説明

非粘着性塗料組成物およびその製造方法

本発明は、非粘着性塗料組成物およびその製造方法に関する。さらに詳しくは、アルミニウム、ステンレスなどの厨房器具の表面に六方晶窒化ホウ素(hBN)と塗膜型結合剤とを混合してコーティング硬化させることにより、非粘着性、耐食性、耐水性などが強化された高硬度のコーティング層を得ることができることを特徴とする、塗料組成物およびその製造方法に関する。このような本発明に係る塗料組成物を用いて厨房容器をコーティング硬化させる場合、加熱の際に有害ガスが全く発生せず、高硬度により耐食性、耐水性などの機械的物性を長期間維持し、400℃以上の高温でも非粘着性特性を発揮することができるため、厨房器具を長期間使用するときにも磨耗または変色の欠陥が発生せず、飲食物の調理の際に油飛びまたは焦げ付き現象が発生しないうえ、高い熱伝導率により省エネルギーを実現することができるという利点がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非粘着性塗料組成物およびその製造方法に係り、さらに詳しくは、例えばアルミニウム、ステンレスなどの厨房器具の表面に、潤滑性に優れた六方晶窒化ホウ素(Hexagonal Boron Nitride、hBN)と塗膜型結合剤とを混合してコーティング層を形成させることにより、非粘着性、耐熱性、耐食性および耐水性などを向上させるうえ、加熱時の熱伝導率を高めることが可能な非粘着性塗料組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、厨房容器の内外装材として用いられるコーティング剤は、耐アルカリ性、耐酸性、耐磨耗性、耐久性および耐熱性などに対して優秀性が要求されることにより、フッ素樹脂またはシリコン樹脂を主成分とする。
【0003】
前記フッ素樹脂は、テフロン(登録商標)コーティングとして多く知られているポリテトラフルオロエチレン(以下「PTFE」という)を主成分とするコーティング剤であって、韓国登録特許第0099134号にはPTFE−パーフルオロビニルエーテル共重合体とのブレンド、アクリレート系合成樹脂、および非イオン性界面活性剤を含んでなる、フローティング用フッ素樹脂コーティング組成物が開示されている。
【0004】
ところが、このようなフッ素樹脂で厨房容器をコートすると、例えば耐久性や耐腐食性などに優れるうえ、飲食物調理の際に焦げ付かない特性(以下、「非粘着性」という)があるが、加熱する場合、PTFEは、人体に有害な揮発性有機化合物(VOC)、特に過フッ化化合物(PFOA)の発生により、人体に流入すれば健康を害するおそれがある。一方、シリコン樹脂を用いた耐熱塗料の場合には、耐熱性が300℃を超過せず、低い硬度により容易に磨耗するうえ、変色するという問題点があった。
【0005】
かかる問題点を解決するための方案として、韓国登録実用新案公報第0403258号には、セラミックガラス材質のフライパンにセラミックコーティング層を形成して耐熱性と耐久性を向上させる、セラミックでコートされたセラミックガラスフライパンが開示されている。ところが、このような場合にはPTFEより非粘着(non-stick)性が著しく低下するという問題点があった。かかる問題点を解決するための方案として、上塗り層にフッ素シランやシリコンオイルなどの素材を混入して非粘着性を増加させる方法が試みられているが、このような方法においても、加熱の際に、260℃から混入素材の熱分解が行われてその性能が速く弱化し、耐久性および耐熱性が減少することにより、非粘着性特性を容易に失ってしまった。
【0006】
したがって、本発明者は、上述した先行技術の問題点を解決するために鋭意研究した結果、厨房器具の表面に、六方晶窒化ホウ素と塗膜型結合剤とを混合してコートし、硬化させることにより、加熱の際に有害ガスが全く発生せず、高硬度により耐食性、耐熱性および耐久性などの物性を長期間維持し、400℃以上の高温でも非粘着性特性を発揮する、優れた物性のコーティング組成物を開発し、本発明を完成するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国登録特許第0099134号明細書
【特許文献2】韓国登録実用新案公報第0403258号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、上述した問題点を解決するためのもので、厨房器具の表面に、六方晶窒化ホウ素(hBN)と、例えばシリカゾル、アルコキシシランなどからなる結合剤とを混合してコートした後、硬化させることにより、高硬度により耐食性や耐水性などの機械的物性を長期間維持し、400℃以上の高温でも非粘着性特性を発揮することができるため、異物の付着を防止し、飲食物を調理するときに油飛びまたは焦げ付き現象を防止することができる、非粘着性塗料組成物およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
特に、本発明で充填剤として用いられる六方晶窒化ホウ素(hBN)は、潤滑性および機械的物性に優れるうえ、窒素気流中で2100℃まで分解ガスが発生せず、熱伝導率が高いことに特徴がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明のある観点によれば、シリカゾル100重量部に対して充填剤としての六方晶窒化ホウ素(hBN)5〜60重量部、アルコキシシラン60〜120重量部、アルコール40〜130重量部、および触媒0.5〜3重量部を含んでなる、非粘着性塗料組成物を提供する。
【0011】
ここで、前記シリカゾルは、粒径10〜50nmのシリカ20〜40重量%に水60〜80重量%を混合してなり、充填剤は、六方晶窒化ホウ素(hBN)と、Al、ZrO-、SiO、MnOなどの金属酸化物およびSiC、Si、BCなどの非酸化物から選ばれた1種または2種とを混合して使用することができる。
【0012】
前記アルコールはメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールの中から1種を選択して使用し、アルコキシシランはメチルトリメトキシシラン[CHSi(CHO)]、テトラメトキシシラン[Si(CHO)]、トリメチルエトキシシラン[(CHSi(CO)]、およびテトラエトキシシラン[Si(CO)]の中から1種またはそれ以上を選択して使用する。
【0013】
本発明の他の観点によれば、六方晶窒化ホウ素(hBN)の充填剤とアルコールとを混合して2〜10時間0.5〜10μmの粒子サイズに粉砕する粉砕段階と、前記粉砕段階で粉砕した混合物にシリカゾルと触媒を添加して40〜50rpmの速度で5〜10分間混合する混合段階と、前記混合段階で混合した混合物にアルコキシシランを添加して20〜30℃で2〜15時間攪拌しながら熟成させる熟成段階とを含んでなる、非粘着性塗料組成物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、厨房器具の表面に、シリカゾル、アルコキシシランなどからなる塗膜型結合剤と潤滑性に優れた六方晶窒化ホウ素とを混合してコートした後、硬化させることにより、加熱の際に有害ガスが発生せず、高硬度により耐食性や耐水性などの機械的物性を長期間維持し、400℃以上の高温でも非粘着性特性を発揮することができるため、厨房器具を長期間使用する場合にも磨耗または変色するおそれがないうえ、飲食物の調理の際に油飛びまたは焦げ付き現象が発生せず、高い熱伝導率によりエネルギーを低減させることができる。また、本発明は、六方晶窒化ホウ素(hBN)を充填剤として添加して製造することにより、厨房器具への異物の付着を防止し、撥水性に優れるため、厨房用品の他にも紫外線遮断剤などを添加して建築用内外装材または自動車用塗料として使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る非粘着性塗料組成物について詳細に説明する。
【0016】
本発明は、シリカゾル100重量部に対して充填剤としての六方晶窒化ホウ素(hBN)5〜60重量部、アルコキシシラン60〜120重量部、アルコール40〜130重量部、および触媒0.5〜3重量部を含んでなる、非粘着性塗料組成物を提供する。
【0017】
本発明において、シリカゾルは、コーティング層の耐久性や耐磨耗性などの機械的物性および耐食性などの化学的物性を向上させる役割を果たすもので、その使用量は100重量部であることが好ましい。シリカゾルの使用量が100重量部未満であれば、シリカゾルの使用量の低下によりコーティング層の物性が低下するおそれがあり、シリカゾルの使用量が100重量部超過であれば、コーティング層の物性は向上するが、それによる効果が微弱である。
【0018】
一方、前記シリカゾルは、粒径10〜50nmのシリカ20〜40重量%に水60〜80重量%を混合して使用することが好ましいが、その混合割合は消費者の要求または製造者の必要に応じて適切に調節することができる。
【0019】
本発明で前記充填剤として用いられる六方晶窒化ホウ素(hBN)は、潤滑性に優れるため、飲食物の調理の際に油が飛んだり調理器具に飲食物が焦げ付いたりすることを防止する役割を果たすもので、シリカゾル100重量部に対して5〜60重量部使用することが好ましいが、さらに好ましくは20〜40重量部である。充填剤の使用量が5重量部未満であれば、飲食物の調理の際に調理容器に飲食物が焦げ付いたり油が飛んだりするおそれがあり、充填剤の使用量が60重量部超過であれば、潤滑性に優れるため、飲食物の調理の際に油飛びまたは飲食物の焦げ付きを防止することはできるが、その他の混合物の使用量不足によりコーティング層の寿命が低下するおそれがある。
【0020】
前記六方晶窒化ホウ素(hBN)は、粒子サイズ0.5〜10μmの粉末を使用することが好ましいが、前記粉末の粒子サイズは、消費者の要求または製造者の必要に応じて適切に調節することができる。
【0021】
前記充填剤は、六方晶窒化ホウ素(hBN)を単独で使用することもできるが、必要に応じて金属酸化物、非酸化物、またはこれらの組み合わせを混合して使用することができる。前記六方晶窒化ホウ素(hBN)と金属酸化物、非酸化物またはこれらの組み合わせとを40〜60:60〜40重量%の混合比で混合して使用することが好ましいが、さらに好ましくは50:50重量%である。
【0022】
前記金属酸化物は、AlO-、ZrO、SiO-、およびMnOの中から1種またはそれ以上を選択して使用することが好ましく、前記非酸化物は、SiC、Si、およびBCなどの中から1種またはそれ以上を選択して使用することが好ましい。
【0023】
一方、本発明で使用する六方晶窒化ホウ素(hBN)は、黒鉛炉を用いて2000℃以上で加熱して酸素、水素、炭素を除去した後、1950〜2150℃で窒素にて置換して製造される低密度の白色粉末であって、潤滑性および耐食性、耐熱性、絶縁性などの物性に優れるうえ、窒素気流中で2100℃まで分解ガスが発生しないことに特徴がある。
【0024】
窒化ホウ素(BN)は、立方晶窒化ホウ素(cBN)、ウルツ鉱型窒化ホウ素(wBN)、菱面体型窒化ホウ素(rBN)、および六方晶窒化ホウ素(hBN)の4種類が知られている。本発明では、厨房用料理器具のコーティング組成物として使用するとき、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)以上に卓越した非粘着性(Non-stick)を発揮することが可能な六方晶窒化ホウ素(hBN)と、結合剤としてのシリカゾルおよびアルコキシシランとを混合して、塗料組成物を製造することにより、厨房器具に前記塗料組成物をコートすれば長期間を使用しても磨耗または変色が発生せず、飲食物の調理の際に油飛びまたは飲食物の焦げ付き現象が発生しないうえ、高温でも有害ガスまたは有害物質の発生が全くなくて人体に無害であり、調理の際には熱伝導率が高くて燃料費が節減されるという利点がある。
【0025】
本発明において、前記アルコキシシランは、無機質結合剤を化学反応によって結合させる役割を果たすもので、シリカゾル100重量部に対して60〜120重量部使用することが好ましい。アルコキシシランの使用量が60重量部未満であれば、アルコキシシランの使用量の不足により無機質結合剤間の結合力が低下するおそれがあり、前記アルコキシシランの使用量が120重量部超過であれば、その他の結合剤の添加量に対するアルコキシシランの使用量の過多により高温でコーティング層が剥離するおそれがある。
【0026】
一方、本発明で使用されるアルコキシシランは、メチルトリメトキシシラン[CHSi(CHO)]、テトラメトキシシラン[Si(CHO)]、トリメチルエトキシシラン[(CHSi(CO)]、およびテトラエトキシシラン[Si(CO)]の中から1種またはそれ以上を選択して使用することが好ましい。
【0027】
本発明において、アルコールは、無機質充填剤を混合させる溶媒の役割を果たすもので、シリカゾル100重量部に対して40〜130重量部使用することが好ましい。アルコールの使用量が40重量部未満であれば、アルコールの使用量の低下により無機質充填剤が十分混合されないおそれがあり、アルコールの使用量が130重量部超過であれば、アルコールの使用量の過多により、無機質充填剤は十分混合させることができるが、アルコールの使用量に比べてその効果が微弱である。
【0028】
本発明で使用されるアルコールは、メチルアルコールおよびイソプロピルアルコールの中から1種を選択して使用することが好ましいが、消費者の要求または製造者の必要に応じて前記アルコールと同等以上の効果を示すものであれば、特に限定されない。
【0029】
本発明において、触媒は、無機塗料の熟成および保管性を向上させる役割を果たすもので、シリカゾル100重量部に対して0.5〜3重量部使用することが好ましい。触媒の使用量が0.5重量部未満であれば、触媒の使用量の低下により熟成時間が長くなるおそれがあり、触媒の使用量が3重量部超過であれば、塗料の安定的な使用時間が急激に短くなるおそれがある。
【0030】
本発明で使用される触媒は、塩酸、蟻酸および酢酸の中から1種を選択して使用することが好ましいが、消費者の要求または製造者の必要に応じて前記触媒と同等以上の効果を示すものであれば、特に限定されない。
【0031】
前述したように構成される本発明の塗料組成物は、必要に応じて、シリカゾル100重量部に対して顔料1〜30重量部をさらに添加して使用することができる。顔料の使用量が1重量部未満であれば、コーティング層の色相が鮮明でないおそれがあり、顔料の使用量が30重量部超過であれば、コーティング層の色相があまり明るくなるおそれがある。
【0032】
前記塗料組成物に使用される顔料は、二酸化チタン(TiO)、酸化第2鉄(Fe-)、酸化クロム(Cr)、炭素(C)、およびコバルト(Co)の中から1種を選択して使用することが好ましいが、消費者の要求または製造者の必要に応じて前記顔料と同等以上の物性を維持することができるものであれば、特に限定されない。
【0033】
本発明の塗料組成物は、コーティング層の強度およびコーティング剤の物性を向上させるために、メチルポリシロキサンのような分散剤、銀ナノゾル、アルミナゾル、ジルコニアゾルなどを必要に応じてそれぞれ1〜5重量部添加して使用することができる。
【0034】
一方、前記銀ナノゾル、アルミナゾルおよびジルコニアゾルを塗料組成物に添加する場合には、粒子サイズ10〜50nmの銀粉末、アルミナ粉末およびジルコニア粉末各5〜20重量%に水80〜95重量%を混合して使用することが好ましいが、消費者の要求または製造者の必要に応じて前記混合物の量を適切に調節して使用することができる。
【0035】
このように構成される本発明の非粘着性塗料組成物を用いて厨房容器をコートする場合、長期間使用の際にも磨耗または変色するおそれがなく、調理の際に油飛びまたは飲食物の焦げ付き現象が発生せず、高温でも有害ガスの発生が全くなくて人体に無害であるうえ、使用の際に高い熱伝導率によりエネルギーが低減できる。
【0036】
六方晶窒化ホウ素(hBN)を充填剤として添加して製造される塗料は、コーティングの際に粉塵の付着を防止し、撥水性に優れるため、厨房用品の他にも、紫外線遮断剤などを添加する場合には建築用内・外装材または自動車用塗料として使用することができるという利点がある。
【0037】
以下、本発明に係る塗料組成物の製造方法について詳細に説明する。
【0038】
本発明は、1)六方晶窒化ホウ素(hBN)の充填剤とアルコールとを混合して2〜10時間粉砕する粉砕段階と、2)前記1)粉砕段階で粉砕した混合物にシリカゾルと触媒を添加して40〜50rpmの速度で5〜10分間混合する混合段階と、3)前記2)混合段階で混合した混合物にアルコキシシランを添加して20〜30℃で2〜15時間攪拌しながら熟成させる熟成段階とを含んでなる、塗料組成物の製造方法を提供する。
【0039】
次に、本発明に係る非粘着性塗料組成物の製造方法を各工程別に詳細に説明する。
【0040】
前記1)粉砕段階は、六方晶窒化ホウ素(hBN)を含む無機充填剤をアルコールと混合させてボールミルなどの粉砕機で0.5〜10μmとなるように粉砕する段階である。このように粉砕された無機充填剤を塗料組成物に添加して厨房器具の表面にコートすると、優れた潤滑性により、飲食物の調理の際に調理器具への飲食物の焦げ付きを防止するうえ、異物の付着を防止することができる。前記六方晶窒化ホウ素(hBN)を含む無機充填剤とアルコールとの混合量は、前述したことがあるので、ここで具体的な説明を省略する。
【0041】
前記2)混合段階は、前記粉砕段階で粉砕した混合物にシリカゾルおよび触媒を添加し、混合タンクで40〜50rpmの速度で5〜10分間混合させる段階である。この際、前記攪拌速度が40rpm未満の場合または前記攪拌時間が5分未満の場合には、十分混合されないおそれがあり、前記攪拌速度が50rpm超過の場合または前記攪拌時間が10分超過の場合には、添加物は十分混合されるが、その効果が微弱である。前記シリカゾルおよび触媒の混合量は、前述したことがあるので、ここで具体的な説明を省略する。
【0042】
前記2)混合段階でシリカゾルおよび触媒を混合するとき、必要に応じてメチルポリシロキサンなどの分散剤、銀ナノゾル、アルミナゾル、ジルコニアゾルを選択的にそれぞれ1〜5重量部添加して使用することができる。
【0043】
前記3)熟成段階は、前記2)混合段階で混合した混合物にアルコキシシランを添加して20〜30℃で2〜15時間攪拌しながら熟成させる段階である。この際、攪拌温度が20℃未満の場合または攪拌時間が2時間未満の場合には、混合物が十分攪拌されないため、縮重合反応の不足によりコーティング層の結合力が低下するおそれがあり、攪拌温度が30℃超過の場合または攪拌時間が15時間超過の場合には、混合物は十分攪拌されるが、過反応により接合力が低下するおそれがある。前記アルコキシシランの混合量は、前記で既に言及したことがあるので、ここで具体的な説明を省略する。
【0044】
一方、前記方法によって製造される非粘着性塗料組成物を用いて厨房器具にコーティング層を形成させる方法は、まず、前処理済みの基材の表面に、金剛砂100〜120#を用いてサンドブラストして凸凹を形成した後、その表面に、前記塗料組成物から製造された塗料をスプレーガンによって20〜40μmの厚さで塗布してコート膜を形成し、しかる後に、200±5℃の温度で30±2分間焼結させて基材の表面にコーティング層を形成する。
【0045】
以下、本発明の内容を実施例によってさらに詳細に説明する。これらの実施例は、本発明の内容を理解するために提示されるものに過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0046】
1.非粘着性塗料組成物および試片の製造
(実施例1)
シリカゾル100重量部を基準として、まず、六方晶窒化ホウ素(hBN)60重量部にイソプロピルアルコール130重量部を混合し、6時間ボールミルで0.5〜10μmの粒子サイズに粉砕した。ここにシリカゾル100重量部と蟻酸0.5重量部を添加し、7分間混合した後、メチルトリメトキシシラン120重量部を添加し、27℃で8時間攪拌および熟成させて塗料組成物を製造した。この塗料組成物を、金剛砂100#でサンドブラストして凸凹を形成させたアルミニウム材質のフライパンの表面にスプレーガンによって30μmの厚さで塗布することにより、コーティング膜を形成した後、200℃の温度で30分間焼結させてコートした。
【0047】
(実施例2)
シリカゾル100重量部を基準として、まず、六方晶窒化ホウ素(hBN)5重量部にイソプロピルアルコール40重量部を混合し、6時間ボールミルで0.5〜10μmの粒子サイズに粉砕した。ここにシリカゾル100重量部と蟻酸3重量部を添加し、7分間混合した後、メチルトリメトキシシラン90重量部を添加し、27℃で8時間攪拌および熟成させて塗料組成物を製造した。この塗料組成物を、実施例1の方法と同様にしてアルミニウム材質のフライパンの表面にコートした。
【0048】
(実施例3)
シリカゾル100重量部を基準として、まず、六方晶窒化ホウ素(hBN)30重量部にイソプロピルアルコール90重量部を混合し、6時間ボールミルで0.5〜10μmの粒子サイズに粉砕した。ここにシリカゾル100重量部と蟻酸2重量部を添加し、7分間混合した後、メチルトリメトキシシラン60重量部を添加し、27℃で8時間攪拌および熟成させて塗料組成物を製造した。この塗料組成物を、実施例1の方法と同様にしてアルミニウム材質のフライパンの表面にコートした。
【0049】
実施例1〜3の塗料組成物で使用するシリカゾルは、粒径10〜50nmのシリカ30重量%と水70重量部とを混合させたものを使用した。
【0050】
(比較例1)
シリカゾル100重量部を基準として、六方晶窒化ホウ素(hBN)70重量部にイソプロピルアルコール150重量部を混合し、6時間ボールミルで0.5〜10μmの粒子サイズに粉砕した。ここにシリカゾル100重量部と蟻酸0.5重量部を添加し、7分間混合した後、メチルトリメトキシシラン120重量部を添加し、27℃で8時間攪拌および熟成させて塗料組成物を製造した。この塗料組成物を、実施例1の方法と同様にしてアルミニウム材質のフライパンの表面にコートした。
【0051】
(比較例2)
シリカゾル100重量部を基準として、六方晶窒化ホウ素(hBN)3重量部にイソプロピルアルコール50重量部を混合し、6時間ボールミルで0.5〜10μmの粒子サイズに粉砕した。ここにシリカゾル100重量部と蟻酸3重量部を添加し、7分間混合した後、メチルトリメトキシシラン60重量部を添加し、27℃で8時間攪拌および熟成させて塗料組成物を製造した。この塗料組成物を、実施例1の方法と同様にアルミニウム材質のフライパンの表面にコートした。
【0052】
(比較例3)
シリカゾル100重量部にイソプロピルアルコール70重量部および蟻酸2重量部を添加して7分間混合した後、メチルトリメトキシシラン100重量部を添加し、27℃で8時間攪拌および熟成させて塗料組成物を製造した。この塗料組成物を、実施例1の方法と同様にしてアルミニウム材質のフライパンの表面にコートした。
【0053】
2.測定方法
1)塗膜強度は、KS D 8303(アルミニウムおよびアルミニウム合金の陽極酸化塗装複合皮膜の測定方法)の5.9「塗膜の鉛筆硬度抵抗性試験」に基づいて測定した。
【0054】
2)耐食性は、KS D 8303(アルミニウムおよびアルミニウム合金の陽極酸化塗装複合皮膜の測定方法)の5.7「陽極酸化皮膜のキャス耐食性試験」に基づいて測定した。
【0055】
3)耐水性は、コートされたアルミニウム板を横100mm × 縦100mmのサイズに切断した後、重量を測定し、80℃のイオン交換水に入れて3時間放置した後、重量変化および外観の膨れ現象を測定し、測定の結果、重量変化と膨れがない場合には◎、若干の重量変化がある場合には○、若干の重量と膨れがある場合には△、重量変化と膨れが多い場合には×を基準として評価した。
【0056】
4)非粘着性は、170℃、190℃、210℃、230℃、250℃、および270℃で各温度別に3回にわたって卵フライを作りながら焦げ付きの程度を測定し、測定の結果、非常に優れた場合には◎、優れた場合には○、普通の場合には△、悪い場合には×を基準として評価した。
【0057】
3.測定結果および評価
前記1.によってコートさせた実施例1〜3と比較例1〜3に対して前記2.の方法によって塗膜強度、耐食性、耐水性および非粘着性を測定し、その測定結果を表1および表2に示した。
【0058】
【表1】

【0059】
表1に示すように、本発明に係る実施例1〜3は、シリカゾルやアルコキシシランなどからなる結合剤に六方晶窒化ホウ素(hBN)を混合し、コートした後、硬化させることにより、塗膜が粗密に形成され、塗膜の表面に鉛筆芯を45°に横にした状態で押さえながら均一な速度で塗膜の強度を7回測定したところ、9Hで破裂現象が発生しなかった。これに対し、比較例1および2は7H、比較例3は6Hで破裂現象が発生した。
【0060】
耐食性試験では、試験槽の温度が50℃に達したとき、塩水溶液を圧縮するための空気圧を98±10KPaを維持しながら54時間塩水溶液を一定の周期で噴霧し、腐蝕状態に応じて肉眼で観察した結果、実施例1〜3は試片に微細な痕跡が一部発見されたが、これに対し、比較例1〜3は肉眼で確認することが可能な斑点が発見された。
【0061】
耐水性試験では、コートされたアルミニウム板を横100mm × 縦100mmのサイズに切断した後、重量を測定し、80℃のイオン交換水に入れて3時間放置した後、重量変化および外観の膨れ現象を測定したところ、実施例1〜3は重量変化および剥離現象が全くなかったが、これに対し、比較例1〜2は若干の重量変化と亀裂が確認され、比較例3は六方晶窒化ホウ素(hBN)を添加しないことにより、重量変化だけでなく、肉眼で確然として確認される亀裂または皺が発見された。
【0062】
【表2】

【0063】
表2に示すように、一定の割合の六方晶窒化ホウ素を含有した実施例1〜3の場合は、卵フライを作るときに油飛びまたは焦げ付き現象がないため、非粘着性に非常に優れる。これに対し、比較例1〜2の場合は、六方晶窒化ホウ素の使用量が基準範囲より少なくあるいは多く含有されることにより、フライパンの加熱温度が上昇するにつれて焦げ付き現象が発生することを確認することができ、比較例3の場合は、六方晶窒化ホウ素を含有しないことにより、フライパンに一定の熱が加えられると、油飛びまたは焦げ付き現象がより激しいものと評価された。
【0064】
以上、本発明に係る非粘着性塗料組成物を用いた調理器具の優秀性については上記の実施例によって詳細に説明したが、本発明は、前述した構成に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を外れない範囲内において多様に置換、変形および変更させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の塗料組成物は、1)六方晶窒化ホウ素(hBN)の充填剤とアルコールとを混合して2〜10時間粉砕する粉砕段階と、2)前記1)粉砕段階で粉砕した混合物にシリカゾルと触媒を添加して40〜50rpmの速度で5〜10分間混合する混合段階と、3)前記2)混合段階で混合した混合物にアルコキシシランを添加して20〜30℃で2〜15時間攪拌しながら熟成させる熟成段階とを経て製造される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非粘着性塗料組成物において、
前記非粘着性塗料組成物は、粒径10〜50nmのシリカ20〜40重量%に水60〜80重量%を混合してなるシリカゾル100重量部に対して、六方晶窒化ホウ素(hBN)40〜60重量%と金属酸化物、非酸化物またはこれらの組み合わせ60〜40重量%とを混合した充填剤5〜60重量部、アルコキシシラン60〜120重量部、メチルアルコールまたはイソプロピルアルコール40〜130重量部、および触媒0.5〜3重量部を含んでなり、
前記金属酸化物はAlまたはZrOであり、前記非酸化物はSiまたはBCであることを特徴とする、非粘着性塗料組成物。
【請求項2】
前記アルコキシシランは、メチルトリメトキシシラン[CHSi(CHO)]、テトラメトキシシラン[Si(CHO)]、トリメチルエトキシシラン[(CHSi(CO)]、およびテトラエトキシシラン[Si(CO)]の中から1種またはそれ以上を選択して使用することを特徴とする、請求項1に記載の非粘着性塗料組成物。
【請求項3】
前記非粘着性塗料組成物は、1〜30重量部の顔料をさらに含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の非粘着性塗料組成物。
【請求項4】
前記顔料は、二酸化チタン(TiO)、酸化第2鉄(Fe)、酸化クロム(Cr)、炭素(C)、およびコバルト(Co)の中から1種またはそれ以上を選択して使用する、請求項3に記載の非粘着性塗料組成物。
【請求項5】
塗料組成物の製造方法において、
1)六方晶窒化ホウ素(hBN)40〜60重量%と金属酸化物、非酸化物またはこれらの組み合わせ60〜40重量%とを混合した充填剤と、メチルアルコールまたはイソプロピルアルコールとを混合して2〜10時間粉砕する粉砕段階と、
2)前記1)粉砕段階で粉砕した混合物に、粒径10〜50nmのシリカ20〜40重量%と水60〜80重量%とを混合してなるシリカゾルと触媒を添加し、40〜50rpmの速度で5〜10分間混合する混合段階と、
3)前記2)混合段階で混合した混合物にアルコキシシランを添加して20〜30℃で2〜15時間攪拌しながら熟成させる熟成段階とを含んでなり、
前記金属酸化物はAlまたはZrOであり、前記非酸化物はSiまたはBCであることを特徴とする、非粘着性塗料組成物の製造方法。

【公表番号】特表2011−503320(P2011−503320A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−533977(P2010−533977)
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【国際出願番号】PCT/KR2009/004081
【国際公開番号】WO2010/044535
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(510129255)
【氏名又は名称原語表記】KIM,Tae Woong
【住所又は居所原語表記】128−61,Sangbong−dong,Jungnang−gu,Seoul,131−220,Requblic of Korea
【出願人】(510129266)
【氏名又は名称原語表記】Ha,Sang Hoon
【住所又は居所原語表記】180−1,Deokke−dong,Yang−ju City,Kyonggi−do,482−050,Republic of Korea
【Fターム(参考)】