説明

非水電解質電池

【課題】非水電解質電池において、高い電池容量と安全性を両立する。
【解決手段】正極活物質層もしくは負極活物質層の少なくとも一方に繊維状無機材料を混合する。このとき、集電体の長手軸と、繊維状無機材料の長軸とがなす角θによって示される式(1)の配向度<m>を0.30以上0.98未満とする。そして、活物質層の厚みの半分よりも表面側に存在する繊維状無機材料の数濃度Dsと、集電体側に存在する繊維状無機材料の数濃度Ddの数濃度比Ds/Ddが、0.20以上1.00未満であることがより好ましい。さらに、ゲル電解質中に繊維状無機材料を混合し、電極の長手軸と、ゲル電解質中の繊維状無機材料の長軸とのなす角θによって示される式(1)の配向度<m>を0.30以上0.98未満とするとさらに好ましい。


(nは、繊維状無機材料のカウント数である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、非水電解質電池に関し、特に、高容量・高品質で高い安全性を有する非水電解質電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の携帯電子技術のめざましい発達により、携帯電話やノートブックコンピュータなどの電子機器は高度情報化社会を支える基盤技術と認知され始めた。また、これらの電子機器の高機能化に関する研究開発が精力的に進められており、これらの電子機器の消費電力も比例して増加の一途を辿っている。その反面、これらの電子機器は長時間の駆動が求められており、駆動電源である二次電池の高エネルギー密度化が必然的に望まれてきた。また、環境面の配慮からサイクル寿命の延命についても望まれてきた。
【0003】
電子機器に内蔵される電池の占有体積や質量などの観点より、電池のエネルギー密度は高いほど望ましい。現在では、リチウムイオン二次電池が優れたエネルギー密度を有することから、殆どの機器に内蔵されるに至っている。
【0004】
一方で、リチウムイオン二次電池には、安全性の面において懸念される点がある。具体的には、誤使用時や破壊試験時などにおいて電池内部に短絡電流が流れるとジュール熱が発生するため、その発熱量によっては異常発熱し、電池内部の最高温度が上昇しすぎる可能性がある。この異常発熱時の発熱量は、エネルギー密度をより高くすることが求められている開発傾向を考慮すると、従来の電池に比べて大きなものである。
【0005】
そこで、大容量のリチウムイオン二次電池が異常発熱することを抑制して、優れた電池特性や信頼性を得るために、その電池系内に無機材料(セラミックス)を導入することが検討されている。
【0006】
具体的には、例えば引用文献1のように、負極中にセラミックス粒子を添加することが考えられる。他の例として、正極中にセラミックス粒子を添加することも提案されている。引用文献1では、二次電池の内部抵抗を低減させて電池容量、サイクル特性および高温保存特性などを向上させるために、セラミックス粒子を活物質層内に添加している。
【0007】
また、正極活物質層あるいは負極活物質層にセラミックスを添加する替わりに、正極あるいは負極の表面にセラミックスを含む絶縁性の被膜を形成することが考えられる。これは、イオン伝導性を妨げることなく優れた電池容量およびサイクル特性を維持したまま安全性を向上させることを目的としている。また、セパレータの収縮や溶融が生じても正極および負極間の絶縁性が保たれ、内部短絡が防止されて電池内部での異常な温度上昇を抑制することを目的としている。
【0008】
また、例えば引用文献2のように、リチウムイオンの負極受け入れ性を向上させるために、負極中にナノオーダーのセラミックス粒子を混合することが検討されている。
【0009】
ゲル電解質を有するリチウムイオン二次電池については、活物質層にセラミックスを混合、または電極表面にセラミックスを含む絶縁性の被膜を形成する代わりに、電解質層へセラミックスを導入することが検討されている。具体的には、特許文献3のように、ゲル電解質に酸化アルミニウム粒子を混合することによってリチウムイオン伝導性を確保し、電池の内部抵抗を低減させることで高率放電特性を向上させることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平10−255807号公報
【特許文献2】特開2008−41465号公報
【特許文献3】特開H10−255842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、正極活物質層および負極活物質層にセラミックス粒子を添加すると、それらの表面上においてセラミックス粒子が凝集しやすいため、正極集電体、負極集電体あるいはセパレータが破損し、内部短絡する可能性がある。また、電極合剤中に繊維状無機材料を混合して電池の安全性を向上させることが記載されているが、繊維状無機材料を混合しただけでは得られる効果が十分でないと考えられる。
【0012】
さらに、正極あるいは負極の表面にセラミックス粒子を含む絶縁性の皮膜を形成した場合には、セラミック粒子の凝集の問題は改善される。しかしながら、電極が積層されて巻回された巻回構造の電池素子を用いる電池系では、巻回の曲率半径が小さい部分においてセラミックス粒子を含む皮膜が割れやすくなる。割れた皮膜はセパレータを破損するおそれがある。このため、皮膜を形成した場合でも依然として内部短絡する可能性がある。
【0013】
しかも、充電時の負極活物質層では、電池系内において通常発生する熱だけでなく、誤使用時などに発生する意図しない熱の影響も受けることにより、さらなる発熱反応を起こす可能性がある。このため、電極表面にセラミックス粒子を含む被膜を形成しただけでは、通常時における電池系内の安定化に寄与することはできても、異常発熱時における電池系内の安定化に寄与する、すなわち電池内の過度な温度上昇を抑制することは困難である。
【0014】
また、引用文献2は負極活物質中に無機材料を添加する技術であり、ナノオーダーの粒子を混合させることにより、リチウムイオンの負極受け入れ性を向上させるようにしたものである。しかしながら、引用文献6で用いるセラミックはナノオーダーであることから略球形であると考えられ、セラミックの混合による電池外部損傷時の電池安全性の向上効果は得られないと考えられる。
【0015】
また、特許文献3のようにゲル電解質に無機材料を混合させて内部短絡による安全性を確保する場合には、ゲル電解質に対する無機材料の混合割合を高くする必要がある。この場合の特性劣化やエネルギー密度の減少が課題であり、その成果は未だ十分であるとは言えない。
【0016】
この発明は、上述の問題点を解消しようとするものであり、高容量・高品質で高い安全性を有する非水電解質電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述した課題を解決するために、第1の発明は、正極集電体の少なくとも一方の面に正極活物質層を有する正極と、
負極集電体の少なくとも一方の面に負極活物質層を有する負極と、
電解質と
を備え、
正極活物質層および負極活物質層の少なくとも一方が繊維状無機材料を含み、
正極集電体および/または負極集電体の長手軸と、繊維状無機材料の長軸とがなす角θによって示される式(1)の配向度<m>が0.30以上0.98未満である
非水電解質電池である。
【数1】

(nは、繊維状無機材料のカウント数である。)
【0018】
上述した課題を解決するために、第2の発明は、正極集電体の少なくとも一方の面に正極活物質層を有する正極と、
負極集電体の少なくとも一方の面に負極活物質層を有する負極と、
電解質と
を備え、
正極活物質層および負極活物質層の少なくとも一方が繊維状無機材料を含み、
正極活物質層もしくは負極活物質層の厚みの半分よりも表面側に存在する繊維状無機材料の数濃度Dsと、正極活物質層の厚みの半分よりも正極集電体側もしくは負極活物質層の厚みの半分よりも負極集電体側に存在する繊維状無機材料の数濃度Ddの数濃度比Ds/Ddが、0.20以上1.00未満である
非水電解質電池である。
【0019】
上述した課題を解決するために、第3の発明は、正極集電体の少なくとも一方の面に正極活物質層を有する正極と、
負極集電体の少なくとも一方の面に負極活物質層を有する負極と、
ゲル電解質と
を備え、
正極および負極の長手軸と、ゲル電解質に含まれる繊維状無機材料の長軸とがなす角θによって示される式(1)の配向度<m>が0.30以上0.98未満である
非水電解質電池である。
【数2】

(nは、繊維状無機材料のカウント数である。)
【0020】
この発明では、正極活物質の表面および近傍における酸化活性を抑制することができる。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、正極活物質および正極活物質に接する電解液の劣化が抑制され、高い電池容量と充放電サイクル特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明の一実施の形態における非水電解液電池の一構成例を表す断面図である。
【図2】図1に示した巻回電極体の一部を拡大して表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。以下に説明する実施の形態は、この発明の具体的な例であり、技術的に好ましい種々の限定が付されている。しかしながら、この発明の範囲は、以下の説明において、特にこの発明を限定する旨の記載がない限り、実施の形態に限定されないものとする。なお、説明は、以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(正極活物質層および負極活物質層の少なくとも一方に繊維状無機材料を添加して配向を持たせた非水電解質二次電池の例)
2.第2の実施の形態(活物質層中の繊維状無機材料の位置に数濃度勾配を持たせるようにした非水電解質二次電池の例)
3.第3の実施の形態(電解質中に繊維状無機材料を添加した非水電解質二次電池の例)
【0024】
1.第1の実施の形態
(1−1)非水電解質二次電池の構成
以下、この発明の第1の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0025】
図1は、この発明の第1の実施形態による非水電解質電池20の一構成例を示す斜視図である。この非水電解質電池20は、例えば、リチウムイオン二次電池である。この非水電解質電池20は、正極リード11および負極リード12が取り付けられた正極13および負極14をセパレータ15を介して積層し、巻回した巻回電極体10を有している。そしてこの巻回電極体10をフィルム状の外装部材1の内部に収納した構成とされており、扁平型の形状を有するものである。
【0026】
正極リード11および負極リード12は、それぞれ例えば短冊状であり、外装部材1の内部から外部に向かい例えば同一方向にそれぞれ導出されている。正極リード11は、例えばアルミニウム(Al)などの金属材料により構成されており、負極リード12は、例えばニッケル(Ni)などの金属材料により構成されている。
【0027】
[外装部材]
外装部材1は、例えば、熱融着層、金属層および保護層をこの順に積層して貼り合わせた構造を有するラミネートフィルムである。外装部材1は、例えば、熱融着層の側を内側として、各外縁部が融着あるいは接着剤により互いに密着されている。
【0028】
熱融着層は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリエチレン、変性ポリプロピレンあるいはこれらの共重合体などのポリオレフィン樹脂により構成されている。水分透過性を低くすることができ、気密性に優れているからである。金属層は、箔状あるいは板状のアルミニウム、ステンレス、ニッケルあるいは鉄などにより構成されている。保護層は、例えばナイロンなどにより構成されている。破れや突き刺しなどに対する強度を高くすることができるからである。外装部材1は、熱融着層、金属層および保護層以外の他の層を備えていてもよい。
【0029】
外装部材1と正極リード11および負極リード12との間には、正極リード11および負極リード12と、外装部材1の熱融着層との密着性を向上させ、外気の侵入や水分の浸入を防止するための密着フィルム2が挿入されている。密着フィルム2は、正極リード11および負極リード12に対して密着性を有する材料により構成されている。正極リード11および負極リード12が上述した金属材料により構成される場合には、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリエチレンあるいは変性ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂により構成されることが好ましい。
【0030】
図2は、図1に示した巻回電極体10のII−II線に沿った断面図である。巻回電極体10は、正極13と負極14とをセパレータ15および電解質16を介して積層し、巻回したものであり、最外周部は保護テープ17により保護されている。
【0031】
また、図3Aは、正極活物質層13Aに繊維状無機材料18が含有されている様子を簡易的に示す正極13の上面図である。図3Bは、図3Aのa−a断面を示す断面図である。
【0032】
[正極]
正極13は、例えば、正極集電体13Aと、この正極集電体13Aの少なくとも一方の面に設けられた正極活物質層13Bとを有している。正極集電体13Aは、例えば、アルミニウム箔などの金属箔を用いることができる。
【0033】
正極活物質層13Bは、正極活物質と、炭素材料などの導電助剤およびポリフッ化ビニリデンまたはポリテトラフルオロエチレンなどの結着剤を含む。
【0034】
また、正極活物質層13Bは、正極活物質などと共に、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)の少なくとも一つを構成元素とする酸化物、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)の少なくとも一つを構成元素とする窒化物、および炭化ケイ素(SiC)の少なくとも一種からなる繊維状無機材料を含んでいてもよい。
【0035】
アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)の少なくとも一つを構成元素とする酸化物とは、酸化アルミニウム(Al23)、酸化ケイ素(SiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化チタン(TiO2)、もしくはAlxSiy2-z(0.5<x<1、0.01<y≦0.5、0≦z<0.4)で表されるようなアルミニウムとケイ素の複合酸化物である。この複合酸化物の場合、x、yおよびzが上述した範囲内であれば特に限定されないが、例えば、Al0.5Si0.52あるいはAl0.97Si0.031.8などが挙げられる。
【0036】
繊維状無機材料18は、正極活物質層13B内において放熱剤(熱を吸収して放熱する添加剤)として機能するため、異常発熱時において過度な温度上昇が抑制される。なお、ここで用いている無機材料が繊維状であるのは、例えば球状など、非繊維状である場合よりも凝集しにくいため、正極活物質層13B中に無機材料を含有させた場合においても、その正極の表面において無機材料の凝集が抑制され均一に分散されるからである。また、無機材料が繊維状であると、非繊維状である場合よりも放熱性に優れているからである。
【0037】
なお、繊維状無機材料18の平均長さ、アスペクト比および含有量は、特に限定されない。繊維状無機材料18の平均長さは、例えば10μm以上100000μm以下であることが好ましく、50μm以上300μm以下であることがより好ましい。アスペクト比は、例えば10以上10000以下であることが好ましく、50以上500以下であることがより好ましい。
【0038】
なお、繊維状無機材料18の平均長さおよび平均径については、例えば、フロー式粒子像分析装置あるいは走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)などを用いて測定することができる。
【0039】
フロー式粒子像分析装置を用いる場合には、CCD(Charge Coupled Device )カメラを用いて溶媒中を流れるサンプル(繊維状無機材料)をストロボ撮影し、そのサンプル像を画像解析して長軸長および短軸長を測定し、長軸長および短軸長の平均値を算出する。この場合には、平均長軸長が平均長さとなり、平均短軸長が平均径となる。なお、平均値を算出する際のカウント数(いわゆるn数)は、任意に設定可能であるが、例えば、数千あるいは数万程度であることが好ましい。
【0040】
一方、SEMを用いる場合には、任意の拡大倍率でサンプル(繊維状無機材料)を観察したのち、そのサンプル像(SEM像)上で長軸長および短軸長を実測することにより、それらの平均値を算出する。なお、平均値を算出する際のカウント数は、任意に設定可能であるが、例えば、数百程度であることが好ましい。
【0041】
正極活物質層13B中における繊維状無機材料18の含有量は、特に限定されないが、正極活物質100重量%に対して2.5重量%以上20重量%以下であることが好ましく、5重量%以上10重量%以下であることがより好ましい。繊維状無機材料18による放熱機能が十分に発揮されるからである。詳細には、含有量が2.5重量%よりも少ないと、繊維状無機材料18の絶対数が少なすぎるため、繊維状無機材料同士の接触確率が低くなり、異常発熱時において過度な温度上昇を抑制しにくくなる可能性がある。一方、含有量が20重量%よりも多いと、充放電に寄与しない繊維状無機材料18の絶対数が多すぎるため、エネルギー密度が低下する可能性がある。
【0042】
正極活物質層13B中における繊維状無機材料18の配向度<m>は、式(1)によって算出される。式(1)中のθは、図4に示すように、帯状正極集電体の長手軸(図中のx方向)と繊維状無機材料18の長軸とがなす角を意味する。式(1)において、配向度<m>=1とは、正極集電体の長手軸と正極活物質層13B中の全ての繊維状無機材料18の長軸とのなす角がθ=0、すなわち繊維状無機材料18が完全一軸配向状態であることを意味する。一方、配向度<m>=0とは正極活物質中の繊維状無機材料18がランダム配向状態であることを意味する。
【数3】

【0043】
上述の配向度<m>は、形成した繊維状無機材料18を含む活物質層の長手方向断面を光学顕微鏡で観察し、繊維状無機材料18それぞれの長軸と正極集電体13Aの長手軸とのなす角θを計測した後、式(1)より算出される。このとき、算出平均値のカウント数すなわち式(1)におけるnは任意に設定可能であるが、例えば、数千程度であることが好ましい。また、撮影した光学顕微鏡画像をコンピュータ上で市販の画像解析ソフト(例えば、旭化成エンジニアリング社製画像解析ソフトA像くん)を用いて繊維状無機材料18の長軸と正極集電体13Aの長手軸とがなす角θを計測しても良い。この場合のカウント数は任意に設定可能であるが、例えば、上記と同様に数千程度であることが好ましい。
【0044】
正極活物質層13B中の繊維状無機材料18の配向度<m>は、0.30以上0.98未満であることが好ましく、0.50以上0.85以下であることがより好ましい。配向度<m>がこの範囲とされることにより、繊維状無機材料18による放熱機能が十分に発揮されるからである。詳細には、配向度が0.30未満であると繊維状無機材料18の配向状態がランダムに近く、繊維状無機材料18を通じて行われる熱拡散がスムーズでなくなり、異常発熱時において過度な温度上昇を抑制しにくくなる可能性がある。一方、配向度が0.98以上であると、繊維状無機材料18がほぼ同一方向に配向されることになり、繊維状無機材料18同士の接触確率が著しく低下してしまう。この結果、繊維状無機材料18の接触点を通じて熱が拡散されにくくなり、熱が局所的に停滞するため、異常発熱時において過度な温度上昇を抑制しにくくなる可能性がある。
【0045】
正極活物質は、正極活物質としては、リチウムイオンをドープ・脱ドープ可能な公知の正極活物質材料を用いることができ、目的とする電池の種類に応じて、金属酸化物、金属硫化物または特定の高分子を用いることができる。例えば、TiS2、MoS2、NbSe2、V25等のリチウムを含有しない金属硫化物あるいは金属酸化物や、LixMO2またはLix24(式中、Mは1種以上の遷移金属を表し、xは電池の充放電状態によって異なり、通常0.05≦x≦1.10である)を主体とする、リチウム複合酸化物またはリチウムを含んだ層間化合物が用いられる。これらを構成する遷移金属としては、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、バナジウム(V)、チタン(Ti)のうち少なくとも1種類が選択される。
【0046】
このようなリチウム複合酸化物の具体例としては、LiCoO2、LiNiO2、LiNiyCo1-y2(式中、x、yは電池の充放電状態によって異なり、通常0<x≦1.2、0.7<y<1.02である)あるいはLiMn24等が挙げられる。このようなリチウム複合酸化物は正極活物質として用いることにより高電圧を発生させることができ、エネルギー密度に優れるため、特に好ましい材料である。
【0047】
また、LiaMXb(式中、Mは上述の遷移金属から選ばれる1種であり、XはS、Se、PO4から選ばれ、a、bは整数である)を用いることもできる。
【0048】
なお、正極活物質材料としては、上述の正極活物質を複数種混合して用いることもできる。
【0049】
導電剤としては、正極活物質に適量混合して導電性を付与できるものであれば特に制限はないが、例えばカーボンブラックあるいはグラファイトなどの炭素材料等が用いられる。また、結着剤としては、通常この種の電池の正極合剤に用いられている公知の結着剤を用いることができるが、好ましくはポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂が用いられる。
【0050】
正極13の一端部には、スポット溶接または超音波溶接により正極リード11が接続される。この正極リード11は金属箔、網目状のものが望ましいが、電気化学的および化学的に安定であり、導通がとれるものであれば金属でなくとも問題はない。正極リード11の材料としては、例えばアルミニウム(Al)等が挙げられる。正極リード11は、正極13の端部に設けられた正極集電体13Aの露出部に接続されるようにする。
【0051】
正極活物質の平均粒径は、2.0μm以上50μm以下であることが好ましい。平均粒径が2.0μm未満であると、正極作製時に正極活物質層をプレスする際に正極活物質層が剥離してしまう。また、正極活物質の表面積が増えるために、導電剤や結着剤の含有量を増やす必要があり、単位重量あたりのエネルギー密度が小さくなってしまう傾向がある。一方、この平均粒径が50μmを超えると、粒子がセパレータを貫通し、短絡を引き起こす傾向がある。
【0052】
[負極]
負極14は、例えば、負極集電体14Aと、この負極集電体14Aの少なくとも一方の面に設けられた負極活物質層14Bとを有している。負極集電体14Aは、例えば、銅箔などの金属箔により構成されている。
【0053】
負極活物質層14Bは、例えば、負極活物質として、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料のいずれか1種または2種以上を含んで構成されており、必要に応じて導電助剤および結着剤を含んでいてもよい。
【0054】
また、負極活物質層14Bは、負極活物質などと共に、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)の少なくとも一つを構成元素とする酸化物、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)の少なくとも一つを構成元素とする窒化物、および炭化ケイ素(SiC)の少なくとも一種からなる繊維状無機材料18を含んでいてもよい。
【0055】
負極活物質層14B中における繊維状無機材料18の含有量は、特に限定されないが、中でも、2.5重量%以上20重量%以下であることが好ましく、5重量%以上10重量%以下であることがより好ましい。繊維状無機材料18による放熱機能が十分に発揮されるからである。詳細には、含有量が2.5重量%よりも少ないと、繊維状無機材料18の絶対数が少なすぎるため、繊維状無機材料18同士の接触確率が低くなり、異常発熱時において過度な温度上昇を抑制しにくくなる可能性がある。一方、含有量が20重量%よりも多いと、充放電に寄与しない繊維状無機材料18の絶対数が多すぎるため、エネルギー密度が低下する可能性がある。
【0056】
なお、繊維状無機材料18は、正極活物質層13Bおよび負極活物質層14Bの少なくとも一方に含むようにすればよい。詳細には、正極活物質層13Bあるいは負極活物質層14Bのうちのいずれか一方だけが繊維状無機材料18を含んでいてもよいし、双方が繊維状無機材料18を含んでいてもよい。
【0057】
正極活物質層13Bと負極活物質層14Bとが繊維状無機材料18を含む場合には、繊維状無機材料18の種類、平均長さ、アスペクト比、含有量および配向度などは、正極活物質層13Bと負極活物質層14Bとの間で一致していてもよいし、異なっていてもよい。また、繊維状無機材料18の含有量は特に限定されないが、正極活物質層13Bへの含有量と負極活物質層14Bへの含有量との合計が、2.5重量%以上20重量%以下であることが好ましく、5重量%以上10重量%以下であることがより好ましい。正極活物質層および負極活物質層の体積密度などの他の条件は、任意に設定可能である。
【0058】
負極活物質層14B中における繊維状無機材料18の配向度<m>は、正極活物質層13Bに含まれる場合と同様に、式(1)によって算出される。
【数4】

負極活物質層14B中の繊維状無機材料18の配向度<m>は、0.30以上0.98未満であることが好ましく、0.50以上0.85以下であることがより好ましい。
【0059】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、黒鉛(グラファイト)、難黒鉛化性炭素あるいは易黒鉛化炭素などの炭素材料が挙げられる。炭素材料には、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよく、また、平均粒子径の異なる2種以上を混合して用いてもよい。
【0060】
また、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、リチウムと合金を形成可能な金属元素または半金属元素を構成元素として含む材料が挙げられる。具体的には、リチウムと合金を形成可能な金属元素の単体、合金、あるいは化合物、またはリチウムと合金を形成可能な半金属元素の単体、合金、あるいは化合物、またはこれらの1種あるいは2種以上の相を少なくとも一部に有する材料が挙げられる。
【0061】
このような金属元素あるいは半金属元素としては、例えば、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アルミニウム、インジウム(In)、ケイ素(Si)、亜鉛(Zn)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、マグネシウム(Mg)、ホウ素(B)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ素(As)、銀(Ag)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)またはハフニウム(Hf)が挙げられる。中でも、長周期型周期表における14族の金属元素あるいは半金属元素が好ましく、特に好ましいのはケイ素(Si)あるいはスズ(Sn)である。ケイ素(Si)およびスズ(Sn)はリチウムを吸蔵および放出する能力が大きく、高いエネルギー密度を得ることができるからである。
【0062】
ケイ素(Si)の合金としては、例えば、ケイ素(Si)以外の第2の構成元素として、スズ(Sn)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)およびクロム(Cr)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。スズ(Sn)の合金としては、例えば、スズ(Sn)以外の第2の構成元素として、ケイ素(Si)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)およびクロム(Cr)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。
【0063】
ケイ素(Si)の化合物あるいはスズ(Sn)の化合物としては、例えば、酸素(O)あるいは炭素(C)を含むものが挙げられ、ケイ素(Si)またはスズ(Sn)に加えて、上述した第2の構成元素を含んでいてもよい。
【0064】
[セパレータ]
セパレータ15は、電気的に安定であると共に、正極活物質、負極活物質あるいは溶媒に対して化学的に安定であり、かつ電気伝導性を有していなければどのようなものを用いてもよい。例えば、高分子の不織布、多孔質フィルム、ガラスあるいはセラミックスの繊維を紙状にしたものを用いることができ、これらを複数積層して用いてもよい。特に、多孔質ポリオレフィンフィルムを用いることが好ましく、これをポリイミド、ガラスあるいはセラミックスの繊維などよりなる耐熱性の材料と複合させたものを用いてもよい。
【0065】
[電解質]
電解質としては、非水溶媒に電解質塩が溶解された非水電解液、電解質塩を含有させた固体電解質、有機高分子に非水溶媒と電解質塩を含浸させたゲル状電解質のいずれも用いることができる。
【0066】
非水電解液は、非水溶媒と電解質塩とを適宜組み合わせて調整されるが、これら有機溶媒は、この種の電池に一般的に使用される材料であればいずれも使用可能である。非水溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、繃−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、プロピオニトリル、アニソール、酢酸エステル、絡酸エステルあるいはプロピオン酸エステル等が好ましく、これらのうちのいずれか1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0067】
電解質塩としては、上記非水溶媒に溶解するものが用いられ、カチオンとアニオンが組み合わされてなる。カチオンにはアルカリ金属やアルカリ土類金属が用いられ、アニオンには、Cl-、Br-、I-、SCN-、ClO4-、BF4-、PF6-、CF3SO3-等が用いられる。具体的には、例えばLiCl、LiClO4、LiAsF6、LiPF6、LiBF4、LiB(C654、LiBr、CH3SO3Li、CF3SO3Li、N(CnF2n+1SO22Liなどがあり、これらのうちのいずれか1種または2種以上が混合して用いられている。中でも、LiPF6を主として用いることが好ましい。また、電解質塩濃度としては、上記非水溶媒に溶解することができる濃度であれば問題ないが、リチウムイオン濃度が非水溶媒に対して0.4mol/kg以上、2.0mol/kg以下の範囲であることが好ましい。
【0068】
固体電解質としては、リチウムイオン導電性を有する材料であれば無機固体電解質、高分子固体電解質いずれも用いることができる。具体的に、無機固体電解質としては、窒化リチウム、ヨウ化リチウムが挙げられる。また、高分子固体電解質は電解質塩と電解質塩を溶解する高分子化合物からなり、高分子化合物としてはポリ(エチレンオキサイド)や同架橋体等のエーテル系高分子、ポリ(メタクリレート)エステル系、アクリレート系などを単独あるいは分子中に共重合、または混合して用いる。
【0069】
ゲル状電解質のマトリックスポリマとしては、上述の非水電解液を吸収してゲル状化するものであれば種々の高分子を用いることができる。例えば、ポリ(ビニリデンフルオロライド)やポリ(ビニリデンフルオロライド−co−ヘキサフルオロプロピレン)などのフッ素系高分子、ポリ(エチレンオキサイド)や同架橋体などのエーテル系高分子、またポリ(アクリロニトリル)などを使用できる。特に酸化還元安定性から、フッ素系高分子を用いることが望ましい。電解質塩を含有させることによりイオン導電性を賦与する。
【0070】
また、導電性高分子化合物の単体あるいは混合物を含有する高分子固体電解質や、膨潤溶媒を含有するゲル状電解質を用いてもよい。高分子固体電解質やゲル状電解質に含有される導電性高分子化合物としては電解液に相溶するものであり、具体的にシリコンゲル、アクリルゲル、アクリロニトリルゲル、ポリフォスファゼン変性ポリマー、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、フッ素系ポリマー、およびこれらの複合ポリマーや架橋ポリマー、変性ポリマー等が使用可能である。フッ素系ポリマーとしては、例えばポリ(ビニリデンフルオライド)、ポリ(ビニリデンフルオライド−co−ヘキサフルオロプロピレン)、ポリ(ビニリデンフルオロライド−co−トリフルオロエチレン)、或いはポリ(ビニリデンフルオロライド−co−テトラフルオロエチレン)等の高分子材料、およびこれらの混合物が使用される。
【0071】
(1−2)非水電解質電池の製造方法
以下、この発明の非水電解質電池の製造方法について説明する。第1の実施形態の製造方法では、電解液を用いる場合について説明する。
【0072】
[正極の製造方法]
正極13を以下のように製造する。まず、正極活物質と、結着剤と、炭素材料などの導電助剤とを混合して正極合剤を調製し、この正極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散して正極合剤スラリーを調製する。正極活物質層13Bに繊維状無機材料18を添加する場合には、上記正極活物質と、上記結着材と、上記導電助剤とともに繊維状無機材料を混合して正極合剤を調製し、上記溶剤に分散して繊維状無機材料を含む正極合剤スラリーを調整する。次に、この正極合剤スラリーを正極集電体13Aに塗布し乾燥させたのち、ロールプレス機などにより圧縮成型して正極活物質層13Bを形成し、正極13を得る。
【0073】
[負極の製造方法]
負極14は、以下のようにして作製する。まず、負極活物質と、結着剤とを混合して負極合剤を調製し、この負極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させて負極合剤スラリーとする。負極活物質層14Bに繊維状無機材料18を添加する場合には、上記負極活物質と、上記結着材と、上記導電助剤とともに繊維状無機材料を混合して負極合剤を調製し、上記溶剤に分散して繊維状無機材料を含む負極合剤スラリーを調整する。次に、この負極合剤スラリーを負極集電体14Aに塗布し溶剤を乾燥させたのち、ロールプレス機などにより圧縮成型して負極活物質層14Bを形成し、負極14を得る。
【0074】
[非水電解質電池の製造方法]
第1の実施の形態では、ゲル電解質16を設けた非水電解質電池20について説明する。この非水電解質電池20は、例えば、次のようにして製造することができる。まず、正極集電体13Aの端部に正極リード11を溶接により取り付けると共に、負極集電体14Aの端部に負極リード12を溶接により取り付ける。次に、非水溶媒と電解質塩とを混合して作製した電解液と、マトリクスポリマと、希釈溶剤とを混合してゾル状の前駆溶液を調整する。続いて、ゾル状の前駆溶液を正極活物質層13Bおよび負極活物質層14Bのそれぞれの表面に塗布し、前駆溶液中の希釈溶剤を揮発させる。これにより、ゲル電解質層16を形成する。
【0075】
続いて、ゲル電解質層16を形成した正極13と負極14とをセパレータ15を介して積層して積層体としたのち、この積層体をその長手方向に巻回して巻回電極体10とする。最後に、例えば、外装部材1の間に巻回電極体10を挟み込み、外装部材1の外縁部同士を、一辺を残して熱融着などにより密着させる。そして、開口部の一辺を熱融着などにより密着させて封入する。その際、正極リード11および負極リード12と外装部材1との間には密着フィルム2を挿入する。これにより、この発明の第1の実施の形態の非水電解質電池20が完成する。
【0076】
以上のようにして作製した第1の実施の形態の非水電解質電池20は、電池容量と安全性とを両立することができる。また、配向度を規定することにより、繊維長が短い繊維状無機材料を用いた場合であっても放熱効果を充分に得ることができる。
【0077】
2.第2の実施の形態
(2−1)非水電解質二次電池の構成
以下、この発明の第2の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
第2の実施例では、活物質層に添加した繊維状無機材料について、活物質層中で数濃度勾配を持たせた例について説明する。
【0078】
なお、第2の実施の形態では、第1の実施の形態と異なる部分についてのみ説明する。また、第1の実施形態と同様の構成の部分には、同様の参照符号を用いる。
【0079】
[正極]
正極13は、第1の実施の形態と同様に、例えば、正極集電体13Aと、この正極集電体13Aの両面に設けられた正極活物質層13Bとを有しており、正極活物質層13Bは、正極活物質と、導電助剤と、結着剤とを含んでいる。また、正極活物質層13Bには、繊維状無機材料18を含んでいてもよい。なお、繊維状無機材料18は、第1の実施の形態と同様の材料を用いることができる。正極活物質層13B中における繊維状無機材料18の含有量は、第1の実施の形態と同様に、正極活物質100重量%に対して2.5重量%以上20重量%以下であることが好ましく、5重量%以上10重量%以下であることがより好ましい。繊維状無機材料18による放熱機能が十分に発揮されるからである。
【0080】
図5Aは、繊維状無機材料18を含む正極13の上面図である。また、図5Bは、図5Aのb−b断面の断面図である。第2の実施の形態では、正極活物質層13Bの正極集電体13A側に繊維状無機材料18が多く、正極活物質層13Bの表面側に繊維状無機材料18が少なくなるようにする。具体的には、正極活物質層13Bの表面側に存在する繊維状無機材料18の数濃度Dsと、正極活物質層13Bの正極集電体13A側に存在する繊維状無機材料18の数濃度Ddの数濃度比Ds/Ddを算出する。そして、この数濃度Ds/Ddが0.20以上1.00未満であることが好ましく、0.40以上0.70未満であることがより好ましい。
【0081】
これは、正極活物質層13Bの正極集電体13A側に繊維状無機材料18が多く存在することにより、繊維状無機材料18による集電体への放熱機能が十分に発揮されかつ良好なサイクル特性が維持できるからである。詳細には、数濃度比Ds/Ddが1.00以上、すなわち、表面側と集電体側の繊維状無機材料18の数が同等か、表面側に繊維状無機材料18が多い場合、繊維状無機材料18と集電体との接触確率が低下する。これにより、正極活物質層13B中で発生した熱が繊維状無機材料18を通じて集電体へ拡散されにくくなり、熱が局所的に停滞するため、異常発熱時において過度な温度上昇を抑制しにくくなる可能性がある。
【0082】
一方、数濃度比Ds/Ddが0.20未満、すなわち、正極集電体13A側に繊維状無機材料18が多すぎる場合、充放電サイクルのサイクル数が多くなると、充放電容量が著しく低下する。これは集電体側に過度に存在する繊維状無機材料18が、活物質と集電体との導電性を極度に阻害するためであると考えられる。
【0083】
なお、繊維状無機材料18の数濃度DsおよびDdは、以下のようにして測定できる。
【0084】
まず、正極13の短手方向の断面における繊維状無機材料18の数濃度を測定する。繊維状無機材料18の数濃度は、正極集電体13Aと正極活物質層13Bとを含む正極13の短手方向断面をミクロトームなどで切り出し、光学顕微鏡やSEM等を用いて繊維状無機材料18の断面を観測することで算出する。具体的には、正極13の短手方向断面を切り出し、観察した顕微鏡像から正極活物質層13Bの断面内に存在する繊維状無機材料18の重心座標を測定する。重心座標の計測方法は、撮影した顕微鏡画像をコンピュータ上で市販の画像解析ソフト(例えば、旭化成エンジニアリング社製画像解析ソフトA像くん)を用いて計測することができる。
【0085】
そして、計測した繊維状無機材料18の重心座標を基に、正極集電体13Aと繊維状無機材料18との最短距離をそれぞれ算出する。そして、正極活物質層13Bの厚みの半分よりも表面側の領域に存在する繊維状無機材料18の数濃度Dsと、正極活物質層13Bの厚みの半分よりも正極集電体13A側の領域に存在する繊維状無機材料18の数濃度Ddを画像解析ソフト等で求める。最後に、表面側の数濃度Dsと、正極集電体13A側の数濃度Ddとの比である数濃度比Ds/Ddを算出する。この場合の繊維状無機材料18の総カウント数は任意に設定可能であるが、例えば数千程度であることが好ましい。なお、繊維状無機材料18の重心座標が正極活物質層13Bの厚みのちょうど半分の位置に存在する場合、カウント数の半数をDsとDdに振り分ける。
【0086】
なお、繊維状無機材料18の含有量は、第1の実施の形態と同様である。また、負極14についても同様に、繊維状無機材料18を数濃度勾配を持たせた状態で含有させることができる。
【0087】
[負極]
負極14は、第1の実施の形態と同様に、例えば、負極集電体14Aと、この負極集電体14Aの少なくとも一方の面に設けられた負極活物質層14Bとを有している。負極集電体14Aは、例えば、銅箔などの金属箔により構成されている。また、負極活物質層13Bには、繊維状無機材料18を含んでいてもよい。なお、繊維状無機材料18は、第1の実施の形態と同様の材料を用いることができる。また、負極活物質層13B中における繊維状無機材料の含有量は、第1の実施の形態と同様に、負極活物質100重量%に対して2.5重量%以上20重量%以下であることが好ましく、5重量%以上10重量%以下であることがより好ましい。繊維状無機材料による放熱機能が十分に発揮されるからである。
【0088】
第2の実施の形態では、負極14に繊維状無機材料を含む場合、正極13と同様に、負極活物質層14Bの負極集電体14A側に繊維状無機材料が多く、負極活物質層14Bの表面側に繊維状無機材料が少なくなるようにする。具体的には、負極活物質層14Bの表面側に存在する繊維状無機材料の数濃度Dsと、負極活物質層14Bの負極集電体14A側に存在する繊維状無機材料の数濃度Ddの数濃度比Ds/Ddを算出する。そして、この数濃度Ds/Ddが0.20以上1.00未満であることが好ましく、0.40以上0.70未満であることがより好ましい。
【0089】
このような構成とすることにより、負極14においても負極集電体14Aへの放熱機能が十分に発揮されかつ良好なサイクル特性が維持できる。なお、負極14中の繊維状無機材料の数濃度DsおよびDdは、正極13における場合と同様の方法により測定することができる。なお、繊維状無機材料18は、正極活物質層13Bおよび負極活物質層14Bの少なくとも一方に含むようにすればよい。
【0090】
(2−2)
以下、この発明の非水電解質電池の製造方法について説明する。第2の実施形態の製造方法では、ゲル電解質を用いる場合について説明する。
【0091】
[正極の製造方法]
正極13を以下のように製造する。まず、正極活物質と、結着剤と、炭素材料などの導電助剤とを混合して正極合剤を調製し、この正極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散して正極合剤スラリーを調製する。正極活物質層13Bに繊維状無機材料18を添加する場合には、上記正極活物質と、上記結着材と、上記導電助剤とともに繊維状無機材料を混合して正極合剤を調製し、上記溶剤に分散して繊維状無機材料を含む正極合剤スラリーを調整する。次に、この正極合剤スラリーを正極集電体13Aに塗布し乾燥させる。なお、正極合剤スラリーは、正極集電体13Aの上面に塗布するものとして説明する。
【0092】
塗布した正極合剤スラリー中の繊維状無機材料18は、その形状と比重によって、重力方向、すなわち正極集電体13B側に沈降すると考えられる。この原理を応用すると、正極活物質層13B内おける繊維状無機材料18の数濃度比Ds/Ddは、スラリーの乾燥時間によって制御することができる。すなわち、乾燥時間を長くすると、Dsが少なく、Ddが大きくなることから数濃度比Ds/Ddが小さくなる。一方、乾燥時間を短くすると、Dsが大きく、Ddが小さくなることから数濃度比Ds/Ddが大きくなる。したがって、所望の数濃度比Ds/Ddが得られるように正極合剤スラリーの乾燥時間を設定して乾燥を行なった後、ロールプレス機などにより圧縮成型して正極活物質層13Bを形成し、正極13を得る。
【0093】
負極14は、第1の実施の形態と同様の方法により作製する。負極活物質層14Bに繊維状無機材料18を混合する場合には、第2の実施の形態における正極13と同様に繊維状無機材料を含む負極合剤スラリーを調整し、負極合剤スラリーの乾燥速度を調整して、繊維状無機材料18の数濃度Ds/Ddを調整する。
【0094】
[非水電解質電池の製造方法]
第2の実施の形態では、電解液を用いた非水電解質電池20について説明する。
【0095】
まず、正極13と負極14とをセパレータ15を介して積層して積層体としたのち、この積層体をその長手方向に巻回して巻回電極体10とする。最後に、例えば、外装部材1の間に巻回電極体10を挟み込み、外装部材1の外縁部同士を、一辺を残して熱融着などにより密着させる。そして、外装部材1の開口部から、非水溶媒と電解質塩とを混合して作製した電解液を注液し、開口部の一辺を熱融着などにより密着させて封入する。その際、正極リード11および負極リード12と外装部材1との間には密着フィルム2を挿入する。これにより、この発明の第1の実施の形態の非水電解質電池20が完成する。
【0096】
以上のようにして作製した第2の実施の形態の非水電解質電池20は、高い電池容量を維持すると共に、活物質層内での放熱機能をさらに高めることができる。
【0097】
3.第3の実施の形態
(3−1)非水電解質二次電池の構成
以下、この発明の第3の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
第3の実施例では、電解質中に繊維状無機材料を添加し、かつ繊維状無機材料に配向を持たせた非水電解質二次電池について説明する。
【0098】
[正極および負極]
正極13および負極14については、第1の実施の形態および第2の実施の形態と同様の構成を用いることができる。また、繊維状無機材料を含有しない正極13および負極14を用いるようにしてもよい。
【0099】
[ゲル電解質]
第3の実施の形態では、ゲル電解質を用いる。第3の実施の形態におけるゲル電解質層は、繊維状無機材料18を含み、かつ下記のような配向度となっている。なお、第3の実施例において用いる繊維状無機材料は、第1および第2の実施の形態で用いる繊維状無機材料18と同様の材料を用いることができる。
【0100】
第3の実施の形態におけるゲル電解質層中における繊維状無機材料18の配向度<m>は、式(1)によって算出される。式(1)中のθは、正極13および負極14の長手軸と繊維状無機材料18の長軸とがなす角を意味する。式(1)において、配向度<m>=1とは、電極の長手軸とゲル電解質中の全ての繊維状無機材料18の長軸とのなす角がθ=0、すなわち繊維状無機材料18が完全一軸配向状態であることを意味する。一方、配向度<m>=0とはゲル電解質中の繊維状無機材料18がランダム配向状態であることを意味する。
【数5】

【0101】
上述の配向度<m>は、形成した繊維状無機材料18を含むゲル電解質層の長手方向断面を光学顕微鏡で観察し、繊維状無機材料18それぞれの長軸と正極集電体13Aの長手軸とのなす角θを計測した後、式(1)より算出される。このとき、算出平均値のカウント数すなわち式(1)におけるnは任意に設定可能であるが、例えば、数千程度であることが好ましい。また、撮影した光学顕微鏡画像をコンピュータ上で市販の画像解析ソフト(例えば、旭化成エンジニアリング社製画像解析ソフトA像くん)を用いて繊維状無機材料18の長軸と正極集電体13Aの長手軸となす角θを計測しても良い。この場合のカウント数は任意に設定可能であるが、例えば、第1および第2の実施の形態と同様に数千程度であることが好ましい。
【0102】
ゲル電解質中の繊維状無機材料18の配向度<m>は、0.30以上0.98未満であることが好ましく、0.50以上0.85以下であることがより好ましい。配向度<m>がこの範囲とされることにより、繊維状無機材料18による放熱機能が十分に発揮されるからである。詳細には、配向度が0.30未満であると繊維状無機材料18の配向状態がランダムに近く、繊維状無機材料18を通じて行われる熱拡散がスムーズでなくなり、異常発熱時において過度な温度上昇を抑制しにくくなる可能性がある。一方、配向度が0.98以上であると、繊維状無機材料18がほぼ同一方向に配向されることになり、繊維状無機材料18同士の接触確率が著しく低下してしまう。この結果、繊維状無機材料18の接触点を通じて熱が拡散されにくくなり、熱が局所的に停滞するため、異常発熱時において過度な温度上昇を抑制しにくくなる可能性がある。
【0103】
ゲル状電解質層内の繊維状無機材料18は、放熱剤として機能するため、異常発熱時において過度な温度上昇が抑制される。なお、ゲル電解質はその性状から、添加剤の凝集が起こりやすい。ここで用いる無機材料が繊維状であるのは、非繊維状(球状)である場合よりも凝集しにくいため、ゲル状電解質の前駆溶液中およびその後形成される二次電池内部のゲル状電解質層中でも無機材料の凝集が抑制され、均一に分散されるからである。また、無機材料が繊維状であると、非繊維状である場合よりも放熱性に優れているからである。
【0104】
ゲル電解質中の繊維状無機材料18の含有量は、特に限定されないが、ゲル電解質を構成するマトリクス高分子との重量比、すなわち(繊維状無機材料重量:マトリクス高分子重量)が(1:1)から(5:1)の間であることが好ましい。繊維状無機材料18による放熱機能が十分に発揮されるからである。詳細には、繊維状無機材料18の含有量が、上記マトリクス高分子との比において(1:1)よりも少ないと、繊維状無機材料18の絶対数が少なすぎるため、繊維状無機材料18間の接触確率が低くなり、異常発熱時において過度な温度上昇を抑制しにくくなるおそれがある。一方、含有量がマトリクス高分子との比において(5:1)よりも多いと、充放電に寄与しない繊維状無機材料18の絶対数が多すぎるため二次電池のエネルギー密度が低下またはサイクル特性が低下する可能性がある。
【0105】
以上のようにして作製した第3の実施の形態の非水電解質電池20は、電極表面における放熱性を高めることにより、電池容量と安全性とを両立することができる。
【0106】
なお、上述の第1ないし第3の実施の形態は、組み合わせて用いることができる。また、第1ないし第3の実施の形態では、ラミネートフィルムを外装材に用いた薄型電池を一実施形態として説明しているが、円筒形電池、角型電池等に用いるようにしてもよい。
【実施例】
【0107】
[実施例1]
<実施例1−1>
以下の手順により、ラミネートフィルムで外装された二次電池を作製した。この際、負極の容量がリチウムイオンの吸蔵および放出に基づいて表されるリチウムイオン二次電池となるようにした。
【0108】
[正極の作製]
まず、炭酸リチウム(Li2CO3)と炭酸コバルト(CoCO3)とを、0.5:1のモル比で混合した後、空気中において900℃で5時間焼成することにより、リチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)を得た。続いて、正極活物質としてリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)95質量部と、導電助剤として天然黒鉛2質量部と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)3質量部とを混合して正極合剤とした。そして、作製した正極合剤をN−メチル−2−ピロリドンに分散させることにより、ペースト状の正極合剤スラリーとした。次に、帯状のアルミニウム箔(厚さ=15μm)からなる正極集電体の両面に正極合剤スラリーを均一に塗布して乾燥させることにより、正極活物質層を形成した。最後に、ロールプレス機を用いて正極活物質層を圧縮成型して正極とした。
【0109】
[負極の作製]
負極活物質としてMCMB(メジアン径=30μm)89.5質量部と、導電助剤としてVGCF3質量部と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン5質量部と、繊維状無機材料として酸化アルミニウム(Al23)2.5質量部とを混合して負極合剤とした。そして、作製した負極合剤をN−メチル−2−ピロリドンに分散させることにより、ペースト状の負極合剤スラリーとした。実施例1−1で用いる繊維状無機材料は、繊維長(平均長さ)が100000μm、アスペクト比(平均長さ/平均径)が100のものを用いた。なお、平均長さおよび平均径を測定する場合には、Sysmex社製のフロー式粒子像分析装置FPIA−3000を用いると共に、平均値を算出する際のカウント数を10000とした。
【0110】
続いて、帯状の電解銅箔(厚さ=12μm)からなる負極集電体の両面に負極合剤スラリーを均一に塗布して乾燥させることにより、負極活物質層を形成した。ここで、負極合剤スラリーを塗布する際、プレス後の負極活物質層において、繊維状無機材料の配向度が0.97になるように塗布速度を調節した。なお、配向度は、形成した負極活物質層を負極長手方向の断面方向から光学顕微鏡で観察し、各繊維状無機材料と帯状電極のなす角を求めた後、式(1)より算出した。このとき、配高度を算出する際のカウント数、すなわち式(1)におけるnを1000とした。最後に、ロールプレス機を用いて負極活物質層を圧縮成型して負極とした。
【0111】
[電解質組成物の作製]
溶媒として炭酸エチレン(EC)および炭酸プロピレン(PC)を、電解質塩として六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を用い、溶媒と電解質塩とを混合することにより電解液を調製した。このとき、溶媒の組成(EC:PC)は炭酸エチレン(EC):炭酸プロピレン(PC)を質量比で50:50とし、電解質塩の含有量を溶媒に対して0.7mol/kgとした。この後、マトリクス高分子としてフッ化ビニリデン(PVdF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)との共重合体に電解液を保持させて電解質組成物とした。電解質組成物は、ゲル電解質の前駆体であり、例えばゾル状となっている。ここで、マトリクス高分子中におけるヘキサフルオロプロピレン(HFP)の共重合量を6.9重量%とした。
【0112】
[二次電池の組み立て]
まず、正極集電体の一端にアルミニウム製の正極リードを溶接し、負極集電体の一端にニッケル製の負極リードを溶接した。続いて、正極および負極のそれぞれの表面に、電解質組成物を塗布して乾燥させることにより、ゲル電解質層を形成した。次に、ゲル電解質層が両面に形成された正極と、ポリエチレンフィルムからなるセパレータ(厚さ=9μm)と、電解質層が両面に形成された負極と、上述のセパレータとを、この順に積層してから長手方向に扁平となるように巻回した。そして、絶縁性の粘着テープからなる保護テープで巻き終わり部分を固定することにより、巻回電極体を形成した。
【0113】
続いて、外装部材の間に巻回電極体を挟み込み、真空雰囲気中において巻回電極体外装部材の開口部を熱融着して封止した。外装部材としては、ラミネートフィルム(総厚=100μm)を用いる。ラミネートフィルムは、ナイロンフィルム(厚さ=30μm)と、アルミニウム箔(厚さ=40μm)と、無延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ=30μm)とが積層された3層構造とする。ここで、ラミネートフィルムは、無延伸ポリプロピレンフィルム層が巻回電極体と対向し、ナイロンフィルムが二次電池の外側となるように用いる。なお、二次電池を作製する際には、正極活物質層の厚さを調節することにより、満充電時において負極にリチウム金属が析出しないようにした。
【0114】
<実施例1−2>ないし<実施例1−28>、および<比較例1−1>ないし<比較例1−6>
その他の実施例(実施例1−2ないし1−28)、および比較例(比較例1−1ないし比較例1−6)は、以下の表1のようにして作製した。配向度の変更については、負極活物質層、正極活物質層をプレスした後の繊維状無機材料の配向度が表の値となるように、負極合剤スラリーもしくは正極合剤スラリーの塗布速度を調整した。
【0115】
実施例1−14ないし実施例1−20では、溶媒として炭酸エチレン(EC)および炭酸ジエチル(DEC)と、電解質塩として六フッ化リン酸リチウムとを混合した電解液を用いた。この場合には、溶媒の組成(EC:DEC)を質量比で30:70とし、電解質塩の含有量を溶媒に対して1.0mol/kgとした。
【0116】
実施例1−5では、負極活物質として鱗片状黒鉛を用いた。
【0117】
実施例1−17では、負極活物質としてSnCoSiTiInC(メジアン径=2μm)87質量部と、負極導電剤としてVGCF3質量部と、負極結着剤としてポリフッ化ビニリデン5質量部と、繊維状無機材料5質量部とを混合した。この複合金属を準備する場合には、最初に、スズ粉末、コバルト粉末、チタン粉末およびインジウム粉末を合金化してSnCoTiIn合金粉末としたのち、その合金粉末にケイ素粉末および炭素粉末を加えて乾式混合した。この際、各粉末の組成(質量混合比)をSn:Co:Si:Ti:In:C=46.5:25.0:3.0:6.1:1.4:18.0とした。続いて、伊藤製作所製の遊星ボールミルの反応容器中に、上記した混合物20gを直径9mmの鋼玉約400gと共にセットした。続いて、反応容器中をアルゴンガスで置換したのち、毎分250回転の回転速度による10分間の運転と10分間の休止とを運転時間の合計が50時間になるまで繰り返した。最後に、反応容器を室温まで冷却したのち、合成されたSnCoSiTiInCを取り出し、280メッシュのふるいを通して粗粉を取り除いた。
【0118】
実施例1−18では、負極活物質としてケイ素を用い、焼結法を用いて負極活物質層を形成した。負極活物質としてケイ素(メジアン径=2μm,純度=99%)75質量部と、負極導電剤として鱗片状人造黒鉛(メジアン径=4μm)5質量部と、負極結着剤の前駆体としてポリアミック酸溶液15質量部と、繊維状無機材料5質量部とを混合して負極合剤としたのち、N−メチル−2−ピロリドンに分散させることにより、ペースト状の負極合剤スラリーとした。続いて、帯状の電解銅箔(厚さ=15μm,算術平均粗さRa=0.2μm)からなる負極集電体54Aの両面に負極合剤スラリーを均一に塗布して乾燥させた。最後に、アルゴンガス(Ar)の雰囲気中において熱処理(400℃×12時間)することにより、負極結着剤としてポリイミドを生成した。
【0119】
比較例1−4では、セパレータ材料に繊維状無機材料を溶融混練して作製したセパレータを用いた。
【0120】
比較例1−5では、負極活物質としてMCMB92質量部と、負極導電助剤としてVGCF3質量部と、負極結着剤としてポリフッ化ビニリデン5質量部とを混合して負極合剤とし、繊維状無機材料を含有しない負極活物質層を形成した。続いて、繊維状無機材料として酸化アルミニウム5質量部と、高分子化合物としてポリフッ化ビニリデン95質量部とを混合したのち、N−メチル−2−ピロリドンに分散させることにより、ペースト状の無機材料スラリーとした。最後に、負極活物質層の表面に無機材料スラリーを均一に塗布して乾燥させることにより、繊維状無機材料を含む被膜を5μmの厚さとなるように形成し、繊維状無機材料が負極の表面に位置するようにした。なお、負極活物質層表面に塗布した繊維状無機材料は、負極活物質層の5質量部に値する。これ以外は、実施例1−1と同様にして二次電池を作製した。
【0121】
[二次電池の評価]
各実施例および比較例で作製した二次電池のそれぞれについて、以下の測定を行った。
【0122】
(a)定格エネルギー密度(Wh/dm3
各実施例および比較例の二次電池を、23℃の雰囲気中で充放電させることにより、定格容量を測定した後、{定格エネルギー密度(Wh/dm3)=(平均放電電圧(V)×定格容量(Ah))/電池体積(dm3)}から定格エネルギー密度を算出した。この際、充放電条件としては、100mAの充電電流で上限電圧4.2Vまで定電流充電を行った後、定電圧充電に切り替え、総充電時間が15時間となった時点で充電を終了した。続いて、100mAの放電電流で定電流放電を行い、終止電圧3.0Vとなった時点で放電を終了した。
【0123】
(b)丸棒圧壊試験時の最高到達温度(℃)
まず、(a)において定格エネルギー密度を調べた場合と同様の条件で二次電池を充電し、熱電対を用いて電池内の温度を測定可能にした。この後、電池内の温度を25℃とした状態で、鉄製平板と直径10mmの鉄製丸棒との間に各実施例および比較例の二次電池を設置した。鉄製丸棒は、二次電池の胴部中央に位置するようにした。続いて、鉄製丸棒を、鉄製平板方向に50mm/秒の速度で動かし、鉄製丸棒が二次電池の胴部中央を潰すようにした。そして、鉄製丸棒を二次電池の厚さ2/3の位置まで動かして二次電池を潰したときの電池内の最高到達温度(℃)を測定した。
【0124】
以下の表1に、評価の結果を示す。
【0125】
【表1】

【0126】
表1から分かるように、正極活物質層もしくは負極活物質層の少なくとも一方に繊維状無機材料を添加した各実施例は、無機材料を添加していない比較例1−1と比較して、圧壊試験時の最高温度が100℃未満と低く、安全性が高くなることが分かった。
【0127】
また、各実施例では繊維状無機材料の配向度を0.30以上0.98未満とすることにより、配向度がこの範囲を外れる比較例1−2および1−3と比較して高い安全性を有することが分かった。特に、繊維状無機材料の繊維長、アスペクト比および重量比が同じ実施例1−10ないし1−13と、比較例1−2および1−3とを比較すると、実施例は比較例に比べて定格エネルギー密度が同等以上で、かつ圧壊試験時の安全性が顕著に向上したことが分かった。
【0128】
さらに、実施例1−10ないし1−13から、配向度が0.50以上0.85以下の範となった場合に、定格エネルギー密度および安全性がさらに高くなることが分かる。これは、繊維状無機材料の配向度が所定の範囲内にある場合、繊維状無機材料による放熱効果が著しく発揮されるためである。なお、配向度が所定の範囲内であれば、繊維状無機材料の繊維長、アスペクト比に関わらず高い定格エネルギー密度および安全性を得ることができることが分かる。
【0129】
さらに、比較例1−5のようにセパレータまたは正極および負極の界面部分に繊維状無機材料を添加した場合に比べて、活物質層に繊維状無機材料を添加した各実施例の方が高い特性を有していることが分かった。また、比較例1−6のように、球状の無機材料を添加した場合と比較しても、各実施例の二次電池の特性が向上していることが分かった。これにより、放熱機能を効果的に発揮させるために、電池反応が起こる活物質層に繊維状無機材料を分散させることが好ましいことが分かった。
【0130】
実施例1−21ないし1−28に示すように、繊維状無機材料は、酸化アルミニウム以外の材料でも効果を得られることが分かった。また、繊維状無機材料を添加することによって、負極活物質の材料や電解質の態様等に関わらず電池特性の向上効果があることが分かった。
【0131】
[実施例2]
実施例2では、繊維状無機材料を添加した合剤スラリーを集電体に塗布した後、合剤スラリーの乾燥速度を調整して、活物質層内の集電体側における繊維状無機材料と、表面側における繊維状無機材料の数濃度比Ds/Ddを調節し、二次電池を評価した。なお、数濃度比Ds/Ddは、実施の形態2で記載したように、負極合剤スラリーの乾燥速度を調整することにより行った。
<実施例2−1>
負極集電体の両面に負極合剤スラリーを均一に塗布して乾燥させる際に、乾燥速度を調整して数濃度比Ds/Ddが0.9となるようにした以外は、実施例1−1と同様にして二次電池を作製した。
【0132】
なお、実施例2−1では、負極の短手方向断面を走査型電子顕微鏡で観察し、各繊維状無機材料の重心位置と負極集電体との最短距離を求め、負極活物質層厚みの半分より負極活物質層表面側の領域に存在する繊維状無機材料の数濃度をDsとして求めた。また、負極活物質層厚みの半分より負極集電体側の領域に存在する繊維状無機材料の数濃度をDdとして求めた。そして、数濃度比Ds/Ddを算出した。このとき、繊維状無機材料のカウント数を2000とした。この後、ロールプレス機を用いて負極活物質層を圧縮成型した。
【0133】
<実施例2−2>ないし<実施例2−28>、および<比較例2−1>ないし<比較例2−8>
その他の実施例(実施例2−2ないし2−28)、および比較例(比較例2−1ないし比較例2−8)は、以下の表2のようにして作成した。なお、繊維状無機材料を正極に添加する場合には、実施例2−1と同様に正極合剤スラリーの乾燥速度を調整することにより繊維状無機材料の数濃度比Ds/Ddを調整した。すなわち、数濃度比Ds/Ddを大きくする場合は乾燥速度を短く、数濃度比Ds/Ddを小さくする場合は乾燥速度を長くして、表2に示す数濃度比Ds/Ddとなるようにした。
【0134】
比較例2−5については、比較例1−5と同様の方法により二次電池を作製した。
【0135】
比較例2−6は、繊維状無機材料として酸化アルミニウム5質量部と、高分子化合物としてポリフッ化ビニリデン95質量部とを混合した後、N−メチル−2−ピロリドンに分散させることにより、ペースト状の無機材料スラリーとした。この無機材料スラリーを負極集電体の表面に均一に塗布して乾燥させることにより、繊維状無機材料を含む被膜を集電体表面上に5μmの厚さとなるように形成した。続いて、負極活物質としてMCMB92質量部と、負極導電助剤としてVGCF3質量部と、負極結着剤としてポリフッ化ビニリデン5質量部とを混合して負極合剤とした。この負極合剤をN−メチル−2−ピロリドンに分散させた負極合剤スラリーを繊維状無機材料を含む皮膜上に塗布し、乾燥することにより、繊維状無機材料を含有しない負極活物質層を形成した。なお、負極集電体表面に塗布した繊維状無機材料は、負極活物質層の5質量部に値する。これ以外は、実施例1−1と同様にして二次電池を作製した。
【0136】
[二次電池の評価]
各実施例および比較例で作製した二次電池のそれぞれについて、以下の測定を行った。
【0137】
(a)定格エネルギー密度(Wh/dm3
各実施例および比較例の二次電池について、実施例1と同様の方法により定格エネルギー密度(Wh/dm3)を算出した。
【0138】
(b)丸棒圧壊試験時の最高到達温度(℃)
各実施例および比較例の二次電池について、実施例1と同様の方法により二次電池内の最高到達温度(℃)を測定した。
【0139】
(c)放電容量維持率(%)
下記の充放電条件で二次電池を充放電させ、初回容量を測定した。そして、引き続き同様の充放電条件で、充放電の合計回数が300回となるまで充放電を繰り返し、300サイクル目の放電容量を測定した。そして、{放電容量維持率(%)=(300サイクル目の放電容量/初回容量)×100}から、放電容量維持率(%)を算出した。なお、充放電条件として、1Cの充電電流で定電流充電を行い、上限電圧4.2Vまで充電した後、4.2Vの定電圧充電に切り替えた。そして、充電開始からの充電総時間が3時間となるまで充電したのち、1Cの定電流で終止電圧3.0Vまで放電した。この「1C」とは、理論容量を1時間で放電しきる電流値である。
【0140】
以下の表2に、評価の結果を示す。
【0141】
【表2】

【0142】
表2から分かるように、繊維状無機材料を添加しない比較例2−1は、圧壊試験において二次電池が熱暴走してしまった。また、数濃度Ds/Ddが上述の範囲を下回る比較例2−2は、安全性は高いものの、放電容量維持率が非常に低くなってしまった。さらに、数濃度Ds/Ddが上述の範囲を上回る比較例2−3では、放電容量維持率は高いものの、熱暴走が起こってしまった。
【0143】
これに対し、活物質層に添加された繊維状無機材料の数濃度Ds/Ddが0.2以上1.0未満である各実施例は、比較例2−1ないし2−3と比較して、定格エネルギー密度、高い安全性および放電容量維持率を両立することができた。この結果は、繊維長やアスペクト比に関係なく得ることができた。
【0144】
これは、集電体側に繊維状無機材料が多く位置していることにより、活物質層の発熱を集電体に放熱する放熱機能が効果的に発揮されたためである。また、集電体付近に繊維状無機材料が多くなり過ぎないようにしたため、活物質層と集電体間の導電性が保たれたためである。
【0145】
また、比較例2−5のようにセパレータまたは正極および負極の界面部分に繊維状無機材料を添加した場合に比べて、活物質層に繊維状無機材料を添加した各実施例の方が高い特性を有していることが分かった。これにより、放熱機能を効果的に発揮させるために、電池反応が起こる活物質層に繊維状無機材料を分散させることが好ましいことが分かった。
【0146】
一方、比較例2−6および2−7のように、繊維状無機材料を活物質層と集電体との界面に存在させると、圧壊試験時の温度上昇は抑制できたものの、放電容量維持率が低下してしまった。繊維状無機材料によって活物質層と集電体との導電性が低下してしまい、放電容量維持率が低下してしまったと考えられる。
【0147】
[実施例3]
実施例3では、繊維状無機材料を含有させたゲル電解質を用いて二次電池を作製し、評価した。
【0148】
<実施例3−1>
[正極の作製]
正極は、実施例1−1と同様にして作製した。
【0149】
[負極の作製]
負極活物質としてMCMB92質量部と、負極導電助剤としてVGCF3質量部と、負極結着剤としてポリフッ化ビニリデン5質量部とを混合した負極合剤をN−メチル−2−ピロリドンに分散させて負極合剤スラリーとした。続いて、帯状の電解銅箔(厚さ=12μm)からなる負極集電体の両面に負極合剤スラリーを均一に塗布して乾燥させることにより、繊維状無機材料の含まれない負極活物質層を形成した。
【0150】
[ゲル電解質層の作製]
炭酸エチレン(EC):炭酸プロピレン(PC)を質量比で50:50で混合した溶媒に対して0.7mol/kgの六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を混合した電解液に、繊維状無機材料を添加した。繊維状無機材料は、繊維長(平均長さ)が100000μm、アスペクト比(平均長さ/平均径)が100のものを用いた。なお、平均長さおよび平均径の測定は、実施例1−1と同様とした。
【0151】
続いて、マトリクス高分子としてフッ化ビニリデン(PVdF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)との共重合体に、繊維状無機材料を添加した電解液を保持させて電解質組成物とした。ここで、繊維状無機材料とマトリクス高分子とが、重量比で1:1で混合されるようにした。また、マトリクス高分子中におけるヘキサフルオロプロピレン(HFP)の共重合量を6.9重量%とした。作製した正極および負極の両面に、繊維状無機材料が混合された電解質組成物を塗布し、乾燥してゲル電解質層を形成した。これ以外は実施例1−1と同様の方法で二次電池を作成した。
【0152】
<実施例3−2>ないし<実施例3−30>、および<比較例3−1>ないし<比較例3−6>
その他の実施例(実施例3−2ないし3−30)、および比較例(比較例3−1ないし3−6)は、以下の表3のようにして作製した。ゲル電解質層中における繊維状無機材料の配向度の変更は、電解質組成物の塗布速度を調整することにより、電解質組成物乾燥後の配向度が表3のようになるようにした。比較例3−4では、実施例1−4と同様に、セパレータ材料に繊維状無機材料を溶融混練して作製したセパレータを用いた。比較例3−5では、実施例1−5と同様にして負極活物質層表面に繊維状無機材料が位置するようにした。なお、比較例3−4および3−5の繊維状無機材料の添加量は、マトリクス高分子に対して重量比で2:1となるように調製した。
【0153】
[二次電池の評価]
各実施例および比較例で作製した二次電池のそれぞれについて、以下の測定を行った。
【0154】
(a)定格エネルギー密度(Wh/dm3
実施例1と同様の方法により、定格エネルギー密度を算出した。
【0155】
(b)丸棒圧壊試験時の最高到達温度(℃)
実施例1と同様の方法により、二次電池内の最高到達温度(℃)を測定した。
【0156】
以下の表3に、評価の結果を示す。
【0157】
【表3】

【0158】
表3から分かるように、ゲル電解質層に繊維状無機材料を添加した各実施例は、無機材料を添加していない比較例1−1と比較して、圧壊試験時の最高温度が120℃未満と低く、安全性が高くなることが分かった。
【0159】
各実施例ではゲル電解質中の繊維状無機材料の配向度を0.30以上0.98未満とすることにより、配向度がこの範囲を外れる比較例3−2および3−3と比較して高い安全性を有することが分かった。
【0160】
また、繊維状無機材料をセパレータに添加した比較例3−4、繊維状無機材料が負極活物質層表面に位置するようにした比較例3−5、および球状無機材料を添加した比較例3−6は、繊維状無機材料による放熱効果が低く、二次電池が熱暴走してしまった。
【0161】
ゲル電解質層に繊維状無機材料を添加する場合においても、繊維状無機材料の種類、繊維長およびアスペクト比、正極活物質材料、負極活物質材料に関わらず、効果を得られることが分かった。
【符号の説明】
【0162】
1・・・外装部材
2・・・密着フィルム
10、30、53・・・巻回電極体
11、35・・・正極リード
12、36・・・負極リード
13、31・・・正極
13A、31A・・・正極集電体
13B、31B・・・正極活物質層
14、32・・・負極
14A、32A・・・負極集電体
14B、32B・・・負極活物質層
15、33・・・セパレータ
16・・・電解質
17・・・保護テープ
18・・・繊維状無機材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極集電体の少なくとも一方の面に正極活物質層を有する正極と、
負極集電体の少なくとも一方の面に負極活物質層を有する負極と、
電解質と
を備え、
上記正極活物質層および上記負極活物質層の少なくとも一方が繊維状無機材料を含み、
上記正極集電体および/または上記負極集電体の長手軸と、上記繊維状無機材料の長軸とがなす角θによって示される式(1)の配向度<m>が0.30以上0.98未満である
非水電解質電池。
【数1】

(nは、繊維状無機材料のカウント数である。)
【請求項2】
上記繊維状無機材料は、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)の少なくとも一つを構成元素とする酸化物、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)の少なくとも一つを構成元素とする窒化物、および炭化ケイ素(SiC)の少なくとも一種からなる
請求項1に記載の非水電解質電池。
【請求項3】
上記繊維状無機材料の含有量が、正極活物質もしくは負極活物質100重量%に対して2.5重量%以上20重量%以下である
請求項2に記載の非水電解質電池。
【請求項4】
上記正極活物質層もしくは上記負極活物質層の厚みの半分よりも表面側に存在する上記繊維状無機材料の数濃度Dsと、上記正極活物質層もしくは上記負極活物質層の厚みの半分よりも上記正極集電体側もしくは上記負極集電体側に存在する上記繊維状無機材料の数濃度Ddの数濃度比Ds/Ddが、0.20以上1.00未満である
請求項3に記載の非水電解質電池。
【請求項5】
上記数濃度Dsが、上記正極活物質層もしくは上記負極活物質層の短手方向断面内に存在する繊維状無機材料の重心座標が上記正極活物質層もしくは上記負極活物質層の厚みの半分よりも表面側の領域に存在する繊維状無機材料の数であり、
上記数濃度Ddが、上記正極活物質層もしくは上記負極活物質層の短手方向断面内に存在する繊維状無機材料の重心座標が上記正極活物質層もしくは上記負極活物質層の厚みの半分よりも上記正極集電体側もしくは上記負極集電体側の領域に存在する繊維状無機材料の数である
請求項4に記載の非水電解質電池。
【請求項6】
上記電解質が繊維状無機材料を含むゲル電解質であり、
上記正極および上記負極の長手軸と、上記ゲル電解質に含まれる上記繊維状無機材料の長軸とがなす角θによって示される式(1)の配向度<m>が0.30以上0.98未満である
請求項5に記載の非水電解質電池。
【数2】

(nは、繊維状無機材料のカウント数である。)
【請求項7】
上記ゲル電解質における上記繊維状無機材料の含有量が、上記ゲル電解質中の繊維状無機材料と上記ゲル電解質に含有されるマトリクス高分子との重量比で、(1:1)から(5:1)である
請求項6に記載の非水電解質電池。
【請求項8】
正極集電体の少なくとも一方の面に正極活物質層を有する正極と、
負極集電体の少なくとも一方の面に負極活物質層を有する負極と、
電解質と
を備え、
上記正極活物質層および上記負極活物質層の少なくとも一方が繊維状無機材料を含み、
上記正極活物質層もしくは上記負極活物質層の厚みの半分よりも表面側に存在する上記繊維状無機材料の数濃度Dsと、上記正極活物質層の厚みの半分よりも上記正極集電体側もしくは上記負極活物質層の厚みの半分よりも上記負極集電体側に存在する上記繊維状無機材料の数濃度Ddの数濃度比Ds/Ddが、0.20以上1.00未満である
非水電解質電池。
【請求項9】
上記繊維状無機材料は、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)の少なくとも一つを構成元素とする酸化物、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)の少なくとも一つを構成元素とする窒化物、および炭化ケイ素(SiC)の少なくとも一種からなる
請求項8に記載の非水電解質電池。
【請求項10】
上記繊維状無機材料の含有量が、正極活物質もしくは負極活物質100重量%に対して2.5重量%以上20重量%以下である
請求項9に記載の非水電解質電池。
【請求項11】
上記電解質が繊維状無機材料を含むゲル電解質であり、
上記正極および上記負極の長手軸と、上記ゲル電解質に含まれる上記繊維状無機材料の長軸とがなす角θによって示される式(1)の配向度<m>が0.30以上0.98未満である
請求項10に記載の非水電解質電池。
【数3】

(nは、繊維状無機材料のカウント数である。)
【請求項12】
正極集電体の少なくとも一方の面に正極活物質層を有する正極と、
負極集電体の少なくとも一方の面に負極活物質層を有する負極と、
ゲル電解質と
を備え、
上記正極および上記負極の長手軸と、上記ゲル電解質に含まれる上記繊維状無機材料の長軸とがなす角θによって示される式(1)の配向度<m>が0.30以上0.98未満である
非水電解質電池。
【数4】

(nは、繊維状無機材料のカウント数である。)

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−60558(P2011−60558A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−208521(P2009−208521)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】