量混合比(オリビン化合物:層状酸化物)を、サンプル3−19が70:30、サンプル3−20が60:40、サンプル3−21が40:60、サンプル3−22が20:80、サンプル3−23が75:25、サンプル3−24が10:90となるようにした以外は、サンプル3−1と同様にして試験用二次電池を作製した。
【0149】
[試験用電池の評価]
(a)放電容量
各実施例および比較例の試験用電池について、実施例1と同様に、放電時の電池容量を測定し、次式により体積あたりの放電容量を求めた。
放電容量[mAh/cc]=電流値150mA/g時の放電容量[mAh/g]×正極体積密度[g/cc]
【0150】
(b)充放電サイクル特性
各実施例および比較例の試験用電池について、実施例1と同様に、100サイクル目における容量維持率を次式により求めた。
容量維持率[%]=(100サイクル目の放電容量/初回放電容量)×100
【0151】
下記の表3に、実施例3の結果を示す。
【0152】
【表3】

【0153】
[実施例4]
実施例4でも、オリビン化合物と層状酸化物の材料を変えて試験用電池を作製し評価する。
【0154】
<サンプル4−1>〜<サンプル4−6>
正極活物質として、平均粒径D1が0.6μmのオリビン化合物LiMn0.75Fe0.25PO4と、平均粒径D2が16.5μmの層状酸化物LiCo0.98Al0.01Mg0.012とを用いた。このとき、レーザ回折式粒度分布計によるオリビン化合物の平均粒径D1と層状酸化物の平均粒径D2との平均粒径との比(D2/D1)は27.5であった。
【0155】
なお、オリビン化合物は、一次粒子(一次粒子径:150nm)を複数集合してなり、一次粒子間に電子伝導性物質が介在した二次粒子を用いた。上述のオリビン化合物の平均粒径D1は、二次粒子の平均粒径である。また、層状酸化物は一次粒子である。
【0156】
そして、オリビン化合物LiMn0.75Fe0.25PO4と、層状酸化物LiCo0.98Al0.01Mg0.012との重量混合比(オリビン化合物:層状酸化物)を、サンプル4−1が70:30、サンプル4−2が60:40、サンプル4−3が40:60、サンプル4−4が20:80、サンプル4−5が75:25、サンプル4−6が10:90となるようにした以外は、サンプル1−1と同様にして試験用二次電池を作製した。
【0157】
<サンプル4−7>〜<サンプル4−12>
正極活物質として、平均粒径D1が2.9μmのオリビン化合物LiMn0.75Fe0.25PO4と、平均粒径D2が16.5μmの層状酸化物LiCo0.98Al0.01Mg0.012とを用いた。このとき、レーザ回折式粒度分布計によるオリビン化合物の平均粒径D1と層状酸化物の平均粒径D2との平均粒径との比(D2/D1)は8.3であった。
【0158】
そして、オリビン化合物LiMn0.75Fe0.25PO4と、層状酸化物LiCo0.98Al0.01Mg0.012との重量混合比(オリビン化合物:層状酸化物)を、サンプル4−7が70:30、サンプル4−8が60:40、サンプル4−9が40:60、サンプル4−10が20:80、サンプル4−11が75:25、サンプル4−12が10:90となるようにした以外は、サンプル4−1と同様にして試験用二次電池を作製した。
【0159】
<サンプル4−13>〜<サンプル4−18>
正極活物質として、平均粒径D1が6.5μmのオリビン化合物LiMn0.75Fe0.25PO4と、平均粒径D2が16.5μmの層状酸化物LiCo0.98Al0.01Mg0.012とを用いた。このとき、レーザ回折式粒度分布計によるオリビン化合物の平均粒径D1と層状酸化物の平均粒径D2との平均粒径との比(D2/D1)は2.8であった。
【0160】
そして、オリビン化合物LiMn0.75Fe0.25PO4と、層状酸化物LiCo0.98Al0.01Mg0.012との重量混合比(オリビン化合物:層状酸化物)を、サンプル4−13が70:30、サンプル4−14が60:40、サンプル4−15が40:60、サンプル4−16が20:80、サンプル4−17が75:25、サンプル4−18が10:90となるようにした以外は、サンプル4−1と同様にして試験用二次電池を作製した。
【0161】
<サンプル4−19>〜<サンプル4−24>
正極活物質として、平均粒径D1が13.5μmのオリビン化合物LiMn0.75Fe0.25PO4と、平均粒径D2が16.5μmの層状酸化物LiCo0.98Al0.01Mg0.012とを用いた。このとき、レーザ回折式粒度分布計によるオリビン化合物の平均粒径D1と層状酸化物の平均粒径D2との平均粒径との比(D2/D1)は1.3であった。
【0162】
そして、オリビン化合物LiMn0.75Fe0.25PO4と、層状酸化物LiCo0.98Al0.01Mg0.012との重量混合比(オリビン化合物:層状酸化物)を、サンプル4−19が70:30、サンプル4−20が60:40、サンプル4−21が40:60、サンプル4−22が20:80、サンプル4−23が75:25、サンプル4−24が10:90となるようにした以外は、サンプル4−1と同様にして試験用二次電池を作製した。
【0163】
[試験用電池の評価]
(a)放電容量
各実施例および比較例の試験用電池について、実施例1と同様に、放電時の電池容量を測定し、次式により体積あたりの放電容量を求めた。
放電容量[mAh/cc]=電流値150mA/g時の放電容量[mAh/g]×正極体積密度[g/cc]
【0164】
(b)充放電サイクル特性
各実施例および比較例の試験用電池について、実施例1と同様に、100サイクル目における容量維持率を次式により求めた。
容量維持率[%]=(100サイクル目の放電容量/初回放電容量)×100
【0165】
下記の表4に、実施例4の結果を示す。
【0166】
【表4】

【0167】
[実施例5]
実施例5でも、オリビン化合物と層状酸化物の材料を変えて試験用電池を作製し評価する。
【0168】
<サンプル5−1>〜<サンプル5−6>
正極活物質として、平均粒径D1が0.58μmのオリビン化合物LiFePO4と、平均粒径D2が11μmの層状酸化物LiNi0.5Co0.2Mn0.32を用いた。このとき、レーザ回折式粒度分布計によるオリビン化合物の平均粒径D1と層状酸化物の平均粒径D2との平均粒径との比(D2/D1)は19であった。
【0169】
なお、オリビン化合物は、一次粒子(一次粒子径:150nm)を複数集合してなり、一次粒子間に電子伝導性物質が介在した二次粒子を用いた。上述のオリビン化合物の平均粒径D1は、二次粒子の平均粒径である。また、層状酸化物は一次粒子である。
【0170】
そして、オリビン化合物LiFePO4と、層状酸化物LiNi0.5Co0.2Mn0.32との重量混合比(オリビン化合物:層状酸化物)を、サンプル5−1が70:30、サンプル5−2が60:40、サンプル5−3が40:60、サンプル5−4が20:80、サンプル5−5が75:25、サンプル5−6が10:90となるようにした以外は、サンプル1−1と同様にして試験用二次電池を作製した。
【0171】
<サンプル5−7>〜<サンプル5−12>
正極活物質として、平均粒径D1が2.0μmのオリビン化合物LiFePO4と、平均粒径D2が11μmの層状酸化物LiNi0.5Co0.2Mn0.32とを用いた。このとき、レーザ回折式粒度分布計によるオリビン化合物の平均粒径D1と層状酸化物の平均粒径D2との平均粒径との比(D2/D1)は5.5であった。
【0172】
そして、オリビン化合物LiFePO4と、層状酸化物LiNi0.5Co0.2Mn0.32との重量混合比(オリビン化合物:層状酸化物)を、サンプル5−7が70:30、サンプル5−8が60:40、サンプル5−9が40:60、サンプル5−10が20:80、サンプル5−11が75:25、サンプル5−12が10:90となるようにした以外は、サンプル5−1と同様にして試験用二次電池を作製した。
【0173】
<サンプル5−13>〜<サンプル5−18>
正極活物質として、平均粒径D1が5.9μmのオリビン化合物LiFePO4と、平均粒径D2が11μmの層状酸化物LiNi0.5Co0.2Mn0.32とを用いた。このとき、レーザ回折式粒度分布計によるオリビン化合物の平均粒径D1と層状酸化物の平均粒径D2との平均粒径との比(D2/D1)は1.9であった。
【0174】
そして、オリビン化合物LiFePO4と、層状酸化物LiNi0.5Co0.2Mn0.32との重量混合比(オリビン化合物:層状酸化物)を、サンプル5−13が70:30、サンプル5−14が60:40、サンプル5−15が40:60、サンプル5−16が20:80、サンプル5−17が75:25、サンプル5−18が10:90となるようにした以外は、サンプル5−1と同様にして試験用二次電池を作製した。
【0175】
<サンプル5−19>〜<サンプル5−24>
正極活物質として、平均粒径D1が13μmのオリビン化合物LiFePO4と、平均粒径D2が11μmの層状酸化物LiNi0.5Co0.2Mn0.32とを用いた。このとき、レーザ回折式粒度分布計によるオリビン化合物の平均粒径D1と層状酸化物の平均粒径D2との平均粒径との比(D2/D1)は0.84であった。
【0176】
そして、オリビン化合物LiFePO4と、層状酸化物LiNi0.5Co0.2Mn0.32との重量混合比(オリビン化合物:層状酸化物)を、サンプル5−19が70:30、サンプル5−20が60:40、サンプル5−21が40:60、サンプル5−22が20:80、サンプル5−23が75:25、サンプル5−24が10:90となるようにした以外は、サンプル5−1と同様にして試験用二次電池を作製した。
【0177】
[試験用電池の評価]
(a)放電容量
各実施例および比較例の試験用電池について、実施例1と同様に、放電時の電池容量を測定し、次式により体積あたりの放電容量を求めた。
放電容量[mAh/cc]=電流値150mA/g時の放電容量[mAh/g]×正極体積密度[g/cc]
【0178】
(b)充放電サイクル特性
各実施例および比較例の試験用電池について、実施例1と同様に、100サイクル目における容量維持率を次式により求めた。
容量維持率[%]=(100サイクル目の放電容量/初回放電容量)×100
【0179】
下記の表5に、実施例5の結果を示す。
【0180】
【表5】

【0181】
[実施例6]
実施例6でも、オリビン化合物と層状酸化物の材料を変えて試験用電池を作製し評価する。
【0182】
<サンプル6−1>〜<サンプル6−6>
正極活物質として、平均粒径D1が0.6μmのオリビン化合物LiMn0.75Fe0.25PO4と、平均粒径D2が11μmの層状酸化物LiNi0.5Co0.2Mn0.32を用いた。このとき、レーザ回折式粒度分布計によるオリビン化合物の平均粒径D1と層状酸化物の平均粒径D2との平均粒径との比(D2/D1)は18.3であった。
【0183】
なお、オリビン化合物は、一次粒子(一次粒子径:150nm)を複数集合してなり、一次粒子間に電子伝導性物質が介在した二次粒子を用いた。上述のオリビン化合物の平均粒径D1は、二次粒子の平均粒径である。また、層状酸化物は一次粒子である。
【0184】
そして、オリビン化合物LiMn0.75Fe0.25PO4と、層状酸化物LiNi0.5Co0.2Mn0.32との重量混合比(オリビン化合物:層状酸化物)を、サンプル6−1が70:30、サンプル6−2が60:40、サンプル6−3が40:60、サンプル6−4が20:80、サンプル6−5が75:25、サンプル6−6が10:90となるようにした以外は、サンプル1−1と同様にして試験用二次電池を作製した。
【0185】
<サンプル6−7>〜<サンプル6−12>
正極活物質として、平均粒径D1が2.9μmのオリビン化合物LiMn0.75Fe0.25PO4と、平均粒径D2が11μmの層状酸化物LiNi0.5Co0.2Mn0.32とを用いた。このとき、レーザ回折式粒度分布計によるオリビン化合物の平均粒径D1と層状酸化物の平均粒径D2との平均粒径との比(D2/D1)は3.8であった。
【0186】
そして、オリビン化合物LiMn0.75Fe0.25PO4と、層状酸化物LiNi0.5Co0.2Mn0.32との重量混合比(オリビン化合物:層状酸化物)を、サンプル6−7が70:30、サンプル6−8が60:40、サンプル6−9が40:60、サンプル6−10が20:80、サンプル6−11が75:25、サンプル6−12が10:90となるようにした以外は、サンプル6−1と同様にして試験用二次電池を作製した。
【0187】
<サンプル6−13>〜<サンプル6−18>
正極活物質として、平均粒径D1が6.5μmのオリビン化合物LiMn0.75Fe0.25PO4と、平均粒径D2が11μmの層状酸化物LiNi0.5Co0.2Mn0.32とを用いた。このとき、レーザ回折式粒度分布計によるオリビン化合物の平均粒径D1と層状酸化物の平均粒径D2との平均粒径との比(D2/D1)は1.7であった。
【0188】
そして、オリビン化合物LiMn0.75Fe0.25PO4と、層状酸化物LiNi0.5Co0.2Mn0.32との重量混合比(オリビン化合物:層状酸化物)を、サンプル6−13が70:30、サンプル6−14が60:40、サンプル6−15が40:60、サンプル6−16が20:80、サンプル6−17が75:25、サンプル6−18が10:90となるようにした以外は、サンプル6−1と同様にして試験用二次電池を作製した。
【0189】
<サンプル6−19>〜<サンプル6−24>
正極活物質として、平均粒径D1が13.5μmのオリビン化合物LiMn0.75Fe0.25PO4と、平均粒径D2が11μmの層状酸化物LiNi0.5Co0.2Mn0.32とを用いた。このとき、レーザ回折式粒度分布計によるオリビン化合物の平均粒径D1と層状酸化物の平均粒径D2との平均粒径との比(D2/D1)は0.81であった。
【0190】
そして、オリビン化合物LiMn0.75Fe0.25PO4と、層状酸化物LiNi0.5Co0.2Mn0.32との重量混合比(オリビン化合物:層状酸化物)を、サンプル6−19が70:30、サンプル6−20が60:40、サンプル6−21が40:60、サンプル6−22が20:80、サンプル6−23が75:25、サンプル6−24が10:90となるようにした以外は、サンプル6−1と同様にして試験用二次電池を作製した。
【0191】
[試験用電池の評価]
(a)放電容量
各実施例および比較例の試験用電池について、実施例1と同様に、放電時の電池容量を測定し、次式により体積あたりの放電容量を求めた。
放電容量[mAh/cc]=電流値150mA/g時の放電容量[mAh/g]×正極体積密度[g/cc]
【0192】
(b)充放電サイクル特性
各実施例および比較例の試験用電池について、実施例1と同様に、100サイクル目における容量維持率を次式により求めた。
容量維持率[%]=(100サイクル目の放電容量/初回放電容量)×100
【0193】
下記の表6に、実施例6の結果を示す。
【0194】
【表6】

【0195】
表2ないし表6に示すように、オリビン化合物および層状酸化物の材料を変えた場合であっても、実施例1と同様の効果が得られた。
【0196】
例えば、実施例2において、粒径比が2.1以上の場合には、放電容量と容量維持率とが両立した電池を得ることができた。また、粒径比が2.1以上の場合に、オリビン化合物と層状酸化物との混合重量比が20:80〜70:30の領域で特に放電容量と容量維持率の両立の観点から特に顕著な効果が得られることが分かった。
【0197】
同様に、実施例3では粒径比2.8以上、実施例4では粒径比2.5以上、実施例5では粒径比1.9以上、実施例6では粒径比1.7以上で放電容量と容量維持率とが両立した電池を得ることができた。また、どのような材料、粒径比であっても、オリビン化合物と層状酸化物との混合重量比が20:80〜70:30の領域で特に放電容量と容量維持率の両立の観点から特に顕著な効果が得られることが分かった。
【0198】
[実施例7]
実施例7では、一次粒子からなるオリビン化合物を用いて試験用電池を作製し、評価する。
【0199】
<サンプル7−1>〜<サンプル7−4>
正極活物質として、平均粒径D1が0.55μmのオリビン化合物LiFePO4と平均粒径D2が13.2μmの層状酸化物LiCo0.98Al0.01Mg0.012とを用いた。このとき、レーザ回折式粒度分布計によるオリビン化合物の平均粒径D1と層状酸化物の平均粒径D2との平均粒径との比(D2/D1)は24であった。
【0200】
なお、オリビン化合物は一次粒子であり、粒子表面に電子伝導性物質が設けられた一次粒子を用いた。上述のオリビン化合物の平均粒径D1は、一次粒子の平均粒径である。また、層状酸化物も同様に一次粒子である。
【0201】
そして、オリビン化合物LiFePO4と、層状酸化物LiCo0.98Al0.01Mg0.012との重量混合比(オリビン化合物:層状酸化物)を、サンプル7−1が70:30、サンプル7−2が60:40、サンプル7−3が40:60、サンプル7−4が20:80となるようにした以外は、サンプル1−1と同様にして試験用二次電池を作製した。
【0202】
<サンプル7−5>〜<サンプル7−8>
正極活物質として、平均粒径D1が2.5μmのオリビン化合物LiFePO4と、平均粒径D2が13.2μmの層状酸化物LiMn0.75Fe0.25PO4とを用いた。このとき、レーザ回折式粒度分布計によるオリビン化合物の平均粒径D1と層状酸化物の平均粒径D2との平均粒径との比(D2/D1)は5.3であった。
【0203】
なお、オリビン化合物は一次粒子であり、オリビン化合物の平均粒径D1は、一次粒子の平均粒径である。
【0204】
そして、オリビン化合物LiFePO4と、層状酸化物LiCo0.98Al0.01Mg0.012との重量混合比(オリビン化合物:層状酸化物)を、サンプル7−5が70:30、サンプル7−6が60:40、サンプル7−7が40:60、サンプル7−8が20:80となるようにした以外は、サンプル7−1と同様にして試験用二次電池を作製した。
【0205】
<サンプル7−9>〜<サンプル7−12>
正極活物質として、平均粒径D1が6.3μmのオリビン化合物LiFePO4と、平均粒径D2が13.2μmの層状酸化物LiMn0.75Fe0.25PO4とを用いた。このとき、レーザ回折式粒度分布計によるオリビン化合物の平均粒径D1と層状酸化物の平均粒径D2との平均粒径との比(D2/D1)は2.1であった。
【0206】
なお、オリビン化合物は一次粒子であり、オリビン化合物の平均粒径D1は、一次粒子の平均粒径である。
【0207】
そして、オリビン化合物LiFePO4と、層状酸化物LiCo0.98Al0.01Mg0.012との重量混合比(オリビン化合物:層状酸化物)を、サンプル7−9が70:30、サンプル7−10が60:40、サンプル7−11が40:60、サンプル7−12が20:80となるようにした以外は、サンプル7−1と同様にして試験用二次電池を作製した。
【0208】
<サンプル7−13>〜<サンプル7−16>
正極活物質として、平均粒径D1が13.5μmのオリビン化合物LiFePO4と、平均粒径D2が13.2μmの層状酸化物LiMn0.75Fe0.25PO4とを用いた。このとき、レーザ回折式粒度分布計によるオリビン化合物の平均粒径D1と層状酸化物の平均粒径D2との平均粒径との比(D2/D1)は1.0であった。
【0209】
なお、オリビン化合物は一次粒子であり、オリビン化合物の平均粒径D1は、一次粒子の平均粒径である。
【0210】
そして、オリビン化合物LiFePO4と、層状酸化物LiCo0.98Al0.01Mg0.012との重量混合比(オリビン化合物:層状酸化物)を、サンプル7−1が70:30、サンプル7−2が60:40、サンプル7−3が40:60、サンプル7−4が20:80となるようにした以外は、サンプル7−1と同様にして試験用二次電池を作製した。
【0211】
[試験用電池の評価]
(a)放電容量
各実施例および比較例の試験用電池について、実施例1と同様に、放電時の電池容量を測定し、次式により体積あたりの放電容量を求めた。
放電容量[mAh/cc]=電流値150mA/g時の放電容量[mAh/g]×正極体積密度[g/cc]
【0212】
(b)充放電サイクル特性
各実施例および比較例の試験用電池について、実施例1と同様に、100サイクル目における容量維持率を次式により求めた。
容量維持率[%]=(100サイクル目の放電容量/初回放電容量)×100
【0213】
下記の表7に、実施例7の結果を示す。
【0214】
【表7】

【0215】
実施例7では、実施例1ないし実施例7において、オリビン化合物と層状酸化物とを、いずれの粒径比D2/D1においても特に顕著な電池特性を発揮する重量混合比(オリビン化合物:層状酸化物)20:80〜70:30の範囲で混合させている。しかしながら、表7から分かるように、オリビン化合物と層状酸化物とを混合した正極活物質であっても、一次粒子からなるオリビン化合物を正極活物質の一部として用いることにより、放電容量およびサイクル特性の低下が顕著であることが分かった。
【0216】
例えば、サンプル1−1とサンプル7−1とを比較する。サンプル1−1とサンプル7−1とは、オリビン化合物の平均粒径D1が0.58μmおよび0.55μmとほぼ同じサイズである。また、オリビン化合物と層状酸化物との重量混合比は70:30と同じである。
【0217】
オリビン化合物として一次粒子を用いたサンプル7−1は、オリビン化合物として二次粒子を用いたサンプル1−1に対して放電容量が低下し、容量維持率は顕著に低下した。また、粒径比D2/D1が近い他のサンプルを比較しても、同様の電池特性の劣化が見られた。これにより、オリビン化合物としては一次粒子よりも一次粒子の集合体である二次粒子を用いた方が、高い電池特性を得られることが分かった。
【0218】
以上説明したように、正極活物質としての安定性に優れ、二次粒子からなるオリビン化合物と、正極体積あたりの理論容量が大きく、一次粒子からなる酸化物とを混合した正極活物質において、オリビン化合物を酸化物との粒径比を調整することにより、高い電池特性を得ることができる。
【0219】
なお、この発明に係る非水電解質電池においては、電池形状については特に限定されることはなく、上述したコイン型、ラミネートフィルム型の他に円筒型、角型、ボタン型等の種々の形状に構成することができる。
【0220】
また、負極、正極の電極の作製方法も上記の記載に限定されるものではなく、公知の方法を用いることができる。例えば材料に公知の結着剤、導電性材料等を添加し溶剤を加えて塗布する方法、材料に公知の結着剤等を添加し加熱して塗布する方法、材料単独あるいは導電性材料さらには結着剤と混合して成型等の処理を施して成型体電極を作製する方法等、種々の方法を用いることができる。
【0221】
より具体的には、上記のように結着剤、有機溶剤等と混合してスラリー状にした後、集電体上に塗布、乾燥して作製する方法、あるいは、結着剤の有無にかかわらず、活物質に熱を加えたまま加圧成型することにより強度を有した電極を作製する方法などを用いることができる。
【0222】
電池の組み立て方法も、上記のように電極とセパレータを順次積層する積層方式や、正負極間にセパレータを介して巻芯の周囲に巻回する巻回方式など公知の方法を用いることができる。また、巻回方式で角型電池を作製する場合にもこの発明は有効である。
【符号の説明】
【0223】
1・・・・非水電解質電池
2・・・・正極
2A・・・正極集電体
2B・・・正極合剤層
3・・・・負極
3A・・・負極集電体
3B・・・負極合剤層
4・・・・セパレータ
5・・・・正極缶
6・・・・負極缶
7・・・・ガスケット
10・・・電池素子
11・・・正極
11A・・正極集電体
11B・・正極合剤層
12・・・負極
12A・・負極集電体
12B・・負極合剤層
13・・・ゲル電解質層
14・・・セパレータ
15・・・正極リード
16・・・負極リード
17・・・樹脂片
18・・・凹部
19・・・外装材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均組成が化1で表される平均粒径D1の第1の正極活物質と、平均組成が化2で表される平均粒径D2の第2の正極活物質とを含み、
上記平均粒径D1が8μm以下であり、
上記平均粒径D1と上記平均粒径D2との粒径比D2/D1が1.5以上である
非水電解質電池用正極活物質。
(化1)
LiaMnbFecdPO4
(式中、0≦a≦2、b+c+d≦1、0≦b≦1、0≦c≦1、0≦d≦1であり、マンガン(Mg)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、ニオブ(Nb)、チタン(Ti)、シリコン(Si)、クロム(Cr)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)から選択される少なくとも一種である。)
(化2)
LivwM’xM’’yz
(式中、0<v<2、w+x+y≦1、0≦w≦1、0≦x≦1、0≦y≦1、0<z<3であり、M、M’およびM’’はNi(ニッケル)、Co(コバルト)、Fe(鉄)、Mn(マンガン)、Cu(銅)、Zn(亜鉛)、Al(アルミニウム)、Cr(クロム)、V(バナジウム)、Ti(チタン)、Mg(マグネシウム)、Zr(ジルコニウム)から選択される少なくとも1種以上である。)
【請求項2】
上記第1の正極活物質が、平均組成が化1で表される一次粒子を複数集合してなる二次粒子である
請求項1に記載の非水電解質電池用正極活物質。
【請求項3】
上記第1の正極活物質が、一次粒子間に電子導電性物質が介在した二次粒子からなる
請求項2に記載の非水電解質電池用正極活物質。
【請求項4】
上記第1の正極活物質の上記一次粒子の平均粒径が、10μm以上600μm以下である
請求項3に記載の非水電解質電池用正極活物質。
【請求項5】
上記第1の正極活物質の混合量が、15重量%以上70重量%以下であり、
上記第2の正極活物質の混合量が、30重量%以上85重量%以下である
請求項4記載の非水電解質電池用正極活物質。
【請求項6】
平均組成が化1で表される平均粒径D1の第1の正極活物質と、平均組成が化2で表される平均粒径D2の第2の正極活物質とを含み、
上記平均粒径D1が8μm以下であり、
上記平均粒径D1と上記平均粒径D2との粒径比D2/D1が1.5以上である正極活物質を含む正極と、
負極と、
非水電解質と
を備える非水電解質電池。
(化1)
LiaMnbFecdPO4
(式中、0≦a≦2、b+c+d≦1、0≦b≦1、0≦c≦1、0≦d≦1であり、マンガン(Mg)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、ニオブ(Nb)、チタン(Ti)、シリコン(Si)、クロム(Cr)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)から選択される少なくとも一種である。)
(化2)
LivwM’xM’’yz
(式中、0<v<2、w+x+y≦1、0≦w≦1、0≦x≦1、0≦y≦1、0<z<3であり、M、M’およびM’’はNi(ニッケル)、Co(コバルト)、Fe(鉄)、Mn(マンガン)、Cu(銅)、Zn(亜鉛)、Al(アルミニウム)、Cr(クロム)、V(バナジウム)、Ti(チタン)、Mg(マグネシウム)、Zr(ジルコニウム)から選択される少なくとも1種以上である。)
【請求項7】
平均組成が化1で表される平均粒径D1の第1の正極活物質と、平均組成が化2で表される平均粒径D2の第2の正極活物質とを含み、
上記平均粒径D1が8μm以下であり、
上記平均粒径D1と上記平均粒径D2との粒径比D2/D1が1.5以上である正極活物質を含む正極と、
負極と、
非水電解質と
を備える非水電解質電池を用いた高出力電子機器。
(化1)
LiaMnbFecdPO4
(式中、0≦a≦2、b+c+d≦1、0≦b≦1、0≦c≦1、0≦d≦1であり、マンガン(Mg)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、ニオブ(Nb)、チタン(Ti)、シリコン(Si)、クロム(Cr)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)から選択される少なくとも一種である。)
(化2)
LivwM’xM’’yz
(式中、0<v<2、w+x+y≦1、0≦w≦1、0≦x≦1、0≦y≦1、0<z<3であり、M、M’およびM’’はNi(ニッケル)、Co(コバルト)、Fe(鉄)、Mn(マンガン)、Cu(銅)、Zn(亜鉛)、Al(アルミニウム)、Cr(クロム)、V(バナジウム)、Ti(チタン)、Mg(マグネシウム)、Zr(ジルコニウム)から選択される少なくとも1種以上である。)
【請求項8】
平均組成が化1で表される平均粒径D1の第1の正極活物質と、平均組成が化2で表される平均粒径D2の第2の正極活物質とを含み、
上記平均粒径D1が8μm以下であり、
上記平均粒径D1と上記平均粒径D2との粒径比D2/D1が1.5以上である正極活物質を含む正極と、
負極と、
非水電解質と
を備える非水電解質電池を用いた自動車。
(化1)
LiaMnbFecdPO4
(式中、0≦a≦2、b+c+d≦1、0≦b≦1、0≦c≦1、0≦d≦1であり、マンガン(Mg)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、ニオブ(Nb)、チタン(Ti)、シリコン(Si)、クロム(Cr)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)から選択される少なくとも一種である。)
(化2)
LivwM’xM’’yz
(式中、0<v<2、w+x+y≦1、0≦w≦1、0≦x≦1、0≦y≦1、0<z<3であり、M、M’およびM’’はNi(ニッケル)、Co(コバルト)、Fe(鉄)、Mn(マンガン)、Cu(銅)、Zn(亜鉛)、Al(アルミニウム)、Cr(クロム)、V(バナジウム)、Ti(チタン)、Mg(マグネシウム)、Zr(ジルコニウム)から選択される少なくとも1種以上である。)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−113783(P2011−113783A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−268387(P2009−268387)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】