説明

非透水性開口部材

【課題】空気のような気体分子を透過するが、水は透過しにくい乃至は水を透過しない非透水性開口部材の提供。
【解決手段】基材に複数の貫通孔が設けられてなり、該貫通孔が形成された開口部の各開口面積が5mm以下であり、該基材の面積Uに対して、次式で表される開口率R(%)が、50%以下であり、撥水性を示すことを特徴とする非透水性開口部材。前記開口率R(%)が、33%以下である態様が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撥水性化合物を利用した非透水性開口部材に関し、特に、空気のような気体分子を透過するが、水は透過しにくい乃至は水を透過しない非透水性開口部材に関する。
【背景技術】
【0002】
撥水性とは、水をはじく性質のことであり、近年、水との接触角が極めて高い撥水性(超撥水性)を示す表面が知られるようになり注目されている。該撥水性は、水滴が基材表面で形成する接触角θ(°)で表すことができ、該接触角θ(°)とは、図1に示すように、水滴が、基材表面と接する2点のうちの一方の点での接線と基材表面とのなす角度をいう。一般に、該接触角が90°を超えるときを撥水性といい、150°を超えるときを超撥水性という。該接触角が大きくなるにつれ、水は水膜から水滴になり、150°を超えると真球になる。
【0003】
従来より、前記撥水性を有する材料を利用した防水材料が各種提案されている。
生活防水が必要とされる分野に関して、例えば、傘の表面を撥水処理して雨粒が付着しにくくする方法が提案されている。しかし、該傘は、雨を防ぐが、同時に風も防ぐので、強風の時に抵抗を受けて持ちづらかったり、該傘の骨が折れてしまったりするといった問題があった。
また、雨の日の自転車走行は安全上好ましくないが、自転車のハンドルに前記傘を装着する部品をつけて、該傘を装着し、走行時の安全性を高めるという検討も行われている。しかし、この場合も、該傘は風の抵抗を受けるため、本質的には該傘に負担をかけ、同じような問題があった。
【0004】
このような問題を解決するために、通気性と防水性とを同時に満たす材料が研究・開発されてきており、このような通気性防水材料としては、例えば、1μm以上1.5mm以下の開口長を有する多数の孔が2次元的に並列形成した網状体に、撥水処理を施した撥水網状体が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、これらの技術において、開口部と非開口部との面積比(開口率)を限定した場合の通気性及び透水性については検討されていなかった。
【0006】
【特許文献1】特開2000−290877号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、空気のような気体分子を透過するが、水は透過しにくい乃至は水を透過しない非透水性開口部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段としては以下の通りである。即ち、
<1> 基材に複数の貫通孔が設けられてなり、
前記貫通孔が形成された開口部の各開口面積が5mm以下であり、
前記基材の面積Uに対して、次式で表される開口率R(%)が、50%以下であり、撥水性を示すことを特徴とする非透水性開口部材である。
【数2】

前記<1>に記載の非透水性開口部材においては、開口部の各開口面積が5mm以下の貫通孔を有する基材からなり、前記式で表される開口率R(%)が、50%以下であり、撥水性を示すことによって、空気のような気体分子の透過性と、水の難透過性乃至は水の非透過性とを両立させることができる。
<2> 開口率R(%)が、33%以下である前記<1>に記載の非透水性開口部材である。
前記<2>に記載の非透水性開口部材においては、基材の開口率が33%以下であることによって、空気のような気体分子の透過は妨げずに、水の難透過性を更に向上することができる。
<3> 最大面積の開口部に対して、該開口部周辺にある非開口部の面積が1倍以上である前記<1>から<2>のいずれかに記載の非透水性開口部材である。
前記<3>に記載の非透水性開口部材においては、最大面積の開口部に対して、該開口部周辺にある非開口部の面積が1倍以上であることによって、空気のような気体分子の透過は妨げずに、水の難透過性を更に向上することができる。
<4> 開口部が、メッシュ状に形成された前記<1>から<3>のいずれかに記載の非透水性開口部材である。
前記<4>に記載の非透水性開口部材においては、開口部がメッシュ状に形成されることによって、空気のような気体分子の透過は妨げずに、水の難透過性を向上させる部材が、大量生産でき安価に得ることができる。
<5> 基材が、撥水性化合物を含む前記<1>から<3>のいずれかに記載の非透水性開口部材である。
前記<5>に記載の非透水性開口部材においては、基材が撥水性化合物を含むことにより、基材自体に撥水性を付与することができる。
<6> 基材の少なくとも一方の面上に、撥水性化合物を含有する撥水材料で形成された撥水性層を有する前記<1>から<5>のいずれかに記載の非透水性開口部材である。
前記<6>に記載の非透水性開口部材においては、基材の少なくとも一方の面上に、撥水性層を有することにより、基材表面に撥水性を付与することができる。
<7> 撥水材料が、固形分濃度で10質量%以下の酸化チタンを主成分とする光触媒を含む前記<6>に記載の非透水性開口部材である。
前記<7>に記載の非透水性開口部材においては、撥水材料中に酸化チタンを主成分とする光触媒を含有することにより、基材表面に防汚性や汚染物質分解性等の光触媒活性を付与することができる。
<8> 水との接触角が100°以上である<1>から<7>のいずれかに記載の非透水性開口部材である。
前記<8>に記載の非透水性開口部材においては、水との接触角が100°以上であるので、高い撥水性を示すことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、従来における問題を解決することができ、空気のような気体分子を透過するが、水は透過しにくい乃至は水を透過しない非透水性開口部材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(非透水性開口部材)
本発明の非透水性開口部材は、複数の貫通孔が設けられた基材からなり、必要に応じて、(1)基材が、撥水性化合物を含む態様、及び(2)基材の少なくとも一方の面上に、該撥水性化合物を含有する撥水材料で形成された撥水性層を有する態様、の少なくともいずれかの基材からなる態様であることが好ましい。
ここで、前記「非透水性開口部材」とは、空気のような気体分子を透過するが、水は透過しにくい乃至は水を透過しない、貫通孔を有する部材を意味する。
また、ここでいう「水」とは、20℃、1atmで、72〜73.5dyn/cmの表
面張力値を持つものとする。
【0011】
<基材>
前記基材は、複数の貫通孔が設けられてなる。
前記基材は、図2及び図3に示すように、前記貫通孔が形成された開口部と、前記貫通孔が形成されていない非開口部とから構成される。
なお、図2は、前記開口部が正方形状である基材の模式図であり、図3は、該開口部が円形状である基材の模式図である。
【0012】
前記開口部の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、三角形、四角形、五角形などの多角形状や、円形状、楕円形状、星型状、などを挙げることができるが、これらの中でも、該開口部が、円形状、楕円形状、四角形状であるのが好ましい。該開口部は、1種類の形状からなっていてもよく、2種類以上の形状がランダムに配列されたものであってもよい。
【0013】
本発明の基材においては、前記開口部の各開口面積は、5mm以下である必要がある。該開口部の面積が5mmを超えると、水の透過性が高くなり、防水効果が得られないため、好ましくない。
前記基材は、前記開口部が原則同じ形状のみから構成される場合、各開口面積は中心値に対して±20%のバラツキを有していてもよく、更に、±10%のバラツキ範囲に収まることが好ましい。各開口面積は、バラツキ込みで5mm以下であるため、開口面積の最大値が5mmのとき、開口面積が±20%のバラツキを有する場合、開口面積の面積範囲としては、中心値が(5÷1.2)≒4.17mmであるので、該面積範囲は、3.34〜5mmである。同様にして、±10%のバラツキを有する場合、開口面積の面積範囲は、4.55〜5mmである。
本発明の材料の開口部が2種以上の異なる形状から構成される場合も、上記と同じように好ましい面積範囲を定めることができる。
前記開口部の各開口面積としては、用途によって、より好ましい数値範囲が異なる。網戸の場合は、バラツキ込みで2.5〜5mmのように比較的大きな開口部が適しているが、傘又は合羽の場合には0.1〜3.5mmのようにある程度小さい開口部が適している。ミストや霧のような微小水滴を透過させないためには更に小さく0.5mm以下にすることが好ましい。
【0014】
また、前記基材の面積Uに対して、次式で表される開口率R(%)が、50%以下であり、33%以下であるのが好ましい。該開口率R(%)が50%を超えると、水の透過性が高くなるため、好ましくない。
【数3】

【0015】
前記開口部は、少なくとも最大面積を有する開口部に対して、好ましくは、すべての開口部に対して、該開口部周辺にある非開口部(周辺非開口部)の面積が1倍以上であるように形成されていることが好ましく、2倍以上であるように形成されていることがより好ましい。該周辺非開口部の面積が開口部の開口面積に対して1倍未満であると、水の透過性が高くなるため、好ましくない。
前記「周辺非開口部」とは、図4に示すように、前記開口部中の任意のアンカーポイントから、該開口部の外周に対して最短距離rで結んだ線の延長線上の、√2×r以上の位置にある点の連続体である周辺非開口部外周で囲まれた領域のことをいう。即ち、図4において、開口部のアンカーポイントを●印の位置にとった場合、該アンカーポイントから、開口部外周(図中、一重線で示す)に対して最短距離rで結んだ線の延長線上の、√2×rの位置にある点の連続体である周辺非開口部外周(図中、一重の太線で示す)で囲まれた領域(周辺非開口部(a)、ただし、開口部の領域は除く)が、周辺非開口部の最小の領域である。なお、図4では、●印で示される該アンカーポイントと該周辺非開口部外周との距離の全てが√2×rとなっているが、ここでは、代表的な3方向(r、r、r)のみを示す。
前記アンカーポイントは、前記開口部中の任意の点であるので、例えば、該アンカーポイントを◎印の位置にとった場合、周辺非開口部の最小の領域は、図中の二重線で示される周辺非開口部外周で囲まれた領域(周辺非開口部(b)、ただし、開口部の領域は除く)である。
前記周辺非開口部は、上述した最小の領域以上の面積の領域を有していれば、その形状は特に制限はなく、例えば、前記アンカーポイントを◎印の位置にとった場合、図中の点線で示される周辺非開口部外周で囲まれた領域(ただし、開口部の領域は除く)のようなランダムな形状であってもよい。
【0016】
以下に、本発明の非透水性開口部材において、前記基材が複数の開口部に有する場合の、各開口部の形成パターンについて、図面を参照しながら説明する。
図5は、基材上に、同じ面積を有する複数の開口部が、不規則に形成された場合を示す摸式図である。
図5では、6つの開口部1〜6が、それぞれの周辺非開口部の最小領域が、互いに重ならないように、前記基材上に形成されている。該開口部1〜6のそれぞれの周辺非開口部は、前述の通り、各開口部内の任意のアンカーポイントによって決めることができる。また、該開口部1〜6は、それぞれの周辺非開口部の最小領域が、互いに重ならないように形成されていれれば、どのように分布していてもよい。図5においては、該開口部1〜6の面積の総和と、それぞれの周辺非開口部の最小領域の面積の総和との合計が、該基材の面積より小さく、前記式で表される開口率R(%)は、50%以下である。
また、図5においては、前記基材における、前記周辺非開口部以外の非開口部(図中の網掛け部分)に対して、更に、その周辺非開口部が、前記開口部1〜6のそれぞれの周辺非開口部と重ならないように、新たな開口部7を形成することもできる。
【0017】
図6は、基材上に、同じ面積を有する複数の開口部が規則的に形成された場合を示す摸式図である。
図6では、6つの開口部1〜6が、それぞれの周辺非開口部の最小領域が、互いに重ならないように、前記基材上に形成されている。
図6においては、前記開口部1〜6の面積の総和と、それぞれの周辺非開口部の最小領域の面積の総和との合計が、前記基材の面積と等しく、前記式で表される開口率R(%)は、50%である。
また、図6においては、その規則的なパターンを保ちつつ、各開口部の面積が小さくすれば、前記開口率R(%)は、必然的に50%未満になる。
【0018】
本発明の非透水性開口部材においては、前記基材上の複数の開口部は、図6に示すように、規則的に形成されていることが好ましく、具体的には、メッシュ状に形成されていることが好ましい。該メッシュ形状のように、開口部が、ほぼ同じ大きさの四角形状であって、かつ、規則的なパターンで形成されている場合は、前記式で表される開口率Rは、該開口部の開口径と、隣合う開口部間の距離(線径)から算出することができる(開口率R=(開口径)/(開口径+線径))。
【0019】
前記基材の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、平面状、球面状(例えば、陶器等)、円筒状(例えば、電線等)などを挙げることができる。
【0020】
前記基材の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、酸性紙、中性紙、コート紙、プラスチックフイルムラミネート紙、合成紙、プラスチックフイルム(例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等)、ガラス基材、金属基材(例えば、アルミニウム等)、木製基材、セラミック基材(例えば、シリコンウエハー等)、ナイロン製繊維、凡用のポリマー樹脂、などを挙げることができる。
【0021】
前記基材の材料は、適宜合成したものであってもよいし、市販品を使用してもよい。
前記基材の材料の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、0.01〜50mmが好ましく、0.1〜20mmがより好ましい。該厚みが0.01mm未満であると、基材の堅牢性が不足するために直ぐに機能低下を起こす恐れがあり、50mmを超えると、成形しにくく、実用的ではない。
【0022】
本発明の基材は、前記材料中に、後述する撥水性化合物を含んでいてもよいし、前記材料の少なくとも一方の面上に、該撥水性化合物を含有する撥水材料で形成された撥水性層を有していてもよい。前記撥水性化合物を含む材料としては、例えば、テフロン(登録商標)樹脂などを挙げることができる。
【0023】
−撥水性化合物−
前記撥水性化合物としては、撥水性を有すれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、フッ素含有化合物、シリコーン化合物、などを好適に挙げることができる。
【0024】
−−フッ素含有化合物−−
前記フッ素含有化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、フッ素モノマー、該フッ素モノマーの重合体、該フッ素モノマーとその他のモノマーとの共重合体、又はこれらの混合物、などを挙げることができる。
前記フッ素モノマーとしては、該フッ素原子が一分子中に2個以上含まれるモノマーであり、一般的にパーフルオロ化合物と呼ばれるものが特に好ましい。
【0025】
前記フッ素モノマーの中でも、特に、下記構造式(1)、(2)、(3)、(4)及び(5)で表される化合物から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0026】
CH=CRCOORRf ・・・構造式(1)
ただし、前記構造式(1)中、Rは、水素原子、又はメチル基を表す。
は、−C2p−、−C(C2p+1)H−、−CHC(C2p+1)H−、又は−CHCHO−を表す。
Rfは、−C2n+1、−(CFH、−C2n+1−CF、−(CFOC2n2i+1、−(CFOC2m2iH、−N(C2p+1)COC2n+1、又は−N(C2p+1)SO2n+1を表す。ただし、該Rf中、pは1〜10、nは1〜16、mは0〜10、iは0〜16の整数をそれぞれ表す。
【0027】
CF=CFORg ・・・構造式(2)
ただし、前記構造式(2)中、Rgは、炭素数1〜20のフルオロアルキル基を表す。
【0028】
CH=CHRg ・・・構造式(3)
ただし、前記構造式(3)中、Rgは、炭素数1〜20のフルオロアルキル基を表す。
【0029】
CH=CRCOOROCOCR=CH ・・・構造式(4)
ただし、前記構造式(4)中、R及びRは、水素原子、又はメチル基を表す。
及びRは、−C2q−、−C(C2q+1)H−、−CHC(C2q+1)H−、又は−CHCHO−を表す。
は−C2tを表す。ただし、該R中、qは1〜10、tは1〜16の整数をそれぞれ表す。
【0030】
CH=CHRCOOCH(CH)CHOCOCR=CH ・・・構造式(5)
ただし、前記構造式(5)中、R及びRは、水素原子、又はメチル基を表す。
は−C2y+1を表す。ただし、該R中、yは1〜16の整数を表す。
【0031】
前記構造式(1)で表される化合物としては、具体的には、CF(CFCHCHOCOCH=CH、CFCHOCOCH=CH、CF(CFCHCHOCOC(CH)=CH、C15CON(C)CHOCOC(CH)=CH、CF(CFSON(CH)CHCHOCOCH=CH、CF(CFSON(C)CHCHOCOCH=CH、CSON(C)CHCHOCOC(CH)=CH、(CFCF(CF(CHOCOCH=CH、(CFCF(CF10(CHOCOC(CH)=CH、CF(CFCH(CH)OCOC(CH)=CH、CFCHOCHCHOCOCH=CH、C(CHCHO)CHOCOCH=CH、(CFCFO(CHOCOCH=CH、CF(CFOCHCHOCOC(CH)=CH、CCON(C)CHOCOCH=CH、CF(CFCON(CH)CH(CH)、CHOCOCH=CH、H(CFC(C)OCOC(CH)=CH、H(CFCHOCOCH=CH、H(CFCHOCOCH=CH、H(CF)CHOCOC(CH)=CH、CF(CFSON(CH)CHCHOCOC(CH)=CH、CF(CFSON(CH)(CH10OCOCH=CH、CSON(C)CHCHOCOC(CH)=CH、CF(CFSON(CH)(CHOCOCH=CH、CSON(C)C(C)HCHOCOCH=CH、などを挙げることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
前記構造式(2)又は(3)で表される化合物、すなわち、フルオロアルキル化オレフィンとしては、具体的には、CCH=CH、CCH=CH、C1021CH=CH、COCF=CF、C15OCF=CF、C17OCF=CF、などを挙げることができる。
【0033】
前記構造式(4)又は(5)で表される化合物としては、具体的には、CH=CHCOOCH(CFCHOCOCH=CH、CH=CHCOOCHCH(CH17)OCOCH=CH、などを挙げることができる。
【0034】
前記フッ素含有化合物としては、市販品を使用してもよく、該市販品としては、例えば、旭硝子社製のアサヒガード(パーフルオロアルキルエチルアクリレート)、ダイキン工業社製のユニダイン(パーフルオロアルキルアクリレート/n−アルキルアクリレート共重合体)、などを挙げることができる。
【0035】
前記その他のモノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ビニルモノマーが好ましい。該ビニルモノマーとしては、例えば、硬化速度等の点から、液状又は固形状のアクリル酸エステルモノマー及びメタクリル酸エステルモノマーの少なくともいずれか(以下、これらを「(メタ)アクリレート」と称することがある)が好適である。
前記ビニルモノマーとしては、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、各種のエポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、などを挙げることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
更に、上記ビニルモノマーに加えて、スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼンN−ビニルピロリドン、2−ビニルピリジン、炭素数が6以上のオレフィン系炭化水素、などを混合してもよい。
【0036】
−−シリコーン化合物−−
前記シリコーン化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シリコーンオイル、シリコーン樹脂、などを挙げることができる。
前記シリコーン化合物としては、具体的には、信越化学工業株式会社製のKP801M、X−24−9146、KP18C等の表面処理剤、X−22シリーズ(シリコーングラフトアクリル樹脂)、KPSシリーズ、KFシリーズ(例えば、シリコーンオイルKF96等);JSR社製のシリコーンアクリルエマルジョン;ジーイー東芝シリコーン社製のTSFシリーズ、TSWシリーズ、トスバリア、XS66−B0705;東レ・ダウコーニング・シリコーン社製のオイルSHシリーズ(例えば、SH−200等)、SFシリーズ;日華化学社製のドライポン600、などを挙げることができる。
【0037】
前記フッ素含有化合物及び前記シリコーン化合物の複合材料としては、例えば、NTT−AT製のHIRECシリーズなどを挙げることができる。
前記撥水性化合物のその他の例としては、例えば、アルキルケテンダイマー(辻井ら、応用物理,64,788(1995))のような結晶化時に自己組織的に凸凹構造を形成し超撥水性を発現するものなどを挙げることができる。
【0038】
前記撥水性化合物の撥水性は蒸留水の接触角により評価することができる。該接触角の測定方法としては種々知られているが、本発明の目的からは静止系の測定方法が好ましく、水滴形状を観察し、Laplace−Young近似により角度を算出する方法が好ましい。具体的には、前記撥水性化合物が塗設されたガラス基材の塗設面に対する蒸留水の接触角を測定する方法が好ましい。本発明で用いる撥水性化合物の接触角としては、120°以上であるのが好ましく、135°以上であるのがより好ましい。
また、本発明の非透水性開口部材と蒸留水との接触角は、水滴の大きさと開口部面積が適合しない、つまり、水滴径が開口径よりも数倍以上大きいために原則として測定が不可能であるが、複数の開口部を有する部分に対する接触角を便宜的に測定することができる。このような接触角としては、100°以上であるのが好ましく、120°以上であるのがより好ましい。
【0039】
<撥水性層>
前記撥水性層は、撥水材料から形成されてなる。該撥水材料は、少なくとも撥水性化合物を含んでなり、好ましくは光触媒を含んでなり、バインダー樹脂、更に必要に応じてその他の成分を含んでなる。
前記撥水性化合物としては、上述した撥水性化合物と同じものを用いることができる。
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリビニルアルコール樹脂、ゼラチン、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体;塩化ビニル;酢酸ビニルとビニルアルコール、マレイン酸及びアクリル酸の少なくともいずれかとの共重合体;塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体;塩化ビニル/アクリロニロリル共重合体;エチレン/酢酸ビニル共重合体;ニトロセルロース樹脂等のセルロース誘導体;ポリアクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ノボラック樹脂、可溶性ナイロン、ポリスチレン樹脂、メラミン樹脂、フォルマリン樹脂、などを挙げることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、上記バインダー樹脂は、ヘミアセタール系やイソシアネート系の公知の架橋剤を添加し、硬化処理して用いてもよい。
【0040】
−光触媒−
本発明に用いる光触媒としては、既存品や市販品の全てを用いることができ、粉体もしくはゾル状態が好ましい。該粉体の場合、造粒体、活性炭/無機繊維への吸着物、分散状態の塗液などの形態で用いることが好ましい。一方、該ゾル状態の場合は塗液形態で用いることが好ましい。
【0041】
前記光触媒の主成分としては、酸化チタン(TiO)が好ましい。ここで、該「主成分」とは、該光触媒の全固形分に対して50質量%以上を含有する成分のことを意味する。
前記酸化チタンの粉体の結晶形としては、アナタースかルチルが好ましい。この結晶形は単独でも混合物であってもよい。
前記酸化チタン粉体の具体例としては、石原産業株式会社製ST−01などのSTシリーズ;エコデバイス製のブルーアクティブPW−25;堺化学製のSSPシリーズ、STRシリーズ、CSシリーズ;チタン工業製のクロノス(KAシリーズ、KRシリーズ);ミレニアム ケミカルズ製のTiONA;デグッサ製のP−25触媒、などを挙げることができる。
前記光触媒は、前記酸化チタンを含む複数成分の混合物であってもよく、具体的には、日本触媒製のSX−Tシリーズ(SXタイプはチタンとシリカの二元系複合酸化物の意味)などを挙げることができる。
【0042】
前記光触媒の撥水材料における含有量としては、固形分濃度で10質量%以下が好ましく、0.1〜5質量%が好ましい。該含有量が10質量%を超えると、光触媒 活性は増加するが、撥水材料の耐久性は低下してしまうために、水に対する接触角が短時間で低下することがある。
【0043】
−撥水性層の形成方法−
前記撥水性層は、前記撥水材料を前記基材上に塗布、乾燥することにより、塗設することができる。該撥水材料の塗設方法としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、例えば、コーティング法、スプレー法、浸漬固着処理法、などを挙げることができる。これらは、1種単独で用いてもよいし、基材の形状、材質などにより、2種以上を組み合わせてもよい。
前記撥水性層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、0.1〜100μmが好ましく、0.5〜50μmがより好ましい。該厚みが0.1μm未満であると、撥水層の堅牢性が不足するため直ぐに機能低下を起こす恐れがあり、100μmを超えると、製膜しにくく、実用的ではない。
【0044】
本発明の非透水性開口部材は、通気性と防水性とをともに兼ね備えているので、例えば、携帯電話やデジタルカメラ等のモバイル機器の防水袋、合羽、傘、靴、鞄、手袋、スポーツ用品、網戸、パッケージ部材、農業用シートなどに幅広く適用することができる。
【実施例】
【0045】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
【0046】
(実施例1)
−非透水性開口部材の作製−
表2に記載のナイロン製ろ過用布No.1(商品名:N−110、野口ふるい布製、110メッシュ、開口率:49%)に、超撥水スプレーであるHIREC1100(NTTアドバンステクノロジ株式会社製)をスプレーコートし、該ろ過用布表面に超撥水膜を形成し、非透水性開口部材を作製した。該スプレーコートは、濾過用布前面に対して、スプレーによる吹き付けと続く室温乾燥処理30分を1セットとして、計3セット行った。なお、この非透水性開口部材を電子顕微鏡で観察し、最大口径を有する開口部分の面積とその周辺部における非開口部の面積を求めたところ、1倍以上であることが確認できた。
得られた実施例1の非透水性開口部材を用いて、水の透過性、及び水よりも表面張力の低い水溶液の透過性を下記の方法で評価した。結果を表3に示す。
【0047】
<透過性の評価>
(1)水の透過性
得られた非透水性開口部材を1辺10cmの正方形状に切り取り試験片とし、水の透過性を評価した。図7のように、100mLのコップに蒸留水を20mL入れ、コップの口を各試験片で覆い、コップの天地を返したときに、試験開始直後、試験開始3日後、及び試験開始10日後に該試験片を透過して下に落ちた蒸留水の量から透過性を評価した。評価基準は表1に示す通りである。結果を表3に示す。
【表1】

【0048】
(2)水よりも表面張力の低い水溶液の透過性
(1)水の透過性の評価において、水を、水よりも表面張力の低い水溶液であるドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の0.1質量%水溶液に代えた以外は水の透過性の評価と同様にして水よりも表面張力の低い水溶液の透過性を評価した。結果を表3に示す。
【0049】
(実施例2)
実施例1において、ナイロン製ろ過用布No.1を、表2に記載のナイロン製ろ過用布No.2(商品名:N−150、野口ふるい布製、150メッシュ、開口率:41%)に代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例2の非透水性開口部材を作製し、水の透過性、及び水よりも表面張力の低い水溶液の透過性を評価した。結果を表3に示す。
【0050】
(実施例3)
実施例1において、ナイロン製ろ過用布No.1を、表2に記載のナイロン製ろ過用布No.3(商品名:N−250、野口ふるい布製、250メッシュ、開口率:33%)に代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例3の非透水性開口部材を作製し、水の透過性、及び水よりも表面張力の低い水溶液の透過性を評価した。結果を表3に示す。
【0051】
(実施例4)
実施例1において、ナイロン製ろ過用布No.1を、表2に記載のナイロン製ろ過用布No.4(商品名:N−420、野口ふるい布製、420メッシュ、開口率:31%)に代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例4の非透水性開口部材を作製し、水の透過性、及び水よりも表面張力の低い水溶液の透過性を評価した。結果を表3に示す。
【0052】
(実施例5〜8)
実施例1〜4において、超撥水スプレーをHIREC1100から、HIREC1550(NTTアドバンステクノロジ株式会社製)に代えた以外は、実施例1〜4と同様にして、実施例5〜8の非透水性開口部材を作製し、水の透過性、及び水よりも表面張力の低い水溶液の透過性を評価した。結果を表3に示す。
なお、実施例7及び8においては、得られた非透水性開口部材上に水3μLを滴下して、該非透水性開口部材の水に対する接触角を接触角測定機(英弘精機株式会社製、OCA20)で測定したところ、それぞれ138°及び148°であった。また、水よりも表面張力の低い水溶液として、0.1質量%SDS水溶液を用い、同様に3μL滴下して、水よりも表面張力の低い水溶液に対する接触角を測定したところ、それぞれ130°及び135°であった。
また、HIREC1550をガラス基材上に塗布し、水の接触角を測定したところ、155°であった。
また、実施例8の非透水性開口部材上の水滴形状の観察写真を図8に示す。
【0053】
(比較例1〜4)
比較例1〜4としては、無処理のナイロン製ろ過用布No.1〜No.4を用い、実施例1と同様にして、該ナイロン製ろ過用布No.1〜No.4の水の透過性、及び水よりも表面張力の低い水溶液の透過性を評価した。結果を表3に示す。
なお、比較例4においては、実施例7及び8と同様にして、得られた非透水性開口部材の水、及び0.1質量%SDS水溶液に対する接触角を測定したところ、それぞれ111°及び79°であった。
【0054】
【表2】

*1:開口面積=(開口径)
*2:開口率=(開口径)/(開口径+線径)
【0055】
【表3】

表3の結果から、上述した式で表される開口率R(%)が50%以下であり、かつ撥水性を示す実施例1〜8の非透水性開口部材は、撥水層を有さない比較例1〜4の開口部材に対して水を透過しにくい、又は水を透過しないことが判った。これらの中でも、高い撥水性を付与する撥水材料で形成された撥水層を有する実施例5〜8の非透水性開口部材は、特に水を透過しにくいことが判った。
更に、開口率R(%)が33%以下である実施例7〜8の非透水性開口部材は、水を透過せず、加えて、水よりも表面張力の小さい水溶液も極めて透過しにくいことが判った。共雑物を含む水溶液、つまり、水よりも表面エネルギーの小さな水溶液に対して難透過性を有しているということは、実生活における防水性が高いといえる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の非透水性開口部材は、通気性と防水性とをともに兼ね備えているので、例えば、携帯電話やデジタルカメラ等のモバイル機器の防水袋、合羽、傘、靴、鞄、手袋、スポーツ用品、網戸、パッケージ部材、農業用シートなどに幅広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】図1は、水の接触角の測定原理を示す模式図である。
【図2】図2は、正方形状の開口部を有する基材を示す模式図である。
【図3】図3は、円状の開口部を有する基材を示す模式図である。
【図4】図4は、周辺非開口部の定義を示す説明図である。
【図5】図5は、複数の開口部が不規則に形成された基材を示す摸式図である。
【図6】図6は、複数の開口部が規則的に形成された基材を示す摸式図である。
【図7】図7は、実施例における水の透過性の評価方法を示す模式図である。
【図8】図8は、実施例8の非透水性開口部材上の水滴形状の観察写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に複数の貫通孔が設けられてなり、
前記貫通孔が形成された開口部の各開口面積が5mm以下であり、
前記基材の面積Uに対して、次式で表される開口率R(%)が、50%以下であり、撥水性を示すことを特徴とする非透水性開口部材。
【数1】

【請求項2】
開口率R(%)が、33%以下である請求項1に記載の非透水性開口部材。
【請求項3】
最大面積の開口部に対して、該開口部周辺にある非開口部の面積が1倍以上である請求項1から2のいずれかに記載の非透水性開口部材。
【請求項4】
開口部が、メッシュ状に形成された請求項1から3のいずれかに記載の非透水性開口部材。
【請求項5】
基材が、撥水性化合物を含む請求項1から4のいずれかに記載の非透水性開口部材。
【請求項6】
基材の少なくとも一方の面上に、撥水性化合物を含有する撥水材料で形成された撥水性層を有する請求項1から5のいずれかに記載の非透水性開口部材。
【請求項7】
撥水材料が、固形分濃度で10質量%以下の酸化チタンを主成分とする光触媒を含む請求項6に記載の非透水性開口部材。
【請求項8】
水との接触角が100°以上である請求項1から7のいずれかに記載の非透水性開口部材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2007−239109(P2007−239109A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−59070(P2006−59070)
【出願日】平成18年3月6日(2006.3.6)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】