説明

面光源装置用導光体および該導光板成形型の製造方法

【課題】 光源から離れた位置において光出射率を増大させる必要が生じ、ブラスト粒子の吹付け圧力を増大させても、レンズ頂部の形状変化を起こさず、導光体からの出射光の視野角の広がりと輝度低下を抑制し、高品位の面光源装置用導光体成形型を製造する。
【解決方法】 互いに平行に配列された複数の第1の凹溝に相当する形状を型部材を形成する工程と、電鋳法により前記複数の第1の凹溝を転写させて複数の第1の凸構造を有する第1の電鋳型を形成する工程と、第1の電鋳型にブラスト処理を施し、表面に複数の微小な凹シボが形成された凸構造を形成する工程と、電鋳法により複数の第2の凸構造を転写させて、複数の第2の凹溝を有する第2の電鋳型を形成する工程と、第2の電鋳型の複数の第2の凹溝を転写し、導光体を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッジライト方式面光源装置用の導光体成形型の製造方法に関するものであり、特に、小型化及び消費電力低減を企図した面光源装置に関するものである。本発明の導光体を用いて構成される面光源装置は、例えば、携帯用ノートパソコン等のモニターや液晶テレビ等の表示部として使用される液晶表示装置のバックライトに、好適である。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、基本的にバックライトと液晶表示素子とから構成されている。バックライトとしては、液晶表示装置のコンパクト化の観点からエッジライト方式のものが多用されている。エッジライト方式のバックライトにおいては、矩形板状の導光体の少なくとも1つの端面を光入射端面として用いて、該光入射端面に沿って直管型蛍光ランプなどの線状または棒状の一次光源を配置し、該一次光源から発せられた光を導光体の光入射端面から導光体内部へと導入し、該導光体の2つの主面のうちの一方である光出射面から出射させるようにしている。
【0003】
このようなバックライトでは、線状または棒状の一次光源の両端部に近い導光体コーナー部や、導光体の光入射端面に隣接する側端面の近くの領域に十分な光量が到達せず、これらの部分や領域の輝度が低下しやすいという問題がある。
【0004】
また、携帯電話機や携帯用ゲーム機などの携帯用電子機器あるいは各種電気機器または電子機器のインジケーターなどの比較的小さな画面寸法の液晶表示装置については、とくに小型化と共に消費電力の低減が要望されている。そこで、消費電力を減らす為に、バックライトの一次光源として、点状光源である発光ダイオード(LED)が使用されている。LEDを一次光源として用いたバックライトとしては、例えば特開平7−270624号公報(特許文献1)に記載されているように、線状の一次光源を用いるものと同様な機能を発揮させる為に、複数のLEDを導光体の光入射端面に沿って一次元に配列している。このように複数のLEDの一次元配列による一次光源を用いることにより、所要の光量と画面全体にわたる輝度分布の均一性とを得ることが出来る。
【0005】
ところで、小型の液晶表示装置の場合には、更に一層の消費電力の低減が要求されており、これにこたえるためには使用するLEDの数を少なくすることが必要である。しかしながら、LEDの数を少なくすると発光点間の距離が長くなるので、隣接発光点の間の領域に近接する導光体の領域が拡大し、この導光体領域から所要の方向へと出射する光の強度が低下する。これは、面光源装置発光面における観察方向の輝度分布の不均一化(すなわち、輝度均斉度の不均一)をもたらす。
【0006】
特開2008−218321(特許文献2)には、点状一次光源を使用した、エッジライト方式の面光源装置における輝度均斉度の不均一を解消する為に、導光体の光出射面及びその反対側の裏面のうち一方に形成された、隣接するレンズ列の頂点部に粗面部を形成するということが開示されている。
【0007】
特開2002−169033(特許文献3)には、指向性導光体の入光側縁部の相対的な輝度低下を解消する為に、金属材料にブラスト処理にて微小球面状シボ及び微小角状シボを形成する工程と、上記金属材料の上記シボ面に対して電鋳法にてダイレクト転写して成形用入子を作製する工程と、その成形用入子のシボ面を用いて射出成形することにより、無数のシボが出射面側に設けられた導光体を製造する工程からなる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−270624号公報
【特許文献2】特開2008−218321号公報
【特許文献3】特開2002−169033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のような課題を解決した導光体を製造する方法としては、特許文献2に開示されているようにレンズ列にブラスト処理を行うことが有効であるが、特にブラスト粒子の吹付け圧力を増大させた場合には、レンズの形状崩壊が大きくなる傾向にあるため、出射光の視野角が広がり、輝度の低下を防ぐことが困難であった。また、プリズム列形成面の転写を機械切削加工等で行う場合には、型部材の材料は、塑性変形領域の狭い材料が適しているが、同じ材質の型部材でブラスト処理を施すと、特異的に脆性破壊を起こしやすく、傷欠陥となってしまうことがあった。さらには、型部材を形状転写面のブラスト処理により変化させ、そのまま成形するため、再度同様の型部材を製造する際に、型部材の再現性に乏しかった。
【0010】
特許文献3に開示されている方法では、ブラスト処理後、電鋳法にて転写させているため、再現性に優れている。しかしながら特にLED等の点状光源を一次光源に用いた面光源装置では、入射端面近傍の暗部等を解消するには、十分ではない。さらに、金型にブラスト処理を施すと、レンズ列の頂部に相当する部位が比較的粗面化されやすいが、レンズ列の底部近傍を集中的に粗面化することは困難であった。
【0011】
本発明の目的は、導光体からの出射光の輝度低下を抑えたまま、高品位の面光源装置用導光体成形型の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、上記目的のいずれかを解決するものとして、一次光源から発せられる光を光入射端面から入射して導光させ、前記光入射端面に略垂直な光出射面から出射させ、前記光出射面および前記光出射面と対向する面の少なくとも一方に、前記一次光源から前記導光体に入射した光の指向性の方向に略沿って延び且つ互いに平行に配列されたレンズ列を有する略矩形の導光体を製造する方法であって、前記一次光源から前記導光体に入射した光の指向性の方向に略沿って延び且つ互いに平行に配列された複数の第1の凹溝に相当する形状を形成する工程と、電鋳法により前記複数の第1の凹溝を転写させて複数の第1の凸構造を形成する工程と、前記複数の第1の凸構造にブラスト処理を施し、表面に複数の微小な凹シボが形成された複数の第2の凸構造を形成する工程と、電鋳法により、前記複数の第2の凸構造を転写させて、複数の第2の凹溝を形成する工程と、前記複数の第2の凹溝を転写し、前記導光体の前記レンズ列を形成することを特徴とする、導光体の製造方法が提供される。
【0013】
また、本発明によれば、一次光源から発せられる光を光入射端面から入射して導光させ、前記光入射端面に略垂直な光出射面から出射させ、前記光出射面および前記光出射面と対向する面の少なくとも一方に、前記一次光源から前記導光体に入射した光の指向性の方向に略沿って延び且つ互いに平行に配列されたレンズ列を有する略矩形の導光体の製造に用いる成形型の製造方法であって、型部材に、前記一次光源から前記導光体に入射した光の指向性の方向に略沿って延び且つ互いに平行に配列された複数の第1の凹溝に相当する形状を形成する工程と、電鋳法により前記複数の第1の凹溝を転写させて複数の第1の凸構造を形成する工程と、前記複数の第1の凸構造にブラスト処理を施し、表面に複数の微小な凹シボが形成された複数の第2の凸構造を形成する工程と、電鋳法により、前記複数の第2の凸構造を転写させて、前記レンズ列に相当する形状の複数の第2の凹溝を形成する工程と、を有する成形型の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
以上のような本発明によれば、導光体の薄型平板化が進む影響などにより、光源から離れた位置において光出射率を増大させる必要が生じ、ブラスト粒子の吹付け圧力を増大させても、レンズ底部のみを選択的に荒らすことが可能な為、レンズ頂部の形状変化を起こさず、導光体からの出射光の視野角の広がりと輝度低下を抑えたまま、高品位の面光源装置用導光体成形型を製造することができる。
【0015】
また、本発明では電鋳法により高靭性のメッキを形成することによってスタンパー34’を作製し、スタンパー34’にブラスト処理を実施する。そのため、ブラスト処理に適した、脆性破壊を起こしにくい型部材を選択できるため、型部材作製歩留まりが向上する。よって、再現性に優れ、型部材作製歩留まりも向上するために、安価且つ安定に面光源装置用導光体成形型を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に基づく面光源装置を示す分解斜視図である。
【図2】本発明に基づく光偏向素子による光偏向の様子を示す図である。
【図3】本発明に基づく面光源装置を示す斜視図である。
【図4】本発明に基づく成形型の作製工程を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
図1は本発明による面光源装置の一実施形態を示す分解斜視図である。図1に示されているように、本実施形態の面光源装置は、Y方向に延びた線状の一次光源2と、該一次光源から発せられる光を導光する板状の導光体4と、光偏向素子6と、光反射素子8とを備えている。また、一次光源2はリフレクタ(反射器)10を伴っている。
【0019】
導光体4は、XY面と平行に配置され、全体として矩形板状をなしている。導光体4は、4つの側端面を有しており、そのうちのYZ面と略平行な1対の側端面の一方が光入射端面41とされ、該光入射端面と対向するように一次光源2が隣接配置されている。導光体4のYZ面と略平行な1対の側端面のうちの他方の側端面42をも光入射面としてもよい。その場合には、光入射端面41の場合と同様に、側端面42に対向するように同様な一次光源及びリフレクタが配置される。導光体4の光入射端面に略直交する2つの主面は、いずれもZ方向と略直交するように配置されており、一方の主面である上面が光出射面43とされている。該光出射面43は、光出射制御機能構造としての微細凹凸でも、光出射制御機能を有しない平滑面等でもよい。詳細については後述するが、微細凹凸からなる面(マット面等)でも、平滑面等でも、光出射面43からは、光出射面43の法線方向(Z方向)及び光入射端面41と直交するX方向の双方を含むXZ面内の分布において指向性のある光を出射させる。この出射光分布のピークの方向が光出射面となす角度は例えば10°〜40°であり、出射光分布の半値全幅は例えば10°〜40°である。
【0020】
導光体4の光出射面43と反対側の主面(裏面)44には、光出射面43からの出射光の一次光源2の延在方向と平行な面(例えばYZ面)内での指向性を制御するために、光入射端面41に対して略垂直の方向(X方向)に互いに平行に延びる多数のレンズ列44aが形成されている。該レンズ列44aとしては、プリズム列、レンチキュラーレンズ列、曲面のみから成るレンズ列、V字状溝等を用いることができるが、YZ断面の形状が略二等辺三角形断面形状の底部に曲率半径Rを設けたプリズム列を用いるのが好ましい。このプリズム列の曲率部を除いた直線部で挟まれた頂角は、70°〜80°または100°〜150°の範囲とすることが好ましい。これは、プリズム頂角をこの範囲とすることで、光出射面43からの出射光を十分に集光させることができ、面光源装置としての輝度の一層の向上を図ることができ、また底部に曲率半径Rを有することで、特に発光面の光入射端面近傍の品位を向上させることができる。即ち、プリズム頂角をこの範囲とすることで、出射光分布におけるピーク光を含みXZ面に垂直な面において出射光分布の半値全幅が30°〜65°である集光された出射光を出射させることができ、面光源装置としての輝度を向上させることができる。また、レンズ列44aの配列ピッチP1は、例えば10μm〜100μm、好ましくは10μm〜80μm、より好ましくは20μm〜70μmである。なお、導光体出射光のYZ面内での指向性を高めることがそれほど要求されない場合には、導光体裏面44のレンズ列44aを直線部が無く、曲率半径Rのみから成るレンズ列にしてもよい。また、上記のレンズ列は光出射面43でも裏面44でも、どちらに形成しても良い。上記のレンズ列を光出射面43に形成する場合、裏面44は粗面とされてもよく、平滑面とされてもよい。また、裏面44にもレンズ列などの構造が形成されても構わない。
【0021】
なお、導光体4の光出射機能構造としては、上記の様な光出射面43に形成した微細凹凸面からなるもの、もしくは反対側の主面(裏面)44に微細凹凸面を形成したもの、もしくはそれらを併用したもの、さらにはいずれかのものと併用して、導光体4の内部に光拡散性微粒子を混入分散することで形成したものを用いることができる。
【0022】
導光体4としては、図1に示される様な全体として一様な厚さ(光出射面43の微細凹凸面の微細形状及び裏面44のプリズム列形状を無視した場合の厚さ)の板状のものの他に、X方向に関して光入射端面41から側端面42の方へと次第に厚さが小さくなる様なくさび状のものや、或は、側端面42に対向して更に一次光源を配置する場合には、X方向に関して光入射端面41から導光体中央部に向かって及び側端面42から導光体中央部に向かっていずれも次第に厚さが小さくなる様な船型状のもの等の、種々の断面形状のものを使用することができる。
【0023】
導光体4の光出射面43または裏面44に光出射機能構造として微細凹凸面を形成する場合、該微細凹凸面の平均傾斜角θaは、ISO4287/1−1984に従って、触針式表面粗さ計を用いて粗面形状を測定し、測定方向の座標をxとして、得られた傾斜関数f(x)から次の(1)式および(2)式を用いて求めることができる。ここで、Lは測定長さであり、Δaは乎均傾斜角θaの正接である。
【0024】
Δa=(1/L)∫|(d/dx)f(x)|dx ・・・ (1)
θa=tan−1(Δa) ・・・ (2)
導光体の厚みは、例えば0.3〜10mmである。
【0025】
導光体4は、光透過率の高い合成樹脂から構成することができる。このような合成樹脂としては、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、環状ポリオレフィン樹脂が例示できる。特に、メタクリル樹脂が、光透過率の高さ、耐熱性、力学的特性、成形加工性に優れており、最適である。このようなメタクリル樹脂としては、メタクリル酸メチルを主成分とする樹脂であり、メタクリル酸メチルが80重量%以上であるものが好ましい。導光体4及び光偏光素子6の粗面の表面構造やプリズム列等の表面構造を形成するに際しては、透明合成樹脂板を所望の表面構造を有する成形型を用いて熱プレスすることで形成してもよいし、スクリーン印刷、押出成形や射出成形等によって成形と同時に形状付与してもよい。また、熱あるいは光硬化性樹脂等を用いて構造面を形成することもできる。更に、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリメタクリルイミド系樹脂等からなる透明フィルムあるいはシート等の透明基材上に、活性エネルギー線硬化型樹脂からなる粗面構造またレンズ列配列構造を表面に形成してもよいし、このようなシートを接着、融着等の方法によって別個の透明基材上に接合一体化させてもよい。活性エネルギー線硬化型樹脂としては、多官能(メタ)アクリル化合物、ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル類、アリル化合物、(メタ)アクリル酸の金属塩等を使用することができる。
【0026】
以上のような導光体4は、光出射面43もしくは裏面44にプリズム列341及び微細凹凸部342を有するプリズム列を有するプリズム列形成面を転写形成する形状転写面を有する成形用型部材を用いて、透光性樹脂(組成物)を成形することで、製造することが出来る。この型部材の作製に関して、図4を参照しながら説明する。
【0027】
先ず、図4(a)に示されるようにして、上記プリズム列の底部341とプリズム面341a,341bからなる形状転写面を持つ型部材34を作製する。型部材34の製作については、バイト切削、レーザ加工等従来公知の加工技術を用いることができる。このとき、プリズム列の底部341の方が、341a及び341bが接するレンズ頂部よりも曲率が大きいことが望ましい。
【0028】
次いで、上記型部材の形状転写面に向けて電鋳法により金属層を形成することによってスタンパー34’を形成する。なお、電鋳法を行うに当たっては従来公知の手法を用いることができる。
【0029】
さらに、上記スタンパー34’表面の凸レンズ列にブラスト処理により、無数の微小な凹シボを形成した粗面化部342’を形成させる。このようなブラスト処理は、ブラスト粒子がスタンパー34’のレンズ底部341’に吹き付けられ、341a’,341b’が接するレンズ頂部にはほとんど吹き付けられない。具体的には、たとえば、スタンパー34’の凹部の奥には入り込まないような大きさ(粒径)のブラスト粒子を用いて、ブラスト処理を実施する。ブラスト粒子の吹き付けを図4(b)に示される断面に関して上方から行う場合には、型部材のプリズム列のピッチPと曲率半径Rに応じて、適切な粒径範囲内のブラスト粒子BPを使用すればよい。例えば、曲率半径Rが30μmの場合には、平均粒径がピッチPの0.3倍以上のものを使用することが好ましい。ブラスト粒子BPの粒径が大きすぎると粗面化度が小さくなるので、粒径は最大でもピッチPの5倍程度であるのが好ましい。ブラスト粒子BPの粒径は、より好ましくはピッチPの0.6倍〜3倍であり、更に好ましくはピッチPの0.8倍〜2.0倍である。特に、図4(b)のように、各プリズム列の二等辺三角形断面形状の底部にR部を設けた構造とした場合には、適切な粒径範囲内のブラスと粒子を用いれば、R部のみを粗面化することが可能である。ブラスト圧力は、使用するブラスト粒子の材質及び粒径や、スタンパー34’の材質などに応じて適宜設定することができるが、たとえばサクション式のブラスト機の場合、0.01〜1MPaを挙げることができる。以上のようなブラスト処理を適宜の時間行うことで、図4(c)に示されるような、プリズム列に対応する形状の341a’,341b’と微小な凹シボを形成した粗面形状の342’とからなる形状転写面を持つスタンパー34a’(第1の電鋳型)が得られる。
【0030】
プリズム列341の341a’,341b’が接するレンズ頂部にはほとんどブラスト粒子が吹き付けられず、ブラスト粒子の吐出圧力を増大させたとしても、ブラストの影響を受けにくく、レンズ頂部がほとんどつぶれない。よって、レンズ底部の方がレンズ頂部に比べて曲率が大きい場合に特に有効である。
【0031】
以上のように作製したスタンパー34a’の形状転写面に向けて再度電鋳法により金属層を形成することによってスタンパー34a”(第2の電鋳型、または成形型)を作製する。それにより、複数の凹レンズ列と無数の微小な凸シボを形成した面光源装置用導光体成形型を得ることができる。
【0032】
以上のようにして作製される型部材と、平面状の形状転写面を持つ型部材とを用いて、合成樹脂成形を行うことで、導光体4を得ることができる。この成形には、熱プレス、押出成形または射出成形等により行うことができる。
【0033】
図1に戻って、光偏向素子6は導光体4の光出射面43上に配置されている。光偏向素子6の2つの主面は、それぞれ全体としてXY面と略平行に位置する。2つの主面のうちの一方(導光体の光出射面43側に位置する主面)は入光面61とされており、他方が出光面62とされている。出光面62は、導光体4の光出射面43と平行な平坦面または粗面とされている。入光面61は、多数のプリズム列61aが互いに平行に配列されたプリズム列形成面とされている。
【0034】
入光面61のプリズム列61aは、一次光源2の方向と略平行のY方向に延び、互いに平行に形成されている。プリズム列61aの配列ピッチP2は、10μm〜100μmの範囲とすることが好ましく、より好ましくは10μm〜80μm、さらに好ましくは20μm〜70μmの範囲である。また、プリズム列61aの頂角は、30°〜80°の範囲とすることが好ましく、より好ましくは40°〜70°の範囲である。
【0035】
光偏向素子6の厚さは、例えば30〜350μmである。
【0036】
図2に、光偏向素子6による光偏向の様子を示す。この図は、XZ面内での導光体4からのピーク出射光(出射光分布のピークに対応する光)の進行方向を示すものである。導光体4の光出射面43から斜めに出射される光は、プリズム列61aの第1面へ入射し第2面により全反射されて、導光体4からの出射光の指向性をほぼ維持したまま出光面62の略法線の方向に出射する。これにより、XZ面内では、出光面62の法線の方向において高い輝度を得ることができる。
【0037】
光偏向素子6は、導光体4からの出射光を目的の方向に偏向(変角)させる機能を果たすものであり、上記の様な指向性の高い光を出射する導光体4と組み合わせる場合には、少なくとも一方の面に多数のレンズ単位が並列して形成されたレンズ面を有するレンズシートを使用することが好ましい。レンズシートに形成されるレンズ形状は、目的に応じて種々のものが使用され、例えば、プリズム形状、レンチキュラーレンズ形状、フライアイレンズ形状、波型形状等が挙げられる。中でも断面略三角形状の多数のプリズム列が並列に配置されたプリズムシートが特に好ましい。
【0038】
光反射素子8としては、例えば表面に金属蒸着反射層を有するプラスチックシートを用いることができる。本発明においては、光反射素子8として反射シートに代えて、導光体4の裏面44に金属蒸着等により形成された光反射層等を用いることも可能である。尚、導光体4の光入射端面として利用される端面以外の端面にも反射部材を付することが好ましい。
【0039】
一次光源2には、一次光源2から発せられる光を少ないロスで導光体4の光入射端面41へと導くためのリフレクタ10が付されている。該リフレクタ10としては、例えば、表面に金属蒸着反射層を有するプラスチックフィルムを用いることができる。図示されているように、リフレクタ10は、光反射素子8の端縁部外面から一次光源2の外面を経て光偏光素子6の出光面端縁部へと巻き付けられている。別法として、光源リフレクタ10は、光偏光素子6を避けて、光反射素子8の端縁部外面から一次光源2の外面を経て導光体4の光出射面端縁部へと巻き付けることも可能である。
【0040】
図3は本発明による面光源装置の他の一実施形態を示す斜視図である。この図において、上記図1及び図2におけると同様の機能を有する部材または部分等には同一の符号が付されている。
【0041】
本実施形態では、一次光源2として、略点状の光源であるLEDを複数個使用している。図3において、符号Fは、面光源装置と組み合わせて使用される液晶表示素子の有効表示領域に対応する当該面光源装置の発光面の有効発光領域を示す。本実施形態では、リフレクタ10は、有効発光領域F以外の領域の光偏向素子6、導光体4及び光反射素子8の積層体の端面部並びにLED2を覆うように配置されている。これにより、積層体の端面部から出射する光及びLED2のケースから漏れ出す光をXY面内において良好に拡散させて反射させ導光体4へと再入射させることができ、導光体光出射面43の広い領域へと所要の強度の光を導くことができ、輝度の均斉度の向上に寄与することができる。
【0042】
液晶表示装置は、図1における上方から液晶表示素子を通して観察者により観察される。十分にコリメートされた狭い分布の光を面光源装置から液晶表示素子に入射させることができるため、液晶表示素子での階調反転等がなく明るさ、色相の均一性の良好な画像表示が得られるとともに、所望の方向に集中した光照射が得られ、この方向の照明に対する一次光源の発光光量の利用効率を高めることができる。
【0043】
なお、光偏向素子6の出光面62上に、光拡散素子を隣接配置することができる。この光拡散素子により、画像表示の品位低下の原因となるぎらつきや輝度斑などを抑止し、画像表示の品質を向上させることができる。光拡散素子は、光拡散材を混入したシート状のものとすることができ、光偏向素子6の出光面62側にて該光偏向素子6に接合などにより一体化させてもよいし、光偏向素子6上に載置させてもよい。光偏向素子6上に載置する場合には、光偏向素子6とのスティッキング防止のために、光拡散素子の光偏向素子6と対向する側の面(光入射側の面)に凹凸構造を付与することが好ましい。
【実施例】
【0044】
以下、実施例及び比較例によって本発明を説明する。
【0045】
尚、実施例及び比較例において、平均傾斜角θa及び十点平均粗さRzの測定は次のようにして行った。即ち、触針式表面粗さ計(東京精密社製サーフコム1500DX型)にて、触針として1μmR、55°円錐ダイヤモンド針(010−2528)を用いて、駆動速度0.15mm/秒で、表面粗さを測定した。測定長は5mmとした。
【0046】
抽出曲線の平均線の傾斜の補正を行った後、十点平均粗さRzの値を得、更に前記(1)式及び(2)式に従ってその曲線を微分した曲線の中心線平均値を求めることで、平均傾斜角θaの値を得た。
【0047】
[実施例1]
227.24mm×137.35mm、厚み10mmの射出成形用鋼材の表層に無電解ニッケルメッキ処理を施し、その表面を鏡面仕上げした。その鏡面仕上げした表層に、頂角80°、曲率半径Rが30μmの二等辺三角形断面を有するピッチ90μmのプリズム列を互いに平行に配列したプリズムパターンを切削加工により形成した。次に、その切削加工面を前処理した後、ニッケルによる電鋳法を行い、表面上にニッケルを0.3mmの厚みまで堆積させ、剥離することによってスタンパー34’を得た。このスタンパー34’にガラスビーズ(ポッターズパロティーニ社製J400N)を用いて、ブラスト処理を行った。このブラスト処理では、表面から吹付けノズルまでの距離を320mmとして、ノズルの移動速度を6.0m/min、ノズル走査ピッチを1.5mmとした。また、吹付け方向は板状体の法線方向であった。吹付け圧力は、光入射端面側が0.098MPaで、その後漸増させ、光入射端面からの距離134mmでは0.228MPaとし、光入射端面側がより低い程度に粗面化され、それ以外は緩やかに粗面化の程度が大きくなるようにした。最後に、粗面化されたプリズムパターンの形状転写面を前処理した後、ニッケルによる電鋳法を行い、表面上にニッケルを0.8mmの厚みまで堆積させ、剥離することによってスタンパー34a”を得た。これにより、複数の凹レンズ列と無数の微小な凸シボを有する第一の金型を得た。
【0048】
一方、鏡面仕上げをした有効面積280mm×190mm、厚み3mmのステンレススチール板を第二の金型とした。
【0049】
以上の第一の金型及び第二の金型を用いて射出成形を行い、長辺の長さが223mmで短辺の長さが125mmの長方形で、厚みが0.6mmと一定で、一方の面(光出射面43)が平滑面からなり、他方の面(裏面44)が粗面化表面を有するプリズム面からなる透明アクリル樹脂板の導光体4を得た。
【0050】
導光体の厚み2.0mmの長辺側端面(光入射端面41)に対向するようにして、該長辺に沿って等間隔で23個のLED(豊田合成社製 E1S62−YWOS7−07)を配置し、さらに光源リフレクタを配置した。また、導光体の裏面側には光反射素子として光散乱反射シート(東レ社製E6SP)を配置し、光出射面側には光偏向素子として頂角68°でピッチ50μmのプリズム列が多数並列に形成された厚み155μmのプリズムシート(三菱レイヨン社製M168)を、そのプリズム列形成面が対向するように配置し、図2に示したような面光源装置を作製した。
【0051】
得られた面光源装置の光入射端面と垂直面内(XZ面内)及び水平面内(YZ面内)での出射光輝度分布をELDIM社製 視野角測定装置(型番:EZcontrast 160D)を用いて測定し、ピーク輝度及びピーク輝度の1/2の輝度を有する角度(半値全幅)を測定した。後述の比較例1を基準とした場合の半値全幅は光入射端面側から、反光入射端面側にかけての領域で、いずれも垂直面内では同等以下の狭さであり、水平面内では5度程度半値全幅が狭かった。そのためピーク輝度も高かった。また、得られた面光源装置の一次光源を点灯して、発光面の光入射端面の近傍を、一次光源及び光源リフレクタを覗き込むような角度(発光面法線方向に対して約45°)で観察したところ、輝度ムラとなる輝線は視認できなかった。レンズ形状を観察したところ、レンズ列341のレンズ底部341’はブラスト処理により潰されていたが、341a’,341b’が接するレンズ頂部はほとんど潰されていなかった。レンズ頂部にレンズ高さの比率で、15−20%程度はブラスト粒子が吹き付けられていない領域が存在していた。また、ブラスト処理の際などに、型部材に傷は発生せず、面光源装置の一次光源を点灯させても輝点として視認される欠陥は無かった。
【0052】
[比較例1]
第一の金型を作製するに際して、電鋳法を用いずにプリズム列形成面に直接ブラスト処理を施すこと以外は実施例1と同様にして面光源装置を作製した。ブラスト処理において、実施例1の場合と同程度の表面粗さになるように、ブラスト粒子の吹付け圧力を調整して複数の凹レンズ列と無数の微小な凹シボを有する第一の金型を得た。
【0053】
得られた導光体を用いて、実施例1と同様にして面光源装置を作製した。面光源装置の一次光源を点灯して、発光面の光入射端面の近傍を、一次光源及び光源リフレクタを覗き込むような角度(発光面法線方向に対して約45°)で観察したところ、輝度ムラとなる輝線は視認できなかったが、実施例1と同様にして出射光輝度分布を測定したところ、半値全幅が広がり、ピーク輝度の低下が見られた。レンズ形状を観察したところ、レンズ列341のレンズ底部341’も341a’,341b’が接するレンズ頂部もブラスト処理により潰されていて、特にレンズ頂部の変形は大きかった。またブラスト処理の際に、型部材に脆性破壊と思われる傷が特異的に数箇所発生し、面光源装置の一次光源を点灯させると、輝点として視認された。
【0054】
[比較例2]
第一の金型を作製するに際して、ブラスト処理を行わず、第二の金型を作製するに際して、ブラスト処理を行った。このブラスト処理では、表面から吹付けノズルまでの距離を320mmとして、ノズルの移動速度を6.0m/min、ノズル走査ピッチを1.5mmとした。また、吹付け方向は板状体の法線方向であった。吹付け圧力は、光入射端面側が0.086MPaで、その後漸増させ、光入射端面からの距離134mmでは0.200MPaとし、光入射端面側がより低い程度に粗面化され、それ以外は緩やかに粗面化の程度が大きくなるようにした。それ以外は実施例1と同様にして面光源装置を作製した。
【0055】
得られた導光体を用いて、実施例1と同様にして面光源装置を作製した。面光源装置の一次光源を点灯して、実施例1と同様にして出射光輝度分布を測定したところ、半値全幅は実施例1と同程度であったが、発光面の光入射端面の近傍を、一次光源及び光源リフレクタを覗き込むような角度(発光面法線方向に対して約45°)で観察したところ、輝度ムラとなる輝線が視認された。
【符号の説明】
【0056】
2 光源
4 導光体
6 光偏向素子
8 光反射素子
10 リフレクタ
41 光入射端面
42 反対端面
43 光出射面
44 裏面
44a レンズ列
61 入光面
61a プリズム列
62 出光面
F 有効発光部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次光源から発せられる光を光入射端面から入射して導光させ、前記光入射端面に略垂直な光出射面から出射させ、前記光出射面および前記光出射面と対向する面の少なくとも一方に、前記一次光源から前記導光体に入射した光の指向性の方向に略沿って延び且つ互いに平行に配列されたレンズ列を有する略矩形の導光体を製造する方法であって、
前記一次光源から前記導光体に入射した光の指向性の方向に略沿って延び且つ互いに平行に配列された複数の第1の凹溝に相当する形状を形成する工程と、
電鋳法により前記複数の第1の凹溝を転写させて複数の第1の凸構造を有する第1の電鋳型を形成する工程と、
前記第1の電鋳型の前記複数の第1の凸構造にブラスト処理を施し、表面に複数の微小な凹シボが形成された複数の第2の凸構造を形成する工程と、
電鋳法により前記複数の第2の凸構造を転写させて、複数の第2の凹溝を有する第2の電鋳型を形成する工程と、
前記第2の電鋳型の前記複数の第2の凹溝を転写し、前記導光体の前記レンズ列を形成することを特徴とする、導光体の製造方法。
【請求項2】
一次光源から発せられる光を光入射端面から入射して導光させ、前記光入射端面に略垂直な光出射面から出射させ、前記光出射面および前記光出射面と対向する面の少なくとも一方に、前記一次光源から前記導光体に入射した光の指向性の方向に略沿って延び且つ互いに平行に配列されたレンズ列を有する略矩形の導光体の製造に用いる成形型の製造方法であって、
型部材に、前記一次光源から前記導光体に入射した光の指向性の方向に略沿って延び且つ互いに平行に配列された複数の第1の凹溝に相当する形状を形成する工程と、
電鋳法により前記複数の第1の凹溝を転写させて複数の第1の凸構造を有する第1の電鋳型を形成する工程と、
前記第1の電鋳型の前記複数の第1の凸構造にブラスト処理を施し、表面に複数の微小な凹シボが形成された複数の第2の凸構造を形成する工程と、
電鋳法により前記複数の第2の凸構造を転写させて、複数の第2の凹溝を有する第2の電鋳型を形成する工程と、を有する成形型の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−222284(P2011−222284A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89999(P2010−89999)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】