説明

非通気マスク用感染防止

呼吸通気療法、例えば、CPAP又はバイ・レベル治療方法を行う間に患者が排出したガスを濾過するため、あるいは他の患者又は臨床設定に対する横断感染の可能性を減じるか又は削除するために、マスク組立体(30)には、フィルター組立体(48)が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権出願へのクロス・リファレンス
本出願は、2003年12月12日に出願された米国仮出願第60/528,716号に基づく優先権を主張し、かつその全体を参考文献として本願明細書に援用する。
【背景技術】
【0002】
本発明はマスクの分野、特に、この発明はマスク式陽圧人工呼吸器(NIPPV)療法又は経鼻的持続陽圧呼吸(CPAP)療法を適用する間に交差感染(cross-infection)の危険を減じる分野に関する。勿論、この開示事項は一般的な通気器への用途も有し得る。
【0003】
図1は、入口14と、ヘッドギア(図示せず)用装着点を与える少なくとも1つのストラップ接続点18と、を含むマスクシェル12を含む従来技術によるマスク組立体10を図示する。顔に接触するクッション16の形態をした顔インターフェースはシェルに取り付けられ、これにより、加圧された呼吸可能なガスが入口14を介して導入される内部チャンバーを画成する。シェル12は少なくとも1つの開口を含み、この開口は、この場合、複数の通気開口22を含むエラストマー製インサート20で覆われる。マスク組立体10は鼻マスクであるように図示されているが、全面マスクともし得る。図1の鼻マスクは、ResMed会社に譲渡された従来技術特許文献に全て記載されており、かつその全内容が参考文献として本願明細書に援用される(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】米国特許第6,561,190号明細書
【0004】
陽圧呼吸療法の適用は、吐出された空気がマスクから適切に排出されて患者が吐出したCOを再呼吸することを防ぐ。
【0005】
バイ・レベル又はCPAPデバイスを使用するときに、吐出された空気は、マスクに組み込まれたか又は図1に示すようなマスクに近接して装着された1つ以上の通気孔を介してマスクから排出される。治療中、デバイスからの新鮮な空気は通気孔を通過する、吐出された空気を洗浄する。エーロゾルを含む、吐出されたガスは圧力下のマスク通気孔から周囲の大気内に排出される。感染率が高い呼吸疾患に対しては、患者から健康管理労働者又は他の患者への交差感染の危険性が潜在的に増大し得る。従って、陽圧治療中に濾過されていない通気によって交差感染する危険性を削除又は少なくとも減じるマスクを作り出すことは望ましいものとし得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の1つの態様によれば、マスクにはフィルター又は患者が吐出したガスを濾過する他のデバイスが設けられる。1つの好ましい実施形態では、マスクは非通気マスクである。
【0007】
本発明の別の態様は陽圧気道治療方法の間に交差感染の危険性を減じるのに適したフィルター組立体を具備する鼻マスク又は全面マスクを供することである。
【0008】
本発明の実施形態に従えば、マスク組立体には、入口及び自身に設けたクッションを具備するマスクシェルが設けられる。加圧された呼吸可能なガス源が、患者の気道への送給のためにマスクシェルの内部に設けられる。フィルター組立体は患者が吐出したガスを濾過するために該マスクシェルと連通して設けられる。フィルター組立体は、マスクシェルの内部をフィルターを介して大気に連通させるように、マスクシェルに直に連結し得る。あるいは、フィルター組立体は、例えば、マスクシェルの入口に設けられた、エルボー又はT字ジョイントに連結し得る。フィルター組立体は、例えば、T字ジョイントの入口及び出口端部のジョイントの1つ以上の端部に設け得る。
【0009】
まだ別の態様では、使用時に、患者に接続するように形状構成された患者インターフェースが設けられる。患者インターフェースは大気より高く加圧されるガス源、及び、使用時に、患者が吐出したガスを受容するように形状構成され、これにより、吐出したガスは前記フィルター組立体を通過するのに続いて大気に通気される。
【0010】
本発明のこれら及び他の態様は以下の好ましい実施形態から明白になる。
【0011】
好ましい実施形態を以下の図面を参照して説明する。類似した参照符号は類似した部品を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の好ましい実施形態を図2〜図11に関して説明する。これらの図面に亘って、類似した参照符号は類似した部品を示す。
【0013】
図2は、本発明の第1実施形態によるマスク組立体30の概略図である。マスク組立体30は、クッション34の形態をしたフェースコンタクティング部分、及び入口36を具備するマスクシェル32を含む。マスクシェル及びクッションはResMed会社から種々の寸法のものが市販されている。勿論、本願明細書に記載されたこれら及び他の市販のコンポーネントは例示のみである。他のマスク、シェル及びクッションはResMed会社及び他のOEMからも入手可能である。
【0014】
T字形状の接続ジョイント38は、空気送給チューブ42によって加圧された呼吸可能なガス源が供給される入口40を含む。ジョイント38は、これを通じて呼吸可能なガスが患者に供給され、かつこれを通じて吐出された空気(C0を含む)が排出される導管44を含む。ジョイント38は、フィルター組立体48に接続される出口導管46を含む。フィルター組立体48は入口50、中央チャンバー52及び出口54を含む。好ましくは、フィルター組立体48はPallから部品番号BB50Tとして市販されているように疎水性である。出口54は、ResMed社から部品番号16934として市販されている調整キャップ56に接続される。さらに、ジョイント38はIntersurgicalから部品番号1980として市販されている。
【0015】
図2に示すように、空気はフィルター組立体48のフィルター58を通じて導かれ、次いで、調整キャップ56に形成された1つ以上のオリフィスを通過して大気に通じる。
【0016】
図3は、調整キャップ56の無いフィルター組立体48の平面図である。フィルター組立体は、該フィルター組立体の主要チャンバー52内に配置されるフィルター58を含む。
【0017】
図4は、患者Pに使用するマスク組立体30を示す。図1〜図3では、導管部分の各々は、例えば、22mm又は15mmの標準直径を有する、雄型及び雌型ジョイントを用いて接続されるのが好ましい。これらの寸法はこの実施形態の単なる例示であり、他の配向、接続及び寸法は本発明の範囲内にある。
【0018】
図5は、通気組立体48に関する図2の実施形態とは異なる本発明の第2実施形態を図示する。図5では、通気組立体48はPallから部品番号BB25Aとして市販されている。通気組立体48は、プラグ60、及び、この実施形態ではキャップされていないことが好ましい通気ポート62を含む。図5では、T字形状ジョイント38は、出口46が雄型部品というよりむしろ雌型部品である点で僅かに異なる形状構成を有する。
【0019】
図6は、別の形状構成を有する本発明の第3実施形態を示す。特に、マスク組立体は、Intersurgicalから部品番号1992として市販されているT字形状ジョイントというよりはむしろエルボジョイント38を含む。エルボジョイント38は、図2に示すものに類似するフィルター組立体48に接続される。フィルター組立体48は、今度は、ResMed社から部品番号17921として市販されているインライン通気孔65に接続される。図6の矢印Aによって示されるように、排気はインライン通気孔64によって達成される。換言すれば、患者が吐出したガスであるCOはエルボジョイント38及びフィルター組立体48を通過し、かつ、次いで、フィルター組立体48で濾過されるインライン通気孔64を介して排出される。
【0020】
図7は、図6の実施形態に類似した本発明の第4実施形態を示す。図7の実施形態の主な差異は、濾過した空気が、図6に示すインライン通気孔64を通じてよりはむしろ通気ポート62を通じて排出される図5に示すものに類似していることである。フィルター組立体48及び空気送給チューブ42はIntersurgicalから部品番号1960として入手可能な直線型コネクター66によって接続される。
【0021】
図8〜図11は、例えば、市販されていな、すなわち在庫があってすぐ買えないフィルター組立体を含む、本発明による更なる組立体を図示する。これらの実施形態は、NIPPV又はCPAPの環境及び適用のための幾つかの利益を有し得る修正済コンポーネント(例えば、ハウジング、通気孔等)又は作用特性(通気孔流れ等)を含む。勿論、マスクのような他のコンポーネントへの修正も性能を最適化するためになし得る。
【0022】
図8は、図7の実施形態に類似する本発明の第5実施形態を示す。主な差異は、フィルター組立体48が図7に示す直線型コネクター66を使用せずに空気送給チューブ42に直に接続できないように2つの雄型端部を含むことである。
【0023】
図9は、マスクシェル32にフィルター組立体48が設けられるか又はマスクシェル32がフィルター組立体48に接続される本発明の第6実施形態を示す。例えば、マスク組立体の内部チャンバーとフィルター組立体48の間の連通は、例えば、開口をシェルに設け得るように、シェルに変更を要するであろう。別様には、フィルター組立体は、例えば、ResMed社から入手可能な通気孔マスクに見られる予め存在する開口を介してマスクシェル内部と連通するように構成し得る。例えば、フィルター組立体の入口側は従来技術(通気孔20の除去は開口を露わにするであろう)を示す図1に示すような通気開口と係合するように構成し得る。
【0024】
図10は、図9に示す実施形態に類似した本発明の第7実施形態を示す。主な差異は、患者の視覚との十分にあり得る干渉を減じ、かつ患者の頭の運動と干渉する可能性を低くするように、図10のフィルター組立体が低プロファイルを有することである。
【0025】
図11は、図5に示す実施形態に類似した本発明の第8実施形態を示す。主な差異は、図11の通気孔組立体48が、例えば、図5に示す出口チューブ54の高さを削除又は減じることによって達成される低プロファイルを有することである。
【0026】
何れの実施形態を使用するかを決定するにあたって、幾つかの要因を考慮に入れるべきである。例えば、使用される何れのフィルターも気流に与える無視し得る影響を有するべきである。濾過されつつあるのが通気孔流れのみである場合、これは要因になることは少ない。さらにまた、フィルターインピーダンスは予測可能であり、かつ相対的に一定であるべきである。さらに、COを再呼吸する潜在的可能性の何れも、削除されるか又は少なくとも許容し得るレベルにまで最小化されるべきである。フィルター組立体を含めることは、呼吸起動感度に与える逆効果がほとんど無いか、あるいは呼吸起動感度に何の影響も与えるべきではない。さらにまた、濾過された空気の最終的な通気は、この通気が望ましくないレベルの騒音を生じないようにすべきである。
【0027】
フィルターは、好ましくは、99.999%以上のウイルス効力を有すべきである。フィルターが加圧されたガス源と患者の間にある、図6〜図8の実施形態に対しては、フィルターインピーダンスは好ましくは出来るだけ低くあるべきであり、60リットル/分の流れで2.0cm水柱を超えるべきではない。例えば、通気流れが濾過されるのみである他の実施形態に対しては、流れインピーダンス要件は僅かに緩和し得る。図2、図5及び図9〜図11を参照のこと。フィルターは、フィルター抵抗が上述した要求を超えずに最小でも24時間連続使用に対して試験された封鎖抵抗を有すべきである。勿論、これらの値は適用に応じて変更し得る。好ましいフィルターは、吐出されたガスに適切である、すなわち、このフィルターは湿ったガスで効力を維持する。
適切な1つの例示は機械式疎水性フィルターである。
【0028】
一般的に、陽的気道圧力装置と共に使用する全面マスクシステムは組込式窒息防止バルブを具備する。従って、装置が圧力送給を停止すると、窒息防止バルブは、患者が吐出した空気を再呼吸するよりはむしろ部屋の空気を呼吸可能にする。
上述した複数の実施形態は窒息防止バルブを含まないが、これらの実施形態はこうした窒息防止バルブを含むように変更し得る。例えば、フィルタキャップ及び/又は通気孔それ自体は窒息防止バルブを含み得る。窒息防止バルブが含まれない場合、マスクシステムは制御された環境でのみ使用されることが好ましく、かつ厳密に監視されるべきである。
【0029】
本発明を、どれが現在最も実際的であり、かつ好ましい実施形態であると考えられるかに関して記載してきたが、本発明は開示された実施形態に限定されるべきではないが、反対に、本発明の精神及び範囲内に含まれる様々な変更及び等価な配置構成を網羅することを意図していることを理解しなければならない。例えば、図2〜図11の実施形態は前部入口開口を具備する全面マスクを図示するが、フィルター組立体は鼻のみのマスク又は口のみのマスク、鼻プロング、鼻ピロー、鼻カニューレ、あるいは図1に示すようなオーバーヘッドタイプ入口を具備するマスクと共に使用し得る。これらの全ては本願明細書ではマスク又はマスク組立体として一般的に呼称される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】従来技術によるマスク組立体を示す図である。
【図2】本発明によるマスク組立体の第1実施形態を示す図である。
【図3】図2に示すフィルター組立体の平面図である。
【図4】使用時の図2のマスク組立体を示す図である。
【図5】本発明の第2実施形態を示す図である。
【図6】本発明の第3実施形態を示す図である。
【図7】本発明の第4実施形態を示す図である。
【図8】本発明による第5実施形態を示す図である。
【図9】本発明による第6実施形態を示す図である。
【図10】本発明による第7実施形態を示す図である。
【図11】本発明による第8実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0031】
30 マスク組立体
32 マスクシェル
34 クッション
36 入口
38 接続ジョイント
40 入口
42 空気送給チューブ
44 導管
46 出口導管
48 フィルター組立体
50 入口
52 主要チャンバー
54 出口チューブ
56 調整キャップ
58 フィルター
60 プラグ
62 通気ポート
64 インライン通気孔
66 直線型コネクター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスク組立体であって、
使用時に患者に接続するように形状構成され、大気圧より高く加圧されたガス源と連通する患者インターフェースと、
使用時に患者が吐出したガスを受容するように構成された、これにより吐出した前記ガスが自身を通過するのに続いて大気に通気されるフィルター組立体と、を備えるマスク。
【請求項2】
前記患者インターフェースと前記フィルター組立体との間の通路を画定する接続ジョイントを更に備える、請求項1に記載のマスク組立体。
【請求項3】
前記接続ジョイントはT字形状ジョイントを備え、この場合、前記T字形状ジョイントは、使用時に、前記フィルター組立体と前記加圧ガス源との間に設けられる、請求項2に記載のマスク組立体。
【請求項4】
前記接続ジョイントはL字形状ジョイントであり、使用時に、前記フィルター組立体は前記加圧されたガス源と前記L字形状ジョイントとの間に位置づけられる、請求項2に記載のマスク組立体。
【請求項5】
前記フィルター組立体は患者が吐出したガスを受容する入口、中央チャンバー、前記中央チャンバーに設けられたフィルター、及び濾過に続いて排出された前記ガスを解放するように形状構成された出口を含む、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のマスク組立体。
【請求項6】
前記フィルターは疎水性材料で作られる、請求項5に記載のマスク組立体。
【請求項7】
前記中央チャンバーには1つ以上の開口を含む調節キャップが設けられる、請求項5または請求項6に記載のマスク組立体。
【請求項8】
前記調節キャップは、前記中央チャンバーと連通する通気ポート、及び前記出口用プラグを含む、請求項7に記載のマスク組立体。
【請求項9】
前記フィルター組立体は、使用時に、前記加圧されたガス源と前記患者インターフェースとの間に位置づけられたインライン通気孔を含む、請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載のマスク組立体。
【請求項10】
前記フィルター組立体はフィルターを含む、請求項1から請求項4又は請求項9のいずれか1項に記載のマスク組立体。
【請求項11】
前記フィルターは99.999%以上のウイルス効力を有する、請求項5から請求項8又は請求項10のいずれか1項に記載のマスク組立体。
【請求項12】
前記フィルターは毎分約60リットルで約2.0cm水柱以下のインピーダンスを有する、請求項5から請求項8、請求項10又は請求項11のいずれか1項に記載のマスク組立体。
【請求項13】
前記フィルター組立体は、使用時に、前記加圧されたガス源と前記患者インターフェースとの間に位置付けられる、請求項1に記載のマスク組立体。
【請求項14】
窒息防止バルブを更に備える、請求項1から請求項13までのいずれか1項に記載のマスク組立体。
【請求項15】
前記フィルター組立体に設けられたフィルターキャップを更に備え、前記窒息防止バルブは前記フィルターキャップに設けられる、請求項14に記載のマスク組立体。
【請求項16】
通気孔を更に備え、前記窒息防止バルブは前記通気孔に設けられる、請求項14または請求項15に記載のマスク組立体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2007−513655(P2007−513655A)
【公表日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−543317(P2006−543317)
【出願日】平成16年12月8日(2004.12.8)
【国際出願番号】PCT/AU2004/001732
【国際公開番号】WO2005/056091
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(500046450)レスメド リミテッド (192)
【Fターム(参考)】