説明

非水電解質電池

【課題】高温貯蔵特性が改善された非水電解質電池を提供する。
【解決手段】正極2と、負極3と、リチウムイオンとB[(OCO)22-で表されるアニオンとを含有する常温溶融塩を含む非水電解質とを具備することを特徴とする非水電解質電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常温溶融塩を含む非水電解質を備えた一次電池と二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、有機溶媒にリチウム塩を溶解した有機電解液を非水電解質として用いたリチウム一次電池やリチウムイオン二次電池が携帯機器のメモリーバックアップや駆動電源として多用されている。これらの電池では、有機電解液に有機溶媒が含有されているため、高温下で蒸気圧が高くなりやすく、また有機溶媒の多くは引火性を有することから、安全性を高める配慮が必要である。
【0003】
また、電気自動車(EV)、ハイブリッド車(HEV)、大型の電力貯蔵用電池、高出力を要求されるパワーツール用などの電池においては、より一層の高い安全性と高温下での高い信頼性と長寿命とが要求されるため、非水電解質の安全性をさらに高める必要がある。一方、高出力、長寿命なキャパシターにおいても同様に高い安全性の電解質が要求されている。
【0004】
そのため、無機固体からなる固体電解質や、不燃性の非水電解質として常温で液状のイオン性融体である常温溶融塩が注目されている。例えば特開平4−349365号などに常温溶融塩を用いたリチウム電池が開示されている。
【0005】
しかしながら、常温溶融塩を含む非水電解質は、有機電解液からなる非水電解質に比べて高粘性で導電性が低いため、高い大電流性能が得られないという問題点がある。
【特許文献1】特開平4−349365号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、高温貯蔵特性が改善された非水電解質電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る非水電解質電池は、正極と、
負極と、
リチウムイオンとB[(OCO)22-で表されるアニオンとを含有する常温溶融塩を含む非水電解質と
を具備することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
以上詳述したように本発明によれば、高温貯蔵特性が改善された非水電解質電池を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
まず、本発明に係る非水電解質電池の第1の実施形態について説明する。
【0010】
この第1実施形態の非水電解質電池は、容器と、前記容器内に収納され、正極活物質を含む正極と、前記容器内に収納され、負極活物質を含む負極と、前記容器内に収容され、リチウムイオンを含有した常温溶融塩を含む非水電解質とを具備する。また、前記正極及び前記負極のうち少なくとも一方の電極は、Al23含有粒子、ZrO2含有粒子及びSiO2含有粒子よりなる群から選択される少なくとも1種類からなる平均一次粒子径が1〜100nmの範囲内の金属酸化物粒子を含む。
【0011】
さらに、第1実施形態の非水電解質電池では、正極と負極の間にセパレータを介在させることができる。
【0012】
以下、金属酸化物粒子、正極、負極、非水電解質、セパレータ及び容器について説明する。
【0013】
1)金属酸化物粒子
金属酸化物粒子は、Al23含有粒子、ZrO2含有粒子及びSiO2含有粒子よりなる群から選択される少なくとも1種類からなる。
【0014】
この金属酸化物粒子を正極及び負極のうち少なくともいずれか一方の電極に含有させるが、この金属酸化物粒子の平均一次粒子径は、以下に説明する理由により1〜100nmの範囲内にすることが望ましい。平均一次粒子径が100nmを超えると、活物質粒子の表面に均一に分散しなくなるため、活物質粒子の常温溶融塩への濡れ性が低下して高い大電流性能を得られない恐れがある。平均一次粒子径が小さくなるほど、活物質粒子表面に均一分散しやすくなるものの、平均一次粒子径を1nm未満にすると、金属酸化物粒子の常温溶融塩への親和性が低くなるため、活物質粒子の常温溶融塩への濡れ性が改善されない恐れがある。平均一次粒子径のより好ましい範囲は、1〜50nmで、さらに好ましい範囲は1〜20nmである。
【0015】
Al23含有粒子、ZrO2含有粒子及びSiO2含有粒子の表面に、ヘキサメチルジシラザンのような極性を有する官能基が結合されていると、電極の常温溶融塩に対する濡れ性がさらに高くなるため、好ましい。
【0016】
2)正極
正極活物質としては、例えば、種々の酸化物、硫化物、ポリアニリンやポリピロールなどの導電性ポリマー材料、ジスルフィド系ポリマー材料、イオウ(S)のような無機材料、フッ化カーボンのような有機材料などが挙げられる。正極活物質には、1種類の材料を単独で用いても、2種類以上の材料を混合して用いても良い。
【0017】
酸化物の具体例としては、二酸化マンガン(MnO)、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、リチウムマンガン複合酸化物(例えばLiMn、LiMnO)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLiNiO)、リチウムコバルト複合酸化物(例えばLiCoO)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLiNi1−yCo)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLiMnCo1−y)、スピネル型リチウムマンガンニッケル複合酸化物(例えばLiMn2−yNi)、オリビン構造を有するリチウムリン酸化物(例えばLiFePO、LiFe1−yMnPO、LiCoPOなど)、バナジウム酸化物(例えばV)などが挙げられる。一方、硫化物の具体例としては、硫酸鉄(例えばFe(SO)などが挙げられる。
【0018】
二次電池の正極活物質として好ましいのは、電池電圧が高いリチウムマンガン複合酸化物(例えばLiMn)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLiNiO)、リチウムコバルト複合酸化物(例えばLiCoO)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLiNi1−yCo)、スピネル型リチウムマンガンニッケル複合酸化物(例えばLiMn2−yNi)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLiMnCo1−y)、リチウムリン酸鉄(例えばLiFePO)などである。なお、x、yは1以下(0を含む)であることが好ましい。
【0019】
一方、一次電池の正極活物質として好ましいのは、二酸化マンガン、酸化鉄、酸化銅、硫化鉄、フッ化カーボンなどである。
【0020】
正極活物質粒子の平均粒径は、1〜100μmの範囲内にすることが好ましく、さらに好ましい範囲は、2〜30μmである。
【0021】
正極に前述した金属酸化物粒子を添加する場合、正極活物質粒子の平均粒径D1(nm)に対する金属酸化物粒子の平均一次粒子径d(nm)の粒径比(d/D1)は、1×10-5〜1×10-1の範囲内にすることが望ましい。これは以下に説明する理由によるものである。粒径比(d/D1)を1×10-5未満にすると、正極活物質粒子表面への金属酸化物粒子の分散性もしくは金属酸化物粒子の常温溶融塩に対する親和性が低下する恐れがある。一方、粒径比(d/D1)が1×10-1を超えると、正極活物質粒子よりもむしろ金属酸化物粒子表面が非水電解質で濡れて正極の活物質利用率が低下する恐れがある。粒径比(d/D1)のより好ましい範囲は、1×10-4〜1×10-2である。
【0022】
正極に前述した金属酸化物粒子を添加する場合、正極の金属酸化物粒子の含有量は、10重量%以下にすることが望ましく、さらに好ましい範囲は0.1〜5重量%である。これは、含有量が多いと電池容量が低下する恐れがあり、一方、含有量が少ないと大電流性能と低温放電性能が著しく低下する恐れがあるからである。
【0023】
正極は、例えば、正極活物質と導電剤と結着剤の他に、必要に応じて金属酸化物粒子とを適当な溶媒に懸濁させ、得られた懸濁物をアルミニウム箔などの集電体に塗布し、乾燥後、プレスすることにより作製される。
【0024】
前記導電剤としては、例えばアセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛等を挙げることができる。
【0025】
前記結着剤としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素系ゴムなどが挙げられる。
【0026】
正極活物質、金属酸化物粒子、導電剤及び結着剤の配合比は、正極活物質を80〜95重量%、金属酸化物粒子を10重量%以下(0重量%を含む)、導電剤を3〜20重量%、結着剤を2〜7重量%の範囲にすることが好ましい。
【0027】
3)負極
負極活物質には、リチウムを吸蔵放出する材料を用いるのが好ましく、例えば、リチウム金属、リチウム合金、炭素質物、金属化合物などを挙げることができる。負極には、1種類の負極活物質を用いても、2種類以上の負極活物質を混合して用いても良い。
【0028】
前記リチウム合金としてはリチウムアルミニウム合金、リチウム亜鉛合金、リチウムマグネシウム合金、リチウム珪素合金、リチウム鉛合金などが挙げられる。
【0029】
リチウムを吸蔵放出する炭素質物としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、コークス、気相成長炭素繊維、メソフェーズピッチ系炭素繊維、球状炭素、樹脂焼成炭素を挙げることができる。中でも、気相成長炭素繊維、メソフェーズピッチ系炭素繊維、球状炭素が好ましい。また、炭素質物は、X線回折による(002)面の面間隔d002が0.34nm以下であることが好ましい。
【0030】
前記金属化合物としては、金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物などが挙げられる。金属酸化物の具体例として、チタン酸リチウム(Li4+xTi12)、タングステン酸化物(WO)、アモルファススズ酸化物(例えばSnB0.40.63.1)、スズ珪素酸化物(SnSiO)、酸化珪素(SiO)などが挙げられる。金属硫化物の具体例として、硫化リチウム(TiS)、硫化モリブデン(MoS),硫化鉄(例えばFeS、FeS、LiFeS)などが挙げられる。金属窒化物の具体例として、リチウムコバルト窒化物(例えばLiCoN、0<x<4,0<y<0.5)などが挙げられる。
【0031】
負極活物質としてリチウムもしくはリチウム合金を用いる場合、リチウム箔やリチウム合金箔をそのまま電極として用いることができる。リチウム箔またはリチウム合金箔を負極として用いる場合、金属酸化物粒子は正極のみに含有される。
【0032】
また、負極活物質としてリチウム合金、炭素質物もしくは金属化合物を使用する場合、負極活物質として粒状形態のものを使用することができる。この場合、負極に金属酸化物粒子を添加することが望ましい。
【0033】
負極活物質粒子の平均粒径は、0.1〜100μmの範囲内にすることが好ましく、さらに好ましい範囲は、1〜50μmである。
【0034】
負極に前述した金属酸化物粒子を含有させる場合、負極活物質粒子の平均粒径D2(nm)に対する金属酸化物粒子の平均一次粒子径d(nm)の粒径比(d/D2)は、1×10-5〜1×10-1の範囲内にすることが望ましい。これは以下に説明する理由によるものである。粒径比(d/D2)を1×10-5未満にすると、負極活物質粒子表面への金属酸化物粒子の分散性もしくは金属酸化物粒子の常温溶融塩に対する親和性が低下する恐れがある。一方、粒径比(d/D2)が1×10-1を超えると、負極活物質粒子よりもむしろ金属酸化物粒子表面が非水電解質で濡れて負極の活物質利用率が低下する恐れがある。粒径比(d/D2)のより好ましい範囲は、1×10-4〜1×10-2である。
【0035】
負極に前述した金属酸化物粒子を含有させる場合、負極の金属酸化物粒子の含有量は、10重量%以下にすることが望ましく、さらに好ましい範囲は0.1〜5重量%である。これは、含有量が多いと電池容量が低下する恐れがあり、一方、含有量が少ないと大電流性能と低温放電性能が著しく低下する恐れがあるからである。
【0036】
粒状形態の負極活物質を用いる場合、負極は、例えば、負極活物質粒子と結着剤の他に、必要に応じて金属酸化物粒子とを適当な溶媒に懸濁させ、得られた懸濁物を銅箔などの金属集電体に塗布し、乾燥後、プレスすることにより作製される。前記結着剤としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素系ゴム、スチレンブタジェンゴムなどが挙げられる。また、この負極には、例えばアセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛、金属粉末などの導電剤をさらに含有させても良い。
【0037】
負極活物質、金属酸化物粒子、導電剤及び結着剤の配合比は、負極活物質を80〜98重量%、金属酸化物粒子を10重量%以下(0重量%を含む)、導電剤を20重量%以下(0重量%を含む)、結着剤を2〜7重量%の範囲にすることが好ましい。
【0038】
4)非水電解質
非水電解質は、リチウムイオンを含有した常温溶融塩から実質的に形成された液状非水電解質であることが望ましい。このような液状非水電解質を備えた非水電解質電池は、安全性を高くすることができる。
【0039】
ここでいう常温溶融塩とは、非水電解質電池の作動温度範囲内(−40℃〜100℃)において少なくとも一部が液状である塩を意味する。中でも、室温付近(好ましくは−20℃〜60℃)において少なくとも一部が液状である塩を用いるのが好ましい。
【0040】
常温溶融塩は、リチウムイオンと、有機物カチオンと、アニオンとから構成されるイオン性融体であることが望ましい。
【0041】
前記有機物カチオンは、以下の化2に示す骨格を有する有機物カチオンであることが望ましく、中でも、アルキルイミダゾリウムイオン、四級アンモニウムイオンが好ましい。
【化2】

【0042】
前記アルキルイミダソリウムイオンとしては、例えば、ジアルキルイミダゾリウムイオン、トリアルキルイミダゾリウムイオンなどを挙げることができる。ジアルキルイミダゾリウムイオンとしては、1−メチル−3−エチルイミダゾリウムイオン(MEI)が好ましい。一方、トリアルキルイミダゾリウムイオンとしては、1,2−ジエチル−3−プロピルイミダゾリウムイオン(DMPI)が好ましい。
【0043】
前記四級アンモニムイオンとしては、例えば、テトラアルキルアンモニウムイオン、環状アンモニウムイオンなどを挙げることができる。テトラアルキルアンモニウムイオンとしては、ジメチルエチルメトキシアンモニウムイオン、トリメチルプロピルアンモニウムイオンが好ましい。
【0044】
常温溶融塩の融点は100℃以下が好ましく、より好ましい融点は20℃以下で、さらに好ましい融点は0℃以下である。アルキルイミダゾリウムイオン及び四級アンモニウムイオンのうち少なくとも一方を有機物カチオンとして用いることにより、常温溶融塩の融点を100℃以下もしくは20℃以下にすることができると共に、非水電解質と負極との反応性を低くすることができる。
【0045】
常温溶融塩中のリチウムイオンの濃度は、20mol%以下であることが好ましい。前記範囲にすることにより、20℃以下の低温において常温溶融塩が液体の形態を安定に保つことができる。また、常温以下でも常温溶融塩が低粘度を維持することができるため、非水電解質のイオン伝導度を高くすることができる。より好ましい範囲は、1〜10mol%である。
【0046】
前記アニオンには、BF、PF、AsF、ClO、CFSO、CFCOO、CHCOO、CO2−、N(CFSO、N(CSO及び(CFSOよりなる群から選択される少なくとも1種類を使用することが好ましい。複数のアニオンを共存させることにより、融点が20℃以下もしくは0℃以下の常温溶融塩を容易に形成することができる。より好ましいアニオンとしては、BF、CFSO、CFCOO、CHCOO、CO2−、N(CFSO、N(CSO、(CFSOが挙げられる。
【0047】
5)セパレータ
セパレータとしては、例えば、合成樹脂製不織布、ポリエチレン多孔質フィルム、ポリプロピレン多孔質フィルムなどを用いることができる。
【0048】
6)容器
容器としては、金属製容器、ラミネートフィルム製容器を用いることができる。
【0049】
金属製容器としては、例えば、角形あるいは円筒形の金属缶を用いることができる。また、金属製容器の形成材料としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、ステンレスなどを挙げることができる。金属製容器の肉厚は、0.5mm以下にすることが好ましく、より好ましい範囲は0.2mm以下である。
【0050】
ラミネートフィルムとしては、例えば、金属箔と樹脂フィルムとを含む積層フィルムが挙げられる。樹脂フィルムは、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの高分子から形成することができる。ラミネートフィルムの厚さは、0.2mm以下にすることが望ましい。
【0051】
以上説明した本発明に係る非水電解質電池は、正極活物質を含む正極と、負極活物質を含む負極と、リチウムイオンを含有した常温溶融塩を含む非水電解質とを具備した非水電解質電池であって、
前記正極及び前記負極のうち少なくとも一方の電極は、Al23含有粒子、ZrO2含有粒子及びSiO2含有粒子よりなる群から選択される少なくとも1種類からなる平均一次粒子径が1〜100nmの範囲内である金属酸化物粒子を含むことを特徴とするものである。
【0052】
このような構成にすると、正極及び負極のうち少なくとも一方の電極において、常温溶融塩に対する親和性の高い金属酸化物粒子を活物質粒子表面に均一に分散させることができるため、非水電解質に対する濡れ性を向上することができる。その結果、正極及び負極のうち少なくとも一方の電極において、非水電解質の保持量を増加させることができ、活物質利用率を向上することができるため、非水電解質の大電流性能と低温性能を向上させることができる。その結果、常温溶融塩を含む非水電解質を備え、安全性が高く、かつ大電流性能と低温性能に優れる非水電解質電池を実現することができる。
【0053】
特に、正極及び負極双方に前述した金属酸化物粒子を含有させることによって、正極及び負極両方の活物質利用率を向上させることができるため、不均一反応が生じるのを抑えることができ、非水電解質電池の大電流性能と低温性能をさらに向上することができる。
【0054】
また、金属酸化物粒子が含有された電極において、活物質粒子の平均粒径D(nm)に対する平均一次粒子径d(nm)の粒径比(d/D)を1×10-5〜1×10-1の範囲内にすることによって、金属酸化物粒子の分散性と金属酸化物粒子の常温溶融塩に対する親和性をさらに向上することができるため、非水電解質電池の大電流性能と低温性能をより向上することができる。
【0055】
次いで、本発明に係る非水電解質電池の第2の実施形態について説明する。
【0056】
この第2実施形態の非水電解質電池は、容器と、前記容器内に収納される正極と、前記容器内に収納される負極と、前記容器内に収容され、リチウムイオンとB[(OCO)22-で表されるアニオンとを含有する常温溶融塩を含む非水電解質とを具備する。
【0057】
また、第2実施形態の非水電解質電池では、正極と負極の間にセパレータを介在させることができる。このセパレータとしては、前述した第1の実施形態で説明したのと同様なものを挙げることができる。
【0058】
以下、正極、負極及び非水電解質について説明する。なお、容器には、前述した第1の実施形態で説明したのと同様なものを使用することができる。
【0059】
A)正極
正極活物質としては、例えば、種々の酸化物、硫化物、ポリアニリンやポリピロールなどの導電性ポリマー材料、ジスルフィド系ポリマー材料、イオウ(S)のような無機材料、フッ化カーボンのような有機材料などが挙げられる。正極活物質には、1種類の材料を単独で用いても、2種類以上の材料を混合して用いても良い。
【0060】
酸化物及び硫化物の具体例としては、前述した第1の実施形態で説明したのと同様なものを挙げることができる。
【0061】
好ましい二次電池用正極活物質及び好ましい一次電池用正極活物質には、前述した第1の実施形態で説明したのと同様なものを挙げることができる。
【0062】
正極は、例えば、正極活物質と導電剤と結着剤とを適当な溶媒に懸濁させ、得られた懸濁物をアルミニウム箔などの集電体に塗布し、乾燥後、プレスすることにより作製される。
【0063】
前記導電剤及び前記結着剤としては、前述した第1の実施形態で説明したのと同様なものを挙げることができる。
【0064】
正極活物質、導電剤及び結着剤の配合比は、正極活物質を80〜95重量%、導電剤を3〜20重量%、結着剤を2〜7重量%の範囲にすることが好ましい。
【0065】
この正極に、Al23含有粒子、ZrO2含有粒子及びSiO2含有粒子よりなる群から選択される少なくとも1種類からなる平均一次粒子径が1〜100nmの範囲内の金属酸化物粒子を含有させても良い。これにより、高温貯蔵特性、大電流特性および低温特性に優れる非水電解質電池を実現することができる。
【0066】
B)負極
負極活物質には、リチウムを吸蔵放出する材料を用いるのが好ましく、例えば、リチウム金属、リチウム合金、炭素質物、金属化合物などを挙げることができる。負極には、1種類の負極活物質を用いても、2種類以上の負極活物質を混合して用いても良い。
【0067】
リチウム合金、リチウムを吸蔵放出する炭素質物および金属化合物としては、前述した第1の実施形態で説明したのと同様なものを挙げることができる。
【0068】
負極活物質としてリチウムもしくはリチウム合金を用いる場合、リチウム箔やリチウム合金箔をそのまま電極として用いることができる。また、負極活物質としてリチウム合金、炭素質物もしくは金属化合物を用いる場合、粉末状の活物質を用いることができる。
【0069】
粉末状の活物質を含む負極は、例えば、負極活物質粉末と結着剤とを適当な溶媒に懸濁させ、得られた懸濁物を銅箔などの金属集電体に塗布し、乾燥後、プレスすることにより作製される。前記結着剤としては、前述した第1の実施形態で説明したのと同様なものを挙げることができる。また、この負極には、例えばアセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛、金属粉末などの導電剤をさらに含有させても良い。
【0070】
負極活物質、導電剤及び結着剤の配合比は、負極活物質を80〜98重量%、導電剤を20重量%以下(0重量%を含む)、結着剤を2〜7重量%の範囲にすることが好ましい。
【0071】
この負極に、Al23含有粒子、ZrO2含有粒子及びSiO2含有粒子よりなる群から選択される少なくとも1種類からなる平均一次粒子径が1〜100nmの範囲内の金属酸化物粒子を含有させても良い。これにより、高温貯蔵特性、大電流特性および低温特性に優れる非水電解質電池を実現することができる。
【0072】
C)非水電解質
非水電解質は、リチウムイオンとB[(OCO)で表されるアニオンとを含有した常温溶融塩から実質的に形成される液状非水電解質であることが望ましい。B[(OCO)で表されるアニオンの構造式を下記化3に示す。
【化3】

【0073】
ここでいう常温溶融塩とは、非水電解質電池の作動温度範囲内(−40℃〜100℃)において少なくとも一部が液状である塩を意味する。中でも、室温付近(好ましくは−20℃〜60℃)において少なくとも一部が液状である塩を用いるのが好ましい。
【0074】
常温溶融塩の融点は100℃以下が好ましく、より好ましい融点は20℃以下で、さらに好ましい融点は0℃以下である。
【0075】
常温溶融塩は、さらに有機物カチオンを含有することが好ましい。この有機物カチオンとしては、前述した第1の実施形態で説明したのと同様なものを挙げることができる。
【0076】
常温溶融塩のB[(OCO)の濃度は、50mol%以下であることが好ましい。これは、B[(OCO)の濃度が50mol%を超えると、常温溶融塩の融点上昇あるいは非水電解質のイオン伝導度低下を招く恐れがあるからである。より好ましい濃度範囲は、5〜25mol%である。この範囲内にすることにより、20℃以下の低温において常温溶融塩が液体の状態を安定に保つことができる。また、常温以下の雰囲気において常温溶融塩が低粘度を維持することができるため、非水電解質のイオン伝導度を高くすることができる。
【0077】
常温溶融塩には、B[(OCO)で表されるアニオン以外のアニオン(以下、第2のアニオンと称す)を含有させることができる。第2のアニオンとしては、例えば、BF、PF、AsF、ClO、CFSO、CFCOO、CHCOO、CO2−、N(CFSO、N(CSO及び(CFSOよりなる群から選択される少なくとも一種類のアニオンが好ましい。この第2のアニオンを常温溶融塩に含有させることによって、常温溶融塩の融点を低くすることができるため、融点が20℃以下もしくは0℃以下の常温溶融塩を容易に得ることができる。また、第2のアニオンは、B[(OCO)で表されるアニオンに比較してイオン半径が小さいため、非水電解質のイオン伝導度を高くすることができる。第2のアニオンのうちより好ましいアニオンとしては、BF、CFSO、CFCOO、CHCOO、CO2−、N(CFSO、N(CSO、(CFSOが挙げられる。
【0078】
常温溶融塩のアニオン成分としてB[(OCO)で表されるアニオンのみを使用しても良いが、第2のアニオンを併用する場合には、アニオン成分中の第2のアニオンの割合を80mol%以下にすることが望ましい。
【0079】
以上の第2の実施形態に説明したように、本発明に係る別の非水電解質電池は、正極と、負極と、リチウムイオンとB[(OCO)22-で表されるアニオンとを含有する常温溶融塩を含む非水電解質とを具備するものである。本発明によれば、高温貯蔵時の放電容量の低下を抑えることができる。
【0080】
すなわち、リチウム金属、リチウム合金、炭素材料、金属化合物などの各種負極材料は、非水電解質の常温溶融塩に含まれる有機カチオンを電気化学的に還元分解しやすく、このことが常温溶融塩を備えた非水電解質電池の実用化の妨げの一因になっている。
【0081】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、リチウムイオンと、B[(OCO)22-で表されるアニオンと、有機物カチオンとを含有する常温溶融塩が電池作動温度範囲内で液状を保つことができ、この常温溶融塩を含む非水電解質を一次電池あるいは二次電池に用いると、負極による非水電解質の還元分解を抑制することができ、高温貯蔵時の容量低下を抑制できることを見出した。さらに、二次電池の場合には、充放電サイクル寿命を向上できることもわかった。これらは、B[(OCO)で表されるアニオンが負極上で一部還元分解され、負極表面に、非水電解質の還元分解を抑制するリチウム透過性の良質な皮膜が形成されるためであると考えられる。
【0082】
また、B[(OCO)で表されるアニオンには、フッ素原子が含まれていないため、非水電解質の熱安定性を高くして非水電解質電池の安全性を向上することができるばかりか、環境負荷の少ないリチウム乾電池の実現が可能になる。
【0083】
正極及び負極のうち少なくとも一方の電極に、Al23含有粒子、ZrO2含有粒子及びSiO2含有粒子よりなる群から選択される少なくとも1種類からなる平均一次粒子径が1〜100nmの範囲内である金属酸化物粒子を含有させることによって、電極の活物質利用率を向上することができるため、高温貯蔵特性、大電流特性及び低温放電特性に優れる非水電解質電池を実現することができる。
【0084】
[実施例]
以下、本発明の実施例を図面を参照して詳細に説明する。
【0085】
(実施例1)
<正極の作製>
正極活物質に平均粒径D1が3μm(3000nm)のリチウムコバルト酸化物(LiCoO)粒子を用い、これに平均一次粒子径dが20nmのAl粒子を正極全体に対して1重量%と、導電材として正極全体に対して8重量%の黒鉛粉末と、結着剤として正極全体に対して5重量%のPVdFとをそれぞれ配合してn−メチルピロリドン(NMP)溶媒に分散してスラリーを調製した。得られたスラリーを厚さ15μmのアルミニウム箔に塗布し、乾燥し、プレス工程を経て電極密度3.3g/cmの正極を得た。
【0086】
<負極の作製>
平均粒径D2が1μm(1000nm)のチタン酸リチウム(LiTi12)粒子と、平均一次粒子径dが20nmのAl粒子と、導電材としてアセチレンブラックと、結着剤としてPVdFとを重量比(LiTi12:Al粒子:導電材:結着剤)で88:1:5:6となるように配合してn−メチルピロリドン(NMP)溶媒に分散してスラリーを調製した。得られたスラリーを厚さ15μmのアルミニウム箔に塗布し、乾燥し、プレス工程を経て電極密度2g/cmの負極を得た。
【0087】
なお、正極活物質粒子、負極活物質粒子および金属酸化物粒子の測定は、下記に説明する方法で行った。
【0088】
レーザー回折式粒度分布測定装置(島津SALD-300)を用い、まず、ビーカーに試料を約0.1gと界面活性剤と1〜2mLの蒸留水を添加して十分に攪拌した後、攪拌水槽に注入し、2秒間隔で64回光強度分布を測定し、粒度分布データを解析するという方法にて測定した。
【0089】
また、正極活物質粒子の平均粒径D1(nm)に対する平均一次粒子径d(nm)の粒径比(d/D1)と、負極活物質粒子の平均粒径D2(nm)に対する平均一次粒子径d(nm)の粒径比(d/D2)を下記表1に示す。
【0090】
<非水電解質の調製>
1−メチル−3−エチルイミダゾリウムイオン(MEI)と、Liと、CFSOと、BFとをモル比がMEI:Li:CFSO:BF=45:5:20:30となるように混合し、20℃において液状の常温溶融塩を得た。
【0091】
この常温溶融塩をセパレータのポリエチレン製の多孔質フィルムに含浸させた後、このセパレータで正極表面を被覆した。負極をセパレータを介して正極と対向するように重ね、これらを渦巻状に捲回した後、扁平状にプレス成形することにより扁平型の電極群を得た。肉厚0.1mmのアルミニウム層含有ラミネートフィルムからなる容器内に電極群を収納し、図1示す構造を有し、厚さが3mmで、幅が35mmで、高さが62mmの薄型の非水電解質二次電池を作製した。
【0092】
図1に示すように、扁平型の電極群1は、正極2と負極3をその間にセパレータ4を介在させて扁平形状にした構造を有する。帯状の正極端子5は、正極2に電気的に接続されている。一方、帯状の負極端子6は、負極3に電気的に接続されている。この電極群1は、ラミネートフィルム製容器7内に正極端子5と負極端子6の端部を容器7から延出させた状態で収納されている。なお、ラミネートフィルム製容器7は、ヒートシールにより封止がなされている。
【0093】
(実施例2〜9)
正極及び負極双方の電極に添加する金属酸化物粒子の種類、平均一次粒子径、配合量、粒径比(d/D1)及び粒径比(d/D2)を下記表1に示すように設定すること以外は、前述した実施例1で説明したのと同様な構成の薄型非水電解質二次電池を組み立てた。
【0094】
(比較例1)
正極および負極の双方の電極に金属酸化物粒子を添加しないこと以外は、前述した実施例1で説明したのと同様な構成の薄型非水電解質二次電池を組み立てた。
【0095】
(比較例2)
正極及び負極双方の電極に添加する金属酸化物粒子の種類、平均一次粒子径、配合量、粒径比(d/D1)及び粒径比(d/D2)を下記表1に示すように設定すること以外は、前述した実施例1で説明したのと同様な構成の薄型非水電解質二次電池を組み立てた。
【0096】
得られた実施例1〜9及び比較例1〜2の非水電解質二次電池について、100mAの定電流で3Vまで充電した後、1.5Vまで100mAの定電流放電を行う充放電サイクルを20℃で繰り返した。その際の放電初期容量と、1A放電時の容量維持率(100mA放電時を100としたの容量維持率)を下記表1に示す。
【表1】

【0097】
表1から明らかなように、Al23含有粒子、ZrO2含有粒子及びSiO2含有粒子よりなる群から選択される少なくとも1種類からなる平均一次粒子径が1〜100nmの金属酸化物粒子を含む正極及び負極を備えた実施例1〜9の二次電池は、金属酸化物無添加の比較例1の二次電池と平均一次粒子径が100nmを超える比較例2の二次電池に比較して、放電容量が高く、かつ大電流放電特性に優れていることが理解できる。
【0098】
(実施例10)
正極活物質粒子として平均粒径D1が5μm(5000nm)の二酸化マンガン粒子を使用すること以外は、実施例1で説明したのと同様にして薄型の非水電解質一次電池を作製した。
【0099】
(比較例3)
正極活物質粒子として平均粒径D1が5μm(5000nm)の二酸化マンガン粒子を使用すること以外は、比較例1で説明したのと同様にして薄型の非水電解質一次電池を作製した。
【0100】
実施例10および比較例3の非水電解質一次電池それぞれについて、二つに分け、一方について500mAで放電試験を行い、得られた放電容量を下記表2に示す。また、他方について1000mAで放電試験を行い、得られた放電容量を500mAでの放電容量を100%として下記表2に示す。
【表2】

【0101】
表2から明らかなように、実施例10の一次電池は、大電流放電時に比較例3よりも高容量を得られることがわかる。
【0102】
(実施例11)
<正極の作製>
正極活物質にLiFePO粒子を用い、これに導電材として正極全体に対して8重量%の割合になるように黒鉛粉末と、結着剤として正極全体に対して5重量%となるようにPVdFとをそれぞれ配合し、これらをn−メチルピロリドン(NMP)溶媒に分散してスラリーを調製した。得られたスラリーを厚さが15μmのアルミニウム箔に塗布し、乾燥し、プレス工程を経て電極密度3.3g/cmの正極を得た。
【0103】
<負極の作製>
リチウムアルミニウム合金(合金中のアルミニウム含有量は3原子%)箔を負極として用意した。
【0104】
<非水電解質の調製>
1−メチル−3−エチルイミダゾリウムイオン(以下、MEIと称す)と、Liと、B[(OCO)と、第2のアニオンとしてBFとをモル比(MEI:Li:B[(OCO):BF)が42:8:8:42となるように混合し、20℃において液状である常温溶融塩を得た。
【0105】
この常温溶融塩をセパレータのポリエチレン製の多孔質フィルムに含浸させた後、このセパレータで正極表面を被覆した。負極をセパレータを介して正極と対向するように重ね、これらを渦巻状に捲回した後、扁平状にプレス成形することにより扁平型の電極群を得た。肉厚0.1mmのアルミニウム層含有ラミネートフィルムからなる容器内に電極群を収納し、前述した図1示す構造を有し、厚さが3mmで、幅が35mmで、高さが62mmの薄型の非水電解質二次電池を作製した。
【0106】
(実施例12〜13)
第2のアニオンの種類を下記表3に示すように変更すること以外は、前述した実施例11で説明したのと同様な構成の薄型非水電解質二次電池を組み立てた。
【0107】
(実施例14)
MEIと、Liと、B[(OCO)と、第2のアニオンとしてBFとをモル比(MEI:Li:B[(OCO):BF)が42:8:20:30となるように混合し、20℃において液状である常温溶融塩を得た。
【0108】
この常温溶融塩を用いること以外は、前述した実施例11で説明したのと同様な構成の薄型非水電解質二次電池を組み立てた。
【0109】
(実施例15)
MEIと、Liと、B[(OCO)と、第2のアニオンとしてBFとをモル比(MEI:Li:B[(OCO):BF)が46:4:4:46となるように混合し、20℃において液状である常温溶融塩を得た。
【0110】
この常温溶融塩を用いること以外は、前述した実施例11で説明したのと同様な構成の薄型非水電解質二次電池を組み立てた。
【0111】
(実施例16)
負極として厚さ100μmのアルミニウム金属箔(純度99.99%)を用いること以外は、前述した実施例11で説明したのと同様な構成の薄型非水電解質二次電池を組み立てた。
【0112】
(実施例17)
チタン酸リチウム(LiTi12)粒子と、導電材としてアセチレンブラックと、結着剤としてPVdFとを重量比(LiTi12:導電材:結着剤)で85:10:5となるように配合し、これらをn−メチルピロリドン(NMP)溶媒に分散させてスラリーを調製した。得られたスラリーを厚さ15μmのアルミニウム箔に塗布し、乾燥し、プレス工程を経て電極密度2g/cmの負極を得た。
【0113】
この負極を用いること以外は、前述した実施例11で説明したのと同様な構成の薄型非水電解質二次電池を組み立てた。
【0114】
(実施例18〜20)
カチオンの種類を下記表3に示すように変更し、かつカチオンとLiとB[(OCO)とBFとをモル比(カチオン:Li:B[(OCO):BF)が42:8:20:30となるように混合すること以外は、前述した実施例11で説明したのと同様な構成の薄型非水電解質二次電池を組み立てた。なお、表3において、DMPI+は、1,2−ジエチル−3−プロピルイミダゾリウムイオンを示す。
【0115】
(実施例21)
正極活物質にLiFePO粒子を用い、これに平均一次粒子径が20nmのSiO粒子を正極全体に対して1重量%と、これに導電材として正極全体に対して8重量%の割合になるように黒鉛粉末と、結着剤として正極全体に対して5重量%となるようにPVdFとをそれぞれ配合し、これらをn−メチルピロリドン(NMP)溶媒に分散してスラリーを調製した。得られたスラリーを厚さが15μmのアルミニウム箔に塗布し、乾燥し、プレス工程を経て電極密度3.3g/cmの正極を得た。
【0116】
この正極を用いること以外は、前述した実施例11で説明したのと同様な構成の薄型非水電解質二次電池を組み立てた。
【0117】
(比較例4)
MEIと、Liと、BFとをモル比(MEI:Li:BF)が42:8:50となるように混合し、20℃において液状である常温溶融塩を得た。
【0118】
この常温溶融塩を非水電解質として用いること以外は、前述した実施例11で説明したのと同様な構成の薄型非水電解質二次電池を組み立てた。
【0119】
(比較例5)
MEIと、Liと、N(CFSOとをモル比(MEI:Li:N(CFSO)が42:8:50となるように混合し、20℃において液状である常温溶融塩を得た。
【0120】
この常温溶融塩を非水電解質として用いること以外は、前述した実施例11で説明したのと同様な構成の薄型非水電解質二次電池を組み立てた。
【0121】
(比較例6)
比較例4で用いたのと同種類の非水電解質と、実施例17で用いたのと同種類の負極を用いること以外は、前述した実施例11で説明したのと同様な構成の薄型非水電解質二次電池を組み立てた。
【0122】
得られた実施例11〜21及び比較例4〜6の非水電解質二次電池について、以下に説明する充放電条件での充放電サイクルを20℃で行い、放電初期容量と、サイクル寿命(放電容量が初期容量の80%となったサイクル数)とを測定し、その結果を下記表3に示す。
【0123】
<充放電条件>
負極としてリチウムアルミニウム合金箔を用いる実施例11〜15,18〜20および比較例4,5については、100mAの定電流で4Vまで充電した後、3Vまで100mAの定電流放電を行う充放電サイクルを施した。
【0124】
負極としてアルミニウム金属箔を用いる実施例16については、100mAの定電流で3.8Vまで充電した後、1.5Vまで100mAの定電流放電を行う充放電サイクルを施した。
【0125】
負極活物質としてチタン酸リチウムを用いる実施例17及び比較例6については、100mAの定電流で2.5Vまで充電した後、1.5Vまで100mAの定電流放電を行う充放電サイクルを施した。
【0126】
また、実施例11〜21及び比較例4〜6の非水電解質二次電池について、充電後、85℃で20日間貯蔵し、残存容量を測定し(貯蔵前の放電容量を100%とする)、その結果を下記表3に示す。
【表3】

【0127】
表3から明らかなように、リチウムイオンとB[(OCO)22-で表されるアニオンとを含有する常温溶融塩を備えた実施例11〜21の二次電池は、B[(OCO)22-無添加の比較例4〜6に比較して、サイクル寿命が長く、かつ高温貯蔵時の容量残存率が高いことが理解できる。
【0128】
(実施例22)
正極活物質粒子として二酸化マンガン粒子を使用すること以外は、実施例11で説明したのと同様にして薄型の非水電解質一次電池を作製した。
【0129】
(比較例7)
正極活物質粒子として二酸化マンガン粒子を使用すること以外は、比較例4で説明したのと同様にして薄型の非水電解質一次電池を作製した。
【0130】
実施例22および比較例7の非水電解質一次電池それぞれについて、二つに分け、一方については85℃の高温で1000時間貯蔵した後、500mAで放電試験を行った。他方については、高温貯蔵を行うことなく、500mAで放電試験を行い、得られた電池容量を下記表4に示す。この電池容量を100%として高温貯蔵後の放電容量を表したものを高温貯蔵時の残存率として下記表4に示す。
【表4】

【0131】
表4から明らかなように、実施例22の非水電解質一次電池は、比較例7に比べて容量特性と長期間の高温貯蔵特性に優れていることが理解できる。
【0132】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】実施例1の薄型非水電解質二次電池を示す部分切欠斜視図。
【符号の説明】
【0134】
1…電極群、2…正極、3…負極、4…セパレータ、5…正極端子、6…負極端子、7…容器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、
負極と、
リチウムイオンとB[(OCO)22-で表されるアニオンとを含有する常温溶融塩を含む非水電解質と
を具備することを特徴とする非水電解質電池。
【請求項2】
前記常温溶融塩は、下記化1に示す骨格を有する有機物カチオンをさらに含有する請求項1記載の非水電解質電池。
【化1】

【請求項3】
前記負極の活物質は、リチウム金属、リチウム合金、炭素質物及び金属化合物から選択される少なくとも1種類からなることを特徴とする請求項1または2記載の非水電解質電池。
【請求項4】
前記負極の活物質は、チタン酸リチウムであることを特徴とする請求項1または2記載の非水電解質電池。

【図1】
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【公開番号】特開2007−141860(P2007−141860A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−11823(P2007−11823)
【出願日】平成19年1月22日(2007.1.22)
【分割の表示】特願2003−83133(P2003−83133)の分割
【原出願日】平成15年3月25日(2003.3.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】