説明

非細胞毒性二酸化塩素流体

実質的に非細胞毒性である二酸化塩素溶液に関する組成物を開示する。溶液は増粘流体組成物であり得る。また、二酸化塩素溶液を含む、実質的に非細胞毒性である増粘流体組成物または溶液の作製および使用方法も開示する。低刺激の酸化組成物も開示する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
二酸化塩素(ClO2)は、+IV酸化状態の塩素の中性化合物である。これは酸化により消毒するが、塩素化しない。比較的小さい、揮発性の高エネルギー分子であり、希釈水溶液中であっても遊離基である。二酸化塩素は、亜塩素酸塩(ClO2-)に還元される、その独特な一電子移動機構により、高度に選択的な酸化物として機能する。亜塩素酸塩イオン/亜塩素酸平衡のpKaは、極端に低い(pH1.8)。これは、中性近くで見られる次亜塩素酸/次亜塩素酸塩ベースのイオン対平衡と著しく異なり、亜塩素酸塩イオンが飲料水中で優占種として存在することを示唆する。
【0002】
二酸化塩素の最も重要な物理性質の1つは、水中、特に冷水中でのその溶解度の高さである。塩素ガス含有水の加水分解とは対照的に、二酸化塩素含有水は、認められる程には加水分解されず、溶存ガスとして溶液中に残留する。
【0003】
二酸化塩素を調製するための従来の方法は、亜塩素酸ナトリウムをガス状塩素、(Cl2(g))、次亜塩素酸(HOCl)、または塩化水素(HCl)と反応させることを含む。反応は、
2NaClO2+Cl2(g)→2ClO2(g)+2NaCl [1a]
2NaClO2+HOCl→2ClO2(g)+NaCl+NaOH [1b]
5NaClO2+4HCl→4ClO2(g)+5NaCl+2H2O [1c]
である。
【0004】
反応[1a]および[1b]は、酸性媒体中で非常に速い速度で進行するため、実質的に、全ての従来の二酸化塩素生成化学作用は、pHが3.5未満である酸性生成物溶液をもたらす。また、二酸化塩素形成の動態は、亜塩素酸塩アニオン濃度中で高次であるため、二酸化塩素生成は、通常高濃度(>1000ppm)で行われ、これは、用途の使用濃度に希釈されなければならない。
【0005】
二酸化塩素は、酸性化または酸性化と還元の組み合わせのいずれかによって、塩素酸アニオンからも調整され得る。このような反応の例としては、
2NaClO3+4HCl→2ClO2+Cl2+2H2O+2NaCl [2a]
2HClO3+H224→2ClO2+2CO2+2H2O [2b]
2NaClO3+H2SO4+SO2→2ClO2+2NaHSO4 [2c]
が挙げられる。
【0006】
周囲条件で、全ての反応は、最も一般的には7〜9Nの範囲の強酸性条件を必要とする。高温度まで試薬を加熱し、生成物溶液から継続して二酸化塩素を除去することで、1N未満までの所望の酸性度に減少させることができる。
【0007】
原位置の二酸化塩素の調製方法は、「安定化二酸化塩素」と称される溶液を使用する。安定化二酸化塩素溶液は、ほとんど、または全く二酸化塩素を含有しないが、実質的に、中性またはわずかにアルカリ性のpHの亜塩素酸ナトリウムから成る。亜塩素酸ナトリウム溶液への酸の添加は、亜塩素酸ナトリウムを活性化し、二酸化塩素は、溶液の原位置で生成される。得られる溶液は、酸性である。典型的には、亜塩素酸ナトリウムの二酸化塩素への変換の程度は低く、亜塩素酸ナトリウムの実質量は、溶液中に残留する。
【0008】
国際公開第2007/079287号は、アルカリ金属塩を用いた二酸化塩素溶液の汚染は、水性二酸化塩素溶液の分解を加速することを教示する。国際公開第2007/079287号は、貯蔵安定水性二酸化塩素溶液の調製方法をさらに開示しており、溶液は、約2500ppm以下のアルカリ金属塩不純物を含有する。開示されたアルカリ金属塩不純物は、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、および硫酸ナトリウムである。
【0009】
二酸化塩素は、消毒剤並びに強酸化剤であることが知られている。殺菌、殺藻、殺真菌、漂白、および脱臭性も周知である。二酸化塩素の治療および化粧品用途が知られる。
【0010】
例えば、米国特許第6,287,551号は、ヘルペスウイルス感染治療のための二酸化塩素溶液の使用を論じている。米国特許第5,281,412号は、歯牙着色なしに歯垢および歯肉炎を防ぐ利点を提供する亜塩素酸塩および二酸化塩素組成物を記載している。
【0011】
米国特許第6,479,037号は、歯牙の白化用の二酸化塩素組成物の調製を開示しており、この組成物は、酸味料(ACD)部分を伴う二酸化塩素前駆体(CDP)部分を組み合わせることにより調製される。CDP部分は、pHが7以上の金属亜塩素酸塩の溶液である。ACDは、酸性であり、好ましくは3.0〜4.5のpHを有する。CDPは、歯牙の表面に塗布される。ACDが、次いで、金属亜塩素酸塩を活性化するためにCDP上に塗布され、二酸化塩素を産生する。接触界面のpHは、好ましくは6未満、最も好ましくは、約3.0〜4.5の範囲である。したがって、歯牙表面上の得られる二酸化塩素組成物は、酸性である。さらに、この方法は、口腔粘膜が強酸性試薬(ACD)と接触する可能性に曝される。
【0012】
しかしながら、上記の特許は全て、歯牙のエナメル質および象牙質等の軟組織および硬組織を含む生体組織に損傷を与える組成物および方法の使用を記載する。その上、多くの異なる目的に有効であるが、非増粘で粘性が低い、液状稠度の多くのこれらの溶液は、溶液の使用の可能性を制限し、多くの場合、溶液が効果的な様式で塗布されることを確実にするために、ユーザの協力を必要とする。
【0013】
生体組織が損傷されない二酸化塩素を使用するための組成物および方法が必要である。さらに、ある期間の間表面または基体に残留するために必要な稠度、およびユーザの多大な協力を必要とせずにその上で効果的であるような二酸化塩素濃度を有する、増粘二酸化塩素混合物が必要である。本開示は、これらの必要性を満たし、対処する。
【発明の概要】
【0014】
以下の要約は、広範な概要ではない。様々な実施形態の主要な要素または重要な要素を特定することも、それらの範囲を正確に記述することも意図していない。
【0015】
一態様において、低刺激性の酸化組成物を提供する。組成物は、二酸化塩素と、第2の酸化剤とを含み、組成物は、第2の酸化剤を含むが二酸化塩素を含まない参照酸化組成物と比較して低刺激性であり、参照酸化組成物は、酸化組成物と同様の性能効力を有する。ある実施形態において、第2の酸化剤は、過酸化剤である。代表的な過酸化剤は、過酸化水素である。いくつかの実施形態において、組成物は、約1質量%〜約30質量%の過酸化水素を含む。ある実施形態において、組成物は、組成物1グラム当り約0.2ミリグラム未満のオキシ−塩素アニオンを含む。ある実施形態において、組成物は、約5〜約2000ppmの二酸化塩素を含む。ある実施形態において、組成物は、約4.5〜約11のpHを有する。いくつかの実施形態において、増粘剤成分は、天然親水コロイド、半合成親水コロイド、合成親水コロイド、および粘土から成る群から選択される。ある実施形態において、増粘剤成分は、半合成親水コロイドである。代表的な半合成親水コロイドは、カルボキシメチルセルロースナトリウム等のカルボキシメチルセルロースである。
【0016】
別の態様において、二酸化塩素、過酸化成分、および水性流体を含む流体組成物が提供され、組成物は低刺激性である。代表的な過酸化剤は過酸化水素である。いくつかの実施形態において、組成物は、約1質量%〜約30質量%の過酸化水素を含む。ある実施形態において、組成物は、組成物1グラム当り約0.2ミリグラム未満のオキシ−塩素アニオンを含む。ある実施形態において、組成物は、約5〜約2000ppmの二酸化塩素を含む。ある実施形態において、組成物は、約4.5〜約11のpHを有する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の説明は、実施形態の詳細な特定の例示的態様および実施を記述する。しかしながら、これらは、様々な組成物およびデバイスの原理が利用される、いくつかの様々な手法のみを示す。組成物、デバイス、システム、および方法の他の目的、利点、および新規特徴は、以下の詳細な説明により明らかになるであろう。
【0018】
二酸化塩素の増粘混合物は、二酸化塩素の水性溶液であるため、当該分野において周知である。このような二酸化塩素組成物は、細胞毒性であり得ることが見出されている。以前、このような溶液および増粘組成物の細胞毒性の基礎は未知であった。二酸化塩素溶液または増粘組成物に存在するオキシ−塩素アニオンは、生体組織および物質に対して細胞毒性であることが、本明細書で示される。したがって、二酸化塩素を含む、実質的に非細胞毒性である組成物を提供する。いくつかの実施形態において、組成物は、増粘組成物である。実質的に非細胞毒性である組成物は、治療および化粧品用途において有用である。
【0019】
また、このような組成物の調製方法も提供する。
【0020】
いくつかの実施形態において、二酸化塩素の増粘混合物は、増粘化した、擬塑性の水性流体混合物を産生するために、粘土、ポリマー、ガム等の増粘剤を実質的に純粋な二酸化塩素の水性溶液に添加することにより産生される。他の実施形態において、粒子状二酸化塩素形成反応物が、水性媒体中の増粘剤成分と混合される。
【0021】
二酸化塩素を含む実質的に非細胞毒性である溶液の利点は、生体組織および物質との接触時に、細胞毒性反応のリスクの低減または排除を伴う使用の容易性である。例えば、局所的消毒剤としての非細胞毒性である二酸化塩素溶液の使用は、手袋、シールドおよびガウン等の保護具、または残留溶液の大規模な除去もしくは使用後の掃除の必要性を低減する、または排除する。
【0022】
二酸化塩素を含む増粘混合物の利点は、非水平面または実質的に垂直面に良く付着することである。加えて、増粘組成物は、非増粘二酸化塩素溶液と比較して、二酸化塩素の揮発性を低減する。二酸化塩素の揮発性が低減されるのは、増粘混合物の内部から表面への二酸化塩素の質量移動が阻害されるためである。
【0023】
定義
特に定義されない限り、本明細書に使用される全ての専門および科学用語は、概して、当業者により一般的に理解されるように、同一の意味を有する。概して、本明細書で使用される命名法、および細胞壊死分析、微生物分析、有機および無機化学、および歯科臨床研究における実験手順は、当該分野に周知であり、一般的に利用される。
【0024】
本明細書で使用される、以下のそれぞれの用語は、本項に関連するものの意味を有する。
【0025】
冠詞「a」および「an」とは、本明細書において、冠詞の文法的な目的語の1つまたは1つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を指すために使用される。例として、「一要素」とは、1つの要素、または1つ以上の要素を意味する。
【0026】
「約」という用語は、当業者により理解され、使用される内容によりある程度変動する。概して、「約」とは、参照値のプラス/マイナス10%の値の範囲を包含する。例えば、「約25%」は、22.5%〜27.5%の値を包含する。
【0027】
本明細書に記述される任意の範囲間の、任意のおよび全ての全整数または部分整数は、本明細書に含まれることを理解する。
【0028】
本明細書で使用される、「殺菌性」とは、細菌、藻類、および真菌等の病原菌を不活性化または殺傷する性質を指す。
【0029】
本明細書で使用される、薬剤の「有効量」とは、所望の殺菌効果、所望の化粧品の効果、および/または所望の治療生体効果をもたらす任意の薬剤量を意味するものとする。一実施例において、歯牙白化に使用される薬剤の有効量は、1回以上の治療で歯牙の白化をもたらす量である。
【0030】
「性能効力」という用語は、実用性能を再現する、またはシミュレーションすることを意図する特定の試験における、酸化剤を含む組成物の性能を指す。例えば、細菌殺傷の生体外試験は、硬質面消毒剤としての使用を意図する組成物の性能をシミュレーションするために使用されてもよい。同様に、抜歯されたヒト歯牙の漂白の程度の生体外試験は、歯牙の白化を意図する組成物の歯牙白化の性能をシミュレーションするために使用されてもよい。
【0031】
本明細書で使用される、「生体組織」とは、粘膜組織、上皮組織、経皮組織、および皮下組織(subcutaneous tissue)(皮下組織(hypodermis tissue)とも呼ばれる)の1つ以上を含む動物組織を指す。粘膜組織は、頬粘膜、他の口腔粘膜(例えば、軟口蓋粘膜、口腔粘膜底、および舌下粘膜)、膣粘膜、および肛門粘膜を含む。これらの粘膜組織は本明細書において「軟組織」と総称される。生体組織は、無処置であるか、または1つ以上の切開口、裂傷、または他の組織貫通可能な開口部を有してもよい。いくつかの実施形態において、生体組織は、哺乳類の組織である。
【0032】
本明細書で使用される、「生体物質」とは、哺乳類等の動物に見られる歯牙のエナメル質、象牙質、指の爪、足の爪、硬質な角化組織等を含むが、これらに限定されない。
【0033】
本明細書で使用される、「細胞毒性」とは、哺乳類細胞の構造または機能に致死損傷を引き起こす性質を指す。医薬品原料(API)が有効量に存在する時に、組成物が米国薬局方(USP)のUSP<87>「生体外生体反応」(2007年現在、承認プロトコル)の寒天ゲル中沈降反応(Agar Diffusion Test)の生体反応の限度に達する場合、組成物は、「実質的に非細胞毒性」または「実質的に細胞毒性ではない」と見なされる。
【0034】
本明細書で使用される、「刺激」とは、即時、長期、または反復接触により、赤色化、腫れ、かゆみ、熱傷、または皮ぶくれ等の局所的炎症反応を生じる性質を指す。例えば、哺乳類における歯肉組織の炎症は、その組織への刺激作用の現れである。組成物が、経皮または粘膜刺激を評価するためのあらゆる標準的な方法の使用により、わずかに刺激性である、または全く刺激性ではないと判断される場合、組成物は、「実質的に非刺激性」または「実質的に刺激性ではない」と見なされる。経皮刺激を評価するために有用な方法の例としては、ヒトの皮膚組織モデル(例えば、Chatterjee et al.,2006,Toxicol Letters167:85−94を参照)であるEpiDerm(登録商標)(MatTek Corp.,Ashland,MA)、または生体外真皮検体等の組織操作された経皮組織を用いた生体外試験の使用が挙げられるが、これに限定されない。粘膜刺激に有用な方法の例としては、HET−CAM(鶏卵試験−絨毛尿膜)、ナメクジ粘膜刺激試験、および組織操作された口腔粘膜または膣−子宮膣部組織を用いた生体外試験が挙げられるが、これらに限定されない。刺激測定の他の有用な方法は、ラットまたはウサギの皮膚の経皮刺激等の生体内方法を含む。例えば、ドレーズ(Draize)皮膚試験(OECD,2002,試験ガイドライン404,急性経皮刺激/腐食)およびEPA健康影響試験ガイドライン;OPPTS870.2500急性経皮刺激を参照のこと。当業者は、経皮または粘膜刺激を評価する技術認識された方法に精通している。
【0035】
本明細書で使用される、「オキシ−塩素アニオン」とは、亜塩素酸塩(ClO2-)および/または塩素酸(ClO3-)アニオンを指す。
【0036】
本明細書で使用される、「実質的に純粋な二酸化塩素溶液」とは、オキシ−塩素アニオンの非細胞毒性濃度を有する二酸化塩素の溶液を指す。本明細書で使用される、「実質的に純粋な二酸化塩素溶液」とは、有効量の二酸化塩素に希釈される時に、オキシ−塩素アニオンの濃度に対して細胞毒性ではないオキシ−塩素アニオン濃度を含有する二酸化塩素の濃縮溶液も指す。
【0037】
本明細書で使用される、「安定した」という用語は、二酸化塩素を形成するために使用される成分、すなわち、二酸化塩素形成成分が、相互に即時に反応して二酸化塩素を形成するものではないことを意味するものとする。成分は、ClO2が生成されるそのような時間まで組み合わせが安定している限り、連続して、および/または同時等のあらゆる様式で混合されてもよいことを理解されたい。
【0038】
本明細書で使用される、「非反応性」という用語は、使用される成分または成分が、許容されない程度で、二酸化塩素を形成するために存在する他の成分または成分と即時に反応しない、または調合において、必要な時間にその機能を実施するためのあらゆる成分または成分の性能を軽減しないことを意味するものとする。当業者には認識されるように、非反応性の許容される時間枠は、調合物がどのように調合され保管されるか、どのくらいの期間保管されるか、およびどのように調合物が使用されるかを含む、数多くの要因に依存する。したがって、「即時反応性ではない」における時間枠は、1分以上から1時間以上、1週間以上に及ぶ。一実施形態において、時間枠は、例えば、1分〜約60分といった分範囲である。別の実施形態において、時間枠は、例えば、約1時間〜約24時間といった時間範囲である。また別の実施形態において、時間枠は、例えば、約1日〜約1週間といった日範囲である。また別の実施形態において、時間枠は、例えば、約1週間〜約4〜6週間といった週範囲である。
【0039】
「増粘流体組成物」という表現は、剪断応力印加下で流動することができ、流動する時に、同濃度の対応する水性二酸化塩素溶液の粘度を超える見かけ粘度を有する組成物を包含する。これは、ニュートン流動を示す流体(剪断応力に対する剪断速度の比率が一定であり、剪断応力と無関係である)、チキソトロピー流体(流動前に排除されるべき最小降伏応力を必要とし、持続剪断と共に剪断減粘性も示す)、疑似塑性および塑性流体(流動前に排除されるべき最小降伏応力を必要とする)、ダイラタント流体組成物(剪断速度の増加と共に見かけ粘度が増加する)、および降伏応力印加下で流動することができる他の物質を含む、増粘流体組成物の全スペクトルを包含する。
【0040】
本明細書で使用される表現である、「増粘剤成分」とは、添加される溶液または混合物を増粘化する性質を有する成分を指す。「増粘剤成分」とは、上述のように、「増粘流体組成物」を作製するために使用される。
【0041】
「見かけ粘度」という表現は、流動をもたらすあらゆるセットの剪断条件での、剪断速度に対する剪断応力の比率として定義される。見かけ粘度は、ニュートン流体の剪断応力とは無関係であり、非ニュートン流体組成物の剪断速度により変動する。
【0042】
有機ポリマーに関して本明細書で使用される、「疎水性」または「水不溶性」という用語は、25℃で、100グラムの水当り約1グラム未満の水溶性を有する有機ポリマーを指す。
【0043】
本明細書で使用される、「酸供給源」という用語は、それ自体が酸性であるか、または液状水または固体オキシ−塩素アニオンと接触する時に、酸性環境を産生する物質、通常、粒子状固体物質を指す。
【0044】
「粒子状」という用語は、全ての固体物質を意味するように定義される。例えば、粒子は、相互に散在して、何らかの形で互いに接触し得る。これらの固体物質は、大きい粒子、小さい粒子、または大小の粒子の組み合わせを含む粒子を含む。
【0045】
本明細書で使用される、「遊離ハロゲン」または「遊離ハロゲン供給源」という用語は、水との反応時に、ハロゲンを放出する化合物、または化合物の混合物を意味する。
【0046】
本明細書で使用される、「遊離ハロゲン」という用語は、遊離ハロゲン供給源により放出されるようなハロゲンを意味する。
【0047】
本明細書で使用される、「二酸化塩素の粒子状前駆体」とは、粒子状である二酸化塩素形成反応物の混合物を指す。ASEPTROL(BASF,Florham Park,NJ)の顆粒剤は、代表的な二酸化塩素の粒子状前駆体である。
【0048】
本明細書で使用される、「固形体」という用語は、顆粒粒子状成分の混合物を含む固体形状、典型的には多孔質固体形状または錠剤を意味し、粒子状成分の大きさは、実質的に固形体の大きさよりも小さい。
【0049】
本明細書で使用される、「酸化剤」という表現は、電子を引き付けることにより別の原子または分子を酸化し、これにより還元を受けるあらゆる物質を指す。代表的な酸化剤としては、二酸化塩素、および過酸化水素等の過酸化物が挙げられる。
【0050】
説明
酸化剤を含む組成物を提供し、薬剤は、組成物が実質的に非細胞毒性である二酸化塩素を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、単一酸化剤を含み、薬剤は、二酸化塩素である。いくつかの実施形態において、組成物は、実質的に非刺激性でもある。本組成物は、細胞毒性レベルのオキシ−塩素アニオンを含有する場合があり、また非増粘で粘性が低い場合がある既存技術の二酸化塩素形態から離れる。
【0051】
一態様において、既存技術の二酸化塩素の組成物は、二酸化塩素溶液の稠度および濃度により用途が制限される。既存技術形態の二酸化塩素の稠度は、多くの場合、特定の種類の二酸化塩素形態を意図する表面上に維持することを確実にするために、ユーザの協力を必要とする。一方、増粘二酸化塩素組成物は、非増粘二酸化塩素溶液よりも多くの基体および表面への優れた付着を提供する。垂直面を含む実質的な非水平面は、単独または二酸化塩素支持デバイスと共に使用されるか否かに関わらず、増粘二酸化塩素によってさらに良く提供される。増粘二酸化塩素組成物は、非増粘二酸化塩素溶液と比較して、二酸化塩素の低減された揮発性を示すことができる。
【0052】
従来技術の形態の二酸化塩素溶液および組成物は、オキシ−塩素アニオンおよび強酸性pHにより生体用途が制限されていた。典型的な二酸化塩素溶液は、有意なレベルのオキシ−塩素アニオン(亜塩素酸塩(ClO2-)および/または塩酸塩(ClO3-))を含む。本明細書で例証するように、従来技術の溶液に生体組織および物質への細胞毒性を生じさせるのは、優勢的に、従来技術に既知の二酸化塩素溶液中に見られるオキシ−塩素アニオンであり、例えば、遊離塩素ではない。
【0053】
第1の酸化剤として二酸化塩素と、過酸化ベースの薬剤等の、少なくとも1つの第2の酸化剤とを含む、酸化組成物をさらに提供する酸化組成物は、二酸化塩素を含まない比較可能な性能効力の参照酸化組成物と比較した低刺激性に関連する。それらの調製方法も提供する。
【0054】
本明細書に記述される、本組成物の様々な態様は、従来技術の制限を克服する。ある実施形態において、二酸化塩素の水性溶液および増粘流体組成物を提供するが、溶液および組成物は、実質的に非細胞毒性である。また別の実施形態において、二酸化塩素形成組成物を提供するが、これは、本明細書に記載する、非細胞毒性である二酸化塩素含有組成物を調製するために使用されてもよい。また別の実施形態において、細胞毒性を低減した酸化組成物を提供する。実質的に非細胞毒性である二酸化塩素溶液および増粘流体組成物の調製並びに使用方法も、本明細書に記述する。
【0055】
組成物
実質的に非細胞毒性である組成物は、二酸化塩素、または二酸化塩素(例えば、二酸化塩素形成反応物)を生成するための反応物を含む水性流体である。いくつかの実施形態において、組成物は、組成物に増粘水性流体をもたらす増粘剤成分をさらに含む。別の実施形態において、組成物は、非増粘溶液である。さらに、実質的に非細胞毒性である二酸化塩素組成物を調製するのに有用な前駆体組成物を提供する。いくつかの実施形態において、非細胞毒性である組成物は、非細胞毒性量の第2の酸化成分を含む場合がある。一実施形態において、第2の酸化成分は、過酸化成分である。他の実施形態において、非細胞毒性である組成物は、過酸化成分等の第2の酸化成分を含まない。
【0056】
組成物中の二酸化塩素量は、組成物の使用目的に関係する。当業者は、所与の使用に有効な適切な量または範囲量の二酸化塩素を容易に決定することができる。概して、方法の実践に有用な組成物は、少なくとも約5百万分率(ppm)の二酸化塩素、少なくとも約20ppm、少なくとも約30ppmを含む。典型的には、二酸化塩素の量は、約1000ppm以下、約700ppm以下、約500ppm以下、および約200ppm以下であり得る。特定の実施形態において、二酸化塩素の濃度は、約5〜約700ppm、約20〜約500ppm、および約30〜約200ppmの二酸化塩素の範囲である。一実施形態において、組成物は、約30〜約40ppmの二酸化塩素を含む。一実施形態において、組成物は、約30ppmの二酸化塩素を含む。別の実施形態において、組成物は、約40ppmの二酸化塩素を含む。約5〜約500ppmの範囲の低濃度は、塩素様臭気の二酸化塩素含有組成物への曝露を最小限にするために、口または鼻近くで使用される時に有用である。約20〜約2000ppmの範囲の高濃度は、創傷における創傷液体等の反応性有機物質の実質的な濃度を含有する領域で使用される時に有用である。高濃度は、また、口腔外部の義歯等の、比較的に不活性な物質を処置する時に、効果を加速するために有益であってもよい。
【0057】
本明細書に示される、二酸化塩素から成る酸化剤を含む組成物において、細胞毒性は、優勢的に、オキシ−塩素アニオンの存在により生じる。したがって、組成物1グラム当り0ミリグラム(mg)のオキシ−塩素アニオン〜組成物1グラム当り約0.25mg未満のオキシ−塩素アニオン、組成物1グラム当り0〜約0.24、0.23、0.22、0.21、もしくは0.20mgのオキシ−塩素アニオン、組成物1グラム当り0〜約0.19、0.18、0.17、0.16、0.15、0.14、0.13、0.12、0.11、もしくは0.10mgのオキシ−塩素アニオン、または組成物1グラム当り0〜約0.09、0.08、0.07、0.06、0.05、もしくは0.04mgのオキシ−塩素アニオンを含む二酸化塩素を含み、細胞毒性の一因となる他の構成物が不在である組成物は、実質的に非細胞毒性である。
【0058】
軟組織の刺激は、酸性および塩基性の両方の極端なpHにより生じる可能性がある。二酸化塩素含有組成物による軟組織の刺激を最小限にするために、実質的に非細胞毒性である組成物は、少なくとも約3.5のpHを有する。いくつかの実施形態において、組成物は、少なくとも約5、または約6を超えるpHを有する。特定の実施形態において、pHは、約4.5〜約11、約5〜約9、または約6を超える、約8未満の範囲である。一実施形態において、pHは、約6.5〜約7.5である。オキシ−塩素アニオンの濃度は、軟組織の刺激の一因とは考えられていない。
【0059】
二酸化塩素を含む実質的に非細胞毒性である組成物は、中性pHを有する実施的に純粋な二酸化塩素溶液を用いて調製され得る。いくつかの実施形態において、実質的に純粋な二酸化塩素溶液は、約5〜約9、または約6.5〜約7.5の範囲のpHを有する。
【0060】
実質的に純粋な二酸化塩素は、あらゆる既知の方法により調製されてもよく、その後、その溶液を通して(散布)、脱イオン水の第2の容器にガス(例えば、空気)を気泡化し、実質的に純粋な二酸化塩素の生成物溶液を調製する。ClO2と、場合によってはある程度の水蒸気のみが、源溶液から生成物溶液に移入される。全ての塩成分および酸が源溶液に残る。したがって、実質的に純粋な生成物溶液中にオキシ−塩素アニオンは存在しない。二酸化塩素を調製するための一方法は、亜塩素酸ナトリウムの水性溶液を鉱酸と混合して溶液のpHを約3.5未満に低下させ、十分な時間、例えば、約30分間、溶液を反応させて二酸化塩素を生成することを含む。その後、上述のように、得られた溶液を散布して実質的に純粋な二酸化塩素の生成物溶液を調製する。
【0061】
実質的に純粋な二酸化塩素は、ある程度の分解を起こす場合があるが、速度は、比較的遅い。溶液に栓をし、紫外線曝露から保護することにより、分解速度は、7日間で、二酸化塩素において、約5%〜約25%の減少速度に低下され得る。実質的に純粋な二酸化塩素は、米国特許第4,683,039号に開示される技法等、浸透気化法を用いても調製されてもよい。加えて、金属亜塩素酸塩および酸供給源は、溶液中で反応して、二酸化塩素への高変換をもたらし、2000ppmを超える二酸化塩素溶液を産生し得る。濃縮された溶液は、その後、中性pHに緩衝され得る。同様に、二酸化塩素溶液は、酸性pHで高濃度の二酸化塩素溶液をもたらす、米国特許第5,399,288号に記載される組成物を用いて調製され得る。濃縮された溶液は、その後、実質的に純粋な二酸化塩素溶液を調製するために、緩衝されて実質的に中性pHに達し得る。
【0062】
実質的に純粋な二酸化塩素溶液の別の供給源は、共通譲受人の米国特許第6,432,322号および第6,699,404号に記載されるASEPTROL(BASF Corp.,Florham Park,NJ)物質を用いて調製される二酸化塩素である。これらの特許は、水に添加される時に二酸化塩素の高変換溶液を調製するための粒子状試薬を含む、実質的に無水の固形体を開示する。固形体中の粒子状試薬は、亜塩素酸ナトリウム等の金属亜塩素酸塩、重硫酸ナトリウム等の酸供給源、および任意にジクロロイソシアヌル酸のナトリウム塩またはその水和物等(本明細書では「NaDCCA」として総称される)の遊離ハロゲンの供給源を含む。二酸化塩素は、ASEPTROL物質が水または水性媒体と接触する時に生成される。ASEPTROL物質は、米国特許第6,432,322号、および第6,699,404に記載されるように水性溶液中で極端に高変換率を有するように作製され得、高濃度の二酸化塩素と、低濃度のオキシ−塩素アニオンとをもたらす。したがって、ASEPTROL物質は、実質的に中性pHで、二酸化塩素を効果的に生成するための手段を提供し、したがって、初期の酸性二酸化塩素ベースの生成物に既存する問題を回避する。
【0063】
組成物の調製に有用な亜塩素酸塩は、金属亜塩素酸塩を含む。金属亜塩素酸塩は、一般的に、あらゆる金属亜塩素酸塩であり得る。いくつかの実施形態において、金属亜塩素酸塩は、亜塩素酸ナトリウムおよび亜塩素酸カリウム等の、アルカリ金属亜塩素酸塩である。アルカリ土類金属亜塩素酸塩も、利用され得る。アルカリ土類金属亜塩素酸塩の例としては、亜塩素酸バリウム、亜塩素酸カルシウム、および亜塩素酸マグネシウムが挙げられる。多くの実施形態において、金属亜塩素酸塩は、亜塩素酸ナトリウムである。
【0064】
酸供給源は、無機酸塩、強酸のアニオンおよび弱塩基のカチオンを含む塩類、水と接触する時にプロトンを溶液に解放することができる酸類、有機酸、およびそれらの混合物を含んでもよい。別の態様において、組成物の特定の用途における酸供給源は、乾燥貯蔵中は金属亜塩素酸塩と実質的に反応しないが、水性媒体が存在する時に、金属亜塩素酸塩と反応して二酸化塩素を形成する、粒子状固体物質である。酸供給源は、水溶性、実質的に水に不溶性、またはこれら2つの中間であってもよい。代表的な酸供給源は、約7未満、および約5未満のpHを産生するものである。
【0065】
代表的な実質的に水溶性の酸供給源形成成分は、ホウ酸、クエン酸、酒石酸等の水溶性固体酸、無水マレイン酸等の水溶性有機酸無水物、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム、塩化リチウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸水素ナトリウム(NaHSO4)、リン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)、硫酸水素カリウム(KHSO4)、リン酸二水素カリウム(KH2PO4)、およびそれらの混合物を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、酸供給源形成成分は、硫酸水素ナトリウム(重硫酸ナトリウム)である。さらなる水溶性の酸供給源形成成分は、当業者に既知である。
【0066】
本明細書で使用される、「遊離ハロゲンの供給源」または「遊離ハロゲン供給源」という用語は、水との反応時にハロゲンを放出する化合物、または化合物の混合物を意味する。本明細書で使用される、「遊離ハロゲン」という用語は、遊離ハロゲン供給源により放出されるようなハロゲンを意味する。一実施形態において、遊離ハロゲン供給源は、遊離塩素供給源であり、遊離ハロゲンは、遊離塩素である。無水組成物に使用される遊離ハロゲンの適切な例は、NaDCCA、トリクロロシアヌル酸等のジクロロイソシアヌル酸およびその塩類、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、および次亜塩素酸カルシウム等の次亜塩素酸の塩類、ブロモクロロジメチルヒダントイン、ジブロモクロロジメチルヒダントイン等を含む。遊離ハロゲンの代表的な供給源は、NaDCCAである。
【0067】
オキシ−塩素アニオンは、EPA試験方法300(Pfaff,1993,“Method 300.0 Determination of Inorganic Anions by Ion Chromatography,”Rev.2.1,US Environmental Protection Agency)、または電流測定法(Amperometric Method II in Eaton et al,ed.,“Standard Methods for the Examination of Water and Wastewater”19thedition,American Public Health Association,Washington DC,1995)に基づく滴定法の一般手順後、イオンクロマトグラフィーを含む、当業者に既知のあらゆる方法を用いて、二酸化塩素溶液中で測定され得る。代替的に、オキシ−塩素アニオンは、電流測定法と同等の滴定法により測定されてもよいが、この方法は、ヨウ化物のヨウ素への酸化を使用し、その後、電流滴定の代わりにチオ硫酸ナトリウムを用いて澱粉の終点まで滴定するが、この方法は、本明細書で、「pH7緩衝滴定」と称される。亜塩素酸塩の分析標準は、通常、約80質量%の純粋な亜塩素酸ナトリウムを含むと考えられる、工業グレードの固形亜塩素酸ナトリウムから調製され得る。
【0068】
非細胞毒性である二酸化塩素溶液において、実質的に純粋な二酸化塩素溶液は、所望の二酸化塩素の濃度に達するように、必要に応じて希釈されてもよい。溶液は、実質的に純粋な水または緩衝液で希釈され、所望する最終pHに調節されてもよい。実質的に細胞毒性でない二酸化塩素を含む増粘水性組成物を調製するために、いくつかの実施形態において、非刺激性で、実質的に純粋な二酸化塩素溶液は、増粘剤成分および水性媒体と混合され得る。
【0069】
方法の実践に使用される水性増粘流体組成物は、水性媒体中にあらゆる増粘剤成分を含み、増粘流体組成物は、非細胞毒性であり、いくつかの実施形態において、軟組織に対して非刺激性である。加えて、いくつかの実施形態において、二酸化塩素は、組成物の調製および治療における使用の時間単位で増粘剤に悪影響を及ぼさない。多くの増粘剤は、当該分野において既知であり、カルボマー(例えば、CARBOPOL増粘剤、Lubrizol Corp.,Wickliffe,OH)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、天然スメクタイト粘土(例えば、VEEGEM,R.T.Vanderbilt Co.,Norwalk,CT)、合成粘土(例えば、LAPONITE(Southern Clay Products,Gonzales,TX)、メチルセルロース、ポリアクリレート(例えば、LUQUASORB1010,BASF,Florham Park,NJ)等の高吸収性ポリマー、ポロキサマー(PLURONIC,BASF,Florham Park,NJ)、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、トラガント、およびキサンガムを含むが、これらに限定されない。このような増粘剤は、天然親水コロイド(「ガム」とも称される)、半合成親水コロイド、合成親水コロイド、および粘土の4つの群に分類されてもよい。天然親水コロイドのいくつかの例としては、アカシア、トラガント、アルギン酸、カラゲナン、イナゴマメゴム、グアーガム、およびゼラチンが挙げられる。半合成親水コロイドの例としては、メチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースナトリウムが挙げられるが、これらに限定されない。合成親水コロイド(ポリマー、架橋ポリマー、およびコポリマーを含む「ポリマー」とも称される)のいくつかの例としては、ポリアクリレート、高吸収性ポリマー、高分子量ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコール、ポリ酸化エチレン、並びにCARBOPOLが挙げられる。粘土(膨張粘土を含む)の例としては、LAPONITE、アタパルジャイト、ベントナイト、およびVEEGUMが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、増粘剤成分は、半合成親水コロイドである。いくつかの実施形態において、増粘剤成分は、カルボキシメチルセルロース(CMC)である。
【0070】
CMCは、セルロース骨格を構成するグルコピラノースモノマーのいくつかのヒドロキシル基に結合するカルボキシルメチル基(−CH2−COOH)を伴うセルロース誘導体である。セルロースのクロロ酢酸とのアルカリ触媒反応により合成される。極性(有機酸)カルボキシル基は、セルロースに溶解性および化学反応を付与する。CMCの官能性質は、セルロース構造の置換の程度(すなわち、ヒドロキシル基がいくつ置換反応に関与したか)、およびセルロース骨格構造の鎖の長さに依存する。
【0071】
一態様において、CMCは、高粘度のカルボキシメチルセルロースナトリウム(NaCMC粉末)である。しかしながら、CMCのあらゆる塩および/または誘導体が使用されてもよいことを理解されたい。当業者は、本明細書に記述される開示に基づき、CMCのどの塩および誘導体が所望の組成物の物理的および化学的性質に基づき最も有益であるかを理解するであろう。代表的な実施形態において、NaCMCは、治療および化粧品用途に使用される。
【0072】
CMCは、様々な粘度級およびUSP規格で入手可能である。Spectrum Chemical Manufacturing Companyから購入したCA194タイプ等の、高粘度のCMCは、水中1%濃度、25℃で、1500〜3000cpsの粘度を有する。
【0073】
非細胞毒性組成物の調製において、組成物の1つ以上の成分は、組成物の調製の時間前に混合されてもよい。代替的に、組成物の全成分は、使用する時に調製されてもよい。非細胞毒性溶液または非細胞毒性増粘組成物のいずれかにおいて、本明細書の他の個所で記載するように、任意に、非細胞毒性である二酸化塩素溶液の使用目的に好適な他の成分が含まれてもよい。溶液中の二酸化塩素は、経時的に分解する。亜塩素酸塩アニオンの効力および生成の損失を含む、このような分解から生じる問題を避けるために、実質的に純粋な二酸化塩素溶液は、一般的に、希釈または増粘成分および水性媒体と混合される直前に調製される。代替的に、オキシ−塩素アニオン濃度が実質的に純粋な二酸化塩素溶液と考えられるくらい十分に低い場合、国際公開第2007/079287号に記載の貯蔵安定二酸化塩素溶液が使用され得る。
【0074】
加えて、二酸化塩素を含む増粘組成物は、一般的に、治療または化粧品用途使用する直前に調製される。本明細書で使用される、「直前に」とは、細胞毒性の効力低下または徴候を生じない期間を指す。概して、「直前」とは、約14日未満、約24時間以下、または約2時間以下である。いくつかの実施形態において、実質的に純粋な二酸化塩素溶液は、組成物の調製の約8時間以内に調製される二酸化塩素溶液または調製された組成物が、強い紫外線または高温(例えば、周囲温度を超える温度である、約25℃)に曝されるのを避けるための予防措置も取られる。
【0075】
代替的に、二酸化塩素を含む増粘組成物は、オキシ−塩素アニオン濃度が十分に低い場合、国際公開第2007/079287号の貯蔵安定二酸化塩素溶液を使用することにより、その使用のかなり前に調製されてもよい。概して、「かなり前に調製される」とは、約14日を超えるか、または約60日を超える。本実施形態において、増粘剤成分は、二酸化塩素の亜塩素酸塩アニオンへの分解および増粘剤の分解の可能性、並びに貯蔵中の増粘組成物の結果的粘度低下の可能性を制限するために、二酸化塩素による酸化に比較的耐性であることが必要である。
【0076】
二酸化塩素を含む増粘組成物の調製方法も、共通譲受人の米国特許出願公開第2006/0169949号および同第2007/0172412号に開示されている。これら2つの公開に記載される方法の実践において、非細胞毒性である組成物を産生するように、オキシ−塩素濃度を制御するためのステップ(本明細書に記載されるように)を取らなければならない。
【0077】
二酸化塩素を含む実質的に非細胞毒性である増粘組成物も、ClO2の粒子状前駆体および水性増粘流体組成物を用いて調製されてもよい。したがって、二酸化塩素の粒子状前駆体を含む第1の成分と、水性媒体に増粘剤成分を含む第2の成分とを含む、二成分系も提供する。第1および第2の成分を混合して、治療または化粧品用途に有効な二酸化塩素の量を含む非細胞毒性組成物を得る。本明細書の別の個所に記載する、二酸化塩素形成試薬は、金属亜塩素酸塩、金属塩素酸、酸供給源、および任意のハロゲン供給源を含む。粒子状前駆体は、これらのうちの1つ、またはこれらのあらゆる組み合わせを含んでもよい。いくつかの実施形態において、粒子状前駆体は、ASEPTROL S−Tab2等のASEPTROL製品である。ASEPTROL S−Tab2は、以下の質量(%)の化学組成物を有する:NaClO2(7%);NaHSO4(12%);NaDCC(1%);NaCl(40%);MgCl2(40%)。米国特許第6,432,322号の実施例4は、S−Tab2の代表的な製造プロセスを記載している。顆粒剤は、圧搾されたS−Tab2錠剤を粉砕するか、またはS−Tab2成分の非圧搾粉末を乾燥ローラー圧縮してから、得られた圧縮リボンまたはブリケットを破砕し、その後スクリーニングして所望の大きさの顆粒を得るかのいずれかにより産生され得る。水または水性増粘流体への曝露時、二酸化塩素は、ASEPTROL顆粒剤から生成される。いくつかの実施形態において、二酸化塩素を含む実質的に非細胞毒性である組成物は、−40メッシュ顆粒剤を水性増粘流体と混合することにより調製される。一実施形態において、増粘流体の増粘剤成分は、カルボキシメチルセルロースである。当業者は、ClO2の粒子状前駆体を用いて調製された増粘流体組成物における二酸化塩素産生が、急速だが、即時ではないことを認識するだろう。したがって、二酸化塩素の生成に十分な時間と、対応する亜塩素酸塩アニオンの消費は、実質的に非細胞毒性である増粘流体組成物を得るために必要である。当業者は、本開示の教示および当該分野の知識を考慮して、どのくらいの時間が十分であるかを容易に決定することができる。
【0078】
亜塩素酸塩アニオンの二酸化塩素への所望の変換の程度を容易にするために必要なASEPTROL錠剤の孔の大きさおよび孔の容積範囲は、例えば、固形体の試薬の粒子状の組み合わせ、固形体の大きさ、固形体の形状、水の温度、水に溶解される他の化学物質、亜塩素酸塩アニオンの二酸化塩素への所望の変換の程度、溶液中に送達される遊離ハロゲンの所望量等、多くの要因に依存する。したがって、最適な結果を産生する孔の大きさまたは孔の容積の単一の好適な範囲が存在するとは考えられない。実質的に非細胞毒性である二酸化塩素溶液または増粘組成物に関して所望の結果を達成するために、錠剤またはその顆粒剤等の固形体の孔の大きさおよび孔の容積を変更することは、当業者の能力の範囲内である。概して、高変換は、いくつかの要因により好まれるが、最も大きな顆粒粒子の使用、二酸化塩素を形成するための反応前に亜塩素酸塩アニオンのバルク水性相への溶解を最小限にする条件下で二酸化塩素を形成するように顆粒を反応させること(例えば、二酸化塩素形成中の組成物の攪拌を最小限にする)、および顆粒が混合中および混合後にその粒度を維持するために十分な強度を有するように、例えば、高圧縮圧力の様式で顆粒剤を形成することを含む。
【0079】
いくつかの実施形態において、水性増粘流体は、増粘剤成分の完全な水和を可能にするために、ASEPTROL顆粒剤と混合する十分前に調製される。一実施形態において、増粘流体組成物は、高粘度NaCMC粉末を蒸留水に添加することにより形成される。NaCMCを少なくとも8時間水和させ、その後、混合物を均質化するために攪拌する。実質的に非細胞毒性である組成物は、その後、寸法決定されたASEPTROL顆粒剤をNaCMC増粘流体と混合することにより調製される。水和されたNaCMC混合物中での水性媒体との接触は、ASEPTROL顆粒剤を活性化し、二酸化塩素が生成される。
【0080】
二酸化塩素を含む実質的に非細胞毒性である増粘流体組成物を調製するために有用な前駆体組成物もさらに提供する。前駆体組成物は、粒子状二酸化塩素形成成分(金属亜塩素酸塩、酸供給源、および任意のハロゲン供給源)、増粘剤成分、および任意に水を含有する混合物を含み、成分は、非反応性であるように混合されるため、安定した組成物を形成する。一態様において、安定した組成物は、組成物の使用目的前に1つ以上の活性成分の反応または分解を防止する目的のために、少なくとも1つの「安定化成分」を含む組成物である。一態様において、安定化成分は、組成物の水性媒体への導入時に、1つ以上の活性成分の反応を遅延する。
【0081】
組成物中で有用な安定化成分は、1つ以上の粒子状構成物全体に配置されるコーティングまたはカプセル封止物質を含むが、これらに限定されない。これらの安定化成分は、安定化成分の活性の不在において、緩慢で、即時ではない、可溶性または実質的に不溶性であるように設計される。代表的なコーティングまたはカプセル封止物質は、例えば、親油性材料および疎水性(水不溶性)ポリマー材料を含む。安定化成分として機能することができるカプセル封止またはコーティング物質の例としては、従来の食用ガム、樹脂、ワックス、および鉱油が挙げられるが、これらに限定されない。これらの安定化コーティング物質は、粒子状二酸化塩素形成試薬を含有する混合物と、水性媒体との間の即時反応を防止する。これらの安定化成分は、成分の破壊、または例えば、攪拌および加熱等の成分を水性媒体に曝露するために、もしくまたは紫外線もしくは超音波等の電磁エネルギーへの曝露により安定化成分を除去する、または妨害する等の、これらに限定されないが、当業者に既知の技法により即時反応を活性化してもよい。
【0082】
単独で、または1つ以上の他の成分と組み合わせて、安定化成分として有用な好適な水不溶性ポリマーの例としては、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリルアミド、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリウレタン等が挙げられるが、これらに限定されない。好適な親油性コーティングまたはカプセル封止材料の例としては、パラフィン、鉱油、ピーナッツ油、ココナッツ油、ヤシ油、または紅花油等の食用油、ミリスチン酸イソプロピルシロマン(isopropyl silomane myristate)もしくはパルミチン酸イソプロピル等の親油性有機エステル、食用ポリシロキサン等が挙げられるが、これらに限定されないパラフィンおよびワックスの混合物を含有するカプセル封止物質も好適な安定化成分である。
【0083】
安定化成分は、混合物の1つ以上の成分を安定化してもよい。ある実施形態において、少なくとも1つの成分が水性で、成分の残部は安定化される。最終組成物の非細胞毒性を確実にするため、安定化成分の活性後の水性媒体曝露時に、高変換率の好ましい条件が存在することにより、実質的に全ての亜塩素酸ナトリウムが消費されるように、粒子状二酸化塩素形成反応物を混合して、粒子状前駆体を形成する。特に、粒子状前駆体の反応物は、局所的に濃縮され、相互に近位のままで、水性媒体への曝露時に高変換を提供するべきである。いくつかの実施形態において、粒子状前駆体は、ASEPTROL物質である。一実施形態において、粒子状二酸化塩素形成反応物は、水、または水性増粘流体等の水性媒体との即時反応を防止するためにカプセル封止される。別の実施形態において、カプセル封止された粒子状反応物は、増粘剤成分と混合され、前駆体組成物を形成する。水または水性流体の前駆体組成物への添加時、増粘剤成分は、水または水性流体を増粘する。安定化成分は、水の添加前、添加中、または添加後に活性化されてもよい。また別の実施形態において、カプセル封止されたASEPTROL顆粒剤等の、カプセル封止された粒子状反応物は、水和された増粘流体中に懸濁され、前駆体組成物を形成してもよい。二酸化塩素の生成が所望される時、カプセル封止物質は、破壊されるかまたは妨害され、粒子状二酸化塩素形成試薬の水和された増粘流体との接触を可能にし、これによって、二酸化塩素の産生を活性化し、実質的に非細胞毒性組成物を形成する。
【0084】
別の実施形態において、実質的に非細胞毒性である増粘流体組成物は、使用目的の部位でも形成されてもよい。例えば、唾液、湿った皮膚、または粘膜組織の粘膜等の体液は、ASEPTROL顆粒剤等の、二酸化塩素の粒子状前駆体を活性するための水性媒体としての機能を果たしてもよい。一実施形態において、混合物は、粉末の形態での粒子物であってもよく、増粘剤成分の層に混合されることにより、増粘マトリックスを形成してもよい。マトリックスは、生体組織に直接適用されてもよく、生体組織に存在する水分への曝露は、二酸化塩素の産生を活性化し、実質的に非細胞毒性である組成物を形成する。代替的に、マトリックスは、使用直前に加湿され、次いで、生体組織に適用されてもよい。別の実施形態において、使い捨ての布または紙等の担体は、増粘マトリックスで含浸されてもよい。含浸された担体は、次いで、使用部位で実質的に非細胞毒性である二酸化塩素組成物の産生を活性化するために、湿った硬質面に適用される。代替的に、含浸された担体は、硬質面上での使用直前に水性媒体で加湿される。別の実施形態において、ASEPTROL顆粒剤および増粘剤成分の混合物は、例えば、展性ワックスの添加により一形状に形成され、この形状は、次いで、歯牙に適用される。唾液は顆粒剤を活性化し、二酸化塩素および増粘剤成分水和物を形成し、これにより、原位置で増粘流体組成物を形成する。別の実施形態において、ASEPTROL顆粒剤および増粘剤成分の混合物は、歯科用ストリップ、歯科用フィルム、または歯科用トレイに配設される。歯科用ストリップは、歯牙に固着するのに十分に柔軟なプラスチック骨格から作製される、実質的に平面の物体を指す。歯科用フィルムは、歯牙の表面に実質的に嵌合され得る柔軟で整合性のある物質から作製される、実質的に平面の物体を指す。任意に、歯科用ストリップは、唾液等の水性媒体に溶解可能である。ストリップ、フィルム、またはトレイは、歯牙上に位置付けされ、唾液は、上述のように、原位置で、実質的に非細胞毒性である増粘流体組成物を提供するために、水性媒体としての機能を果たす。代替的に、ストリップまたはトレイ上の混合物は、歯牙上に位置付けされる前に水または水性媒体と接触される。
【0085】
オキシ−塩素アニオンの量は、水性溶液(増粘前)中のオキシ−塩素を測定し、最終増粘流体の質量に基づき最終濃度を調節することにより正確に推定され得る。本明細書の別の個所で記載される滴定法は、増粘流体組成物中の二酸化塩素濃度およびオキシ−塩素濃度の両方を評価するのに有用であると考えられる。水和増粘剤成分によるカラムの付着物を排除するためのステップが取られる場合、増粘流体組成物中のオキシ−塩素アニオンは、本明細書の別の個所で記載されるイオンクロマトグラフィーを用いて測定され得ると考えられる。このようなステップの1つは、クロマトグラフィーカラムの適用前に、水和CMC等の水和増粘剤成分を除去するための分子量フィルタの使用である。必要ならば、増粘流体組成物は、粘度を低下させるため、またはより容易に試験できるように、分析前に水で希釈されてもよい。当業者は、USP<87>の寒天ゲル中沈降反応のUSP生体反応の限度を用いて、調合物が細胞毒性であるかを決定することにより、経験的に任意の調合物が十分に低いオキシ−塩素濃度であるかを容易に決定することができる。
【0086】
二酸化塩素、および過酸化物ベースの薬剤等の、少なくとも1つの他の酸化剤を含む酸化組成物も提供する。代表的な第2の漂白剤としては、アルカリ金属過炭酸塩(過炭酸ナトリウム等)、過酸化カルバミド、過ホウ酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過酸化カルシウム、過酸化亜鉛、過酸化マグネシウム、過酸化水素錯体(PVP−過酸化水素錯体)、過酸化水素、遊離塩素または次亜塩素酸塩アニオン等の遊離ハロゲン酸化剤、およびそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態において、第2の漂白剤は、過酸化物ベースの薬剤である。過酸化物ベースの酸化剤は、有効酸化濃度で、刺激性および細胞毒性の両方であり得る。別の酸化剤と混合された実質的に非細胞毒性である二酸化塩素組成物は、低刺激性で、二酸化塩素の不在下で比較可能な性能効力を有するのに十分な量の酸化剤を含む組成物と比較して、場合によっては低い細胞毒性も有する、強力な酸化組成物を生産すると考えられる。性能効力は、最終的な使用目的に関して評価される。例えば、歯牙白化の比較可能な効力は、同じ治療条件下(例えば、2〜30分の治療後に達成される色度値単位の変化)で達成される比較可能な歯牙白化を指す。このような酸化組成物も、強力な殺菌活性を保持することが予想される。この組成物は、酸化組成物を必要とするあらゆる用途に有用であり、これは、低刺激性から利益を受ける場合があり、軽度の細胞毒性を容認する場合がある。任意の成分は、本明細書の別の個所で記載するように、酸化に最も有用に比較的耐性である。酸化組成物は、少なくとも1つの他の酸化剤を組み込むことによって、非細胞毒性組成物において本明細書に記載する方法により調製され得る。実質的に非細胞毒性である増粘流体組成物を調製するのに有用な前駆体組成物は、調製された非細胞毒性である増粘流体組成物に少なくとも1つの他の酸化剤を添加することによって、酸化組成物を調製するためにも使用されてもよい。例えば、増粘剤を過酸化水素の水性溶液に添加して、増粘過酸化水素混合物を形成してもよい。その混合物は、次いで、二酸化塩素を生成し、二酸化塩素および過酸化水素を含む増粘混合物を産生するために、ASEPTROL S−Tab2調合の−40メッシュ顆粒剤と混合されてもよい。また、二酸化塩素の粒子状前駆体および少なくとも第2の漂白剤の粒子状前駆体を含む酸化組成物のための前駆体組成物も想定される。例えば、二酸化塩素の粒子状前駆体および過ホウ酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過酸化カルバミド、またはアルカリ金属過炭酸塩のうちの1つ以上を含む混合剤前駆体組成物は、水性流体と接触すると、二酸化塩素および過酸化水素の両方を生成する。粒子状物質は、一般的に無水であるか、早期活性を排除または実質的に制限するために安定化される。成分を安定化するための方法は、例えば、「Non−Cytotoxic Chlorine Dioxide Fluids」という表題の共通譲受人出願、および米国特許出願公開第2007/0172412号で説明されている。
【0087】
いくつかの実施形態において、低細胞毒性である酸化組成物は、二酸化塩素および過酸化剤を含む。代表的な過酸化剤としては、過酸化水素、過酸化ナトリウム、過酸化アンモニウム、過酸化カルシウム、過酸化マグネシウム、過酸化亜鉛、および過酸化カルバミドが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、過酸化剤は、過酸化水素である。過酸化剤は、約1質量%以上、約30%未満、約10%未満、または約6%と同等もしくはそれ未満で組成物に存在する。過剰なpHによる刺激を最低限にするために、酸化組成物は、一般的に、3.5を超える、約5を超える、または約6を超えるpHを有する。本明細書の別の個所で記載するように、特定の実施形態において、pHは、約4.5〜約11、約5〜約9、または約6を超え、約8未満に及ぶ。
【0088】
組成物は水性流体である。いくつかの実施形態において、流体は、増粘流体を実質的に非水平表面に塗布するのに好適な流動特性を有し、ある期間、実質的に滴下または流出することなく流体を所定の位置に残存させる増粘水性流体である。持続期間は、用途に応じる。概して、時間期間は、少なくとも約5秒〜、少なくとも約10、20、30、45、もしくは60秒〜、または少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10分以上に及ぶ。したがって、実質的に非水平表面であるが、例えば、水で拭き取るまたは洗浄することにより容易に除去されるよう十分に低い非水平表面に塗布する時に、その形状を保持するのに十分な降伏点を有する擬塑性組成物は、有益である。
【0089】
組成物は、任意に他の成分を含む場合がある。このような成分は、組成物の使用目的により影響を受ける。例えば、経口化粧品および/または治療用途目的の組成物は、これらに限定されないが、甘味料、風味料、着色剤、および香料を含む成分を含む場合がある。甘味料は、糖アルコールを含む。代表的な糖アルコールとしては、ソルビトール、キシリトール、ラクチトール、マンニトール、マルチトール、水素化澱粉加水分解物、エリスリトール、還元パラチノース、およびそれらの混合物が挙げられる。風味料は、例えば、天然または合成エッセンシャルオイル、並びに様々な風味アルデヒド、エステル、アルコール、および他の材料を含む。エッセンシャルオイルの例としては、スペアミント、ペパーミント、ウインターグリーン、サッサフラス、クローブ、セージ、ユーカリ、マージョラム、シナモン、レモン、ライム、グレープフルーツ、およびオレンジのオイルが挙げられる。着色剤は、米国における使用において、例えば、FD&C等の規制機関により食品、薬物、または化粧品の組み込みを承認された着色料、またはFDAにより承認されたD&C色素および染料を含む。香料は、メントール、酢酸メンチル、乳酸メンチル、樟脳、ユーカリオイル、ユーカリプトール、アネトール、オイゲノール、カシア、オキサノン、α−イリソン、プロペニルグイエトール(guaiethol)、チモール、リナロール、ベンズアルデヒド、シンナムアルデヒド、N−エチル−p−メタン−3−カルボキサミド、N,2,3−トリメチル−2−イソプロピルブタンアミド、3−(1−メントキシ)−プロパン−1,2−ジオール、シンナムアルデヒドグリセロールアセタール(CGA)、メントングリセロールアセタール(MGA)等を含む。
【0090】
経口化粧品および/または治療使用目的のための組成物の他の任意の成分は、抗菌剤(二酸化塩素に加え)、酵素、悪臭抑制剤(二酸化塩素に加え)、リン酸等の洗浄剤、抗歯肉炎剤、抗歯垢剤、抗歯石剤、フッ化物イオンの供給源等の齲歯剤、抗歯周炎剤、栄養剤、抗酸化剤等を含む。
【0091】
硬質面の局所的消毒剤を目的とした組成物の任意の成分は、香料、着色剤、界面活性剤、沸騰剤、ラウリル硫酸ナトリウム等の洗浄剤等を含む。生体組織の局所的消毒剤において、任意の成分は、香料、着色剤、メントール、クロロホルム、およびベンゾカイン等の局所麻酔薬、軟化薬または加湿剤、沈痛薬、ラウリル硫酸ナトリウム等の洗浄剤、抗菌剤(二酸化塩素に加え)、悪臭抑制剤(二酸化塩素に加え)、ポリカルボフィル、ポリビニルピロリドンまたはそれらの混合物等の生体接着ポリマー等を含む。したがって、第1の抗菌剤または悪臭抑制剤としての二酸化塩素および第2のこのような薬剤の少なくとも1つを含む組成物も提供する。このような組成物の代表的な抗菌剤としては、銀および四級アンモニウム化合物が挙げられるが、これらに限定されない。他の実施形態において、第2の抗菌剤または悪臭抑制剤は、組成物から除外される。
【0092】
多くの実施形態において、二酸化塩素による組成物成分の酸化は、その機能目的の酸化に利用可能な二酸化塩素を低減するため、全ての任意の成分は、二酸化塩素(および組成物に存在するあらゆる他の酸化剤)による酸化に比較的耐性である。「比較的耐性」とは、用途における二酸化塩素含有組成物の調製および使用の時間規模において、任意の成分の機能は、許容できないほど減少せず、組成物は、二酸化塩素(および存在する場合、他の酸化剤)に関して許容可能なレベルの効力/活性を保持し、実質的に非細胞毒性のままである(または1つ以上の追加の酸化剤を含む組成物において低細胞毒性を有する)ことを意味する。いくつかの実施形態において、組成物は、実質的に非刺激性のままでもある。
【0093】
組成物は、実質的に非細胞毒性である二酸化塩素組成物の性質から利益を受けるであろうあらゆる用途において使用されてもよい。二酸化塩素組成物の性質は、強力な殺菌活性、脱臭活性、および漂白活性を含む。このような適用性を利用する用途は、口腔ケア、口腔洗浄、歯牙白化、歯周病治療、齲歯軽減、手の洗浄、義歯または歯ブラシの洗浄、硬質面の洗浄、膣洗浄、浣腸、創傷治療およびケア、皮膚治療、皮膚火傷治療、皮膚の漂白、毛髪の漂白、臭気低減、足爪、爪、および/または皮膚の菌類感染、カンジタ皮膚および粘膜感染治療、並びにコンタクトレンズの消毒を含むが、これらに限定されない。
【0094】
特に、本明細書に示す、実質的に非細胞毒性である二酸化塩素溶液は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)および緑膿菌(P. Aeruginosa)に対して非常に効果的である。MRSAは、一般的な細菌黄色ブドウ球菌の耐性変種である。メチシリン、ジクロキサシリン、ナフシリン、およびオキサシリンを含むβラクタム系抗生物質の治療によっても生存する能力を進化させた。緑膿菌はグラム陰性菌である。自然状態の典型的なシュードモナス属の細菌は、ある表面または基体に付着するバイオフィルムに見られる場合がある。緑膿菌は、抗生物質への耐性において周知であり、したがって、特に危険な病原菌である。細菌は、そのグラム陰性外膜により付与される透過性障壁により、多くの抗生物質に自然と耐性である。ビオフィルム形態で表面をコロニー形成する緑膿菌の傾向も、細胞を治療濃度の抗生物質に対して耐性にさせる。
【0095】
MRSAおよび緑膿菌の両方は、病院関連の(病内)感染において、特に厄介である。両方とも、脆弱な免疫系、やけど、手術創、侵襲性医療装置、または重度の根本的な健康問題を伴う患者にとって、特に危険である。保健医療環境において、MRSAは、プライバシーカーテン、またはケア提供者により着用される衣服を含む、表面および布地上で生存することができる。患者が侵襲性手順から回復する領域においてMRSAを排除するために、完全な表面衛生が必要である。緑膿菌は、病院(消毒剤、呼吸器、食事、シンク、タップ、トイレ、シャワー、およびモップ)で、多くの保有宿主を見つける。さらに、果物、植物、野菜、並びに来訪者、および他の施設から移送される患者により、病院環境に常に再導入される。流布は、病院の職員の手と接触して患者から患者へ、汚染された保有宿主との患者の直接的な接触により、および汚染された食事および水の摂取により起こる。したがって、これらの環境における非細胞毒性組成物の消毒剤の使用は、非常に効果的であり、細胞毒性ではなく、いくつかの実施形態においては、生体組織および物質に非刺激性であることが特に有益であると予想される
【0096】
実質的に非細胞毒性組成物の調製に有用な装置も提供する。一実施形態において、粒子状二酸化塩素形成反応物は、シリンジ等の第1のディスペンサに存在し、水性媒体の増粘剤抗生要素は、第2のディスペンサに存在する。第2のディスペンサ中の水性増粘流体を、第1のディスペンサ中の粒子状混合物に直接添加し、組合物を反応させてClO2を産生し、その後均一になるまで混合することができる。代替的に、水性媒体を粒子状二酸化塩素形成反応物に添加して、実質的に純粋な二酸化塩素溶液を調製することができる。次いで、適切な量のこの溶液を他のディスペンサの水性増粘剤と混合する。これらの実施形態の両方は、ディスペンサとしてシリンジを用いて有利に実践される。いずれの実施形態においても、2つのシリンジは、相互に連結され得、内容物は一方のシリンジの内容物を他方に分配することにより混合され、次いで、混合物が均一になるまで、他方のシリンジに混合物を分配し戻す。別の実施形態において、2つのディスペンサは、二重注射外筒シリンジの2つの注射外筒である。
【0097】
別の実施形態において、ASEPTROL物質等の粒子状二酸化塩素形成反応物、および水性増粘流体等の水性媒体は、使用前に水性媒体から粒子状反応物を分離する分配ユニットに保持され、分配する時に2つの構成物を混合させてもよい。分配ユニットは、ハウジングと一体となった隔離板または仕切りを有する単一のハウジングユニットを備えることができるため、粒子状形成反応物および水性媒体は、分配ユニットから分配された後にのみ交わる。代替的に、分配ユニットは、粒子状試薬および水性媒体を最初は分離するが、脆弱な仕切りが透過される時に、粒子状反応物および水性媒体を混合することができる脆弱な隔離板または仕切りを有する、単一ハウジングユニットを備えることができる。分配ユニットにおけるまた別の変形は、1つは粒子状反応物用、そしてもう1つは水性媒体用の、少なくとも2つの個別の脆弱な容器を保持する分配ユニットに関し、個別の脆弱な容器は、圧力の印加時に破壊される。これら、および他の分配ユニットは、米国特許第4,330,531号に詳細に記載されており、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0098】
組成物、またはその成分を含むキット、および組成物の調製および使用を記載する説明書も提供する。本明細書で使用される、「説明書」とは、キットにおける組成物および/または化合物の有用性を伝達するために使用され得る刊行物、記録、図、またはあらゆる他の表現手段を含む。キットの説明書は、例えば、化合物および/または組成物を含有する容器に貼付されるか、または化合物および/または組成物を含有する容器と共に発送されてもよい。代替的に、受取人が説明書および化合物を協同的に使用するという考えのもとに、説明書は、容器とは別に発送されてもよい。説明書の配送は、例えば、キットの有用性を伝達する刊行物または他の表現手段により物理的に配送されるか、または代替的に、例えば、電子メール、またはウェブサイトからのダウンロード等のコンピュータ手段による電子送信により達成されてもよい。
【0099】
ある実施形態において、キットは、組成物の調製に有用な2つのディスペンサを備える。1つのディスペンサは、二酸化塩素の粒子状前駆体を含む。第2のディスペンサは、水性媒体に増粘剤成分を含む。
【0100】
別の実施形態において、キットは、粒子状二酸化塩素形成反応物(粒子状前駆体)および水性媒体の混合物を含む、分配ユニットを含む。一実施形態において、分配ユニットは、ハウジングと一体となった隔離板または仕切りを有する単一のハウジングユニットを備えるため、粒子状前駆体および水性媒体は、分配ユニットから分配された後にのみ交わる。別の実施形態において、分配ユニットは、粒子状前駆体および水性媒体を最初は分離するが、脆弱な仕切りが透過される時に、粒子状前駆体および水性媒体を混合することができる脆弱な隔離板または仕切りを有する、単一ハウジングユニットを備える。第3の実施形態において、分配ユニットは、1つは粒子状前駆体用、そしてもう1つは水性媒体用の、少なくとも2つの個別の脆弱な容器を保持する分配ユニットを備え、個別の脆弱な容器は、圧力の印加時に破壊される。
【0101】
キットのいくつかの実施形態において、粒子状前駆体は、ASEPTROL S−Tab2顆粒剤等の、ASEPTROL顆粒剤である。キットのいくつかの実施形態において、増粘剤成分はCMCである。キットのいくつかの実施形態において、粒子状前駆体は、ASEPTROL S−Tab2顆粒剤を含み、増粘剤成分は、CMCを含む。
【実施例】
【0102】
組成物、システム、装置、および方法はさらに、以下の実験例の参照により詳細に記載される。これらの実施例は、単に例示的な目的として提供されるものであり、特に記載のない限り、限定されるものではない。したがって、組成物、システム、装置、および方法は、以下の実施例により限定されると解釈されるものではなく、本明細書に提供される教示の結果として明らかになるあらゆる、そして全ての変形を包含するものと解釈されるものとする。
【0103】
実験例1:細胞毒性の分析
哺乳類細胞における二酸化塩素の効果を試験するために、以下の実験を実施した。異なる量の亜塩素酸塩アニオンを含む2系列の試料を調製した。実施例1〜4は、高吸収性ポリアクリレートゲル(ゲルタイプ「S」と標識)を使用した。実施例5〜8は、カルボキシメチルセルロース(CMC)ゲル(ゲルタイプ「C」と標識)を使用した。
【0104】
ASEPTROL S−Tab2顆粒剤が、本実験に使用したゲル組成物において使用された。顆粒の化学組成物を表1に示す。
【0105】
【表1】

【0106】
亜塩素酸ナトリウム(Aragonesas Energia of Spain)は、工業グレードであり、通常、80質量%(0.8)のNaClO2、および20%のNaCl、NaOH、Na2CO3、およびNa2SO4等の無機安定剤塩を含有する。ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム塩(NaCl2(CNO)3・2H2O)は、ACL−56として、Oxychemから購入した。
【0107】
顆粒剤を作製した錠剤は、基本的に、米国特許第6,432,322号の実施例4に記載したものと同じように調製したが、これは参照により本明細書に援用される。つまり、顆粒剤の別個の成分のそれぞれを乾燥させた。適切な量の成分を一緒に混合し、水圧テーブルプレスを用いて錠剤形態に圧縮した。このように形成された錠剤を乳鉢および乳棒を用いて顆粒に粉砕した。得られた顆粒を40メッシュの米国標準スクリーンを用いてスクリーニングし、−40メッシュ粒群を実験に使用した。
【0108】
ASEPTROL S−Tab2錠剤は、高度の亜塩素酸塩アニオンのClO2への変換を有する(米国特許第6,432,322号の実施例を参照)。典型的には、このような錠剤から作製された溶液は、残留亜塩素酸塩アニオンの約10倍のClO2を含有する。水(液体)と接触すると、水は、構成物の飽和水性溶液を形成する錠剤の孔に吸収される。このような条件(高濃度の亜塩素酸塩アニオンおよび低pH)は、以下の反応により二酸化塩素(ClO2)を産生するための亜塩素酸塩アニオン(ClO2-)の酸または塩素との反応に有利である。
【0109】
5NaClO2+4H+→4ClO2+NaCl+4Na++2H2O 等式3
2NaClO2+OCl-+H+→2ClO2+NaCl+NaOH 等式4
【0110】
溶液中の残留亜塩素酸塩アニオンは、いくつかの供給源から生じることができる。溶液中の残留亜塩素酸塩アニオンの供給源の1つは、ASEPTROL錠剤(または顆粒剤)の外表面からバルク溶液中に溶解する亜塩素酸塩ナトリウムである。亜塩素酸塩アニオンのClO2への変換率は、極希釈で低く、一般的に中性pH条件のバルク溶液であるため、錠剤または顆粒剤の外表面から溶解するあらゆる亜塩素酸塩アニオンは実質的に未変換のままであり、溶液中に亜塩素酸塩として留まる。結果として、ClO2への変換前に、亜塩素酸ナトリウムの表面溶解を強化するものは、得られる溶液またはゲルの亜塩素酸塩アニオン濃度の上昇を生じる。
【0111】
それぞれのベースゲル(水性増粘流体)は、最終試料の異なる活性成分濃度を補うためにわずかに異なる。調製されたゲル試料における増粘剤成分の最終濃度は、それぞれの系列内で同じであった。それぞれの使用は、約30グラムの量で作製された。ベースゲルは、脱イオン水をゲル化剤(増粘剤成分)と混合することにより調製された。ゲル化剤を完全に水和させるために、混合物を数時間から一晩放置した。次いで、ベースゲル混合物を攪拌し、ベースゲルを均一化した。
【0112】
使用する少し前にASEPTROL顆粒剤をベースゲルと混合することにより、試料を調製した。性能の損失を避けるために、使用前のASEPTROL物質の周囲湿度または水への曝露を最小限にした。ASEPTROL顆粒剤をベースゲルに添加した後、試料をステンレススチールまたはプラスチックのヘラで30秒間混合し、蓋をして室温で5分放置した。次いで、試料を30秒間、2回目の混合をし、試料を均一化した。調製された試料は、試験の時間まできつく蓋をした。亜塩素酸ナトリウム顆粒剤および調製された試料を強い紫外線から保護し、紫外線誘発分解を制限した。試料が調製された後、2時間以内に試験を開始した。
【0113】
他の試料のヨウ化カリウム(KI)およびチオ硫酸ナトリウムを用いて、二酸化塩素濃度をpH7緩衝滴定により評価した。試料1および5は、二酸化塩素がゼロであった。試料2および6は、約30ppmのClO2であった。試料3および7は、約40ppm、試料4および8は、約580ppmのClO2であった。
【0114】
増粘流体組成物中の亜塩素酸塩アニオンを直接測定するための非常に正確な方法は存在しない。したがって、それぞれの調製された試料に場合によっては存在する亜塩素酸塩アニオンの最大濃度を以下に提供する。反応物が水性媒体の存在下で活性化され、二酸化塩素を生成し、これにより亜塩素酸塩アニオンを消費するため、亜塩素酸塩アニオンの実際の量は、最大以下であることが予想される。試料に場合によっては存在する亜塩素酸塩アニオンの最大量は、以下の式を用いて算出された:
((S−Tab2顆粒剤質量×顆粒剤中の亜塩素酸ナトリウム質量分率×亜塩素酸ナトリウム中の亜塩素酸塩質量分率×亜塩素酸ナトリウムの基準質量分率)×1000)/最終試料の総質量。S−Tab2顆粒剤で使用された亜塩素酸ナトリウムの質量分率は、0.07である。亜塩素酸ナトリウム中の亜塩素酸塩の質量分率は、0.74である。顆粒剤で使用された亜塩素酸ナトリウム粉末中の実際の亜塩素酸ナトリウムの基準質量分率(すなわち、亜塩素酸ナトリウムの純度)は、0.8である。したがって、例えば、ゲル試料2の1グラム当りのミリグラムのオキシ−塩素アニオンの算出は、
((0.143g×0.07×0.74×0.8)×1000)/30グラム最終試料である。
【0115】
実施例の最終調合物を表2および表3に示す。
【0116】
【表2】

【0117】
【表3】

【0118】
それぞれの調製された試料をUSP<87>に従い試験した。方法は、寒天ゲル中沈降反応を用いた局所ゲル産物と接触させた後、哺乳類細胞培養の生体反応を決定することを含む。本試験の細胞は、血清補足MEM(最小必須媒体)中で培養されたL929哺乳類(マウス)線維芽細胞である。80%集密を超える細胞単層を、加湿インキュベータで、24時間以上、37℃で成長させた後、寒天で覆った。寒天層は、試験検体から滲出する化学物質の拡散を可能にする一方で、「クッション」の機能を果たし、機械損傷から細胞を保護する。試験される物質は、後に寒天上に配設される1枚のフィルタ紙に塗布される。
【0119】
特定的に、紙ディスクを減菌食塩水に浸し、ディスクを飽和する。吸収された食塩水の量が決定される(湿潤前と後にディスクを量る)。試験検体の分量は、湿潤されたディスクの表面上に分配される。検体アリコートは、ディスクの範囲内に制限されるが、ディスク全体に広げられない。検体アリコートを伴うディスクを再度量り、ディスク上の試料の量を評価する。ディスクは、次いで、寒天重層の上に配設される。細胞毒性の証拠のため、培養物を時間と共に定期的に評価し、表4に要約するように、0(細胞毒性の徴候なし)〜4(重度の細胞毒性)のスケールで類別した。試験の48時間後に、試料に曝露された細胞培養のいずれもが軽度の細胞毒性(グレード2)を示さない場合、試料は、試験の必要条件を満たすと考えられる。48時間内にグレード3またはグレード4の反応を示す試料は、細胞毒性と考えられる。
【0120】
【表4】

【0121】
本実験例で調製されたそれぞれの実施例の試験量は、約0.1cc(0.1mL)であった。結果を表5に示す。
【0122】
【表5】

【0123】
試料1、2、5、および6は、USP生体外生体反応の基準を満たし、生体適合性を示した。試料3、4、7、および8は、USP生体外生体反応の必要条件を満たさなかった。従って、約0.2mgの亜塩素酸塩アニオン/グラムゲルを超える塩素酸塩アニオンの最大濃度を有するゲルは、本実施例で細胞毒性効果を生じた。これらのデータは、細胞毒性が、用量依存形式で二酸化塩素、オキシ−塩素アニオン、またはS−TAB2顆粒剤のいくつかの他の構成物の存在に関連することを示唆する。
【0124】
実験例2:細胞毒性の分析
細胞毒性が、他の場合によっては有害な成分にではなく、オキシ−塩素アニオンにより誘発されることを確証するために、以下の実験が実施された。
【0125】
細胞毒性の誘発における役割において様々な成分または条件を試験するために、一連の試料を調製した。本実験の試料のいくつかを調製するために、ASEPTROL S−Tab10錠剤を使用した。錠剤の化学組成物を表6に示す。基本的に、米国特許第6,432,322号の実施例5に記載されるように、ASEPTROL S −Tab10錠剤を調製した。
【0126】
【表6】

【0127】
全試料は、増粘剤成分としてNaCMCを含んだ。
【0128】
試料9、16、および17は、ASEPTROL S−Tab10錠剤から調製した−40メッシュ分率顆粒剤を用いて調製した。試料10、19、および20は、非顆粒形態のASEPTROL S−Tab10錠剤の成分を用いて調製した。特定的に、5つの成分を乾燥させ、混合して、表5に示す組成物を有する圧縮および顆粒に粉末を形成したが、粉末は圧縮および顆粒にしなかった。したがって、試料9および10は、同一の化学組成物を有するが、異なる物理形態の固形成分で作製される。同様に、試料16および19は、同一の組成物を有し、試料17および20も同様である。試料11〜14は、ASEPTROL錠剤の成分のサブセットを有する粉末を用いて調製され、1つ以上の成分が置換された(詳細は表7の第2コラムを参照)。試料15は、実質的に純粋なClO2を含有した。試料18は、NaCMCのみである。
【0129】
試料9〜14および16〜20は、実験例1に記載するように調製した。つまり、試料は、使用する少し前に固体画分(例えば、ASEPTROL顆粒剤)をベースゲルと混合することにより調製される。ベースゲルは、水和されたNaCMCであった。固体画分をベースゲルに添加した後、試料をステンレススチールまたはプラスチックのヘラで30秒間混合し、蓋をして室温で5分間、放置した。次いで、試料を30秒間、2回目の混合をし、試料を均一化した。調製された試料は、試験の時間まできつく蓋をした。亜塩素酸ナトリウム顆粒剤および亜塩素酸ナトリウムを含む他の固体混合物、並びに調製された試料を強い紫外線から保護し、紫外線誘発分解を制限した。試料が調製された後、2時間以内に試験を開始した。
【0130】
試料15は、水和されたNaCMCのベースゲルを用いて調製され、実質的に純粋な二酸化塩素溶液は、試料が調製された日と同日に調製され、試験が開始された。ベースゲルは、0.75gmのカルボキシメチルセルロースナトリウム粉末(Sigma−Aldrich,典型的には700,000モル)を19.2gmの脱イオン水に添加することにより調製され、混合物を一晩蓋をした瓶の中で放置し、混合してベースゲルを均一化した。実質的に純粋な二酸化塩素溶液を以下のように調製した:12錠(12)のASEPTROL S−Tab10錠剤(各1.5グラム)を1リットルの飲料水道水の中に留置し、>1000ppmの二酸化塩素の濃い黄色の源溶液を産生した。溶液源から空気中に二酸化塩素を取り除くために、1分当り約1リットルの速度で、源溶液の底に空気を気泡化した。次いで、得られた二酸化塩素積載空気を1リットルの脱イオン水の底に気泡化し、純粋な二酸化塩素の溶液を形成した。ClO2と、場合によってはある程度の水蒸気のみが供給源から生成物溶液に移入された。全ての塩成分は、溶液源に残った。結果として、生成物溶液は、実質的に純粋なClO2の溶液であった。源溶液の黄色がほぼ薄れた時に、気泡化を終了した。実質的に純粋な二酸化塩素溶液の試料は、Hachモデル2010UV/可視分光光度計を用いて、二酸化塩素の濃度において分析され、実質的に純粋な溶液は、700ppm質量の二酸化塩素を含有することが分かった。10グラムの700ppmの純粋な二酸化塩素溶液をベースゲルに添加し、混合して、約233ppmの二酸化塩素を含有し、実質的にオキシ−塩素アニオンを含まないゲルを産生した。上記のように、NaClO2含有成分および調製された試料を強い紫外線から保護し、紫外線誘発分解を制限した。全ての固体成分を水への曝露(例えば、周囲湿度)からも保護した。
【0131】
試料17および20が、0.1cc用量ではなく、0.04cc用量で試験されたことを除き、試料は、実験例1に記載されるように試験された。試料が調製された後、2時間以内に試験を開始した。
【0132】
結果を表7に示す。
【0133】
【表7】

【0134】
試料9〜11、13、16、17、19、および20の全ては、USP生体外生体反応の基準を満たさなかった。したがって、USP<87>の溶出型試験の模倣は結果を変更しなかった(試料10および19、並びに試料9および16を比較)。用量の低減は、結果を変更しなかった(試料9および17、並びに試料10および20を比較)。これらのデータは、試験に使用された用量または3Xの水を伴うゲルの使用のいずれも、観察された細胞毒性に影響を与えなかった。
【0135】
試料9および10の結果は、ASEPTROL成分の物理形態が、著しく細胞毒性に影響しなかったことを示唆する。試料11および13の結果は、塩素産生剤のNaDCCAの存在が、著しく細胞毒性に影響しなかったことを示唆する。この結果は、観察された細胞毒性が塩素から生じなかったことを示唆する。
【0136】
試料12、14、15、および18は、USP生体外生体反応の基準を満たし、生体適合性を示唆する。これらのデータは、細胞毒性がゲル化剤のみによって生じなかったことを示唆する(試料18)。純粋なClO2を含有し、他の塩類を含有しない試料15が細胞変性作用を生じなかったという観察は、二酸化塩素自体が、ASEPTROL S−Tab10顆粒剤を含む試料で観察された細胞毒性の原因ではないことを示唆する。
【0137】
試料12、14、15、および18の共通した特徴は、いずれも亜塩素酸塩アニオンを含有しないことである。したがって、試料12、14、および18のいずれもオキシ−塩素アニオンを含有しない。純粋なClO2を含む試料15が、ClO2の分解によりいくらかのオキシ−塩素アニオンを含有する場合があることは形態上可能であるが、その量は微量である。
【0138】
これらの結果を考慮すると、オキシ−塩素アニオンが、これらの実験で観察された細胞毒性の原因となる原因物質であるという結論に達する。
【0139】
実験例3:細胞毒性の分析
実験例1のデータは、オキシ−塩素アニオンの細胞毒性が用量依存であることを示唆する。特定的に、細胞毒性は、1gのゲル当り0.2mg以下の亜塩素酸塩アニオンを有するゲルにおいては観察されないが、細胞毒性は、0.5mg以下の亜塩素酸塩アニオン/グラムを有するゲルにおいて観察された。この実験は、試験される増粘流体組成物の亜塩素酸塩アニオン濃度のより正確な推定を可能にする、亜塩素酸ナトリウム溶液を用いて、亜塩素酸塩アニオンの細胞毒性をさらに検査するために立案された。加えて、漂白剤として10%の過酸化水素を含有する、商業的に入手可能な、市販の過酸化物ベースの歯牙白化製品も評価された。
【0140】
試料22〜24は、使用する少し前に亜塩素酸ナトリウムの水性溶液をベースゲルと混合することにより調製した。したがって、試料22〜25のいずれも二酸化塩素を含有しなかった。これらの試料は、酸供給源または遊離ハロゲン供給源も含有しなかった。試料22〜24は、30秒間、水性亜塩素酸ナトリウム溶液をベースゲルと混合し、試料に蓋をし、室温で5分間放置させ、さらに30秒間混合することにより調製した。試料25は、同様に調製されたが、亜塩素酸ナトリウム溶液の代わりに水を使用した。試料22〜25のいずれも、酸供給源または遊離ハロゲン供給源を含有しなかった。
【0141】
試料26は、10%の過酸化水素を含有するゲルである、市販(OTC)の製品であり、ゲル物質は、ホイルで包まれたストリップ上に存在するように使用された。
【0142】
試料21は、水中でASEPTROL S−Tab10錠剤を反応させることにより調製された、実質的に純粋な二酸化塩素溶液を用いて調製された。特定的に、1.5mg錠剤1つを200mLのH2O中で反応させた。得られた二酸化塩素溶液は、散布されなかった。溶液の二酸化塩素濃度は、Hachモデル2010UV/可視分光光度計を用いて評価されるように、約733ppmであった。したがって、試料21は、1部の溶液を2部のゲルで希釈した後、約244ppmのClO2を有した。
【0143】
細胞毒性の結果を表8に示す。
【0144】
【表8】

【0145】
試料22〜24の結果は、亜塩素酸塩アニオンが、高濃度で、ヒト細胞に対して細胞毒性であり、実験例2の結論を確証することを示唆する。試料21の結果は、非細胞毒性である高二酸化塩素濃度の増粘流体組成物が、ASEPTROL S−Tab10錠剤を用いて調製された、実質的純粋な二酸化塩素溶液を用いて調製され得ることを示唆する。
【0146】
このデータは、10%のH22が、哺乳類細胞に対して細胞毒性(試料26)であることも示す。実際、反応地帯は、ゲル検体を1cm以上超えて伸長し、これは重度の細胞毒性を示唆する。
【0147】
実験例4:追加の細胞毒性試験
細胞毒性および増粘流体組成物中のオキシ−塩素アニオン濃度間の関係をさらに検査するために、以下の実験を実施した。
【0148】
試料27〜31は、使用する少し前に亜塩素酸ナトリウム(10mL)の水性溶液を20gのベースゲル(水和された高粘性NaCMC)と混合することにより調製した。NaCMCは、USPグレードのCMCであり、Spectrum Chemical(ストック#CA194)から購入した:1%の水性溶液は、約1500〜3000cpの粘度である。ベースゲルは、Sigma Aldrichから購入したCMCと同等の流体力学を達成するために、最終組成物30g当り0.85gのNaCMCを用いて調製された。試料27〜30のいずれも二酸化塩素を含有しなかった。試料27は、同様に調製されたが、亜塩素酸ナトリウム溶液の代わりに水を使用した。試料26〜30は、均一になるまで、水性亜塩素酸ナトリウム溶液(または水)をベースゲルと混合することにより調製した。
【0149】
試料6と同様の相対組成物と約40ppmの二酸化塩素とを有する試料31は、二シリンジ混合方法を用いて調製された。シリンジの1つは、−40メッシュASEPTROL S−Tab2顆粒剤(0.048g)を含有した。第2のシリンジは、ベースゲル(10グラム)を含有した。2つのシリンジの内容物を以下のように混合した。顆粒剤を含有するシリンジを、先端を上に向けたままの状態に保持した。アウトレットプラグを外し、ナイロンコネクタを取り付けた。ナイロンコネクタのもう一端をベースゲルを含有するシリンジのアウトレットに取り付けた。ゲルシリンジのプランジャをゆっくり押し下げ、ゲルを顆粒剤に排出した。次いで、ゲルと顆粒剤との混合物を5分間放置し、顆粒剤を活性化し、これにより二酸化塩素を生成するが、この間、シリンジは接続されたままである。5分後、少なくとも15回、または試料の色が均一になるまで、混合物が2つのシリンジ本体間を反復移動するように、シリンジのプランジャを活発に交互に押し下げた。その後、ゲルは、USP<87>の寒天ゲル中沈降反応に使用可能となる。
【0150】
細胞毒性試験の結果を表9に示す。
【0151】
【表9】

【0152】
これらのデータは、亜塩素酸塩アニオンが、用量依存関係においてヒト細胞に細胞毒性であるという知見をさらに支持する。最終組成物1グラム当り0.2mgの亜塩素酸塩を含有する試料29は、試験に不合格であったが、1グラム当り0.1mgの亜塩素酸塩アニオンを含有する試料28は、合格であった。これは、組成物1グラム当り0.2mg未満の亜塩素酸塩アニオンを有する二酸化塩素組成物が、ヒト細胞に対して細胞毒性ではないことを示唆する。この結果は、ASEPTROL顆粒剤または粉末で生成されたゲル中に存在する亜塩素酸塩アニオンが、二酸化塩素の生成で消費されるという予想も支持する。特定的に、ASEPTROL顆粒剤または粉末を用いて調製され、最終組成物の1グラム当り最大量の0.2mgの亜塩素酸塩アニオンを有するゲルは、非細胞毒性であることが分かった。したがって、これらのゲル中の亜塩素酸塩アニオンの見かけ濃度は、1グラム当り0.2mg未満の亜塩素酸塩であることが推定される。
【0153】
実験例5:抗細菌試験
非細胞毒性の二酸化塩素溶液および増粘組成物の抗細菌効力を確認するために、実験が実施された。3つの異なる二酸化塩素濃度の非細胞毒性の二酸化塩素溶液を試験した。異なる手段で調製された、非細胞毒性である二酸化塩素増粘組成物を試験した。
【0154】
2つのヒトの日和見病原体を試験に使用した:メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)および緑膿菌(P.Aeruginosa)。
【0155】
試料32〜34は、それぞれ、約599ppm、約99ppm、および約40ppmの二酸化塩素を含有する二酸化塩素溶液である。試料35および36は、それぞれ、約110ppmの二酸化塩素および約40ppmの二酸化塩素を含有する増粘二酸化塩素組成物である。
【0156】
試料32〜34は、以下のように調製された。599ppmの二酸化塩素を含む実質的に純粋な二酸化塩素溶液は、16オンスの琥珀色の瓶で、1.5グラムのS−Tab10錠剤2錠を400mLの脱イオン水に添加することにより作製された。瓶に蓋をして、室温で10分間、攪拌または激しくかき混ぜずに錠剤を水と反応させた。その後、瓶を旋回させて内容物を混合し、残ったあらゆる固体を溶解した。最終溶液の二酸化塩素濃度を、Hach2010分光光度計を用いて測定した。脱イオン水を用いた適切な希釈により、599ppmの二酸化塩素溶液からさらに3つの溶液(約319ppm、約99ppm、および約40ppm)を作製した。
【0157】
試料35および36は、第1および第2のベースゲルを用いて調製された。第1および第2のベースゲルは、わずかに異なるが、調製されたゲル試料35および36における増粘剤成分の最終濃度は、同じであった。それぞれの試料は、約30グラムの量で作製された。ベースゲルは、脱イオン水をゲル化剤(増粘剤成分)と混合することにより調製した。ゲル化剤を完全に水和させるために、混合物を数時間から一晩放置した。次いで、ベースゲル混合物を攪拌して、ベースゲルを均一化した。
【0158】
試料35は、使用する少し前に、10mLの約319ppmの二酸化塩素溶液を20グラムの第1のベースゲルと混合することにより調製した(試料32〜34に関する上述の調製)溶液をベースゲルに添加した後、試料をステンレススチールまたはプラスチックのヘラを用いて、30秒間混合し、蓋をして、室温で10分間放置した。次いで、試料を30秒間、2回目の混合をし、試料を均一化した。
【0159】
試料36は、使用する少し前に、固体画分(−40メッシュASEPTROL S−Tab2顆粒剤)を30グラムの第2のベースゲルと混合することにより調製した。ベースゲルは、水和されたNaCMCであった。固体画分をベースゲルに添加した後、試料をステンレススチールまたはプラスチックのヘラを用いて、30秒間混合し、蓋をして、室温で5分間放置した。次いで、試料を30秒間、2回目の混合をし、試料を均一化した。
【0160】
調製された試料は、試験の時間まできつく蓋をした。ASEPTROL顆粒剤および調製された試料を強い紫外線から保護し、紫外線誘発分解を制限した。
【0161】
試料が調製された後、2時間以内に試験を開始した。
【0162】
2つの病原体であるMRSA ATCC33591および緑膿菌ATCC9027に対する試料の効力は、2007年現在のUSP29、61章無減菌製品微生物学的試験:
生菌数試験(Microbiological Examination of Nonsterile Products:Microbial Enumeration Test)に従うDow923の「振とうフラスコ」試験を用いて評価された。つまり、初回の希釈は、脳−心臓滲出培地で行われた。最終希釈は、75mLのリン酸緩衝水で行われた。初期の生物個体数を決定するために、標準的な平板菌数をそれぞれの振とうフラスコ上で実施した。試験物質量(0.75g)を量り、接種された75mLのリン酸緩衝水と共に、別個の減菌使い捨てPBW容器上に配置した。試料の接種レベルは、MRSAおよび緑膿菌において、それぞれ420,000cfu/mLおよび250,000cfu/mLであった。それぞれのフラスコを手首動作振とう機に配置し、1時間、激しく振とうさせた。フラスコを振とう機から外し、試験溶液をペトリ皿に配設した。次いで、標準方法の寒天を添加し、皿をインキュベートした。好気性生菌数/mLを15分、30分、1時間、および24時間で評価した。
【0163】
結果を表10に要約する。
【0164】
【表10】

【0165】
データは、溶液またはゲル(増粘流体組成物)に関わらず、二酸化塩素の全濃度で、実質的に非細胞毒性である組成物が、MRSAおよび緑膿菌の両方に対して強力な抗細菌活性を示したことを例証する。したがって、二酸化塩素含有組成物の抗細菌活性は、細胞毒性であるオキシ−塩素アニオンを必要としない。実質的に非細胞毒性組成物は、したがって、硬質面の消毒剤として、および創傷の細菌に対する治療において有用である。
【0166】
実験例6:創傷治癒試験
局所投与における非細胞毒性である二酸化塩素増粘組成物が創傷治癒に悪影響を及ぼすかを決定するために、動物モデルとしてブタを用いて、以下の実験を実施した。ブタは、1つにはブタの皮膚がヒトの皮膚と多くの特徴を共有するという理由で、頻繁に創傷治癒のモデルとなる。ブタのモデルは、ヒトの創傷の使用目的の候補薬剤の評価において優れたツールであると考えられる。
【0167】
実験は、3頭の雌のヨークシャーブタを使用し、それぞれ、実験開始時、体重は45〜52lbの間であった。ブタは、「動物実験に関する指針DHEW」(NIH)に従い収容された。ブタは、毎日、新鮮なブタ飼料を与えられ、水は自由に摂取させた。ブタは、12時間の明/暗周期の温度調節された飼育室に収容された。飼育室は、清潔に保たれ、寄生虫はいなかった。
【0168】
動物をイソフルランで麻酔し、脇腹当り4つの、8つの全層切除(2.5cm×2.5cm角)を各動物に行った。したがって、別個の試験部位は総計24であった。3つの異なる試料37〜39を、それぞれ6つの部位で試験した。残りの6部位は、未処置対照とした。試料の0.5mLアリコートを連続して7日間、毎日、試験部位に塗布した。
【0169】
試料37および38は、それぞれ、約40ppmおよび約200ppmで、二酸化塩素を含む増粘水性流体組成物である。試料37のベースゲルは、試料38のベースゲルとはわずかに異なるが、調製されたゲル試料37および38における増粘剤成分の最終濃度は同じであった。それぞれの試料は、約30グラムの量で生成された。ベースゲルは、脱イオン水をゲル化剤(増粘剤構成要)と混合することにより調製された。ゲル化剤を完全に水和させるために、混合物を数時間から一晩放置した。次いで、ベースゲル混合物を攪拌して、ベースゲルを均一化した。
【0170】
試料37は、試料36が調製された同様の様式で調製された。試料38は、約600ppmの二酸化塩素溶液(実験例5に記載するように調製された)の10mLアリコートを使用したことにおいて異なるが、試料35と同様の様式で調製され、約30グラムの約200ppmの二酸化塩素水性ゲルを得た。
【0171】
試料39は、二酸化塩素の約200ppmの水性溶液である。試料39は、約600ppmの実質的に純粋な二酸化塩素溶液(実験例5に記載するように調製した)を脱イオン水で希釈することにより調製した。
【0172】
調製された試料は、試験の時間まできつく蓋をした。亜塩素酸ナトリウム顆粒剤および調製された試料を強い紫外線から保護し、紫外線誘発分解を制限した。試料が調製された後、2時間以内に試験を開始した。試料は、毎日新しく調製した。
【0173】
創傷治癒におけるそれぞれの試料の効果は、創傷面積の収縮を評価することにより評価された。それぞれの創傷面積は、創傷面積決定試験の1日目および7日目に、透明な酢酸によってトレースされた。創傷のトレースを酢酸シートから切り取り、量った。換算計数(グラムから平方センチメートル)は、同じ酢酸シートの10cm×10cm部分を量ることにより生成される。創傷は、7日目の終了時に撮影された。創傷面積の収縮は、以下の式を用いて算出された:(1日目の面積−7日目の面積)/1日目の面積。
【0174】
それぞれの試料は、連続して7日間、毎日塗布された。創傷は、毎日、ポリウレタンフィルムドレッシングで巻かれ、ELASTIKONテープ(Johnson&Johnson,New Brunswick NJ)で固定された。
【0175】
【表11】

【0176】
データを表11に示す。対照創傷と比較して、処置された創傷の全層収縮率に統計的な相違はなかった。したがって、非細胞毒性である二酸化塩素増粘組成物の全層経皮創傷への局所投与は、創傷治癒の速度に悪影響を及ぼさないと結論付けられる。
【0177】
本明細書に引用されるそれぞれの、および全ての特許、特許出願、および刊行物の開示は、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0178】
特定の実施形態を参照しながら組成物、システム、装置、および方法を開示したが、他の実施形態および変形が、組成物、システム、装置、および方法の精神および範囲から逸脱することなく、他の当業者によって考案され得ることは明らかである。付属の特許請求の範囲は、全てのこのような実施形態および同等の変形を含むように解釈されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低刺激性酸化組成物であって、前記組成物は、
二酸化塩素と、
第2の酸化剤と、を含み、
前記第2の酸化剤を含むが二酸化塩素を含まない参照酸化組成物と比較して低刺激性であり、前記参照酸化組成物は、前記酸化組成物と同様の性能効力を有する、組成物。
【請求項2】
前記第2の酸化剤は、過酸化剤である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物は、組成物1グラム当り約0.2ミリグラム未満のオキシ−塩素アニオンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物は、約5〜約2000ppmの二酸化塩素を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物は、約4.5〜約11のpHを有する、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
増粘剤成分が、天然親水コロイド、半合成親水コロイド、合成親水コロイド、および粘土からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記増粘剤成分は、半合成親水コロイドである、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記半合成親水コロイドは、カルボキシメチルセルロースである、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記カルボキシメチルセルロースは、カルボキシメチルセルロースナトリウムである、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記過酸化剤は、過酸化水素である、請求項2に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物は、約1質量%〜約30質量%の過酸化水素を含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
a)二酸化塩素と、
b)過酸化成分と、
c)水性流体と、を含む流体組成物であって、
低刺激性である、流体組成物。
【請求項13】
前記組成物は、組成物1グラム当り約0.2ミリグラム未満のオキシ−塩素アニオンを含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物は、約5〜約2000ppmの二酸化塩素を含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物は、約4.5〜約11のpHを有する、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
過酸化物は、過酸化水素である、請求項12に記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物は、約1質量%〜約30質量%の過酸化水素を含む、請求項16に記載の組成物。

【公表番号】特表2011−528357(P2011−528357A)
【公表日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−518825(P2011−518825)
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【国際出願番号】PCT/US2009/050442
【国際公開番号】WO2010/009064
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(505470786)ビー・エイ・エス・エフ、コーポレーション (81)
【Fターム(参考)】