説明

非破壊検査装置及び非破壊検査方法

【課題】構造物の狭隘部内又は狭隘部に連通した空間内にある検査対象物の正確な画像を得ることができる非破壊検査装置及び非破壊検査方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
構造物の狭隘部210に連通した空間内に移動自在に配置されて、その空間内にある検査対象物の一部に放射線を照射する放射線照射部(X線照射部11)と、その空間内に移動自在に配置されて検査対象物の一部を撮像する放射線カメラ(X線カメラ21)と、検査対象物の一部を撮像する際に放射線照射部と放射線カメラとが所定の距離を隔てて配置されるように制御し、且つ検査対象物の一部を撮像した後それら移動させて検査対象物の他の一部を撮像するように制御する制御部30と、検査対象物の一部の画像のそれぞれを組み合わせて検査対象物全体の画像を得る画像合成部40とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電プラント、工場プラントの建造物などの構造物を非破壊検査する装置及び非破壊検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、構造物などの内部構造を検査するために、非破壊検査方法が用いられてきた。非破壊検査方法としては、たとえばX線を被検査対象物に照射して被検査対象物の内部の傷を見つけたり、外観の傷を見つけるX線透過検査法などが知られている。
【0003】
このようなX線透過検査方法を用いた装置として、X線非破壊検査装置がある(例えば特許文献1参照)。X線非破壊装置は、X線を照射するX線照射手段とX線を検出するX線検出手段とを具備しており、X線照射手段で発生させたX線を検査対象物に照射し、その検査対象物を透過したX線をX線検出手段で検出することによって検査対象物の状態を検査することができるようになっている。そして、このようなX線非破壊検査装置では、X線検出手段として、X線フィルム及びイメージングプレートなどのように読み取り装置を必要とするものや、X線イメージインテンシファイアー及びフラットパネルX線センサなどのように読み取り装置を必要としないものの2種類が用いられている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−177841号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したようなX線非破壊検査装置に用いられるX線フィルムやイメージングプレートなどは、用途に応じて自在に大きさを変えることができることから、構造物の狭隘部内にある検査対象物の検査に用いることができるという利点や、それ自体の質量が軽いことから、検査対象物の近傍に取り付けやすいという利点がある。
【0006】
しかしながら、X線フィルムは、検査対象物の近傍に取り付けられた後X線源から照射されたX線によってその一部が感光し、その後検査対象物の近傍から取り外され、感光した部分を検出することによってX線を検出するというものであり、一度使用されると再利用することができない。また、イメージングプレートも一度使用されるとイメージングプレート消去器を用いてデータを消去しなければ、再使用することができない。したがって、これらのものを用いて、検査対象物をリアルタイムで撮像したり、その場観察(X線照射と同時とまではいかないが、X線照射後直ちに検査対象物の画像を得ることができることをいう。)したりすることができないという欠点がある。
【0007】
以上のことから、リアルタイムやその場観察で検査対象物の状態を検査する必要がある場合には、X線フィルムやイメージングプレートなどが用いられたX線非破壊検査装置を用いることができないという問題があった。
【0008】
また、X線フィルムなどは、X線検出中にX線によって感光した部分が蓄積されることになるので、原子炉内のように放射線(バックグラウンド放射線)が存在する放射線雰囲気下ではその放射線により感光してしまい、得られた画像が不鮮明になってしまうという問題があった。すなわち、X線フィルムなどは、短い時間であれば放射線雰囲気下で用いられてもバックグラウンド放射線によって感光する部分の数は無視できる程度に少ないので、鮮明な画像を得ることができるが、ある程度長い間放射線雰囲気下で用いられた場合には、バックグラウンド放射線によって感光する部分が無視することができなくなる程多くなる。その結果、得られた画像が不鮮明になってしまうのである。
【0009】
それに対して、X線イメージインテンシファイアーやフラットパネルX線センサなどは、検査対象物をリアルタイムで撮像したり、その場観察したりすることができるという利点がある。
【0010】
しかしながら、市販されているこれらのものはある程度の重量を有しているので、遠隔操作する際にたとえば棒状部材の先端部に、これらのものからなる放射線センサを取り付けることによって構造物(の狭隘部)内に配置できるようにしたとしても、その棒状部材の先端部にその放射線センサの荷重がかかってその棒状部材がたわんでしまう。その結果、X線管などの放射線照射手段に対する放射線センサの位置がずれたり、放射線センサが揺れて放射線照射手段に対する位置が不安定になってしまい、得られた画像の測定誤差が大きくなってしまうという問題があった。また、市販されているX線イメージインテンシファイアーやフラットパネルX線センサのサイズは固定されており、しかもそのサイズが大きいことから、これらのものを構造物の狭隘部内に配置することができないという欠点があった。
【0011】
本発明は、上述した事情に鑑み、構造物の狭隘部内又は狭隘部に連通した空間内にある検査対象物の正確な画像を得ることができる非破壊検査装置及び非破壊検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、構造物の狭隘部内又は前記狭隘部に連通した空間内に移動自在に配置されて、前記狭隘部内又は前記空間内にある検査対象物の一部に放射線を照射する放射線照射部と、前記狭隘部内又は前記空間内に移動自在に配置されて前記検査対象物の一部を透過した放射線を受けることにより前記検査対象物の一部を撮像する放射線カメラと、前記検査対象物の一部を撮像する際に前記放射線照射部と前記放射線カメラとが所定の距離を隔てて配置されるように前記放射線照射部及び前記放射線カメラの位置を制御し、且つ前記検査対象物の一部を撮像した後前記放射線照射部及び前記放射線カメラをそれぞれ移動させて前記検査対象物の他の一部を撮像するように前記放射線照射部及び前記放射線カメラの動作を制御する制御部と、前記放射線カメラにより撮像された前記検査対象物の一部の画像のそれぞれを組み合わせて前記検査対象物全体の画像を得る画像合成部とを具備することを特徴とする非破壊検査装置にある。
【0013】
かかる第1の態様によれば、構造物の狭隘部内又は狭隘部に連通した空間内に配置された検査対象物全体を撮像することができると共に、検査対象物全体の正確な画像を得ることができる。
【0014】
本発明の第2の態様は、前記放射線照射部及び前記放射線カメラには、前記狭隘部内又は前記空間内を移動させるため移動手段がそれぞれ設けられていることを特徴とする第1の態様に記載の非破壊検査装置にある。
【0015】
かかる第2の態様によれば、容易に放射線照射部及び放射線カメラを所定の位置に配置することができる。
【0016】
本発明の第3の態様は、前記放射線が、高エネルギー放射線であることを特徴とする第1又は第2の態様に記載の非破壊検査装置にある。
【0017】
かかる第3の態様によれば、高エネルギー放射線はより高い透過性を有するので、より厚みのある検査対象物の検査に用いることができる。
【0018】
本発明の第4の態様は、前記狭隘部内又は前記空間内は放射線が存在する放射線雰囲気下にあることを特徴とする第1〜第3の何れか一つの態様に記載の非破壊検査装置にある。
【0019】
かかる第4の態様によれば、リアルタイムで放射線を検出することができる放射線カメラを用いて画像を得ているので、狭隘部内又は狭隘部に連通する空間内に放射線が存在する放射線雰囲気下においても検査対象物全体の正確な画像を得ることができる。
【0020】
本発明の第5の態様は、構造物の狭隘部内又は前記狭隘部に連通した空間内にある検査対象物の一部に、前記狭隘部内又は前記空間内に配置された放射線照射部から放射線を照射し、前記検査対象物の一部を透過した放射線を前記放射線照射部から所定の距離を隔てて前記狭隘部内又は前記空間内に配置された放射線カメラで受けることにより前記検査対象物の一部を撮像する撮像工程と、前記検査対象物の一部を撮像した後前記放射線照射部及び前記放射線カメラをそれぞれ移動させて前記検査対象物の他の一部を撮像する工程と、前記放射線カメラにより撮像された前記検査対象物の一部の画像のそれぞれを組み合わせて前記検査対象物全体の画像を得る画像合成工程とを具備することを特徴とする非破壊検査方法にある。
【0021】
かかる第5の態様によれば、構造物の狭隘部内又は狭隘部に連通した空間内に配置された検査対象物全体を撮像することができると共に、検査対象物全体の正確な画像を得ることができる。
【0022】
本発明の第6の態様は、前記放射線が、高エネルギー放射線であることを特徴とする第5の態様に記載の非破壊検査方法にある。
【0023】
かかる第6の態様によれば、高エネルギー放射線はより高い透過性を有するので、より厚みのある検査対象物の検査に用いることができる。
【0024】
本発明の第7の態様は、前記狭隘部内又は前記空間内は放射線が存在する放射線雰囲気下にあることを特徴とする第5又は第6の態様に記載の非破壊検査方法にある。
【0025】
かかる第7の態様によれば、リアルタイムで放射線を検出することができる放射線カメラを用いて画像を得ているので、狭隘部内又は狭隘部に連通する空間内に放射線が存在する放射線雰囲気下においても検査対象物全体の正確な画像を得ることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る非破壊検査装置及び非破壊検査方法によれば、構造物の狭隘部内又は狭隘部に連通した空間内に配置された検査対象物全体を撮像することができると共に、検査対象物全体の正確な画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。なお、本実施形態の説明は例示であり、本発明は以下の説明に限定されない。
【0028】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る非破壊検査装置の一例であるX線非破壊検査装置を示す概略図である。同図に示すように、本実施形態に係るX線非破壊検査装置1は、検査対象物の一部にX線を照射する機能を有するX線照射手段10と、X線照射手段10からの放射線を受けて検査対象物の一部を撮像する機能を有する撮像手段20と、X線照射手段10及び撮像手段20のそれぞれに接続されてX線照射手段10及び撮像手段20を制御する制御部30と、撮像手段20に接続されて得られた検査対象物の一部の画像をそれぞれ組み合わせて検査対象物全体の画像を得る画像合成部40とを具備している。
【0029】
X線照射手段10は、X線を照射する放射線照射部の一例であるX線照射部11と、X線照射部11に接続された棒状部材12を伸縮させてX線照射部11の鉛直方向の位置(高さ)を調整することができる支持部13と、支持部13の下方に設けられて水平方向に移動するための移動手段15とからなり、X線照射部11を三次元的に自在に配置することができるようになっている。
【0030】
X線照射部11は、構造物の狭隘部内に入ることができる程度に小型のもので、検査対象物にX線を照射することができるものであれば特に限定されず、たとえばX線管を備えたものや、高エネルギー電子ビームをターゲットに入射させることによりそのターゲットからX線を発生させる機構を備えたものなどが挙げられる。ここで、X線照射部11としては、X線を照射することができるものであれば特に限定されないが、320KeV〜1000KeVの高エネルギー放射線の一種である高エネルギーX線を照射することができるものが好ましい。高エネルギーX線はより高い透過性を有するので、高エネルギーX線を照射することができるX線照射部11を用いることにより、より厚みのある検査対象物を撮像することができる。
【0031】
棒状部材12はX線照射部11を保持することができるものであれば特に限定されず、支持部13は棒状部材12を鉛直方向に伸縮させてX線照射部11の鉛直方向の位置を調整することができるものであれば特に限定されない。
【0032】
移動手段15は、上部に載置されるX線照射部11、棒状部材12及び支持部13を水平方向に自在に移動させることができるものであれば特に限定されない。本実施形態の移動手段15は、複数のローラ16とそのローラ16を駆動するための駆動手段(図示しない)とからなっている。
【0033】
一方、撮像手段20は、検査対象物の一部を透過したX線を受け、そのX線を対応する電気信号に変換する放射線カメラの一例であるX線カメラ21と、X線カメラ21に接続された棒状部材12を伸縮させてX線カメラ21の鉛直方向の位置(高さ)を調整することができる支持部13と、支持部13の下方に設けられて水平方向に移動するための移動手段15とからなり、X線カメラ21を三次元的に自在に配置することができるようになっている。
【0034】
X線カメラ21は、構造物の狭隘部内に入ることができる程度に小型のもので、X線を検出し、そのX線を対応する電気信号に変換することができるものであれば特に限定されない。X線カメラ21としては、たとえばシンチレータとCCDカメラとを組み合わせたものなどが挙げられ、このように構成されるX線カメラ21は小型で軽量であるという特徴がある。したがって、このような小型で軽量のX線カメラ21を用いることにより棒状部材12がたわんでしまうのを防止することができるので、より正確な検査対象物の一部の画像を得ることができる。
【0035】
ここで、X線として高エネルギーX線を用いる場合には、その高エネルギーX線を十分に受けることができるX線カメラ21を用いる必要があるのはいうまでもない。たとえば、320KeVより低いエネルギーを有するX線に用いられるシンチレータよりもより厚みのあるシンチレータとCCDカメラとを組み合わせたものなどが挙げられる。なお、その他の構成要素は、X線照射手段10を構成するものと同様であるので、同符号を付して説明を省略する。
【0036】
制御部30は、X線照射手段10及び撮像手段20の動作を制御するものである。詳細は後述するが、具体的には、検査対象物の一部を撮像する際にX線照射部11とX線カメラ21とが所定の距離を隔てて配置されるようにX線照射手段10及び撮像手段20の位置を制御すると共に、検査対象物の一部を撮像した後X線照射部11及びX線カメラ21を移動させてその検査対象物の他の一部分を撮像するようにX線照射手段10及び撮像手段20の動作を制御する。
【0037】
ここで、検査対象物の一部を撮像する際にX線照射部11とX線カメラ21とが所定の距離を隔てて配置されるように制御する方法は特に限定されない。たとえば、制御部30は以下に説明するようにして制御してもよい。まず、ある地点を基準点としたデカルト座標を設定し、そのデカルト座標において、X線照射手段10及び撮像手段20が水平方向に移動した距離と、X線照射手段10の棒状部材12及び撮像手段20の棒状部材12が伸縮した状態における長さとに基づいて、X線照射部11及びX線カメラ21のそれぞれが位置する座標を求める。次に、それらの座標からX線照射部11とX線カメラ21との距離を算出し、その距離が上述した所定の間隔となるように移動手段15及び支持部13を制御してもよい。また、X線照射部11及びX線カメラ21にレーザー距離測定器などを取り付け、それを用いてX線照射部11とX線カメラ21との距離を測定し、その距離が上述した所定の間隔となるように移動手段15及び支持部13を制御してもよい。なお、制御部30としては、このような制御を行うことができるものであれば特に限定されず、たとえば一般的なパーソナルコンピュータや専用計算機などが挙げられる。
【0038】
画像合成部40は、X線カメラ21によって変換された検査対象物の一部の画像に対応する電気信号を複数組み合わせて、検査対象物全体の画像を合成することができるものである。具体的には、画像合成部40は、隣接する検査対象物の一部の画像同士を重複領域がないように重ね合わせ、最終的に検査対象物全体の画像を合成するものである。ここで、検査対象物全体の画像を合成する方法は特に限定されず、既存の様々な方法を用いることができる。画像合成部40としては、このような機能を有するものであれば特に限定されず、一般的なパーソナルコンピュータや専用計算機であってもよく、制御部30の機能を兼ねたものであってもよい。
【0039】
次に、本実施形態に係るX線非破壊検査装置を用いて構造物の狭隘部に連通した空間内にある検査対象物を検査する際の動作について図2及び図3を参照して詳しく説明する。図2は本実施形態に係るX線非破壊検査装置を用いて構造物の狭隘部に連通した空間内にある検査対象物を検査する際の動作時の状態を示す概略斜視図であり、図3はX線非破壊検査装置の動作を示すフローチャートである。
【0040】
図2に示すように、検査対象となる円柱状の検査対象物100は、2つの障害物200の間に形成される狭隘部210の上方の空間内に配置されている。なお、図示しないが、検査対象物100には狭隘部210側からしか検査装置などが近づけないようになっている。そこで、本実施形態では、このような検査対象物100を挟むように、狭隘部210内を通してその空間内にX線照射部11及びX線カメラ21を配置し、以下に説明するようにして検査対象物全体の画像を得る。
【0041】
まず、X線照射部11及びX線カメラ21を検査対象物100の所定の一部を撮像することができる位置に移動させ、その部分を撮像する(S1)。本実施形態では、図4に示すように、検査対象物100の左下の一部を撮像することができる位置にそれらを移動させ、その部分を撮像する。図4(a)はX線カメラ21側から見た際のX線カメラ21の移動軌跡を示す概略図であり、図4(b)は上方から見た際のX線照射部11及びX線カメラ21の移動軌跡を示す概略図である。
【0042】
ここで、検査対象物100の一部を撮像する際には、X線照射部11とX線カメラ21との鉛直方向の位置(高さ)は等しく、それらの間の距離はDとなっており、さらにX線カメラ21の受光面21A(図4(b)参照)はX線照射部11から照射されるX線に対して垂直になるように配置されている。以下の動作においても同様に、撮像する際には、X線照射部11とX線カメラ21の鉛直方向の位置(高さ)は等しく、それらの間の距離はDであり、さらにX線カメラ21の受光面21AはX線照射部11から照射されるX線に対して垂直になるように調整される。
【0043】
次に、検査対象物100の他の一部を撮像することができる位置にX線照射部11及びX線カメラ21を移動させる(S2)。本実施形態では、図3に示すl1だけX線照射部11及びX線カメラ21を上方に平行移動させる。なお、X線照射部11及びX線カメラ21を移動させる際に、それらを同時に移動させるようにしてもよいし、何れか一方ずつ個別に移動させるようにしてもよい。そして、その部分を撮像する(S3)。
【0044】
ここで、本実施形態では、X線照射部11及びX線カメラ21は、検査対象物100の一部を撮像する際に、上述したように、X線照射部11とX線カメラ21の鉛直方向の位置(高さ)は等しく、それらの間の距離はDであり、さらにX線カメラ21の受光面21AはX線照射部11から照射されるX線に対して垂直になるように配置されるので、X線カメラ21により得られる検査対象物100の一部の画像のそれぞれは、X線カメラ21に対して常に同じ距離Dを隔てて配置されたX線照射部11から、X線カメラ21の受光面21Aに対して垂直方向から照射されたX線を受けて得られるものとなる。したがって、これらの検査対象物100の一部の画像を合成することにより得られる検査対象物100全体の画像は、検査対象物100に沿って距離Dを隔てて配置された板状のX線源からその受光面21Aに対して垂直方向に照射されたX線を受けて得られるものと等しくなる。その結果、検査対象物100全体の正確な画像を得ることができるのである。
【0045】
一方、図5に示すように、X線を放射状に照射するX線照射部511と、そのX線を受けて撮像するX線フィルムやイメージングプレートなどからなる撮像部521とを用いて、従来から行われていたように検査対象物100全体を撮像すると、同図に示すように、X線照射部511からは放射状にX線が照射されるので、撮像部521により得られる検査対象物100全体の画像は、様々な方向から照射されたX線を撮像部521が受けて得られるものとなる。したがって、このようにして得られた検査対象物100全体の画像は、その端部に向かって行くにつれて真の画像とは異なるものとなってしまうという問題がある。しかしながら、本実施形態に係るX線非破壊検査装置1ではこのような問題が生ずることはない。
【0046】
その後、制御部30により、検査対象物100の全体を撮像したか否かが判断され(S4)、検査対象物100全体を撮像していない場合には、検査対象物100全体を撮像するまで上述したステップS2〜S4が繰り返される。なお、これらのステップを行う過程で、X線照射部11及びX線カメラ21を検査対象物100の他の一部を撮像することができる位置に移動させる必要があるが、その移動順序としてはたとえば図4(a)及び図4(b)に示すl2〜l7のような移動順序が挙げられる。このように移動させることにより効率的に検査対象物100全体の画像を得ることができる。
【0047】
そして、検査対象物100全体を撮像した場合には、画像合成部40により検査対象物100全体の画像を合成する(S5)。
【0048】
以上、説明したように、本実施形態に係るX線非破壊検査装置1によれば、小型のX線照射部11及びX線カメラ21を用いて検査対象物100の一部をそれぞれ撮像して、最終的に合成して検査対象物100全体の画像を得ることができるので、構造物の狭隘部210に連通した空間内に配置された検査対象物100全体を撮像することができると共に、正確な検査対象物100全体の画像を得ることができる。
【0049】
(他の実施態様)
実施形態1では、狭隘部210の上方の空間内に配置された検査対象物を検査する際に、X線照射部11及びX線カメラ21をその空間内に配置して検査するようにしたが、狭隘部210内に配置された検査対象物についても狭隘部210内にX線照射部11及びX線カメラ21を配置することにより同様に検査することができる。また、X線照射部11又はX線カメラ21のいずれか一方を狭隘部210の上方の空間内に配置し、他方を狭隘部210内に配置して狭隘部210内又はその空間内に配置された検査対象物を検査するようにしてもよい。
【0050】
また、実施形態1では、本発明の非破壊検査装置の一例としてX線非破壊検査装置1を説明したが、本発明はこれに限定されない。たとえば、ガンマ線などのX線以外の放射線を照射することができる放射線照射部と、対応する放射線を受けて検査対象物の一部を撮像する放射線カメラとを用いて非破壊検査装置を構成してもよい。なお、これらの放射線を用いる場合であっても、照射される放射線のエネルギーの大きさは特に限定されないが、上述したX線の場合と同様に、320KeV〜1000KeVの高エネルギー放射線を用いるのが好ましい。
【0051】
さらに、本発明の非破壊検査装置は、リアルタイムで放射線を検出することができる放射線カメラを用いて検査対象物の一部の画像を得ているので、狭隘部内又は狭隘部に連通する空間内に放射線が存在する放射線雰囲気下においても検査対象物全体の画像を正確に得ることができるという効果を奏する。なお、上述した実施形態1の場合も含めて、得られた検査対象物の画像をリアルタイムで画像化する必要はなく、その場観察を行うようにしてもよい。
【0052】
また、実施形態1では、棒状部材12、支持部13及び移動手段15を用いてX線照射部11及びX線カメラ21を移動させるようにしたが、X線照射部11及びX線カメラ21を移動させる機構はこれに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】実施形態1に係るX線非破壊検査装置を示す概略図である。
【図2】実施形態1に係るX線非破壊検査装置の動作時の状態を示す概略斜視図である。
【図3】実施形態1に係るX線非破壊検査装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】実施形態1におけるX線照射部及びX線カメラの移動軌跡を示す概略図である。
【図5】従来のX線非破壊検査装置の動作時の状態を示す概略図である。
【符号の説明】
【0054】
1 X線非破壊検査装置
10 X線照射手段
11 X線照射部
12 棒状部材
13 支持部
15 移動手段
16 ローラ
20 撮像手段
21 X線カメラ
21A 受光面
22 棒状部材
30 制御部
40 画像合成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の狭隘部内又は前記狭隘部に連通した空間内に移動自在に配置されて、前記狭隘部内又は前記空間内にある検査対象物の一部に放射線を照射する放射線照射部と、
前記狭隘部内又は前記空間内に移動自在に配置されて前記検査対象物の一部を透過した放射線を受けることにより前記検査対象物の一部を撮像する放射線カメラと、
前記検査対象物の一部を撮像する際に前記放射線照射部と前記放射線カメラとが所定の距離を隔てて配置されるように前記放射線照射部及び前記放射線カメラの位置を制御し、且つ前記検査対象物の一部を撮像した後前記放射線照射部及び前記放射線カメラをそれぞれ移動させて前記検査対象物の他の一部を撮像するように前記放射線照射部及び前記放射線カメラの動作を制御する制御部と、
前記放射線カメラにより撮像された前記検査対象物の一部の画像のそれぞれを組み合わせて前記検査対象物全体の画像を得る画像合成部と
を具備することを特徴とする非破壊検査装置。
【請求項2】
前記放射線照射部及び前記放射線カメラには、前記狭隘部内又は前記空間内を移動させるため移動手段がそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1に記載の非破壊検査装置。
【請求項3】
前記放射線が、高エネルギー放射線であることを特徴とする請求項1又は2に記載の非破壊検査装置。
【請求項4】
前記狭隘部内又は前記空間内は放射線が存在する放射線雰囲気下にあることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の非破壊検査装置。
【請求項5】
構造物の狭隘部内又は前記狭隘部に連通した空間内にある検査対象物の一部に、前記狭隘部内又は前記空間内に配置された放射線照射部から放射線を照射し、前記検査対象物の一部を透過した放射線を前記放射線照射部から所定の距離を隔てて前記狭隘部内又は前記空間内に配置された放射線カメラで受けることにより前記検査対象物の一部を撮像する撮像工程と、
前記検査対象物の一部を撮像した後前記放射線照射部及び前記放射線カメラをそれぞれ移動させて前記検査対象物の他の一部を撮像する工程と、
前記放射線カメラにより撮像された前記検査対象物の一部の画像のそれぞれを組み合わせて前記検査対象物全体の画像を得る画像合成工程と
を具備することを特徴とする非破壊検査方法。
【請求項6】
前記放射線が、高エネルギー放射線であることを特徴とする請求項5に記載の非破壊検査方法。
【請求項7】
前記狭隘部内又は前記空間内は放射線が存在する放射線雰囲気下にあることを特徴とする請求項5又は6に記載の非破壊検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−47440(P2009−47440A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−211106(P2007−211106)
【出願日】平成19年8月13日(2007.8.13)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】