説明

面実装チョークコイル

【課題】構造が簡易で組み立てが容易な大電流対応の面実装チョークコイルを提供する。
【解決手段】多角形板状の基台部2の表面中央部に棒状コア3が一体に立設されたコア部材1と、平角線がエッジワイズ巻きされたコイル4とを備え、コイル4の中心部にコア部材の棒状コア3が挿入されるとともに、基台部2の辺部2aから裏面10側に屈曲されたコイル4の両端部4a、4bが実装端子5とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源回路等の各種の回路基板に面実装される大電流対応の面実装チョークコイルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、電源回路やノイズ除去回路等の各種基板には、チョークコイルが面実装によって組み込まれている。
従来のこの種の面実装チョークコイルとしては、例えば図7に示すような、両フランジ50a、50bと一体化されたドラム型コア50の芯部に丸銅線51を巻回し、板状のベースプレート52の辺部に設けた電極部53に、丸銅線51の端部を接合したものが知られている。
【0003】
ところで、このような面実装チョークコイルにあっては、車載機器等の電源回路等に供給される大電流に対応させるべく、丸銅線51の線径を太くすると、芯部への巻回しや電極部53への接合が困難になるという問題点があり、さらに小型化や低背化への要請にも対応することが難しいという問題点を有していた。
【0004】
そこで、下記特許文献1においては、円形状の孔部が穿設されたフランジベースコア上に、平角銅線のエッジワイズ巻きコイルを載置し、円柱状の芯部の端部にフランジを一体化させたフランジ付き芯コアの上記芯部を上記コアに挿入するとともに、その先端部を上記フランジベースコアの孔部に挿入して接着剤により固定した表面実装型コイルが提案されている。
【0005】
この表面実装型コイルは、フランジ付き芯コアをフランジベースコアに接着固定した後に、コイルの引出し部をフランジベースコアの一側面方向に略平行に引き出し、底面から対向する側面側に巻回して、さらに当該端部をフランジベースコアの上面に形成した電極固定用切り欠き部にかしめ加工によって固定することにより組み立てられたもので、底面から上記対向側面にかけて帯状に配設された先端部近傍部分を、当該コイルにおける電極部としたものである。
【0006】
上記構成からなる従来の表面実装型コイルによれば、コイルとして平角銅線をエッジワイズ巻きしたものを用いているために、図7に示した銅線に比べて巻線効率に優れ、電気抵抗値が小さいために、大電流に対応することができるとともに、小型化や低背化にも対応することができるという利点が有る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−347129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の面実装型コイルにあっては、部品点数が多く、かつフランジベースコア上にエッジワイズ巻きコイルを載置した後に、当該コイルに挿入したフランジ付き芯コアの先端部をフランジベースコアに接着固定する必要がある。加えて、上記フランジ付き芯コアを固定した後に、さらにコイルの引出し部をフランジベースコアの一側面方向に略平行に引き出し、底面から対向する側面側に巻回してフランジベースコアの上面に形成した電極固定用切り欠き部にかしめ加工して固定しなければならない。
【0009】
このため、総じて組み立てに多大の手間を要するとともに、フランジ付き芯コアがフランジベースコアに接着によって固定された構造であるために、コイルの屈曲加工を行う際に、上記コイルとフランジ付き芯コアとが干渉して過度の力が作用すると、フランジ付き芯コアがフランジベースコアから脱落するおそれがあり、当該作業にも手間と熟練とを要するという問題点がある。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、構造が簡易で組み立てが容易な大電流対応の面実装チョークコイルを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の本発明に係る面実装チョークコイルは、多角形板状の基台部の表面中央部に棒状コアが一体に立設されたコア部材と、平角線がエッジワイズ巻きされたコイルとを備え、上記コイルの中心部に上記コア部材の棒状コアが挿入されるとともに、上記基台部の辺部から裏面側に屈曲された上記コイルの両端部が実装端子とされていることを特徴とするものである。
【0012】
ここで、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記コア部材は、基台部と棒状コアとが粉末成型法により一体成形されていることを特徴とするものである。
【0013】
さらに、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、上記基台部の裏面側に、上記辺部側と上記裏面側とに開口して上記コイルの実装端子を収容する凹部が形成されていることを特徴とするものである。
【0014】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の発明において、上記実装端子が、それぞれ上記基台部の同一の辺部に沿う裏面側に形成されているとともに、上記辺部と対向する辺部に沿う裏面側に、当該基台部を実装基板へ接合するための接合部が設けられていることを特徴とするものである。
【0015】
これに対して、請求項5に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の発明において、上記実装端子が、それぞれ上記基台部の対向する辺部に沿う裏面側に形成されているとともに、対向する上記辺部と隣接する辺部の裏面側に、当該基台部を実装基板へ接合するための接合部が設けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1〜5のいずれかに記載の発明によれば、コイルとして、平角線をエッジワイズ巻きしたものを用いているために、小型かつ背低であっても大電流に対応することができる。しかも、当該コイルに、多角形板状の基台部の表面中央部に一体化された棒状コアを挿入して、当該コイルの両端部を上記基台部の辺部から裏面側に屈曲することにより、容易に組み立てることが可能になる。
【0017】
さらに、基台部の辺部から裏面側に屈曲したコイルの両端部を実装端子としているために、コイル端部の加工が容易であることに加えて、棒状コアが基台部に一体化されているために、当該コイルの両端部を屈曲形成する際に、コイルが棒状コアと干渉して棒状コアが基台部から容易に脱落する等の虞がない。
【0018】
ここで、上記コア部材における基台部と棒状コアとを一体化する態様としては、請求項2に記載の発明のように、粉末成型法により一体成形することが好適である。
また、請求項3に記載の発明のように、上記基台部の裏面側に、上記辺部側と上記裏面側とに開口して上記コイルの実装端子を収容する凹部を形成すれば、コイルの実装端子が基台部の裏面側から過度に突出することがなく、基板表面に安定的に面実装させることが可能になる。
【0019】
ところで、エッジワイズ巻きコイルの両端部を同方向に引き出して、上記基台部における同一の辺部で裏面側に屈曲して実装端子を形成した場合には、面実装した際に、基台部が上記実装端子のある辺部において基板に接合され、当該辺部と対向する辺部側においては上記基板と接続されていない状態になる。このため、基板が振動を受けた際に、上記実装端子を支点として基台部の上記対向辺部側が大きく振動する虞がある。
【0020】
この点、請求項4に記載の発明によれば、実装端子が形成されている上記一辺部と対向する辺部に沿う裏面側に、当該基台部を実装基板へ接合するためのダミーの接合部を設けているために、振動に対しても基台部を強固に基板上に固定しておくことができる。
【0021】
また、エッジワイズ巻きコイルの両端部を180°反対方向に引き出し、上記基台部の対向する辺部に沿う裏面側に屈曲して実装端子を形成した場合には、請求項5に記載の発明のように、上記実装端子が形成されている辺部と隣接する辺部の裏面側に、当該基台部を実装基板へ接合するための接合部を設ければ、同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1のコア部材の形状を示すもので、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図3】図1の面実装チョークコイルを組み立てる際の状態を示す分解斜視図である。
【図4】本発明の第2の実施形態を示す斜視図である。
【図5】図4の底面図である。
【図6】本発明の第3の実施形態を示す斜視図である。
【図7】従来の面実装チョークコイルを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1の実施形態)
図1〜図3は、本発明に係る面実装チョークコイルの第1の実施形態を示すもので、図中符号1がコア部材である。
このコア部材1は、方形板状の基台部2の中心部に円柱状の棒状コア3が一体に立設されたもので、フェライト等の電気的に絶縁性を有するとともに強磁性を示す金属酸化物が、粉末成型法により一体成形されたものである。
【0024】
また、図中符号4は、平角銅線がエッジワイズ巻きされたコイルであり、その巻始め端部4aと巻終わり端部4bとが、互いに平行になるように同方向に引き出されている。このコイル4は、その中心部にコア部材1の棒状コア3が挿入されて基台部2上に載置されている。
【0025】
そして、コイル4の両端部4a、4bは、基台部2における同一の辺部2aから裏面側に屈曲され、当該辺部2aに沿う方形の先端部分が、基板へ面実装する際の実装端子5とされている。なお、このコイル4の先端部4a、4bは、少なくとも上記実装端子5において、被覆が剥離されたうえで半田処理が施されている。
【0026】
上記構成からなる面実装チョークコイルによれば、平角銅線をエッジワイズ巻きしたコイル4を用いているために、小型かつ背低であっても大電流に対応することができる。また、このコイル4に、方形板状の基台部2の表面中心部に一体化された棒状コア3を挿入して、コイル4の両端部4a、4bを基台部2の辺部2aから裏面側に屈曲することにより、容易に組み立てることができる。
【0027】
しかも、基台部2の辺部2aから裏面側に90°屈曲したコイルの先端部分を実装端子5としているために、コイル4の端部4a、4bの屈曲加工が容易であることに加えて、棒状コア3と基台部2とが一体成形されているために、コイル4の両端部4a、4bを屈曲形成する際に、コイル4が棒状コア3と干渉しても、棒状コア3が基台部2から容易に脱落する等の虞がない。
【0028】
(第2の実施形態)
図4および図5は、本発明に係る面実装チョークコイルの第2の実施形態を示すもので、図1〜図3に示した第1の実施形態と同一構成部分については、同一符号を付してその説明を簡略化する。
本実施形態の面実装チョークコイルにおいては、コア部材1の基台部2の裏面10であって、上記実装端子5が位置する2箇所に、辺部2a側と裏面10側とに開口する方形の凹部11が形成されている。そして、各々の凹部11内に、屈曲形成された上記実装端子5が収容されている。
【0029】
また、基台部2の上記辺部2aと対向する辺部2bの中央部分の裏面10には、当該辺部2b側と裏面10側とに開口する方形の凹部12が形成されている。そして、この凹部12に、上記辺部2b側から挿入されたコ字状の接合部13が収容されている。この接合部13は、溶接またはロウ付けによって基板側に接合可能な金属からなるもので、上記コイル4とほぼ同じ厚さ寸法に形成されている。
【0030】
(第3の実施形態)
図6は、本発明に係る面実装チョークコイルの第3の実施形態を示すもので、同様に図1〜図5に示したものと同一構成部分については、同一符号を付してある。
本実施形態の面実装チョークコイルが第2の実施形態と異なる点は、コイル4の端部4a、4bの引き出し方向にある。
【0031】
すなわち、このチョークコイルにおいては、コイル4の巻終わり端部4bが巻始め端部4aに対して180°反対方向に引き出されている。そして、この4端部4bは、基台部2の辺部2b側において同様に屈曲され、裏面10に形成された凹部11内に収容されている。
【0032】
そしてさらに、基台部2の対向する辺部2a、2bに隣接する辺部であって、かつ端部4a、4bに対して棒状コア3を間に挟む側の辺部2cに、上記接合部13が設けられている。なお、この接合部13も、基台部2の辺部2cの中央部裏面側に形成された凹部12内に収容されている。
【0033】
以上の構成からなる第2および第3の実施形態に示した面実装チョークコイルによれば、第1の実施形態に示したものと同様に効果を得ることができる。
加えて、基台部2の裏面10側に、実装端子5を収容する凹部11を形成しているために、コイル4の実装端子5が基台部2の裏面10側から過度に突出することがなく、基板表面に安定的に面実装させることができる。
【0034】
さらに、第2の実施形態においては、実装端子5が形成されている辺部2aと対向する辺部2bに沿う裏面10側に、また第3の実施形態においては、実装端子5が形成されている対向辺部2a、2bと隣接する辺部2cの裏面10側に、それぞれ基台部2を実装基板へ接合するためのダミーの接合部13を設けているために、振動に対しても基台部2を強固に基板上に固定しておくことができる。
【符号の説明】
【0035】
1 コア部材
2 基台部
2a、2b、2c 辺部
3 棒状コア
4 エッジワイズ巻きされたコイル
4a、4b 端部
5 実装端子
10 基台部の裏面
11、12 凹部
13 接合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多角形板状の基台部の表面中央部に棒状コアが一体に立設されたコア部材と、平角線がエッジワイズ巻きされたコイルとを備え、上記コイルの中心部に上記コア部材の棒状コアが挿入されるとともに、上記基台部の辺部から裏面側に屈曲された上記コイルの両端部が実装端子とされていることを特徴とする面実装チョークコイル。
【請求項2】
上記コア部材は、基台部と棒状コアとが粉末成型法により一体成形されていることを特徴とする請求項1に記載の面実装チョークコイル。
【請求項3】
上記基台部の裏面側に、上記辺部側と上記裏面側とに開口して上記コイルの実装端子を収容する凹部が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の面実装チョークコイル。
【請求項4】
上記実装端子は、それぞれ上記基台部の同一の辺部に沿う裏面側に形成されているとともに、上記辺部と対向する辺部に沿う裏面側に、当該基台部を実装基板へ接合するための接合部が設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の面実装チョークコイル。
【請求項5】
上記実装端子は、それぞれ上記基台部の対向する辺部に沿う裏面側に形成されているとともに、対向する上記辺部と隣接する辺部の裏面側に、当該基台部を実装基板へ接合するための接合部が設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の面実装チョークコイル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−58594(P2013−58594A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195861(P2011−195861)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(000237721)FDK株式会社 (449)
【Fターム(参考)】