鞍乗り型車両の前輪懸架装置
【課題】ストロークの初期においてはテレスコピックフォークのような前輪車軸の軌跡を有し、ストロークの後半においてはダブルウイッシュボーンのような前輪車軸の軌跡を有する鞍乗り車両の前輪懸架装置を提供することを課題とする。
【解決手段】ロアアーム40の先端は、前輪車軸63のストローク軌跡を補正する軌跡補正リンク機構50を介してフォーク部材23に連結される。軌跡補正リンク機構50は、リンク部材49とテンションロッド51とからなる。テンションロッド51は、車両後方下方へ延びるようにして車体フレーム12にスイング可能に軸支される。リンク部材49は、フォーク部材側連結部58と、ロアアーム側連結部57と、テンションロッド側連結部56を備える
【解決手段】ロアアーム40の先端は、前輪車軸63のストローク軌跡を補正する軌跡補正リンク機構50を介してフォーク部材23に連結される。軌跡補正リンク機構50は、リンク部材49とテンションロッド51とからなる。テンションロッド51は、車両後方下方へ延びるようにして車体フレーム12にスイング可能に軸支される。リンク部材49は、フォーク部材側連結部58と、ロアアーム側連結部57と、テンションロッド側連結部56を備える
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗り型車両の前輪懸架装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
鞍乗り型車両では、一般に、車体フレームに前輪懸架装置を介して前輪が上下ストローク可能に取付けられ、後輪懸架装置を介して後輪が上下ストローク可能に取付けられる。
【0003】
従来、アッパアームとロアアームとを主要素とする前輪懸架装置が知られている(例えば、特許文献1(図1)参照。)。
【0004】
特許文献1の図1に示されるように、車体フレームの前部にステアリング軸(6)(括弧付き数字は、特許文献1に記載された符号を示す。以下同様)が回転可能に取付けられ、このステアリング軸(6)からアッパアームが車両前方に延ばされ、このアッパアームの下位位置にて車体フレームからロアアーム(10)が車両前方に延ばされ、アッパアームの前部とロアアーム(10)の前部がフォーク部材(9)に連結され、このフォーク部材(9)に前輪(3)が取付けられている。
【0005】
上記構造は揺動式の前輪懸架装置と呼ばれ、この揺動式の前輪懸架装置では、アッパアームをステアリングリンクと兼用することができるため、前輪懸架装置のコストダウンを図ることができる。
【0006】
軸受(8)とアッパアームの交点と、ロアアーム(10)前部のピボット(11)とを通る線が、仮想キングピン軸(14)となり、この仮想キングピン軸(14)を中心にして前輪(3)が操舵される。
ところで、前輪(3)の上下ストロークに応じて、フォーク部材(9)が上下する。ピボット(11)はロアアーム(10)の支点(12)を中心にして円弧軌跡を描き、例えば、ピボット(11)はピボット(11’)へ移動する。
仮想キングピン軸(14)は、寝たり起きたりし易く、結果的にストロークの変化に伴って車両の特性変化が大きくなり易いという問題が発生する。
【0007】
この問題を解決することができる前輪懸架装置が知られている(例えば、特許文献2(図1)参照。)。
特許文献2の前輪懸架装置は、いわゆるダブルウイッシュボーン式懸架装置であり、サスペンションのストロークに伴うキングピン軸の傾斜の変化を抑制し、車体の特性変化を抑えることができる。
また、後述する実施例中、図14で比較のためにダブルウイッシュボーン式懸架装置における前輪車軸ストロークの軌跡Bを示すが、この軌跡Bのようにとることで、自動二輪車でフロントフォークが沈み込むノーズダイブ現象に良好に追従するという特性を有する。
【0008】
特許文献2の構造では、前輪車軸を上下方向に近い角度でストロークさせることがわかる。このようなストローク特性では、アンチノーズダイブ特性は高いものの、凹凸がある道を走る場合、前輪は路面からの突き上げを後方にいなすようにストロークし難いため、乗り心地がやや低いという課題がある。
また、一般的なテレスコピックフォークでの前輪車軸の軌跡を、後述の図14で、曲線Aに示す。テレスコピックフォークでは、前輪車軸は、特許文献2の前輪車軸よりも斜めに寝た角度でストロークすることがわかる。このような特性では、凹凸がある道を走る場合、前輪からの突き上げを後方にいなすように前輪車軸をストロークさせることができるため、乗り心地を良くすることができる。しかしながら、テレスコピックフォークではストロークが大きくなるとノーズダイブが大きくなる課題がある。
【0009】
そこで、ストロークの初期においてはテレスコピックフォークのような前輪車軸の軌跡を有し、ストロークの後半においてはダブルウイッシュボーンのような前輪車軸の軌跡を有する鞍乗り車両の前輪懸架装置が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第6402175号明細書
【特許文献2】欧州特許第1616780号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、ストロークの初期においてはテレスコピックフォークのような前輪車軸の軌跡を有し、ストロークの後半においてはダブルウイッシュボーンのような前輪車軸の軌跡を有する鞍乗り車両の前輪懸架装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に係る発明は、車体フレームの前部に設けられるステアリング軸と、このステアリング軸に取付けられハンドル操作に伴って前記ステアリング軸周りに回転するステアリング部材と、このステアリング部材に設けられ車幅方向に延びる上部ピボット軸から車両前方へ延ばされ前記上部ピボット軸を中心にして上下にスイングするアッパアームと、このアッパアームの前部に連結され下方へ延びて前輪を軸支するフォーク部材と、上記上部ピボット軸より下位位置にて前記車体フレームに設けられ車幅方向に延びる下部ピボット軸から前記アッパアームの下方を通るようにして車両前方へ延ばされ前記フォーク部材に連結され前記下部ピボット軸を中心にして上下にスイングするロアアームと、このロアアーム又は前記フォーク部材と前記車体フレームとに渡されるクッションユニットとを備える鞍乗り型車両の前輪懸架装置において、
前記ロアアームの先端は、前輪車軸のストローク軌跡を補正する軌跡補正リンク機構を介して前記フォーク部材に連結され、
この軌跡補正リンク機構は、前記ロアアームと前記フォーク部材とを連結するリンク部材と、このリンク部材を前記車体フレームに連結するテンションロッドとからなり、
このテンションロッドは、車両後方下方へ延びるようにして前記車体フレームにスイング可能に軸支されており、
前記リンク部材は、前記フォーク部材に連結されるフォーク部材側連結部と、前記ロアアームに連結されるロアアーム側連結部と、前記テンションロッドに連結されるテンションロッド側連結部を備えていることを特徴とする。
【0013】
請求項2に係る発明では、ロアアーム側連結部は、フォーク部材側連結部より車両後方に配置されることを特徴とする。
【0014】
請求項3に係る発明は、クッションユニットは、ロアアームに連結されることを特徴とする。
【0015】
請求項4に係る発明では、テンションロッドは、ステアリング軸の下位位置にて、車体フレームに軸支されていることを特徴とする。
【0016】
請求項5に係る発明では、フォーク部材は、前輪車軸の左端部から延びる左脚部と、前輪車軸の右端部から延びる右脚部と、これらの左右脚部を連結しアッパアームが連結される上側クロス部と、この上側クロス部より下位位置にて左右脚部を連結しロアアームが連結される下側クロス部とを有し、
左右脚部と上側クロス部と下側クロス部で囲われた空間に、テンションロッドの一部が進入できるようにしたことを特徴とする。
【0017】
請求項6に係る発明では、ロアアームは、平面視でU字状のU字アーム部と、車両側面視でU字アーム部の前部から前下方へ延び前記リンク部材が連結されるリンク取付部と、U字アーム部の前部から後上方へ延びクッションユニットが連結されるクッション取付部とを有し、
リンク部材は、テンションロッド側連結部とロアアーム側連結部との間が車両前方へ張り出るように湾曲する湾曲部とされたことを特徴とする。
【0018】
請求項7に係る発明では、車両前方へ面する湾曲部の前面に、湾曲部に沿ってリブが設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に係る発明では、ロアアームとアッパアームとを有し、アッパアームをステアリングリンクと兼用する形態の揺動式の前輪懸架装置において、ロアアームの先端は、前輪車軸のストローク軌跡を補正する軌跡補正リンク機構を介してフォーク部材に連結されている。
【0020】
フォーク部材が上方へストロークすると、フォーク部材のロアアームとの連結点は上方へ移動する。このとき、テンションロッドの下部は、前方上方に中心を有する円弧状の軌跡を描いて運動する。
このため、テンションロッドに連結されるリンク部材も、前方上方に中心を有する円弧に近い軌跡を描いて移動する。
フォーク部材のキングピン軸は寝たり、起きたりすることが殆ど無くなり、結果、ストロークの変化に伴う車両のトレール量変化を低減することが可能となる。
【0021】
さらに、前輪車軸も、前方上方に中心を有する円弧に近い軌跡を描いて移動するため、ストロークの初期は、前輪を車両後方へ動かすようにストロークする。前輪車軸は、上方へストロークする際に車両後方へもストロークするため、この車両後方へのストロークにより、路面の凹凸に起因するショック(衝撃力)を車両後方にいなすことができ、高い乗り心地性能が得られる。
ストロークの後半では、車両後方へのストロークは消失し、上方へのストロークが主体となる。上方へのストロークにより、アンチノーズダイブ特性が改善される。
【0022】
したがって、本発明によれば、ストロークの初期においてはテレスコピックフォークのような特性を有し、ストロークの後半においてはダブルウイッシュボーンのような特性を有する鞍乗り車両の前輪懸架装置が提供される。
【0023】
請求項2に係る発明では、ロアアーム側連結部は、フォーク部材側連結部より車両後方に配置される。
ロアアームの前部を直接フォーク部材に連結するよりも、リンク部材を介した分だけ、ロアアームを短くすることができ、前輪懸架装置のコンパクト化を図ることができる。
【0024】
請求項3に係る発明は、クッションユニットは、ロアアームに連結される。
ロアアームは、車体フレームに上下スイング可能に連結され、車両前方へ延びる部材である。ロアアームのスイング軌跡は上下に沿ったものとなり、クッションユニットの減衰性能を良好にすることができる。
【0025】
請求項4に係る発明では、テンションロッドは、ステアリング軸の下位位置にて、車体フレームに軸支されている。
ステアリング軸は車体フレームの先端に配置される。このようなステアリング軸の下位位置から車両後方へテンションロッドを延ばすことにより、テンションロッドを、所望の下部ピボット軸の軌跡を取るために、十分な長さとすることができる。
【0026】
請求項5に係る発明では、フォーク部材の左右脚部と上側クロス部と下側クロス部で囲われた空間に、テンションロッドの一部が進入できるようにした。
テンションロッドがフォーク部材と干渉する心配がないので、テンションロッドを車両前後方向に延ばすことができ、テンションロッドを更に長くすることができる。
【0027】
請求項6に係る発明では、リンク部材は、テンションロッド側連結部とロアアーム側連結部との間が車両前方へ張り出るように湾曲する湾曲部とされた。
フォーク部材のストロークに伴って、リンク部材は、ロアアーム側連結部を中心に揺動する。この揺動の際に、湾曲部がロアアームに被さる。言い換えると、相対的に湾曲部にロアアームが進入する。結果、ロアアームとリンク部材との干渉を回避しつつ、リンク部材の揺動量を増大することができる。
【0028】
請求項7に係る発明は、車両前方へ面する湾曲部の前面に、湾曲部に沿ってリブが設けられている。リブを設けることにより、湾曲部の剛性を容易に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る鞍乗り型車両前部の左側面図である。
【図2】図1の要部拡大図である。
【図3】図2の3−3線断面図である。
【図4】図2の4−4線断面図である。
【図5】ロアアームの左側面図である。
【図6】ロアアームの斜視図である。
【図7】リンク部材の左側面図である。
【図8】図7の8矢視図である。
【図9】鞍乗り型車両の正面図である。
【図10】図2の10−10線断面図である。
【図11】乗車1G状態における前輪懸架装置の模式図である。
【図12】クッションユニットが伸びきったとき(全伸時)における前輪懸架装置の模式図である。
【図13】クッションユニットが完全に縮んだとき(全屈時)における前輪懸架装置の模式図である。
【図14】前輪車軸の移動軌跡を示す図である。
【図15】鞍乗り型車両前部の平面図である。
【図16】図15の作用図である。
【図17】図2の変更例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例】
【0031】
本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、鞍乗り型車両10は、駆動源としての内燃機関11を支える車体フレーム12の前部13に、前輪懸架装置20を介して前輪21を上下揺動可能に且つ転舵可能に備える。
すなわち、操向ハンドル22に付与される転舵力により、フォーク部材23を旋回させ、前輪21を転舵させる。
【0032】
この鞍乗り型車両10では、内燃機関11を冷却するラジエータ14が内燃機関11と前輪21との間に配置される。また、フォーク部材23の上部前部にブラケット15が取付けられ、このブラケット15に前照灯16やメータ類17やフロントカウル18が取付けられ、フロントカウル18からシールド19が上方へ延ばされている。
【0033】
図2に示すように、車体フレーム12の前部13にステアリング軸25が立てられ、このステアリング軸25に筒状のステアリング部材26がステアリング軸25回りに回転可能に嵌められる。このステアリング部材26の前部上面26aに、操向ハンドル(図1、符号22)がボルト締結されるため、ステアリング部材26は操向ハンドルによりステアリング軸25回りに回転する。
【0034】
ステアリング部材26の後部に上部ピボット軸27が車幅方向(図では表裏方向)に延びる形態で設けられ、この上部ピボット軸27で上下スイング可能に軸支されるアッパアーム28が車両前方へ延びている。
【0035】
図3(図2の3−3線断面図)に示すように、アッパアーム28は、後部が上部ピボット軸27でステアリング部材26に連結され、前部が第2球ジョイント29で張出し部31に連結される。この張出し部31はフォーク部材23の上端に一体形成される。
なお、上部ピボット軸27は、車幅方向に離して配置される2個の軸受32、32でステアリング部材26に回転可能に軸支される。軸受32、32は、カラー39a〜39cにより車幅方向への移動が抑制される。
【0036】
さらに、上部ピボット軸27は、車幅方向の一側(この例では右側)に突出させる。この突出部33にカラー39d及び第4球ジョイント34を取付け、この第4球ジョイント34から補助ロッド35を車両前方に延ばし、この補助ロッド35の先端にテーパーカラー39e及び第3球ジョイント36を取付け、この第3球ジョイント36を張出し部31にボルト37で止める。
【0037】
図2に示すように、上部ピボット軸27より下位位置にて車体フレーム12に下部ピボット軸38が車幅方向(図では表裏方向)に延びる形態で設けられ、この下部ピボット軸38で上下スイング可能に軸支されるロアアーム40が車両前方へ延びている。
【0038】
図4(図2の4−4線断面図)に示すように、ロアアーム40の後部は、コ字状部41L、41R(Lは乗員を基準とした左、Rは右を示す添え字である。以下同様)とされ、例えば右のコ字状部41Rは、アンギュラ軸受42、42を介して車幅方向に延びる下部ピボット軸38で車体フレーム12に連結し、左のコ字状部41Lは、ニードル軸受43を介して車幅方向に延びる下部ピボット軸38で車体フレーム12に連結される。
【0039】
アンギュラ軸受42は、ラジアル荷重とスラスト荷重に耐える。ニードル軸受43はスラスト方向に移動を妨げない。
周囲温度(大気温度、エンジンによる加熱)の影響で、車体フレーム12とロアアーム40とに車幅方向の寸法に差が出ることがある。この差はニードル軸受43で吸収させることができる。
【0040】
ロアアーム40の形状及び構造を図5、図6に基づいて説明する。
図6に示すように、ロアアーム40は、車幅方向に延びて平面視でU字状を呈するU字アーム部44及びコ字状部41L、41Rを主要素とするアームである。
図5に示すように、車両側面視でU字アーム部44の前部45から前下方へリンク取付部46が延び、車両側面視でU字アーム部44の前部45から後上方へ延びクッション取付部47が延ばされる。
【0041】
図2に示すように、ロアアーム40は、軌跡補正リンク機構50を介してフォーク部材23に連結される。
軌跡補正リンク機構50は、ロアアーム40とフォーク部材23とを連結するリンク部材49と、このリンク部材49を車体フレーム12に連結するテンションロッド51とからなる。
【0042】
そして、リンク取付部46にリンク部材49が連結され、クッション取付部47にクッションユニット48が連結される。
また、テンションロッド51は、車両後方下方へ延びるようにして車体フレーム12の前部13に上下にスイング可能に軸支される。
【0043】
リンク部材49の形状及び構造を、図7、図8に基づいて説明する。
図7に示すように、リンク部材49は、車両前方へ張り出すように湾曲する湾曲部53と、この湾曲部53の前面54から前へ膨出する膨出部55とからなる部材であり、湾曲部53の上部にテンションロッド(図2、符号51)に連結されるテンションロッド側連結部56を備え、湾曲部53の下部にロアアーム(図2、符号40)に連結されるロアアーム側連結部57を備え、膨出部55にフォーク部材(図2、符号23)に連結されるフォーク部材側連結部58を備える。
【0044】
図8に示すように、湾曲部53の前面54には、湾曲部53に沿って縦向きにリブ59、59が設けられている。リブ59、59により剛性を高めることができ、リンク部材49の薄肉化、軽量化が可能となる。
【0045】
図2に示すように、リンク部材49は第1球ジョイント61によりフォーク部材23に連結され、アッパリンク28も第2球ジョイント29によりフォーク部材23に連結されているため、フォーク部材23の上下ストロークが可能となる。
【0046】
フォーク部材23の上下ストロークに伴って、リンク部材49は、ロアアーム側連結部57を中心に揺動する。この揺動の際に、湾曲部53がロアアーム40の前部に被さる。言い換えると、相対的に湾曲部53にロアアーム40の前部が進入する。結果、ロアアーム40とリンク部材49との干渉を回避しつつ、リンク部材49の揺動量を増大することができる。
【0047】
フォーク部材23の形状を図9に基づいて説明する。
図9に示すように、フォーク部材23は、前輪車軸63の左端部64Lから延びる左脚部65Lと、前輪車軸63の右端部64Rから延びる右脚部65Rと、これらの左右脚部65L、65Rを連結しアッパアーム28が連結される上側クロス部66と、この上側クロス部66より下位位置にて左右脚部65L、65Rを連結しロアアーム40が連結される下側クロス部67とを有する。
正面視で、左右脚部65L、65Rと上側クロス部66と下側クロス部67で囲われた空間(窓)68を通してテンションロッド51、51を目視することできる。
【0048】
図10(図2の10−10線断面図)に示すように、テンションロッド51は、後部がテンションロッド側連結部56に挿入した後部ボルト69により、リンク部材49に連結され、前部が軸受73、73を介して前部ボルト71により車体フレームの前部13に連結される。
なお、後部ボルト69は、軸受72、72を介してテンションロッド51後部に回転可能に支持される。リンク部材49は、カラー73で車幅方向の位置決めがなされる。軸受はダストシール74で防塵が図られる。
同様に、前部ボルト71は、軸受75、75を介してテンションロッド51前部に回転可能に支持される。テンションロッド51前部は、カラー76で車幅方向の位置決めがなされる。軸受はダストシール77で防塵が図られる。
【0049】
フォーク部材の上下ストロークに伴って、左右脚部65L、65Rは、テンションロッド51、51に接近することがある。この場合、想像線で示すように、テンションロッド51に一部被さるまで左右脚部65L、65Rの移動が可能となる。言い換えると、左右脚部65L、65Rで挟まれる空間68に、テンションロッド51、51の一部が進入可能となる。
テンションロッド51、51がフォーク部材23と干渉する心配がないので、テンションロッド51、51を車両前後方向に延ばすことができ、テンションロッド51、51を更に長くすることができる。
【0050】
以上の構成からなる鞍乗り型車両の前輪懸架装置20の作用を次に説明する。
図11は乗車1G状態(平坦な路面で乗員が乗車した状態)における前輪懸架装置20の模式図である。フォーク部材23の上下ストロークに伴って、前輪21が車体フレーム12に対して下がるときの作用を説明する。
【0051】
このときには、アッパアーム28が上部ピボット軸27を中心に、図反時計方向に回転する。並行してロアアーム40が下部ピボット軸38を中心に、図反時計方向に回転する。
ロアアーム側連結部57が下がるため、V字形状を呈するテンションロッド51とリンク部材49のなす角度θは、増加する。結果、第1球ジョイント61及び後部ボルト69は車両前方(図左)へ移動する。
【0052】
図12は前輪21が前輪21Aに示す位置まで下がった形態(クッションユニットの全伸時に相当)を示す。細線で示す乗車1G状態の前輪懸架装置20がクッションユニットの全伸時には、太線で示すようになる。移動後には要素の符号に添え字Aを付した。
フォーク部材23は車両前方斜め下へ、ほぼ平行に移動する。結果、前輪車軸63は63Aまで車両前方斜め下へ直線的に移動する。
【0053】
次に、図11においてフォーク部材23の上下ストロークに伴って、前輪21が車体フレーム12に対して上がるときの作用を説明する。
【0054】
このときには、アッパアーム28が上部ピボット軸27を中心に、図時計方向に回転する。ロアアーム40が下部ピボット軸38を中心に、図時計方向に回転する。ロアアーム側連結部57が上がるため、V字形状を呈するテンションロッド51とリンク部材49のなす角度θは、減少する。結果、第1球ジョイント61及び後部ボルト69は車両後方(図右)へ移動する。
【0055】
図13は前輪21が前輪21Bに示す位置まで上がった形態(クッションユニットの全屈時に相当)を示す。細線で示す乗車1G状態の前輪懸架装置20がクッションユニットの全屈時には、太線で示すようになる。移動後には要素の符号に添え字Bを付した。
フォーク部材23は、ほぼ真上に移動する。結果、前輪車軸63は63Bまで上方へほぼ直線的に移動する。
【0056】
前輪車軸63の移動軌跡を細かく計算して描いた移動軌跡のグラフを図14に示す。
図14は横軸が車両前後方向における水平移動量を示し、縦軸は上下方向のストローク形態を示し、細線Aはテレスコピックフォークでの前輪車軸の移動軌跡を示し、細線Bはダブルウイッシュボーン構造での前輪車軸の移動軌跡の一例を示す。
【0057】
太線は、本実施例による前輪車軸63の移動軌跡を示す。太線で示す前輪車軸63の移動軌跡は、乗車1G状態の横線より下の領域(ストロークの初期)では、細線A(テレスコピックフォークの移動軌跡)に近似し、乗車1G状態の横線より上の領域(ストロークの後半)では、細線B(ダブルウイッシュボーン構造の移動軌跡の一例)に近似する。
【0058】
よって、本実施例によれば、ストロークの初期においてはテレスコピックフォークのような特性を有し、ストロークの後半においては細線Bのような軌跡を持つダブルウイッシュボーンのような特性を有する鞍乗り車両の前輪懸架装置が提供される。
【0059】
次に、鞍乗り車両の前部の平面構造を図15に基づいて説明する。なお、図15では車体フレームは省略した。
図15に示すように、クッションユニット48に付属するクッションサブタンク48aは、上部ピボット軸27に平行になるように、車幅方向に横に延びている。そのため、クッションサブタンク48aをハンドル22の車両後方スペースに納めることができる。
その他の要素は、図3と共通であるため、説明を省略する。
【0060】
例えば、ハンドル22を左に切ると、図16に示すように、ステアリング軸25を中心にして、アッパフレーム28や補助ロッド35が一緒に旋回し、結果、前輪21が左に転舵される。
【0061】
図2の変更例を図17に基づいて説明する。
図2に示すクッションユニット48の下端は、テンションロッド側連結部56に、後部ボルト69で共締めするように変更する。結果、図15に示すように、クッション取付部47を省くことができる。その他は、図2と同一であるため、図2の符号を流用し、詳細な説明を省く。すなわち、クッションユニット48の下端は、図2に示すように、ロアアーム40に連結する形態の他、図17に示すように、リンク部材49に連結してもよい。
【0062】
なお、図2では、クッションユニット48は、クッション取付部47を介してロアアーム40に連結されている。
ロアアーム40は、車体フレーム12に上下スイング可能に連結され、車両前方へ延びる部材である。ロアアーム40のスイング軌跡は上下に沿ったものとなり、クッションユニット48の減衰性能を良好にすることができる。
【0063】
ただし、クッションユニット48を、車体フレーム12と他のリンク部材51又は49とに渡すことは差し支えない。この場合は、ロアアーム40の構造が単純になる。
【0064】
また、ロアアーム側連結部57は、フォーク部材側連結部58より車両後方に配置される。ロアアーム40の前部を直接フォーク部材23に連結するよりも、リンク部材49を介した分だけ、ロアアーム40を短くすることができる。
ただし、ロアアーム側連結部57を、フォーク部材側連結部58より車両前方に配置することは差し支えない。
【0065】
また、テンションロッド51は、ステアリング軸25の下位位置にて、車体フレーム12の前部13に軸支されている。
ステアリング軸25は車体フレーム12の先端に配置される。このようなステアリング軸25の下位位置から車両後方へテンションロッド51を延ばすことにより、テンションロッド51を十分に長くすることができる。
ただし、テンションロッド51は、車体フレーム12であれば、前部13とは異なる箇所に連結することは可能である。
【0066】
尚、鞍乗り型車両は、乗員がシートに跨って乗車するタイプの車両であり、本発明は二輪車の他、三輪車や四輪車にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の前輪懸架装置は、二輪車に好適である。
【符号の説明】
【0068】
10…鞍乗り型車両、12…車体フレーム、13…車体フレームの前部、20…前輪懸架装置、21…前輪、22…ハンドル(操向ハンドル)、23…フォーク部材、25…ステアリング軸、26…ステアリング部材、27…上部ピボット軸、28…アッパアーム、38…下部ピボット軸、40…ロアアーム、44…U字アーム部、45…U字アーム部の前部、46…リンク取付部、47…クッション取付部、48…クッションユニット、49…リンク部材、50…軌跡補正リンク機構、51…テンションロッド、53…湾曲部、54…湾曲部の前面、56…テンションロッド側連結部、57…ロアアーム側連結部、58…フォーク部材側連結部、59…リブ、63…前輪車軸、64L…前輪車軸の左端部、64R…前輪車軸の右端部、65L…フォーク部材の左脚部、65R…フォーク部材の右脚部、66…上側クロス部、67…下側クロス部、68…空間。
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗り型車両の前輪懸架装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
鞍乗り型車両では、一般に、車体フレームに前輪懸架装置を介して前輪が上下ストローク可能に取付けられ、後輪懸架装置を介して後輪が上下ストローク可能に取付けられる。
【0003】
従来、アッパアームとロアアームとを主要素とする前輪懸架装置が知られている(例えば、特許文献1(図1)参照。)。
【0004】
特許文献1の図1に示されるように、車体フレームの前部にステアリング軸(6)(括弧付き数字は、特許文献1に記載された符号を示す。以下同様)が回転可能に取付けられ、このステアリング軸(6)からアッパアームが車両前方に延ばされ、このアッパアームの下位位置にて車体フレームからロアアーム(10)が車両前方に延ばされ、アッパアームの前部とロアアーム(10)の前部がフォーク部材(9)に連結され、このフォーク部材(9)に前輪(3)が取付けられている。
【0005】
上記構造は揺動式の前輪懸架装置と呼ばれ、この揺動式の前輪懸架装置では、アッパアームをステアリングリンクと兼用することができるため、前輪懸架装置のコストダウンを図ることができる。
【0006】
軸受(8)とアッパアームの交点と、ロアアーム(10)前部のピボット(11)とを通る線が、仮想キングピン軸(14)となり、この仮想キングピン軸(14)を中心にして前輪(3)が操舵される。
ところで、前輪(3)の上下ストロークに応じて、フォーク部材(9)が上下する。ピボット(11)はロアアーム(10)の支点(12)を中心にして円弧軌跡を描き、例えば、ピボット(11)はピボット(11’)へ移動する。
仮想キングピン軸(14)は、寝たり起きたりし易く、結果的にストロークの変化に伴って車両の特性変化が大きくなり易いという問題が発生する。
【0007】
この問題を解決することができる前輪懸架装置が知られている(例えば、特許文献2(図1)参照。)。
特許文献2の前輪懸架装置は、いわゆるダブルウイッシュボーン式懸架装置であり、サスペンションのストロークに伴うキングピン軸の傾斜の変化を抑制し、車体の特性変化を抑えることができる。
また、後述する実施例中、図14で比較のためにダブルウイッシュボーン式懸架装置における前輪車軸ストロークの軌跡Bを示すが、この軌跡Bのようにとることで、自動二輪車でフロントフォークが沈み込むノーズダイブ現象に良好に追従するという特性を有する。
【0008】
特許文献2の構造では、前輪車軸を上下方向に近い角度でストロークさせることがわかる。このようなストローク特性では、アンチノーズダイブ特性は高いものの、凹凸がある道を走る場合、前輪は路面からの突き上げを後方にいなすようにストロークし難いため、乗り心地がやや低いという課題がある。
また、一般的なテレスコピックフォークでの前輪車軸の軌跡を、後述の図14で、曲線Aに示す。テレスコピックフォークでは、前輪車軸は、特許文献2の前輪車軸よりも斜めに寝た角度でストロークすることがわかる。このような特性では、凹凸がある道を走る場合、前輪からの突き上げを後方にいなすように前輪車軸をストロークさせることができるため、乗り心地を良くすることができる。しかしながら、テレスコピックフォークではストロークが大きくなるとノーズダイブが大きくなる課題がある。
【0009】
そこで、ストロークの初期においてはテレスコピックフォークのような前輪車軸の軌跡を有し、ストロークの後半においてはダブルウイッシュボーンのような前輪車軸の軌跡を有する鞍乗り車両の前輪懸架装置が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第6402175号明細書
【特許文献2】欧州特許第1616780号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、ストロークの初期においてはテレスコピックフォークのような前輪車軸の軌跡を有し、ストロークの後半においてはダブルウイッシュボーンのような前輪車軸の軌跡を有する鞍乗り車両の前輪懸架装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に係る発明は、車体フレームの前部に設けられるステアリング軸と、このステアリング軸に取付けられハンドル操作に伴って前記ステアリング軸周りに回転するステアリング部材と、このステアリング部材に設けられ車幅方向に延びる上部ピボット軸から車両前方へ延ばされ前記上部ピボット軸を中心にして上下にスイングするアッパアームと、このアッパアームの前部に連結され下方へ延びて前輪を軸支するフォーク部材と、上記上部ピボット軸より下位位置にて前記車体フレームに設けられ車幅方向に延びる下部ピボット軸から前記アッパアームの下方を通るようにして車両前方へ延ばされ前記フォーク部材に連結され前記下部ピボット軸を中心にして上下にスイングするロアアームと、このロアアーム又は前記フォーク部材と前記車体フレームとに渡されるクッションユニットとを備える鞍乗り型車両の前輪懸架装置において、
前記ロアアームの先端は、前輪車軸のストローク軌跡を補正する軌跡補正リンク機構を介して前記フォーク部材に連結され、
この軌跡補正リンク機構は、前記ロアアームと前記フォーク部材とを連結するリンク部材と、このリンク部材を前記車体フレームに連結するテンションロッドとからなり、
このテンションロッドは、車両後方下方へ延びるようにして前記車体フレームにスイング可能に軸支されており、
前記リンク部材は、前記フォーク部材に連結されるフォーク部材側連結部と、前記ロアアームに連結されるロアアーム側連結部と、前記テンションロッドに連結されるテンションロッド側連結部を備えていることを特徴とする。
【0013】
請求項2に係る発明では、ロアアーム側連結部は、フォーク部材側連結部より車両後方に配置されることを特徴とする。
【0014】
請求項3に係る発明は、クッションユニットは、ロアアームに連結されることを特徴とする。
【0015】
請求項4に係る発明では、テンションロッドは、ステアリング軸の下位位置にて、車体フレームに軸支されていることを特徴とする。
【0016】
請求項5に係る発明では、フォーク部材は、前輪車軸の左端部から延びる左脚部と、前輪車軸の右端部から延びる右脚部と、これらの左右脚部を連結しアッパアームが連結される上側クロス部と、この上側クロス部より下位位置にて左右脚部を連結しロアアームが連結される下側クロス部とを有し、
左右脚部と上側クロス部と下側クロス部で囲われた空間に、テンションロッドの一部が進入できるようにしたことを特徴とする。
【0017】
請求項6に係る発明では、ロアアームは、平面視でU字状のU字アーム部と、車両側面視でU字アーム部の前部から前下方へ延び前記リンク部材が連結されるリンク取付部と、U字アーム部の前部から後上方へ延びクッションユニットが連結されるクッション取付部とを有し、
リンク部材は、テンションロッド側連結部とロアアーム側連結部との間が車両前方へ張り出るように湾曲する湾曲部とされたことを特徴とする。
【0018】
請求項7に係る発明では、車両前方へ面する湾曲部の前面に、湾曲部に沿ってリブが設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に係る発明では、ロアアームとアッパアームとを有し、アッパアームをステアリングリンクと兼用する形態の揺動式の前輪懸架装置において、ロアアームの先端は、前輪車軸のストローク軌跡を補正する軌跡補正リンク機構を介してフォーク部材に連結されている。
【0020】
フォーク部材が上方へストロークすると、フォーク部材のロアアームとの連結点は上方へ移動する。このとき、テンションロッドの下部は、前方上方に中心を有する円弧状の軌跡を描いて運動する。
このため、テンションロッドに連結されるリンク部材も、前方上方に中心を有する円弧に近い軌跡を描いて移動する。
フォーク部材のキングピン軸は寝たり、起きたりすることが殆ど無くなり、結果、ストロークの変化に伴う車両のトレール量変化を低減することが可能となる。
【0021】
さらに、前輪車軸も、前方上方に中心を有する円弧に近い軌跡を描いて移動するため、ストロークの初期は、前輪を車両後方へ動かすようにストロークする。前輪車軸は、上方へストロークする際に車両後方へもストロークするため、この車両後方へのストロークにより、路面の凹凸に起因するショック(衝撃力)を車両後方にいなすことができ、高い乗り心地性能が得られる。
ストロークの後半では、車両後方へのストロークは消失し、上方へのストロークが主体となる。上方へのストロークにより、アンチノーズダイブ特性が改善される。
【0022】
したがって、本発明によれば、ストロークの初期においてはテレスコピックフォークのような特性を有し、ストロークの後半においてはダブルウイッシュボーンのような特性を有する鞍乗り車両の前輪懸架装置が提供される。
【0023】
請求項2に係る発明では、ロアアーム側連結部は、フォーク部材側連結部より車両後方に配置される。
ロアアームの前部を直接フォーク部材に連結するよりも、リンク部材を介した分だけ、ロアアームを短くすることができ、前輪懸架装置のコンパクト化を図ることができる。
【0024】
請求項3に係る発明は、クッションユニットは、ロアアームに連結される。
ロアアームは、車体フレームに上下スイング可能に連結され、車両前方へ延びる部材である。ロアアームのスイング軌跡は上下に沿ったものとなり、クッションユニットの減衰性能を良好にすることができる。
【0025】
請求項4に係る発明では、テンションロッドは、ステアリング軸の下位位置にて、車体フレームに軸支されている。
ステアリング軸は車体フレームの先端に配置される。このようなステアリング軸の下位位置から車両後方へテンションロッドを延ばすことにより、テンションロッドを、所望の下部ピボット軸の軌跡を取るために、十分な長さとすることができる。
【0026】
請求項5に係る発明では、フォーク部材の左右脚部と上側クロス部と下側クロス部で囲われた空間に、テンションロッドの一部が進入できるようにした。
テンションロッドがフォーク部材と干渉する心配がないので、テンションロッドを車両前後方向に延ばすことができ、テンションロッドを更に長くすることができる。
【0027】
請求項6に係る発明では、リンク部材は、テンションロッド側連結部とロアアーム側連結部との間が車両前方へ張り出るように湾曲する湾曲部とされた。
フォーク部材のストロークに伴って、リンク部材は、ロアアーム側連結部を中心に揺動する。この揺動の際に、湾曲部がロアアームに被さる。言い換えると、相対的に湾曲部にロアアームが進入する。結果、ロアアームとリンク部材との干渉を回避しつつ、リンク部材の揺動量を増大することができる。
【0028】
請求項7に係る発明は、車両前方へ面する湾曲部の前面に、湾曲部に沿ってリブが設けられている。リブを設けることにより、湾曲部の剛性を容易に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る鞍乗り型車両前部の左側面図である。
【図2】図1の要部拡大図である。
【図3】図2の3−3線断面図である。
【図4】図2の4−4線断面図である。
【図5】ロアアームの左側面図である。
【図6】ロアアームの斜視図である。
【図7】リンク部材の左側面図である。
【図8】図7の8矢視図である。
【図9】鞍乗り型車両の正面図である。
【図10】図2の10−10線断面図である。
【図11】乗車1G状態における前輪懸架装置の模式図である。
【図12】クッションユニットが伸びきったとき(全伸時)における前輪懸架装置の模式図である。
【図13】クッションユニットが完全に縮んだとき(全屈時)における前輪懸架装置の模式図である。
【図14】前輪車軸の移動軌跡を示す図である。
【図15】鞍乗り型車両前部の平面図である。
【図16】図15の作用図である。
【図17】図2の変更例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例】
【0031】
本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、鞍乗り型車両10は、駆動源としての内燃機関11を支える車体フレーム12の前部13に、前輪懸架装置20を介して前輪21を上下揺動可能に且つ転舵可能に備える。
すなわち、操向ハンドル22に付与される転舵力により、フォーク部材23を旋回させ、前輪21を転舵させる。
【0032】
この鞍乗り型車両10では、内燃機関11を冷却するラジエータ14が内燃機関11と前輪21との間に配置される。また、フォーク部材23の上部前部にブラケット15が取付けられ、このブラケット15に前照灯16やメータ類17やフロントカウル18が取付けられ、フロントカウル18からシールド19が上方へ延ばされている。
【0033】
図2に示すように、車体フレーム12の前部13にステアリング軸25が立てられ、このステアリング軸25に筒状のステアリング部材26がステアリング軸25回りに回転可能に嵌められる。このステアリング部材26の前部上面26aに、操向ハンドル(図1、符号22)がボルト締結されるため、ステアリング部材26は操向ハンドルによりステアリング軸25回りに回転する。
【0034】
ステアリング部材26の後部に上部ピボット軸27が車幅方向(図では表裏方向)に延びる形態で設けられ、この上部ピボット軸27で上下スイング可能に軸支されるアッパアーム28が車両前方へ延びている。
【0035】
図3(図2の3−3線断面図)に示すように、アッパアーム28は、後部が上部ピボット軸27でステアリング部材26に連結され、前部が第2球ジョイント29で張出し部31に連結される。この張出し部31はフォーク部材23の上端に一体形成される。
なお、上部ピボット軸27は、車幅方向に離して配置される2個の軸受32、32でステアリング部材26に回転可能に軸支される。軸受32、32は、カラー39a〜39cにより車幅方向への移動が抑制される。
【0036】
さらに、上部ピボット軸27は、車幅方向の一側(この例では右側)に突出させる。この突出部33にカラー39d及び第4球ジョイント34を取付け、この第4球ジョイント34から補助ロッド35を車両前方に延ばし、この補助ロッド35の先端にテーパーカラー39e及び第3球ジョイント36を取付け、この第3球ジョイント36を張出し部31にボルト37で止める。
【0037】
図2に示すように、上部ピボット軸27より下位位置にて車体フレーム12に下部ピボット軸38が車幅方向(図では表裏方向)に延びる形態で設けられ、この下部ピボット軸38で上下スイング可能に軸支されるロアアーム40が車両前方へ延びている。
【0038】
図4(図2の4−4線断面図)に示すように、ロアアーム40の後部は、コ字状部41L、41R(Lは乗員を基準とした左、Rは右を示す添え字である。以下同様)とされ、例えば右のコ字状部41Rは、アンギュラ軸受42、42を介して車幅方向に延びる下部ピボット軸38で車体フレーム12に連結し、左のコ字状部41Lは、ニードル軸受43を介して車幅方向に延びる下部ピボット軸38で車体フレーム12に連結される。
【0039】
アンギュラ軸受42は、ラジアル荷重とスラスト荷重に耐える。ニードル軸受43はスラスト方向に移動を妨げない。
周囲温度(大気温度、エンジンによる加熱)の影響で、車体フレーム12とロアアーム40とに車幅方向の寸法に差が出ることがある。この差はニードル軸受43で吸収させることができる。
【0040】
ロアアーム40の形状及び構造を図5、図6に基づいて説明する。
図6に示すように、ロアアーム40は、車幅方向に延びて平面視でU字状を呈するU字アーム部44及びコ字状部41L、41Rを主要素とするアームである。
図5に示すように、車両側面視でU字アーム部44の前部45から前下方へリンク取付部46が延び、車両側面視でU字アーム部44の前部45から後上方へ延びクッション取付部47が延ばされる。
【0041】
図2に示すように、ロアアーム40は、軌跡補正リンク機構50を介してフォーク部材23に連結される。
軌跡補正リンク機構50は、ロアアーム40とフォーク部材23とを連結するリンク部材49と、このリンク部材49を車体フレーム12に連結するテンションロッド51とからなる。
【0042】
そして、リンク取付部46にリンク部材49が連結され、クッション取付部47にクッションユニット48が連結される。
また、テンションロッド51は、車両後方下方へ延びるようにして車体フレーム12の前部13に上下にスイング可能に軸支される。
【0043】
リンク部材49の形状及び構造を、図7、図8に基づいて説明する。
図7に示すように、リンク部材49は、車両前方へ張り出すように湾曲する湾曲部53と、この湾曲部53の前面54から前へ膨出する膨出部55とからなる部材であり、湾曲部53の上部にテンションロッド(図2、符号51)に連結されるテンションロッド側連結部56を備え、湾曲部53の下部にロアアーム(図2、符号40)に連結されるロアアーム側連結部57を備え、膨出部55にフォーク部材(図2、符号23)に連結されるフォーク部材側連結部58を備える。
【0044】
図8に示すように、湾曲部53の前面54には、湾曲部53に沿って縦向きにリブ59、59が設けられている。リブ59、59により剛性を高めることができ、リンク部材49の薄肉化、軽量化が可能となる。
【0045】
図2に示すように、リンク部材49は第1球ジョイント61によりフォーク部材23に連結され、アッパリンク28も第2球ジョイント29によりフォーク部材23に連結されているため、フォーク部材23の上下ストロークが可能となる。
【0046】
フォーク部材23の上下ストロークに伴って、リンク部材49は、ロアアーム側連結部57を中心に揺動する。この揺動の際に、湾曲部53がロアアーム40の前部に被さる。言い換えると、相対的に湾曲部53にロアアーム40の前部が進入する。結果、ロアアーム40とリンク部材49との干渉を回避しつつ、リンク部材49の揺動量を増大することができる。
【0047】
フォーク部材23の形状を図9に基づいて説明する。
図9に示すように、フォーク部材23は、前輪車軸63の左端部64Lから延びる左脚部65Lと、前輪車軸63の右端部64Rから延びる右脚部65Rと、これらの左右脚部65L、65Rを連結しアッパアーム28が連結される上側クロス部66と、この上側クロス部66より下位位置にて左右脚部65L、65Rを連結しロアアーム40が連結される下側クロス部67とを有する。
正面視で、左右脚部65L、65Rと上側クロス部66と下側クロス部67で囲われた空間(窓)68を通してテンションロッド51、51を目視することできる。
【0048】
図10(図2の10−10線断面図)に示すように、テンションロッド51は、後部がテンションロッド側連結部56に挿入した後部ボルト69により、リンク部材49に連結され、前部が軸受73、73を介して前部ボルト71により車体フレームの前部13に連結される。
なお、後部ボルト69は、軸受72、72を介してテンションロッド51後部に回転可能に支持される。リンク部材49は、カラー73で車幅方向の位置決めがなされる。軸受はダストシール74で防塵が図られる。
同様に、前部ボルト71は、軸受75、75を介してテンションロッド51前部に回転可能に支持される。テンションロッド51前部は、カラー76で車幅方向の位置決めがなされる。軸受はダストシール77で防塵が図られる。
【0049】
フォーク部材の上下ストロークに伴って、左右脚部65L、65Rは、テンションロッド51、51に接近することがある。この場合、想像線で示すように、テンションロッド51に一部被さるまで左右脚部65L、65Rの移動が可能となる。言い換えると、左右脚部65L、65Rで挟まれる空間68に、テンションロッド51、51の一部が進入可能となる。
テンションロッド51、51がフォーク部材23と干渉する心配がないので、テンションロッド51、51を車両前後方向に延ばすことができ、テンションロッド51、51を更に長くすることができる。
【0050】
以上の構成からなる鞍乗り型車両の前輪懸架装置20の作用を次に説明する。
図11は乗車1G状態(平坦な路面で乗員が乗車した状態)における前輪懸架装置20の模式図である。フォーク部材23の上下ストロークに伴って、前輪21が車体フレーム12に対して下がるときの作用を説明する。
【0051】
このときには、アッパアーム28が上部ピボット軸27を中心に、図反時計方向に回転する。並行してロアアーム40が下部ピボット軸38を中心に、図反時計方向に回転する。
ロアアーム側連結部57が下がるため、V字形状を呈するテンションロッド51とリンク部材49のなす角度θは、増加する。結果、第1球ジョイント61及び後部ボルト69は車両前方(図左)へ移動する。
【0052】
図12は前輪21が前輪21Aに示す位置まで下がった形態(クッションユニットの全伸時に相当)を示す。細線で示す乗車1G状態の前輪懸架装置20がクッションユニットの全伸時には、太線で示すようになる。移動後には要素の符号に添え字Aを付した。
フォーク部材23は車両前方斜め下へ、ほぼ平行に移動する。結果、前輪車軸63は63Aまで車両前方斜め下へ直線的に移動する。
【0053】
次に、図11においてフォーク部材23の上下ストロークに伴って、前輪21が車体フレーム12に対して上がるときの作用を説明する。
【0054】
このときには、アッパアーム28が上部ピボット軸27を中心に、図時計方向に回転する。ロアアーム40が下部ピボット軸38を中心に、図時計方向に回転する。ロアアーム側連結部57が上がるため、V字形状を呈するテンションロッド51とリンク部材49のなす角度θは、減少する。結果、第1球ジョイント61及び後部ボルト69は車両後方(図右)へ移動する。
【0055】
図13は前輪21が前輪21Bに示す位置まで上がった形態(クッションユニットの全屈時に相当)を示す。細線で示す乗車1G状態の前輪懸架装置20がクッションユニットの全屈時には、太線で示すようになる。移動後には要素の符号に添え字Bを付した。
フォーク部材23は、ほぼ真上に移動する。結果、前輪車軸63は63Bまで上方へほぼ直線的に移動する。
【0056】
前輪車軸63の移動軌跡を細かく計算して描いた移動軌跡のグラフを図14に示す。
図14は横軸が車両前後方向における水平移動量を示し、縦軸は上下方向のストローク形態を示し、細線Aはテレスコピックフォークでの前輪車軸の移動軌跡を示し、細線Bはダブルウイッシュボーン構造での前輪車軸の移動軌跡の一例を示す。
【0057】
太線は、本実施例による前輪車軸63の移動軌跡を示す。太線で示す前輪車軸63の移動軌跡は、乗車1G状態の横線より下の領域(ストロークの初期)では、細線A(テレスコピックフォークの移動軌跡)に近似し、乗車1G状態の横線より上の領域(ストロークの後半)では、細線B(ダブルウイッシュボーン構造の移動軌跡の一例)に近似する。
【0058】
よって、本実施例によれば、ストロークの初期においてはテレスコピックフォークのような特性を有し、ストロークの後半においては細線Bのような軌跡を持つダブルウイッシュボーンのような特性を有する鞍乗り車両の前輪懸架装置が提供される。
【0059】
次に、鞍乗り車両の前部の平面構造を図15に基づいて説明する。なお、図15では車体フレームは省略した。
図15に示すように、クッションユニット48に付属するクッションサブタンク48aは、上部ピボット軸27に平行になるように、車幅方向に横に延びている。そのため、クッションサブタンク48aをハンドル22の車両後方スペースに納めることができる。
その他の要素は、図3と共通であるため、説明を省略する。
【0060】
例えば、ハンドル22を左に切ると、図16に示すように、ステアリング軸25を中心にして、アッパフレーム28や補助ロッド35が一緒に旋回し、結果、前輪21が左に転舵される。
【0061】
図2の変更例を図17に基づいて説明する。
図2に示すクッションユニット48の下端は、テンションロッド側連結部56に、後部ボルト69で共締めするように変更する。結果、図15に示すように、クッション取付部47を省くことができる。その他は、図2と同一であるため、図2の符号を流用し、詳細な説明を省く。すなわち、クッションユニット48の下端は、図2に示すように、ロアアーム40に連結する形態の他、図17に示すように、リンク部材49に連結してもよい。
【0062】
なお、図2では、クッションユニット48は、クッション取付部47を介してロアアーム40に連結されている。
ロアアーム40は、車体フレーム12に上下スイング可能に連結され、車両前方へ延びる部材である。ロアアーム40のスイング軌跡は上下に沿ったものとなり、クッションユニット48の減衰性能を良好にすることができる。
【0063】
ただし、クッションユニット48を、車体フレーム12と他のリンク部材51又は49とに渡すことは差し支えない。この場合は、ロアアーム40の構造が単純になる。
【0064】
また、ロアアーム側連結部57は、フォーク部材側連結部58より車両後方に配置される。ロアアーム40の前部を直接フォーク部材23に連結するよりも、リンク部材49を介した分だけ、ロアアーム40を短くすることができる。
ただし、ロアアーム側連結部57を、フォーク部材側連結部58より車両前方に配置することは差し支えない。
【0065】
また、テンションロッド51は、ステアリング軸25の下位位置にて、車体フレーム12の前部13に軸支されている。
ステアリング軸25は車体フレーム12の先端に配置される。このようなステアリング軸25の下位位置から車両後方へテンションロッド51を延ばすことにより、テンションロッド51を十分に長くすることができる。
ただし、テンションロッド51は、車体フレーム12であれば、前部13とは異なる箇所に連結することは可能である。
【0066】
尚、鞍乗り型車両は、乗員がシートに跨って乗車するタイプの車両であり、本発明は二輪車の他、三輪車や四輪車にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の前輪懸架装置は、二輪車に好適である。
【符号の説明】
【0068】
10…鞍乗り型車両、12…車体フレーム、13…車体フレームの前部、20…前輪懸架装置、21…前輪、22…ハンドル(操向ハンドル)、23…フォーク部材、25…ステアリング軸、26…ステアリング部材、27…上部ピボット軸、28…アッパアーム、38…下部ピボット軸、40…ロアアーム、44…U字アーム部、45…U字アーム部の前部、46…リンク取付部、47…クッション取付部、48…クッションユニット、49…リンク部材、50…軌跡補正リンク機構、51…テンションロッド、53…湾曲部、54…湾曲部の前面、56…テンションロッド側連結部、57…ロアアーム側連結部、58…フォーク部材側連結部、59…リブ、63…前輪車軸、64L…前輪車軸の左端部、64R…前輪車軸の右端部、65L…フォーク部材の左脚部、65R…フォーク部材の右脚部、66…上側クロス部、67…下側クロス部、68…空間。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレーム(12)の前部に設けられるステアリング軸(25)と、このステアリング軸(25)に取付けられハンドル(22)操作に伴って前記ステアリング軸(25)周りに回転するステアリング部材(26)と、このステアリング部材(26)に設けられ車幅方向に延びる上部ピボット軸(27)から車両前方へ延ばされ前記上部ピボット軸(27)を中心にして上下にスイングするアッパアーム(28)と、このアッパアーム(28)の前部に連結され下方へ延びて前輪(21)を軸支するフォーク部材(23)と、上記上部ピボット軸(27)より下位位置にて前記車体フレーム(12)に設けられ車幅方向に延びる下部ピボット軸(38)から前記アッパアーム(28)の下方を通るようにして車両前方へ延ばされ前記フォーク部材(23)に連結され前記下部ピボット軸(38)を中心にして上下にスイングするロアアーム(40)と、このロアアーム(40)又は前記フォーク部材(23)と前記車体フレーム(12)とに渡されるクッションユニット(48)とを備える鞍乗り型車両の前輪懸架装置(20)において、
前記ロアアーム(40)の先端は、前輪車軸(63)のストローク軌跡を補正する軌跡補正リンク機構(50)を介して前記フォーク部材(23)に連結され、
この軌跡補正リンク機構(50)は、前記ロアアーム(40)と前記フォーク部材(23)とを連結するリンク部材(49)と、このリンク部材(49)を前記車体フレーム(12)に連結するテンションロッド(51)とからなり、
このテンションロッド(51)は、車両後方下方へ延びるようにして前記車体フレーム(12)にスイング可能に軸支されており、
前記リンク部材(49)は、前記フォーク部材(23)に連結されるフォーク部材側連結部(58)と、前記ロアアーム(40)に連結されるロアアーム側連結部(57)と、前記テンションロッド(51)に連結されるテンションロッド側連結部(56)を備えていることを特徴とする鞍乗り型車両の前輪懸架装置。
【請求項2】
前記ロアアーム側連結部(57)は、前記フォーク部材側連結部(58)より車両後方に配置されることを特徴とする請求項1記載の鞍乗り型車両の前輪懸架装置。
【請求項3】
前記クッションユニット(48)は、前記ロアアーム(40)に連結されることを特徴とする請求項1記載の鞍乗り型車両の前輪懸架装置。
【請求項4】
前記テンションロッド(51)は、前記ステアリング軸(25)の下位位置にて、前記車体フレーム(12)に軸支されていることを特徴とする請求項1記載の鞍乗り型車両の前輪懸架装置。
【請求項5】
前記フォーク部材(23)は、前記前輪車軸(63)の左端部(63L)から延びる左脚部(64L)と、前記前輪車軸(63)の右端部(63R)から延びる右脚部(64R)と、これらの左右脚部(64L、64R)を連結し前記アッパアーム(28)が連結される上側クロス部(66)と、この上側クロス部(66)より下位位置にて前記左右脚部(64L、64R)を連結し前記ロアアーム(40)が連結される下側クロス部(67)とを有し、
前記左右脚部(64L、64R)と前記上側クロス部(66)と前記下側クロス部(67)で囲われた空間(68)に、前記テンションロッド(51)の一部が進入できるようにしたことを特徴とする請求項1記載の鞍乗り型車両の前輪懸架装置。
【請求項6】
前記ロアアーム(40)は、平面視でU字状のU字アーム部(44)と、車両側面視で前記U字アーム部(44)の前部(45)から前下方へ延び前記リンク部材(49)が連結されるリンク取付部(46)と、前記U字アーム部(44)の前部(45)から後上方へ延び前記クッションユニット(48)が連結されるクッション取付部(47)とを有し、
前記リンク部材(49)は、前記テンションロッド側連結部(56)と前記ロアアーム側連結部(57)との間が車両前方へ張り出るように湾曲する湾曲部(53)とされたことを特徴とする請求項1記載の鞍乗り型車両の前輪懸架装置。
【請求項7】
車両前方へ面する前記湾曲部(53)の前面(54)に、前記湾曲部(53)に沿ってリブ(59)が設けられていることを特徴とする請求項6記載の鞍乗り型車両の前輪懸架装置。
【請求項1】
車体フレーム(12)の前部に設けられるステアリング軸(25)と、このステアリング軸(25)に取付けられハンドル(22)操作に伴って前記ステアリング軸(25)周りに回転するステアリング部材(26)と、このステアリング部材(26)に設けられ車幅方向に延びる上部ピボット軸(27)から車両前方へ延ばされ前記上部ピボット軸(27)を中心にして上下にスイングするアッパアーム(28)と、このアッパアーム(28)の前部に連結され下方へ延びて前輪(21)を軸支するフォーク部材(23)と、上記上部ピボット軸(27)より下位位置にて前記車体フレーム(12)に設けられ車幅方向に延びる下部ピボット軸(38)から前記アッパアーム(28)の下方を通るようにして車両前方へ延ばされ前記フォーク部材(23)に連結され前記下部ピボット軸(38)を中心にして上下にスイングするロアアーム(40)と、このロアアーム(40)又は前記フォーク部材(23)と前記車体フレーム(12)とに渡されるクッションユニット(48)とを備える鞍乗り型車両の前輪懸架装置(20)において、
前記ロアアーム(40)の先端は、前輪車軸(63)のストローク軌跡を補正する軌跡補正リンク機構(50)を介して前記フォーク部材(23)に連結され、
この軌跡補正リンク機構(50)は、前記ロアアーム(40)と前記フォーク部材(23)とを連結するリンク部材(49)と、このリンク部材(49)を前記車体フレーム(12)に連結するテンションロッド(51)とからなり、
このテンションロッド(51)は、車両後方下方へ延びるようにして前記車体フレーム(12)にスイング可能に軸支されており、
前記リンク部材(49)は、前記フォーク部材(23)に連結されるフォーク部材側連結部(58)と、前記ロアアーム(40)に連結されるロアアーム側連結部(57)と、前記テンションロッド(51)に連結されるテンションロッド側連結部(56)を備えていることを特徴とする鞍乗り型車両の前輪懸架装置。
【請求項2】
前記ロアアーム側連結部(57)は、前記フォーク部材側連結部(58)より車両後方に配置されることを特徴とする請求項1記載の鞍乗り型車両の前輪懸架装置。
【請求項3】
前記クッションユニット(48)は、前記ロアアーム(40)に連結されることを特徴とする請求項1記載の鞍乗り型車両の前輪懸架装置。
【請求項4】
前記テンションロッド(51)は、前記ステアリング軸(25)の下位位置にて、前記車体フレーム(12)に軸支されていることを特徴とする請求項1記載の鞍乗り型車両の前輪懸架装置。
【請求項5】
前記フォーク部材(23)は、前記前輪車軸(63)の左端部(63L)から延びる左脚部(64L)と、前記前輪車軸(63)の右端部(63R)から延びる右脚部(64R)と、これらの左右脚部(64L、64R)を連結し前記アッパアーム(28)が連結される上側クロス部(66)と、この上側クロス部(66)より下位位置にて前記左右脚部(64L、64R)を連結し前記ロアアーム(40)が連結される下側クロス部(67)とを有し、
前記左右脚部(64L、64R)と前記上側クロス部(66)と前記下側クロス部(67)で囲われた空間(68)に、前記テンションロッド(51)の一部が進入できるようにしたことを特徴とする請求項1記載の鞍乗り型車両の前輪懸架装置。
【請求項6】
前記ロアアーム(40)は、平面視でU字状のU字アーム部(44)と、車両側面視で前記U字アーム部(44)の前部(45)から前下方へ延び前記リンク部材(49)が連結されるリンク取付部(46)と、前記U字アーム部(44)の前部(45)から後上方へ延び前記クッションユニット(48)が連結されるクッション取付部(47)とを有し、
前記リンク部材(49)は、前記テンションロッド側連結部(56)と前記ロアアーム側連結部(57)との間が車両前方へ張り出るように湾曲する湾曲部(53)とされたことを特徴とする請求項1記載の鞍乗り型車両の前輪懸架装置。
【請求項7】
車両前方へ面する前記湾曲部(53)の前面(54)に、前記湾曲部(53)に沿ってリブ(59)が設けられていることを特徴とする請求項6記載の鞍乗り型車両の前輪懸架装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−192897(P2012−192897A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60035(P2011−60035)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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