説明

非複合ボツリヌス神経毒素を精製するための方法およびシステム

ボツリヌス神経毒素をクロマトグラフィー的に精製するための方法およびシステムが提供される。これらの方法およびシステムは、薬学的調製物中の活性成分として使用できる、高純度および収率である非複合型のボツリヌス神経毒素の効率的な精製を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は2009年10月21日に出願された米国仮出願第61/253,810号の優先権の利益を請求する。この米国仮出願の内容はそれらの全体が参照により組み込まれる。
【0002】
本発明は、一般的には、高純度で高い効力の産物を生成するために、細胞培養物を含まないボツリヌス神経毒素を精製するためのクロマトグラフィーの方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
ボツリヌス毒素は、細菌Clostridium botulinum(ボツリヌス菌)ならびにClostridium butyricum(酪酸菌)およびClostridium baraffiなどのクロストリジウム種によって産生される神経毒性タンパク質である。この毒素は、神経筋伝達を遮断し、ヒトおよび動物において、ボツリヌス中毒として知られる神経麻痺の病気を引き起こす。C.botulinumおよびその胞子は、通常は土壌および腐敗している動物の死体の中に存在し、滅菌が不適切であるかまたは密封が不適切である食品容器中で増殖でき、このことが多くのボツリヌス中毒の症例の原因である。ボツリヌス中毒の徴候は、歩行困難、嚥下困難、および会話困難を含み得、呼吸筋肉の麻痺に進行して、最終的には死に至る可能性がある。
【0004】
A型ボツリヌス毒素は人に知られている最も致命的な天然の物質である。血清型Aに加えて、6種の他の一般的に免疫学的に区別されるボツリヌス毒素、すなわち、血清型B、C、D、E、F、およびGのボツリヌス毒素が特徴付けられてきた。様々な血清型が型特異的な抗体を用いる中和によって区別でき、それらが誘発する麻痺の重篤度、およびそれらが大部分は影響を与える動物種が異なっている。既知のボツリヌス毒素血清型の各々についてのボツリヌス毒素タンパク質分子の分子量は、約50kD軽鎖に接続された約100kD重鎖から構成される約150kDである。それにも関わらず、ボツリヌス毒素は、150kDの毒素と1個以上の非毒性タンパク質との複合体として、クロストリジウム細菌によって放出される。例えば、A型ボツリヌス毒素は、900kD、500kD、および300kDの複合体(およその分子量)として存在する。
【0005】
既知の毒性効果にも関わらず、A型ボツリヌス毒素は、例えば、骨格筋活動過剰によって特徴付けられる神経筋障害を含む種々の兆候を治療するために臨床的に使用されている。例えば、BOTOX(登録商標)は、カリフォルニア州アーバインのAllergan,Inc.から市販されているA型ボツリヌス毒素複合体の商標である。A型ボツリヌス毒素は、例えば、特発性眼瞼痙攣、斜視、頸部ジストニア、および眉間(顔面)のしわの治療において用途を見い出している。他の血清型もまた臨床的に使用されてきた。例えば、B型ボツリヌス毒素は、頸部ジストニアを治療する際の使用のために示されてきた。ボツリヌス毒素は、運動ニューロンのシナプス前膜に高い親和性で結合し、ニューロンに移行し、その後、アセチルコリンのシナプス前放出を遮断すると考えられている。
【0006】
典型的には、臨床使用のためのボツリヌス毒素は、細胞培養から単離され、種々の精製アプローチが使用されてきた。歴史的には、この毒素は、一連の沈殿および接線流ろ過工程によって、複合体型中で精製される。例えば、Schantz E.J.,et al.,Properties and use of Botulinum toxin and other microbial neurotoxins in medicine,Microbiol Rev 1992 March 56(1):80−99を参照のこと。しかし、このようなアプローチは、比較的低い収率で、典型的には、約10%未満で提供されている。他のアプローチは、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、および/またはアフィニティークロマトグラフィーを使用してきた。例えば、Schmidt J.J.,et al.,Purification of type E botulinum neurotoxin by high−performance ion exchange chromatography,Anal.Biochem.1986 July;156(1):213−219;Simpson L.L.,et al.,Isolation and characterization of the botulinum neurotoxins,Harsman S,ed.Methods in Enzymology.Vol.165,Microbial Toxins:Tools in Enzymology San Diego,Calif:Academic Press;vol 165:pages 76−85(1988);Kannan K.,et al.,Methods development for the biochemical assessment of Neurobloc(botulinum toxin type B),Mov Disord 2000;15(Suppl 2):20(2000);Wang Y.C.,The preparation and quality of botulinum toxin type A for injection(BTXA)and its clinical use,Dermatol Las Faci Cosm Surg 2002;58(2002);および米国特許出願公開第2003/0008367号明細書を参照のこと。
【0007】
なお他のアプローチは、完全かつ生物学的に活性なボツリヌス毒素タンパク質ではなく、毒素の重鎖または軽鎖の一方のみに焦点を当てている。例えば、これらの鎖の一方が、組換え手段によって個別に合成される。例えば、Zhou L.,et al.,Expression and purification of the light chain of botulinum neurotoxin A:A single mutation abolishes its cleavage of SNAP−25 and neurotoxicity after reconstitution with the heavy chain,Biochemistry 1995;34(46):15175−81(1995);およびJohnson S.K.,et al.,Scale−up of the fermentation and purification of the recombination heavy chain fragment C of botulinum neurotoxin serotype F,expressed in Pichia pastoris,Protein Expr and Purif 2003;32:1−9(2003)を参照のこと。しかし、これらのアプローチは、完全かつ生物学的に活性なボツリヌス毒素タンパク質を再形成するための余分の工程を必要とする。
【0008】
より最近のアプローチは、ボツリヌス毒素を複合体として精製するために、疎水性相互作用クロマトグラフィー、混合モード、および/またはイオン交換クロマトグラフィーの使用を包含する。例えば、参照により組み込まれる、米国特許第7,452,697号および同第7,354,740号明細書を参照のこと。
【0009】
従って、安定な、生物学的に活性な、しかし非複合型である完全なボツリヌス毒素タンパク質を単離するための精製方法の改善のための必要性が当該分野において存在している。それゆえに、本発明の目的は、これらおよび他の必要性に取り組む組成物および方法を提供することである。
【0010】
前述の議論は、当該分野において直面する問題の性質のより良好な理解を単に提供するために提示されたものであり、いかなる場合においても、先行技術の認可として解釈されるべきではなく、本明細書におけるいかなる参考文献の引用も、このような参考文献が本願に対する「先行技術」を構成することの認可として解釈されるべきではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0008367号
【特許文献2】米国特許第7,452,697号
【特許文献3】米国特許第7,354,740号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Schantz E.J.,et al.,Properties and use of Botulinum toxin and other microbial neurotoxins in medicine,Microbiol Rev 1992 March 56(1):80−99
【非特許文献2】Schmidt J.J.,et al.,Purification of type E botulinum neurotoxin by high−performance ion exchange chromatography,Anal.Biochem.1986 July;156(1):213−219
【非特許文献3】Simpson L.L.,et al.,Isolation and characterization of the botulinum neurotoxins,Harsman S,ed.Methods in Enzymology.Vol.165,Microbial Toxins:Tools in Enzymology San Diego,Calif:Academic Press;vol 165:pages 76−85(1988)
【非特許文献4】Kannan K.,et al.,Methods development for the biochemical assessment of Neurobloc(botulinum toxin type B),Mov Disord 2000;15(Suppl 2):20(2000)
【非特許文献5】Wang Y.C.,The preparation and quality of botulinum toxin type A for injection(BTXA)and its clinical use,Dermatol Las Faci Cosm Surg 2002;58(2002)
【非特許文献6】Zhou L.,et al.,Expression and purification of the light chain of botulinum neurotoxin A:A single mutation abolishes its cleavage of SNAP−25 and neurotoxicity after reconstitution with the heavy chain,Biochemistry 1995;34(46):15175−81(1995)
【非特許文献7】Johnson S.K.,et al.,Scale−up of the fermentation and purification of the recombination heavy chain fragment C of botulinum neurotoxin serotype F,expressed in Pichia pastoris,Protein Expr and Purif 2003;32:1−9(2003)
【発明の概要】
【0013】
本発明は、非複合ボツリヌス毒素を精製するためのシステムおよび方法に関する。1つの実施形態において、この方法は、精製非複合ボツリヌス毒素を得るために、粗非複合ボツリヌス毒素を精製することを含む。この実施形態において、この方法は、アニオン交換カラム上に非複合ボツリヌス毒素を捕捉するために、アニオン交換カラムに粗非複合ボツリヌス毒素をローディングすること;非複合ボツリヌス毒素を含む溶離液を得るために、緩衝液で非複合ボツリヌス毒素を溶出すること;非複合ボツリヌス毒素の捕捉を許容するために、アニオン交換からの溶離液をカチオン交換カラムにローディングすること;ならびに溶離液を得るために別の緩衝液を用いて非複合ボツリヌス毒素を溶離させ、それによって、精製非複合ボツリヌス毒素を得ることを含む。
【0014】
特定の実施形態において、このボツリヌス毒素複合体は、それ自体、多数のクロマトグラフィー工程によって得られる。ある実施形態において、ボツリヌス毒素複合体を得るための方法は、ボツリヌス毒素複合体を含むサンプルを得ること;毒素の捕捉を可能にするために、疎水性相互作用カラムにサンプルをローディングし、ここで、捕捉されたボツリヌス毒素は複合ボツリヌス毒素を含むこと;および複合ボツリヌス毒素を溶出することを含む。次いで、非複合ボツリヌス毒素が複合体から解離され、そして非複合ボツリヌス毒素が、上記の方法に従って精製される。ある実施形態において、サンプルは、酸沈殿を得るためにボツリヌス毒素を含む発酵培養物を酸に供することによって得られ、これは、クロマトグラフィー前のさらなる精製工程に供されてもよく、その非限定的な例には、沈殿物の不溶性物質を濃縮するための接線流ろ過、ヌクレアーゼ消化、清澄化遠心分離、および/またはろ過が挙げられる。
【0015】
ある実施形態において、サンプルは、疎水性相互作用カラムへのローディングの前に、ヌクレアーゼ消化に供される。好ましくは、ヌクレアーゼは、動物産物を含まないプロセスにおいて導き出され、さらにより好ましくは、全体の精製プロセスは、動物産物を含まないか、または少なくとも動物産物を実質的に含まない。
【0016】
ある実施形態において、好ましくは、クロマトグラフィー分離において使用されるサンプルは、上清またはろ過画分である。
【0017】
精製非複合ボツリヌス毒素は、A型、B型、C型、D型、F型、F型、およびG型の少なくとも1種のボツリヌス毒素、好ましくは、約150kDの分子量を有するA型ボツリヌス毒素を含む。ある好ましい実施形態において、精製非複合ボツリヌス毒素は、少なくとも98%純粋であり;および/または少なくとも200 LD50単位/ngの活性を有する。ある実施形態において、この方法は、少なくとも約2mg/Lの発酵培養の収率を生じる。他の実施形態において、この方法は、約1〜約2mg/Lの発酵培養の収率を生じる。
【0018】
本発明のこれらおよび他の態様は、以下の本発明の詳細な説明の参照によってより良好に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、非複合ボツリヌス毒素を直接精製するための本発明に従うプロセスの1つの実施形態(図1A)を、複合ボツリヌス毒素を精製するためのプロセス(図1B)と比較する要約フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、非複合ボツリヌス毒素を精製するためのシステムおよび方法に関する。特定の実施形態において、この方法は、アニオン交換カラムによって非複合ボツリヌス毒素の捕捉を可能にするために、アニオン交換カラムに粗非複合ボツリヌス毒素をローディングすることによって、粗非複合ボツリヌス毒素を精製することを含む。次いで、非複合ボツリヌス毒素は、非複合ボツリヌス毒素を含む溶離液を得るために緩衝液で溶出される。陰イオンカラムからの溶離液は、非複合ボツリヌス毒素の捕捉を許容するために、カチオン交換カラムにローディングされ、精製非複合ボツリヌス毒素は緩衝液で溶出され、それによって、精製非複合ボツリヌス毒素が得られる。
【0021】
ある実施形態において、本発明は、高収率、高純度、および高効力の生成物を生成するために、比較的少ない数の工程での非複合ボツリヌス毒素の精製を提供する。本発明の範囲内にあるプロセスおよびシステムは、安定であるが、発酵培養物から非複合ボツリヌス毒素を効率的に産生するために使用できる。他の実施形態において、この方法は、ボツリヌス毒素複合体を含むサンプルを提供すること、および疎水性相互作用カラムにこのサンプルをローディングすることをさらに含み、その結果、疎水性相互作用カラムによるボツリヌス毒素複合体の捕捉を可能にする。次いで、ボツリヌス毒素複合体は、緩衝液を用いてこのカラムから溶出される。粗非複合ボツリヌス毒素を含む混合物を得るために、粗非複合ボツリヌス毒素は、ボツリヌス毒素複合体から解離される。この実施形態において、粗非複合ボツリヌス毒素を含む混合物は、上記の方法に従って精製され、純粋または実質的に純粋なボツリヌス毒素が得られる。
【0022】
本発明の1つの態様は、活性成分として非複合ボツリヌス毒素を含む薬学的組成物が、複合体型を含むものと比較して、より高い純度を提供できるという認識である。典型的には、ボツリヌス毒素複合体に付随している非毒素タンパク質は複合体の重量の約90%を占め得る。従って、複合体としてのボツリヌス毒素の提供は、必然的に、少なくとも約90重量%の不純物を含有する。言い換えると、少なくとも約80〜約90重量%の薬学的組成物は、活性分子の一部ではなく、その生物学的活性のために必要でもない細胞由来の不純物を含有する。しかし、このような不純物は、患者に投与されたときに、薬物に対する望ましくない免疫学的反応のリスクを増加させる可能性があり;望ましくない副作用のリスクを増加させる可能性があり;および/または病原因子の感染のリスクを増加させる可能性がある、細胞由来の物質を表す。対照的に、本明細書に記載される方法およびシステムによって入手可能な高純度の非複合産物は、薬学的組成物中に残存している可能性がある宿主細胞の不純物の量を減少し、それによって、望ましくない反応および/または感染の付随するリスクを減少する。従って、本明細書に記載されるプロセスおよびシステムは、より安全で、より純粋な薬学的組成物の調製により容易に適している型のボツリヌス毒素を提供できる。
【0023】
さらに、複合型とは異なり、本明細書に記載される方法に従って調製される遊離のボツリヌス毒素は、血液由来産物中での保存のために安定化される必要がない。例えば、典型的には、A型ボツリヌス毒素複合体は、ヒト血液由来のアルブミンを含む賦形剤中で安定化される。例えば、BOTOX(登録商標)は、真空乾燥型でパッケージされた、精製A型ボツリヌス毒素複合体、ヒト血清アルブミン、および塩化ナトリウムからなる。同じことは、DysportおよびXeominについても該当する。スクリーニングは病原因子の夾雑の可能性を減少させるが、一般的には、薬学的調製物中でのヒト血液の使用は、特定の病原因子、例えば、スクリーニングで除去されていないか、またはスクリーニングで除去できていない因子の望ましくない感染のリスクを増加させる。対照的に、本発明に従って調製される遊離のボツリヌス毒素は、本明細書で教示されるように、硫酸アンモニウム中で安定に保存できる。さらにある好ましい実施形態において、本発明の方法およびシステムは、本明細書において議論されるように、実質的に、本質的に、または完全に動物産物を含まない。実質的に、本質的に、または完全に動物産物を含まない毒素産物もまた安定に保存する能力は、動物由来の産物に関連する潜在的なリスクをさらに減少する。従って、本明細書に記載されるプロセスおよびシステムは、安全性によって薬学的適用に特に適している型のボツリヌス毒素を提供し、例えば、ここでは、薬学的組成物は、実質的に、本質的に、または完全に動物産物を含まずに、調製および保存されてもよい。
【0024】
特定の好ましい実施形態において、本明細書に記載されるプロセスおよびシステムは、拡張可能でありおよび/またはcGMPに準拠している。従って、本明細書に記載される方法およびシステムは、例えば、薬学的組成物中での使用のために、非複合ボツリヌス毒素を生じるために、商業的な、工業スケールで使用されてもよい。cGMP準拠プロセスまたはシステムは、米国連邦規制基準によって必要とされるような、現在の優良な製造業務のための規制の要件を順守できるものをいう。ある好ましい実施形態において、非複合ボツリヌス毒素産物は、その保存の容易さおよび使いやすさ、高い活性、高い純度、安定性、および/または安全性の改善のために、大量生産に特に適している。
【0025】
本明細書で使用される場合、「ボツリヌス毒素」は、クロストリジウム細菌ならびにその組換え生産型によって産生できる神経毒素タンパク質分子をいう。組換えボツリヌス毒素は、組換え技術を介して、例えば、組換えクロストリジウム種および/または非クロストリジウム種によって合成される毒素タンパク質の軽鎖および/または重鎖を有することができる。「ボツリヌス毒素」は、本明細書では、「ボツリヌス神経毒」、「神経毒」、または単に「毒素」という関連する表現と交換可能に使用される。「ボツリヌス毒素」は、ボツリヌス毒素血清型A、B、C、D、E、F、およびGのいずれかを網羅し、複合型と非複合型の両方もまた網羅する。
【0026】
「複合型」は、ボツリヌス毒素タンパク質(すなわち、約150kDの分子量を有する毒素タンパク質)ならびに少なくとも1種の関連するネイティブ非毒素タンパク質を含むボツリヌス毒素複合体を意味する。典型的には、複合体を作り上げる非毒素タンパク質には、非毒素ヘマグルチニンタンパク質および非毒素非ヘマグルチニンタンパク質が挙げられる。従って、複合型は、ボツリヌス毒素分子(神経毒成分)、および1種以上の非毒性ヘマグルチニンタンパク質、および/または1種以上の非毒性非ヘマグルチニンタンパク質を含んでもよい。特定の実施形態において、複合体の分子量は、約150kDよりも大きい。例えば、複合型のA型ボツリヌス毒素は、約900kD、約500kD、または約300kDの分子量を有し得る。複合型のB型およびC型のボツリヌス毒素は、500kDの分子量を有し得る。複合型のD型ボツリヌス毒素は、約300kDまたは約500kDの分子量を有し得る。最後に、複合型のE型およびF型ボツリヌス毒素は、約300kDの分子量を有し得る。
【0027】
「非複合」ボツリヌス毒素とは、約150kDの分子量を有する、単離された、または本質的にもしくは実質的に単離されたボツリヌス毒素タンパク質をいう。すなわち、「非複合」型は、通常は複合型に付随している、非毒性ヘマグルチニンタンパク質および非毒性非ヘマグルチニンタンパク質などの非毒性タンパク質を排除する。「非複合」ボツリヌス(botulium)毒素は、本明細書では、「遊離の」ボツリヌス毒素と交換可能に使用される。ネイティブなClostridium botulinum細菌によって作られるすべてのボツリヌス毒素血清型は、細菌によって不活性単鎖タンパク質として合成され、次いでこれはプロテアーゼによって切断されまたはニックを形成して神経活性になる。このタンパク質は、ジスルフィド結合によって約50kD軽鎖に接続された約100kD重鎖を含む。
【0028】
ボツリヌス毒素複合体は、例えば、pHを約7.0に上昇させること、約7.3のpHにてこの複合体を赤血球で処理すること、および/または約7〜約8のpHにて適切な緩衝液中でカラムクロマトグラフィーなどの分離プロセスにこの複合体を供することを含む種々の手段によって、毒性タンパク質および非毒性タンパク質に解離できる。
【0029】
本発明は、安定性を維持するために精製プロセスの間に必要であると従来考えられていた付随する非毒性タンパク質を伴うことなく、非複合ボツリヌス毒素の精製を可能にするシステムおよび方法を包含する。好ましい実施形態において、本明細書に記載される方法およびシステムは、安定性の喪失を伴うことなく、遊離のボツリヌス毒素の精製を容易にする。「安定性」または「安定な」は、ボツリヌス毒素タンパク質分子が、ジスルフィド結合によって互いに接続される約100kD重鎖と約50kD軽鎖の両方を保持し、かつ生物学的活性を可能にするコンフォメーションにあることを意味する。
【0030】
ある実施形態において、本発明の範囲内にある特定のシステムは、本発明の範囲内にある特定の方法と併せて操作される。本発明の範囲内にあるシステムは、対応する複数の(好ましくは一連の)クロマトグラフィー工程を用いる使用のための複数の(好ましくは一連の)クロマトグラフィーカラムを含むことができる。さらに、本発明の範囲内にあるシステムは、対応する複数の(好ましくは一連の)非クロマトグラフィー工程、例えば、クロマトグラフィー前工程としての工程を用いる使用のための複数の(好ましくは一連の)非クロマトグラフィー装置、例えば、ろ過および/または遠心分離装置を含んでもよい。
【0031】
好ましい実施形態において、本発明の範囲内にあるプロセスは、発酵培養からのボツリヌス毒素を含むサンプルを得ること;そのサンプルを多くのクロマトグラフィー前精製に供すること;次いで、そのサンプルを複数のクロマトグラフィーカラムを通して、高度に精製され、高度に強力な非複合ボツリヌス毒素を得ることを含む。このような精製した遊離のボツリヌス毒素は、活性成分として遊離のボツリヌス毒素を含む薬学的組成物の調製において用途を見い出す。
【0032】
本発明のある好ましい実施形態のためのクロマトグラフィー前プロセスとクロマトグラフィープロセスの両方のための全体の工程は図1Aに図示されている。比較のために、図1Bは、精製ボツリヌス毒素複合体を得るための従来の方法を示す。簡潔に説明すると、図1Bは、発酵培養物の深層ろ過、続いて得られたろ液の接線流ろ過(300kD超の精密ろ過を使用する);続いて清澄化遠心分離工程を包含するプロセスを描いている。次いで、遠心分離工程から生じるペレット(不溶性画分)が塩化ナトリウム中に再懸濁され、疎水性相互作用カラムまたはイオン交換カラムにローディングされる。クロマトグラフィー精製工程が少なくとも3回反復され、900kD A型ボツリヌス毒素複合体を含有する最終溶離液を得る。
【0033】
発酵および酸沈殿
図1Aに示すように、非複合ボツリヌス毒素は、一般的には、発酵培養物から精製される。本明細書で使用される場合、「発酵培養物」とは、少なくとも1種のボツリヌス毒素を合成しており、および/または少なくとも1種のボツリヌス毒素を合成した、細胞および/またはその成分を含む培養物または培地をいう。例えば、Clostridium botulinumなどのクロストリジウム細菌は、あたたかい嫌気性雰囲気中などの、細菌増殖に誘導的な環境において、寒天プレート上で培養されてもよい。典型的には、培養工程は、所望の形態および得られる他の特性を有するクロストリジウムコロニーを可能にする。次いで、選択された培養されたクロストリジウムコロニーは、発酵培養として適切な培地中で発酵できる。培養細胞は、宿主細胞として、E.coli(大腸菌)または酵母細胞などの非クロストリジウム種を含んでもよく、これらは、組換え技術によって、ボツリヌス毒素を生合成可能にされる。適切な発酵培養条件は、使用される宿主細胞に依存し得、一般的には当該分野において公知である。
【0034】
好ましい実施形態において、発酵は、細胞が成熟しており、ボツリヌス毒素を生合成するように、完了するまで進行させてもよい。通常、Clostridium botulinum培養物の増殖は、約24時間〜約36時間後に完了する。特定のさらなる時間後、典型的には、細菌は溶解し、合成された複合型のボツリヌス毒素複合体を培地中に放出する。例えば、約60時間〜約96時間の発酵の間、大部分のClostridium botulinum細胞は溶解を受け、A型ボツリヌス毒素複合体を放出する。
【0035】
ある実施形態において、発酵培養物は、従来的な発酵培養手順において使用される、動物タンパク質などの1種以上の動物産物を含むことができる。例えば、ボツリヌス毒素は、公知のSchantzプロセスの改変バージョンを使用して、Clostridium botulinumの嫌気的発酵によって産生できる(例えば、各々参照により組み込まれる、Schantz E.J.,et al,Properties and use of botulinum toxin and other microbial neurotoxins in medicine,Microbiol Rev 1992 March;56(1):80−99;Schantz E.J.,et al,Preparation and characterization of botulinum toxin type A for human treatment,chapter 3 in Jankovic J,ed.Neurological Disease and Therapy.Therapy with botulinum toxin (1994),New York,Marcel Dekker;1994,pages 41−49,および;Schantz E.J.,et al.,Use of crystalline type A botulinum toxin in medical research,in:Lewis G E Jr,ed.Biomedical Aspects of Botulism(1981)New York,Academic Press,pages 143−50を参照のこと)。ボツリヌス毒素を得るためのSchantzプロセスと改変Schantzプロセスの両方が、培養バイアル中の動物由来Bacto−クックトミート培地および発酵培地中のカゼインを含む動物産物を使用する。加えて、Schantz毒素精製は、発酵培地中に存在する核酸を加水分解するために、ウシ供給源からのDNaseおよびRNaseを使用する。
【0036】
しかし、動物由来産物を包含するプロセスを使用して精製された活性成分を含有する医薬品の投与は、種々の病原因子を受容する潜在的なリスクに患者を供する可能性がある。例えば、プリオンは、動物由来の夾雑物を含む薬学的組成物中に存在し得、これは例えば、クロイツフェルト−ヤコブ病の原因であるプリオンなどである。別の例として、動物産物が薬学的組成物を作製するプロセスにおいて使用されるときには、ウシ海綿状脳症(BSE)などの感染性海綿状脳症(TSE)のリスクが存在する。しかし、動物産物を含まないプロセスを介して得られたボツリヌス毒素の使用は、このようなリスクを減少する。それゆえに、ある好ましい実施形態において、本発明は、動物産物を含まないか、または本質的にもしくは実質的に動物産物を含まない(APF)プロセスを提供する。「動物産物を含まない」、「本質的に動物産物を含まない」、または「実質的に動物産物を含まない」は、それぞれ、「動物タンパク質を含まない」、「本質的に動物タンパク質を含まない」、または「実質的に動物タンパク質を含まない」を包含し、そしてそれぞれ、動物から誘導された産物の非存在、本質的な非存在、または実質的な非存在を意味し、その非限定的な例には、血液またはプールした血液から誘導された産物が挙げられる。「動物」は、哺乳動物(例えば、ヒト)、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、昆虫、クモ、または他の動物種をいうために本明細書で使用されるが、細菌および酵母などの微生物は除外する。
【0037】
動物産物を含まないプロセス(または動物産物を実質的または本質的に含まないプロセス)とは、免疫グロブリン、他の血液産物、その副生成物、またはその消化物;肉製品、肉副生成物、肉消化物;および乳製品もしくは酪農製品、その副生成物、またはその消化物などの、動物由来の産物、試薬、およびタンパク質を完全に、実質的に、または本質的に含まないプロセスをいう。従って、動物製品を含まない発酵培養手順の例は、血液、肉、および酪農の製品、副生成物、および消化物を除外する細菌培養などの発酵プロセスである。非複合ボツリヌス毒素を得るための動物産物を含まない発酵プロセスは、次にヒトに投与されたときに毒性を伴い得るウイルス、プリオン、または他の望ましくない因子の夾雑の可能性を減少させる。
【0038】
クロストリジウム培養を使用する動物産物を含まない発酵手順は、例えば、参照により組み込まれる米国特許第7,452,697号および同第7,354,740号明細書に記載されている。例えば、ボツリヌス毒素の産生のための増殖培地は、動物由来の産物の代わりに、ダイズベースの産物および/またはLupinus campestrisの脱苦味種子などの植物ベースの産物を含んでもよい。例えば、動物産物を含まない発酵培養における使用のためのダイズベースの発酵培地は、ダイズベースの産物、グルコースなどの炭素源、NaClおよびKClなどの塩、NaHP0およびKHP0などのリン酸含有成分、鉄およびマグネシウムなどの二価カチオン、鉄粉、L−システインおよびL−チロシンなどのアミノ酸などを含むことができる。好ましくは、ダイズは加水分解されたダイズであり、加水分解は、動物に由来しない酵素を使用して実施される。加水分解されたダイズの供給源には、Hy−Soy(Quest International)、Soy peptone(Gibco)Bac−soytone(Difco)、AMISOY(Quest)、NZ soy(Quest)、NZ soy BL4、NZ soy BL7、SE50M (DMV International Nutritionals,Fraser,N.Y.)、およびSE50MK(DMV)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0039】
図1Aが図示するように、特定の実施形態において、ボツリヌス毒素を含むサンプルは発酵培養から得られる。例えば、特定の発酵期間後に、動物産物を含まないかまたは非動物産物を含まない培地のいずれかの中で、ボツリヌス毒素複合体が培地中に放出され、これは沈殿によって収集できる。例えば、ある実施形態において、周知のSchantzプロセスにおけるのと同様に、ボツリヌス毒素を含む発酵培地は、ボツリヌス毒素複合体が細胞細片と結合し、酸沈殿物を形成することを促進するために、酸沈殿に供せられてもよい。ある特に好ましい実施形態において、約3M 硫酸溶液が、酸沈殿を形成するために発酵培養に加えられてもよい。好ましくは、pHは約3〜約4、より好ましくは、約3.2〜約3.8、およびさらにより好ましくは、約3.5まで低下される。ある実施形態において、培養温度もまた、例えば、約25℃、24℃、23℃、22℃、21℃、または20℃より下まで低下される。これらの条件は、細胞細片とのボツリヌス毒素複合体の結合をさらに増強する。形成された酸沈殿物は、結合したボツリヌス毒素複合体を含み、そして清澄化工程などのさらなる精製工程における出発物質として使用できる一方、ろ液は廃棄される。
【0040】
対照的に、図1Bに描かれた従来のプロセスは酸沈殿工程を含まない。すなわち、精製手順はまた、ボツリヌス毒素複合体を含む発酵培養物で開始するのに対して、培養培地は深層ろ過に供され、細胞細片ではなく、ろ液が次の精製工程において使用される。図1Bのプロセスにおいては、ろ液ではなく細胞細片が廃棄されるのに対して、図1Aに示されるように、ろ液は廃棄され、細胞細片(酸沈殿物)がさらなる精製工程、例えば、以下に議論されるクロマトグラフィー前精製において使用される。
【0041】
クロマトグラフィー前精製
ある実施形態において、発酵培地から得られたサンプルは、1回以上のクロマトグラフィー前精製に供される。クロマトグラフィー前精製は、接線流ろ過、ヌクレアーゼ消化、ならびに清澄化遠心分離および/またはろ過の少なくとも1つを含み得る。本発明によって意図されるクロマトグラフィー前精製を含有するプロセスフローの非限定的な例は図1Aに提供される。上記のように、好ましい実施形態において、クロマトグラフィー前手順は、図1Bに図示されるプロセスにおけるような発酵培養それ自体またはそこに由来するろ液ではなく、ボツリヌス毒素を含む発酵培養の沈殿物(または不溶性画分)に対して実行される。すなわち、本発明の好ましい実施形態において、クロマトグラフィー前(清澄化)工程は酸沈殿(不溶性画分)から開始する。
【0042】
ある実施形態において、ボツリヌス毒素を含むサンプル(酸沈殿物または不溶性画分)は、接線流ろ過に供される。接線流ろ過は、典型的には、タンパク質を清澄化し、濃縮し、および/または精製するために使用されるプロセスである。適用した圧力下で流体がフィルター膜に向かって直接的に移動する通常の流れろ過とは対照的に、接線ろ過においては、流体は膜の表面に沿って接線的に、またはそれと平行に移動する。適用された圧力は、フィルター膜を通った流体の一部をろ液側に押し付けるように働くのに対して、膜孔を通過するには大きすぎる沈殿物および高分子は保持される。しかし、通常の流れろ過とは異なり、保持された成分は膜表面において堆積しないが、接線的に流れる流体によって掃引される。特に好ましい実施形態において、接線流ろ過は、ろ液が膜孔を通過することを許容しながら、ボツリヌス複合体が付随する不溶性物質(細胞細片)を濃縮するために使用される(例えば、図1Aを参照のこと)。孔径、フィード流、適用圧などの接線流ろ過のパラメーターは、細胞細片を濃縮するため、およびボツリヌス毒素複合体を含む、より濃縮されたサンプルを産生するために、当業者によって選択されてもよい。ある特に好ましい実施形態において、例えば、約0.1μmの孔径を有するフィルターを用いる接線流ろ過が使用されてもよい。
【0043】
ある実施形態において、ボツリヌス毒素を含むサンプルは、ヌクレアーゼ消化に供される。ヌクレアーゼ消化は、ボツリヌス毒素複合体が結合する傾向がある核酸成分の除去を容易にすることができる。特定の好ましい実施形態において、ヌクレアーゼ消化は接線流に続き、そこから得られた濃縮された細胞細片上で実行される(例えば、図1Aを参照のこと)。例えば、濃縮された細胞細片サンプルはヌクレアーゼ活性を可能にするように調整されたそのpHを有してもよく、それぞれ、DNAおよび/またはRNAを消化する(加水分解する)DNaseおよび/またはRNaseなどの1種以上の適切なヌクレアーゼとともにインキュベートされてもよい。使用されるヌクレアーゼ酵素に依存して、適切なpHは、約5〜約7、好ましくは、約6であり得る。ある実施形態において、ベンズアミジンが、ヌクレアーゼ消化工程の間の毒素のタンパク質分解を妨害するためのプロテアーゼインヒビターとして使用される。使用されるヌクレアーゼは、動物供給源および/または非動物供給源を含む任意の適切な供給源から誘導されてもよい。
【0044】
より好ましい実施形態において、ヌクレアーゼは、動物産物を含まないヌクレアーゼおよび動物産物を含まないプロセスを提供するために非動物供給源から得られる。従って、本発明は、ヌクレアーゼの使用を含む、ボツリヌス毒素を精製するための動物産物を含まないプロセスおよびシステム(または実質的にもしくは本質的に動物産物を含まないプロセスおよびシステム)を包含する。動物産物を含まないヌクレアーゼは、例えば、本明細書に記載されるプロセスに従うヌクレアーゼ消化工程における使用のためにDNaseおよび/またはRNaseを発現するように形質転換された組換え細菌、酵母、または他の適切な生物を使用して、組換え的に作製されてもよい。宿主細胞核酸は分解され、それらの除去は容易にされるので、典型的には、ヌクレアーゼ消化はサンプルの核酸含量を減少する。例えば、加水分解された核酸および他の低分子量不純物は、さらなる精製工程によって除去できる。
【0045】
特定の実施形態において、ボツリヌス毒素を含むサンプルは、清澄化遠心分離および/またはろ過に供されてもよい。清澄化遠心分離またはろ過とは、測定可能により清澄なサンプルを生じる、サンプルから全細胞および溶解した細胞および細胞細片などの全体の要素を除去するために使用される遠心分離またはろ過の工程をいう。特定の実施形態において、遠心分離は、約10,000×g〜約30,000×g、より好ましくは、約15,000×g〜約20,000×g、および最も好ましくは、約17,700×gで実施される。典型的には、清澄化ろ過は、「デッドエンド」ろ過とも呼ばれる通常の流れろ過を含み、ここでは、流体は適用した圧力下で直接的にフィルター媒体に向けて移動され、フィルター孔を通過するには大きすぎる粒子が表面においてまたは媒体それ自体の中に蓄積するのに対して、より小さな分子はろ液として通過する。ある特に好ましい実施形態において、サンプルは硫酸アンモニウムと混合され、通常の流れろ過は、約0.1〜約0.3μmの孔径、より好ましくは、約0.2μmの孔径を有するフィルターを使用して実施される(例えば、図1Aを参照のこと)。特定の特に好ましい実施形態において、1回以上の清澄化工程はヌクレアーゼ消化に続く。特定のさらにより好ましい実施形態において、1回以上の清澄化工程は、クロマトグラフィーによる精製の直前である。
【0046】
顕著には、好ましい実施形態において、清澄化された上清またはろ液は、廃棄される不溶性画分ではなく、クロマトグラフィー精製工程などのさらなる精製工程における使用のためのボツリヌス毒素含有サンプルを提供する。これは、ボツリヌス毒素複合体が、例えば、クロマトグラフィー前遠心分離から得られた遠心分離ペレットなどのような、酸沈殿を包含しないクロマトグラフィー前工程からの不溶性画分に含有され、上清が廃棄される、図1Bに概略されるプロセスとは対照的である。
【0047】
さらに、および再度、図1Bに概略されるプロセスとは対照的に、本発明のある実施形態において、クロマトグラフィー前工程は、発酵培養から得られるろ液の接線流ろ過工程を必要としない。すなわち、本発明のある実施形態において、クロマトグラフィー精製のために使用されるサンプルは、発酵培養の可溶性画分を接線流ろ過に供することによって得られるのではない。むしろ、特定の実施形態において、本発明は、可溶性ボツリヌス毒素複合体を濃縮するための試みにおいて、発酵培養ろ液が接線流ろ過に供されるいかなる工程も除外して、不溶性物質(例えば、酸沈殿物)を使用する。従って、好ましい実施形態において、本発明のクロマトグラフィー前工程は、代わりに、他の不溶性物質(細胞細片)との所望の毒素複合体を沈殿させるために酸を使用することによって、いかなるこのような工程の必要性も除外する。
【0048】
クロマトグラフィー精製工程
図1Aはまた、本発明の特定の実施形態に従う、クロマトグラフィー精製工程を図示する。本発明の1つの実施形態に従って、非複合ボツリヌス毒素を精製するためのクロマトグラフィー方法は、高度に精製され、高い効力があり、非複合体型の神経毒を得るために、ボツリヌス毒素を含むサンプルを複数のクロマトグラフィーカラムに通すことを含む。
【0049】
特定の実施形態において、複合ボツリヌス毒素は、疎水性相互作用カラムを使用して、他の細胞成分から分離される(例えば、図1Aを参照のこと)。このカラムは、不純物がカラムを素通りすることを可能にしながら、複合体型のボツリヌス毒素を捕捉する。使用されるカラムは、GE Healthcare Life Sciencesから市販されている、Butyl Sepharose Fast FlowカラムまたはPhenyl Sepharose HPなどの、このような目的のために適切な当該分野において公知である任意の疎水性相互作用カラムであり得る。ある実施形態において、この方法は、カラムにローディングする前に、疎水性相互作用クロマトグラフィーのためにサンプルを状態調節することをさらに含む。例えば、Phenyl Sepharose HPカラムにおける使用のために、サンプルは、ローディングの前に、pH 6の0.5M 硫酸アンモニウム溶液および50mM リン酸と合わせられてもよい。使用され得る他のカラム、緩衝液、およびpH条件には、Phenyl Sepharose Fast Flow高置換、Phenyl Sepharose Fast Flow低置換、Butyl Sepharose、およびOctyl Sepharoseなどのカラム;各々が約4.0〜約7.0、より好ましくは、約4.5〜約6.5、およびさらにより好ましくは、約5.5のpH範囲にある酢酸、クエン酸、MES、ヒスチジン、ピペラジン、およびマロン酸などの緩衝液が挙げられる。他の緩衝液およびpH条件は、本発明に提供される教示に基づいて、当該分野において公知であるように使用される特定のカラムから、収率を最適化するように決定されてもよい。理論に束縛されることは望まないが、例えば、より小さなタンパク質、核酸などのような多くの細胞由来の不純物が素通りすることを可能にしながら、この工程における解離を回避するために、分離は、7より下のpHにおいて樹脂に毒素複合体を結合することを包含すると考えられている。
【0050】
疎水性相互作用カラムから捕捉された(結合された)毒素を溶出するために、当該分野において公知であるように、適切な緩衝液が使用できる。ある特に好ましい実施形態において、硫酸アンモニウムの下降勾配が使用される。下降勾配の濃度範囲は、約0.6M〜約0.0M、約0.5M〜約0.0M、または約0.4M〜約0.0Mであり得る。使用され得る他の溶出緩衝液には、例えば、硫酸ナトリウム(NaS0);塩化ナトリウム(NaCl);塩化カリウム(KCl);酢酸アンモニウム(NHOAc)などの下降勾配が挙げられる。産物ピークを含む画分は、当該分野において公知であるように同定できる。pHが複合体を維持するために約6に維持されながら、典型的には、ピーク画分は、例えば、約0.4M〜約0.0M;より好ましくは、約0.3M〜約0.0M;および最も好ましくは、約0.25M〜約0.0M 硫酸アンモニウムの濃度範囲で硫酸アンモニウムを使用するときに見い出される。すなわち、溶出したボツリヌス毒素複合体を含む画分は、引き続く精製工程において、同定および使用できる。
【0051】
好ましい実施形態において、得られるボツリヌス毒素複合体は、非複合体型を与えるように解離させられる。特定の好ましい実施形態において、解離工程は、疎水性相互作用クロマトグラフィー工程後および/または引き続くクロマトグラフィー工程前に実施される(例えば、図1Aを参照のこと)。従って、ある好ましい実施形態において、本発明は、クロマトグラフィー標的分子が1つのクロマトグラフィー工程から別のクロマトグラフィー工程で異なる方法およびシステムを包含する。すなわち、最初のクロマトグラフィー工程において、標的はボツリヌス毒素複合体を含むのに対して、次のクロマトグラフィー工程においては、標的は、ヘマグルチニンタンパク質および非ヘマグルチニンタンパク質などの非毒性タンパク質から解離された遊離のボツリヌス毒素を含む。対照的に、図1Bにおいて概略されるプロセスは、すべてボツリヌス毒素複合体を精製するように設計されているクロマトグラフィー工程を包含する。
【0052】
非複合ボツリヌス毒素タンパク質を産生するためのボツリヌス毒素複合体の解離は、例えば、当該分野において公知であるように、および/または本明細書に記載されるように、多くの方法で達成されてもよい。例えば、解離は、pHを約7.0まで上昇させることによって達成されてもよく;または、動物タンパク質を含まない精製が必要でない実施形態においては、約7.3のpHにおいて複合体を赤血球で処理することによって達成されてもよい。
【0053】
好ましい実施形態において、および動物の遊離の毒素を提供するために、複合体は、適切な緩衝液中でのその複合体のpHの調整に基づいて分離プロセスに供される。適切な緩衝液には、カチオン性緩衝液、好ましくは、アニオン交換カラムとは相互作用せず、または実質的に相互作用しないカチオン性緩衝液が挙げられるがこれらに限定されない。適切なカチオン性緩衝液には、例えば、Tris、ビス−Tris、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミンが挙げられる。典型的には、約7〜約8.4の間のpH;より好ましくは、約7.4〜約8.2の間のpH;および最も好ましくは、約7.8のpHが、複合体を解離させて非複合ボツリヌス毒素を遊離させるために適切である。ある特定の好ましい実施形態において、例えば、疎水性相互作用カラムの溶離液のpHは約7.5、約7.8、または好ましくは、約8.0まで上昇される。例えば、ある実施形態において、この溶離液は、複合体を、約150kD 非複合ボツリヌス毒素タンパク質を含む個々の成分に解離させるために、約7.8のpHを有するTris緩衝液に希釈されてもよい。次いで、解離された成分を含む得られる混合物は、非複合毒素を捕捉し、さらに精製するように設計されたイオン交換クロマトグラフィー工程などの、1回以上のさらなるクロマトグラフィー精製工程に供されることができる。
【0054】
本発明に従う特定の実施形態において、非複合ボツリヌス毒素は、1回以上のイオン交換クロマトグラフィー工程を使用して精製されてもよい(例えば、図1Aを参照のこと)。イオン交換クロマトグラフィーは、静電荷に基づく分画を達成する。所定のタンパク質がカラムマトリックスに結合する程度は、その個々のアミノ酸組成およびカラムマトリックスの電荷に基づく、タンパク質の正味の電荷の関数である。カチオン性イオン交換カラムは正味の正電荷マトリックスを有するのに対して、アニオン性イオン交換カラムは正味の負電荷マトリックスを有する。結合したタンパク質は、電荷を有するタンパク質への結合について電荷を有するマトリックス支持体と競合する、塩イオンなどの電荷を有する物質を含む溶媒(溶離液)を使用して、カラムから選択的に溶出できる。このように、結合したタンパク質はそれらの電荷の強さに基づいて分画できる。あるいは、タンパク質は、タンパク質の正味の電荷を変化させ得、それによって、電荷を有するマトリックスへのその親和性を変化させるpHを調整することによって溶出されてもよい。
【0055】
本発明のある好ましい実施形態に従って、非複合ボツリヌス毒素を含む混合物は、アニオン交換カラムにローディングされる(例えば、図1Aを参照のこと)。顕著に、このカラムは非複合型のボツリヌス毒素を捕捉し、その結果、毒素タンパク質および解離した非毒性タンパク質は別々の画分で溶出できる。使用されるカラムは、電荷を有するタンパク質を分離するために適切である当該分野において公知である任意のアニオンカラムであり得、その非限定的な例には、GE Healthcare Life Sciencesから市販されているQ Sepharose HP、Q Sepharose Fast Flow、またはQ XL Sepharoseが挙げられる。ある特に好ましい実施形態において、Q XL Sepharoseカラムが使用される。ある実施形態において、この方法は、カラムへのローディング前に、アニオン交換クロマトグラフィーのために非複合ボツリヌス毒素を含む混合物を状態調節することをさらに含む。例えば、緩衝液およびpHの条件は、本明細書に提供される教示に基づいて、当該分野において公知であるように、使用される特定のカラムからの収率を最適化するように決定されてもよい。カラム中でのローディングおよび使用のために、例えば、適切な緩衝液には、カチオン性緩衝液、好ましくは、アニオン交換カラムと相互作用しないか、または実質的に相互作用しないカチオン性緩衝液が挙げられるがこれらに限定されない。適切なカチオン性緩衝液には、例えば、Tris、ビス−Tris、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミンが挙げられる。カラムのローディングおよび平衡化のために、約7.2〜約8.6の間のpH;より好ましくは約7.4〜約8.2の間のpH;および最も好ましくは約7.8のpHが使用されてもよい。
【0056】
捕捉された(結合された)毒素および他の解離した成分をアニオン交換カラムから溶出させるために、適切な緩衝液が、当該分野で公知であるように使用できる。適切な緩衝液の例には、例えば、塩化ナトリウム(NaCl);および塩化カリウム(KCl)が挙げられる。ある特に好ましい実施形態において、塩化ナトリウムの上昇勾配が使用される。例えば、約0.0M〜約0.4M NaCl、より好ましくは、約0.0M〜約0.5M NaCl、さらにより好ましくは、約0.0M〜約0.6M NaClの濃度範囲を有する塩化ナトリウム緩衝液が使用されてもよい。異なる画分中に分離された不純物は、例えば、非毒性ヘマグルチニンおよび/または非毒性非ヘマグルチニンタンパク質などの解離した複合体の1種以上の非毒性タンパク質を含み得る。生成物ピークを含有する画分は、当該分野において公知であるように同定できる。このピークは、約0.08M〜約0.18M NaClに対応する、約7.4〜約8.4の間のpH、好ましくは、約7.8のpHにおいて、例えば、約8mSem〜約22mSemにおいて存在し得る。逆に、他の不純物は、約0.25M〜約0.35M NaClに対応する、約30から約45mSemにおいて溶出し得る。
【0057】
溶出した非複合ボツリヌス毒素を含有する画分は、非複合ボツリヌス毒素を含む溶離液を提供するために同定できる。ピークは、当該分野において公知であるような方法によって、例えば、HPLC、ウェスタンブロット分析、ELISA、非還元SDS−PAGEなどを使用して同定されてもよい。例えば、非還元条件下でのSDS−PAGEは、約150kDa毒素バンドを同定できるのに対して、他の不純物は、より小分子に対応するバンドに現れる。次いで、非複合型を含むこの溶離液は、さらなるクロマトグラフィー精製工程に供されてもよい。
【0058】
1つの特に好ましい実施形態において、毒素の純度はSDS−PAGEによって評価される。当業者が理解するように、SDS−PAGE分析は、タンパク質の中に存在するジスルフィド結合を切断する剤の非存在下または存在下で実施できる(すなわち、それぞれ、非還元条件および還元条件)。例えば、A型ボツリヌス毒素に関して、成熟かつ活性型のA型ボツリヌス毒素タンパク質分子は、非共有結合性相互作用ならびにジスルフィド結合によって一緒に保持されている、それぞれ、100kDおよび50kDの2つのポリペプチド鎖から構成されている。本発明のプロセスによって産生されるA型ボツリヌス毒素が非還元条件を使用してアッセイされるとき、A型ボツリヌス毒素タンパク質分子は、およそ150kDの単一のタンパク質バンドとして移動し、典型的には、測定された純度は98%より高い。ゲルレーンあたりのローディングされたA型ボツリヌス毒素タンパク質の量は、デンシトメーターのダイナミックレンジの中に保持されるとき、たとえあったとしても、検出可能な不純物バンドはほとんど存在せず、100%の測定純度を生じる。A型ボツリヌス毒素が過剰にローディングされ、その結果、主要な毒素バンドはデンシトメーターのダイナミックレンジよりも上であるとき、いくつかのマイナーな不純物バンドが検出可能であり得る(1〜2%までの量)。
【0059】
しかし、A型ボツリヌス毒素のSDS−PAGE分析が還元条件下で実施されるとき、次いで、ボツリヌス毒素のジスルフィド結合は切断され、A型ボツリヌス毒素タンパク質は、それぞれ、100kDおよび50kDの分子量を有する2つの成分として移動する。主要な種がデンシトメーターのダイナミックレンジの上であり、かつSDS−pageが還元条件下で泳動されるようにA型ボツリヌス毒素タンパク質がローディングされるとき、マイナーな不純物種がより容易に検出できる。例えば、これらの条件下では、発酵および回収プロセスの間の不完全なタンパク質分解処理に起因して存在する、5%までの量の150kD種が存在し得る。これらの条件下では、本発明のプロセスは、典型的には全タンパク質の90%より多く、よりあり得るものとして、全タンパク質の95%より多い毒性産物(活性である切断された100kDおよび50kDポリペプチド鎖から構成される)を産生する。従って、毒素の測定純度の報告は、本明細書に記載されるような利用されるSDS−PAGE方法の詳細に依存する。さらに、前述の例はA型ボツリヌス毒素に関連するのに対して、当業者は、本明細書に記載されるSDS−PAGE分析が、ボツリヌス毒素の他の血清型の純度を評価するように容易に適合できることを認識している。
【0060】
特定の実施形態において、非複合ボツリヌス毒素を含むアニオン性カラムからの溶離液が、カチオン交換カラムにローディングされる(例えば、図1Aを参照のこと)。顕著には、毒素タンパク質および解離した非毒素タンパク質が別々の画分中で溶出できるように、このカラムはまた、非複合型のボツリヌス毒素も捕捉する。使用されるカラムは、タンパク質を分離するために適切である、当該分野において公知である任意のカチオンカラムであってもよく、その非限定的な例には、SP Sepharose HPもしくはSP Sephrose Fast Flowを含むSP Sepharoseカラム;Mono Sカラム;または両方ともGE Healthcare Life Sciencesから市販されている、Source−30Sカラムもしくは好ましくは、Source−15SカラムなどのSource−Sカラムが挙げられる。ある実施形態において、この方法は、カラムへのローディング前にカチオン交換クロマトグラフィーのための非複合ボツリヌス毒素を含むアニオン交換カラムからの溶離液を状態調節することをさらに含む。ある好ましい実施形態において、カラム上にローディングされる溶離液のpHがカラムへの遊離の毒素の効率的な結合を可能にするように、pHが調整される。例えば、pHは、約4〜約8の範囲、好ましくは、約5〜約7.5の範囲、より好ましくは約6〜約7の範囲、最も好ましくは、約7に維持できる。さらに、ある実施形態において、アニオン性カラムからの溶離液は、例えば、リン酸ナトリウム緩衝液を使用して、カチオン交換カラムへのローディング前に電気伝導度を減少させるように処理でき、その非限定的な例は、約20mM NaHPOのリン酸ナトリウム緩衝液である。約20mM NaHPO緩衝液中での希釈が電気伝導度を減少するように、例えば、アニオン性カラムからの溶離液は、約0.15M NaClまでを含有してもよい。ある特定の実施形態において、電気伝導度は約12mSem〜約3.3mSemまで低下される。緩衝液中での希釈、透析、または当該分野において公知である他の方法もまた、電気伝導度を減少するために使用されてもよい。
【0061】
カラムにおけるローディングおよび使用のために、例えば、適切な緩衝液には、アニオン性緩衝液、好ましくは、カチオン交換カラムと相互作用しないか、または実質的に相互作用しないアニオン性緩衝液が挙げられるがこれらに限定されない。適切なアニオン性緩衝液には、例えば、MES、HEPESなど、および好ましくは、リン酸ナトリウム緩衝液が挙げられる。カラムにローディングするためおよびカラムを平衡化するために、約4〜約8の間のpH;好ましくは約5〜約7.5の間のpH;より好ましくは約6〜約7のpH;および最も好ましくは約6.8〜約7のpHが使用されてもよい。
【0062】
他の解離された非毒性タンパク質および他の不純物から、カチオン交換カラムからの捕捉された(結合された)毒素を別々に溶出するために、当該分野にいて公知であるように、適切な緩衝液が使用できる。ある特に好ましい実施形態において、塩化ナトリウムの上昇勾配が使用される。塩化ナトリウム勾配についての適切な濃度範囲は、約0.0M〜約1M NaClであり得る。使用され得る他の塩には、例えば、約0.0M〜約0.5M KClの濃度勾配で使用され得る塩化カリウムが挙げられる。産物ピークを含む画分は当該分野において公知であるように同定できる。ピークは、例えば、約6.7のpHにおける約0.3M〜約0.4M NaClに対応する約18〜約25mSemで存在し得る。すなわち、溶出する非複合ボツリヌス毒素を含有する画分は、非複合ボツリヌス毒素を含むカチオン性カラムからの溶離液を提供するために同定できる。特に好ましい実施形態において、カチオン性カラムからの溶離液は、高純度の、そして高収率である、高活性を有する非複合ボツリヌス毒素を表す。対照的に、図1Bにおいて概略されるプロセスは、最終溶離物中に900kD A型ボツリヌス毒素複合体を提供する。
【0063】
精製非複合ボツリヌス毒素産物
本明細書に記載される方法およびシステムは、高純度の、高収率である、そして高活性を有する非複合ボツリヌス毒素を提供するために有用である。以下の実施例1を参照のこと。この産物はまた、安全な薬学的組成物の調製のために、容易に安定化され、簡便に使用される。
【0064】
ある好ましい実施形態において、精製非複合ボツリヌス毒素は、少なくとも約80%純粋、好ましくは少なくとも約90%純粋、より好ましくは少なくとも約95%純粋、さらにより好ましくは少なくとも約98%純粋、および最も好ましくは少なくとも約99%純粋、または約100%純粋でさえある。「精製非複合ボツリヌス毒素」とは、非複合ボツリヌス毒素が培養または発酵プロセスから得られるので、さもなくば非複合ボツリヌス毒素に付随し得る他のタンパク質および不純物から単離されているかまたは実質的に単離されている、遊離のボツリヌス毒素タンパク質をいう。精製非複合ボツリヌス毒素、すなわち、例えば、「80%純粋」とは、毒性タンパク質が他の適切な分析方法論によって決定されるような、存在する全タンパク質の80%を含み、その分析方法論の非限定的な例にはSDS−PAGE、CE、およびHPLCが挙げられる、単離されたかまたは実質的に単離された非複合ボツリヌス毒素タンパク質をいう。例えば、ある好ましい実施形態において、非複合ボツリヌス毒素を含むカチオン性カラム溶離液は少なくとも約99%純粋であり、もともと存在したおよそ150kDボツリヌス毒素ではない約1%未満の宿主細胞タンパク質を含有する。
【0065】
ある好ましい実施形態において、精製非複合ボツリヌス毒素は、少なくとも約150 LD50単位/ng、好ましくは少なくとも約180 LD50単位/ng、より好ましくは少なくとも約200 LD50単位/ng、さらにより好ましくは少なくとも約210 LD50単位/ng、および最も好ましくは少なくとも約220 LD50単位/ngの活性を有する。1単位のボツリヌス毒素は、各々約18〜20グラムの体重である雌性Swiss Websterマウスへの腹腔内注射の際にLD50として定義される。言い換えると、1単位のボツリヌス毒素は、雌性Swiss Websterマウスの一群の50%を殺すボツリヌス毒素の量である。「活性」は、ボツリヌス毒素の作用を説明するための関連する表現「生物学的活性」、「効力」、および「毒性」と本明細書で交換可能に使用される。
【0066】
好ましい実施形態において、本明細書に記載されるプロセスおよびシステムによって入手可能な非複合ボツリヌス毒素は生物学的活性を実証する。すなわち、好ましい実施形態において、たとえ毒性タンパク質にネイティブに付随する非毒性タンパク質が精製の間に取り除かれるとしても、産物の生物学的活性または毒性は、本発明の好ましい実施形態に従う精製の際に失われない。さらにより好ましい実施形態において、本発明の範囲内の所定のプロセスおよびパラメーターのセットを使用して得られる効力は一貫しておりおよび/または再現可能である。例えば、効力の測定は、約40%未満の変動性、好ましくは約35%未満の変動性、より好ましくは約30%未満の変動性、さらにより好ましくは約25%未満の変動性、および最も好ましくは約20%未満の変動性で行うことができる。
【0067】
ある好ましい実施形態において、精製プロセスは、高収率で非複合ボツリヌス毒素を提供する。例えば、30Lの発酵培養から得られた収量は少なくとも約30mg、好ましくは少なくとも約40mg、より好ましくは少なくとも約70mg、さらにより好ましくは少なくとも約80mg、および最も好ましくは少なくとも約90mgであり得、それぞれ、少なくとも約1mg/L、好ましくは少なくとも約1.3mg/L、より好ましくは少なくとも約2.3mg/L、さらにより好ましくは少なくとも約2.7mg/L、および最も好ましくは少なくとも約3mg/Lの収率に対応する。さらにより好ましい実施形態において、本発明の範囲内にある所定のプロセスおよびパラメーターのセットを使用して得られる収率は再現可能である。例えば、収率は、約40%未満の変動性、好ましくは約35%未満の変動性、より好ましくは約30%未満の変動性、さらにより好ましくは約25%未満の変動性、および最も好ましくは約20%未満の変動性で測定できる。
【0068】
ある特に好ましい実施形態において、精製非複合ボツリヌス毒素は、本明細書に記載されるプロセスおよびシステムを使用する精製の間に安定である。A型ボツリヌス毒素複合体などのボツリヌス毒素複合体からの付随する非毒素タンパク質の除去は顕著に不安定なボツリヌス毒素産物を生成すると考えられてきた。しかし、本発明は、上記に議論したように、安定性を維持するために精製プロセスの間に必要であると従来考えられていた付随する非毒性タンパク質を伴うことなく、遊離のボツリヌス毒素を安定に単離できる方法およびシステムを提供する。
【0069】
ある好ましい実施形態において、本明細書に記載される方法およびシステムは、例えば、保存の間に安定性を維持することによって、および薬学的使用に対する適用可能性によって、非常に少ないクロマトグラフィー後工程を必要とする非複合ボツリヌス毒素を提供する。例えば、当該分野において知られているように、硫酸アンモニウムが、保存のための硫酸アンモニウム懸濁液を調製するために遊離のボツリヌス毒素に加えられてもよい。遊離のボツリヌス毒素および硫酸アンモニウムを含む組成物は冷蔵庫の中に容易に保存されてもよく、後で薬学的適用における使用のために容易に取り出すことができる。確かに、本明細書に記載される方法によって入手可能な毒素の安定性、高収率および高純度、ならびに高くかつ一貫した効力は、以下により詳細に記載されるように、精製産物の薬学的使用を容易にする。
【0070】
精製非複合ボツリヌス毒素の使用
本発明に従って精製された非複合ボツリヌス毒素は、薬学的組成物からの利益を受ける任意の被験体への投与のための活性成分としてこの毒素を含むこのような薬学的組成物の調製において使用できる。好ましい実施形態において、治療される被験体は、哺乳動物、好ましくはヒトである。本明細書で使用される場合、「薬学的組成物」とは、活性成分がボツリヌス毒素であり得る製剤をいう。この製剤は、少なくとも1種のさらなる成分を含有し、ヒト患者などの被験体への診断的、治療的、および/または美容的投与のために適切である。この薬学的組成物は液体または固体であり得;単一成分系または複数成分系、例えば、生理食塩水などの希釈剤で再構築された凍結乾燥組成物であり得る。
【0071】
本発明の別の態様は、精製ボツリヌス毒素分子の患者への投与を提供する。本明細書で使用される場合、「投与」とは、被験体または患者に薬学的組成物を提供することをいう。この薬学的組成物は、例えば、筋肉内(i.m.)、皮内、鼻内、または皮下投与、くも膜下腔内投与、頭蓋内、腹腔内(i.p.)投与、または局所(経皮)および移植(例えば、遅延放出デバイスのもの)の投与の経路が挙げられる、当該分野において公知である任意の方法によって投与されてもよい。特定の好ましい実施形態において、精製非複合ボツリヌス毒素は、全体が参照により組み込まれる米国特許出願番号09/910,432;10/793,138;11/072,026;11/073,307、11/824,393、および12/154,982に記載されているような組成物中で局所的にまたは注射によって投与される。
【0072】
特定の実施形態において、硫酸アンモニウム懸濁液中での非複合ボツリヌス毒素を含む組成物は、薬学的組成物に容易に化合できる。例えば、非複合ボツリヌス毒素タンパク質を含む硫酸アンモニウム懸濁液がタンパク質を回収するために遠心分離でき、このタンパク質は、再溶解、希釈、および1種以上の薬学的に受容可能な賦形剤とともに調合できる。特定の実施形態において、この薬学的組成物は、活性薬学的成分として非複合ボツリヌス毒素を含んでもよく、1種以上の緩衝剤、キャリア、安定剤、保存料、および/または充填剤をさらに含んでもよい。この薬学的組成物は、保存のために粉末まで凍結乾燥されてもよく、さらなる使用のために再構成されてもよい。従って、本明細書に記載されるプロセスおよび方法は、調製の容易さに関して、薬学的適用に特に適した型でボツリヌス毒素を提供できる。
【0073】
この薬学的組成物は、治療的、診断的、研究的、および/または美容的適用において用途を見い出し得る。例えば、上記に議論されたように、A型ボツリヌス毒素は、骨格筋活動過剰によって特徴付けられる神経筋障害、例えば、特発性眼瞼痙攣、斜視、頸部ジストニア、および眉間(顔面)のしわを治療するために臨床的に使用されている。さらに、特定の適用において、非複合(約150kD)ボツリヌス毒素がヒトを治療するために好ましい型である。例えば、Kohl A.,et al.,Comparison of the effect of botulinum toxin A(Botox(登録商標))with the highly−purified neurotoxin (NT 201)in the extensor digitorum brevis muscle test,Mov Disord 2000;15(Suppl 3):165を参照のこと。従って、特定のボツリヌス毒素の薬学的組成物は、ボツリヌス毒素複合体と反対に、非複合ボツリヌス毒素を使用して好ましく調製される。
【実施例】
【0074】
実施例1:本発明のプロセスと改変Schantzプロセスとの比較
本発明の範囲内にあるプロセス(「本発明のプロセス」)を使用する非複合A型ボツリヌス毒素の精製は、非複合型を提供するためにクロマトグラフィー工程の追加によってさらに改変された、従来的なSchantzアプローチ(改変Schantzプロセス)に基づく精製と直接比較された。手短かに述べると、Clostridium botulinum細菌は培養され、発酵が完了するまで増殖された(通常、接種から収穫まで約72〜約120時間)。次いで、精製後手順の各々において、30Lの量の発酵培養物が使用された。
【0075】
使用される改変Schantzプロセスは、毒素を沈殿させるための発酵培養物の典型的な酸性化、続いて、生の毒素を濃縮するための超精密ろ過(UF)および透析ろ過(DF)を包含した。収穫された毒素にDNaseおよびRNaseが加えられ、核酸を消化(加水分解)し、次いで、これは、接線流ろ過を使用するさらなるUF工程(300kD UF)によって除去された。次に、毒素がリン酸緩衝液で抽出され、3段階の連続沈殿工程:冷エタノール沈殿;塩酸沈殿;および硫酸アンモニウム沈殿が続き、ここでは、各回の上清は通常廃棄された。この手順は900kD A型ボツリヌス毒素複合体を提供し、次いで、これは、遊離の毒素を提供するためのさらなるクロマトグラフィー工程に供された。具体的には、毒素複合体は再溶解され、DEAE樹脂上へのネガティブバッチ吸収に供された。次いで、溶離液が重力流アニオン交換カラム(DEAE−Sepharose)で流され、続いて、重力流カチオン交換カラム(CM−Sepharose)に流された。収率が決定され、プロセスにかかった時間の長さが記録され(発酵時間は計算に入れない)、そして精製された非複合A型ボツリヌス毒素は、純度についてSDS−PAGE分析によって測定され、効力について、例えば、当業者に公知である技術によってアッセイされた。全体の改変Schantzプロセスは、3つの異なるロット、ロット番号1、2、および3について反復され、結果は以下の表1に記録された。
【0076】
本発明のプロセスは、本明細書に記載されるシステムおよび方法に従って、3つの異なるロット、ロット番号4、5、および6を用いて使用された。手短かに述べると、発酵培養物は、25℃より下の温度において、3M 硫酸を使用する酸沈殿に供されて、pHが3.5に低下された。次いで、この酸沈殿は、宿主細胞の細胞塊を濃縮するために、0.1μm接線流ろ過に供された。次いで、pHは6に調整され、核酸含量を減少させるためにヌクレアーゼが加えられ、続いて細胞細片を除去するために遠心分離による清澄化、および硫酸アンモニウムを加える0.2μmでのデッドエンドろ過が行われた。次いで、ろ液は、疎水性相互作用カラム、Phenyl Sepharose HP(GE Life Sciences)に直接的にローディングされ、硫酸アンモニウムの下降勾配で溶出され、そして産物ピークが単離された。次いで、溶離液がTris緩衝液 pH 7.8に希釈されて毒素複合体を解離し、次いで、これは、アニオン交換カラム、Q XL Sepharose(GE Life sciences)にローディングされ、塩化ナトリウムの上昇勾配で溶出され、そして再度、産物ピークが収集された。次いで、この溶離液は、(電気伝導度を減少させるために)リン酸ナトリウム緩衝液に溶解され、アニオン交換カラム、Q XL Sepharose(ロット番号4および5用)またはカチオン交換カラム、Source−S(GE Life Sciences)(ロット番号6用)のいずれかにローディングされ、再度、塩化ナトリウムの上昇勾配で溶出され、そして最終産物ピークが収集され、保存された。このプロセスは、非複合A型ボツリヌス毒素を生じた。収率が決定され、プロセス時間の長さが記録され(発酵時間は計算に入れない)、そして毒素は純度についてSDS−PAGE分析によって測定され、効力について、例えば、当業者に公知の技術によってアッセイされた。結果はまた以下の表1に記録される。
【表1】

【0077】
表1が示すように、改変Schantzプロセスにおけるロット番号2に関してはロットの失敗が存在した。全体のロットはゼロ収率を与えることに失敗した。ロット番号3に関してもまた、部分的なロットの失敗が存在した。塩酸沈殿工程において失敗が存在したが、ある産物は通常廃棄された上清から救出された。救出された産物は逸脱工程で再処理され、これは、ロット番号1と比較して観察された収率の減少(11mgと比較して4mg)、およびロット番号1と比較して観察された効力の減少(255 LD50単位/ngと比較して173 LD50単位/ng)の原因である。
【0078】
本発明のプロセスとともに使用されるロットに関して、ロット番号4は、カラムの高塩洗浄を包含する、クロマトグラフィーシステムの失敗により、例えば、ロット番号5と比較して収率の減少を示した(99mgと比較して43mg)。この失敗に伴って、一部の毒素の早まった溶出が存在し、収率の減少の観察を生じたが、より高い純度もまた観察された(95.3%純度と比較して98.6%純度)。
【0079】
ロット番号6は、本発明のプロセスおよびシステムの高度に好ましい実施形態の結果を表し、ここでは、カチオン交換カラムが第3のクロマトグラフィー工程において使用された。表1に示されるように、この実施形態は、例えば、ロット番号5と比較して、純度の改善(95.3%純度と比較して100%純度)を生じたのに対し、高収率(99mgと比較して89mg)および高効力(252 LD50単位/ngと比較して250 LD50単位/ng)が維持された。
【0080】
表1がまた示すように、全体の精製の長さは、本発明の好ましい実施形態において短くされることができる。例えば、従来のSchantz法の後で3回のさらなるクロマトグラフィー工程を包含した改変Schantz法を使用して非複合ボツリヌス毒素を精製するために費やされた10日間と比較して、ロット番号6はわずか4日間以内で精製された。
【0081】
これらの結果は、本明細書に教示されたプロセスおよびシステムが、高い効力および純度である高収率の非複合ボツリヌス毒素を調製するために使用できることを示し、本明細書に記載された方法およびシステムが、例えば、薬学的組成物中の活性成分としての使用のために適切である非複合ボツリヌス毒素の大量の効率的な精製において用途を見い出し得ることを示唆する。
【0082】
本明細書に引用される特許出願および刊行物を含むすべての参考文献は、あたかも各々の個々の刊行物または特許もしくは特許出願が、その全体においてすべての目的のために、参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されるかのようなものと同じ程度まで、それらの全体においてかつすべての目的のために、参照により組み込まれる。当業者に明白であるように、本発明の多くの改変およびバリエーションが、その技術思想および範囲から逸脱することなく作製できる。本明細書に記載される特定の実施形態は、例示のみのために提出され、本発明は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定され、このような特許請求の範囲に与えられる等価物の全体の範囲を伴う。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非複合ボツリヌス毒素を精製するための方法であって、前記方法は、
(i)粗非複合ボツリヌス毒素を提供すること;
(ii)アニオン交換カラムによる非複合ボツリヌス毒素の捕捉を可能にするように、アニオン交換カラムに前記非複合ボツリヌス毒素をローディングすること;
(iii)前記アニオン交換カラムから前記非複合ボツリヌス毒素を溶出して、非複合ボツリヌス毒素を含む溶離液を得ること;
(iv)カチオン交換カラムによる非複合ボツリヌス毒素の捕捉を可能にするように、前記アニオン交換カラムからの溶離液を前記カチオン交換カラムにローディングすること;および
(v)前記カチオン交換カラムから、精製非複合ボツリヌス毒素を溶出すること
を含む、方法。
【請求項2】
粗非複合ボツリヌス毒素が、
ボツリヌス毒素複合体を含むサンプルを得ること;
疎水性相互作用カラムによるボツリヌス毒素複合体の捕捉を可能にするように、疎水性相互作用カラムに前記サンプルをローディングすること;
前記疎水性相互作用クロマトグラフィーカラムから前記ボツリヌス毒素複合体を溶出させること;および
前記ボツリヌス毒素複合体を解離して、粗非複合ボツリヌス毒素を含む混合物を得ること
によって得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
サンプルがボツリヌス毒素複合体を含む上清またはろ液である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
サンプルが、
ボツリヌス毒素を含む発酵培養物を酸沈殿に供して酸沈殿物を得ること;および
前記沈殿物に対して接線流ろ過を実施して沈殿物を濃縮すること
によって得られる、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
サンプルが、発酵培養物の不溶性画分を接線流ろ過に供することによって得られる、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
サンプルが、疎水性相互作用カラムへのローディング前にヌクレアーゼ消化に供される、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
ヌクレアーゼが動物産物を含まないプロセスに由来する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
実質的に動物産物を含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
精製非複合ボツリヌス毒素が、A型、B型、C型、D型、F型、F型、およびG型ボツリヌス毒素の少なくとも1種を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
精製非複合ボツリヌス毒素がA型ボツリヌス毒素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
精製非複合ボツリヌス毒素が少なくとも95%純粋である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
精製非複合ボツリヌス毒素が少なくとも200 LD50単位/ngの活性を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも約2mg/L発酵培養の収率を生じる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
アニオン性カラムが、Q Sepharose HP、Q Sepharose Fast Flow、およびQ XL Sepharoseカラムからなる群より選択され、カチオン性カラムが、SP Sepharose、SP Sepharose HP、SP Sephrose Fast Flow、Mono S、Source−S、Source−30S、およびSource−15Sカラムからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
アニオン性カラムに非複合ボツリヌス毒素をローディングするための緩衝液が、Tris、ビス−Tris、トリエタノールアミン、およびN−メチルジエタノールアミンからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
緩衝液が7.4〜8.2のpHで使用される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
カチオン性カラムに非複合ボツリヌス毒素をローディングするための緩衝液が、リン酸ナトリウム、MES、およびHEPESからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
緩衝液が6.0〜7.0のpHで使用される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
アニオン性カラムのpHが7.4〜8.2である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
カチオン性カラムのpHが6.0〜7.0である、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
アニオン性カラムからの非複合ボツリヌス毒素を溶出させるための勾配が、塩化ナトリウムの上昇勾配および塩化カリウムの上昇勾配からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
勾配が7.4〜8.4のpHで使用される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
カチオン性カラムから非複合ボツリヌス毒素を溶出させるための勾配が、塩化ナトリウムの上昇勾配および塩化カリウムの上昇勾配からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
勾配が6.0〜7.0のpHで使用される、請求項23に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2013−508388(P2013−508388A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535338(P2012−535338)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【国際出願番号】PCT/US2010/053389
【国際公開番号】WO2011/050072
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(509168461)ルバンス セラピュティックス インク. (9)
【氏名又は名称原語表記】REVANCE THERAPEUTICS,INC.
【Fターム(参考)】