説明

非3D用途における心電図を使用せずに心拍数を導出する方法及びシステム

ほぼリアルタイムで超音波画像化データから胎児心拍数を決定するシステム及び方法が提供される。該心拍数は、超音波心臓ボリュームの空間点を分析し、空間点の超音波特性の変化のピークのスペクトル周波数を計算することにより、決定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して医療装置に関する。より詳細には、本発明は、非3D画像化用途において心電図を使用せずに心拍数を導出する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療超音波画像化は、人体の内部の領域の健康状態を可視化及び医療的に診断するポピュラーな手段になっている。この技術を用いると、相互接続ケーブルを介して超音波システムコンソールに取り付けられる音響トランスデューサプローブは、超音波検査士により患者の組織に抗してあてられ、そこで該プローブは、あるスキャニング手法でフォーカスされた超音波を放出及び受信する。スキャンされた超音波すなわち超音波ビームは、超音波コンソールにディスプレイする患者内部の組織の画像スライスの系統立った生成を可能にする。該技術は、一般に速く、無痛で、かなり安く、安全であり、胎児の画像化のような使用でさえも同様である。
【0003】
一般に使用する超音波画像化システムは、内部の組織タイポグラフィ(typography)、血管内体液流量率、及び異常をマッピングするために、超音波信号を生成及び伝送する。システムは、典型的に、画像化のいくつかの方法又はモード、すなわち輝度モード(Bモード)、ハーモニック、スペクトルドップラ、及びカラーフローを含む。
【0004】
各画像化方法は、その特徴的な使用及び制限をもつ。Bモード画像化は、典型的に内部の組織及び器官の構造を高い空間分解能で画像化するために使用される。一般にこの程度の空間分解能を達成するために、短い幅の超音波パルスが有利である。ハーモニック画像化は、非線形波伝播から生成されたハーモニック周波数を使用する。ハーモニック画像化は、より伝統的で基礎的なBモード画像化と比べて、クラッタ、サイドローブ及び収差を削減することができるが、典型的に、妥協した空間分解能となる。
【0005】
カラーフロー画像化は、心臓血管システム内で血流を画像化し、異常又は乱流の場所を探すために、主として使用される。カラーフロー画像化は、通常Bモード構造画像に対して重畳される。しかしながら、適切なカラーフロー画像化に必要な超音波特性は、Bモードに使用されるものとは異なる。カラーフロー画像化は、動きを検出するための多重パルスと、感度のためのBモードスキャンに通常使用されるよりも長い幅の超音波パルスとを必要とする。低い超音波パルス反復率は、遅く流れる静脈に望ましいが、動脈及び心臓に見られる速い流れに対しては、高い超音波パルス反復率が、エイリアシングエラーを適切に避けるために必要である。
【0006】
スペクトルドップラは、非常に多くの超音波パルス(又は連続波)を同じ方向に使用し、結果のエコーデータストリームを周波数スペクトル対時間のディスプレイ及びオーディオ出力に変換する。スペクトルドップラは、カラーフローの多くの位置に対する簡易な見積もりと対照的に、1つの位置に対してより詳細な血流の動的情報を提供する。典型的にカラーフローは、スペクトルドップラサンプル位置をどこにするかを決定するために使用される。
【0007】
3D超音波画像化は、1つの平面ではなくボリュームに渡って、機械的又は電気的に超音波パルスをスキャンすることに関する。典型的にボリュームは、一連の2D平面としてスキャンされる。エコーデータは、ボリュームレンダリングされた画像として、又はボリュームデータを通じてスライスされた2D平面画像として、通常ディスプレイされる。名目的4D画像化は、3Dボリュームが得られ、及び/又は、構造のモーションが画像化されるのを見るのに十分速くディスプレイされる場合、時々使用される(時間が、4番目の次元である)。
【0008】
心臓及び胎児は、3D超音波画像化の2つの主な用途である。なぜなら両方とも超音波に対してほぼ透明であるかなりのボリュームの液体を含むので、生体構造が3Dで比較的容易に可視化されるためである。特にカラーフロー画像化については、3Dの取得が典型的に心臓の速い動きに対して遅すぎ、大人又は小児用3D心臓検査では、複数の心臓周期に渡る超音波の取得を同期するために、心電図が使用される。しかしながら、心電図は胎児心臓検査に実用的ではない。カリフォルニア大学サンディエゴ校のNelson, Sklancky,及びPretoriusは、胎児心臓を通じた遅い(多くの心臓周期)3Dスキャンにおける2D Bモード画像から胎児心拍数を導出し、心臓周期の複数の点で胎児心臓の2D画像を3Dボリュームにシャッフルするために導出された心拍数を使用する技術を公開した。該技術(以下ではNSP技術と呼ぶ)は、いくつかの商業的に利用可能な超音波システムに実施され、以下でより詳細に記載されるだろう。NSP技術は、胎児心臓のポスト処理3D画像取得のみに適用され、2D Bモード画像においてかなりの心臓の動きを持つことに依存する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本開示の目的は、胎児心臓の3D画像化以外の状況で、心電図を必要とせずに心拍数を導出、ディスプレイ又は使用するようにNSP技術を拡張することである。本開示の更なる目的は、Bモード画像における心臓の周期的モーションがほとんどなく、心電図がめったに使用されない非心臓検査に特に役立つ3D取得の2D Bモードスライス以外のデータで動作するように、NSP技術を拡張することである。本開示の更なる目的は、ライブの画像化状況で速く更新された心拍数の見積もりを提供するために、重畳する時間セグメントを使用するステップを含み、反復的に動作するようにNSP技術を拡張することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一実施例は、胎児心臓の3D画像化以外の状況で、一群の超音波画像から心拍数を決定する方法を提供することである。見積もられた心拍数は、一群の超音波画像に渡る副群の空間点の合計された電力スペクトルのピークの周波数である。導出された心拍数は、反復ループディスプレイの時間間隔を整数の心拍数に設定するか、ノイズ低減若しくは時間的な分解能の改善のために複数の心拍からのデータを組み合わせるか、ライブ画像化状況で数値的に心拍数をディスプレイするか、又は、胎児心臓以外の用途における3D若しくは4Dボリュームの再構成するために使用することができる。心拍数は、胎児心臓仰角掃引(elevation-swept)Bモード画像以外の超音波データ、例えばMモード、心臓若しくは動脈のカラーフロー相互関係若しくは速度、又はスペクトルドップラデータから導出することができる。
【0011】
本開示の付加的な実施例は、超音波医療画像化システムを提供する。該超音波医療画像化システムは、超音波トランスデューサ、プロセッサ及びビデオディスプレイをもつ超音波画像化装置を含む。
【0012】
本発明のこれら及び他の特徴、態様及び利点は、以下の説明、請求項及び添付の図面を参照して、よりよく理解されるだろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1に示されるように、本開示の一実施例は、一群の超音波心臓画像から心拍数を決定する方法を提供する。ステップ101では、超音波画像化装置は、2D心臓画像を得るためにスキャンを開始する(後にどのようにこれが2D心臓画像以外になり得るのか説明されるだろう)。続いてステップ102は、一様な間隔のグリッドのような副群の空間点を選択する。この選択するステップは、手動で又は自動化されたプロセスとして実行され得る。ステップ103では、DCオフセット及び遅い変化は、各空間点から除去される。ステップ104に続いて、ステップ102で選択された空間点は、時間に関してプロットされ、窓関数が、ステップ105のデータに適用される。2つの適切な窓関数は、ハン及びハミング関数である。電力スペクトルは、窓関数を適用されたデータに対してステップ106で計算される。ステップ107では、正及び負の両方の周波数も含めて、全ての電力スペクトルが足しあわされる。足しあわされた電力スペクトルから、ステップ108において心拍数を決定するために、電力スペクトルのピークが導出され、画像スキャン間の時間サンプリングレートと共に処理される。足しあわされた電力スペクトルは、ゼロからサンプリングレートの半分までの周波数範囲をカバーする(該サンプリングレートは、2Dフレームレートである)。電力スペクトルのピークの位置は、それゆえサンプリングレートの有理数のところにある。ヘルツのサンプリングレートをかけると、ヘルツの心拍数を得、60をかけると、一分あたりの脈の心拍数を得る。
【0014】
図1に示されるように、導出された心拍数が使用されるいくつかの代替の態様がある。従来技術は、胎児心臓の遅い仰角掃引2D画像を心臓周期の異なる時期に多重3Dボリュームに再配置するために、心拍数を使用する(ステップ109)。
【0015】
図1に示される導出された心拍数の他の代替の使用は、本開示の主題である。もし2D画像が仰角掃引されるならば、該2D画像は、胎児心臓以外の用途の多重3Dボリュームに再構成されうる。2D画像のいくつかの副群の反復的なループディスプレイの長さ(典型的にシネループ(cine-loop)と呼ばれる)は、ループが終わりから始めに戻るとき、不連続性を最小化するために、整数の心臓周期に設定することができる(ステップ111)。ステップ109から再整理された画像は、変化及びノイズを低減するために平均化することができる(ステップ113)。ステップ109から再整理された画像は、時間の分解能を改善するために交互配置することもできる(ステップ114)。
【0016】
導出された心拍数は、数値的にディスプレイもされ、ライブの画像化状況で反復的に為されるとき、これは特に役に立つ。心拍数を正確に導出するためにいくつかの心拍のデータを用いる間、より高速な更新心拍数ディスプレイを提供するために、各心拍数の見積もりに対するデータの時間間隔は、図3に示されるように、重ね合わされ得る。例えば4秒の時間スパンは、0.5秒毎に刻むことができる。
【0017】
本開示の更なる主題は、心拍数を導出するために胎児心臓掃引仰角Bモード画像以外のデータを用いることである。該データは、非胎児心臓のBモード画像か、又は仰角掃引なしの胎児心臓のBモード画像であり得る。データは、グレイスケール又はカラーの何れかのMモードデータでもあり得る。データは、複素相関又は検出された速度の何れかの心臓又は動脈のカラーフローデータでもあり得る。データは、ドップラスペクトルでもあり得る。
【0018】
本開示の他の実施例は、図2に示されるように、医療超音波画像化システム200を提供する。システム200は、画像ワークステーション204に接続される超音波トランスデューサアセンブリ202を含む。画像化ワークステーション204は、1以上のプロセッサ206と、ハードドライブ、RAMディスク等のような少なくとも1つのストレージ装置208とを含む。ストレージ装置208は、超音波トランスデューサ202により得られた画像データの一時的及び長期的ストレージ並びに超音波システム200の制御及び画像化ソフトウェアを格納するために使用され得る。超音波画像化システム200は、ビデオディスプレイ210と、キーボード212及びマウス214を含むユーザ入力装置とを提供する。
【0019】
プロセッサ206は、制御及び画像化ソフトウェアを実行する。画像化ソフトウェアは、システム200のオペレータが超音波トランスデューサ202から受けたデータを可視化及び操作することを可能にする。付加的に、画像化ソフトウェアは、図1で例示され、且つ、上で詳細に述べられた本開示の方法を実行するためのサブルーチンを含む。
【0020】
要するに、プロセッサ206は、本開示の方法を実施する一群のプログラム可能な命令を実行する。一群のプログラム可能命令が、少なくとも1つのストレージ装置208及び/又はCD、3.5インチフロッピ、ハードドライブ等のようなコンピュータ可読媒体に格納され、プロセッサ206により実行することができるということが考慮される。
【0021】
本発明の記載された実施例は、制限するものよりも説明するものであることを意図され、本発明の全ての実施例を表すことは意図されない。様々な修正及び変形が、請求項に文字通り及び法律で認識された等価のものに記載された本発明の要旨又は範囲から逸脱することなくなされる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本開示の一実施例に従って、一群の超音波画像から心拍数を決定するステップを描写するフローチャートである。
【図2】図2は、本開示の一実施例に従って、超音波画像化システムを描写する概略図である。
【図3】図3は、連続的な画像化状況において心拍数の導出を重ねることを描写する図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一群の超音波画像から心拍数を決定する方法であって、
一群の超音波画像を得るステップと、
前記一群の超音波画像から副群の空間点を選択するステップと、
前記選択された空間点の各々の電力スペクトルを計算するステップと、全ての電力スペクトルを足し合わせるステップとを含む、前記選択された空間点の各々に対応するデータを処理するステップと、
前記足し合わされた電力スペクトルに対してスペクトルピーク周波数を決定するステップと、
を含み、該決定されたスペクトルピーク周波数が前記心拍数と実質的に同一である方法。
【請求項2】
DCオフセットを前記選択された空間点の各々から差し引くステップを更に有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記選択された空間点の各々を時間に関してプロットするステップと、窓関数を前記データに適用するステップとを更に有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記データを処理するステップが、前記窓関数を適用するステップにより、窓関数を適用された前記データの前記電力スペクトルを計算するステップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記心拍数をディスプレイするステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
一群の超音波画像から心拍数を決定するシステムであって、
一群の超音波画像を得る手段と、
前記一群の超音波画像から副群の空間点を選択する手段と、
前記選択された空間点の各々の電力スペクトルを計算する手段と、全ての電力スペクトルを足し合わせる手段とを有する、前記選択された空間点の各々に対応するデータを処理する手段と、
前記足し合わされた電力スペクトルに対するスペクトルピーク周波数を決定する手段と、
を有し、前記決定されたスペクトルピーク周波数が、前記心拍数と実質的に同一であるシステム。
【請求項7】
DCオフセットを前記選択された空間点の各々から差し引く手段を更に有する、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記選択された空間点の各々を時間に関してプロットする手段と、
前記データに窓関数を適用する手段と、
を更に有する、請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記電力スペクトルを計算する手段が、前記窓関数を適用する手段により、窓関数を適用された前記データを使用する、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記心拍数をディスプレイする手段を更に有する、請求項6に記載のシステム。
【請求項11】
一群の超音波画像を得るステップと、
前記一群の超音波画像から副群の空間点を選択するステップと、
前記選択された空間点の各々の電力スペクトルを計算するステップと、全ての電力スペクトルを足し合わせるステップとを含む、前記選択された空間点の各々に対応するデータを処理するステップと、
前記足し合わされた電力スペクトルに対してスペクトルピーク周波数を決定するステップとを含み、前記決定された空間ピーク周波数が実質的に心拍数と同一である、心拍数を一群の超音波画像から決定する方法を実行するために、プロセッサにより実行される一群のプログラム可能命令を格納するコンピュータ可読媒体。
【請求項12】
前記方法が、前記選択された空間点の各々からDCオフセットを差し引くステップを更に有する、請求項11に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項13】
前記方法が、
前記選択された空間点の各々を時間に関してプロットするステップと、
前記データを窓関数に適用するステップと、
を更に有する、請求項11に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項14】
前記データを処理するステップが、前記窓関数を適用するステップにより窓関数を適用された前記データの前記電力スペクトルを計算するステップを有する、請求項13に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項15】
前記方法が、前記心拍数をディスプレイするステップを更に有する、請求項11に記載のコンピュータ可読媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−528167(P2008−528167A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−552798(P2007−552798)
【出願日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際出願番号】PCT/IB2006/050293
【国際公開番号】WO2006/079992
【国際公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】