説明

非DNAサイズ標準物と共に電気泳動を用いてポリヌクレオチドのサイズを決定する方法

【課題】 ポリヌクレオチドに電気泳動にかけて電気泳動データを取得し、この電気泳動データを非ポリヌクレオチドサイズ標準物から得られる電気泳動データに比較することにより、ポリヌクレオチドのサイズを決定する方法を提供する。
【解決手段】 本発明は、サンプルポリヌクレオチドのサイズを決定する方法に関する。サンプルポリヌクレオチドは、少なくとも、第1の蛍光スペクトルの光を検出することでサンプルポリヌクレオチドの存在が示される、第1の蛍光スペクトルを有する蛍光化合物と、各々が異なる移動度を有する複数のサイズ標準物との存在下で電気泳動にかけ、サイズ標準物の各々は、本質的にポリヌクレオチドを含まない。サンプルポリヌクレオチド及び複数のサイズ標準物の移動座標が決定される。サンプルポリヌクレオチドのサイズは、サンプルポリヌクレオチドの移動座標及びサイズ標準物の移動座標を用いて決定される。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(本発明の分野)
本発明は、ポリヌクレオチドを電気泳動にかけて電気泳動データを取得し、この電気泳動データを非ポリヌクレオチドサイズ標準物から得られる電気泳動データと比較することにより、ポリヌクレオチドのサイズを決定する方法に関する。
【0002】
(本発明の背景技術)
サンプルポリヌクレオチドは、既知のサイズの基準ポリヌクレオチドの存在下で電気泳動にかけ得る。サンプルポリヌクレオチドのサイズは、サンプルポリヌクレオチド及び基準ポリヌクレオチドの移動時間を用いて決定することができる。同じサイズのサンプルポリヌクレオチド及び基準ポリヌクレオチドは、電気泳動にかけると一般的に同じ移動度を示す。
インターカレート染料から得られる蛍光のような検出方法は、サンプルポリヌクレオチド及び基準ポリヌクレオチドのどちらの存在にも感受性がある。従って、サンプルポリヌクレオチド及び基準ポリヌクレオチドの分離からの電気泳動データは、基準ポリヌクレオチドの1つから得られるピークによって不鮮明になったサンプルポリヌクレオチドピークを含み得る。
電気泳動データにおける不鮮明なサンプルピークを低減するポリヌクレオチドサイズ標準物が必要である。
【0003】
(本発明の概要)
本発明の第1の態様は、サンプルポリヌクレオチドのサイズを決定する方法に関する。サンプルポリヌクレオチドは、少なくとも(1)蛍光化合物の蛍光を検出することでサンプルポリヌクレオチドの存在が示される、第1の蛍光スペクトルを有する蛍光化合物と、(2)各々が異なる移動度を有する複数のサイズ標準物との存在下で電気泳動にかける。サイズ標準物の各々は、好ましくは、少なくとも本質的にはポリヌクレオチドを含まない。好ましいサイズ標準物は、少なくとも本質的にはヌクレオチドを含まない。
【0004】
サンプルポリヌクレオチド及びサイズ標準物の移動座標が決定される。サンプルポリヌクレオチドのサイズは、サンプルポリヌクレオチドの移動座標及びサイズ標準物の移動座標を用いて決定される。
移動座標は、移動時間や移動距離とすることができ、又は、移動度のようなその組合せから決定される移動座標とすることができる。
蛍光化合物は、ポリヌクレオチドでインターカレートされてそのようにインターカレートされると蛍光の増強を示すインターカレート化合物とすることができる。例示的なインターカレート化合物は、臭化エチジウムである。
【0005】
サンプルポリヌクレオチドを電気泳動にかける工程は、好ましくは、インターカレート化合物に光を照射する工程、及びサンプルポリヌクレオチドの存在を示す蛍光光線を第1の波長で検出する工程を含む。サイズ標準物を電気泳動にかける工程は、好ましくは、サイズ標準物に光を照射する工程、及びサイズ標準物の存在を示す蛍光光線を第2の異なる波長で検出する工程を含む。
サイズ標準物は、好ましくは、インターカレートされたインターカレート化合物を本質的に含まないので、インターカレート化合物に付随する蛍光光線は、サイズ標準物の存在を示さないことが好ましく、例えば、インターカレート化合物は、サイズ標準物でインターカレートされないか、又はサイズ標準物でインターカレートされた時に蛍光の増大を示さない。インターカレート化合物の蛍光は、サンプルポリヌクレオチドでインターカレートされる時ではなくサイズ標準物に関連する場合は、実質的により低いことが好ましい。すなわち、サイズ標準物は、インターカレート染料に影響されないということができる。
【0006】
第2の異なる波長で光を検出する工程は、第1の波長の少なくとも何らかの光が検出器に到達するのを防ぐ工程を含むことができる。例えば、サイズ標準物と検出器の間の光路に沿って回折格子、プリズム、又は光学フィルタを配置し、第2の波長を有する光を検出器に到達させるが、第1の波長を有する光が第2の波長と同じ検出器の部分に到達することを実質的に妨げることができる。すなわち、2次元検出器を用いる場合には、サンプルポリヌクレオチドの存在を示す第1の光は、検出器の第1の部分に到達することができ、サイズ標準物の存在を示す第2の光は、検出器の第2の異なる部分に到達することができる。
【0007】
サンプルポリヌクレオチド及びサイズ標準物は、同じ毛管内のような同じ分離レーンに沿って同時に電気泳動にかけることができる。
ポリヌクレオチド及びサイズ標準物は、緩衝剤の存在下で電気泳動にかけることができる。
サイズ標準物の正味電荷は、緩衝剤中では本質的にゼロとすることができる。サイズ標準物は、非イオン性とすることができる。
本発明によるサイズ標準物の質量対電荷比は、異なる移動度を達成するために変化させることができる。従って、本発明のサイズ標準物は、互いに同様なサイズであるが、異なる移動度をもたらす異なる電荷を有することができる。可変の質量対電荷比を有する例示的なサイズ標準物には、「Aclara Incorporated」から入手可能な「e−Tag」レポータが含まれる。
【0008】
与えられたサイズ標準物の移動度は、同じ質量のサンプルポリヌクレオチドの移動度と異なる場合がある。サンプルポリヌクレオチドのサイズを決定する工程は、各サイズ標準物の移動度と既知の質量の基準ポリヌクレオチドの移動度の間の所定の関係を用いる工程を含むことができる。このような関係は、例えば、(1)質量又は他のその物理パラメータの関数としてサイズ標準物の移動度を示すデータ、及び(2)基準ポリヌクレオチドの移動度をそれらの質量又は他の物理パラメータの関数として示すデータ、を含む較正データを用いて決定することができる。このような較正データに基づき、サンプルポリヌクレオチド及びサイズ標準物の移動度の決定に基づいてサンプルポリヌクレオチドの質量又は他の物理パラメータを決定することができる。
【0009】
各サイズ標準物の移動度は、同じサイズのサンプルポリヌクレオチドの移動度と異なる場合があり、サンプルポリヌクレオチドのサイズを決定する工程は、各サイズ標準物の移動度と同じサイズのポリヌクレオチドの移動度の間の所定の関係を用いる工程を含むことができる。
各サイズ標準物の移動度は、同じ長さのサンプルポリヌクレオチドの移動度と異なる場合があり、サンプルポリヌクレオチドのサイズを決定する工程は、各サイズ標準物の移動度と同じ長さのポリヌクレオチドの移動度の間の所定の関係を用いる工程を含むことができる。
【0010】
本発明の別の態様は、複数のサイズ標準物の移動度と少なくとも1つの基準ポリヌクレオチドの移動度の間の関係を決定する方法に関し、サイズ標準物及び基準ポリヌクレオチドの移動度の間の関係は、サンプルポリヌクレオチドのサイズを電気泳動的に決定する方法に用いることができる。本方法は、複数のサイズ標準物を準備する工程を含み、サイズ標準物の各々の移動度は異なり、サイズ標準物の各々は、好ましくは、少なくとも本質的にはポリヌクレオチドを含まない。複数の基準ポリヌクレオチドが準備される。基準ポリヌクレオチドの各々は、好ましくは、異なるサイズを有する。
【0011】
サイズ標準物及び基準ポリヌクレオチドは電気泳動にかける。サイズ標準物及び基準ポリヌクレオチドの移動座標が決定される。サイズ標準物の移動度と基準ポリヌクレオチドの移動度の間の関係が決定され、これによって、サンプルポリヌクレオチドのサイズは、(1)サイズ標準物の存在下でサンプルポリヌクレオチドを電気泳動にかけてサイズ標準物及びサンプルポリヌクレオチドの移動座標を決定し、(2)少なくともサイズ標準物及びサンプルポリヌクレオチドの移動座標とサイズ標準物及び基準ポリヌクレオチドの移動度間の決定された関係とを用いる、ことによって決定することができる。
本質的にポリヌクレオチドを持たないサイズ標準物は、好ましくは、約10塩基対よりも長いポリヌクレオチド塩基配列が欠如している。好ましいサイズ標準物は、約10質量%未満、例えば、約5質量%未満の核酸を含む。一実施形態では、サイズ標準物は核酸を含まない。
【0012】
本発明の更に別の態様は、電気泳動データを処理して少なくとも1つのサンプルポリヌクレオチドのサイズを決定するための実行可能なソフトウエアコードを含むコンピュータ可読媒体に関し、電気泳動データは、(1)第1の分離レーンに沿う少なくとも1つのサンプルポリヌクレオチドの分離を示すピークと(2)第1の分離レーンに沿う本質的にポリヌクレオチドを含まない複数のサイズ標準物の分離を示すピークとを含み、コンピュータ可読媒体は、第1の分離レーンに沿って電気泳動にかけたサンプルポリヌクレオチドの存在に対応する少なくとも1つのピークの移動座標を決定するコードと、第1の分離レーンに沿って電気泳動にかけた少なくとも2つのサイズ標準物の存在を示すピークの移動座標を決定するコードと、少なくともサイズ標準物の移動度と既知のサイズの基準ポリヌクレオチドの移動度とに基づいてサンプルポリヌクレオチドのサイズを決定するコードとを含む。
【0013】
本発明の付加的な態様は、サンプルポリヌクレオチドのサイズを決定する方法に関する。サンプルポリヌクレオチドは、少なくとも(1)第1の蛍光スペクトルの光の検出がサンプルポリヌクレオチドの存在を示す、第1の蛍光スペクトルを有するインターカレート染料と(2)各々の移動度が異なる複数のサイズ標準物であって、第1の蛍光スペクトルの光の検出がサイズ標準物の存在を本質的に示さないものとの存在下で電気泳動にかける。サイズ標準物の存在は、好ましくは、サンプルポリヌクレオチドの存在を決定するために検出された第1の蛍光スペクトルの光と異なる波長を有する光を検出することによって決定される。
サンプルポリヌクレオチドの移動座標が決定される。各サイズ標準物の移動座標も決定される。サンプルポリヌクレオチドのサイズは、サンプルポリヌクレオチドの移動座標及びサイズ標準物の移動座標を用いて決定される。
【0014】
本発明の更に別の態様は、少なくとも(1)第1の蛍光スペクトルの光の検出がサンプルポリヌクレオチドの存在を示す、第1の蛍光スペクトルを有する蛍光化合物と(2)各々の移動度が異なる複数の非ポリヌクレオチドサイズ標準物との存在下でサンプルポリヌクレオチドを電気泳動にかける工程を含む、サンプルポリヌクレオチドのサイズを決定する方法に関する。
サンプルポリヌクレオチドの移動座標が決定される。複数の非ポリヌクレオチドサイズ標準物の各々の移動座標が決定される。サンプルポリヌクレオチドのサイズは、サンプルポリヌクレオチドの移動座標及び非ポリヌクレオチドサイズ標準物の移動座標を用いて決定される。
【0015】
非ポリヌクレオチドサイズ標準物は、臭化エチジウムによるインターカレーションに抵抗する化合物である。例えば、1つのこのような化合物は、本質的に二本鎖ポリヌクレオチドを含まないものである。好ましい非ポリヌクレオチドサイズ標準物は、少なくとも本質的に核酸又はヌクレオチドを含まない線状ポリマーである。
本発明を図を参照して以下に説明する。
【0016】
(本発明の詳細な説明)
図1の流れ図を参照すると、本発明の一実施形態は、1つ又はそれ以上のサンプルポリヌクレオチドのサイズを決定する方法に関する。DNAの一本鎖及びDNAの二本鎖の少なくとも1つを含むポリヌクレオチドのような少なくとも1つのサンプルポリヌクレオチドに電気泳動レーンに沿って電気泳動を行う。例示的な電気泳動レーンには、毛管の内腔、微細加工マイクロ流体装置の電気泳動レーン、及びスラブゲル内のレーンが含まれる。
【0017】
サンプルポリヌクレオチドの電気泳動は、第1の蛍光スペクトルの光を検出するとサンプルポリヌクレオチドの存在を示す、第1の蛍光スペクトルを有する少なくとも1つの蛍光化合物の存在下で行うことが好ましい。また、複数のサイズ標準物も、好ましくは、同じ電気泳動レーンに沿って電気泳動にかける。サイズ標準物及びサンプルポリヌクレオチドは、同じ電気泳動レーンに沿って同時に電気泳動にかけることが好ましい。各サイズ標準物の移動度は異なることが好ましく、少なくともポリヌクレオチドを含まないものである。サイズ標準物は、少なくとも本質的に核酸を含まないとすることができる。サイズ標準物は、完全にポリヌクレオチド及び/又は核酸を含まないとすることもできる。一実施形態では、所定のサイズ標準物の質量は、10%核酸未満であり、例えば、5%核酸未満又は1%核酸未満である。
【0018】
一実施形態では、サイズ標準物は、陰イオン性とすることができる。
サイズ標準物は、線状ポリマーを含むことができる。サイズ標準物は、ポリデキストランのようなオリゴ糖類及び多糖類の少なくとも1つを含むことができる。オリゴ糖類又は多糖類には、例えば、8−アミノ−1,3,6−ピレントリスルホン酸(ATTS)(Morll他、1998年、「電気泳動」19号、2603〜2611頁)を含む蛍光染料でラベル付けすることができる。
【0019】
他の適切なサイズ標準物には、「Molecular Probes」から入手可能なものなどのスクシンイミジルエステル誘導体を含む蛍光染料でラベル付けすることができるタンパク質複合体が含まれる。
更に適切なサイズ標準物には、電気泳動にかける時に異なる移動度を示す様々なサイズ又は電荷対質量比のビーズが含まれる。ビーズには、その検出を容易にするためにフルオロフォア(fluorophore)でタグ付けすることができる。
【0020】
電気泳動データは、少なくとも1つのサンプルポリヌクレオチド及びサイズ標準物から決定することができる。例示的な電気泳動データには、蛍光強度対時間のデータが含まれる。サンプルポリヌクレオチド及びサイズ標準物の移動時間のような移動座標が決定される。サンプルポリヌクレオチドの移動座標及びサイズ標準物の移動座標を用いて、サンプルポリヌクレオチドのサイズが決定される。サンプルポリヌクレオチドの前又は後にサイズ標準物を電気泳動にかけることができることを理解すべきである。一実施形態では、サンプルポリヌクレオチドを電気泳動にかける前にサイズ標準物の移動座標が決定される。サイズ標準物移動座標データは、例えば、コンピュータ可読媒体を用いて保存される。サンプルポリヌクレオチドの電気泳動データを得ると、サイズ標準物の予め取得した移動座標データを用いてそのサイズが決定される。
【0021】
本発明による電気泳動は、当業技術で公知の電気泳動分離レーンを用いて行うことができる。例示的な分離レーンには、様々なサイズのNCCを異なる移動度で移動させる篩マトリックスが列を成した内腔毛管が含まれる。毛管電気泳動を行うための例示的な器具は、自動平行電気泳動システムを開示している米国特許第6,027,627号に示されている。この特許は、本明細書において引用により組み込まれている。
【0022】
図2を参照すると、本発明による電気泳動システム230には、複数の毛管232が含まれる。毛管232の端部238の第1のアレイは、マイクロタイタートレイ264のウェル262と実質的に同じように間隔を空けて配置することができる。これによって、トレイ264の各ウェル262に存在する材料の量に毛管電気泳動を同時に行うことができる。従って、分子梯子及びサンプルNCC内部標準物混合物をトレイの様々なウェルに入れることができる。毛管端部238のアレイは、ウェル262内の材料の量に接触するように配置される。毛管を通して短時間電流を流すと、ある一定量の材料がアレイの各毛管に吸い込まれる。電流は、高圧(HV)電気の電源272により供給される。毛管端部238のアレイは、緩衝剤溶液と接触するように配置される。毛管232に電界を再び印加すると、予めウェル262から毛管232内に吸い込まれた化合物は、検出区域246に向けて移動する。
【0023】
検出区域246は、毛管端部238のアレイから分離軸線に沿って間隔を空けて配置される。検出システムにより検出区域に化合物が存在するか否かが決定される。例示的な検出システムには、光源252及び検出器260が含まれる。検出区域に存在する化合物に光源252からの光256を照射する。ビーム誘導要素254を用いて、光256を検出区域に向けて導くことができる。照射された化合物又はその化合物に関連するフルオロフォアは、蛍光258を放射することができる。
【0024】
電気泳動データは、電気泳動にかけたサンプル又はサイズ標準物のような化合物の存在を示すピークをほぼ形成するデータの部分集合を含むことができる。ピークの移動時間τPのようなピークの移動座標は、ピークをピーク形状モデルにフィッティングして、フィッティングしたピークのパラメータからピーク移動座標を求めることによって決定することができる。代替的に、観察した移動時間データのピーク極大からピーク移動時間を単純に決定することもできる。
【0025】
コンピュータ290には、実行されると検出器260からの検出器信号を受け取り、本発明によってデータを処理するコードを含むコンピュータ可読媒体が含まれる。コードは、本明細書の他の箇所で説明する。
本発明の電気泳動システムには、1つ又はそれ以上のサンプルポリヌクレオチドのサイズを決定するように構成されたコンピュータ又は他の処理装置を含むことができる。処理装置は、一般的に、ハードウエア及び実行可能なソフトウエアコードを組み合わせることにより実行される。通常の場合、処理装置には、恐らく縮小命令セット(RISC)コンピュータとして実行される少数の特定的なタスクのみを処理するプログラマブルコンピュータが含まれる。このコンピュータは、一般的に、ファームウエア及び実行可能なソフトウエアコードを保存するためのPROM、フラッシュ、又は他の不揮発性メモリのような少なくとも1つのコンピュータ可読媒体を含み、通常は、データ及び付加的なソフトウエアのための作業域を提供するために関連RAM又は他の揮発性メモリも有することになる。コンピュータ可読媒体のコードに応答してコンピュータ又は他の処理装置を実行することができる様々な工程を以下に説明する。
【0026】
コンピュータ又は処理装置は、検出器信号を受け取るように構成することができる。コンピュータは、電気泳動器具の位置又はそれから遠隔に存在することができるので、コンピュータは、例えば、固定配線接続、無線接続、ネットワーク、ディスクのような記憶媒体、又はその組合せを通して検出器信号を受け取ることができる。
コンピュータ可読媒体のコードは、任意的に、検出器信号を電気泳動データに変換するように構成されたコードを含むことができる。検出器は、輝度のような検出器座標及び時間のような移動座標を含む電気泳動データの形で検出器信号を出力することができるので、変換工程は必要でないこともある。
【0027】
いくつかの状況において、生データには、データ平滑化、基線減算、又は重なったピークを識別するための逆畳み込み技術の使用のような初期調整304を行う必要がある。以下に説明するような適切なデータ調整技術は、2000年10月2日出願の「原位置較正を有する電気泳動解析システム」という名称の米国特許出願第09/676,526号に開示されており、この出願は、本発明を理解するのに必要な範囲で本明細書に組み込まれている。コンピュータ可読媒体には、このような調整を行うためのコードが含まれる。
【0028】
平滑化は、例えば、「Savitzky−Golay」畳み込みフィルタ(convoluting filter)を用いてSN比を改善することにより達成することができる。データのSN比及びデータのピークの幅に基づいて、本発明のユーザは、幅及び次数のようなフィルタの最適特性を決定することができる。
基線減算を行って基線変動を消すことができる。一般的に、極小値は、データの連続的な局所的区域、例えば300データ点毎に識別される。隣接する区域の2つ又はそれ以上の極小値は、例えば、極小値に対する直線又は多項式フィッティングによって連結される。次に、極小値を連結する線に沿う値を介在生データから引き算する。基線減算及び平滑化後の新しい値は、更なる処理のために保存される。データ平滑化及び基線減算の順序は逆にすることができる。
【0029】
分離データ内の重なったピークを識別し、ピークフィッティング技術を用いてそれを分解することができる。ほとんどの電気泳動分離では、以前に検出されたピークは、後に検出されるゆっくりと移動するピークよりも幅が狭い。しかし、データの所定の局所区域内では、単一フラグメントが存在することによるピークは同様の幅である。更に、隣接するピークが正確に重なることはめったにない。むしろ、重なったピークは互いにほぼ相殺される。従って、複数のフラグメントが存在することによるピークは、単一フラグメントのピークよりも幅が広い傾向がある。重なったピークを包含するデータの領域が識別された状態で、データのモデルを観察データにフィッティングすることにより、その下にあるピークを分解することができる。一般的に、ピークフィッティングモデルには、下にある各ピークの振幅、位置、及び幅を表すパラメータが含まれる。
【0030】
コードはまた、(1)第1の分離レーンに沿って電気泳動にかけたサンプルポリヌクレオチドの存在に対応する少なくとも1つのピークの移動座標、及び(2)第1の分離レーンに沿って電気泳動にかけた少なくとも2つのサイズ標準物の存在をそれぞれ示す少なくとも2つのピークの移動座標、を決定するように構成することができる。
コードは、少なくともサイズ標準物の移動度と既知のサイズを有する複数の基準ポリヌクレオチドの移動度との間の関係に基づいて、サンプルポリヌクレオチドのサイズを決定するように構成することができる。
【0031】
上述の発明は、いくつかの好ましい実施形態を参照して説明したが、本発明の範囲はこれらに限定されないことに注意すべきである。すなわち、当業者は、これらの好ましい実施形態の変形を見出すことができるが、それにも関わらず、それらは、その範囲が特許請求の範囲によって規定された本発明の精神に該当するものである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の方法を示す流れ図である。
【図2】本発明による電気泳動システムを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルポリヌクレオチドのサイズを決定する方法であって、
サンプルポリヌクレオチドを、少なくとも
第1の蛍光スペクトルの光の検出がサンプルポリヌクレオチドの存在を示す、第1の蛍光スペクトルを有する蛍光化合物、及び
各々が異なる移動度を有し、各々が本質的にポリヌクレオチドを含まない、複数のサイズ標準物、
の存在下で電気泳動にかける工程;
前記サンプルポリヌクレオチドの移動座標を決定する工程;
前記複数のサイズ標準物の各々の移動座標を決定する工程;及び
前記サンプルポリヌクレオチドの前記移動座標及び前記サイズ標準物の前記移動座標を用いて、該サンプルポリヌクレオチドのサイズを決定する工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記サイズ標準物の少なくとも2つが、オリゴ糖、多糖、及びタンパク質複合体のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記サイズ標準物の少なくとも1つが、ポリデキストランを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記移動座標が、移動時間である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記移動座標が、動電的移動度である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記複数のサイズ標準物の各々の移動座標を決定する工程が、前記サンプルポリヌクレオチドの存在を決定するために検出された光の波長とは異なる光の波長を有する光を検出する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
複数の第1のサイズ標準物の移動度と少なくとも1つの基準ポリヌクレオチドの移動度との間の関係を決定する方法であって、前記第1のサイズ標準物及び前記少なくとも1つの基準ポリヌクレオチドの前記移動度間の前記関係が、サンプルポリヌクレオチドのサイズを電気泳動的に決定する方法に用いることができるものであり、
各々が異なる移動度を有し、各々が本質的にポリヌクレオチドを含まない複数の第1のサイズ標準物を準備する工程;
各々が既知の異なるサイズを有する複数の基準ポリヌクレオチドを準備する工程;
前記第1のサイズ標準物及び前記基準ポリヌクレオチドを電気泳動にかける工程;
前記第1のサイズ標準物の移動座標を決定する工程;
前記基準ポリヌクレオチドの移動座標を決定する工程;及び
前記第1のサイズ標準物と同じ移動度を有する第2のサイズ標準物の存在下で電気泳動にかけたサンプルポリヌクレオチドのサイズを決定するのに使用することができる、前記第1のサイズ標準物の移動度と前記基準ポリヌクレオチドの移動度の間の関係を決定する工程;
を含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
前記サイズ標準物の少なくとも2つが、オリゴ糖、多糖、及びタンパク質複合体のうちの少なくとも1つを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記サイズ標準物の少なくとも1つが、ポリデキストランを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記移動座標が、移動時間である、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記移動座標が、動電的移動度である、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記複数のサイズ標準物の各々の移動座標を決定する工程が、前記サンプルポリヌクレオチドの存在を決定するために検出された光の波長とは異なる光の波長を有する光を検出する工程を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
サンプルポリヌクレオチドのサイズを決定する方法であって、
サンプルポリヌクレオチドを電気泳動にかける工程;
各々が異なる移動度を有し、各々が本質的にポリヌクレオチドを含まない複数のサイズ標準物を電気泳動にかける工程;
前記サンプルポリヌクレオチドの移動座標を決定する工程;
前記複数のサイズ標準物の各々の移動座標を決定する工程;及び
前記サンプルポリヌクレオチドの前記移動座標及び前記サイズ標準物の前記移動座標を用いて、前記サンプルポリヌクレオチドのサイズを決定する工程;
を含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
前記サイズ標準物の少なくとも2つが、オリゴ糖、多糖、及びタンパク質複合体のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記サイズ標準物の少なくとも1つが、ポリデキストランを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項16】
前記移動座標が、移動時間である、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記移動座標が、動電的移動度である、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記(a)複数のサイズ標準物を電気泳動にかける工程が、前記サンプルポリヌクレオチドを電気泳動にかける工程よりも前に完了する、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
実行可能なソフトウエアコードを含むコンピュータ可読媒体であって、
該コードが電気泳動データを処理して少なくとも1つのサンプルポリヌクレオチドのサイズを決定するためのものであり、前記電気泳動データが、
(1)第1の分離レーンに沿う少なくとも1つのサンプルポリヌクレオチドの分離を示すピークと、
(2)該第1の分離レーンに沿う本質的にポリヌクレオチドを含まない複数のサイズ標準物の分離を示すピークと、
を含み、前記コンピュータ可読媒体が
第1の分離レーンに沿って電気泳動にかけたサンプルポリヌクレオチドの存在に対応する少なくとも1つのピークの移動座標を決定するためのコードと、
前記第1の分離レーンに沿って電気泳動にかけた少なくとも2つのサイズ標準物の存在をそれぞれ示す少なくとも2つのピークの移動座標を決定するためのコードと、
少なくとも前記サイズ標準物の移動度と既知のサイズを有する複数の基準ポリヌクレオチドの移動度との間の関係に基づいて、前記サンプルポリヌクレオチドのサイズを決定するためのコードと、
を含むことを特徴とする媒体。
【請求項20】
サンプルポリヌクレオチドのサイズを決定する方法であって、
少なくとも(1)第1の蛍光スペクトルの光の検出がサンプルポリヌクレオチドの存在を示す、第1の蛍光スペクトルを有するインターカレート染料と(2)各々が異なる移動度を有する複数のサイズ標準物であって、該第1の蛍光スペクトルの光の検出が該サイズ標準物の存在を本質的に示さないものとの存在下でサンプルポリヌクレオチドを電気泳動にかける工程;
前記サンプルポリヌクレオチドの存在を決定するのに用いられる前記第1の蛍光スペクトルの光と異なる波長を有する光を検出することにより、前記サイズ標準物の存在を決定する工程;
前記サンプルポリヌクレオチドの移動座標を決定する工程;
前記サイズ標準物の各々の移動座標を決定する工程;及び
前記サンプルポリヌクレオチドの前記移動座標及び前記サイズ標準物の前記移動座標を用いて、該サンプルポリヌクレオチドのサイズを決定する工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項21】
サンプルポリヌクレオチドのサイズを決定する方法であって、
サンプルポリヌクレオチドを、少なくとも
第1の蛍光スペクトルの光の検出がサンプルポリヌクレオチドの存在を示す、第1の蛍光スペクトルを有する蛍光化合物、及び
各々が異なる移動度を有する複数の非ポリヌクレオチドサイズ標準物、
の存在下で電気泳動にかける工程、
前記サンプルポリヌクレオチドの移動座標を決定する工程、
前記複数の非ポリヌクレオチドサイズ標準物の各々の移動座標を決定する工程、
前記サンプルポリヌクレオチドの前記移動座標及び前記非ポリヌクレオチドサイズ標準物の前記移動座標を用いて、該サンプルポリヌクレオチドのサイズを決定する工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項22】
サンプルポリヌクレオチドのサイズを決定する方法であって、
少なくとも(1)第1の蛍光スペクトルの光の検出がサンプルポリヌクレオチドの存在を示す、第1の蛍光スペクトルを有する蛍光化合物と(2)各々が異なる移動度を有する複数のサイズ標準物であって、該第1の蛍光スペクトルの光の検出が該サイズ標準物の存在を本質的に示さないものとの存在下でサンプルポリヌクレオチドを電気泳動にかける工程;
前記サンプルポリヌクレオチドの存在を決定するのに用いられる前記第1の蛍光スペクトルの光と異なる波長を有する光を検出することにより、前記サイズ標準物の存在を決定する工程;
前記サンプルポリヌクレオチドの移動座標を決定する工程;
前記サイズ標準物の各々の移動座標を決定する工程;及び
前記サンプルポリヌクレオチドの前記移動座標及び前記サイズ標準物の前記移動座標を用いて、該サンプルポリヌクレオチドのサイズを決定する工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項23】
サンプルポリヌクレオチドのサイズを決定する方法であって、
少なくとも(1)第1の検出窓を有する1つの化合物であって、該第1の検出窓内の光の検出がサンプルポリヌクレオチドの存在を示すものと(2)各々が異なる移動度を有する複数のサイズ標準物であって、該検出窓内の光の検出が本質的に該サイズ標準物の存在を示さないものとの存在下でサンプルポリヌクレオチドを電気泳動にかける工程;
前記サンプルポリヌクレオチドの存在を決定するのに用いられる前記第1の検出窓の光と異なる波長を有する光を検出することにより、前記サイズ標準物の存在を決定する工程、
前記サンプルポリヌクレオチドの移動座標を決定する工程;
前記サイズ標準物の各々の移動座標を決定する工程;及び
前記サンプルポリヌクレオチドの前記移動座標及び前記サイズ標準物の前記移動座標を用いて、該サンプルポリヌクレオチドのサイズを決定する工程;
を含むことを特徴とする方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2006−507485(P2006−507485A)
【公表日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−543653(P2004−543653)
【出願日】平成15年10月10日(2003.10.10)
【国際出願番号】PCT/US2003/032146
【国際公開番号】WO2004/034027
【国際公開日】平成16年4月22日(2004.4.22)
【出願人】(505133674)スペクトラメディクス リミテッド ライアビリティ カンパニー (1)
【Fターム(参考)】