説明

鞍乗り型不整地走行車両のガード部材

【課題】 鞍乗り型不整地走行車両において、サスペンションアームに堆積した泥や雪等を手作業に因らずに容易に除去することにある。
【解決手段】 ホイールの内側に、ブレーキディスク及びブレーキキャリパ111からなるディスクブレーキ装置を配置し、左右の前輪をそれぞれフロントアッパアーム及びフロントロアアーム41で支持する独立懸架式とし、ドライブシャフト93の前方で且つ車体中心側を保護するためにフロントロアアーム41にインボード側ガード部材102を取付け、ドライブシャフト93の前方で且つナックル88側を保護するためにナックル88にアウトボード側ガード部材105を取付けた鞍乗り型不整地走行車両のガード部材であって、アウトボード側ガード部材105を、先端の傾斜部105kが車体内方斜め後方に延びるように形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗り型不整地走行車両のガード部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の鞍乗り型不整地走行車両のガード部材として、ドライブシャフトを保護するためにサスペンションアームにガード部材を取付けたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】実開平6−37090号公報
【0003】
特許文献1の技術を以下に説明する。なお、符号については、同公報に記載されているものを使用した。
特許文献の図3には、フレームに上側アーム部材46及び下側アーム部材52を上下スイング可能に取付け、これらの上側アーム部材46及び下側アーム部材52のそれぞれの先端にナックル58を取付け、このナックル58で前輪11を回転可能に支持し、この前輪11にドライブシャフト38を連結し、このドライブシャフト38を保護するために下側アーム部材52にガードプレート70を取付けたことが記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
不整地走行車両は、ぬかるみなどの悪路や積雪路を走行することが多く、走行中に、ガードプレート70の後方が吹き溜まりとなって、下アーム部材52に泥や雪等が堆積することがある。この泥や雪等は、走行前、あるいは走行後に取り除けばよいが、手作業に因る泥、雪等の除去は煩わしい。
【0005】
本発明の課題は、鞍乗り型不整地走行車両において、サスペンションアームに堆積した泥や雪等を手作業に因らずに容易に除去することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、車輪のホイールの内側に、ブレーキディスク及びこのブレーキディスクを挟んで制動するブレーキキャリパからなるディスクブレーキ装置を配置し、左右の車輪をそれぞれ上アーム及び下アームで支持する独立懸架式とし、車輪に駆動力を伝えるドライブシャフトの前方で且つ車体中心側を保護するために下アームにインボード側ガード部材を取付け、ドライブシャフトの前方で且つ車輪側を保護するためにナックルにアウトボード側ガード部材を取付けた鞍乗り型不整地走行車両のガード部材であって、アウトボード側ガード部材を、その先端部が車体内方斜め後方に延びるように形成したことを特徴とする。
【0007】
アウトボード側ガード部材を、その先端部が車体後方に延びるように形成したことで、ハンドル転舵時に該先端部がナックルの回転中心に揺動するスクレイパとなるので、下アームに堆積した泥や雪等を容易にそぎ落としたり割ったり、あるいは堆積物を押しのけることができる。
【0008】
請求項2に係る発明は、アウトボード側ガード部材を、その先端部が車体内方に延びるように形成したことを特徴とする。
アウトボード側ガード部材を、その先端部が車体内方に延びるように形成したことで、先端部がナックルの回転軸を中心とする円弧の接線の延びる方向とほぼ一致するため、転舵してナックルとともにアウトボード側ガード部材を移動させたときに、ハンドル転舵時に該先端部がナックルの回転中心に揺動するスクレイパとなるので、下アームに堆積した泥や雪等を容易にそぎ落としたり割ったり、あるいは堆積物を押しのけることができる。
【0009】
請求項3に係る発明は、インボード側ガード部材が、下アームの前部及び前部下部を覆うとともに、アウトボード側ガード部材の先端部の可動範囲に近接させて配置した起立部を備えることを特徴とする。
【0010】
インボード側ガード部材に起立部を設けたことで、起立部で下アームの前部及び前部下部を保護することができる。また、起立部を、アウトボード側ガード部材の先端の可動範囲に近接させて配置したことで、インボード側ガード部材とアウトボード側ガード部材とで車体中心側からナックルに至る範囲のドライブシャフトのほぼ全体を保護することができる。
【0011】
請求項4に係る発明は、下アームを、車両前方側に設けた前アームと、この前アームの後方に設けた後アームとから構成し、アウトボード側ガード部材の先端部を、車輪の最大転舵時に、平面視で前アームと重ねることを特徴とする。
【0012】
アウトボード側ガード部材の先端部を、車輪の最大転舵時に平面視で前アームと重ねるようにしたことで、下アームに堆積した泥、雪等をアウトボード側ガード部材の先端部で確実に削ぎ落としたり割ったり、あるいは押し退けることができる。
【0013】
請求項5に係る発明は、アウトボード側ガード部材を、ブレーキキャリパを内側から覆うキャリパガード部と、このキャリパガード部の端部に設けた先端部とを一体成形した部材としたことを特徴とする。
キャリパガード部と先端部とを一体成形したことで、部品数を減らすことができる。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明では、アウトボード側ガード部材を、その先端部が車体後方に延びるように形成したので、ハンドル転舵時に該先端部がナックルの回転中心に揺動するスクレイパとなるので、下アームに堆積した泥や雪等を容易にそぎ落としたり割ったり、あるいは堆積物を押しのけることができる。
【0015】
請求項2に係る発明では、アウトボード側ガード部材を、その先端部が車体内方に延びるように形成したので、先端部がナックルの回転軸を中心とする円弧の接線の延びる方向とほぼ一致するため、転舵してナックルとともにアウトボード側ガード部材を移動させたときに、ハンドル転舵時に該先端部がナックルの回転中心に揺動するスクレイパとなるので、下アームに堆積した泥や雪等を容易にそぎ落としたり割ったり、あるいは堆積物を押しのけることができる。
【0016】
請求項3に係る発明では、インボード側ガード部材に起立部を設けたので、起立部で下アームの前部及び前部下部を保護することができる。また、起立部を、アウトボード側ガード部材の先端の可動範囲に近接させて配置したので、インボード側ガード部材とアウトボード側ガード部材とで車体中心側からナックルに至る範囲のドライブシャフトのほぼ全体を保護することができ、車両の悪路走破性を向上させることができる。
【0017】
請求項4に係る発明では、アウトボード側ガード部材の先端を、車輪の最大転舵時に、平面視で前アームと重ねるようにしたので、下アームに堆積した泥、雪等をアウトボード側ガード部材の先端部で確実に削ぎ落としたり割ったり、あるいは押し退けることができる。
【0018】
請求項5に係る発明では、アウトボード側ガード部材を、ブレーキキャリパを内側から覆うキャリパガード部と、このキャリパガード部の端部に設けた先端部とを一体成形した部材としたので、部品数を減らすことができ、アウトボード側ガード部材のコストを抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明の鞍乗り型不整地走行車両の側面図であり、鞍乗り型不整地走行車両10(以下、単に「不整地走行車両10」と記す。)は、車体フレーム11と、この車体フレーム11の中央下部に搭載したエンジン12と、このエンジン12に接続するとともに車体フレーム11に取付けた動力伝達装置13と、左右の前輪17,17(手前側の符号17のみ示す。)及び左右の後輪18,18(手前側の符号18のみ示す。)を懸架する前サスペンション15及び後サスペンション16と、前輪17,17に連結するとともに車体フレーム11に取付けたステアリング装置21とを備える四輪駆動車両である。
【0020】
車体フレーム11は、メインフレーム25と、メインフレーム25の前後に取付けた前フレーム26及び後フレーム27と、前フレーム26の下部の左右間に取付けたブラケット31と、前フレーム26の上部の左右間に取付けたクロスメンバ32とを有する。なお、33はメインフレーム25に取付けた座席シート、34は燃料タンク、35は前フレーム26に取付けたフロントガード、36は前フレーム26に取付けたフロントキャリア、37はメインフレーム25の後部に取付けたリアキャリアを示す。
【0021】
前サスペンション15は、左右独立懸架で、車体フレーム11に上下揺動可能に取付けた左右一対のフロントアッパアーム40,40(手前側の符号40のみ示す。)及びフロントロアアーム41,41(手前側の符号41のみ示す。)と、フロントアッパアーム40及びクロスメンバ32のそれぞれの間に取付けた左右一対のフロントクッションユニット42,42(手前側の符号42のみ示す。)とを備える。
後サスペンション16は、車体フレーム11に取付けたリヤクッションユニット44を備える。
【0022】
動力伝達装置13は、エンジン12の出力軸に連結した変速機47と、ギアチェンジペダル48と、変速機47の前後に連結した前駆動軸51及び後駆動軸52と、前駆動軸51に連結し且つ車体フレーム11側に取付けた前最終減速装置53と、後駆動軸52に連結した後最終減速装置54とを有する。
【0023】
ステアリング装置21は、メインフレーム25の前上部にシャフトホルダ55で取付けたステアリングシャフト56と、ステアリングシャフト56に取付けたハンドル57と、を有する。なお、61は前輪17,17の上方を覆うフロントフェンダ、62は後輪18,18の上方を覆うリヤフェンダである。
【0024】
エンジン12は、4サイクルエンジンであり、シリンダブロック63と、このシリンダブロック63の上部に取付けたシリンダヘッド64と、このシリンダヘッド64の前部に接続した排気装置65と、シリンダヘッド64の後部に取付けたキャブレタ66と、シリンダヘッド64内に設けた動弁機構67と、シリンダブロック63内に移動可能に挿入したピストン71と、このピストン71にコンロッド71aを介して連結したクランクシャフト72と、シリンダブロック63の下方に配置したオイルパン73と、エンジン12の前方に配置してエンジン12を強制空冷する冷却ファン74とを備える。
【0025】
図2は本発明に係る不整地走行車両の前サスペンションの要部正面図である。ここでは、前サスペンション15の左側の前輪17を懸架する部分のみ示し、前サスペンション15の右側の前輪17を懸架する部分の説明は省略する。
前サスペンション15は、車体フレーム11の前部に左右に渡した3本のアーム支持部81,82,82(アーム支持部82の奥側に配置したアーム支持部82は不図示。)と、アーム支持部81,81の端部に上下スイング自在に取付けた前述のフロントアッパアーム40と、アーム支持部82,82の端部に上下スイング自在に取付けた前述のフロントロアアーム41と、これらのフロントアッパアーム40及びフロントロアアーム41のそれぞれの先端にボールジョイント86,87を介して連結したナックル88と、このナックル88に回転自在に取付けたハブ(不図示)と、車体フレーム11及びフロントアッパアーム40のそれぞれに渡したフロントクッションユニット42(図1参照)とからなり、このハブに前輪17を取付ける。
【0026】
ナックル88は、第1アーム125及び第2アーム126を備え、これらの第1アーム125及び第2アーム126に、ディスクブレーキ装置110のブレーキキャリパ111を取付けた。
【0027】
ディスクブレーキ装置110は、ハブに取付けたブレーキディスク137と、このブレーキディスク137を挟み込んで制動する前述のブレーキキャリパ111とからなり、前輪17を構成するホイール154内に完全に収まる、いわゆる、ホイールイン型のものである。
【0028】
ここで、前最終減速装置53は変速機47(図1参照)の下部から前方に延ばした前駆動軸51(図1参照)の先端に連結したものであり、この前最終減速装置53からドライブシャフト93を介してハブに動力を伝え、前輪17を駆動する。
【0029】
95,96はドライブシャフト93の両端部に設けた等速ジョイント97,98を覆うゴムブーツであり、一方のゴムブーツ95及び等速ジョイント97,98間に渡したシャフト99のそれぞれの前方及び前方斜め下方を、フロントロアアーム41に取付けたインボード側ガード部材102で覆い、他方のゴムブーツ96の前方を、ナックル88に取付けたアウトボード側ガード部材105で覆う。
【0030】
図中の112はハンドル57(図1参照)側に設けたマスタシリンダ(不図示)とブレーキキャリパ111とに渡したブレーキホースであり、このブレーキホース112の途中をフロントアッパアーム40及び車体フレーム11に固定し、特に、ブレーキホース112の固定部の一つ(詳しくは、後述する第3ブラケット225である。)を、フロントアッパアーム40の先端部40aの上方であって、ボールジョイント86,87のそれぞれの中心を結んだキングピン軸115上に配置した。
【0031】
図3は図2の3矢視図(図中の矢印(FRONT)は車両前方を表す。以下同じ。)であり、ナックル88に設けた第1アーム125及び第2アーム126(詳しくは、第1アーム部125の先端部に設けた第1キャリパ支持部125a及び第2アーム部126の先端部に設けた第2キャリパ支持部126a)にボルト117,118でブレーキキャリパ111を取付けたことを示す。
【0032】
ブレーキキャリパ111は、第1アーム125及び第2アーム126に取付けたキャリパブラケット131(輪郭を太線で示した部分である。)と、このキャリパブラケット131に第1連結部132及び第2連結部133で連結したキャリパアセンブリ134とからなる。
【0033】
ここで、131Aは第1アーム125の第1キャリパ支持部125aに取付けるためにキャリパブラケット131に設けた第1取付部、131Bは第2アーム126の第2キャリパ支持部126aに取付けるためにキャリパブラケット131に設けた第2取付部である。
【0034】
キャリパアセンブリ134は、キャリパブラケット131に連結したキャリパボディ136と、このキャリパボディ136の内側に配置するとともにブレーキディスク137を両側から挟み込む一対のパッド138,141(手前側の符号138のみ示す。)と、これらのパッド138,141を押圧するためにキャリパボディ136内に移動可能に収納したピストン142とからなる。
【0035】
前輪17(図1参照)の中心を点190、ピストン142の中心を点191、ボルト117の軸線を点192、ボルト118の軸線を点193で表し、点190から点191までの距離をL1、点190から点192(又は、点193)までの距離をL2とすると、距離L2は距離L1よりも大きい(L2>L1)。即ち、ナックル88にブレーキキャリパ111を取付けるボルト117,118を、ピストン142の中心よりも半径方向の外側に配置した。これにより、制動時に、パッド138,141(詳しくは、パッド138,141のピストン142の中心位置に対応する位置)にブレーキトルクが作用したときに、ボルト117,118に発生する荷重をより小さくすることができる。
【0036】
図4は図3の4−4線断面図であり、ナックル88にベアリング145を介してハブ146を回転可能に取付け、このハブ146の内側に、等速ジョイント98(図2参照)に一体に設けた車軸147をスプライン結合するとともにナット148で取付け、ハブ146に複数のボルト151でブレーキディスク137を取付け、このブレーキディスク137を内方から覆うためにナックル88にカバー部材152を複数のボルト153で取付けたことを示す。なお、154はハブ146に複数のボルト155及び複数のホイールナット156で取付けたホイール、154aはホイール154のリム、157は止め輪、158,159はダストシールである。
【0037】
カバー部材152は、径外方に延びるディスク部152aと、このディスク部152aの外周縁の一部に設けたフランジ部152bとからなり、図3に戻って、フランジ部152bを、ディスク部152aの下部の外周縁以外の部分、即ち、ディスク部152aの上部外周縁及び後部外周縁(詳しくは、角度θの範囲)に設けた部材である。
【0038】
図5は本発明に係るインボード側ガード部材及びアウトボード側ガード部材の取付状態を示す平面図であり、フロントロアアーム41を、前アーム211と、この前アーム211の後方に配置した後アーム212と、これらの前アーム211及び後アーム212のそれぞれに渡したクロスメンバ213とから構成し、前アーム211とクロスメンバ213とにブラケット214を渡して取付け、このブラケット214にボルト216及びナット217でインボード側ガード部材102(太線で一部を示した部分である。)を取付け、ナックル88にボルト218,218(一方の符号218のみ示す。)でアウトボード側ガード部材105(太線で一部を示した部分である。)を取付けたことを示す。
【0039】
インボード側ガード部材102は、前アーム211の下方を覆う基部102aと、この基部102の前縁から立ち上げるように形成した起立部102bとを一体に形成したものであるから、車両前方側からの飛び石や衝突物から、前アーム211自体に加えて後アーム212、クロスメンバ213をも保護することができる。
【0040】
図中の102cはインボード側ガード部材102の車両側方側の外縁部であり、アウトボード側ガード部材105の先端側に設けた第2ガード部105eの可動範囲から外れた位置に設けた部分である。
【0041】
また、アウトボード側ガード部材105は、車両前方からの飛び石や衝突物からドライブシャフト93の等速ジョイント98、ゴムブーツ96を保護するのに加え、車両後方からの泥水等からブレーキキャリパ111を保護することができる。
【0042】
図6は本発明に係るアウトボード側ガード部材の取付状態を示す斜視図であり、アウトボード側ガード部材105は、ナックル88に取付ける取付部105a,105bと、これらの取付部105a,105bからほぼ並行に延ばした第1ガード部105c,105dと、これらの第1ガード部105c、105dの先端を繋ぐ第2ガード部105eと、を一体成形した部材である。なお、105fは第1ガード部105cと第2ガード部105eとの接続部に一体に設けた補助ガード部、105gは第1ガード部105dと第2ガード部105eとの接続部に一体に設けた補助ガード部である。
【0043】
図7は図6の7−7線断面図であり、アウトボード側ガード部材105の第2ガード部105eは、ほぼ車両前後方向に延びるベース部105jと、このベース部105jの前端部から後方斜め内方(内方とは車体中心側であり、図の左方)に延ばした傾斜部105kとからなる。
【0044】
図5に戻って、アウトボード側ガード部材105の傾斜部105kは、内方斜め後方に延ばすことで、ナックル88の回転中心であるキングピン軸115(図2参照)を中心にして引いた円弧219の接線の延びる方向とほぼ一致させた部分である。
【0045】
以上に述べたアウトボード側ガード部材105の作用を次に説明する。
図8(a),(b)は本発明に係るアウトボード側ガード部材の作用を示す作用図である。なお、アウトボード側ガード部材105は一部を太線で示した。
(a)において、例えば、フロントロアアーム41に雪が堆積し、塊202(又は泥の塊等)となってフロントロアアーム41に凍り付くことがある。
【0046】
(b)において、矢印Aで示すように最大に転舵すると、ナックル88と共にアウトボード側ガード部材105は、フロントロアアーム41の前アーム211に重なる位置まで移動し、矢印Bで示すように、塊202を想像線で示す位置((a)で示した位置である。)から押し退ける。
【0047】
或いは、アウトボード側ガード部材105の傾斜部105kが、図5で説明したように、円弧219のほぼ接線方向に延びるため、図8(b)において、転舵したときに、傾斜部105kはスクレイパ(scraper:へら)となって塊202を割ったり、削ぎ落とす。
【0048】
以上の図2及び図5で説明したように、本発明は第1に、車輪としての前輪17のホイール154の内側に、ブレーキディスク137及びこのブレーキディスク137を挟んで制動するブレーキキャリパ111からなるディスクブレーキ装置110を配置し、左右の前輪17,17をそれぞれ上アームとしてのフロントアッパアーム40及び下アームとしてのフロントロアアーム41で支持する独立懸架式とし、前輪17に駆動力を伝えるドライブシャフト93の前方で且つ車体中心側を保護するためにフロントロアアーム41にインボード側ガード部材102を取付け、ドライブシャフト93の前方で且つ前輪17側を保護するためにナックル88にアウトボード側ガード部材105を取付けた鞍乗り型不整地走行車両10(図1参照)のガード部材であって、アウトボード側ガード部材105を、その先端部としての第2ガード部105e、詳しくは傾斜部105kが車体内方斜め後方に延びるように形成したことを特徴とする。
【0049】
アウトボード側ガード部材105を、その第2ガード部105eが車体内方斜め後方に延びるように形成したので、転舵してナックル88とともにアウトボード側ガード部材105を移動させたときに、第2ガード部105eがスクレイパとなってフロントロアアーム41に堆積した泥や雪等を容易に削ぎ落としたり割ったり、或いは押し退けることができる。従って、従来のような手作業に因る泥、雪等の除去の煩わしさを解消することができる。
【0050】
本発明は第2に、インボード側ガード部材102が、フロントロアアーム41の前部及び前部下部を覆うとともに、アウトボード側ガード部材105の第2ガード部105eの可動範囲に近接させて配置した起立部102bを備えることを特徴とする。
【0051】
インボード側ガード部材102に起立部102bを設けたので、起立部102bでフロントロアアーム41の前部及び前部下部を保護することができる。また、起立部102bを、アウトボード側ガード部材105の第2ガード部105eの可動範囲に近接させて配置したことで、インボード側ガード部材102とアウトボード側ガード部材105とで車体中心側からナックル88に至る範囲のドライブシャフト93のほぼ全体を保護することができ、鞍乗り型不整地走行車両10の悪路走破性を向上させることができる。
【0052】
本発明は第3に、フロントロアアーム41を、車両前方側に設けた前アーム211と、この前アーム211の後方に設けた後アーム212とから構成し、アウトボード側ガード部材105の第2ガード部105eを、前輪17の最大転舵時に、平面視で前アーム211と重ねることを特徴とする。
【0053】
アウトボード側ガード部材105の第2ガード部105eを、前輪17の最大転舵時に、平面視で前アーム211と重ねるようにしたので、フロントロアアーム41に堆積した泥、雪等をアウトボード側ガード部材105の第2ガード部105eで確実に削ぎ落としたり割ったり、あるいは押し退けることができる。
【0054】
本発明は第4に、アウトボード側ガード部材105を、ブレーキキャリパ111を内側から覆うキャリパガード部としての第1ガード部105c,105dと、これらの第1ガード部105c,105dの端部に設けた第2ガード部105eとを一体成形した部材としたことを特徴とする。
【0055】
第1ガード部105c,105dと第2ガード部105eとを一体成形したので、部品数を減らすことができ、アウトボード側ガード部材105のコストを抑えることができる。
【0056】
尚、本実施形態では、図7に示したように、アウトボード側ガード部材105の傾斜部105kの断面をほぼ直線状に延びるように形成したが、これに限らず、図5に示した円弧219に沿った円弧状に延びるように形成してもよい。
また、アウトボード側ガード部材105の先端部を車体内方斜め後方に延びるように形成したが、これに限らず、車体後方、又は車体内方に延びるように形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明のガード部材は、鞍乗り型不整地走行車両に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の鞍乗り型不整地走行車両の側面図である。
【図2】本発明に係る不整地走行車両の前サスペンションの要部正面図である。
【図3】図2の3矢視図である。
【図4】図3の4−4線断面図である。
【図5】本発明に係るインボード側ガード部材及びアウトボード側ガード部材の取付状態を示す平面図である。
【図6】本発明に係るアウトボード側ガード部材の取付状態を示す斜視図である。
【図7】図6の7−7線断面図である。
【図8】本発明に係るアウトボード側ガード部材の作用を示す作用図である。
【符号の説明】
【0059】
10…鞍乗り型不整地走行車両、17…車輪(前輪)、40…上アーム(フロントアッパアーム)、41…下アーム(フロントロアアーム)、88…ナックル、93…ドライブシャフト、102…インボード側ガード部材、102b…起立部、105…アウトボード側ガード部材、105c,105d…キャリパガード部(第1ガード部)、105e…先端部(第2ガード部)、110…ディスクブレーキ装置、111…ブレーキキャリパ、137…ブレーキディスク、154…ホイール、211…前アーム、212…後アーム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪のホイールの内側に、ブレーキディスク及びこのブレーキディスクを挟んで制動するブレーキキャリパからなるディスクブレーキ装置を配置し、左右の車輪をそれぞれ上アーム及び下アームで支持する独立懸架式とし、前記車輪に駆動力を伝えるドライブシャフトの前方で且つ車体中心側を保護するために前記下アームにインボード側ガード部材を取付け、前記ドライブシャフトの前方で且つ前記車輪側を保護するためにナックルにアウトボード側ガード部材を取付けた鞍乗り型不整地走行車両のガード部材であって、
前記アウトボード側ガード部材は、その先端部が車体後方に延びるように形成されたことを特徴とする鞍乗り型不整地走行車両のガード部材。
【請求項2】
前記アウトボード側ガード部材は、その先端部が車体内方に延びるように形成されたことを特徴とする請求項1記載の鞍乗り型不整地走行車両のガード部材。
【請求項3】
前記インボード側ガード部材は、前記下アームの前部及び前部下部を覆うとともに、前記アウトボード側ガード部材の先端部の可動範囲に近接させて配置した起立部を備えることを特徴とする請求項1記載の鞍乗り型不整地走行車両のガード部材。
【請求項4】
前記下アームは、車両前方側に設けた前アームと、この前アームの後方に設けた後アームとからなり、前記アウトボード側ガード部材の先端部は、前記車輪の最大転舵時に、平面視で前記前アームと重なることを特徴とする請求項1又は請求項3記載の鞍乗り型不整地走行車両のガード部材。
【請求項5】
前記アウトボード側ガード部材は、前記ブレーキキャリパを内側から覆うキャリパガード部と、このキャリパガード部の端部に設けた前記先端部とを一体成形した部材であることを特徴とする請求項1、請求項3又は請求項4記載の鞍乗り型不整地走行車両のガード部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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