説明

面状緑化材

【課題】 風の影響を受けることなく建造物自体に悪影響を与えずに断熱効果を得ることのできる面状緑化材を提供すること。
【解決手段】 ALC板と、前記ALC板の上に配置された防根シートと、前記防根シートの上に配置された保水材と、前記保水材の上に配置された育苗板と、前記育苗板の上に配置された飛散防止材とから構成されたので、風の影響を受けることなく建造物自体に悪影響を与えずに断熱効果を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビルや家屋等の外壁、屋根、庇、ベランダや屋上の手摺り部分に使用して、表面に小型植物やコケ植物を植栽することのできる面状緑化材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、都会におけるヒートアイランド現象を緩和するために種々の対策が提案されている。その一環として屋上や屋根等を緑化する方法がある。
例えば、特開平10−313692号公報に開示された壁面緑化パネルは、保持体の下端の人工土壌を収納する収納体を設け、人工土壌で育てたつる植物を金網に沿って伸ばし、建物の壁面を覆うものである。また、特開2002−97653号公報に開示された壁面緑化用ユニットパネルは、植栽土壌基盤を枠体、底板、格子状押さえ材で保持して、壁面等に垂直に取り付けるものである。
【特許文献1】特開平10−313692号公報
【特許文献2】特開2002−97653号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の特許文献1に開示された壁面緑化パネルでは、建造物の壁面を覆うのは金網と育成された植物であり、植物が均一に繁茂するのを期待することは困難である。したがって、確実な断熱効果を得るのは難しいものであった。また、人工土壌の重量が重くなりすぎる虞れもある。
また、特許文献2に開示された壁面緑化用ユニットパネルは、植栽土壌の重量が大きいとともに、断熱性に欠けものであった。また、風の影響を受け易い高層ビル等に設置するのは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、ALC板と、前記ALC板の上に配置された防根シートと、前記防根シートの上に配置された保水材と、前記保水材の上に配置された育苗板と、前記育苗板の上に配置された飛散防止材とから構成されたことを特徴としている。
【0005】
また、請求項2に記載の発明において、前記保水材は、複数に区画された小空間をを有し、この小空間の中に保水性を有する骨材を充填したことを特徴としている。
【0006】
また、請求項3に記載の発明において、前記保水材の前後面をグラスウールで狭持したことを特徴とするものである。
【0007】
また、請求項4に記載の発明において、前記飛散防止材は、ハニカム構造板であることを特徴とするものである。
【0008】
また、請求項5に記載の発明において、前記飛散防止材は複数の孔を有する鑽孔板であることを特徴とするものである。
【0009】
また、請求項6に記載の発明は、合成樹脂または石綿等から成る裏板と、前記裏板の上に配置された遮水性を有する防水シートと、前記防水シートの上に配置された保水材と、前記保水材の上に配置された育苗板と、前記育苗板の上に配置された飛散防止材とから構成されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明は前記した構成からなるので、以下に説明するような効果を奏することができる。
【0011】
本発明では、ALC板と、前記ALC板の上に配置された防根シートと、前記防根シートの上に配置された保水材と、前記保水材の上に配置された育苗板と、前記育苗板の上に配置された飛散防止材とから構成されたので、風の強い高層ビル等であっても植物の根が張り易いとともに、断熱効果によってビル内部の温度上昇を防ぐことができる。また、植栽した植物を良好に育成することができる。更に、植物やALC板、ガラスウール層に含有される水分の蒸発効果によって、温度上昇を防ぐことができる。
【0012】
また、本発明では、前記保水材は、複数に区画された小空間をを有し、この小空間の中に保水性を有する骨材を充填したので、この保水材中に十分な水分を含むことができるので、植物からの気化熱と保水材からの気化熱によって温暖化を防止することができる。
【0013】
また、本発明では、前記保水材の両端面をグラスウールで狭持したので、骨材が小空間から落下するおそれがないとともに、雨水等を吸水できる。
【0014】
また、本発明において、前記飛散防止材は、ハニカム構造板であるので、太陽光を十分に植物が吸収することができ良好に育成できる。また、雨水を十分に吸収することができる。また、高層ビル等の風の強い場所であっても、植栽植物を安全に育てることができる。
【0015】
また、本発明において、前記飛散防止材は、複数の孔を有する鑽孔板であるので、植物が太陽光を十分に吸収して生育できる。また、雨水等も導入することができる。
【0016】
また、本発明において、合成樹脂または石綿等から成る裏板と、前記裏板の上に配置された遮水性を有する防水シートと、前記防水シートの上に配置された保水材と、前記保水材の上に配置された育苗板と、前記育苗板の上に配置された飛散防止材とから構成されたので、植物およびALC板、保水板層からの水分蒸発によって、ヒートアイランド現象の緩和が図られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、ALC板と、前記ALC板の上に配置された防根シートと、前記防根シートの上に配置された保水材と、前記保水材の上に配置された育苗板と、前記育苗板の上に配置された飛散防止材とから構成されたので、植物の根等が構造物自体へ悪影響を与えないとともに、断熱効果と保水効果によりヒートアイランド現象の緩和が達成できる。
【実施例】
【0018】
以下、一実施の形態を示す図面に基づいて本発明を詳細に説明する。図1は本発明に係る面状緑化材の一例を示す正面図、図2は、本発明の面状緑化材の一例を示す縦断面図である。ここで、面状緑化材10は、ALC板11と、このALC板11の上に配置された防根シート12と、前記防根シート12の上に配置された保水材13と、前記保水材13の上に配置された育苗板14と、前記育苗板14の上に配置された飛散防止材15とから構成されている。また、積層された各部材は周囲を枠部材16で囲われている。
【0019】
ALC板11は、高温高圧蒸気養生された軽量気泡コンクリートパネルとも呼ばれ、珪石、セメント、生石灰を主原料とし、発泡剤としてアルミニューム粉末と水を加えた混合液を鉄筋マットを組み込んだ型枠内に流し込み、化学反応によって発泡させる。発泡後、半硬化の状態で所定のサイズに切断し、高温高圧の蒸気養生して完全硬化させる。このようにして製造されたALC板は、軽量であるとともに、断熱性に優れている。
【0020】
防根シート12は、植物が根を張り難い材料から構成されている。
保水材13は、ガラスを微細な繊維状にしたもので、吸水性、親根性に優れている。また、他の材料として天然繊維、合成繊維、スポンジ、織布、不織布等を使用することができる。軽量であることが好ましく、自重の何倍もの水分を含水することができる。育苗板14は、植物を育成するのに適した材料であればよく、天然繊維、合成繊維等を使用することができる。飛散防止材15は、例えば、ハニカム構造板から成り、図1に示すように6角形の蜂の巣状をしており、アルミニュームあるいは、透明合成樹脂等で構成されている。したがって、全体の重量を増すことなく、育苗板14を確実に押さえることができ、風等の影響を排除できる。また、雨水や太陽光が十分に入るので、育苗板14で植物を育成することができる。押さえ部材17は、ハニカム構造板15を更に保持するためのもので、特に強風に晒される高層ビル等で使用する際に効果的である。
【0021】
枠部材16は、ALC板11、防根シート12、保水材13、育苗板14、飛散防止材15の周囲に配置されておりこれらを一体的に固定している。枠部材16は、木材、合成樹脂、アルミニューム等の軽合金から形成されている。
【0022】
図4は、本発明の面状緑化材の他の実施例を示す分解斜視図である。本実施例において、面状緑化材20は、合成樹脂または石綿等から成る裏板21と、前記裏板21の上に配置された遮水性を有する防水シート22と、前記防水シート22の上に配置された保水材13と、前記保水材13の上に配置された育苗板14と、前記育苗板14の上に配置された飛散防止材15とから構成されている。
【0023】
以上のように構成された場合、ALC板を使用することなく面状緑化材20を構成することができる。また、防水シート22を配置したので保水材13,育苗板14に含まれた水分を裏側に漏らす虞れもない。このため、雨水等を有効に再利用することができる。
【0024】
図5は、本発明の面状緑化材に使用される保水材の一例を示す断面図、図6は、その保水材の正面図である。本実施例において、保水材50は複数に区画された小空間51をを有し、この小空間51の中に保水性を有する骨材52を充填したものである。小空間51の形状は、三角形、四角形や五角形、六角形等の多角形であればよく、この中に骨材52を適宜充填する。骨材52としては、小粒径の焼成物や天然の砂、セラミックス等を使用することができる。また、保水材50の前後面をグラスウール53で狭持している。このグラスウール53の層によて狭持することにより、小空間51から骨材52が落下するのを防止することができる。
【0025】
図7は、本発明の面状緑化材に使用される飛散防止材70の他の実施例を示す正面図、図8は、本発明の飛散防止材70の要部拡大斜視図である。本実施例において、飛散防止材70は平板をプレス加工により打ち抜き、複数の小凸部71と十字状の孔72を形成したものである。また、射出成型等によって形成してもよい。
【0026】
以上のように構成された本発明の面状緑化材は以下のように使用することができる。図9は、本発明の面状緑化材を壁面に使用した例を示す縦断面図である。本実施例において、面状緑化材10は建物の壁面90に固定されている。また、育苗板14は、コケ植物、イワダレソウ、芝等の植物を植えることができる。
【0027】
このように構成した場合、面状緑化材10の育苗板14に効果的に植物を着根させることができる。また、植物の根がALC板に遮られて建造物まで伸びることがないので、壁面等を傷める虞れがない。更に、面状緑化材10と建造物の壁面90との間に空隙を設けることにより、断熱効果を高めることができ、太陽光や周囲の排出熱により建物が熱せられるのを防止できる。したがって、冷房等のエネルギーを節約することができる。
【0028】
図10は、本発明の面状緑化材10を屋根と庇部に使用した例を示す斜視図である。本実施例では、建物100の屋根と庇に面状緑化材10を取り付けたものである。このように構成した場合、面状緑化材10の育苗板14に効果的に植物を着根させることができる。また、植物の根が、防根シート12、ALC板11に遮られて建造物まで伸びることがないので、屋根、庇等を傷める虞れがない。更に、面状緑化材10と屋根、庇のと間に空隙を設けることにより、断熱効果を更に高めることができ、太陽光や周囲の排出熱により建物が熱せられるのを防止できる。したがって、冷房等のエネルギーを節約することができる。
【0029】
図11は、本発明の面状緑化材10を屋上部分に使用した例を示す斜視図である。本実施例において、面状緑化材10は建物の屋上100に設置した場合を示すものである。ビルの屋上やベランダに水平にして設置したものである。このように設置して、育苗板14にコケ植物、イワダレソウ、芝、セダム、ベンケイソウ、クマツヅラ等を植栽する。
【0030】
以上のように構成した面状緑化材10の植栽植物と散水条件によるヒートアイランド現象の緩和効果について。
【0031】
図12は、本発明の面状緑化材10をベランダ等の手摺り部に使用した例を示す正面図である。本実施例では、ベランダ110の正面に設置した場合である。このように構成した場合、面状緑化材10によって、断熱効果を高めることができ、太陽光や周囲の排出熱により建物が熱せられるのを防止できる。したがって、冷房等のエネルギーを節約することができる。
【0032】
次に、本発明の面状緑化材を以下の項目について考察した。
<断熱および省エネルギー効果>
また、本発明の面状緑化材によって屋上緑化した区画としない区画における屋上温度と階下天井の表面温度を測定した。表面温度は、9月中旬の12時でデータである。緑化区画で約30℃であるのに対し、非緑化区画では約55℃であり、25℃の差が見られた。また、建物の屋上には断熱処理が施されていたが、階下天井温度で1〜3℃の差が見られた。
<ヒートアイランド緩和効果>
次に、芝やイワダレソウを植栽した区画で定期的に散水を行った。その結果、蒸発効率が0.3〜0.6であった。また、散水頻度を減らした時期でも、0.2以上の蒸発効率を示した。また、セダムを植栽した区画では、定期的に散水した時期では、0.4程度であったが、散水を減らした時期には、0.1以下であった。これによって、植物の種類と散水条件によって蒸発効率に相違があることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、本発明に係る面状緑化材の一例を示す正面図である。
【図2】図2は、同面状緑化材の一例を示す縦断面図である。
【図3】図3は、同面状緑化材の分解斜視図である。
【図4】図4は、同面状緑化材の他の実施例を示す分解斜視図である。
【図5】図5は、同面状緑化材に使用される保水材の一例を示す断面図である。
【図6】図6は、同保水材の正面図である。
【図7】図7は、本発明の面状緑化材に使用される飛散防止材の他の実施例を示す正面図である。
【図8】図8は、同飛散防止材の要部拡大斜視図である。
【図9】図9は、同面状緑化材を壁面に使用した例を示す縦断面図である。
【図10】図10は、同面状緑化材を屋根と庇部に使用した例を示す斜視図である。
【図11】図11は、同面状緑化材を屋上部分に使用した例を示す斜視図である。
【図12】図12は、同面状緑化材をベランダ等の手摺り部に使用した例を示す正面図である。
【符号の説明】
【0034】
10、20 面状緑化材
11 ALC板
12 防根シート
13 保水材
14 育苗板
15 飛散防止材
16 枠部材
17 押さえ部材
21 裏板
22 防水シート
50 保水材
51 小空間
52 骨材
70 飛散防止材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ALC板と、
前記ALC板の上に配置された防根シートと、
前記防根シートの上に配置された保水材と、
前記保水材の上に配置された育苗板と、
前記育苗板の上に配置された飛散防止材とから構成されたことを特徴とする面状緑化材。
【請求項2】
前記保水材は、複数に区画された小空間をを有し、この小空間の中に保水性を有する骨材を充填したことを特徴とする請求項1に記載の面状緑化材。
【請求項3】
前記保水材の前後面をグラスウールで狭持したことを特徴とする請求項1または2に記載の面状緑化材。
【請求項4】
前記飛散防止材は、ハニカム構造板であることを特徴とする請求項1に記載の面状緑化材。
【請求項5】
前記飛散防止材は、複数の孔を有する鑽孔板であることを特徴とする請求項1に記載の面状緑化材。
【請求項6】
合成樹脂または石綿等から成る裏板と、前記裏板の上に配置された遮水性を有する防水シートと、
前記防水シートの上に配置された保水材と、
前記保水材の上に配置された育苗板と、
前記育苗板の上に配置された飛散防止材とから構成されたことを特徴とする面状緑化材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−230355(P2006−230355A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−53383(P2005−53383)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(390018038)白水興産株式会社 (19)
【Fターム(参考)】