説明

靴下

【課題】 指袋部分の伸縮性を確保しつつ、ゴワゴワとした違和感を少なくするようにした5本指靴下を提供する。
【解決手段】 編み糸又は編み糸と弾性糸とによって靴下本体及び爪先部分を編成してなる靴下において、爪先部分(20)には足の5指を入れる5本の指袋部分(21,22,23,24,25)が5指の大きさに応じた大きさに編成され、該5本の各指袋部分はコース方向に1目又は2目の平編みと1目又は2目のタック編みとが交互に編成されている。
各指袋部分の平編みの編み目とタック編みの編み目とは1:1、2:1、2:2又は2:1とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は靴下に関し、特に足指の大きい人や長い人がゴワゴワ感を感じることなく長時間にわたって快適に履くことができるようにした5本指靴下に関する。
【背景技術】
【0002】
靴下は足の保護や保温を目的として用いられるが、通常の靴下は靴下本体から爪先部分にかけて概ね筒状に編成されているので、隣接する足指の間の湿気が抜け難く、水虫等の病気が懸念される。
【0003】
これに対し、靴下の爪先部分に5指を別々に入れる指袋を形成した靴下(以下、5本指靴下という)が提案されている(特許文献1)。この5本指靴下では各足指が指袋部分によって包まれているので、湿気が抜けやすいという利点を有するものの、従来の5本指靴下は全体が手袋と同様の編み組織、つまり平編みによって編成されていたので、5指の各指袋部分に伸縮性が乏しかった。
【0004】
ところで、人間の足指の形状や大きさを検討すると、人間の足指の形状や大きさは一様ではなく、足の親指が極端に太かったり細かったり、あるいは足の中指が極端に長かったりと個人によって様々であり、指袋を平編みで編成した従来の5本指靴下では指袋が足指の大きさや形状に合わず、窮屈で履きにくいことがあった。
【0005】
他方、表糸に伸びの小さい弾性糸及び裏糸を添わせることによって指袋部分を粗い編み目で厚く編成し、指袋部分を伸びやすくした5本指靴下(特許文献2)、あるいは指袋部分をタック編みで編成し、指袋部分を伸びやすくした5本指靴下(特許文献3)が提案されている。
【0006】
【特許文献1】特開平07−100165号公報
【特許文献2】実用新案登録第3139087号公報
【特許文献3】実用新案登録第3015037号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献2、3記載の5本指靴下では指袋部分が厚く編成されているので、靴下を履くとゴワゴワとした違和感を感じることがあった。特に、足指の感覚は非常に敏感であり、上述のような違和感を長時間感じ続けると非常に疲れることがあった。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑み、指袋部分の伸縮性を確保しつつ、ゴワゴワとした違和感を少なくするようにした5本指靴下を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る靴下は、編み糸又は編み糸と弾性糸とによって靴下本体及び爪先部分を編成してなる靴下において、上記爪先部分には足の5指を入れる5本の指袋部分が5指の大きさに応じた大きさに編成され、該5本の各指袋部分はコース方向に1目又は2目の平編みと1目又は2目のタック編みとを交互に編成した編み組織となっていることを特徴とする。
【0010】
タック編みとは生地を編成する際に、ある編み目を作らないで、次のコースを編むときに一緒に編み目を作るもので、編針から編み目を脱出させないので、編針のフック又は針幹の前の編み目とともに保持し、例えば次の給糸により編み目を形成する時に同時に2つの編み目をくぐって編み糸を引き出して新しい編み目を作った組織である。
【0011】
タックする回数(タック数)は通常は1〜2回であるが、5〜6回続けることもできる。但し、タック数が多くなると、タックした部分の盛り上がりが大きくなり、違和感を感じやすいので、1回〜4回程度のタック数が好ましい。タック編みは種々な目的に応用されるが、透し目を作る、編み地を隆起させる、編み地を厚くする、色糸を用いて柄や模様を出す、などの場合に使用される。
【0012】
本発明の特徴の1つは爪先の指袋部分を平編みの編み目とタック編みの編み目とを交互に配置した編み組織とした点にある。これにより、平編みに比して縦方向及び横方向への伸縮性が大きいというタック編みの特徴に起因して、平編みだけの編み組織の場合に比して大きな伸びが得られるので、指袋部分が人間の足指の形状や大きさに応じて伸びやすく、窮屈な履き心地感が少なく、楽に履くことができる。
【0013】
また、爪先の指袋部分の全体を平編み組織とした場合に比して厚みがあるが、爪先の指袋部分の全体をタック編み組織とした場合に比して薄いので、靴下を履くと指袋部分にゴワゴワとした違和感を感じることがなく、長時間靴下を履き続けても疲労感が少ない。
【0014】
ここで、1目又は2目の平編みと1目又は2目のタック編みとを交互に編成するようにしたのは、3目以上の平編みと1目又は2目のタック編みとの組合せでは指袋部分の伸びが少なく、足の親指が極端に大きい人や中指が極端に長い人にとっては履きにくい一方、1目又は2目の平編みと3目以上のタック編みとの組合せでは指袋部分が厚くなり過ぎ、長時間履いたときに疲労を感じるようなゴワゴワ感を感じることがあるからである。
【0015】
具体的には、各指袋部分の平編みの編み目とタック編みの編み目とを、1:1、2:1、2:2又は2:1とするのがよい。
【0016】
靴下本体の編み組織は特に限定されないが、従来と同様に平編みで編成することができる。
【0017】
編み糸の材質については特に限定されず、綿糸、綿アクリル混紡糸、毛糸、毛アクリル混紡糸、絹糸、絹アクリル混紡糸、麻糸、麻アクリル混紡糸、ナイロン糸等、靴下に採用される編み糸を用いることができる。弾性糸にはゴム糸、ナイロン糸、ポリエステル糸、ポリウレタンカバードヤーン、コアヤーンを用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を図面に示す具体例に基づいて詳細に説明する。図1ないし図3は本発明に係る靴下の好ましい実施形態を示す。靴下は靴下本体10と爪先部分20とから構成され、靴下本体10は履口部分11、レッグ部分12、足甲部分13、足底部分14及び踵部分15から構成されている。
【0019】
靴下本体10は編み糸30、例えば綿アクリル混紡糸と弾性糸31、例えばポリウレタンを芯にしてポリエステルでカバーリングしたカバードヤーンとを用いて平編み組織にて履口部分11から足甲部分13及び足底部分14の先端側に向けて筒状に編成され、又爪先部分20には5本の指袋部分21〜25が足指の大きさ及び形状に応じた大きさ及び形状に編成され、5つの各指袋部分21〜25は編み糸30、例えば綿アクリル混紡糸と弾性糸31、例えばポリウレタンを芯にしてポリエステルでカバーリングしたカバードヤーンとを用い、平編みの1つの編み目Pとタック編みの1つの編み目Tとをコース方向に交互に編成した編み組織となっている。
【0020】
タック編みの組織はウェール方向に編み目をタックしているので、平編み組織に比して縦方向及び横方向への伸縮性が大きい。本例の靴下では指袋部分21〜25をタック編みと平編みとが1:1で交互に編成された編み組織とし、しかもタック編みのタック数をウェール方向の1段毎に1回としているので、平編みだけの編み組織の場合に比して縦方向及び横方向に大きな伸びが得られ、人間の足指の形状や大きさに応じて適度に伸び、窮屈感を感じることなく楽に履くことができる。
【0021】
また、爪先20の指袋部分21〜25はその全体を平編み組織とした場合に比して厚みがあるが、爪先20の指袋部分21〜25の全体をタック編み組織とした場合に比して薄く、平編みと大差がないので、靴下を履くとゴワゴワとした違和感を感じることが少なく、長時間靴下を履き続けてもあまり疲労感を感じない。
【0022】
なお、上記の例では指袋部分21〜25をタック編みと平編みとが1:1で交互に編成された編み組織としたが、このタック編みと平編みとは靴下を履く人の性別や年齢、体格などに応じ、1:2、2:1、2:2の比率で編成するようにしてもよく、同様に作用効果を奏する。
【0023】
また、タック編みのタック数は2回以上6回以下であればよく、例えば絹糸などのように繊細で弱い編み糸の場合にはタック数を6回としてもゴワゴワ感は少なく、しかもタックした部分が盛り上がり、厚くなって編み糸を補強するので、指袋部分の破れを少なくできる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る靴下の1例を示す概略斜視図である。
【図2】図1の要部拡大平面図である。
【図3】編み組織の例を示す図である。
【符号の説明】
【0025】
10 靴下本体
20 爪先部分
21〜25 指袋部分


【特許請求の範囲】
【請求項1】
編み糸又は編み糸と弾性糸とによって靴下本体及び爪先部分を編成してなる靴下において、
上記爪先部分には足の5指を入れる5本の指袋部分が5指の大きさに応じた大きさに編成され、該5本の各指袋部分はコース方向に1目又は2目の平編みと1目又は2目のタック編みとを交互に編成した編み組織となっていることを特徴とする靴下。
【請求項2】
上記各指袋部分の平編みの編み目とタック編みの編み目とが1:1、2:1、2:2又は2:1である請求項1記載の靴下。
【請求項3】
上記タック編みのタック数が1〜6のいずれかである請求項1記載の靴下。
【請求項4】
上記靴下本体が平編みで編成されている請求項1記載の靴下。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−191419(P2009−191419A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−35470(P2008−35470)
【出願日】平成20年2月18日(2008.2.18)
【出願人】(593106228)ナカイニット株式会社 (4)
【Fターム(参考)】