説明

面光源装置

【課題】高輝度で長寿命の面光源装置を提供する。
【解決手段】放電空間152を形成するように付設された上部基板150及び下部基板110と、下部基板110の上面に積層された反射層120及び下部蛍光層130と、上部基板150の下面に積層された上部蛍光層180を含む面光源装置100において、反射層120が40〜120μmの厚さを有し、下部蛍光層130が10〜60μmの厚さを有し、上部蛍光層180が10〜25μmの厚さを有する。そして、上部基板150と上部蛍光層180との間に積層された第1イオン遮断層160をさらに含み、これによって上部基板150からのNaイオンの溶出を遮断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光ランプ(fluorescent lamp)に関するものである。特に液晶表示装置(LCD)に具備され、ストライプ(stripe)形態の複数のチャンネル(channel)からなる放電空間を有する面光源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、液晶は電気的特性及び光学的特性を兼ね備えている。液晶は、電気的特性によって電界の方向に対応して配列が変更され、光学的特性によって配列に対応して光の透過率が変更される。
【0003】
液晶表示装置は、液晶の電気的特性及び光学的特性を利用して映像を表示する。液晶表示装置は、陰極線管(CRT)等と比べて体積が非常に小さくて軽いという長所を有し、そのためにポータブルコンピューター、通信機器、液晶式テレビジョン及び宇宙航空産業等に広く使用されている。
【0004】
また、面光源装置では、上部基板と下部基板の間に放電空間を形成し、該放電空間に放電ガスを封入して、該放電空間に電圧を印加する。電圧印加によって励起された放電ガスから放出される紫外線は、上部基板及び下部基板の内側表面に積層された蛍光層を励起させ、これによって可視光線が生成される。
【0005】
多チャンネルの放電空間を形成する方法としては、上部基板と下部基板の間にスペーサ等を介在させ、低温密封用ガラスを使用して上部基板と下部基板の縁を接着する方法と、所定形状の放電空間を有するように金型を利用して上部基板または下部基板を成形した後、上部基板または下部基板を接着する方法がある。
【0006】
また、上述したように形成された放電空間には、アルゴン(Ar)、ネオン(Ne)等の放電ガスと水銀ガスを封入し、その後に、前記放電空間を密封する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述のような従来の面光源装置は、有機水銀含量の減少及び蛍光層の劣化等によって寿命が急激に短くなってしまうという問題がある。
【0008】
有機水銀含量の減少に関して詳説すると、上部基板及び下部基板の材質として一般にソーダライム(sodalime)ガラスを使用しているが、このようなソーダライムガラスは4〜15%程度のNaイオンを含んでいるので、Naイオンと水銀の反応によってアマルガムが形成される。このような場合に、放電空間内の有機水銀含量が減少するので、前記蛍光ランプの寿命低下をもたらすという問題がある。
【0009】
また、従来の面光源装置では輝度が十分でなく、従って輝度を向上させることができる方策が求められている。
【0010】
本発明は、上述した従来の問題点を解決するために導出されたものであり、本発明の目的は、従来よりも輝度を向上させて、寿命を長くすることができる面光源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明にかかる面光源装置は、放電空間を形成するように付設された上部基板及び下部基板と、該下部基板の上面に積層された反射層及び下部蛍光層と、前記上部基板の下面に積層された上部蛍光層を含み、前記反射層が40〜120μmの厚さを有し、前記下部蛍光層が10〜60μmの厚さを有し、前記上部蛍光層が10〜25μmの厚さを有しており、前記上部基板と前記上部蛍光層の間に積層されて前記上部基板からのNaイオンの溶出を遮断する第1イオン遮断層をさらに含む面光源装置を提供する。
【0012】
前記上部基板及び下部基板が、それぞれ4〜15%のNaイオンを含むガラス材質であり、その中で少なくとも一方がソーダライムガラス材質とされた面光源装置を提供する。
【0013】
また、前記第1イオン遮断層の材質がSiOであって、その厚さが3〜200nm(ナノメートル)とされた面光源装置を提供する。
【0014】
そしてまた、励起波長より短い波長の紫外線を遮断する短波長紫外線遮断層が、前記上部蛍光層及び下部蛍光層の両方、あるいはそのどちらか一方の上にさらに積層されるとともに、前記短波長紫外線遮断層の材質がYであって、その厚さが0.1〜5μm(マイクロメートル)とされた面光源装置を提供する。
【0015】
本発明はまた、前記第1イオン遮断層と前記上部蛍光層の間に積層されて前記第1イオン遮断層と共に上部基板からのNaイオンの溶出を遮断する第2イオン遮断層をさらに含み、該第2イオン遮断層の材質がYであって、その厚さが0.1〜5μmとされた面光源装置を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかる面光源装置によれば、蛍光層及び反射層を最適な厚さで形成することにより、輝度及び寿命に関して大幅に向上させることができ、少なくとも一つの遮断層を具備することで、従来の装置よりも寿命を長くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下では、添付図面を参照して本発明の実施例を詳説する。尚、本発明の説明において、関連した公知の機能や構成に対する具体的な説明については本発明の要旨を明確化するために省略する。
【0018】
図1は、本発明の好ましい第1実施例による面光源装置を示す斜視図である。そして、図2は、この面光源装置を図1のA−A´線に沿って切断して示す断面図であり、図3は当該面光源装置について、図2に一点鎖線の円枠内に示す一部分(B)を拡大した図面である。
【0019】
面光源装置100は、下部基板(lower substrate)110と、該下部基板110との間に密閉された放電空間152を形成する上部基板(upper substrate)150と、これらの下部基板110及び上部基板150の接合及び前記放電空間152の密閉のために、下部基板110及び上部基板150の間に介在された封止部材(sealing member)210と、本例では平板形蛍光ランプとされた面光源装置100の両端部に電圧を印加することにより前記放電空間152内に放電を発生させるための一対の電極190、200と、を含む。また、放電による紫外線生成のために前記放電空間152内には放電ガス及び水銀ガスが封入されている。
【0020】
前記した下部基板110及び上部基板150は、その外形がそれぞれ四角板の形態を有し、前記放電空間152は互いに平行に並んで配置され、かつ互いに繋がった複数のチャンネル(channel)からなっている。この放電空間152を形成するために平板基板を部分的に真空吸引して複数のチャンネルを有する前記上部基板150を形成することができる。放電空間152内のチャンネル間を連通させるために、隣接した二つのチャンネル間の隔壁ごとに貫通孔(through−hole)154を形成することができる。尚、下部基板110及び上部基板150は、透明なガラス材質から形成されている。また、本実施例とは異なり、チャンネル間の連通のために放電空間が蛇行構造(serpentine structure)を有するように構成することもできる。
【0021】
前記した放電空間152内において、前記下部基板110の上面には反射層(reflection layer)120と、下部蛍光層(lower fluorescent layer)130とが順に積層される。
【0022】
前記反射層120は、面光源装置100の上面だけから可視光線を放出するために、前記下部基板110の上面に積層された層である。そして、この反射層120については、反射率の高い混合物をスラリー(slurry)状態に作成して前記下部基板110の上面に塗布することにより形成することができる。
【0023】
前記反射層120の厚さとしては、40〜120μmの範囲内であることが好ましい。即ち、この反射層120の厚さが40μmより薄い場合には、当該反射層120及び下部基板110を透過する可視光線が発生するので不必要な光損失が発生してしまう。また、反射層120の厚さが、120μmよりも厚い場合には当該反射層120の形成時に行なわれる熱処理以後に反射層120内に不純な有機物が残存し、放電特性の低下及び短寿命化が齎される虞が生じる。
【0024】
前記の下部蛍光層130は、前記放電空間152内の放電により生成された紫外線によって励起されることで可視光線を生成する。この下部蛍光層130の厚さについては、10〜60μmの範囲内であることが好ましい。即ち、下部蛍光層130の厚さが、10μmより薄い場合には当該下部蛍光層130に吸収されない紫外線が残るようになり、また、下部蛍光層130の厚さが、60μmよりも厚い場合には当該下部蛍光層130の下部に紫外線が到達しないといった状況が起こり得る。
【0025】
前記した上部基板150の下面(内面)には、イオン遮断層160と、上部蛍光層180が順に積層される。
【0026】
前記イオン遮断層160は、Naイオンを多量に含んだガラス材質からなる前記上部基板150から放電過程の間にNaイオンが溶出されるのを遮断する役目を果たす。この第1イオン遮断層160の材質には、例えば、SiOを用いることができ、その厚さは3〜200nm(30〜2000オングストローム)の範囲内にすることが好ましい。前記イオン遮断層160については、スプレーで前記上部基板150に直接噴射し、またはスパッタリング工程でのコーティングにより形成することができる。
【0027】
前記上部蛍光層180は、前記放電空間152内の放電により生成された紫外線によって励起されることで可視光線を生成する。この上部蛍光層180の厚さについては、10〜25μmの範囲内であることが好ましく、このような範囲内で最適な発光効率が得られる。
【0028】
前記封止部材210は、前記下部基板110及び上部基板150との接合のために平板形蛍光ランプとされた面光源装置100の周縁部に配置され、当該面光源装置100の縁に位置する前記下部基板110及び上部基板150において、互いに対向する平行な接合面の間に介在される。
【0029】
前記放電空間152の長手方向における両端部には、電圧印加のための一対の電極190、200が設けられており、前記放電空間152の内部には放電ガスと少量の水銀が封入されている。これらの電極190、200に電圧が印加されると、前記放電空間152内に放電が発生し、このような放電による前記下部蛍光層130及び上部蛍光層180の励起過程を通じて可視光線が発生する。そして、発生した可視光線は、前記面光源装置100の上面を通して外部に出射される。
【0030】
図4は、図1に示した面光源装置を具備するバックライトユニットを示す図面である。このバックライトユニット300は、上部ケース310及び下部ケース320と、光学シート330と、インバーター340と、面光源装置100と、を含む。
【0031】
前記下部ケース320は収納空間を提供し、面光源装置100が安全に取り付けられる。また、前記上部ケース310は、前記下部ケース320と結合して、その中に前記面光源装置100及び前記光学シート330が安全に収容される。
【0032】
前記インバーター340は、前記面光源装置100を駆動するための電圧を発生させる。放電電圧は、ワイヤーによって面光源装置100の電極190、200にそれぞれ印加される。
【0033】
前記光学シート330は、面光源装置100から液晶パネル(図示しない)に向かって出射される光を均一に拡散させる拡散板と、拡散した光に直進性を付与するためのプリズムと、を含むことができる。
【0034】
図5は、本発明の好ましい第2実施例による面光源装置を示した断面図であり、図6はこの面光源装置のうち、図5に一点鎖線で示す円枠内の一部分(C)を拡大した図面である。第2実施例による面光源装置100は、図1乃至図3に示した面光源装置と同様であるが、第2イオン遮断層170と、第1短波長紫外線遮断層140及び第2短波長紫外線遮断層185をさらに含むという点で相違する。したがって、重複する部分についての説明は省略するとともに、同一または同様の構成要素に対して同じ参照番号を使用することにする。
【0035】
放電空間152内において、下部基板110の上面には反射層120、下部蛍光層130、第1短波長紫外線遮断層140がこの順に積層される。
【0036】
前記第1短波長紫外線遮断層140は、前記放電空間152内で生成された紫外線の中で励起波長(=253.7nm)に比して短い、短波長(主に、185nm)の紫外線を遮断する。即ち、この短波長紫外線によって前記下部蛍光層130が劣化しないように防止することができる。前記第1短波長紫外線遮断層140の材質には、例えば、Y2O3が用いられ、該遮断層が0.1〜5μm範囲の厚さを有することが好ましい。つまり、この第1短波長紫外線遮断層140の厚さが前記の範囲に比して厚い場合には、前記放電空間152の内部に不純物が生成される可能性がある。
【0037】
前記上部基板150の下面(内面)には、第1イオン遮断層160及び第2イオン遮断層170、上部蛍光層180、第2短波長紫外線遮断層185がこの順に積層される。
【0038】
前記第1イオン遮断層160及び第2イオン遮断層170は、Naイオンを多量に含んだガラス材質からなる前記上部基板150から放電過程の間にNaイオンが溶出するのを遮断する。前記第1イオン遮断層160の材質には、例えば、SiOが用いられ、該遮断層の厚さは、3〜200nm(30〜2000オングストローム)の範囲内にすることが好ましい。また、前記第2イオン遮断層170の材質には、例えば、Yが用いられ、該遮断層が0.1〜5μmの範囲の厚さを有することが好ましい。
【0039】
前記第2短波長紫外線遮断層185は、前記放電空間152内において生成された紫外線の中で励起波長より短い短波長を遮断することで、前記短波長紫外線によって前記上部蛍光層180が劣化しないように防止する。前記第2短波長紫外線遮断層185の材質には、例えば、Yが用いられ、該遮断層が0.1〜5μmの範囲の厚さを有することが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
上述したように、本発明による面光源装置にあっては、蛍光層及び反射層を最適な厚さで形成することにより、従来よりも輝度及び寿命について大幅な向上を図ることができるという利点が得られる。
【0041】
また、本発明による面光源装置は、少なくとも一つの遮断層を具備することで、従来の装置に比べて、より寿命を長くすることができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の好ましい実施例による面光源装置を示した斜視図である。
【図2】図1に示した面光源装置をA−A´線に沿って切断して示す断面図である。
【図3】図2に示した面光源装置の一部分(B)を拡大した要部の断面図である。
【図4】図1に示した面光源装置を具備したバックライトユニットを示す分解斜視図である。
【図5】本発明の好ましい第2実施例による面光源装置を示した断面図である。
【図6】図5に示した面光源装置の一部分(C)を拡大した要部の断面図である。
【符号の説明】
【0043】
100 面光源装置
110 下部基板
120 反射層
130 下部蛍光層
140 短波長紫外線遮断層
150 上部基板
152 放電空間
160 第1イオン遮断層
170 第2イオン遮断層
180 上部蛍光層
185 短波長紫外線遮断層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電空間を形成するように付設された上部基板及び下部基板と、該下部基板の上面に積層された反射層及び下部蛍光層と、前記上部基板の下面に積層された上部蛍光層を含む面光源装置であって、
前記反射層が40〜120μmの厚さを有し、前記下部蛍光層が10〜60μmの厚さを有し、前記上部蛍光層が10〜25μmの厚さを有しており、
前記上部基板と前記上部蛍光層の間に積層されて前記上部基板からのNaイオンの溶出を遮断する第1イオン遮断層をさらに含むことを特徴とする面光源装置。
【請求項2】
前記上部基板及び下部基板が、それぞれ4〜15%のNaイオンを含むガラス材質であることを特徴とする請求項1に記載の面光源装置。
【請求項3】
前記上部基板と下部基板のうち、少なくとも一方の材質がソーダライムガラスであることを特徴とする請求項2に記載の面光源装置。
【請求項4】
前記第1イオン遮断層の材質がSiOであることを特徴とする請求項1に記載の面光源装置。
【請求項5】
前記第1イオン遮断層の厚さが、3〜200nmであることを特徴とする請求項4に記載の面光源装置。
【請求項6】
前記上部蛍光層と下部蛍光層の両方、あるいはそのどちらか一方の上に積層され、励起波長より短い波長の紫外線を遮断する短波長紫外線遮断層をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の面光源装置。
【請求項7】
前記短波長紫外線遮断層の材質がYであることを特徴とする請求項6に記載の面光源装置。
【請求項8】
前記短波長紫外線遮断層の厚さが、0.1〜5μmであることを特徴とする請求項7に記載の面光源装置。
【請求項9】
前記第1イオン遮断層と前記上部蛍光層の間に積層されて前記第1イオン遮断層と共に前記上部基板からのNaイオンの溶出を遮断する第2イオン遮断層をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の面光源装置。
【請求項10】
第2イオン遮断層の材質がYであることを特徴とする請求項9に記載の面光源装置。
【請求項11】
前記第2イオン遮断層の厚さが、0.1〜5μmであることを特徴とする請求項10に記載の面光源装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−95683(P2007−95683A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−258321(P2006−258321)
【出願日】平成18年9月25日(2006.9.25)
【出願人】(504303539)サムスン コーニング カンパニー リミテッド (14)
【Fターム(参考)】