説明

非水電解質電池

【課題】高温保存時におけるガス発生を抑制できる非水電解質電池を提供する
【解決手段】正極活物質層21Bは、正極活物質として、ニッケル含有量が高いリチウムニッケル複合酸化物を含む。セパレータ23には、電解液が含浸されている。電解液は、FECなどのハロゲン化炭酸エステルおよびtert−ブチルベンゼンなどのアルキルベンゼンを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、非水電解質電池に関する。さらに詳しくは、有機溶媒と電解質塩とを含む非水電解質を用いた非水電解質電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カメラ一体型VTR(Video Tape Recorder)、携帯電話またはノート型PC(Personal Computer)などのポータブル電子機器が広く普及しており、その小型化、軽量化および長寿命化が強く求められている。これに伴い、ポータブル電子機器の電源として、電池、特に軽量で高エネルギー密度を得ることが可能なリチウムイオン二次電池などの二次電池の開発が進められている。
【0003】
このリチウムイオン二次電池の分野では、サイクル特性などの電池特性や電池容量を向上させる研究が盛んに行われており、電池特性や電池容量を向上させるための様々な技術が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、電解液にアルキル基を有する非イオン性芳香族炭化水素化合物を含有させることによって、安全性を向上させる技術が記載されている。
【0005】
特許文献2〜3には、電解液にtert−ブチルベンゼン誘導体を含有させることによって、電池特性を向上させる技術が記載されている。
【0006】
特許文献4には、電解液に、tert−ペンチルベンゼンおよび4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを含有させることによって、電池特性を向上させる技術が記載されている。
【0007】
特許文献5には、正極に含まれる炭酸リチウムが、過充電の初期に分解してガスを発生させ、感圧式安全機構を早期に作動させ、安全性を向上させることが記載されている。また、シクロアルキルベンゼン化合物および/またはベンゼン環に隣接する第4級炭素を有する化合物が、炭酸リチウム添加による高温サイクル特性の低下を抑制するように作用し、高温サイクル特性が飛躍的に向上することが記載されている。
【0008】
また、リチウムイオン二次電池のさらなる高容量化を図るために、正極活物質として、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)やニッケル酸リチウムのニッケルの一部を他の金属に置換したニッケル系リチウム複合酸化物を用いることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−275632号公報
【特許文献2】特開2001−167791号公報
【特許文献3】特開2002−298909号公報
【特許文献4】特開2006−309965号公報
【特許文献5】特開2008−186792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、正極活物質にニッケル酸リチウムやニッケル系リチウム複合酸化物を用いると、高温保存時において、電池内部でガス発生が促進されてしまう。これにより、例えば、圧力作動型安全弁を備えた円筒型のリチウムイオン二次電池では、ガス発生による電池の内圧上昇によって、圧力作動型安全弁が作動し、電池を使用することができなくなってしまう。また、ラミネートフィルム型のリチウムイオン二次電池や角形のリチウムイオン二次電池では、ガス発生が促進されることにより電池が膨張してしまう。
【0011】
したがって、この発明の目的は、高温保存時におけるガス発生を抑制できる非水電解質電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するために、この発明は、正極と、負極と、非水電解質とを備え、正極は、粒子状であり、表面の組成が式(I)で表される正極材料を含み、非水電解質は、式(1)〜式(2)で表されるハロゲン化炭酸エステルと、式(3)で表されるアルキルベンゼンとを含み、ハロゲン化炭酸エステルの含有量は、非水電解質に対して、0.1質量%以上50質量%以下であり、アルキルベンゼンの含有量は、非水電解質に対して、0.1質量%以上5質量%以下である非水電解質電池である。
式(I)
LipNi(1-q-r)M1qM2r(2-y)z
(M1、M2は、ニッケル(Ni)を除く2族〜15族から選ばれる元素のうち少なくとも一種を示す。Xは、酸素(O)以外の16族元素および17族元素のうち少なくとも1種を示す。p、q、r、y、zは、0≦p≦1.5、0≦q≦1.0、0≦r≦1.0、−0.10≦y≦0.20、0≦z≦0.2の範囲内の値である。q+rは、q+r<1である。)
【化1】

(R21〜R26はそれぞれ独立して、水素基、ハロゲン基、アルキル基またはハロゲン化アルキル基である。R21〜R26の少なくとも1つはハロゲン基またはハロゲン化アルキル基である。)
【化2】

(R27〜R30はそれぞれ独立して、水素基、ハロゲン基、アルキル基またはハロゲン化アルキル基である。R27〜R30の少なくとも1つはハロゲン基またはハロゲン化アルキル基である。)
【化3】

(R1〜R3はそれぞれ独立して、アルキル基またはアリール基である。R1〜R3は互いに結合して環を形成していてもよい。R1〜R3は水素の一部がハロゲンに置換されていてもよい。)
【0013】
この発明では、非水電解質中に、式(1)〜式(2)で表されるハロゲン化炭酸エステルを0.1質量%以上50質量%以下含有し、式(3)で表されるアルキルベンゼンを0.1質量%以上5質量%以下含有する。これにより、高温保存時のガス発生を抑制できる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、高温保存時のガス発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の実施の形態による非水電解質電池の構成例を示す断面図である。
【図2】図1における巻回電極体の一部を拡大した断面図である。
【図3】この発明の実施の形態による非水電解質電池の構成例を示す断面図である。
【図4】図3における巻回電極体のI−I線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、説明は、以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(非水電解質電池の第1の例)
2.第2の実施の形態(非水電解質電池の第2の例)
3.第3の実施の形態(非水電解質電池の第3の例)
4.他の実施の形態(変形例)
【0017】
1.第1の実施の形態
(電池の構成)
この発明の第1の実施の形態による非水電解質電池について図1および図2を参照しながら説明する。図1は、この発明の第1の実施の形態による非水電解質電池の断面構成を示す。図2は、図1に示す巻回電極体20の一部を拡大して示す。この非水電解質電池は、例えば、充電および放電が可能な非水電解質二次電池であり、負極22の容量が電極反応物質であるリチウムの吸蔵および放出に基づいて表されるリチウムイオン二次電池である。
【0018】
この非水電解質電池は、主に、ほぼ中空円柱状の電池缶11の内部に、セパレータ23を介して正極21と負極22とが積層および巻回された巻回電極体20と、一対の絶縁板12,13とが収納されたものである。この円柱状の電池缶11を用いた電池構造は、円筒型と呼ばれている。
【0019】
電池缶11は、例えばニッケル(Ni)のめっきがされた鉄(Fe)により構成されており、一端部が閉鎖され他端部が開放されている。電池缶11の内部には、巻回電極体20を挟むように巻回周面に対して垂直に一対の絶縁板12、13がそれぞれ配置されている。
【0020】
電池缶11の開放端部には、電池蓋14と、この電池蓋14の内側に設けられた安全弁機構15および熱感抵抗素子(Positive Temperature Coefficient;PTC素子)16とが、ガスケット17を介してかしめられることにより取り付けられており、電池缶11の内部は密閉されている。
【0021】
電池蓋14は、例えば、電池缶11と同様の材料により構成されている。安全弁機構15は、熱感抵抗素子16を介して電池蓋14と電気的に接続されており、内部短絡あるいは外部からの加熱などにより電池の内圧が一定以上となった場合にディスク板15Aが反転して電池蓋14と巻回電極体20との電気的接続を切断するようになっている。
【0022】
熱感抵抗素子16は、温度が上昇すると抵抗値の増大により電流を制限し、大電流による異常な発熱を防止するものである。ガスケット17は、例えば絶縁材料により構成されており、表面にはアスファルトが塗布されている。
【0023】
巻回電極体20の中心には、例えば、センターピン24が挿入されている。巻回電極体20の正極21にはアルミニウム(Al)などよりなる正極リード25が接続されており、負極22にはニッケル(Ni)などよりなる負極リード26が接続されている。正極リード25は安全弁機構15に溶接されることにより電池蓋14と電気的に接続されており、負極リード26は電池缶11に溶接され電気的に接続されている
【0024】
(正極)
正極21は、例えば、一対の面を有する正極集電体21Aの両面に正極活物質層21Bが設けられたものである。ただし、正極活物質層21Bは、正極集電体21Aの片面だけに設けられていてもよい。
【0025】
正極集電体21Aは、例えば、アルミニウム、ニッケルまたはステンレスなどの金属材料によって構成されている。
【0026】
正極活物質層21Bは、正極活物質として、リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料を1種または2種以上含んでおり、必要に応じて、結着剤や導電剤などの他の材料を含んでいてもよい。
【0027】
(正極材料)
(リチウムニッケル複合酸化物)
正極材料としては、例えば、粒子状であり、リチウムとニッケルとを含むリチウムニッケル複合酸化物が挙げられる。このリチウムニッケル複合酸化物は、例えば層状構造を有する。このリチウムニッケル複合酸化物としては、例えば、式(I)で表されるリチウムニッケル複合酸化物が挙げられる。
【0028】
式(I)
LipNi(1-q-r)M1qM2r(2-y)z
(M1、M2は、ニッケル(Ni)を除く2族〜15族から選ばれる元素のうち少なくとも一種を示す。Xは、酸素(O)以外の16族元素および17族元素のうち少なくとも1種を示す。p、q、r、y、zは、0≦p≦1.5、0≦q≦1.0、0≦r≦1.0、−0.10≦y≦0.20、0≦z≦0.2の範囲内の値である。q+rは、q+r<1である。)
【0029】
式(I)で表されるリチウムニッケル複合酸化物としては、具体的には、例えば、LipNiO2、LipNi1-q-rCoqMnr2、LipNi1-q-rCoqAlr2などが挙げられる。
【0030】
リチウムニッケル複合酸化物の中でも、ニッケル含有量が高いリチウムニッケル複合酸化物が、高容量化の点から好ましい。ここで、ニッケル含有量が高いリチウムニッケル複合酸化物とは、例えば、リチウムニッケル複合酸化物を構成する金属元素(リチウムを除く)のうちニッケル成分をモル分率で50%以上含むリチウムニッケル複合酸化物のことをいう。
【0031】
ニッケル含有量が高いリチウムニッケル複合酸化物としては、例えば、式(II)で表されるリチウムニッケル複合酸化物が挙げられる。
【0032】
式(II)
LipNi(1-q-r)M1qM2r(2-y)z
(M1、M2は、ニッケル(Ni)を除く2族〜15族から選ばれる元素のうち少なくとも一種を示す。Xは、酸素(O)以外の16族元素および17族元素のうち少なくとも1種を示す。p、q、r、y、zは、0≦p≦1.5、0≦q≦1.0、0≦r≦1.0、−0.10≦y≦0.20、0≦z≦0.2の範囲内の値である。q+rは、q+r≦0.5である。)
【0033】
正極材料としては、上述のリチウムニッケル複合酸化物の他に、リチウムを吸蔵および放出可能であり、粒子状である他のリチウム複合酸化物が挙げられ、これを正極活物質として上述のリチウムニッケル複合酸化物と共に用いてもよい。
【0034】
(他のリチウム複合酸化物)
他のリチウム複合酸化物としては、例えば、層状構造を有するコバルト酸リチウム(LiCoO2)、コバルト酸リチウムのコバルトの一部を他の金属元素に置換したコバルト系リチウム複合酸化物、スピネル型構造を有するリチウムマンガン複合酸化物(LiMn24等)などが挙げられる。
【0035】
(混合比)
上述のリチウムニッケル複合酸化物とともに、他のリチウム複合酸化物を用いる場合には、高容量化の点から、リチウムニッケル複合酸化物の含有量は、正極活物質の合計質量に対して、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましい。
【0036】
(被覆正極材)
正極材料としては、母材粒子となるリチウム複合酸化物粒子の表面の少なくとも一部にリチウム(Li)と、ニッケル(Ni)と、マンガン(Mn)とを有する酸化物を含む被覆層が設けられたもの(以下被覆正極材と適宜称する)が挙げられる。
【0037】
(母材粒子)
母材粒子となるリチウム複合酸化物粒子としては、リチウムと1種以上の遷移金属とを含むリチウム複合酸化物粒子であり、リチウムを吸蔵および放出できるものであれば特に限定されない。具体的には、例えばコバルト酸リチウム(LiCoO2)、コバルト酸リチウムのコバルトの一部を他の遷移金属元素に置換したコバルト系リチウム複合酸化物、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、ニッケル酸リチウムのニッケルの一部を他の遷移金属元素に置換したニッケル系リチウム複合酸化物などの層状構造を有するリチウム複合酸化物の粒子が挙げられる。
【0038】
(被覆層)
被覆層は、母材粒子と異なる組成元素または組成比を有し、母材粒子の表面の少なくとも一部を被覆する層である。この被覆層は、上述のようにリチウム(Li)と、ニッケル(Ni)と、マンガン(Mn)とを有する酸化物を含む。この被覆層をもうけることにより化学安定性を向上させることができる。
【0039】
なお、被覆層とは、被覆層が設けられたリチウム複合酸化物粒子の表面から内部に向かって構成元素の濃度変化を調べた場合に、その濃度変化が実質的に見られなくなるまでの領域をいう。被覆層が設けられたリチウム複合酸化物粒子におけるニッケルおよびマンガンの表面から内部に向かう濃度変化は、例えば、被覆層が設けられたリチウム複合酸化物粒子をスパッタリングなどにより削りながらその組成をオージェ電子分光分析(Auger Electron Spectroscopy ;AES)あるいはSIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry ;二次イオン質量分析)により測定することが可能である。また、被覆層が設けられたリチウム複合酸化物粒子を酸性溶液中などでゆっくり溶解させ、その溶出分の時間変化を誘導結合高周波プラズマ(Inductively Coupled Plasma;ICP)分光分析などにより測定することも可能である。
【0040】
被覆層におけるニッケル(Ni)とマンガン(Mn)との組成比は、ニッケル(Ni):マンガン(Mn)のモル比で、95:5から20:80の範囲内であることが好ましい。マンガン(Mn)の量が多いと被覆層におけるリチウム(Li)の吸蔵量が低下し、容量が低下してしまうと共に、電気抵抗が増大してしまい、マンガン(Mn)の量が少ないと充放電効率を十分に向上させることができないからである。
【0041】
被覆層に含まれる酸化物には、さらに、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、タングステン(W)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、ニオブ(Nb)、カルシウム(Ca)およびストロンチウム(Sr)からなる群のうちの少なくとも1種が構成元素として含まれていてもよい。正極材料の安定性をより向上させることができると共に、リチウムイオンの拡散性をより向上させることができるからである。
【0042】
被覆層に含まれる酸化物は、例えば、式(III)で表される組成を有する。
式(III)
LipNi(1-q-r)MnqM3r(2-y)z
(M3は、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)を除く2族〜15族から選ばれる元素のうち少なくとも一種を示す。Xは、酸素(O)以外の16族元素および17族元素のうち少なくとも1種を示す。p、q、r、y、zは、0≦p≦1.5、0≦q≦1.0、0≦r≦1.0、−0.10≦y≦0.20、0≦z≦0.2の範囲内の値である。q+rは、q+r<1である)
【0043】
被覆層の量は、リチウム複合酸化物粒子の質量に対して、2質量%以上30質量%以下であることが好ましい。被覆層の量が多すぎると母材粒子の特性が失われ、少なすぎると安定性を十分に向上させることができないからである。
【0044】
(結着剤)
結着剤としては、例えば、スチレンブタジエン系ゴム、フッ素系ゴムまたはエチレンプロピレンジエンなどの合成ゴムや、ポリフッ化ビニリデンなどの高分子材料が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。
【0045】
(導電剤)
導電剤としては、例えば、黒鉛、カーボンブラックなどの炭素材料が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。なお、導電剤は、導電性を有する材料であれば、金属材料または導電性高分子などであってもよい。
【0046】
(負極)
負極22は、例えば、一対の面を有する負極集電体22Aの両面に負極活物質層22Bが設けられたものである。ただし、負極活物質層22Bは、負極集電体22Aの片面だけに設けられていてもよい。
【0047】
負極集電体22Aは、例えば、銅、ニッケルまたはステンレスなどの金属材料によって構成されている。
【0048】
負極活物質層22Bは、負極活物質として、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料のいずれか1種または2種以上を含んでおり、必要に応じて、結着剤や導電剤などの他の材料を含んでいてもよい。なお、結着剤および導電剤は、それぞれ正極21で説明したものと同様のものを用いることができる。
【0049】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、炭素材料が挙げられる。この炭素材料としては、例えば、難黒鉛化性炭素、易黒鉛化性炭素、MCMB(メソカーボンマイクロビーズ)などの人造黒鉛、天然黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、グラファイト類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成体、カーボンブラック類、炭素繊維あるいは活性炭が挙げられる。このうち、コークス類には、ピッチコークス、ニードルコークスあるいは石油コークスなどがある。有機高分子化合物焼成体というのは、フェノール樹脂やフラン樹脂などの高分子材料を適当な温度で焼成して炭素化したものをいい、一部には難黒鉛化性炭素または易黒鉛化性炭素に分類されるものもある。
【0050】
上述の炭素材料の他、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、リチウムを吸蔵および放出することが可能であると共に金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を構成元素として有する材料が挙げられる。高いエネルギー密度が得られるからである。このような負極材料は、金属元素または半金属元素の単体でも合金でも化合物でもよく、それらの1種または2種以上の相を少なくとも一部に有するようなものでもよい。なお、この発明における「合金」には、2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とを含むものも含まれる。また、「合金」は、非金属元素を含んでいてもよい。この組織には、固溶体、共晶(共融混合物)、金属間化合物、またはそれらの2種以上が共存するものがある。
【0051】
上記した金属元素または半金属元素としては、例えば、リチウムと合金を形成することが可能な金属元素または半金属元素が挙げられる。具体的には、マグネシウム(Mg)、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、パラジウム(Pd)または白金(Pt)などである。中でも、ケイ素およびスズのうちの少なくとも1種が好ましく、ケイ素がより好ましい。リチウムを吸蔵および放出する能力が大きいため、高いエネルギー密度が得られるからである。
【0052】
ケイ素およびスズのうちの少なくとも1種を有する負極材料としては、例えば、ケイ素の単体、合金または化合物や、スズの単体、合金または化合物や、それらの1種または2種以上の相を少なくとも一部に有する材料が挙げられる。
【0053】
ケイ素の合金としては、例えば、ケイ素以外の第2の構成元素として、スズ(Sn)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)およびクロム(Cr)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。スズの合金としては、例えば、スズ(Sn)以外の第2の構成元素として、ケイ素(Si)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)およびクロム(Cr)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。
【0054】
スズの化合物またはケイ素の化合物としては、例えば、酸素(O)または炭素(C)を含むものが挙げられ、スズ(Sn)またはケイ素(Si)に加えて、上記した第2の構成元素を含んでいてもよい。
【0055】
特に、ケイ素(Si)およびスズ(Sn)のうちの少なくとも1種を含む負極材料としては、例えば、スズ(Sn)を第1の構成元素とし、そのスズ(Sn)に加えて第2の構成元素と第3の構成元素とを含むものが好ましい。勿論、この負極材料を上記した負極材料と共に用いてもよい。第2の構成元素は、コバルト(Co)、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、銀(Ag)、インジウム(In)、セリウム(Ce)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、ビスマス(Bi)およびケイ素(Si)からなる群のうちの少なくとも1種である。第3の構成元素は、ホウ素(B)、炭素(C)、アルミニウム(Al)およびリン(P)からなる群のうちの少なくとも1種である。第2の元素および第3の元素を含むことにより、サイクル特性が向上するからである。
【0056】
中でも、スズ(Sn)、コバルト(Co)および炭素(C)を構成元素として含み、炭素(C)の含有量が9.9質量%以上29.7質量%以下の範囲内、スズ(Sn)およびコバルト(Co)の合計に対するコバルト(Co)の割合(Co/(Sn+Co))が30質量%以上70質量%以下の範囲内であるCoSnC含有材料が好ましい。このような組成範囲において、高いエネルギー密度が得られると共に優れたサイクル特性が得られるからである。
【0057】
このSnCoC含有材料は、必要に応じて、さらに他の構成元素を含んでいてもよい。他の構成元素としては、例えば、ケイ素(Si)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、インジウム(In)、ニオブ(Nb)、ゲルマニウム(Ge)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、リン(P)、ガリウム(Ga)またはビスマス(Bi)などが好ましく、それらの2種以上を含んでいてもよい。容量特性またはサイクル特性がさらに向上するからである。
【0058】
なお、SnCoC含有材料は、スズ(Sn)、コバルト(Co)および炭素(C)を含む相を有しており、この相は結晶性の低いまたは非晶質な構造を有していることが好ましい。また、SnCoC含有材料では、構成元素である炭素の少なくとも一部が、他の構成元素である金属元素あるいは半金属元素と結合していることが好ましい。サイクル特性の低下は、スズ(Sn)などが凝集あるいは結晶化することによるものであると考えられるが、炭素が他の元素と結合することにより、そのような凝集または結晶化が抑制されるからである。
【0059】
元素の結合状態を調べる測定方法としては、例えば、X線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy;XPS)が挙げられる。このXPSでは、金原子の4f軌道(Au4f)のピークが84.0eVに得られるようにエネルギー較正された装置において、グラファイトであれば、炭素の1s軌道(C1s)のピークは284.5eVに現れる。また、表面汚染炭素であれば、284.8eVに現れる。これに対して、炭素元素の電荷密度が高くなる場合、例えば、炭素が金属元素または半金属元素と結合している場合には、C1sのピークは284.5eVよりも低い領域に現れる。すなわち、SnCoC含有材料について得られるC1sの合成波のピークが284.5eVよりも低い領域に現れる場合には、SnCoC含有材料に含まれる炭素(C)の少なくとも一部が他の構成元素である金属元素または半金属元素と結合している。
【0060】
なお、XPSでは、例えば、スペクトルのエネルギー軸の補正に、C1sのピークを用いる。通常、表面には表面汚染炭素が存在しているので、表面汚染炭素のC1sのピークを284.8eVとし、これをエネルギー基準とする。XPSにおいて、C1sのピークの波形は、表面汚染炭素のピークとSnCoC含有材料中の炭素のピークとを含んだ形として得られるので、例えば、市販のソフトウエアを用いて解析することにより、表面汚染炭素のピークと、SnCoC含有材料中の炭素のピークとを分離する。波形の解析では、最低束縛エネルギー側に存在する主ピークの位置をエネルギー基準(284.8eV)とする。
【0061】
また、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、リチウムを吸蔵および放出することが可能な金属酸化物または高分子化合物なども挙げられる。金属酸化物とは、例えば、酸化鉄、酸化ルテニウムまたは酸化モリブデンなどであり、高分子化合物とは、例えば、ポリアセチレン、ポリアニリンまたはポリピロールなどである。
【0062】
なお、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料は、上記以外のものであってもよい。また、上記の負極材料は、任意の組み合わせで2種以上混合されてもよい。
【0063】
負極活物質層22Bは、例えば、気相法、液相法、溶射法、焼成法、または塗布のいずれにより形成してもよく、それらの2以上を組み合わせてもよい。負極活物質層22Bを気相法、液相法、溶射法若しくは焼成法、またはそれらの2種以上の方法を用いて形成する場合には、負極活物質層22Bと負極集電体22Aとが界面の少なくとも一部において合金化していることが好ましい。具体的には、界面において負極集電体22Aの構成元素が負極活物質層22Bに拡散し、あるいは負極活物質層22Bの構成元素が負極集電体22Aに拡散し、またはそれらの構成元素が互いに拡散し合っていることが好ましい。充放電に伴う負極活物質層22Bの膨張および収縮による破壊を抑制することができると共に、負極活物質層22Bと負極集電体22Aとの間の電子伝導性を向上させることができるからである。
【0064】
なお、気相法としては、例えば、物理堆積法または化学堆積法、具体的には真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法、熱化学気相成長(CVD;Chemical Vapor Deposition)法またはプラズマ化学気相成長法などが挙げられる。液相法としては、電気鍍金または無電解鍍金などの公知の手法を用いることができる。焼成法とは、例えば、粒子状の負極活物質を結着剤などと混合して溶剤に分散させることにより塗布したのち、結着剤などの融点よりも高い温度で熱処理する方法である。焼成法に関しても公知の手法が利用可能であり、例えば、雰囲気焼成法、反応焼成法またはホットプレス焼成法が挙げられる。
【0065】
(セパレータ)
セパレータ23は、正極21と負極22とを隔離し、両極の接触に起因する電流の短絡を防止しながらリチウムイオンを通過させるものである。このセパレータ23は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレンまたはポリエチレンなどの合成樹脂からなる多孔質膜や、セラミックからなる多孔質膜などによって構成されており、これらの2種以上の多孔質膜が積層されたものであってもよい。このセパレータ23には、電解液が含浸されている。
【0066】
(電解液)
電解液は、溶媒と、この溶媒に溶解された電解質塩とを含んでいる。
【0067】
(溶媒)
溶媒は、式(1)〜式(2)で表されるハロゲン化炭酸エステルと、式(3)で表されるアルキルベンゼンとを含む。
【0068】
【化4】

(R21〜R26はそれぞれ独立して、水素基、ハロゲン基、アルキル基またはハロゲン化アルキル基である。R21〜R26の少なくとも1つはハロゲン基またはハロゲン化アルキル基である。)
【化5】

(R27〜R30はそれぞれ独立して、水素基、ハロゲン基、アルキル基またはハロゲン化アルキル基である。R27〜R30の少なくとも1つはハロゲン基またはハロゲン化アルキル基である。)
【化6】

(R1〜R3はそれぞれ独立して、アルキル基またはアリール基である。R1〜R3は互いに結合して環を形成していてもよい。R1〜R3は水素の一部がハロゲンに置換されていてもよい。)
【0069】
式(1)〜式(2)で表されるハロゲン化炭酸エステルとしては、例えば、炭酸フルオロメチルメチル、炭酸ビス(フルオロメチル)、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンなどが挙げられる。これらは1種で用いても2種以上で用いてもよい。
【0070】
式(3)で表されるアルキルベンゼンとしては、例えば、tert−ブチルベンゼン、tert−ペンチルベンゼン、1,1−ジエチルプロピルベンゼン、2,2−ジフェニルプロパンなどが挙げられる。これらは1種で用いても2種以上で用いてもよい。中でも、より効果が得られる点から、tert−ブチルベンゼンが好ましい。
【0071】
(含有量)
式(1)〜式(2)で表されるハロゲン化炭酸エステルの含有量は、電解液の全質量に対して、0.1質量%以上50質量%以下が好ましく、1質量%以上20質量%以下がより好ましい。また、式(3)で表されるアルキルベンゼンの含有量は、電解液の全質量に対して、0.1質量%以上5質量%以下が好ましく、0.1質量%以上1質量%以下がより好ましい。式(1)〜式(2)で表されるハロゲン化炭酸エステルおよび式(3)で表されるアルキルベンゼンは、充放電の際に、電極表面で分解して被膜を形成する。式(1)〜式(2)で表されるハロゲン化炭酸エステル由来の被膜の量および式(3)で表されるアルキルベンゼン由来の被膜の量を、上記最適量に制御することにより、ガス発生を著しく抑制することができる。
【0072】
この第1の実施の形態による非水電解質電池では、例えば、正極活物質として、上述したニッケル含有量が高いリチウムニッケル複合酸化物や表面にニッケル含有量が高い被覆層(例えば式(III)においてq+r≦0.5である酸化物を含む被覆層)が形成された被覆正極材を用いる。また、ニッケル含有量が高いリチウムニッケル複合酸化物と、他のリチウム複合酸化物とを混合して正極活物質として用いる。このときのニッケル含有量が高いリチウムニッケル複合酸化物の含有量を正極活物質の合計質量に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上とする。これらの場合、充電状態の正極活物質表面の強い酸化力により、非水電解液の分解反応が促進され、ガス発生が促進される。これにより、ガス発生による電池の内圧上昇によって、安全弁機構15が作動し、電池を使用することができなくなるおそれがある。これに対して、この非水電解質電池では、電解液中に、式(1)〜式(2)で表されるハロゲン化炭酸エステルを0.1質量%以上50質量%以下含有させ、式(3)で表されるアルキルベンゼンを0.1質量%以上5質量%以下含有させる。これにより、ニッケル含有量が高いリチウムニッケル複合酸化物や表面にニッケル含有量が高い被覆層が形成された被覆正極材を正極活物質として用いた場合でも、ガス発生を十分に抑制できる。また、ニッケル含有量が高いリチウムニッケル複合酸化物の混合比率が高い正極活物質を用いた場合でも、ガス発生を十分に抑制できる。
【0073】
(質量比)
また、式(1)〜式(2)で表されるハロゲン化炭酸エステルと、アルキルベンゼンとの質量比(ハロゲン化炭酸エステル/アルキルベンゼン)は、より優れた効果が得られる点から、0.1以上200以下が好ましく、0.1以上50以下がより好ましく、1以上50以下が特に好ましく、1以上12.5以下が最も好ましい。
【0074】
(他の溶媒)
また、溶媒は、式(1)〜式(2)で表されるハロゲン化炭酸エステルおよび式(3)で表されるアルキルベンゼンとともに、他の溶媒を含有していてもよい。
【0075】
他の溶媒としては、炭酸エチレン(EC)、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、炭酸メチルプロピル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、イソ酪酸メチル、トリメチル酢酸メチル、トリメチル酢酸エチル、アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリジノン、N−メチルオキサゾリジノン、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、ニトロメタン、ニトロエタン、スルホラン、燐酸トリメチル、またはジメチルスルホキシドなどが挙げられる。
【0076】
例示したこれらの他の溶媒は、1種で用いてもよく、また2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。こららの他の溶媒の中でも、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチルおよび炭酸エチルメチルからなる群のうちの少なくとも1種が好ましい。この場合には、炭酸エチレンまたは炭酸プロピレンなどの高粘度(高誘電率)溶媒(例えば、比誘電率ε≧30)と、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチルまたは炭酸ジエチルなどの低粘度溶媒(例えば、粘度≦1mPa・s)との組み合わせがより好ましい。電解質塩の解離性およびイオンの移動度が向上するからである。
【0077】
(電解質塩)
電解質塩は、例えば、リチウム塩などの軽金属塩のいずれか1種または2種以上を含有している。
【0078】
リチウム塩としては、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム、過塩素酸リチウム、六フッ化ヒ酸リチウム、テトラフェニルホウ酸リチウム(LiB(C654)、メタンスルホン酸リチウム(LiCH3SO3)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、テトラクロロアルミン酸リチウム(LiAlCl4)、六フッ化ケイ酸二リチウム(Li2SiF6)、塩化リチウム(LiCl)、または臭化リチウム(LiBr)などが挙げられる。なお、例示したこれらの電解質塩は、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0079】
(電池の製造方法)
この非水電解質電池は、例えば、以下の製造方法によって製造される。
【0080】
(正極の製造)
まず、正極21を作製する。最初に、正極活物質と、結着剤と、導電剤とを混合して正極合剤としたのち、有機溶剤に分散させてペースト状の正極合剤スラリーとする。続いて、ドクタブレードまたはバーコータなどによって正極集電体21Aの両面に正極合剤スラリーを均一に塗布して乾燥させる。最後に、必要に応じて加熱しながらロールプレス機などによって塗膜を圧縮成型して正極活物質層21Bを形成する。この場合には、圧縮成型を複数回に渡って繰り返してもよい。
【0081】
(負極の製造)
次に、負極22を作製する。最初に、負極材料と、結着剤と、必要に応じて導電剤とを混合して負極合剤としたのち、これを有機溶剤に分散させてペースト状の負極合剤スラリーとする。続いて、ドクタブレードまたはバーコータなどによって負極集電体22Aの両面に負極合剤スラリーを均一に塗布して乾燥させる。最後に、必要に応じて加熱しながらロールプレス機などによって塗膜を圧縮成型して負極活物質層22Bを形成する。
【0082】
なお、負極22は以下のようにして製造してもよい。最初に、電解銅箔などからなる負極集電体22Aを準備したのち、蒸着法などの気相法によって負極集電体22Aの両面に負極材料を堆積させて、複数の負極活物質粒子を形成する。こののち、必要に応じて、液相析出法などの液相法によって酸化物含有膜を形成し、または電解鍍金法などの液相法によって金属材料を形成し、または双方を形成することにより、負極活物質層22Bを形成する。
【0083】
(電池の組み立て)
非水電解質電池の組み立ては、以下のようにして行う。最初に、正極集電体21Aに正極リード25を溶接などして取り付けると共に、負極集電体22Aに負極リード26を溶接などして取り付ける。続いて、セパレータ23を介して正極21と負極22とを積層および巻回させて巻回電極体20を作製したのち、その巻回中心にセンターピン24を挿入する。続いて、一対の絶縁板12,13で挟みながら巻回電極体20を電池缶11の内部に収納すると共に、正極リード25の先端部を安全弁機構15に溶接し、負極リード26の先端部を電池缶11に溶接する。
【0084】
続いて、上記の電解液を電池缶11の内部に注入してセパレータ23に含浸させる。最後に、電池缶11の開口端部に電池蓋14、安全弁機構15および熱感抵抗素子16をガスケット17を介してかしめることにより固定する。これにより、図1および図2に示す非水電解質電池が完成する。
【0085】
<効果>
この発明の第1の実施の形態による非水電解質電池では、電解液中に、式(1)〜式(2)で表されるハロゲン化炭酸エステルを0.1質量%以上50質量%以下含有し、式(3)で表されるアルキルベンゼンを0.1質量%以上5質量%以下含有する。これにより、高温保存時のガス発生を抑制することができる。また、高温保存時に、ガス発生によって電池の内圧が上昇して安全弁機構が作動し、電池が使用できなくなることを防止できる。
【0086】
2.第2の実施の形態
(電池の構成)
この発明の第2の実施の形態による非水電解質電池について説明する。図3はこの発明の第2の実施の形態による非水電解質電池の分解斜視構成を表しており、図4は図3に示す巻回電極体30のI−I線に沿った断面を拡大して示している。
【0087】
この非水電解質電池は、主に、フィルム状の外装部材40の内部に、正極リード31および負極リード32が取り付けられた巻回電極体30が収納されたものである。このフィルム状の外装部材40を用いた電池構造は、ラミネートフィルム型と呼ばれている。
【0088】
正極リード31および負極リード32は、例えば、外装部材40の内部から外部に向かって同一方向に導出されている。正極リード31は、例えば、アルミニウムなどの金属材料によって構成されており、負極リード32は、例えば、銅、ニッケルまたはステンレスなどの金属材料によって構成されている。これらの金属材料は、例えば、薄板状または網目状になっている。
【0089】
外装部材40は、例えば、ナイロンフィルム、アルミニウム箔およびポリエチレンフィルムがこの順に貼り合わされたアルミラミネートフィルムによって構成されている。この外装部材40は、例えば、ポリエチレンフィルムが巻回電極体30と対向するように、2枚の矩形型のアルミラミネートフィルムの外縁部同士が融着または接着剤によって互いに接着された構造を有している。
【0090】
外装部材40と正極リード31および負極リード32との間には、外気の侵入を防止するための密着フィルム41が挿入されている。この密着フィルム41は、正極リード31および負極リード32に対して密着性を有する材料によって構成されている。このような材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリエチレンまたは変性ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂が挙げられる。
【0091】
なお、外装部材40は、上記したアルミラミネートフィルムに代えて、他の積層構造を有するラミネートフィルムによって構成されていてもよいし、ポリプロピレンなどの高分子フィルムまたは金属フィルムによって構成されていてもよい。
【0092】
図4は、図3に示す巻回電極体30のI−I線に沿った断面構成を表している。この巻回電極体30は、セパレータ35および電解質36を介して正極33と負極34とが積層および巻回されたものであり、その最外周部は、保護テープ37によって保護されている。
【0093】
正極33は、例えば、正極集電体33Aの両面に正極活物質層33Bが設けられたものである。負極34は、例えば、負極集電体34Aの両面に負極活物質層34Bが設けられたものであり、その負極活物質層34Bが正極活物質層33Bと対向するように配置されている。正極集電体33A、正極活物質層33B、負極集電体34A、負極活物質層34Bおよびセパレータ35の構成は、夫々第1の実施の形態の正極集電体21A、正極活物質層21B、負極集電体22A、負極活物質層22Bおよびセパレータ23の構成と同様である。
【0094】
電解質36は、上述した第1の実施の形態と同様の電解液と、それを保持する高分子化合物とを含んでおり、いわゆるゲル状の電解質である。ゲル状の電解質は、高いイオン伝導率(例えば、室温で1mS/cm以上)が得られると共に漏液が防止されるので好ましい。
【0095】
高分子化合物としては、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデンとポリヘキサフルオロピレンとの共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、ポリスチレン、またはポリカーボネートなどが挙げられる。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。中でも、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレンまたはポリエチレンオキサイドが好ましい。電気化学的に安定だからである。
【0096】
(電池の製造方法)
この非水電解質電池は、例えば、以下の3種類の製造方法(第1〜第3の製造方法)によって製造される。
【0097】
(第1の製造方法)
第1の製造方法では、最初に、例えば、上記した第1の実施の形態の正極21および負極22の作製手順と同様の手順により、正極集電体33Aの両面に正極活物質層33Bを形成して正極33を作製する。また、負極集電体34Aの両面に負極活物質層34Bを形成して負極34を作製する。
【0098】
続いて、第1の実施の形態による電解液と、高分子化合物と、溶剤とを含む前駆溶液を調製して正極33および負極34に塗布したのち、溶剤を揮発させてゲル状の電解質36を形成する。続いて、正極集電体33Aに正極リード31を取り付けると共に、負極集電体34Aに負極リード32を取り付ける。
【0099】
続いて、電解質36が形成された正極33と負極34とをセパレータ35を介して積層させてから長手方向に巻回し、その最外周部に保護テープ37を接着させて巻回電極体30を作製する。最後に、例えば、2枚のフィルム状の外装部材40の間に巻回電極体30を挟み込んだのち、その外装部材40の外縁部同士を熱融着などで接着させて巻回電極体30を封入する。この際、正極リード31および負極リード32と外装部材40との間に、密着フィルム41を挿入する。これにより、図3および図4に示す非水電解質電池が完成する。
【0100】
(第2の製造方法)
第2の製造方法では、最初に、正極33に正極リード31を取り付けると共に、負極34に負極リード32を取り付ける。続いて、セパレータ35を介して正極33と負極34とを積層して巻回させたのち、その最外周部に保護テープ37を接着させて、巻回電極体30の前駆体である巻回体を作製する。
【0101】
続いて、2枚のフィルム状の外装部材40の間に巻回体を挟み込んだのち、一辺の外周縁部を除いた残りの外周縁部を熱融着などで接着させて、袋状の外装部材40の内部に巻回体を収納する。続いて、電解液と、高分子化合物の原料であるモノマーと、重合開始剤と、必要に応じて重合禁止剤などの他の材料とを含む電解質用組成物を調製して袋状の外装部材40の内部に注入したのち、その外装部材40の開口部を熱融着などで密封する。最後に、モノマーを熱重合させて高分子化合物とすることにより、ゲル状の電解質36を形成する。これにより、図3および図4に示す非水電解質電池が完成する。
【0102】
(第3の製造方法)
第3の製造方法では、最初に、高分子化合物が両面に塗布されたセパレータ35を用いることを除き、上記した第2の製造方法と同様に、巻回体を形成して袋状の外装部材40の内部に収納する。
【0103】
このセパレータ35に塗布する高分子化合物としては、例えば、フッ化ビニリデンを成分とする重合体、すなわち単独重合体、共重合体または多元共重合体などが挙げられる。具体的には、ポリフッ化ビニリデンや、フッ化ビニリデンおよびヘキサフルオロプロピレンを成分とする二元系共重合体や、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレンおよびクロロトリフルオロエチレンを成分とする三元系共重合体などである。
【0104】
なお、高分子化合物は、上記したフッ化ビニリデンを成分とする重合体と共に、他の1種または2種以上の高分子化合物を含んでいてもよい。続いて、電解液を調製して外装部材40の内部に注入したのち、その外装部材40の開口部を熱融着などで密封する。最後に、外装部材40に加重をかけながら加熱し、高分子化合物を介してセパレータ35を正極33および負極34に密着させる。これにより、電解液が高分子化合物に含浸し、その高分子化合物がゲル化して電解質36が形成されるため、図3および図4に示す非水電解質電池が完成する。
【0105】
<効果>
この発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、高温保存時の電池膨れを抑制することができる。
【0106】
3.第3の実施の形態
この発明の第3の実施の形態による非水電解質電池について説明する。この発明の第3の実施の形態による非水電解質電池は、電解液を高分子化合物に保持させたもの(電解質36)に代えて、電解液をそのまま用いた点以外は、第2の実施の形態による非水電解質電池と同様である。したがって、以下では、第2の実施の形態と異なる点を中心にその構成を詳細に説明する。
【0107】
(電池の構成)
この発明の第3の実施の形態による非水電解質電池では、ゲル状の電解質36の代わりに、電解液を用いている。したがって、巻回電極体30は、電解質36が省略された構成を有し、第1の実施の形態による電解液がセパレータ35に含浸されている。
【0108】
(電池の製造方法)
この非水電解質電池は、例えば、以下のように製造する。
【0109】
まず、例えば正極活物質と結着剤と導電剤とを混合して正極合剤を調製し、N−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させることにより正極合剤スラリーを作製する。次に、この正極合剤スラリーを両面に塗布し、乾燥させ圧縮成型して正極活物質層33Bを形成し正極33を作製する。次に、例えば正極集電体33Aに正極リード31を、例えば超音波溶接、スポット溶接などにより接合する。
【0110】
また、例えば負極材料と結着剤とを混合して負極合剤を調製し、N−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させることにより負極合剤スラリーを作製する。次に、この負極合剤スラリーを負極集電体34Aの両面に塗布し乾燥させ、圧縮成型して負極活物質層34Bを形成し、負極34を作製する。次に、例えば負極集電体34Aに負極リード32を例えば超音波溶接、スポット溶接などにより接合する。
【0111】
続いて、正極33と負極34とをセパレータ35を介して巻回して外装部材40の内部に挟み込んだのち、外装部材40の内部に電解液を注入し、外装部材40を密閉する。これにより、図3および図4に示す非水電解質電池が得られる。
【0112】
<効果>
この発明の第3の実施の形態は、第1の実施の形態と同様の効果を有する。また、高温保存時の電池膨れを抑制することができる。
【実施例】
【0113】
以下、実施例によりこの発明を具体的に説明するが、この発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、以下では、説明の便宜上、以下に示すように式(4)〜(8)で表される化合物をそれぞれ化A〜化Dと称する。
【0114】
【化7】

【0115】
<実施例1−1>
実施例1−1として、以下のように図1および図2に示すリチウムイオン二次電池(以下二次電池と称する)を作製した。まず、以下のように正極21を作製した。正極活物質としてリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LiNi0.5Co0.2Mn0.32)91質量部と、導電剤としてグラファイト6質量部と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン3質量部とを混合することにより正極合剤としたのち、N−メチル−2−ピロリドンに分散させることにより、ペースト状の正極合剤スラリーとした。
【0116】
最後に、帯状のアルミニウム箔(12μm厚)からなる正極集電体21Aの両面に正極合剤スラリーを塗布して乾燥させたのち、ロールプレス機で圧縮成型することにより、正極活物質層21Bを形成した。こののち、正極集電体21Aの一端に、アルミニウム製の正極リード25を溶接して取り付けた。
【0117】
次に、負極22を作製した。負極22を作製する際には、負極活物質として人造黒鉛粉末97質量部と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン3質量部とを混合して負極合剤としたのち、N−メチル−2−ピロリドンに分散させた。そして、帯状の銅箔(15μm厚)からなる負極集電体22Aの両面に塗布して乾燥させたのちに圧縮成型することにより、負極活物質層22Bを形成した。こののち、負極集電体22Aの一端に、ニッケル製の負極リード26を取り付けた。
【0118】
続いて、正極21と、微多孔性ポリエチレンフィルム(20μm厚)からなるセパレータ23と、負極22とをこの順に積層してから渦巻状に多数回巻回させたのち、巻き終わり部分を粘着テープで固定することにより、巻回電極体20を形成した。続いて、ニッケルめっきが施された鉄製の電池缶11を準備したのち、巻回電極体20を一対の絶縁板12,13で挟み、負極リード26を電池缶11に溶接すると共に正極リード25を安全弁機構15に溶接して、その巻回電極体20を電池缶11の内部に収納した。続いて、電池缶11の内部に、減圧方式により電解液を注入した。
【0119】
電解液は以下のように調製したものを用いた。すなわち、炭酸エチレン(EC)と、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)と、炭酸ジメチル(DMC)と、化Aと、LiPF6とを質量比(EC:FEC:化A:LiPF6)=19.9:0.1:64.9:0.1:15の割合で混合し、これにより、電解液を調製した。
【0120】
続いて、表面にアスファルトが塗布されたガスケット17を介して電池缶11をかしめることにより、安全弁機構15、熱感抵抗素子16および電池蓋14を固定した。これにより、電池缶11の内部の気密性が確保され、円筒型の二次電池が完成した。
【0121】
<実施例1−2>
炭酸エチレン(EC)と、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)と、炭酸ジメチル(DMC)と、化Aと、LiPF6とを質量比(EC:FEC:化A:LiPF6)=19.9:0.1:64:1:15の割合で混合し、これにより、電解液を調製した。以上の点以外は、実施例1−1と同様にして、実施例1−2の二次電池を作製した。
【0122】
<実施例1−3>
炭酸エチレン(EC)と、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)と、炭酸ジメチル(DMC)と、化Aと、LiPF6とを質量比(EC:FEC:化A:LiPF6)=19.9:0.1:60:5:15の割合で混合し、これにより、電解液を調製した。以上の点以外は、実施例1−1と同様にして、実施例1−3の二次電池を作製した。
【0123】
<実施例1−4>
炭酸エチレン(EC)と、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)と、炭酸ジメチル(DMC)と、化Aと、LiPF6とを質量比(EC:FEC:化A:LiPF6)=19:1:64.9:0.1:15の割合で混合し、これにより、電解液を調製した。以上の点以外は、実施例1−1と同様にして、実施例1−4の二次電池を作製した。
【0124】
<実施例1−5>
炭酸エチレン(EC)と、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)と、炭酸ジメチル(DMC)と、化Aと、LiPF6とを質量比(EC:FEC:化A:LiPF6)=19:1:64.85:0.15:15の割合で混合し、これにより、電解液を調製した。以上の点以外は、実施例1−1と同様にして、実施例1−5の二次電池を作製した。
【0125】
<実施例1−6>
炭酸エチレン(EC)と、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)と、炭酸ジメチル(DMC)と、化Aと、LiPF6とを質量比(EC:FEC:化A:LiPF6)=19:1:64.8:0.2:15の割合で混合し、これにより、電解液を調製した。以上の点以外は、実施例1−1と同様にして、実施例1−6の二次電池を作製した。
【0126】
<実施例1−7>
炭酸エチレン(EC)と、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)と、炭酸ジメチル(DMC)と、化Aと、LiPF6とを質量比(EC:FEC:化A:LiPF6)=19:1:64.6:0.4:15の割合で混合し、これにより、電解液を調製した。以上の点以外は、実施例1−1と同様にして、実施例1−7の二次電池を作製した。
【0127】
<実施例1−8>
炭酸エチレン(EC)と、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)と、炭酸ジメチル(DMC)と、化Aと、LiPF6とを質量比(EC:FEC:化A:LiPF6)=19:1:64:1:15の割合で混合し、これにより、電解液を調製した。以上の点以外は、実施例1−1と同様にして、実施例1−8の二次電池を作製した。
【0128】
<実施例1−9>
炭酸エチレン(EC)と、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)と、炭酸ジメチル(DMC)と、化Aと、LiPF6とを質量比(EC:FEC:化A:LiPF6)=19:1:63:2:15の割合で混合し、これにより、電解液を調製した。以上の点以外は、実施例1−1と同様にして、実施例1−9の二次電池を作製した。
【0129】
<実施例1−10>
炭酸エチレン(EC)と、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)と、炭酸ジメチル(DMC)と、化Aと、LiPF6とを質量比(EC:FEC:化A:LiPF6)=19:1:60:5:15の割合で混合し、これにより、電解液を調製した。以上の点以外は、実施例1−1と同様にして、実施例1−10の二次電池を作製した。
【0130】
<実施例1−11>
炭酸エチレン(EC)と、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)と、炭酸ジメチル(DMC)と、化Aと、LiPF6とを質量比(EC:FEC:化A:LiPF6)=15:5:64.9:0.1:15の割合で混合し、これにより、電解液を調製した。以上の点以外は、実施例1−1と同様にして、実施例1−11の二次電池を作製した。
【0131】
<実施例1−12>
炭酸エチレン(EC)と、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)と、炭酸ジメチル(DMC)と、化Aと、LiPF6とを質量比(EC:FEC:化A:LiPF6)=15:5:64.75:0.25:15の割合で混合し、これにより、電解液を調製した。以上の点以外は、実施例1−1と同様にして、実施例1−12の二次電池を作製した。
【0132】
<実施例1−13>
炭酸エチレン(EC)と、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)と、炭酸ジメチル(DMC)と、化Aと、LiPF6とを質量比(EC:FEC:化A:LiPF6)=15:5:64.6:0.4:15の割合で混合し、これにより、電解液を調製した。以上の点以外は、実施例1−1と同様にして、実施例1−13の二次電池を作製した。
【0133】
<実施例1−14>
炭酸エチレン(EC)と、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)と、炭酸ジメチル(DMC)と、化Aと、LiPF6とを質量比(EC:FEC:化A:LiPF6)=15:5:64.5:0.5:15の割合で混合し、これにより、電解液を調製した。以上の点以外は、実施例1−1と同様にして、実施例1−14の二次電池を作製した。
【0134】
<実施例1−15>
炭酸エチレン(EC)と、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)と、炭酸ジメチル(DMC)と、化Aと、LiPF6とを質量比(EC:FEC:化A:LiPF6)=15:5:64.25:0.75:15の割合で混合し、これにより、電解液を調製した。以上の点以外は、実施例1−1と同様にして、実施例1−15の二次電池を作製した。
【0135】
<実施例1−16>
炭酸エチレン(EC)と、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)と、炭酸ジメチル(DMC)と、化Aと、LiPF6とを質量比(EC:FEC:化A:LiPF6)=15:5:64:1:15の割合で混合し、これにより、電解液を調製した。以上の点以外は、実施例1−1と同様にして、実施例1−16の二次電池を作製した。
【0136】
<実施例1−17>
炭酸エチレン(EC)と、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)と、炭酸ジメチル(DMC)と、化Aと、LiPF6とを質量比(EC:FEC:化A:LiPF6)=15:5:63:2:15の割合で混合し、これにより、電解液を調製した。以上の点以外は、実施例1−1と同様にして、実施例1−17の二次電池を作製した。
【0137】
<実施例1−18>
炭酸エチレン(EC)と、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)と、炭酸ジメチル(DMC)と、化Aと、LiPF6とを質量比(EC:FEC:化A:LiPF6)=15:5:60:5:15の割合で混合し、これにより、電解液を調製した。以上の点以外は、実施例1−1と同様にして、実施例1−18の二次電池を作製した。
【0138】
<実施例1−19>
4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)と、炭酸ジメチル(DMC)と、化Aと、LiPF6とを質量比(FEC:DMC:化A:LiPF6)=20:64.9:0.1:15の割合で混合し、これにより、電解液を調製した。以上の点以外は、実施例1−1と同様にして、実施例1−19の二次電池を作製した。
【0139】
<実施例1−20>
4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)と、炭酸ジメチル(DMC)と、化Aと、LiPF6とを質量比(FEC:DMC:化A:LiPF6)=20:64:1:15の割合で混合し、これにより、電解液を調製した。以上の点以外は、実施例1−1と同様にして、実施例1−20の二次電池を作製した。
【0140】
<実施例1−21>
4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)と、炭酸ジメチル(DMC)と、化Aと、LiPF6とを質量比(FEC:DMC:化A:LiPF6)=20:63.4:1.6:15の割合で混合し、これにより、電解液を調製した。以上の点以外は、実施例1−1と同様にして、実施例1−21の二次電池を作製した。
【0141】
<実施例1−22>
4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)と、炭酸ジメチル(DMC)と、化Aと、LiPF6とを質量比(FEC:DMC:化A:LiPF6)=20:63:2:15の割合で混合し、これにより、電解液を調製した。以上の点以外は、実施例1−1と同様にして、実施例1−22の二次電池を作製した。
【0142】
<実施例1−23>
4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)と、炭酸ジメチル(DMC)と、化Aと、LiPF6とを質量比(FEC:DMC:化A:LiPF6)=20:62:3:15の割合で混合し、これにより、電解液を調製した。以上の点以外は、実施例1−1と同様にして、実施例1−23の二次電池を作製した。
【0143】
<実施例1−24>
4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)と、炭酸ジメチル(DMC)と、化Aと、LiPF6とを質量比(FEC:DMC:化A:LiPF6)=20:61:4:15の割合で混合し、これにより、電解液を調製した。以上の点以外は、実施例1−1と同様にして、実施例1−24の二次電池を作製した。
【0144】
<実施例1−25>
4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)と、炭酸ジメチル(DMC)と、化Aと、LiPF6とを質量比(FEC:DMC:化A:LiPF6)=20:60:5:15の割合で混合し、これにより、電解液を調製した。以上の点以外は、実施例1−1と同様にして、実施例1−25の二次電池を作製した。
【0145】
<実施例1−26>
4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)と、炭酸ジメチル(DMC)と、化Aと、LiPF6とを質量比(FEC:DMC:化A:LiPF6)=50:34.9:0.1:15の割合で混合し、これにより、電解液を調製した。以上の点以外は、実施例1−1と同様にして、実施例1−26の二次電池を作製した。
【0146】
<実施例1−27>
4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)と、炭酸ジメチル(DMC)と、化Aと、LiPF6とを質量比(FEC:DMC:化A:LiPF6)=50:34:1:15の割合で混合し、これにより、電解液を調製した。以上の点以外は、実施例1−1と同様にして、実施例1−27の二次電池を作製した。
【0147】
<実施例1−28>
4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)と、炭酸ジメチル(DMC)と、化Aと、LiPF6とを質量比(FEC:DMC:化A:LiPF6)=50:30:5:15の割合で混合し、これにより、電解液を調製した。以上の点以外は、実施例1−1と同様にして、実施例1−28の二次電池を作製した。
【0148】
<比較例1−1>
炭酸エチレン(EC)と、炭酸ジメチル(DMC)と、LiPF6とを質量比(EC:DMC:LiPF6)=20:65:15の割合で混合し、これにより、電解液を調製した。以上の点以外は、実施例1−1と同様にして、比較例1−1の二次電池を作製した。
【0149】
<比較例1−2>
炭酸エチレン(EC)と、炭酸ジメチル(DMC)と、化Aと、LiPF6とを質量比(EC:DMC:化A:LiPF6)=20:64:1:15の割合で混合し、これにより、電解液を調製した。以上の点以外は、実施例1−1と同様にして、比較例1−2の二次電池を作製した。
【0150】
<比較例1−3>
炭酸エチレン(EC)と、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)と、炭酸ジメチル(DMC)と、LiPF6とを質量比(EC:FEC:DMC:LiPF6)=15:5:65:15の割合で混合し、これにより、電解液を調製した。以上の点以外は、実施例1−1と同様にして、比較例1−3の二次電池を作製した。
【0151】
<比較例1−4>
炭酸エチレン(EC)と、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)と、炭酸ジメチル(DMC)と、化Aと、LiPF6とを質量比(EC:FEC:DMC:化A:LiPF6)=15:5:55:10:15の割合で混合し、これにより、電解液を調製した。以上の点以外は、実施例1−1と同様にして、比較例1−4の二次電池を作製した。
【0152】
<比較例1−5>
4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)と、炭酸ジメチル(DMC)と、化Aと、LiPF6とを質量比(FEC:DMC:化A:LiPF6)=80:4:1:15の割合で混合し、これにより、電解液を調製した。以上の点以外は、実施例1−1と同様にして、比較例1−5の二次電池を作製した。
【0153】
<比較例1−6>
炭酸エチレン(EC)と、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)と、炭酸ジメチル(DMC)と、シクロヘキシルベンゼン(CHB)と、LiPF6とを質量比(EC:FEC:DMC:CHB:LiPF6)=15:5:64:1:15の割合で混合し、これにより、電解液を調製した。以上の点以外は、実施例1−1と同様にして、比較例1−6の二次電池を作製した。
【0154】
<比較例1−7>
炭酸エチレン(EC)と、ビニレンカーボネート(VC)と、炭酸ジメチル(DMC)と、化Aと、LiPF6とを質量比(EC:VC:DMC:化A:LiPF6)=15:5:64:1:15の割合で混合し、これにより、電解液を調製した。以上の点以外は、実施例1−1と同様にして、比較例1−7の二次電池を作製した。
【0155】
<比較例1−8〜比較例1−11>
正極活物質としてLiNi0.5Co0.2Mn0.32の代わりに、LiCoO2を用いた。以上の点以外は、比較例1−1〜比較例1−2、比較例1−3および実施例1−16と同様にして、比較例1−8〜比較例1−11の二次電池を作製した。
【0156】
作製した実施例1−1〜実施例1−28および比較例1−1〜比較例1−11の二次電池について、以下のようにして、安全弁作動時間およびサイクル特性を求めた。
【0157】
(安全弁作動時間)
安全弁作動時間は以下のようにして求めた。すなわち、まず23℃の雰囲気中において2サイクル充放電させることにより、2サイクル目の放電量を測定した。続いて、同雰囲気中において1mA/cm2の定電流密度で電池電圧が所定電圧(4.2V)に達するまで充電し、さらに所定電圧(4.2V)での定電圧で電流密度が0.02mA/cm2に達するまで充電したのち、80℃で保存し遮断弁が作動するまでの時間を求めた。
【0158】
(サイクル特性)
サイクル特性は以下のように求めた。すなわち、まず23℃の雰囲気中において2サイクル充放電することにより、2サイクル目の放電容量を求めた。続いて、同雰囲気中において298サイクル充放電することにより、300サイクル目の放電容量を求めた。最後に、(式)放電容量維持率(%)=(300サイクル目の放電容量/2サイクル目の放電容量)×100(%)により、放電容量維持率を算出した。1サイクルの充放電条件としては、0.2Cの充電電流で上限電圧4.2Vまで定電流定電圧充電したのち、0.2Cの放電電流で終止電圧2.5Vまで定電流放電した。なお、0.2Cとは、理論容量を5時間で放電(充電)しきる電流値である
【0159】
測定結果を表1−1に示す。また、最適な質量比(ハロゲン化炭酸エステル/アルキルベンゼン)を検討するために、質量比と安全弁作動時間との関係をまとめたものを表1−2に示す。
【0160】
【表1−1】

【表1−2】

【0161】
(評価)
表1−1に示すように、実施例1−1〜実施例1−28では、正極活物質として、ニッケル含有量が高いリチウムニッケル複合酸化物(LiNi0.5Co0.2Mn0.32)を用いた。この場合に、電解液中の式(1)〜(2)で表されるハロゲン化炭酸エステル(FEC)の含有量を0.1質量%以上50質量%以下とし、式(3)で表されるアルキルベンゼン(化A)の含有量を0.1質量%以上5質量%以下とした。これにより、ガス発生が十分に抑制されるため安全弁作動時間が長かった。また、サイクル維持率も良好であった。
【0162】
一方、比較例1−1では、電解液中に式(1)〜式(2)で表されるハロゲン化炭酸エステルおよび式(3)で表されるアルキルベンゼンを含有していない。したがって、ガス発生が十分に抑制されないため安全弁作動時間が短かった。
【0163】
比較例1−2では、電解液中に式(3)で表されるアルキルベンゼン(化A)を含有するが、式(1)〜式(2)で表されるハロゲン化炭酸エステルを含有していない。したがって、ガス発生が十分に抑制されないため安全弁作動時間が短かった。比較例1−3では、電解液中に式(1)〜式(2)で表されるハロゲン化炭酸エステル(FEC)を含有するが、式(3)で表されるアルキルベンゼンを含有していない。したがって、ガス発生が十分に抑制されないため安全弁作動時間が短かった。
【0164】
比較例1−4では、電解液中に式(1)〜式(2)で表されるハロゲン化炭酸エステル(FEC)および式(3)で表されるアルキルベンゼン(化A)を含有するが、式(3)で表されるアルキルベンゼンの含有量が多すぎる。したがって、ガス発生が十分に抑制されないため安全弁作動時間が短かった。比較例1−5では、電解液中に式(1)〜(2)で表されるハロゲン化炭酸エステル(FEC)および式(3)で表されるアルキルベンゼン(化A)を含有するが、式(1)〜(2)で表されるハロゲン化炭酸エステルの含有量が多すぎる。したがって、ガス発生が十分に抑制されないため安全弁作動時間が短かった。
【0165】
比較例1−6では、電解液中に式(1)〜式(2)で表されるハロゲン化炭酸エステル(FEC)およびアルキルベンゼンを含有するが、アルキルベンゼンが式(3)に示す構造を有さない、シクロヘキシルベンゼン(CHB)である。したがって、ガス発生が十分に抑制されないため安全弁作動時間が短かった。
【0166】
比較例1−7では、電解液中に不飽和炭酸エステル(VC)および式(3)で表されるアルキルベンゼン(化A)を含有するが、不飽和炭酸エステル(VC)と式(3)で表されるアルキルベンゼン(化A)との併用では、ガス発生が十分に抑制されないため安全弁作動時間が短かった。
【0167】
比較例1−8〜比較例1−11では、正極活物質として、コバルト酸リチウム(LiCoO2)を用いた。この場合には、高温保存時にガス発生が促進されず、電解液中に式(1)〜式(2)で表されるハロゲン化炭酸エステルおよび式(3)で表されるアルキルベンゼンを含有しても、これらを電解液中に含まない場合と比較して、安全弁作動時間はほぼ同じであった。
【0168】
また、表1−2に示すように、式(1)〜式(2)で表されるハロゲン化炭酸エステルと、式(3)で表されるアルキルベンゼンとの質量比(ハロゲン化炭酸エステル/アルキルベンゼン)は、0.1以上200以下が好ましく、1以上50以下がより好ましく、1以上12.5以下が特に好ましいことがわかった。
【0169】
<実施例2−1>
炭酸エチレン(EC)と、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)と、炭酸ジメチル(DMC)と、化Bと、LiPF6とを質量比(EC:FEC:DMC:化B:LiPF6)=15:5:64:1:15の割合で混合し、これにより、電解液を調製した。以上の点以外は、実施例1−1と同様にして、実施例2−1の二次電池を作製した。
【0170】
<実施例2−2>
炭酸エチレン(EC)と、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)と、炭酸ジメチル(DMC)と、化Cと、LiPF6とを質量比(EC:FEC:DMC:化C:LiPF6)=15:5:64:1:15の割合で混合し、これにより、電解液を調製した。以上の点以外は、実施例1−1と同様にして、実施例2−2の二次電池を作製した。
【0171】
<実施例2−3>
炭酸エチレン(EC)と、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)と、炭酸ジメチル(DMC)と、化Dと、LiPF6とを質量比(EC:FEC:DMC:化D:LiPF6)=15:5:64:1:15の割合で混合し、これにより、電解液を調製した。以上の点以外は、実施例1−1と同様にして、実施例2−3の二次電池を作製した。
【0172】
<実施例2−4〜実施例2−7>
電解液の調製の際に、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)の代わりに、4,5−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(DFEC)を混合した。以上の点以外は、実施例1−16および実施例2−1〜実施例2−3と同様にして、実施例2−4〜実施例2−7の二次電池を作製した。
【0173】
<実施例2−8〜実施例2−11>
電解液の調製の際に、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)の代わりに、炭酸フルオロメチルメチルを混合した。以上の点以外は、実施例1−16および実施例2−1〜実施例2−3と同様にして、実施例2−8〜実施例2−11の二次電池を作製した。
【0174】
<実施例2−12〜実施例2−15>
電解液の調製の際に、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)の代わりに、炭酸ビス(フルオロメチル)を混合した。以上の点以外は、実施例1−16および実施例2−1〜実施例2−3と同様にして、実施例2−12〜実施例2−15の二次電池を作製した。
【0175】
<比較例2−1>
炭酸エチレン(EC)と、炭酸ジメチル(DMC)と、化Bと、LiPF6とを質量比(EC:DMC:化B:LiPF6)=20:64:1:15の割合で混合し、これにより、電解液を調製した。以上の点以外は、実施例2−1と同様にして、比較例2−1の二次電池を作製した。
【0176】
<比較例2−2>
炭酸エチレン(EC)と、炭酸ジメチル(DMC)と、化Cと、LiPF6とを質量比(EC:DMC:化C:LiPF6)=20:64:1:15の割合で混合し、これにより、電解液を調製した。以上の点以外は、実施例2−1と同様にして、比較例2−2の二次電池を作製した。
【0177】
<比較例2−3>
炭酸エチレン(EC)と、炭酸ジメチル(DMC)と、化Dと、LiPF6とを質量比(EC:DMC:化D:LiPF6)=20:64:1:15の割合で混合し、これにより、電解液を調製した。以上の点以外は、実施例2−1と同様にして、比較例2−3の二次電池を作製した。
【0178】
<比較例2−4>
炭酸エチレン(EC)と、4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(DFEC)と、炭酸ジメチル(DMC)と、LiPF6とを質量比(EC:DFEC:DMC:LiPF6)=15:5:65:15の割合で混合し、これにより、電解液を調製した。以上の点以外は、実施例2−1と同様にして、比較例2−4の二次電池を作製した。
【0179】
<比較例2−5>
炭酸エチレン(EC)と、炭酸フルオロメチルメチルと、炭酸ジメチル(DMC)と、LiPF6とを質量比(EC:炭酸フルオロメチルメチル:DMC:LiPF6)=20:5:60:15の割合で混合し、これにより、電解液を調製した。以上の点以外は、実施例2−1と同様にして、比較例2−5の二次電池を作製した。
【0180】
<比較例2−6>
炭酸エチレン(EC)と、炭酸ビス(フルオロメチル)と、炭酸ジメチル(DMC)と、LiPF6とを質量比(EC:炭酸ビス(フルオロメチル):DMC:LiPF6)=20:5:60:15の割合で混合し、これにより、電解液を調製した。以上の点以外は、実施例2−1と同様にして、比較例2−6の二次電池を作製した。
【0181】
実施例2−1〜実施例2−15および比較例2−1〜比較例2−6の二次電池について、実施例1−1と同様にして、安全弁作動時間およびサイクル特性を求めた。測定結果を表2に示す。なお、実施例1−16、比較例1−1、比較例1−2および比較例1−3も評価対象とするため、実施例1−16、比較例1−1、比較例1−2および比較例1−3の測定結果も併せて表2に示す。
【0182】
【表2】

【0183】
(評価)
表2に示すように、実施例1−16、実施例2−1〜実施例2−15では、正極活物質として、ニッケル含有量が高いリチウムニッケル複合酸化物(LiNi0.5Co0.2Mn0.32)を用いた。この場合に、電解液中に、式(1)〜式(2)で表されるハロゲン化炭酸エステル(炭酸フルオロメチルメチル、炭酸ビス(フルオロメチル)、FECまたはDFEC)を5質量%および式(3)で表されるアルキルベンゼン(化A、化B、化Cまたは化D)を1質量%含有させた。これにより、ガス発生が十分に抑制されるため安全弁作動時間が長かった。また、サイクル維持率も良好であった。
【0184】
一方、比較例1−1〜比較例1−3、比較例2−1〜比較例2−6では、電解液中に、式(1)〜式(2)で表されるハロゲン化炭酸エステルおよび式(3)で表されるアルキルベンゼンの何れか一方のみ含有する、または両方を含有しない。したがって、ガス発生が十分に抑制されないため安全弁作動時間が短かった。
【0185】
<実施例3−1〜実施例3−3>
正極活物質として、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LiNi0.5Co0.2Mn0.32)50質量部と、リチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)41質量部とを混合したものを用いた。以上の点以外は、実施例1−1〜実施例1−3と同様にして、実施例3−1〜実施例3−3の二次電池を作製した。
【0186】
<実施例3−4〜実施例3−6>
正極活物質として、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LiNi0.5Co0.2Mn0.32)50質量部と、リチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)41質量部とを混合したものを用いた。以上の点以外は、実施例1−4、実施例1−8および実施例1−9と同様にして、実施例3−4〜実施例3−6の二次電池を作製した。
【0187】
<実施例3−7〜実施例3−9>
正極活物質として、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LiNi0.5Co0.2Mn0.32)50質量部と、リチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)41質量部とを混合したものを用いた。以上の点以外は、実施例1−11、実施例1−16および実施例1−18と同様にして、実施例3−7〜実施例3−9の二次電池を作製した。
【0188】
<実施例3−10〜実施例3−12>
正極活物質として、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LiNi0.5Co0.2Mn0.32)50質量部と、リチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)41質量部とを混合したものを用いた。以上の点以外は、実施例1−19〜実施例1−20および実施例1−25と同様にして、実施例3−10〜実施例3−12の二次電池を作製した。
【0189】
<実施例3−13〜実施例3−15>
正極活物質として、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LiNi0.5Co0.2Mn0.32)50質量部と、リチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)41質量部とを混合したものを用いた。以上の点以外は、実施例1−26〜実施例1−28と同様にして、実施例3−13〜実施例3−15の二次電池を作製した。
【0190】
<比較例3−1〜比較例3−6>
正極活物質として、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LiNi0.5Co0.2Mn0.32)50質量部と、リチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)41質量部とを混合したものを用いた。以上の点以外は、比較例1−1〜比較例1−5および比較例1−7と同様にして、比較例3−1〜比較例3−6の二次電池を作製した。
【0191】
実施例3−1〜実施例3−15および比較例3−1〜比較例3−6の二次電池について、実施例1−1と同様にして、安全弁作動時間およびサイクル特性を求めた。測定結果を表3に示す。なお、比較例1−8および比較例1−11も評価対象とするため、比較例1−8および比較例1−11の測定結果も併せて表3に示す。
【0192】
【表3】

【0193】
(評価)
表3に示すように、実施例3−1〜実施例3−15では、正極活物質として、ニッケル含有量が高いリチウムニッケル複合酸化物(LiNi0.5Co0.2Mn0.32)と、コバルト酸リチウム(LiCoO2)とを混合したものを用いた。この場合に、電解液中の式(1)〜(2)で表されるハロゲン化炭酸エステル(FEC)の含有量を0.1質量%以上50質量%以下とし、式(3)で表されるアルキルベンゼン(化A)の含有量を0.1質量%以上5質量%以下とした。これにより、ガス発生が十分に抑制されるため安全弁作動時間が長かった。また、サイクル維持率も良好であった。
【0194】
一方、比較例3−1〜比較例3−6では、電解液中に、式(1)〜式(2)で表されるハロゲン化炭酸エステルおよび式(3)で表されるアルキルベンゼンの何れか一方のみ含有する、または両方を含有しない。したがって、ガス発生が十分に抑制されないため安全弁作動時間が短かった。
【0195】
<実施例4−1〜実施例4−15、比較例4−1〜比較例4−6>
正極活物質として、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LiNi0.5Co0.2Mn0.32)30質量部と、リチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)61質量部とを混合したものを用いた。以上の点以外は、実施例3−1〜実施例3−15および比較例3−1〜比較例3−6と同様にして、実施例4−1〜実施例4−15および比較例4−1〜比較例4−6の二次電池を作製した。
【0196】
実施例4−1〜実施例4−15および比較例4−1〜比較例4−6の二次電池について、実施例1−1と同様にして、安全弁作動時間およびサイクル特性を求めた。測定結果を表4に示す。なお、比較例1−8および比較例1−11も評価対象とするため、比較例1−8および比較例1−11の測定結果も併せて表4に示す。
【0197】
【表4】

【0198】
(評価)
表4に示すように、実施例4−1〜実施例4−15では、正極活物質として、ニッケル含有量が高いリチウムニッケル複合酸化物(LiNi0.5Co0.2Mn0.32)と、コバルト酸リチウム(LiCoO2)とを混合したものを用いた。この場合に、電解液中の式(1)〜(2)で表されるハロゲン化炭酸エステル(FEC)の含有量を0.1質量%以上50質量%以下とし、式(3)で表されるアルキルベンゼン(化A)の含有量を0.1質量%以上5質量%以下とした。これにより、ガス発生が十分に抑制されるため安全弁作動時間が長かった。また、サイクル維持率も良好であった。
【0199】
一方、比較例4−1〜比較例4−6では、電解液中に、式(1)〜式(2)で表されるハロゲン化炭酸エステルおよび式(3)で表されるアルキルベンゼンの何れか一方のみ含有する、または両方を含有しない。したがって、ガス発生が十分に抑制されないため安全弁作動時間が短かった。
【0200】
なお、実施例4−1〜実施例4−15では、正極活物質として、ニッケル含有量が高いリチウムニッケル複合酸化物(LiNi0.5Co0.2Mn0.32)と、コバルト酸リチウム(LiCoO2)とを混合したものを用いている。そして、その混合比率を30:61(質量比)として、ニッケル含有量が高いリチウムニッケル複合酸化物(LiNi0.5Co0.2Mn0.32)の混合比率が少なくしている。この場合には、ニッケル含有量が高いリチウムニッケル複合酸化物(LiNi0.5Co0.2Mn0.32)の混合比率が高い正極活物質を用いた場合(例えば、実施例3−1〜実施例3−15)ほど、高温保存時のガス発生が促進されない。したがって、電解液中に式(1)〜式(2)で表されるハロゲン化炭酸エステルおよび式(3)で表されるアルキルベンゼンを含有させることによる効果の度合いは、実施例3−1〜実施例3−28のように、正極活物質として、ニッケル含有量が高いリチウムニッケル複合酸化物(LiNi0.5Co0.2Mn0.32)の混合比率が高い正極活物質を用いた場合の効果の度合いに比べて小さかった。
【0201】
<実施例5−1〜実施例5−15、比較例5−1〜比較例5−6>
正極活物質として、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LiNi0.5Co0.2Mn0.32)70質量部と、リチウムマンガン複合酸化物(Li1.1Mn24)21質量部とを混合したものを用いた。以上の点以外は、実施例3−1〜実施例3−15および比較例3−1〜比較例3−6と同様にして、実施例5−1〜実施例5−15および比較例5−1〜比較例5−6の二次電池を作製した。
【0202】
実施例5−1〜実施例5−15および比較例5−1〜比較例5−6の二次電池について、実施例1−1と同様にして、安全弁作動時間およびサイクル特性を求めた。測定結果を表5に示す。なお、比較例1−8および比較例1−11も評価対象とするため、比較例1−8および比較例1−11の測定結果も併せて表5に示す。
【0203】
【表5】

【0204】
(評価)
表5に示すように、実施例5−1〜実施例5−15では、正極活物質として、ニッケル含有量が高いリチウムニッケル複合酸化物(LiNi0.5Co0.2Mn0.32)と、マンガン酸リチウム(Li1.1Mn24)とを混合したものを用いた。この場合に、電解液中の式(1)〜(2)で表されるハロゲン化炭酸エステル(FEC)の含有量を0.1質量%以上50質量%以下とし、式(3)で表されるアルキルベンゼン(化A)の含有量を0.1質量%以上5質量%以下とした。これにより、ガス発生が十分に抑制されるため安全弁作動時間が長かった。また、サイクル維持率も良好であった。
【0205】
一方、比較例5−1〜比較例5−6では、電解液中に、式(1)〜式(2)で表されるハロゲン化炭酸エステルおよび式(3)で表されるアルキルベンゼンの何れか一方のみ含有する、または両方を含有しない。したがって、ガス発生が十分に抑制されないため安全弁作動時間が短かった。
【0206】
<実施例6−1〜実施例6−15、比較例6−1〜比較例6−6>
正極活物質として、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LiNi0.82Co0.15Al0.032)70質量部と、リチウムマンガン複合酸化物(Li1.1Mn2O4)21質量部とを混合したものを用いた。以上の点以外は、実施例3−1〜実施例3−15および比較例3−1〜比較例3−6と同様にして、実施例6−1〜実施例6−15および比較例6−1〜比較例6−6の二次電池を作製した。
【0207】
実施例6−1〜実施例6−15および比較例6−1〜比較例6−6の二次電池について、実施例1−1と同様にして、安全弁作動時間およびサイクル特性を求めた。測定結果を表6に示す。なお、比較例1−8および比較例1−11も評価対象とするため、比較例1−8および比較例1−11の測定結果も併せて表6に示す。
【0208】
【表6】

【0209】
(評価)
表6に示すように、実施例6−1〜実施例6−15では、正極活物質として、ニッケル含有量が高いリチウムニッケル複合酸化物(LiNi0.82Co0.15Al0.032)と、マンガン酸リチウム(Li1.1Mn24)とを混合したものを用いた。この場合に、電解液中の式(1)〜(2)で表されるハロゲン化炭酸エステル(FEC)の含有量を0.1質量%以上50質量%以下とし、式(3)で表されるアルキルベンゼン(化A)の含有量を0.1質量%以上5質量%以下とした。これにより、ガス発生が十分に抑制されるため安全弁作動時間が長かった。また、サイクル維持率も良好であった。
【0210】
一方、比較例6−1〜比較例6−6では、電解液中に、式(1)〜式(2)で表されるハロゲン化炭酸エステルおよび式(3)で表されるアルキルベンゼンの何れか一方のみ含有する、または両方を含有しない。したがって、ガス発生が十分に抑制されないため安全弁作動時間が短かった。
【0211】
<実施例7−1〜実施例7−15、比較例7−1〜比較例7−6>
正極活物質として、リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物(LiNi1/3Co1/3Mn1/32)を用いた。以上の点以外は、実施例3−1〜実施例3−15および比較例3−1〜比較例3−6と同様にして、実施例7−1〜実施例7−15および比較例7−1〜比較例7−6の二次電池を作製した。
【0212】
実施例7−1〜実施例7−15および比較例7−1〜比較例7−6の二次電池について、実施例1−1と同様にして、安全弁作動時間およびサイクル特性を求めた。測定結果を表7に示す。なお、比較例1−8および比較例1−11も評価対象とするため、比較例1−8および比較例1−11の測定結果も併せて表7に示す。
【0213】
【表7】

【0214】
(評価)
表7に示すように、実施例7−1〜実施例7−15では、正極活物質として、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LiNi1/3Co1/3Mn1/32)を用いた。この場合に、電解液中の式(1)〜(2)で表されるハロゲン化炭酸エステル(FEC)の含有量を0.1質量%以上50質量%以下とし、式(3)で表されるアルキルベンゼン(化A)の含有量を0.1質量%以上5質量%以下とした。これにより、ガス発生が十分に抑制されるため安全弁作動時間が長かった。また、サイクル維持率も良好であった。
【0215】
一方、比較例7−1〜比較例7−6では、電解液中に、式(1)〜式(2)で表されるハロゲン化炭酸エステルおよび式(3)で表されるアルキルベンゼンの何れか一方のみ含有する、または両方を含有しない。したがって、ガス発生が十分に抑制されないため安全弁作動時間が短かった。
【0216】
なお、実施例7−1〜実施例7−15では、正極活物質として、ニッケル含有量が少ないリチウムニッケル複合酸化物(LiNi1/3Co1/3Mn1/32)を用いている。この場合には、正極活物質として、ニッケル含有量が多いリチウムニッケル複合酸化物を用いた場合ほど、高温保存時のガス発生が促進されない。したがって、電解液中に式(1)〜式(2)で表されるハロゲン化炭酸エステルおよび式(3)で表されるアルキルベンゼンを含有させることによる効果の度合いは、実施例1−1〜実施例1−28のように、正極活物質として、ニッケル含有量が高いリチウムニッケル複合酸化物(LiNi0.5Co0.2Mn0.32)を用いた場合の効果の度合いに比べて小さかった。
【0217】
<実施例8−1〜実施例8−15、比較例8−1〜比較例8−6>
以下のように作製した正極活物質を用いた点以外は、実施例3−1〜実施例3−15および比較例3−1〜比較例3−6と同様にして、実施例8−1〜実施例8−15および比較例8−1〜比較例8−6の二次電池を作製した。
【0218】
まず、複合酸化物粒子として、レーザー散乱法により測定した平均粒子径が13μmのコバルト酸リチウム粉末を用意すると共に、被覆層の原料として、炭酸リチウム(Li2CO3)粉末と、水酸化ニッケル(Ni(OH)2)粉末と、炭酸マンガン(MnCO3)粉末とを、Li2CO3:Ni(OH)2:MnCO3=1.08:1:1のモル比で混合した前駆粉末を用意した。次いで、このコバルト酸リチウム粉末100質量部に対して、前駆粉末をLi1.08Ni0.5Mn0.52に換算して10質量部となるように添加し、25℃の純水100質量部を用いて1時間に渡り撹拌分散させたのち、70℃で減圧乾燥し、複合酸化物粒子の表面に前駆層を形成した。続いて、これを3℃/minの速度で昇温し、800℃で3時間保持したのち徐冷することにより、被覆層を形成し、正極活物質を得た。
【0219】
このように作製した正極活物質を、走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope;SEM)とエネルギー分散型蛍光X線分析装置(Energy DispersiveX-ray Fluorescence Spectrometer ;EDX)とを併用して観察したところ、コバルト酸リチウム複合酸化物粒子の表面に、粒径0.1μmから5μm程度のニッケルとマンガンとを含有する酸化物粒子が被着しており、ニッケルとマンガンとは複合酸化物粒子の表面にほぼ均一に存在している様子が見られ、ニッケルとマンガンとを含有する層で被覆された正極活物質を得た。
【0220】
実施例8−1〜実施例8−15および比較例8−1〜比較例8−6の二次電池について、実施例1−1と同様にして、安全弁作動時間およびサイクル特性を求めた。測定結果を表8に示す。なお、比較例1−8および比較例1−11も評価対象とするため、比較例1−8および比較例1−11の測定結果も併せて表8に示す。
【0221】
【表8】

【0222】
(評価)
表8に示すように、実施例8−1〜実施例8−15では、正極活物質として、被覆正極材を用いた。この場合に、電解液中の式(1)〜(2)で表されるハロゲン化炭酸エステル(FEC)の含有量を0.1質量%以上50質量%以下とし、式(3)で表されるアルキルベンゼン(化A)の含有量を0.1質量%以上5質量%以下とした。これにより、ガス発生が十分に抑制されるため安全弁作動時間が長かった。また、サイクル維持率も良好であった。
【0223】
一方、比較例8−1〜比較例8−6では、電解液中に、式(1)〜式(2)で表されるハロゲン化炭酸エステルおよび式(3)で表されるアルキルベンゼンの何れか一方のみ含有する、または両方を含有しない。したがって、ガス発生が十分に抑制されないため安全弁作動時間が短かった。
【0224】
<実施例9−1〜実施例9−16、比較例9−1〜比較例9−9>
負極22を以下のようにして作製した。まず、スズ・コバルト・インジウム・チタン合金粉末と、炭素粉末とを混合したのち、メカノケミカル反応を利用してSnCoC含有材料を合成した。このCoSnC含有材料の組成を分析したところ、スズの含有量は48質量%、コバルトの含有量は23質量%、炭素の含有量は20質量%であり、スズとコバルトとの合計に対するコバルトの割合Co/(Sn+Co)は32質量%であった。
【0225】
次に、負極活物質として、上述のCoSnC含有材料粉末80質量部と、導電剤として黒鉛12質量部と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン8質量部とを混合し、溶剤であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させた。最後に、銅箔(15μm厚)からなる負極集電体22Aに塗布して乾燥させたのちに圧縮成形することにより、負極活物質層22Bを形成した。
【0226】
以上の点以外は、実施例1−16、実施例2−1〜実施例2−15および比較例1−1〜比較例1−3、比較例2−1〜比較例2−6と同様にして、実施例9−1〜実施例9−16および比較例9−1〜比較例9−9の二次電池を作製した。
【0227】
実施例9−1〜実施例9−16および比較例9−1〜比較例9−9の二次電池について、実施例1−1と同様にして、安全弁作動時間およびサイクル特性を求めた。測定結果を表9に示す。
【0228】
【表9】

【0229】
(評価)
表9に示すように、実施例9−1〜実施例9−16では、正極活物質として、ニッケル含有量が高いリチウムニッケル複合酸化物(LiNi0.5Co0.2Mn0.32)を用いた。また、負極にSnCoO化合物を用いた。この場合に、電解液中に、式(1)〜式(2)で表されるハロゲン化炭酸エステル(炭酸フルオロメチルメチル、炭酸ビス(フルオロメチル)、FECまたはDFEC)を5質量%および式(3)で表されるアルキルベンゼン(化A、化B、化Cまたは化D)を1質量%含有させた。これにより、ガス発生が十分に抑制されるため安全弁作動時間が長かった。また、サイクル維持率も良好であった。
【0230】
一方、比較例9−1〜比較例9−9では、電解液中に、式(1)〜式(2)で表されるハロゲン化炭酸エステルおよび式(3)で表されるアルキルベンゼンの何れか一方のみ含有する、または両方を含有しない。したがって、ガス発生が十分に抑制されないため安全弁作動時間が短かった。
【0231】
<実施例10−1〜実施例10―16、比較例10−1〜比較例10−9>
負極22を以下のようにして作製した。銅箔(15μm厚)からなる負極集電体22Aの両面に、電子ビーム蒸着法によりケイ素からなる負極活物質層22Bを形成することにより、負極22を作製した。
【0232】
以上の点以外は、実施例1−16、実施例2−1〜実施例2−15および比較例1−1〜比較例1−3、比較例2−1〜比較例2−6と同様にして、実施例10−1〜実施例10−16および比較例10−1〜比較例10−9の二次電池を作製した。
【0233】
実施例10−1〜実施例10−16および比較例10−1〜比較例10−9の二次電池について、実施例1−1と同様にして、安全弁作動時間およびサイクル特性を求めた。測定結果を表10に示す。
【0234】
【表10】

【0235】
(評価)
表10に示すように、実施例10−1〜実施例10−16では、正極活物質として、ニッケル含有量が高いリチウムニッケル複合酸化物(LiNi0.5Co0.2Mn0.32)を用いた。また、負極にケイ素を用いた。この場合に、電解液中に、式(1)〜式(2)で表されるハロゲン化炭酸エステル(炭酸フルオロメチルメチル、炭酸ビス(フルオロメチル)、FECまたはDFEC)を5質量%および式(3)で表されるアルキルベンゼン(化A、化B、化Cまたは化D)を1質量%含有させた。これにより、ガス発生が十分に抑制されるため安全弁作動時間が長かった。また、サイクル維持率も良好であった。
【0236】
一方、比較例10−1〜比較例10−9では、電解液中に、式(1)〜式(2)で表されるハロゲン化炭酸エステルおよび式(3)で表されるアルキルベンゼンの何れか一方のみ含有する、または両方を含有しない。したがって、ガス発生が十分に抑制されないため安全弁作動時間が短かった。
【0237】
4.他の実施の形態
この発明は、上述したこの発明の実施形態に限定されるものでは無く、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。例えば、この発明は、上述したこの発明の実施形態に限定されるものでは無く、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。例えば、第1〜第3の実施の形態では、円筒型、扁平型(ラミネート型)の二次電池を例に挙げたが、角型、ボタン型、薄型、大型および積層ラミネート型の二次電池についても同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0238】
11・・・電池缶
12,13・・・絶縁板
14・・・電池蓋
15A・・・ディスク板
15・・・安全弁機構
16・・・熱感抵抗素子
17・・・ガスケット
20・・・巻回電極体
21・・・正極
21A・・・正極集電体
21B・・・正極活物質層
22・・・負極
22A・・・負極集電体
22B・・・負極活物質層
23・・・セパレータ
24・・・センターピン
25・・・正極リード
26・・・負極リード
27・・・ガスケット
30・・・巻回電極体
31・・・正極リード
32・・・負極リード
33・・・正極
33A・・・正極集電体
33B・・・正極活物質層
34・・・負極
34A・・・負極集電体
34B・・・負極活物質層
35・・・セパレータ
36・・・電解質
37・・・保護テープ
40・・・外装部材
41・・・密着フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、
負極と、
非水電解質と
を備え、
上記正極は、正極活物質として、表面の組成が式(I)で表される正極材料を含み、
上記非水電解質は、
式(1)〜式(2)で表されるハロゲン化炭酸エステルと、
式(3)で表されるアルキルベンゼンと
を含み、
上記ハロゲン化炭酸エステルの含有量は、上記非水電解質に対して、0.1質量%以上50質量%以下であり、
上記アルキルベンゼンの含有量は、上記非水電解質に対して、0.1質量%以上5質量%以下である
非水電解質電池。
式(I)
LipNi(1-q-r)M1qM2r(2-y)z
(M1、M2は、ニッケル(Ni)を除く2族〜15族から選ばれる元素のうち少なくとも一種を示す。Xは、酸素(O)以外の16族元素および17族元素のうち少なくとも1種を示す。p、q、r、y、zは、0≦p≦1.5、0≦q≦1.0、0≦r≦1.0、−0.10≦y≦0.20、0≦z≦0.2の範囲内の値である。q+rは、q+r<1である。)
【化1】

(R21〜R26はそれぞれ独立して、水素基、ハロゲン基、アルキル基またはハロゲン化アルキル基である。R21〜R26の少なくとも1つはハロゲン基またはハロゲン化アルキル基である。)
【化2】

(R27〜R30はそれぞれ独立して、水素基、ハロゲン基、アルキル基またはハロゲン化アルキル基である。R27〜R30の少なくとも1つはハロゲン基またはハロゲン化アルキル基である。)
【化3】

(R1〜R3はそれぞれ独立して、アルキル基またはアリール基である。R1〜R3は互いに結合して環を形成していてもよい。R1〜R3は水素の一部がハロゲンに置換されていてもよい。)
【請求項2】
上記正極材料は、上記式(I)において上記q+rがq+r≦0.5である、ニッケル含有量が高い表面組成を有する
請求項1記載の非水電解質電池。
【請求項3】
上記ハロゲン化炭酸エステルと、上記アルキルベンゼンとの質量比(ハロゲン化炭酸エステル/アルキルベンゼン)は、0.1以上200以下である
請求項1記載の非水電解質電池。
【請求項4】
上記ハロゲン化炭酸エステルは、炭酸フルオロメチルメチル、炭酸ビス(フルオロメチル)、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンからなる群から選ばれた少なくとも何れかである
請求項1記載の非水電解質電池。
【請求項5】
上記アルキルベンゼンは、tert−ブチルベンゼン、tert−ペンチルベンゼン、1,1−ジエチルプロピルベンゼン、2,2−ジフェニルプロパンからなる群から選ばれた少なくとも何れかである
請求項1記載の非水電解質電池。
【請求項6】
上記正極材料は、上記式(I)で表される組成を有するリチウムニッケル複合酸化物である
請求項1記載の非水電解質電池。
【請求項7】
上記リチウムニッケル複合酸化物は、上記式(I)において上記q+rがq+r≦0.5である、ニッケル含有量が高いリチウムニッケル複合酸化物である
請求項6記載の非水電解質電池。
【請求項8】
上記正極は、正極活物質として、上記ニッケル含有量が高いリチウムニッケル複合酸化物の他に、他のリチウム複合酸化物を含み、
上記ニッケル含有量が高いリチウムニッケル複合酸化物の含有量が、正極活物質の合計質量に対して、50質量%以上である
請求項7記載の非水電解質電池。
【請求項9】
上記他のリチウム複合酸化物は、コバルト酸リチウム、コバルト酸リチウムのコバルトの一部を他の金属元素に置換したコバルト系リチウム複合酸化物、スピネル型構造を有するリチウムマンガン複合酸化物からなる群から選ばれた少なくとも1種である
請求項8記載の非水電解質電池。
【請求項10】
上記正極材料は、
リチウム複合酸化物粒子と、
該リチウム複合酸化物粒子の表面の少なくとも一部に設けられた被覆層と
を備えたものであり、
上記被覆層は、リチウムと、ニッケルと、マンガンとを有する酸化物を含む
請求項1記載の非水電解質電池。
【請求項11】
上記被覆層におけるニッケルと、マンガンとの組成比は、95:5〜20:80の範囲内である
請求項10記載の非水電解質電池。
【請求項12】
上記被覆層の量は、上記リチウム複合酸化物粒子に対して、2質量%以上30質量%以下である
請求項10記載の非水電解質電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−154963(P2011−154963A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−17062(P2010−17062)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】