説明

非熱プラズマを生成するための電極列

【課題】非熱的プラズマを生成するため電極列を改良する。
【解決手段】本発明は非熱プラズマを生成するための電極列1に関するものであり、この電極列1は、導電性材料で作製された層状の第一電極2と、導電性材料で作製され第一電極2から電気的に絶縁された層状の第二電極4と、第一電極2と第二電極4との間に配置された誘電体バリア3とを備えており、これにより、誘電体バリア放電によって非熱プラズマが生成される。本発明の電極列は、第一電極2及び第二電極4のうち少なくとも一が、電極上に分布されている複数の孔を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非熱プラズマを生成するための電極列、特に患者を治療するための電極列に関する。
【背景技術】
【0002】
創傷治療のために、特に創傷をインビボで滅菌、汚染除去、又は消毒するために非熱プラズマを利用することは、例えば国際公開WO2007/031250号(特許文献1)及び国際出願番号第PCT/EP2008/003568号(特許文献2)において開示されている。
【0003】
しかしながら、これら従来のプラズマ治療用装置は複雑な電極列で構成されており、製造するには高価であり困難でもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開WO2007/031250号
【特許文献2】国際出願番号第PCT/EP2008/003568号
【特許文献3】欧州特許出願番号第EP09002200号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の主な目的は、非熱プラズマを生成するため、改良された電極列を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0006】
このような目的は、独立請求項に記載された新規の電極列によって達成される。
【0007】
本発明に係る電極列は、導電性材料で作製された層状の第一及び第二電極を備えており、これら第一及び第二電極は、第一電極と第二電極との間に配置された誘電バリアによって相互に電気的に絶縁されており、このことにより非熱プラズマが誘電バリア放電(dielectric barrier discharge:DBD)によって生成される。なお、誘電バリア放電(DBD)は当業界において既知であるので、更なる説明を要しない。本発明に係る新規の電極列は、第一電極及び第二電極のうち少なくとも一が複数の孔を備えており、これらの孔が電極上に分布していることに特徴がある。これによって、電極の孔内でプラズマが生成される。
【0008】
本発明の好ましい実施形態によれば、第一電極及び第二電極のうち少なくとも一はワイヤメッシュを備えており、上述した複数の孔はワイヤメッシュにおける個々のメッシュ間に配置されている。換言すれば、ワイヤメッシュにおける各メッシュが上記の各孔を形成している。このような配列によって得られる利点は、配列が拡張可能であり、適応自在であり、任意の形態及び形状に適合できるので、例えば創傷被覆材(詳しくは後述)としての新たな用途が実現できる。さらに、このような電極列は製造が容易であり、費用対効果が非常に高い。プラズマ医療として提唱されている従来の誘電体バリア装置と異なり、患者の皮膚に電流を通すようなことはしない。さらにまた、二重メッシュのシステムではガス透過性を持たせることができるので、ガスの流れが横方向に電極列に浸透でき、これにより、空気清浄、滅菌、及び汚染(排出)制御に有用である。
【0009】
また、上述した二重メッシュの電極システムのいくつかを数センチメートルの距離に離間させて配置することも可能であり、このような二重メッシュのシステムは相互に平行に配列することが好ましい。
【0010】
本発明の他の実施形態によれば、第一電極及び第二電極のうち少なくとも一は、上述の孔が配置された有孔プレートを備えることができる。例えば、このプレートは銅又はアルミニウムで作製することができ、プレートの孔はプレートを打ち抜き加工で得られる。また電極列の両電極は、誘電体バリアによって分離された有孔プレートで構成することも可能である。
【0011】
本発明のさらに他の実施形態によれば、第一及び第二電極のうち少なくとも一は、導電性材料で作製された平行なワイヤ又はストライプで構成できる。
【0012】
なお、上述した本発明の諸実施形態において、孔は電極面に均等に分布していることが好ましく、これによりプラズマ生成の密度も電極面に均等に分布される。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、第一電極は導電性材料で作製されたプレートを備えており、このプレートは塊状であって、いかなる孔も備えていないことが好ましい。誘電体バリアは実質的に層状でありプレート表面に形成される。例えば、誘電体バリアの厚さは0.5〜1mmの範囲とできる。本実施形態において、第二電極は、上述のワイヤメッシュを備えているか、導電性材料で作製された有孔プレートを備えている。塊状のプレートとして形成された第一電極は、10〜20kVの電圧と10〜30mAの通常電流で励起されることが好ましく、他方、ワイヤメッシュとして形成された第二電極は電気的に接地されることが好ましい。
【0014】
本発明の他の実施形態によれば、第一電極及び第二電極のいずれもワイヤメッシュを備えており、他方、誘電体バリアは、第一電極及び第二電極のうち少なくとも一におけるワイヤを包囲し電気絶縁性及び誘電性を有する材料で作製されたクラッド材を備えており、これにより第一電極が第二電極から電気的に絶縁される。換言すれば、ワイヤメッシュの個々のワイヤに関して電気絶縁性及び誘電性を有するクラッド材は誘電体バリアを形成している。第一電極及び第二電極は、好ましくは接着ボンドで相互に付着されており、これにより第一及び第二電極のワイヤメッシュは相互に物理的に接触している。
【0015】
本実施形態の一変形例においては、第一電極及び第二電極のいずれも、ワイヤメッシュの個々のワイヤを包囲し誘電体バリアを形成するクラッド材を備えることができる。
【0016】
また本実施形態の他の変形例においては、第一及び第二電極のうち一方のみが、ワイヤメッシュの個々のワイヤを包囲し誘電体バリアを形成するクラッド材を備えることができる。換言すれば、第一及び第二電極のうち一方のみがクラッド材によって電気的に絶縁されており、第一及び第二電極のうち他方はクラッド材によって絶縁されていない。
【0017】
なお、本発明は2つの電極のみを備える実施形態に限定するものではない。例えば、第三電極と他の誘電体バリアを設けることも可能であり、その結果、中央の電極の両側に2つの誘電体バリア放電列があり、これによりサンドイッチ様の配列が形成される。
【0018】
電極は相互に接着されるのが好ましいことは前述した通りである。また、誘電体バリアを第一及び第二電極のうち少なくとも一に接着させることも可能である。
【0019】
本発明の他の実施形態によれば、電極列を、キャリアガスをチューブ内に注入するために中心軸方向に心合した入口と非熱プラズマをチューブから排出するために中心軸方向に心合した出口とを有する中空のチューブ形状にすることにより、チューブ内でプラズマを生成できる。
【0020】
このようなチューブ状配列に関する一変形例において、チューブの壁面は、上述の第一及び第二電極と誘電体バリアとを有するDBD配列で構成されている。
【0021】
このような実施形態の他の変形例において、第一電極及び第二電極はチューブ内に配置される。これら第一電極及び第二電極は、チューブ内で実質的に同軸状に心合された直線状の電極であることが好ましい。第一電極及び第二電極のうち少なくとも一は、電気絶縁性と誘電性を有し、誘電体バリアを形成する材料で作製されたクラッド材で包囲されるのが好ましい。
【0022】
換言すれば、DBD配列の電極はチューブ状の電極列内に配置しても、チューブ状の電極列の壁面に配置してもよい。
【0023】
なお、電極列全体は平坦状、二次元状、平面状、及び/又は曲面状とすることもできる。換言すれば、本発明に係る新規の電極列は任意の望ましい形状に対して容易に適応できる。
【0024】
好ましくは、電極列は実質的に二次元状で平坦状かつ変形自在であって、これにより電極列全体の形状が治療対象の身体部分の輪郭に適応できる。このような配列により本発明の電極列を創傷被覆材(詳しくは後述)において使用できるようになる。
【0025】
本発明の他の実施形態によれば、電極列はさらに、電極列を被覆するカバーを備えることもできる。このカバーは、プラズマの反応種の局所強度を増大させて、滅菌に要する時間を減少させるのに利用できる。さらにこのカバーを利用して、使用されなかった反応種を濾過排出することもできる。さらにまた、このカバーを利用してプラズマをより良好に制御することもできる。最後に、このカバーを利用して電極列を減圧下で作動させることもできる。
【0026】
誘電体バリアは電気絶縁性と誘電性を有する材料で構成される。高機能を望む場合は、誘電体バリアをセラミックスで構成することが好ましい。あるいは、電極列が低機能であっても十分な場合には、誘電体バリアをポリテトラフルオロエチレンで作製することもできる。また誘電体バリアをポリエチレンテレフタレート(PET)、可撓性又は剛性のガラスセラミックス、ガラス、マイラー(Mylar:登録商標)、キャスティングセラミック、又は酸化物で作製することもできる。ただ、好ましくは誘電材料の融点をプラス100℃超としておく。
【0027】
なお、本発明は電極列を単一の部材に限定するものではない。寧ろ本発明は、非熱プラズマを生成するために前述の新規電極列を備えたプラズマ治療用の完全な装置を包含するものである。
【0028】
本発明の一実施形態によれば、このような装置は人の手に非熱プラズマを印加することによって手を滅菌するのに利用できる。このような装置は、滅菌中に一時的に手を受け入れて、内部で手にプラズマを印加するための筐体を備えている。さらに、この筐体は入口側開口部を備えており、この入口側開口部から手を筐体内に挿入できる。手を滅菌するための前記実施形態については欧州特許出願番号第EP09002200号明細書(特許文献3)において詳細に開示されているので、この出願内容を本明細書の開示を構成するものとして援用する。
【0029】
本発明による装置に関する他の実施形態によれば、電極列は、キャリアガスをチューブ内に注入するために中心軸方向に心合させた入口と、非熱プラズマをチューブから排出するために中心軸方向に心合させた出口とを有する中空のチューブ形状にすることにより、チューブ内でプラズマを生成できる。この装置は、キャリアガスをチューブ状電極列の入口に送出し、中心軸方向にチューブ状電極列に送風するためのファン又はコンプレッサを備えることが好ましい。また、装置から噴出するプラズマのジェット流を形成するために、チューブ状電極列の出口にノズルを取り付けてもよい。
【0030】
また、電極列の出口にガイド管を取り付けて、このガイド管がプラズマのジェット流を特定方向へ指向させるようにすることもできる。このガイド管は可撓性を有し、ガイド管を所望の治療位置へ指向させることによりプラズマのジェット流の方向を変更できるようにすることが好ましい。
【0031】
本発明の他の実施形態によれば、この装置は空気から汚染物質、特にバクテリア、ウイルス、又は胞子を除去して清浄するために利用できる。
【0032】
このような実施形態の一変形例において、電極列はガス透過性があり、汚染された空気は横方向に電極列を通過し、汚染された空気が電極列を通過するときに電極列が空気から汚染物質を除去して清浄にする。
【0033】
本実施形態の他の変形例において、電極列はチューブ状であり、汚染された空気は中心軸方向に電極列を通過し、汚染された空気が電極列を通過するときに電極列が空気から汚染物質を除去して清浄にする。
【0034】
さらに付言すると、本発明に係る装置は携行可能又は手持ち式にも適用できる。
【0035】
また本発明に係る装置は、電極列を電力で作動させるため、装置と統合された電池を備えることが好ましい。
【0036】
さらにまた、この新規の電極列は真菌症、例えば足白癬の治療に用いることもできる。本発明者らは、非熱プラズマを患者の皮膚面に印加すれば、このプラズマが靴下越しに印加されても、如何なる真菌もたちまち殺菌できるとの知見を得ている。したがって本発明は真菌症を治療するための新規の装置も包含するものである。この装置は入口側開口部を備えており、この開口部を介して患者は足を挿入できるようになっている。そして、この装置の筐体内でプラズマが足に対して印加される。
【0037】
プラズマ治療を他に利用可能な用途としては、化粧品の分野が考えられる。例えば、歯を白くするのに非熱プラズマが利用できる。
【0038】
最後に、本発明は被覆材、特に創傷被覆材に対象としており、上述したように患者の身体表面(例えば創傷)を被覆するための、可撓性を有する平坦な電極列を備えている。DBD電極列を創傷被覆材の中に合体させると、創傷が被覆材で被覆されているときも創傷をプラズマ治療することが可能となる。
【0039】
本発明とその具体的な特長及び利点は、以下の添付図面を参照しつつ説明する詳細な説明から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1A】本発明の好ましい実施形態に係るDBD電極列であって、第一電極としてプレートと第二電極としてワイヤメッシュとを備えているDBD電極列を示す斜視図である。
【図1B】図1Aの電極列を示す断面図である。
【図2】チューブ状電極列を示す斜視図である。
【図3】2つのワイヤメッシュを備えている電極列を示す斜視図である。
【図4】図3の電極列にカバーも付加した変形例を示す図である。
【図5】チューブ内に2つの直線状電極を備えているチューブ状電極列を示す図である。
【図6】複数のワイヤメッシュにおけるワイヤの接合部分を示す斜視図である。
【図7】絶縁された2つのワイヤの接合部分を示す斜視図である。
【図8】3つの電極を備えるサンドイッチ状DBD電極列を示す断面図である。
【図9】プラズマのジェット流を生成するための、いわゆるプラズマジェット装置を示す概略図である。
【図10】手を滅菌するための装置を示す断面斜視図である。
【図11】図1A及び図1Bの実施形態の変形例であって、ワイヤメッシュが誘電体バリア内に埋め込まれている状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1A及び図1Bは、非熱プラズマを生成するためのDBD(dielectric barrier discharge;誘電体バリア放電)電極列1に関する好ましい実施形態を示している。この電極列1は、導電性材料、例えば銅又はアルミニウムで作製されたプレート状電極2を備えている。このプレート状電極2の厚さは、0.5〜1mmの範囲である。
【0042】
また、電極列1はポリテトラフルオロエチレンで作製された誘電体バリア3も備えている。この材質からなる誘電体バリア3は、プレート状電極2の下面に施されている。
【0043】
さらに電極列1は、電極2に対向する側で誘電体バリア3に接着されているワイヤメッシュで形成された他の電極4も備えている。
【0044】
電極4は電気的に接地されており、他方の電極2は高圧電源5に電気的に接続されている。この高圧電源5は、周波数f=12.5kHz及びピークtoピーク電圧HV=18kVppで、交流信号を電極2に対して印加している。この高圧電源5が誘電放電を開始することで、メッシュ状電極4のメッシュ内でプラズマが生成される。
【0045】
図2は、非熱プラズマを生成するためのチューブ状電極列6を示している。この図は電極列6の形態を例示するために部分的に切り欠いたものである。
【0046】
このチューブ状電極列6は導電性材料で作製された中実の外側電極7を備えている。この外側電極7は中空でチューブ状としている。
【0047】
さらに電極列6は、導電性材料で作製されたメッシュで形成された内側電極8も備えている。
【0048】
外側電極7と内側電極8とは、チューブ状誘電体バリア9で仕切られている。
【0049】
外側電極7は前述したように高圧電源10に電気的に接続されており、内側電極8は電気的に接地されている。したがって、高圧電源10が誘電体バリア放電を開始し、内側電極8における個々のメッシュ内で非熱プラズマが生成される。
【0050】
図3は、図1A及び図1Bに示した電極列1に類似した二次元電極列11に関する他の実施形態を示している。
【0051】
しかしながら、この電極列11は2つのメッシュ状電極12、13を備えており、これらの電極12、13のうち少なくとも一における個々のワイヤは、電気絶縁性と誘電性を有し、電極11、12間で誘電体バリアを形成する材料で作製されたクラッド材で包囲されている。
【0052】
電極13は電気的に接地され、他方の電極12は電極列11内で誘電体バリア放電を開始する高圧電源14に接続されており、電極12、13のメッシュ内でプラズマが生成される。
【0053】
なお、電極列11は可撓性を有しているので、電極列11の形状は所望の形状に任意に適応できる。
【0054】
図4は、隣接するメッシュ状電極における個々のワイヤ15、16、17間の接合部分を示している。この実施形態において、ワイヤ16は、電気絶縁性と誘電性を有し誘電体バリアを形成する材料で作製されたクラッド材18で包囲されている。他のワイヤ15、17は絶縁されていない。
【0055】
また図5は、隣接するメッシュ状電極におけるワイヤ19、20の接合部分に関する他の実施形態を示している。この実施形態において、ワイヤ19及びワイヤ20のいずれも、電気絶縁性と誘電性を有する材料で作製されたクラッド材21、22で包囲されている。
【0056】
さらに図6は、図3で示した電極列の変形例を示しており、上述した図3に関する説明を参照できる。
【0057】
この実施形態に関する特長の一は、電極列11が付加的にカバー23も備えている点である。このカバーは多様な目的に対応できる。例えば、反応種の局所的強度を増大させたり、滅菌するための時間を低減させたり、使用されなかった反応種を濾過排出したり、プラズマに対してより良好な制御を行ったり、減圧下で作動させることができる。
【0058】
図7は、チューブ状電極列24に関する他の実施形態を示している。この電極列24は2つの直線状電極25、26を備え、それぞれの電極は、電気絶縁性と誘電性を有し誘電体バリアを形成する材料で作製されたクラッド材で包囲されたワイヤで構成されている。
【0059】
電極26は電気的に接地されており、他方の電極25は、電極列24内において誘電体バリア放電を開始する高圧電源27に電気的に接続されている。
【0060】
また図8は、非熱プラズマを生成するために好適な電極列28に関する他の実施形態を示している。この電極列28は、銅で作製された中実のプレートで形成される中央電極29を備えている。
【0061】
また、電極列28は2つの平坦状誘電体バリア30、31も備える。それぞれの誘電体バリア30、31はポリテトラフルオロエチレンで作製された平坦なプレートで構成されており、誘電体バリア30、31は中央電極29の両側に装着されている。
【0062】
さらに電極列28は、誘電体バリア30、31の外側に装着された2つのメッシュ状電極32、33も備えている。
【0063】
これらの外側電極32、33は電気的に接地されており、中央電極29は高圧電源に電気的に接続されている。
【0064】
図9は、プラズマのジェット流を生成するための、いわゆるプラズマジェット装置を示している。
【0065】
このプラズマジェット装置は、図2に示した非熱プラズマを生成するための電極列6を備えている。
【0066】
またこのプラズマジェット装置は、キャリアガスをチューブ状電極列6内に送風するためのファン34も備えている。
【0067】
さらにプラズマジェット装置は、チューブ状電極列6の出口に装着されたノズル35も備えている。このノズル35は、電極列6から噴出されるプラズマのジェット流を形成する。
【0068】
さらにまた図10には、手に非熱プラズマを印加することによって、手を滅菌するための装置36が示されている。この装置36は、滅菌する際に手を一時的に挿入するための筐体37と、この筐体37に手を挿入するための入口側開口部38を備えている。
【0069】
この筐体内には、治療領域の上下に平坦な2つの電極列39、40を設けている。
【0070】
装置36は欧州特許出願番号第EP09002200号(特許文献3)においてより詳細に開示されているので、この出願内容を本明細書の開示を構成するものとして援用する。
【0071】
さらに図11は、図1A及び図1Bに示した電極列の変形例を示しており、上述した図1A及び図1Bに関する説明を参照できる。また、対応する部品及び細部は同一の参照符号で示している。
【0072】
図11に示す電極列1に関する特長の一は、電極4が誘電体バリア3内に埋め込まれている点である。電極4のワイヤメッシュと電極2の下面との間に距離d1=1mmが設定されている。また電極4のワイヤメッシュと誘電体バリア3の外面との間には距離d2=0.1mmが設定される。距離d1を距離d2よりも大きくすることが重要である。なお、一方側のみの放電を望む場合は、埋め込まれる電極4は電極2、4の間の距離d1よりも深く埋め込む必要がある。
【0073】
また可撓性を有する電極列1を望む場合、電極2、4は共に、可撓性を有するワイヤメッシュ、又は約1cmの距離で離間された平行なワイヤで作製される。誘電体バリア3は可撓性のある材料、例えばシリコーンゴムで作製できる。
【0074】
以上、部品や特長等の具体的な配置例を参照しながら本発明を説明したが、特長に関して他に考え得るあらゆる配置例を排除するものではなく、また実際に、これら以外にも多くの実施例及び変形例は当業者にとって認識できるものである。
【符号の説明】
【0075】
1…電極列
2…電極
3…誘電体バリア
4…電極
5…高圧電源
6…電極列
7…外側電極
8…内側電極
9…誘電体バリア
10…高圧電源
11…電極列
12…電極
13…電極
14…高圧電源
15…ワイヤ
16…ワイヤ
17…ワイヤ
18…クラッド材
19…ワイヤ
20…ワイヤ
21…クラッド材
22…クラッド材
23…カバー
24…電極列
25…電極
26…電極
27…高圧電源
28…電極列
29…中央電極
30…誘電体バリア
31…誘電体バリア
32…外側電極
33…外側電極
34…ファン
35…ノズル
36…装置
37…筐体
38…入口側開口部
39…電極列
40…電極列

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)導電性材料で作製された層状の第一電極(2;7;12;29)と、
b)導電性材料で作製された層状の第二電極(4;8;13;32,33)であって、前記第一電極(2; 7; 12; 29)と電気的に絶縁されている第二電極(4;8;13;32,33)と、
c)第一電極(2;7;12;29)と第二電極(4;8;13;32,33)との間に配置され、非熱プラズマを誘電体バリア放電によって生成可能な誘電体バリア(3;9;18;21,22;30,31)と、
を備える
非熱プラズマを生成するための電極列(1;6;11;24;28;39;40)であって、
d)第一電極(2;7;12;29)及び第二電極(4;8;13;32,33)のうち少なくとも一は、電極上に分散配置された複数の孔を形成してなることを特徴とする電極列。
【請求項2】
請求項1に記載の電極列(1;6;11;24;28;39;40)であって、
a)第一電極(2;12)及び第二電極(4;8;13;32,33)のうち少なくとも一はワイヤメッシュを備え、前記複数の孔が該ワイヤメッシュのメッシュ間に配置されており、又は
b)第一電極及び第二電極のうち少なくとも一は、前記複数の孔が配置されてなる有孔プレートを備えてなることを特徴とする電極列。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電極列(1)であって、
a)第一電極(2)は導電性材料で作製されたプレートを備え、
b)誘電体バリア(3)は実質的に層状であり、プレートの表面に形成されており、
c)第二電極(4)は第一電極(2)に対向する誘電体バリア(3)の表面に形成されており、好ましくは第二電極(4)がワイヤメッシュ又は有孔プレートを備えてなることを特徴とする電極列。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の電極列(11)であって、
a)第一電極(12)及び第二電極(13)のいずれもワイヤメッシュを備えており、
b)誘電体バリア(18;21,22)は、第一電極(12)及び第二電極(13)のうち少なくとも一におけるワイヤを包囲し、電気絶縁性と誘電性を有する材料で作製されたクラッド材を備え、これにより第一電極(12)を第二電極(13)から電気的に絶縁し、
c)第一電極(12)及び第二電極(13)は、好ましくは接着ボンドによって、相互に付着されてなることを特徴とする電極列。
【請求項5】
請求項4に記載の電極列(1;6;11;24;28;39;40)であって、
a)第一電極(12)及び第二電極(13)のいずれも、電気絶縁性と誘電性を有し誘電体バリア(18;21,22)を形成するクラッド材によって包囲されており、又は
b)第一及び第二電極(12,13)のうち一方のみが、電気絶縁性と誘電性を有し誘電体バリア(18)を形成するクラッド材によって包囲されており、第一電極及び第二電極のうち他方はクラッド材によって絶縁されていないことを特徴とする電極列。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一に記載の電極列(28)であって、
さらに第三電極(32)及び他の誘電体バリア(30)を備えており、これにより、中央電極(29)の両側に2つの誘電体バリア放電列を設けてなることを特徴とする電極列。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一に記載の電極列(1;6;11;24;28;39;40)であって、
a)電極は相互に接着されており、及び/又は
b)誘電体バリア(3;9;18;21,22;30,31)は第一電極又は第二電極(4;8;13;32,33)に対して接着されており、及び/又は
c)第一及び第二電極(2,4)のうち少なくとも一方は誘電体バリア(3)内に埋め込まれてなることを特徴とする電極列。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一に記載の電極列(6;24)であって、
キャリアガスをチューブ内に注入するための中心軸方向に心合させた入口と、該チューブから非熱プラズマを排出するための中心軸方向に心合した出口とを有する中空チューブの形状をなしており、これによりチューブ内でプラズマを生成可能としてなることを特徴とする電極列。
【請求項9】
請求項8に記載の電極列(6)であって、
a)第一電極(25)及び第二電極(26)はチューブ内に配置されており、及び/又は
b)第一電極(25)及び第二電極(26)は、チューブ内において実質的に同軸状に心合された直線状電極であり、及び/又は
c)第一電極(25)及び第二電極(26)のうち少なくとも一方は、電気絶縁性と誘電性を有し誘電体バリアを形成する材料で作製されたクラッド材によって包囲されてなることを特徴とする電極列。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一に記載の電極列(1;6;11;24;28;39;40)であって、実質的に、
a)平坦状であり、及び/又は
b)二次元状であり、及び/又は
c)平面状であり、又は
d)曲面状であることを特徴とする電極列。
【請求項11】
請求項10に記載の電極列(11)であって、
実質的に二次元状であって変形可能であり、これにより電極列全体の形状が治療対象の身体部分の輪郭に適応可能としてなることを特徴とする電極列。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一に記載の電極列(11)であって、さらに、
該電極列(11)を被覆しているカバー(23)を備えており、該カバー(23)は、
a)反応種の局所的強度を増大させ、滅菌に要する時間を減少させ、及び/又は
b)使用されなかった反応種を濾過排出し、及び/又は
c)プラズマに対してより良好な制御を行い、及び/又は
d)減圧下で作動するように適応されてなることを特徴とする電極列。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一に記載の電極列(1;6;11;24;28;39;40)であって、誘電体バリア(3;9;18;21,22;30,31)は、
a)ポリテトラフルオロエチレン
b)セラミックス
よりなるグループから選択された材料で構成されてなることを特徴とする電極列。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一に記載された、非熱プラズマを生成するための電極列(1;6;11;24;28;39;40)を備えたプラズマ治療用装置(36)。
【請求項15】
請求項14に記載のプラズマ治療用装置(36)であって、
a)非熱プラズマを使用者の手に印加することによって手を滅菌するのに適応され、
b)滅菌の際に手を一時的に挿入させ、内部で手にプラズマを印加するための筐体(37)を備え、
c)該筐体(37)は、入口側開口部(38)を通過して筐体(37)内に手を挿入するための入口側開口部(38)を備えてなることを特徴とするプラズマ治療用装置。
【請求項16】
請求項14に記載のプラズマ治療用装置であって、
a)前記電極列(6)は、キャリアガスをチューブ内に注入するための中心軸方向に心合させた入口と、チューブから非熱プラズマを排出するための中心軸方向に心合させた出口とを有する中空チューブの形状をなしており、これによりチューブ内でプラズマを生成可能であり、
b)前記装置は、キャリアガスを電極列(6)の入口に送風し中心軸方向に電極列(6)に沿って通過させるためのファン(34)を備え、及び/又は
c)装置から噴出するプラズマのジェット流を形成するために、ノズルが電極列(6)の出口に装着され、及び/又は
d)プラズマのジェット流を特定方向に指向させるために、ガイド管が電極列(6)の出口に装着され、及び/又は
e)該ガイド管は可撓性を有しており、これによりガイド管を所望の治療箇所に指向させることによってプラズマのジェット流の方向を変更可能としてなることを特徴とするプラズマ治療用装置。
【請求項17】
請求項14に記載のプラズマ治療用装置であって、空気から汚染物質、特にバクテリア、ウイルス、又は胞子を除去するよう適合されてなることを特徴とするプラズマ治療用装置。
【請求項18】
請求項17に記載のプラズマ治療用装置であって、
a)電極列(1;6;11;24;28;39;40)はガス透過性であり、
b)汚染された空気は横方向に電極列(1;6;11;24;28;39;40)を通過し、これにより汚染された空気が電極列を通過する際に電極列(1;6;11;24;28;39;40)が空気から汚染物質を除去して清浄にしてなることを特徴とするプラズマ治療用装置。
【請求項19】
請求項17に記載のプラズマ治療用装置であって、
a)電極列(1;6;11;24;28;39;40)はチューブ状であり、
b)汚染された空気は中心軸方向に電極列を通過し、これにより汚染された空気が電極列を通過するときに電極列が空気から汚染物質を除去して清浄にしてなることを特徴とするプラズマ治療用装置。
【請求項20】
請求項14〜19のいずれか一に記載のプラズマ治療用装置であって、
a)手持ち型又は携行型であり、及び/又は
b)電極列を作動させるために、統合された電池を備えてなることを特徴とするプラズマ治療用装置。
【請求項21】
患者の身体表面を被覆するために、請求項1〜13のいずれか一に記載の電極列(11)を備えた被覆材(11)、特に創傷被覆材。
【請求項22】
請求項21に記載の被覆材であって、電極列(11)が可撓性を有しており、これにより電極列の形状を患者の身体表面に適応可能としてなることを特徴とする被覆材。

【図1B】
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【図2】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図1A】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図10】
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【公表番号】特表2012−518256(P2012−518256A)
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−550419(P2011−550419)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【国際出願番号】PCT/EP2009/001851
【国際公開番号】WO2010/094304
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(501497655)マックス プランク ゲゼルシャフト ツゥアー フェデルゥン デル ヴィッセンシャフテン エー フォー (10)
【Fターム(参考)】