説明

非破壊検査治具

【課題】配管ベンド部及びその前後の直管部に対して、容易にしかも短時間で一定の精度を確保した再現性のある非破壊検査を行うこと。
【解決手段】配管を非破壊検査するための探触子を装着した探触子ホルダ21が配管ベンド部12及び配管直管部13の長手方向及び周方向に移動可能であり、第1のリンク18は配管固定部17の支持端部で支持され、配管ベンド部12の長手方向の走査支点位置で回動自在であり、第2のリンク19は第1のリンク18との関節部25及び探触子ホルダ保持部21との自由端部26で回動自在であり、探触子ホルダ保持部20が配管ベンド部12の長手方向に回動するときは、第2のリンク19は回動案内部28に案内されて配管ベンド部12の長手方向に移動し、ロック機構部30は探触子ホルダ保持部20と第2のリンク19との間の回動をロックする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、探触子を搭載して被検査体の表面を走査して被検査体を外部から非破壊検査するための非破壊検査治具に関する。
【背景技術】
【0002】
発電プラントのドレンラインなどの配管はベンド部(曲がり部)を有し、配管を流れる流体の方向を変えている。配管のベンド部は、エロージョン・コロージョンなどにより内部減肉が発生し易く、内部減肉が進行すると内部流体の漏洩に至る場合がある。
【0003】
エロージョン・コロージョンは、腐食疲労と同じように機械的作用による浸食(erosion)と化学的作用による腐食(corrosion)との相互作用によって起きる減肉現象である。エロージョンは、流体が材料に繰り返し衝突することにより表面が機械的に損傷を受け、その一部が脱離していく現象であり、コロージョンはエロージョンに対して化学的に受ける損傷全般を指す。
【0004】
このようなエロージョン・コロージョンによる減肉現象に対して、超音波を用い配管の定点の肉厚測定による減肉管理を行っているが、小口径配管のベンド部は、その曲率形状のため精度のある探傷結果を得ることが難しい。特に、小口径配管のベンド部がソケットエルボで形成されている場合には、ソケットエルボは外観形状が複雑であるので、そのベンド部の探傷はほとんど行われていない。そこで、通常は直近の直管部の検査結果にて代替えし、ベンド部の減肉の評価を行っている。
【0005】
ここで、配管のベンド部を探傷するものとして、エルボを含む配管上に軌道を設定し、この軌道に沿って移動体を移動させ、その移動体の軌道と交差する方向に探傷アームを配置し、被検査体の被検査面に垂直な面内で回転可能に取り付けるようにしたものがある(特許文献1参照)。この探傷装置は、配管の直管とエルボとの溶接線を基準として探触子の距離を求め、エルボの探傷位置を特定しつつ探傷する。
【0006】
また、探傷すべき配管の曲り部の外面に沿って曲線状に配列し得る複数個のセグメントを連結部によって一定角度範囲の動作を許容し得る状態で連結するとともに、セグメントの少なくともいずれか一つに配管のき裂を渦電流によって検査する渦電流プローブを配置させ、セグメントを配管の外面に接して走行させながら、配管の探傷を行うようにしたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開昭61−223510号公報
【特許文献2】特開2005−156184号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1のものでは、直管部とベンド部とを検査できるが、構造が複雑なため小口径配管のベンド部に適用するのが困難であったり、直管部を長く検査するために探傷アームを長くするとベンド部での軸方向の検査距離が短くなってしまい、局所的な内面減肉を見落とす可能性がある。なお、構造的に軸方向90°の領域をすべて検査することは難しい。
【0008】
また、特許文献2のものでは、配管ベンド部外面(背面)を走査する場合、2つのプローブを対向位置に設置する必要があり装置が大型化して扱いにくく、かつ軸方向への移動を想定しているために周方向にいつでも移動できる構造ではない。また、周方向へ移動する場合には車輪を周方向に滑らす必要がある。車輪を球にすれば、周・軸方向に移動できるが、そうした場合、軸方向に移動する際、周方向へのぶれを保証しきれていないため、検査ごとに微妙なずれが生じてしまい、同じ位置を検査できる保証がない。
【0009】
そこで、本出願人は、配管のベンド部を跨いで探触子を配管の外周面に当接させ、探触子を装着する探触子ホルダを保持した探触子ホルダ保持部を配管のベンド部の長手方向に回動させて探触子を配管のベンド部の外周面長手方向に摺動走査させるとともに配管のベンド部の周方向にも摺動走査させて、小口径の配管のベンド部に対して、容易にしかも短時間で非破壊検査を行うことができる非破壊検査治具及び装置を開発した(特願2006−35412)。
【0010】
しかし、配管のベンド部の長手方向及び周方向の非破壊検査を行うことができるが、配管ベンド部の前後の直管部を非破壊検査することができない。従って、配管ベンド部の下流側直管部の非破壊検査を行うには、配管ベンド部の検査とは別に配管直管部の検査を行わなければならないので、非破壊検査の作業量が増えることになる。例えば、日本機械学会(JSME)等の規格では、配管ベンド部及びその下流側直管部の検査箇所が定められている場合もあり、配管ベンド部及びその下流側直管部の非破壊検査を簡便に行えることが望ましい。
【0011】
本発明の目的は、配管ベンド部及びその前後の直管部に対して、容易にしかも短時間で一定の精度を確保した再現性のある非破壊検査を行うことができる非破壊検査治具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の発明に係わる非破壊検査治具は、配管を非破壊検査するための探触子を装着する探触子ホルダを保持した探触子ホルダ保持部と、配管ベンド部を跨いで前後の配管直管部で配管の外周面に当接して固定部材で固定される配管固定部と、一方端が前記配管ベンド部の長手方向の走査支点位置となるように前記配管固定部に回動自在に支持された第1のリンクと、一方端が前記第1のリンクの他方端に回動自在に取り付けられ他方端が前記探触子ホルダ保持部に回動自在に取り付けられた第2のリンクと、前記探触子ホルダ保持部が前記配管ベンド部の長手方向に回動するとき前記第2のリンクの他方端に設けられた案内摺動部と係合し前記第2のリンクの他方端の前記配管ベンド部の長手方向の移動を案内する回動案内部と、前記探触子ホルダ保持部が前記配管ベンド部に位置するときは前記探触子ホルダ保持部と前記第2のリンクとの間の回動をロックし前記探触子ホルダ保持部が前記配管ベンド部の位置を外れたときは前記探触子ホルダ保持部と前記第2のリンクとの間の回動を許可するロック機構部とを備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項2の発明に係わる非破壊検査治具は、請求項1の発明において、前記探触子ホルダ保持部が前記配管ベンド部に位置するときは、前記配管固定部と前記第1のリンクとの支持端部が走査支点となって回動し、前記探触子ホルダ保持部を前記配管ベンド部の外周面長手方向に摺動走査させ、一方、前記探触子ホルダ保持部が前記配管ベンド部の位置を外れたときは、前記第1のリンクとの支持端部が走査支点、前記第1のリンクと前記第2のリンクとの関節部が回動支点、前記第2のリンクと前記探触子ホルダ保持部との自由端部が回動支点となって、前記探触子ホルダ保持部を前記配管直管部の外周面長手方向に摺動走査させることを特徴とする。
【0014】
請求項3の発明に係わる非破壊検査治具は、請求項1または2の発明において、前記探触子ホルダ保持部は、前記探触子ホルダが前記配管の外周面の周方向に摺動走査可能となるように前記探触子ホルダを保持するように構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、配管固定部に回動自在に取り付けられる第1のリンクと探触子ホルダ保持部に回動自在に取り付けられる第2のリンクとを回動自在に取り付けたので、第1のリンク及び第2のリンクにより、配管ベンド部では探触子ホルダ保持部が回転中心に向かう長手方向及び周方向に摺動走査でき、配管直管部に対しても所定の長さ範囲において探触子ホルダ保持部を長手方向及び周方向に摺動走査できる。また、検査治具を1回配管にセットするだけで検査員の検査技量によることなく同じレベルで高精度な検査ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は本発明の実施の形態に係わる非破壊検査治具に超音波探触子を装着した超音波非破壊検査装置を配管ベンド部に適用した場合の構成図、図2は非破壊検査の検査対象部位の構造図、図3は図1の矢印A1方向から見た矢視図、図4は図2の矢印B1方向から見た矢視図である。
【0017】
図2において、本発明の実施の形態での非破壊検査の検査対象部位は、配管ベンド部がソケットエルボ11であり、そのベンド部12及び前後の直管部13である場合を示している。ソケットエルボ11は流体の流れ方向を変えるベンド部12と他の配管と連結するためのソケット部14とを有し、このソケット部14と他の配管の直管部13とは溶接部15で連結されている。そして、ソケットエルボ11のベンド部12の背側及びベンド部12及び前後の直管部13が検査対象部位となり、そのベンド部12の背側の長手方向(矢印S1方向)及び直管部13の長手方向(矢印S2)に後述の探触子を走査して非破壊検査を行う。また、図4に示すように、ベンド部12の外周面の周方向(矢印S3方向)及び直管部13の外周面の周方向(矢印S4方向)にも後述の探触子を走査して非破壊検査を行う。
【0018】
図1に示すように、非破壊検査治具16は、検査対象部位であるソケットエルボ11およびその前後の配管直管部13の外周面の長手方向(矢印S1、S2方向)を移動できるように、ソケットエルボ11の前後の配管直管部13の外周面に装着される。
【0019】
すなわち、非破壊検査治具16は、配管固定部17に第1のリンク18及び第2のリンク19を介して探触子ホルダ保持部20を取り付け、その探触子ホルダ保持部20に、探触子を装着した探触子ホルダ21を保持して構成される。
【0020】
配管固定部17は、各々の先端部がソケットエルボ11のベンド部12及びソケット部14を跨いだ前後の配管直管部13の所定箇所に位置するように略L字状に形成され、各々先端部には取付具22a、22bが設けられている。取付具22a、22bは配管直管部13の外周面に当接し固定部材23a、23bで配管に固定される。
【0021】
すなわち、ソケットエルボ11のベンド部12及びソケット部14を跨いで配管固定部17の取付具22a、22bを配管直管部13の外周面に当接させ、その取付具22a、22bを固定部材23a、23bで固定する。図1では固定部材23a、23bとして固定バンドを用いた場合を示しているが、固定部材23a、23bとしてビスを用い、取付具22a、22bをビスで止めるようにしてもよい。
【0022】
第1のリンク18は、その一方端が配管固定部17に支持端部24で回動自在に支持され、他方端が第2のリンク19と関節部25で回動自在に取り付けられている。第1のリンク18と配管固定部17との支持端部24は、配管固定部17が配管の直管部13に取り付けられたときに、ソケットエルボ11のベンド部12の長手方向の走査支点位置となる。
【0023】
また、第2のリンク19の他方端は、探触子ホルダ保持部20と自由端部26で回動自在に取り付けられている。また、その第2のリンク19の他方端には案内摺動部27が設けられている。この案内摺動部27は、配管固定部17の屈曲部に設けられた回動案内部28に案内されて、第2のリンク19の他方端をソケットエルボ11のベンド部12の長手方向に移動させるものである。
【0024】
さらに、探触子ホルダ保持部20にはロック機構部30が設けられている。ロック機構部30は、探触子ホルダ保持部20が配管ベンド部12に位置するときは探触子ホルダ保持部20と第2のリンク19との間の回動をロックし、探触子ホルダ保持部20が配管ベンド部13の位置を外れたときは、探触子ホルダ保持部20と第2のリンク19との間のロックを解除するものである。
【0025】
このロック機構部30は、ロックがかけられているとき(探触子ホルダ保持部20が配管ベンド部12に位置するとき)は、第1のリンク18と第2のリンク19との関節部25の回動動作もロックされる。これは、第2のリンク19の案内摺動部27が回動案内部28に案内されて移動し、第2のリンク19の他方端の移動方向がソケットエルボ11のベンド部12の長手方向に拘束されるからである。つまり、第1のリンク18と第2のリンク19とが重なった状態では、第1のリンク18と第2のリンク19とは支持端部24で連動して回動する。一方、ロックが解除されている状態では、第1のリンク18と第2のリンク19との関節部25は回動自在となる。図1ではロックが解除された状態を示している。ロック機構部の詳細については後述する。
【0026】
次に、図3に示すように、探触子ホルダ保持部20は扇形に形成され、その扇形部の案内孔29に案内されて、探触子34を装着した探触子ホルダ21がソケットエルボ11のベンド部12及び配管直管部13の外周面の周方向(矢印S3、S4方向)にも摺動走査可能となっている。従って、探触子ホルダ保持部20に保持された探触子ホルダ21は、ソケットエルボ11のベンド部12の外周面の周方向及び配管直管部13の外周面の周方向(矢印S3、S4方向)にも移動可能となり、探触子34はこれらの外周面の周方向も探傷可能となっている。
【0027】
図3では、探触子ホルダ保持部20が配管ベンド部12に位置する場合を示しており、この状態では、第2のリンク19の他方端の案内摺動部27が配管固定部17に設けられた回動案内部28に案内されて、第2のリンク19の他方端を移動案内する。また、この状態では、ロック機構部30が探触子ホルダ保持部20と第2のリンク19との間をロックし、第2のリンク19と探触子ホルダ保持部20との自由端部26の回動をロックする。
【0028】
図5は第2のリンク19の側面図である。第2のリンク19に一方端には第1のリンク18と回動自在に取り付けられる関節部25が形成され、他方端には探触子ホルダ保持部20と回動自在に取り付けられる自由端部26が形成される。そして、第2のリンク19の自由端部26の近傍には、配管固定部17に設けられた回動案内部28に係合する案内摺動部27が設けられ、また、ロック機構部30のロックピンが挿入されるロック孔31が設けられている。
【0029】
図6は探触子ホルダ保持部20と第2のリンク19との間のロック機構部30の詳細図であり、図6(a)はロックがかけられた状態(探触子ホルダ保持部20が配管ベンド部12に位置する状態)の説明図、図6(b)はロックが解除された状態(探触子ホルダ保持部20が配管ベンド部12の位置を外れた状態)の説明図である。
【0030】
図6(a)に示すように、ロック機構部30はロックピン32とバネ33とを有し、ロックがかけられた状態ではロックピン32の一方端が回動案内部28に当接してバネ33を圧縮しロックピン32の他方端が第2のリンクのロック孔31に挿入されて、自由端部26での第2のリンク19と探触子ホルダ20との回動をロックする。一方、図6(b)に示すように、ロックが解除された状態ではロックピン32の一方端が回動案内部28から外れてバネ33が伸張し、ロックピン32の他方端が第2のリンクのロック孔31から抜け出し、自由端部26での第2のリンク19と探触子ホルダ20とのロックを解除する。
【0031】
図7はロック機構部30の動作状態の説明図であり、図7(a)はロックが解除された状態、図7(b)はロック解除状態からロック状態への移行状態、7(c)はロック状態をそれぞれ示している。
【0032】
探触子ホルダ保持部20が配管ベンド部12の位置を外れた状態ではロックが解除されている状態であり、図7(a)に示すように、ロックピン32の一方端が回動案内部28から外れてバネ33が伸張し、ロックピン32の他方端が第2のリンクのロック孔31から抜け出した状態である。この解除状態では、第2のリンク19と探触子ホルダ20との自由端部26が回動自在の状態である。
【0033】
探触子ホルダ保持部20が配管ベンド部12の位置近傍に到達すると、図7(b)に示すように、ロック機構部30のロックピン32の一方端が回動案内部28に当接し始め、ロック機構部30が図7(b)の上方から下方に力が加えられると、ロックピン32の一方端がテーパ状に形成されていることから、回動案内部28に当接して滑りながら図7(b)の左方向に移動し始める。これにより、バネ33を圧縮しながら、ロックピン32の他方端が第2のリンク19のロック孔31の入口に達し、さらに、ロック機構部30が図7(b)の上方から下方に力が加えられると、図7(c)に示すように、ロックピン32の他方端が第2のリンク19のロック孔31に挿入され、ロックピン32の一方端が回動案内部28に係止する。これにより、ロック状態となる。
【0034】
次に、非破壊検査治具16の動作について説明する。図8は探触子ホルダ保持部20が配管ベンド部12に位置する場合の状態図である。まず、検査対象部位であるソケットエルボ11の近傍に非破壊検査治具16を装着する。非破壊検査治具16の装着は、ソケットエルボ11のベンド部12に接続された配管直管部13の外表面に配管固定部17で固定する。その際に、配管固定部17と第1のリンクとの支持端部24が、探触子ホルダ保持部20の配管ベンド部12の長手方向の走査支点位置となるように配置する。
【0035】
この状態では、ロック機構部30により、探触子ホルダ保持部20と第2のリンク19との間の回動がロックされ、第2のリンク19の案内摺動部27が回動案内部28に案内されて移動するので、第1のリンク18と第2のリンク19との関節部25の回動動作もロックされる。
【0036】
従って、探触子ホルダ保持部20を配管ベンド部12の外周面長手方向に摺動走査させると、配管固定部17と第1のリンク18との支持端部24が走査支点となって回動する。この場合、探触子ホルダ21に、例えば、超音波探触子を装着しておき、配管ベンド部12の外周面長手方向の探傷を行う。また、探触子ホルダ保持部20の案内孔29に沿って配管ベンド部12の周方向に探触子ホルダ20を移動させて、配管ベンド部12の周方向の探傷を行う。
【0037】
次に、配管の直管部13の探傷を行うには、図9に示すように、探触子ホルダ保持部20を配管ベンド部12の端部まで回動して移動させる。そして、さらに、図9の左方向に探触子ホルダ保持部20を移動させると、探触子ホルダ保持部20が配管ベンド部12の位置から外れる。これにより、ロック機構部30のロックが解除され、また、第2のリンク19の案内摺動部27が回動案内部28から外れるので、探触子ホルダ保持部20と第2のリンク19との自由端部26及び第1のリンク18と第2のリンク19との関節部25の回動動作が可能となる。
【0038】
そして、探触子ホルダ保持部20を図9の左上方に持ち上げてソケット部14を通り越えて、図1に示すように、探触子ホルダ保持部20を配管直管部13に位置させる。
【0039】
この状態で、探触子ホルダ保持部20を配管直管部13の外周面長手方向に摺動走査させると、探触子ホルダ保持部20と第2のリンク19との自由端部26及び第1のリンク18と第2のリンク19との関節部25が走査支点となって回動し、配管直管部13の外周面長手方向の探傷を行う。また、探触子ホルダ保持部20の案内孔29に沿って配管直管部13の周方向に探触子ホルダ20を移動させて、配管直管部13の周方向の探傷を行う。ソケットエルボ11のベンド部12及び配管直管部13のほぼ全領域について非破壊検査を行うことができる。
【0040】
このように、探触子ホルダ21を保持した探触子ホルダ保持部20は、ソケットエルボ11のベンド部12に位置するときは、配管固定部17と第1のリンク18との支持端部24、探触子ホルダ21を保持した探触子ホルダ保持部20により、探触子をソケットエルボ11のベンド部12の長手方向の外周面に摺動可能としている。
【0041】
また、探触子ホルダ保持部20は、配管直管部13に位置するときは、配管固定部17と第1のリンク18との支持端部24、第1のリンク18と第2のリンク19との関節部25、第2のリンク19と探触子ホルダ保持部20との自由端部26により、探触子を配管直管部13の長手方向の外周面に摺動可能としている。
【0042】
以上の説明では、配管ベンド部がソケットエルボ11である場合について説明したが、突合わせ溶接式エルボの場合にも適用できることは言うまでもない。また、第1のリンク18と配管固定部17との支持端部24、第1のリンク18と第2のリンク19との関節部25、第2のリンク19と探触子ホルダ保持部20との自由端部26に回動量を測定する位置検出器を設け、また、探触子ホルダ保持部20に案内孔29の移動量を測定する位置検出器を設け、これら位置検出器からの検出信号を信号処理装置に入力して、探触子34の移動位置を検出するようにしてもよい。位置検出器からの位置検出信号と、探触子34で計測された計測データ信号とを信号処理装置に入力し、計測データ信号を配管の検出位置に対応させることにより、計測データを検査対象の探傷画像データとして、探触子位置に対応づけて計測できるので、配管の探傷を精度良く行うことができる。
【0043】
本発明の実施の形態によれば、配管ベンド部12両端の配管直管部13の所定位置に配管固定部17で非破壊検査治具16を取り付け、配管固定部17に第1のリンク18を設けるとともに、第1のリンク18と探触子ホルダ保持部20との間に第2のリンク19を設けたので、配管ベンド部12だけでなく配管直管部13においても、広い範囲で探傷検査を行うことができる。また、探触子ホルダ保持部20は、配管ベンド部12や配管直管部13の長手方向だけでなく、周方向にも探触子を移動できるので、検査対象領域のほぼ全域を探傷検査できる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施の形態に係わる非破壊検査治具に超音波探触子を装着した超音波非破壊検査装置を配管ベンド部に適用した場合の構成図。
【図2】本発明の実施の形態に係わる非破壊検査治具による非破壊検査の検査対象部位の構造図。
【図3】図1の矢印A1方向から見た矢視図。
【図4】図2の矢印B1方向から見た矢視図。
【図5】本発明の実施の形態における第2のリンクの側面図。
【図6】本発明の実施の形態における探触子ホルダ保持部と第2のリンクとの間のロック機構部の詳細図。
【図7】本発明の実施の形態におけるロック機構部の動作状態の説明図。
【図8】本発明の実施の形態における探触子ホルダ保持部が配管ベンド部に位置する場合の状態図。
【図9】本発明の実施の形態における探触子ホルダ保持部が配管ベンド部の端部に位置する場合の状態図。
【符号の説明】
【0045】
11…ソケットエルボ、12…ベンド部、13…直管部、14…ソケット部、15…溶接部、16…非破壊検査治具、17…配管固定部、18…第1のリンク、19…第2のリンク、20…探触子ホルダ保持部、21…探触子ホルダ、22…取付具、23…固定部材、24…支持端部、25…関節部、26…自由端部、27…案内摺動部、28…回動案内部、29…案内孔、30…ロック機構部、31…ロック孔、32…ロックピン、33…バネ、34…探触子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管を非破壊検査するための探触子を装着する探触子ホルダを保持した探触子ホルダ保持部と、配管ベンド部を跨いで前後の配管直管部で配管の外周面に当接して固定部材で固定される配管固定部と、一方端が前記配管ベンド部の長手方向の走査支点位置となるように前記配管固定部に回動自在に支持された第1のリンクと、一方端が前記第1のリンクの他方端に回動自在に取り付けられ他方端が前記探触子ホルダ保持部に回動自在に取り付けられた第2のリンクと、前記探触子ホルダ保持部が前記配管ベンド部の長手方向に回動するとき前記第2のリンクの他方端に設けられた案内摺動部と係合し前記第2のリンクの他方端の前記配管ベンド部の長手方向の移動を案内する回動案内部と、前記探触子ホルダ保持部が前記配管ベンド部に位置するときは前記探触子ホルダ保持部と前記第2のリンクとの間の回動をロックし前記探触子ホルダ保持部が前記配管ベンド部の位置を外れたときは前記探触子ホルダ保持部と前記第2のリンクとの間の回動を許可するロック機構部とを備えたことを特徴とする非破壊検査治具。
【請求項2】
前記探触子ホルダ保持部が前記配管ベンド部に位置するときは、前記配管固定部と前記第1のリンクとの支持端部が走査支点となって回動し、前記探触子ホルダ保持部を前記配管ベンド部の外周面長手方向に摺動走査させ、一方、前記探触子ホルダ保持部が前記配管ベンド部の位置を外れたときは、前記第1のリンクとの支持端部が走査支点、前記第1のリンクと前記第2のリンクとの関節部が回動支点、前記第2のリンクと前記探触子ホルダ保持部との自由端部が回動支点となって、前記探触子ホルダ保持部を前記配管直管部の外周面長手方向に摺動走査させることを特徴とする請求項1記載の非破壊検査治具。
【請求項3】
前記探触子ホルダ保持部は、前記探触子ホルダが前記配管の外周面の周方向に摺動走査可能となるように前記探触子ホルダを保持するように構成されたことを特徴とする請求項1または2記載の非破壊検査治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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