鞍乗り型車両の前輪懸架装置
【課題】支持剛性が大きく、挙動の予測が容易である前輪懸架装置を提供することを課題とする。
【解決手段】アッパアーム28の車幅方向左側又は右側に、平面視でアッパアーム28に略平行に補助ロッド35を延ばし、補助ロッド35の一端は第3球ジョイント36を介してフォーク部材23の上部に連結され、補助ロッド35の他端は第4球ジョイント34を介してステアリング部材26に連結する。
【効果】アッパアームの剛性は、第2球ジョイントや補助ロッドに影響されることなく自由に設定できる。アッパアームとフォーク部材とが、第2球ジョイント及び補助ロッドを介して連結され、挙動に変動を与える要素が含まれないため、挙動の予測が容易になる。
【解決手段】アッパアーム28の車幅方向左側又は右側に、平面視でアッパアーム28に略平行に補助ロッド35を延ばし、補助ロッド35の一端は第3球ジョイント36を介してフォーク部材23の上部に連結され、補助ロッド35の他端は第4球ジョイント34を介してステアリング部材26に連結する。
【効果】アッパアームの剛性は、第2球ジョイントや補助ロッドに影響されることなく自由に設定できる。アッパアームとフォーク部材とが、第2球ジョイント及び補助ロッドを介して連結され、挙動に変動を与える要素が含まれないため、挙動の予測が容易になる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗り型車両の前輪懸架装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
鞍乗り型車両では、一般に、車体フレームに前輪懸架装置を介して前輪が上下ストローク可能に取付けられ、後輪懸架装置を介して後輪が上下ストローク可能に取付けられる。
【0003】
従来、アッパアームとロアアームとを主要素とする前輪懸架装置が知られている(例えば、特許文献1(図1、図3)参照。)。
【0004】
特許文献1の図1に示されるように、車体フレームの前部にステアリング軸(6)(括弧付き数字は、特許文献1に記載された符号を示す。以下同様)が回転可能に取付けられ、このステアリング軸(6)からアッパアームが車両前方に延ばされ、このアッパアームの下位位置にて車体フレームからロアアーム(10)が車両前方に延ばされ、アッパアームの前部とロアアーム(10)の前部がフォーク部材(9)に連結され、このフォーク部材(9)に前輪(3)が取付けられる。
【0005】
上記構造は揺動式の前輪懸架装置と呼ばれ、この揺動式の前輪懸架装置では、アッパアームをステアリングリンクと兼用することができるため、リンク式前輪懸架装置のコストダウンを図ることができる。
【0006】
ここで、特許文献1の前輪懸架装置の自由度を検討する。節の数は5であり、対偶の数は5である。各対偶は、車体フレームとステアリングパイプは回転対偶のため自由度は1、ステアリングパイプとアッパアームは回転対偶のため自由度は1、アッパアームとフォーク部材上部は回転対偶であるため自由度は1、フォーク部材中央部とロアアームとは球対偶であるため自由度は3、ロアアームと車体フレームとは回転対偶であるため、自由度は1である。
【0007】
空間機構の自由度の式F=6(N−J−1)+Σfiにおいて、Nに節の数5、Jに対偶の数5、Σfiに自由度の和(1+1+1+3+1)=7を代入する。
F=6(5−5−1)+7=−6+7=1の計算により、機構の自由度Fは1となる。
前輪懸架装置では、サスペンションをストロークさせるための自由度1と、転舵をするための自由度1とからなる、自由度2が必要である。
しかし、特許文献1の前輪懸架装置では、上記したように自由度が1であるため、転舵をするための自由度1が不足している。
【0008】
対策として、特許文献1の図3に示されるように、アッパアーム(5)は、転舵の際に矢印(22)のように、先端が軸(21d)回りに捻れるようになっている。アッパアーム(5)は平板部の両端にフランジ(21b,21c)を一体形成した溝型鋼である。
溝型鋼は平板に比較して、曲げ剛性及び捻り剛性が大きい。このようなアッパアーム(5)は挙動の予測が難しい。
捻り易くするために薄型化を図ると、今度は前輪の支持剛性が不足するという問題が発生する。
【0009】
そこで、溝型形状のアッパアームに代わる、支持剛性が大きく、挙動の予測が容易である前輪懸架装置が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第6402175号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、支持剛性が大きく、挙動の予測が容易である前輪懸架装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に係る発明は、車体フレームの前部に回転可能に軸支されハンドル操作に伴って回転するステアリング部材と、このステアリング部材に上下スイング可能に取付けられ車両前方へ延びるアッパアームと、このアッパアームより下位位置にて前記車体フレームに上下スイング可能に取付けられ車両前方へ延びるロアアームと、前記ロアアームの先端に第1球ジョイントを介して連結され且つ前記アッパアームの先端に第2球ジョイントを介して連結され前輪を軸支するフォーク部材と、このフォーク部材又は前記ロアアームと前記車体フレームとに渡されるクッションユニットとを備える鞍乗り型車両の前輪懸架装置において、
前記アッパアームの車幅方向左側又は右側に、平面視で前記アッパアームに略平行に補助ロッドを延ばし、この補助ロッドの一端は第3球ジョイントを介して前記フォーク部材の上部に連結され、前記補助ロッドの他端は第4球ジョイントを介して前記ステアリング部材に連結されていることを特徴とする。
【0013】
請求項2に係る発明では、アッパアームは、車幅方向に延びる上部ピボット軸によりステアリング部材に軸支され、第4球ジョイントは、上部ピボット軸の一端に連結されていることを特徴とする。
【0014】
請求項3に係る発明は、車体フレームの前部に回転可能に軸支されハンドル操作に伴って回転するステアリング部材と、このステアリング部材に上下スイング可能に取付けられ車両前方へ延びるアッパアームと、このアッパアームより下位位置にて前記車体フレームに上下スイング可能に取付けられ車両前方へ延びるロアアームと、前記ロアアームの先端に第1球ジョイントを介して連結され且つ前記アッパアームの先端に連結され前輪を軸支するフォーク部材と、このフォーク部材又は前記ロアアームと前記車体フレームとに渡されるクッションユニットとを備える鞍乗り型車両の前輪懸架装置において、
前記アッパアームの先端と前記フォーク部材とは、車幅方向に延びる円筒軸受機構を介して連結されていることを特徴とする。
【0015】
請求項4に係る発明では、円筒軸受機構は、車幅方向への相対移動量を制限する左右のストッパを有し、これらのストッパは弾性体で構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明では、アッパアームの先端とフォーク部材とは第2球ジョイントで連結すると共に、ステアリグ部材とフォーク部材とを補助ロッドで連結する。
【0017】
従来の技術では、アッパアームの先端とフォーク部材とを自由度が1の回転対偶で連結した。加えて、アッパアームを捻ることで自由度1を確保した。アッパアームとフォーク部材とは、見かけ上自由度2で連結されている。
【0018】
球ジョイントはxyzの3方向の自由度を有する球対偶であるため、自由度は3である。xを車両長手方向、yを車幅方向とすれば、補助ロッドは、x方向の自由度を制限する役割を果たす。
請求項1では、第2球ジョイントの自由度3から、補助ロッドがその長手方向を軸に回動する自由度1を、差し引いてなる自由度2により、アッパアームとフォーク部材とが連結されている。
【0019】
アッパアームの剛性は、第2球ジョイントや補助ロッドに影響されることなく自由に設定できる。アッパアームとフォーク部材とが、第2球ジョイント及び補助ロッドを介して連結され、挙動に変動を与える要素が含まれないため、挙動の予測が容易になる。
従って、請求項1により、支持剛性が大きく、挙動の予測が容易である前輪懸架装置が提供される。
【0020】
請求項2に係る発明では、アッパアームは、車幅方向に延びる上部ピボット軸によりステアリング部材に軸支され、第4球ジョイントは、上部ピボット軸の一端に連結される。すなわち、アッパアームを軸支する部材である上部ピボット軸を延ばして、この上部ピボット軸に第4球ジョイントをも取付けるようにした。
ステアリング部材からブラケットを出し、このブラケットに第4球ジョイントを取付ける場合に比較して、本発明によれば、ブラケットを省くことができ、構成部品の点数を削減することができると共に前輪懸架装置の軽量化、コンパクト化を図ることができる。
【0021】
請求項3に係る発明では、アッパアームの先端とフォーク部材とは、車幅方向に延びる円筒軸受機構を介して連結される。円筒軸受機構は、回転と軸方向移動とが可能であるため、自由度は2となる。
すなわち、従来はアッパアームを捻って対応していたものを、本発明では、円筒軸受機構によりスライドさせることで対応させる。
【0022】
アッパアームの剛性は、円筒軸受機構に影響されることなく自由に設定できる。アッパアームとフォーク部材とが、円筒軸受機構を介して連結され、挙動に変動を与える要素が含まれないため、挙動の予測が容易になる。
従って、請求項3により、支持剛性が大きく、挙動の予測が容易である前輪懸架装置が提供される。
【0023】
請求項4に係る発明では、円筒軸受機構は、車幅方向への相対移動量を制限する左右のストッパを有し、これらのストッパは弾性体で構成される。
円筒軸受機構は回転と軸方向(車幅方向)移動を許容する。軸方向移動端に弾性体からなるストッパを配置することで、転舵時のショックの発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る鞍乗り型車両前部の左側面図である。
【図2】図1の要部拡大図である。
【図3】図2の3−3線断面図である。
【図4】図2の4−4線断面図である。
【図5】ロアアームの左側面図である。
【図6】ロアアームの斜視図である。
【図7】リンク部材の左側面図である。
【図8】図7の8矢視図である。
【図9】鞍乗り型車両の正面図である。
【図10】図2の10−10線断面図である。
【図11】乗車1G状態における前輪懸架装置の模式図である。
【図12】クッションユニットが伸びきったとき(全伸時)における前輪懸架装置の模式図である。
【図13】クッションユニットが完全に縮んだとき(全屈時)における前輪懸架装置の模式図である。
【図14】前輪車軸の移動軌跡を示す図である。
【図15】鞍乗り型車両前部の平面図である。
【図16】図15の作用図である。
【図17】図2の変更例を示す図である。
【図18】実施例1に係る節と対偶の配置を示す模式図である。
【図19】実施例2に係る鞍乗り型車両前部の平面図である。
【図20】実施例2に係る節と対偶の配置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例1】
【0026】
先ず、本発明の実施例1を図面に基づいて説明する。なお、本発明においては、前輪懸架装置における対偶と自由度の概念が重要となる。この対偶と自由度の具体的説明は、図18及び図3に基づいて行う。
図18に先立ち、鞍乗り型車両の前輪懸架装置の構造を図1〜図17に基づいて説明する。
【0027】
図1に示すように、鞍乗り型車両10は、駆動源としての内燃機関11を支える車体フレーム12の前部13に、前輪懸架装置20を介して前輪21を上下揺動可能に且つ転舵可能に備える。
すなわち、操向ハンドル22に付与される転舵力により、フォーク部材23を旋回させ、前輪21を転舵させる。
【0028】
この鞍乗り型車両10では、内燃機関11を冷却するラジエータ14が内燃機関11と前輪21との間に配置される。また、フォーク部材23の上部前部にブラケット15が取付けられ、このブラケット15に前照灯16やメータ類17やフロントカウル18が取付けられ、フロントカウル18からシールド19が上方へ延ばされている。
【0029】
図2に示すように、車体フレーム12の前部13にステアリング軸25が立てられ、このステアリング軸25に筒状のステアリング部材26がステアリング軸25回りに回転可能に嵌められる。このステアリング部材26の前部上面26aに、操向ハンドル(図1、符号22)がボルト締結されるため、ステアリング部材26は操向ハンドルによりステアリング軸25回りに回転する。
【0030】
ステアリング部材26の後部に上部ピボット軸27が車幅方向(図では表裏方向)に延びる形態で設けられ、この上部ピボット軸27で上下スイング可能に軸支されるアッパアーム28が車両前方へ延びている。
【0031】
図3(図2の3−3線断面図)に示すように、アッパアーム28は、後部が上部ピボット軸27でステアリング部材26に連結され、前部が第2球ジョイント29で張出し部31に連結される。この張出し部31はフォーク部材23の上端に一体形成される。
なお、上部ピボット軸27は、車幅方向に離して配置される2個の軸受32、32でステアリング部材26に回転可能に軸支される。軸受32、32は、カラー39a〜39cにより車幅方向への移動が抑制される。
【0032】
さらに、上部ピボット軸27は、車幅方向の一側(この例では右側)に突出させる。この突出部33にカラー39d及び第4球ジョイント34を取付け、この第4球ジョイント34から補助ロッド35を車両前方に延ばし、この補助ロッド35の先端にテーパーカラー39e及び第3球ジョイント36を取付け、この第3球ジョイント36を張出し部31にボルト37で止める。
【0033】
図2に示すように、上部ピボット軸27より下位位置にて車体フレーム12に下部ピボット軸38が車幅方向(図では表裏方向)に延びる形態で設けられ、この下部ピボット軸38で上下スイング可能に軸支されるロアアーム40が車両前方へ延びている。
【0034】
図4(図2の4−4線断面図)に示すように、ロアアーム40の後部は、コ字状部41L、41R(Lは乗員を基準とした左、Rは右を示す添え字である。以下同様)とされ、例えば右のコ字状部41Rは、アンギュラ軸受42、42を介して車幅方向に延びる下部ピボット軸38で車体フレーム12に連結し、左のコ字状部41Lは、ニードル軸受43を介して車幅方向に延びる下部ピボット軸38で車体フレーム12に連結される。
【0035】
アンギュラ軸受42は、ラジアル荷重とスラスト荷重に耐える。ニードル軸受43はスラスト方向に移動を妨げない。
周囲温度(大気温度、エンジンによる加熱)の影響で、車体フレーム12とロアアーム40とに車幅方向の寸法に差が出ることがある。この差はニードル軸受43で吸収させることができる。
【0036】
ロアアーム40の形状及び構造を図5、図6に基づいて説明する。
図6に示すように、ロアアーム40は、車幅方向に延びて平面視でU字状を呈するU字アーム部44及びコ字状部41L、41Rを主要素とするアームである。
図5に示すように、車両側面視でU字アーム部44の前部45から前下方へリンク取付部46が延び、車両側面視でU字アーム部44の前部45から後上方へ延びクッション取付部47が延ばされる。
【0037】
図2に示すように、ロアアーム40は、軌跡補正リンク機構50を介してフォーク部材23に連結される。
軌跡補正リンク機構50は、ロアアーム40とフォーク部材23とを連結するリンク部材49と、このリンク部材49を車体フレーム12に連結するテンションロッド51とからなる。
【0038】
そして、リンク取付部46にリンク部材49が連結され、クッション取付部47にクッションユニット48が連結される。
また、テンションロッド51は、車両後方下方へ延びるようにして車体フレーム12の前部13に上下にスイング可能に軸支される。
【0039】
リンク部材49の形状及び構造を、図7、図8に基づいて説明する。
図7に示すように、リンク部材49は、車両前方へ張り出すように湾曲する湾曲部53と、この湾曲部53の前面54から前へ膨出する膨出部55とからなる部材であり、湾曲部53の上部にテンションロッド(図2、符号51)に連結されるテンションロッド側連結部56を備え、湾曲部53の下部にロアアーム(図2、符号40)に連結されるロアアーム側連結部57を備え、膨出部55にフォーク部材(図2、符号23)に連結されるフォーク部材側連結部58を備える。
【0040】
図8に示すように、湾曲部53の前面54には、湾曲部53に沿って縦向きにリブ59、59が設けられている。リブ59、59により剛性を高めることができ、リンク部材49の薄肉化、軽量化が可能となる。
【0041】
図2に示すように、リンク部材49は第1球ジョイント61によりフォーク部材23に連結され、アッパリンク28も第2球ジョイント29によりフォーク部材23に連結されているため、フォーク部材23の上下ストロークが可能となる。
【0042】
フォーク部材23の上下ストロークに伴って、リンク部材49は、ロアアーム側連結部57を中心に揺動する。この揺動の際に、湾曲部53がロアアーム40の前部に被さる。言い換えると、相対的に湾曲部53にロアアーム40の前部が進入する。結果、ロアアーム40とリンク部材49との干渉を回避しつつ、リンク部材49の揺動量を増大することができる。
【0043】
フォーク部材23の形状を図9に基づいて説明する。
図9に示すように、フォーク部材23は、前輪車軸63の左端部64Lから延びる左脚部65Lと、前輪車軸63の右端部64Rから延びる右脚部65Rと、これらの左右脚部65L、65Rを連結しアッパアーム28が連結される上側クロス部66と、この上側クロス部66より下位位置にて左右脚部65L、65Rを連結しロアアーム40が連結される下側クロス部67とを有する。
正面視で、左右脚部65L、65Rと上側クロス部66と下側クロス部67で囲われた空間(窓)68を通してテンションロッド51、51を目視することできる。
【0044】
図10(図2の10−10線断面図)に示すように、テンションロッド51は、後部がテンションロッド側連結部56に挿入した後部ボルト69により、リンク部材49に連結され、前部が軸受73、73を介して前部ボルト71により車体フレームの前部13に連結される。
なお、後部ボルト69は、軸受72、72を介してテンションロッド51後部に回転可能に支持される。リンク部材49は、カラー73で車幅方向の位置決めがなされる。軸受はダストシール74で防塵が図られる。
同様に、前部ボルト71は、軸受75、75を介してテンションロッド51前部に回転可能に支持される。テンションロッド51前部は、カラー76で車幅方向の位置決めがなされる。軸受はダストシール77で防塵が図られる。
【0045】
フォーク部材の上下ストロークに伴って、左右脚部65L、65Rは、テンションロッド51、51に接近することがある。この場合、想像線で示すように、テンションロッド51に一部被さるまで左右脚部65L、65Rの移動が可能となる。言い換えると、左右脚部65L、65Rで挟まれる空間68に、テンションロッド51、51の一部が進入可能となる。
テンションロッド51、51がフォーク部材23と干渉する心配がないので、テンションロッド51、51を車両前後方向に延ばすことができ、テンションロッド51、51を更に長くすることができる。
【0046】
以上の構成からなる鞍乗り型車両の前輪懸架装置20の作用を次に説明する。
図11は乗車1G状態(平坦な路面で乗員が乗車した状態)における前輪懸架装置20の模式図である。フォーク部材23の上下ストロークに伴って、前輪21が車体フレーム12に対して下がるときの作用を説明する。
【0047】
このときには、アッパアーム28が上部ピボット軸27を中心に、図反時計方向に回転する。並行してロアアーム40が下部ピボット軸38を中心に、図反時計方向に回転する。
ロアアーム側連結部57が下がるため、V字形状を呈するテンションロッド51とリンク部材49のなす角度θは、増加する。結果、第1球ジョイント61及び後部ボルト69は車両前方(図左)へ移動する。
【0048】
図12は前輪21が前輪21Aに示す位置まで下がった形態(クッションユニットの全伸時に相当)を示す。細線で示す乗車1G状態の前輪懸架装置20がクッションユニットの全伸時には、太線で示すようになる。移動後には要素の符号に添え字Aを付した。
フォーク部材23は車両前方斜め下へ、ほぼ平行に移動する。結果、前輪車軸63は63Aまで車両前方斜め下へ直線的に移動する。
【0049】
次に、図11においてフォーク部材23の上下ストロークに伴って、前輪21が車体フレーム12に対して上がるときの作用を説明する。
【0050】
このときには、アッパアーム28が上部ピボット軸27を中心に、図時計方向に回転する。ロアアーム40が下部ピボット軸38を中心に、図時計方向に回転する。ロアアーム側連結部57が上がるため、V字形状を呈するテンションロッド51とリンク部材49のなす角度θは、減少する。結果、第1球ジョイント61及び後部ボルト69は車両後方(図右)へ移動する。
【0051】
図13は前輪21が前輪21Bに示す位置まで上がった形態(クッションユニットの全屈時に相当)を示す。細線で示す乗車1G状態の前輪懸架装置20がクッションユニットの全屈時には、太線で示すようになる。移動後には要素の符号に添え字Bを付した。
フォーク部材23は、ほぼ真上に移動する。結果、前輪車軸63は63Bまで上方へほぼ直線的に移動する。
【0052】
前輪車軸63の移動軌跡を細かく計算して描いた移動軌跡のグラフを図14に示す。
図14は横軸が車両前後方向における水平移動量を示し、縦軸は上下方向のストローク形態を示し、細線Aはテレスコピックフォークでの前輪車軸の移動軌跡を示し、細線Bはダブルウイッシュボーン構造での前輪車軸の移動軌跡の一例を示す。
【0053】
太線は、本実施例による前輪車軸63の移動軌跡を示す。太線で示す前輪車軸63の移動軌跡は、乗車1G状態の横線より下の領域(ストロークの初期)では、細線A(テレスコピックフォークの移動軌跡)に近似し、乗車1G状態の横線より上の領域(ストロークの後半)では、細線B(ダブルウイッシュボーン構造の移動軌跡の一例)に近似する。
【0054】
よって、本実施例によれば、ストロークの初期においてはテレスコピックフォークのような特性を有し、ストロークの後半においては細線Bのような軌跡を持つダブルウイッシュボーンのような特性を有する鞍乗り車両の前輪懸架装置が提供される。
【0055】
次に、鞍乗り車両の前部の平面構造を図15に基づいて説明する。なお、図15では車体フレームは省略した。
図15に示すように、クッションユニット48に付属するクッションサブタンク48aは、上部ピボット軸27に平行になるように、車幅方向に横に延びている。そのため、クッションサブタンク48aをハンドル22の車両後方スペースに納めることができる。
その他の要素は、図3と共通であるため、説明を省略する。
【0056】
例えば、ハンドル22を左に切ると、図16に示すように、ステアリング軸25を中心にして、アッパフレーム28や補助ロッド35が一緒に旋回し、結果、前輪21が左に転舵される。
【0057】
図2の変更例を図17に基づいて説明する。
図2に示すクッションユニット48の下端は、テンションロッド側連結部56に、後部ボルト69で共締めするように変更する。結果、図15に示すように、クッション取付部47を省くことができる。その他は、図2と同一であるため、図2の符号を流用し、詳細な説明を省く。すなわち、クッションユニット48の下端は、図2に示すように、ロアアーム40に連結する形態の他、図17に示すように、リンク部材49に連結してもよい。
【0058】
なお、図2では、クッションユニット48は、クッション取付部47を介してロアアーム40に連結されている。
ロアアーム40は、車体フレーム12に上下スイング可能に連結され、車両前方へ延びる部材である。ロアアーム40のスイング軌跡は上下に沿ったものとなり、クッションユニット48の減衰性能を良好にすることができる。
【0059】
ただし、クッションユニット48を、車体フレーム12と他のリンク部材51又は49とに渡すことは差し支えない。この場合は、ロアアーム40の構造が単純になる。
【0060】
また、ロアアーム側連結部57は、フォーク部材側連結部58より車両後方に配置される。ロアアーム40の前部を直接フォーク部材23に連結するよりも、リンク部材49を介した分だけ、ロアアーム40を短くすることができる。
ただし、ロアアーム側連結部57を、フォーク部材側連結部58より車両前方に配置することは差し支えない。
【0061】
また、テンションロッド51は、ステアリング軸25の下位位置にて、車体フレーム12の前部13に軸支されている。
ステアリング軸25は車体フレーム12の先端に配置される。このようなステアリング軸25の下位位置から車両後方へテンションロッド51を延ばすことにより、テンションロッド51を十分に長くすることができる。
ただし、テンションロッド51は、車体フレーム12であれば、前部13とは異なる箇所に連結することは可能である。
【0062】
次に、実施例1における対偶及び自由度について、詳しく説明する。
補助リンクは省略したが、図18に示すように、「節」と「対偶」とが配置される。
節の内訳を表1に示し、対偶の内訳を表2に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
空間機構においては、次に示す自由度の式Fが与えられる。
【0066】
【数1】
【0067】
Nは節の数、Jは対偶の数、Σfiは自由の合計である。表1からN=6、表2からJ=7、Σfi=15である。これらを自由度の式Fに代入する。F=6(6−7−1)+15=−12+15=3の計算により、空間機構の自由度Fは3となる。
【0068】
図3に示す第1球ジョイント61および第2球ジョイント29は3方向の自由度を有する球対偶であるため、フォーク部材23は、この第1球ジョイント61と第2球ジョイント29を軸として回動し得る。ここで、補助ロッド35を設けることにより、このフォーク部材23の第1球ジョイント61と第2球ジョイント29を軸とした回動を規制することが可能となる。
なお、空間機構の自由度Fは3となるが、この自由度のうち1つは、補助ロッド35が第3球ジョイント36と第4球ジョイント34を結ぶ軸に回動する自由度であるため前輪懸架装置の運動に影響を与えるものではない。
結果、前輪懸架装置は、空間機構の自由度Fのうち2を、揺動と転舵に充てることができるため、前輪懸架装置としての円滑な揺動と転舵が確保される。
【0069】
アッパアーム28の剛性は、第2球ジョイント29や補助ロッド35に影響されることなく自由に設定できる。アッパアーム28とフォーク部材23とが、第2球ジョイント29及び補助ロッド35を介して連結され、挙動に変動を与える要素が含まれないため、挙動の予測が容易になる。
従って、実施例1により、支持剛性が大きく、挙動の予測が容易である前輪懸架装置が提供される。
【実施例2】
【0070】
次に、本発明の実施例2を図面に基づいて説明する。
【0071】
図19は図15の別実施例図であり、図15の補助ロッド35、球ジョイント34、36を削除し、次に述べる要素に置き換えた。
図19に示すように、アッパアーム28の先端とフォーク部材23とは、車幅方向に延びる円筒軸受機構80を介して連結される。
【0072】
円筒軸受機構80は、アッパアーム28の先端に車幅方向に延びるように設けた穴81と、この穴81に貫通させるボルト82と、このボルト82の両端を支えつつ車両後方へ延びてフォーク部材23にボルト83で固定される支持プレート84、84とからなる。穴81にニードル軸受又はメタルを嵌め、ニードル軸受又はメタルにボルト82を通すことが、より好ましい。また、ボルト82はロッドであってもよい。
アッパアーム28の先端は、スペースSの範囲で、フォーク部材23に対して移動しうる。
【0073】
好ましくは、このスペースS、Sに車幅方向への相対移動量を制限する左右のストッパ85、85を介在させる。これらのストッパ85、85は、ゴム筒、コイルスプリング、ばね座金などの弾性体とする。転舵時のショックの発生を抑えることができる。
その他の要素は図15と同一であるため、符号を流用して、説明は省略する。
【0074】
次に、実施例2における対偶及び自由度について、詳しく説明する。
図20に示すように、「節」と「対偶」とが配置される。
節の内訳を表3に示し、対偶の内訳を表4に示す。
【0075】
【表3】
【0076】
【表4】
【0077】
円筒軸受機構80は、回転と軸方向移動とを許容するため、自由度は2となる。
表3からN=5、表4からJ=5、Σfi=8である。これらを自由度の式Fに代入する。F=6(5−5−1)+8=2の計算により、空間機構の自由度Fは2となる。
【0078】
図19において、アッパアーム28の剛性は、円筒軸受機構80に影響されることなく自由に設定できる。アッパアーム28とフォーク部材23とが、円筒軸受機構80を介して連結され、挙動に変動を与える要素が含まれないため、挙動の予測が容易になる。
【0079】
尚、鞍乗り型車両は、乗員がシートに跨って乗車するタイプの車両であり、本発明は二輪車の他、三輪車や四輪車にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の前輪懸架装置は、二輪車に好適である。
【符号の説明】
【0081】
10…鞍乗り型車両、12…車体フレーム、13…車体フレームの前部、20…前輪懸架装置、21…前輪、22…ハンドル(操向ハンドル)、23…フォーク部材、25…ステアリング軸、26…ステアリング部材、27…上部ピボット軸、28…アッパアーム、29…第2球ジョイント、34…第4球ジョイント、35…補助ロッド、36…第3球ジョイント、48…クッションユニット、61…第1球ジョイント、80…円筒軸受機構、85…ストッパ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗り型車両の前輪懸架装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
鞍乗り型車両では、一般に、車体フレームに前輪懸架装置を介して前輪が上下ストローク可能に取付けられ、後輪懸架装置を介して後輪が上下ストローク可能に取付けられる。
【0003】
従来、アッパアームとロアアームとを主要素とする前輪懸架装置が知られている(例えば、特許文献1(図1、図3)参照。)。
【0004】
特許文献1の図1に示されるように、車体フレームの前部にステアリング軸(6)(括弧付き数字は、特許文献1に記載された符号を示す。以下同様)が回転可能に取付けられ、このステアリング軸(6)からアッパアームが車両前方に延ばされ、このアッパアームの下位位置にて車体フレームからロアアーム(10)が車両前方に延ばされ、アッパアームの前部とロアアーム(10)の前部がフォーク部材(9)に連結され、このフォーク部材(9)に前輪(3)が取付けられる。
【0005】
上記構造は揺動式の前輪懸架装置と呼ばれ、この揺動式の前輪懸架装置では、アッパアームをステアリングリンクと兼用することができるため、リンク式前輪懸架装置のコストダウンを図ることができる。
【0006】
ここで、特許文献1の前輪懸架装置の自由度を検討する。節の数は5であり、対偶の数は5である。各対偶は、車体フレームとステアリングパイプは回転対偶のため自由度は1、ステアリングパイプとアッパアームは回転対偶のため自由度は1、アッパアームとフォーク部材上部は回転対偶であるため自由度は1、フォーク部材中央部とロアアームとは球対偶であるため自由度は3、ロアアームと車体フレームとは回転対偶であるため、自由度は1である。
【0007】
空間機構の自由度の式F=6(N−J−1)+Σfiにおいて、Nに節の数5、Jに対偶の数5、Σfiに自由度の和(1+1+1+3+1)=7を代入する。
F=6(5−5−1)+7=−6+7=1の計算により、機構の自由度Fは1となる。
前輪懸架装置では、サスペンションをストロークさせるための自由度1と、転舵をするための自由度1とからなる、自由度2が必要である。
しかし、特許文献1の前輪懸架装置では、上記したように自由度が1であるため、転舵をするための自由度1が不足している。
【0008】
対策として、特許文献1の図3に示されるように、アッパアーム(5)は、転舵の際に矢印(22)のように、先端が軸(21d)回りに捻れるようになっている。アッパアーム(5)は平板部の両端にフランジ(21b,21c)を一体形成した溝型鋼である。
溝型鋼は平板に比較して、曲げ剛性及び捻り剛性が大きい。このようなアッパアーム(5)は挙動の予測が難しい。
捻り易くするために薄型化を図ると、今度は前輪の支持剛性が不足するという問題が発生する。
【0009】
そこで、溝型形状のアッパアームに代わる、支持剛性が大きく、挙動の予測が容易である前輪懸架装置が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第6402175号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、支持剛性が大きく、挙動の予測が容易である前輪懸架装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に係る発明は、車体フレームの前部に回転可能に軸支されハンドル操作に伴って回転するステアリング部材と、このステアリング部材に上下スイング可能に取付けられ車両前方へ延びるアッパアームと、このアッパアームより下位位置にて前記車体フレームに上下スイング可能に取付けられ車両前方へ延びるロアアームと、前記ロアアームの先端に第1球ジョイントを介して連結され且つ前記アッパアームの先端に第2球ジョイントを介して連結され前輪を軸支するフォーク部材と、このフォーク部材又は前記ロアアームと前記車体フレームとに渡されるクッションユニットとを備える鞍乗り型車両の前輪懸架装置において、
前記アッパアームの車幅方向左側又は右側に、平面視で前記アッパアームに略平行に補助ロッドを延ばし、この補助ロッドの一端は第3球ジョイントを介して前記フォーク部材の上部に連結され、前記補助ロッドの他端は第4球ジョイントを介して前記ステアリング部材に連結されていることを特徴とする。
【0013】
請求項2に係る発明では、アッパアームは、車幅方向に延びる上部ピボット軸によりステアリング部材に軸支され、第4球ジョイントは、上部ピボット軸の一端に連結されていることを特徴とする。
【0014】
請求項3に係る発明は、車体フレームの前部に回転可能に軸支されハンドル操作に伴って回転するステアリング部材と、このステアリング部材に上下スイング可能に取付けられ車両前方へ延びるアッパアームと、このアッパアームより下位位置にて前記車体フレームに上下スイング可能に取付けられ車両前方へ延びるロアアームと、前記ロアアームの先端に第1球ジョイントを介して連結され且つ前記アッパアームの先端に連結され前輪を軸支するフォーク部材と、このフォーク部材又は前記ロアアームと前記車体フレームとに渡されるクッションユニットとを備える鞍乗り型車両の前輪懸架装置において、
前記アッパアームの先端と前記フォーク部材とは、車幅方向に延びる円筒軸受機構を介して連結されていることを特徴とする。
【0015】
請求項4に係る発明では、円筒軸受機構は、車幅方向への相対移動量を制限する左右のストッパを有し、これらのストッパは弾性体で構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明では、アッパアームの先端とフォーク部材とは第2球ジョイントで連結すると共に、ステアリグ部材とフォーク部材とを補助ロッドで連結する。
【0017】
従来の技術では、アッパアームの先端とフォーク部材とを自由度が1の回転対偶で連結した。加えて、アッパアームを捻ることで自由度1を確保した。アッパアームとフォーク部材とは、見かけ上自由度2で連結されている。
【0018】
球ジョイントはxyzの3方向の自由度を有する球対偶であるため、自由度は3である。xを車両長手方向、yを車幅方向とすれば、補助ロッドは、x方向の自由度を制限する役割を果たす。
請求項1では、第2球ジョイントの自由度3から、補助ロッドがその長手方向を軸に回動する自由度1を、差し引いてなる自由度2により、アッパアームとフォーク部材とが連結されている。
【0019】
アッパアームの剛性は、第2球ジョイントや補助ロッドに影響されることなく自由に設定できる。アッパアームとフォーク部材とが、第2球ジョイント及び補助ロッドを介して連結され、挙動に変動を与える要素が含まれないため、挙動の予測が容易になる。
従って、請求項1により、支持剛性が大きく、挙動の予測が容易である前輪懸架装置が提供される。
【0020】
請求項2に係る発明では、アッパアームは、車幅方向に延びる上部ピボット軸によりステアリング部材に軸支され、第4球ジョイントは、上部ピボット軸の一端に連結される。すなわち、アッパアームを軸支する部材である上部ピボット軸を延ばして、この上部ピボット軸に第4球ジョイントをも取付けるようにした。
ステアリング部材からブラケットを出し、このブラケットに第4球ジョイントを取付ける場合に比較して、本発明によれば、ブラケットを省くことができ、構成部品の点数を削減することができると共に前輪懸架装置の軽量化、コンパクト化を図ることができる。
【0021】
請求項3に係る発明では、アッパアームの先端とフォーク部材とは、車幅方向に延びる円筒軸受機構を介して連結される。円筒軸受機構は、回転と軸方向移動とが可能であるため、自由度は2となる。
すなわち、従来はアッパアームを捻って対応していたものを、本発明では、円筒軸受機構によりスライドさせることで対応させる。
【0022】
アッパアームの剛性は、円筒軸受機構に影響されることなく自由に設定できる。アッパアームとフォーク部材とが、円筒軸受機構を介して連結され、挙動に変動を与える要素が含まれないため、挙動の予測が容易になる。
従って、請求項3により、支持剛性が大きく、挙動の予測が容易である前輪懸架装置が提供される。
【0023】
請求項4に係る発明では、円筒軸受機構は、車幅方向への相対移動量を制限する左右のストッパを有し、これらのストッパは弾性体で構成される。
円筒軸受機構は回転と軸方向(車幅方向)移動を許容する。軸方向移動端に弾性体からなるストッパを配置することで、転舵時のショックの発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る鞍乗り型車両前部の左側面図である。
【図2】図1の要部拡大図である。
【図3】図2の3−3線断面図である。
【図4】図2の4−4線断面図である。
【図5】ロアアームの左側面図である。
【図6】ロアアームの斜視図である。
【図7】リンク部材の左側面図である。
【図8】図7の8矢視図である。
【図9】鞍乗り型車両の正面図である。
【図10】図2の10−10線断面図である。
【図11】乗車1G状態における前輪懸架装置の模式図である。
【図12】クッションユニットが伸びきったとき(全伸時)における前輪懸架装置の模式図である。
【図13】クッションユニットが完全に縮んだとき(全屈時)における前輪懸架装置の模式図である。
【図14】前輪車軸の移動軌跡を示す図である。
【図15】鞍乗り型車両前部の平面図である。
【図16】図15の作用図である。
【図17】図2の変更例を示す図である。
【図18】実施例1に係る節と対偶の配置を示す模式図である。
【図19】実施例2に係る鞍乗り型車両前部の平面図である。
【図20】実施例2に係る節と対偶の配置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例1】
【0026】
先ず、本発明の実施例1を図面に基づいて説明する。なお、本発明においては、前輪懸架装置における対偶と自由度の概念が重要となる。この対偶と自由度の具体的説明は、図18及び図3に基づいて行う。
図18に先立ち、鞍乗り型車両の前輪懸架装置の構造を図1〜図17に基づいて説明する。
【0027】
図1に示すように、鞍乗り型車両10は、駆動源としての内燃機関11を支える車体フレーム12の前部13に、前輪懸架装置20を介して前輪21を上下揺動可能に且つ転舵可能に備える。
すなわち、操向ハンドル22に付与される転舵力により、フォーク部材23を旋回させ、前輪21を転舵させる。
【0028】
この鞍乗り型車両10では、内燃機関11を冷却するラジエータ14が内燃機関11と前輪21との間に配置される。また、フォーク部材23の上部前部にブラケット15が取付けられ、このブラケット15に前照灯16やメータ類17やフロントカウル18が取付けられ、フロントカウル18からシールド19が上方へ延ばされている。
【0029】
図2に示すように、車体フレーム12の前部13にステアリング軸25が立てられ、このステアリング軸25に筒状のステアリング部材26がステアリング軸25回りに回転可能に嵌められる。このステアリング部材26の前部上面26aに、操向ハンドル(図1、符号22)がボルト締結されるため、ステアリング部材26は操向ハンドルによりステアリング軸25回りに回転する。
【0030】
ステアリング部材26の後部に上部ピボット軸27が車幅方向(図では表裏方向)に延びる形態で設けられ、この上部ピボット軸27で上下スイング可能に軸支されるアッパアーム28が車両前方へ延びている。
【0031】
図3(図2の3−3線断面図)に示すように、アッパアーム28は、後部が上部ピボット軸27でステアリング部材26に連結され、前部が第2球ジョイント29で張出し部31に連結される。この張出し部31はフォーク部材23の上端に一体形成される。
なお、上部ピボット軸27は、車幅方向に離して配置される2個の軸受32、32でステアリング部材26に回転可能に軸支される。軸受32、32は、カラー39a〜39cにより車幅方向への移動が抑制される。
【0032】
さらに、上部ピボット軸27は、車幅方向の一側(この例では右側)に突出させる。この突出部33にカラー39d及び第4球ジョイント34を取付け、この第4球ジョイント34から補助ロッド35を車両前方に延ばし、この補助ロッド35の先端にテーパーカラー39e及び第3球ジョイント36を取付け、この第3球ジョイント36を張出し部31にボルト37で止める。
【0033】
図2に示すように、上部ピボット軸27より下位位置にて車体フレーム12に下部ピボット軸38が車幅方向(図では表裏方向)に延びる形態で設けられ、この下部ピボット軸38で上下スイング可能に軸支されるロアアーム40が車両前方へ延びている。
【0034】
図4(図2の4−4線断面図)に示すように、ロアアーム40の後部は、コ字状部41L、41R(Lは乗員を基準とした左、Rは右を示す添え字である。以下同様)とされ、例えば右のコ字状部41Rは、アンギュラ軸受42、42を介して車幅方向に延びる下部ピボット軸38で車体フレーム12に連結し、左のコ字状部41Lは、ニードル軸受43を介して車幅方向に延びる下部ピボット軸38で車体フレーム12に連結される。
【0035】
アンギュラ軸受42は、ラジアル荷重とスラスト荷重に耐える。ニードル軸受43はスラスト方向に移動を妨げない。
周囲温度(大気温度、エンジンによる加熱)の影響で、車体フレーム12とロアアーム40とに車幅方向の寸法に差が出ることがある。この差はニードル軸受43で吸収させることができる。
【0036】
ロアアーム40の形状及び構造を図5、図6に基づいて説明する。
図6に示すように、ロアアーム40は、車幅方向に延びて平面視でU字状を呈するU字アーム部44及びコ字状部41L、41Rを主要素とするアームである。
図5に示すように、車両側面視でU字アーム部44の前部45から前下方へリンク取付部46が延び、車両側面視でU字アーム部44の前部45から後上方へ延びクッション取付部47が延ばされる。
【0037】
図2に示すように、ロアアーム40は、軌跡補正リンク機構50を介してフォーク部材23に連結される。
軌跡補正リンク機構50は、ロアアーム40とフォーク部材23とを連結するリンク部材49と、このリンク部材49を車体フレーム12に連結するテンションロッド51とからなる。
【0038】
そして、リンク取付部46にリンク部材49が連結され、クッション取付部47にクッションユニット48が連結される。
また、テンションロッド51は、車両後方下方へ延びるようにして車体フレーム12の前部13に上下にスイング可能に軸支される。
【0039】
リンク部材49の形状及び構造を、図7、図8に基づいて説明する。
図7に示すように、リンク部材49は、車両前方へ張り出すように湾曲する湾曲部53と、この湾曲部53の前面54から前へ膨出する膨出部55とからなる部材であり、湾曲部53の上部にテンションロッド(図2、符号51)に連結されるテンションロッド側連結部56を備え、湾曲部53の下部にロアアーム(図2、符号40)に連結されるロアアーム側連結部57を備え、膨出部55にフォーク部材(図2、符号23)に連結されるフォーク部材側連結部58を備える。
【0040】
図8に示すように、湾曲部53の前面54には、湾曲部53に沿って縦向きにリブ59、59が設けられている。リブ59、59により剛性を高めることができ、リンク部材49の薄肉化、軽量化が可能となる。
【0041】
図2に示すように、リンク部材49は第1球ジョイント61によりフォーク部材23に連結され、アッパリンク28も第2球ジョイント29によりフォーク部材23に連結されているため、フォーク部材23の上下ストロークが可能となる。
【0042】
フォーク部材23の上下ストロークに伴って、リンク部材49は、ロアアーム側連結部57を中心に揺動する。この揺動の際に、湾曲部53がロアアーム40の前部に被さる。言い換えると、相対的に湾曲部53にロアアーム40の前部が進入する。結果、ロアアーム40とリンク部材49との干渉を回避しつつ、リンク部材49の揺動量を増大することができる。
【0043】
フォーク部材23の形状を図9に基づいて説明する。
図9に示すように、フォーク部材23は、前輪車軸63の左端部64Lから延びる左脚部65Lと、前輪車軸63の右端部64Rから延びる右脚部65Rと、これらの左右脚部65L、65Rを連結しアッパアーム28が連結される上側クロス部66と、この上側クロス部66より下位位置にて左右脚部65L、65Rを連結しロアアーム40が連結される下側クロス部67とを有する。
正面視で、左右脚部65L、65Rと上側クロス部66と下側クロス部67で囲われた空間(窓)68を通してテンションロッド51、51を目視することできる。
【0044】
図10(図2の10−10線断面図)に示すように、テンションロッド51は、後部がテンションロッド側連結部56に挿入した後部ボルト69により、リンク部材49に連結され、前部が軸受73、73を介して前部ボルト71により車体フレームの前部13に連結される。
なお、後部ボルト69は、軸受72、72を介してテンションロッド51後部に回転可能に支持される。リンク部材49は、カラー73で車幅方向の位置決めがなされる。軸受はダストシール74で防塵が図られる。
同様に、前部ボルト71は、軸受75、75を介してテンションロッド51前部に回転可能に支持される。テンションロッド51前部は、カラー76で車幅方向の位置決めがなされる。軸受はダストシール77で防塵が図られる。
【0045】
フォーク部材の上下ストロークに伴って、左右脚部65L、65Rは、テンションロッド51、51に接近することがある。この場合、想像線で示すように、テンションロッド51に一部被さるまで左右脚部65L、65Rの移動が可能となる。言い換えると、左右脚部65L、65Rで挟まれる空間68に、テンションロッド51、51の一部が進入可能となる。
テンションロッド51、51がフォーク部材23と干渉する心配がないので、テンションロッド51、51を車両前後方向に延ばすことができ、テンションロッド51、51を更に長くすることができる。
【0046】
以上の構成からなる鞍乗り型車両の前輪懸架装置20の作用を次に説明する。
図11は乗車1G状態(平坦な路面で乗員が乗車した状態)における前輪懸架装置20の模式図である。フォーク部材23の上下ストロークに伴って、前輪21が車体フレーム12に対して下がるときの作用を説明する。
【0047】
このときには、アッパアーム28が上部ピボット軸27を中心に、図反時計方向に回転する。並行してロアアーム40が下部ピボット軸38を中心に、図反時計方向に回転する。
ロアアーム側連結部57が下がるため、V字形状を呈するテンションロッド51とリンク部材49のなす角度θは、増加する。結果、第1球ジョイント61及び後部ボルト69は車両前方(図左)へ移動する。
【0048】
図12は前輪21が前輪21Aに示す位置まで下がった形態(クッションユニットの全伸時に相当)を示す。細線で示す乗車1G状態の前輪懸架装置20がクッションユニットの全伸時には、太線で示すようになる。移動後には要素の符号に添え字Aを付した。
フォーク部材23は車両前方斜め下へ、ほぼ平行に移動する。結果、前輪車軸63は63Aまで車両前方斜め下へ直線的に移動する。
【0049】
次に、図11においてフォーク部材23の上下ストロークに伴って、前輪21が車体フレーム12に対して上がるときの作用を説明する。
【0050】
このときには、アッパアーム28が上部ピボット軸27を中心に、図時計方向に回転する。ロアアーム40が下部ピボット軸38を中心に、図時計方向に回転する。ロアアーム側連結部57が上がるため、V字形状を呈するテンションロッド51とリンク部材49のなす角度θは、減少する。結果、第1球ジョイント61及び後部ボルト69は車両後方(図右)へ移動する。
【0051】
図13は前輪21が前輪21Bに示す位置まで上がった形態(クッションユニットの全屈時に相当)を示す。細線で示す乗車1G状態の前輪懸架装置20がクッションユニットの全屈時には、太線で示すようになる。移動後には要素の符号に添え字Bを付した。
フォーク部材23は、ほぼ真上に移動する。結果、前輪車軸63は63Bまで上方へほぼ直線的に移動する。
【0052】
前輪車軸63の移動軌跡を細かく計算して描いた移動軌跡のグラフを図14に示す。
図14は横軸が車両前後方向における水平移動量を示し、縦軸は上下方向のストローク形態を示し、細線Aはテレスコピックフォークでの前輪車軸の移動軌跡を示し、細線Bはダブルウイッシュボーン構造での前輪車軸の移動軌跡の一例を示す。
【0053】
太線は、本実施例による前輪車軸63の移動軌跡を示す。太線で示す前輪車軸63の移動軌跡は、乗車1G状態の横線より下の領域(ストロークの初期)では、細線A(テレスコピックフォークの移動軌跡)に近似し、乗車1G状態の横線より上の領域(ストロークの後半)では、細線B(ダブルウイッシュボーン構造の移動軌跡の一例)に近似する。
【0054】
よって、本実施例によれば、ストロークの初期においてはテレスコピックフォークのような特性を有し、ストロークの後半においては細線Bのような軌跡を持つダブルウイッシュボーンのような特性を有する鞍乗り車両の前輪懸架装置が提供される。
【0055】
次に、鞍乗り車両の前部の平面構造を図15に基づいて説明する。なお、図15では車体フレームは省略した。
図15に示すように、クッションユニット48に付属するクッションサブタンク48aは、上部ピボット軸27に平行になるように、車幅方向に横に延びている。そのため、クッションサブタンク48aをハンドル22の車両後方スペースに納めることができる。
その他の要素は、図3と共通であるため、説明を省略する。
【0056】
例えば、ハンドル22を左に切ると、図16に示すように、ステアリング軸25を中心にして、アッパフレーム28や補助ロッド35が一緒に旋回し、結果、前輪21が左に転舵される。
【0057】
図2の変更例を図17に基づいて説明する。
図2に示すクッションユニット48の下端は、テンションロッド側連結部56に、後部ボルト69で共締めするように変更する。結果、図15に示すように、クッション取付部47を省くことができる。その他は、図2と同一であるため、図2の符号を流用し、詳細な説明を省く。すなわち、クッションユニット48の下端は、図2に示すように、ロアアーム40に連結する形態の他、図17に示すように、リンク部材49に連結してもよい。
【0058】
なお、図2では、クッションユニット48は、クッション取付部47を介してロアアーム40に連結されている。
ロアアーム40は、車体フレーム12に上下スイング可能に連結され、車両前方へ延びる部材である。ロアアーム40のスイング軌跡は上下に沿ったものとなり、クッションユニット48の減衰性能を良好にすることができる。
【0059】
ただし、クッションユニット48を、車体フレーム12と他のリンク部材51又は49とに渡すことは差し支えない。この場合は、ロアアーム40の構造が単純になる。
【0060】
また、ロアアーム側連結部57は、フォーク部材側連結部58より車両後方に配置される。ロアアーム40の前部を直接フォーク部材23に連結するよりも、リンク部材49を介した分だけ、ロアアーム40を短くすることができる。
ただし、ロアアーム側連結部57を、フォーク部材側連結部58より車両前方に配置することは差し支えない。
【0061】
また、テンションロッド51は、ステアリング軸25の下位位置にて、車体フレーム12の前部13に軸支されている。
ステアリング軸25は車体フレーム12の先端に配置される。このようなステアリング軸25の下位位置から車両後方へテンションロッド51を延ばすことにより、テンションロッド51を十分に長くすることができる。
ただし、テンションロッド51は、車体フレーム12であれば、前部13とは異なる箇所に連結することは可能である。
【0062】
次に、実施例1における対偶及び自由度について、詳しく説明する。
補助リンクは省略したが、図18に示すように、「節」と「対偶」とが配置される。
節の内訳を表1に示し、対偶の内訳を表2に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
空間機構においては、次に示す自由度の式Fが与えられる。
【0066】
【数1】
【0067】
Nは節の数、Jは対偶の数、Σfiは自由の合計である。表1からN=6、表2からJ=7、Σfi=15である。これらを自由度の式Fに代入する。F=6(6−7−1)+15=−12+15=3の計算により、空間機構の自由度Fは3となる。
【0068】
図3に示す第1球ジョイント61および第2球ジョイント29は3方向の自由度を有する球対偶であるため、フォーク部材23は、この第1球ジョイント61と第2球ジョイント29を軸として回動し得る。ここで、補助ロッド35を設けることにより、このフォーク部材23の第1球ジョイント61と第2球ジョイント29を軸とした回動を規制することが可能となる。
なお、空間機構の自由度Fは3となるが、この自由度のうち1つは、補助ロッド35が第3球ジョイント36と第4球ジョイント34を結ぶ軸に回動する自由度であるため前輪懸架装置の運動に影響を与えるものではない。
結果、前輪懸架装置は、空間機構の自由度Fのうち2を、揺動と転舵に充てることができるため、前輪懸架装置としての円滑な揺動と転舵が確保される。
【0069】
アッパアーム28の剛性は、第2球ジョイント29や補助ロッド35に影響されることなく自由に設定できる。アッパアーム28とフォーク部材23とが、第2球ジョイント29及び補助ロッド35を介して連結され、挙動に変動を与える要素が含まれないため、挙動の予測が容易になる。
従って、実施例1により、支持剛性が大きく、挙動の予測が容易である前輪懸架装置が提供される。
【実施例2】
【0070】
次に、本発明の実施例2を図面に基づいて説明する。
【0071】
図19は図15の別実施例図であり、図15の補助ロッド35、球ジョイント34、36を削除し、次に述べる要素に置き換えた。
図19に示すように、アッパアーム28の先端とフォーク部材23とは、車幅方向に延びる円筒軸受機構80を介して連結される。
【0072】
円筒軸受機構80は、アッパアーム28の先端に車幅方向に延びるように設けた穴81と、この穴81に貫通させるボルト82と、このボルト82の両端を支えつつ車両後方へ延びてフォーク部材23にボルト83で固定される支持プレート84、84とからなる。穴81にニードル軸受又はメタルを嵌め、ニードル軸受又はメタルにボルト82を通すことが、より好ましい。また、ボルト82はロッドであってもよい。
アッパアーム28の先端は、スペースSの範囲で、フォーク部材23に対して移動しうる。
【0073】
好ましくは、このスペースS、Sに車幅方向への相対移動量を制限する左右のストッパ85、85を介在させる。これらのストッパ85、85は、ゴム筒、コイルスプリング、ばね座金などの弾性体とする。転舵時のショックの発生を抑えることができる。
その他の要素は図15と同一であるため、符号を流用して、説明は省略する。
【0074】
次に、実施例2における対偶及び自由度について、詳しく説明する。
図20に示すように、「節」と「対偶」とが配置される。
節の内訳を表3に示し、対偶の内訳を表4に示す。
【0075】
【表3】
【0076】
【表4】
【0077】
円筒軸受機構80は、回転と軸方向移動とを許容するため、自由度は2となる。
表3からN=5、表4からJ=5、Σfi=8である。これらを自由度の式Fに代入する。F=6(5−5−1)+8=2の計算により、空間機構の自由度Fは2となる。
【0078】
図19において、アッパアーム28の剛性は、円筒軸受機構80に影響されることなく自由に設定できる。アッパアーム28とフォーク部材23とが、円筒軸受機構80を介して連結され、挙動に変動を与える要素が含まれないため、挙動の予測が容易になる。
【0079】
尚、鞍乗り型車両は、乗員がシートに跨って乗車するタイプの車両であり、本発明は二輪車の他、三輪車や四輪車にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の前輪懸架装置は、二輪車に好適である。
【符号の説明】
【0081】
10…鞍乗り型車両、12…車体フレーム、13…車体フレームの前部、20…前輪懸架装置、21…前輪、22…ハンドル(操向ハンドル)、23…フォーク部材、25…ステアリング軸、26…ステアリング部材、27…上部ピボット軸、28…アッパアーム、29…第2球ジョイント、34…第4球ジョイント、35…補助ロッド、36…第3球ジョイント、48…クッションユニット、61…第1球ジョイント、80…円筒軸受機構、85…ストッパ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレーム(12)の前部(13)に回転可能に軸支されハンドル操作に伴って回転するステアリング部材(26)と、このステアリング部材(26)に上下スイング可能に取付けられ車両前方へ延びるアッパアーム(28)と、このアッパアーム(28)より下位位置にて前記車体フレーム(12)に上下スイング可能に取付けられ車両前方へ延びるロアアーム(40)と、前記ロアアーム(40)の先端に第1球ジョイント(61)を介して連結され且つ前記アッパアーム(28)の先端に第2球ジョイント(29)を介して連結され前輪(21)を軸支するフォーク部材(23)と、このフォーク部材(23)又は前記ロアアーム(40)と前記車体フレーム(12)とに渡されるクッションユニット(48)とを備える鞍乗り型車両の前輪懸架装置において、
前記アッパアーム(28)の車幅方向左側又は右側に、平面視で前記アッパアーム(28)に略平行に補助ロッド(35)を延ばし、この補助ロッド(35)の一端は第3球ジョイント(36)を介して前記フォーク部材(23)の上部に連結され、前記補助ロッド(35)の他端は第4球ジョイント(34)を介して前記ステアリング部材(26)に連結されていることを特徴とする鞍乗り型車両の前輪懸架装置。
【請求項2】
前記アッパアーム(28)は、車幅方向に延びる上部ピボット軸(27)により前記ステアリング部材(26)に軸支され、
前記第4球ジョイント(34)は、前記上部ピボット軸(27)の一端に連結されていることを特徴とする請求項1記載の鞍乗り型車両の前輪懸架装置。
【請求項3】
車体フレーム(12)の前部(13)に回転可能に軸支されハンドル操作に伴って回転するステアリング部材(26)と、このステアリング部材(26)に上下スイング可能に取付けられ車両前方へ延びるアッパアーム(28)と、このアッパアーム(28)より下位位置にて前記車体フレーム(12)に上下スイング可能に取付けられ車両前方へ延びるロアアーム(40)と、前記ロアアーム(40)の先端に第1球ジョイント(61)を介して連結され且つ前記アッパアーム(28)の先端に連結され前輪(21)を軸支するフォーク部材(23)と、このフォーク部材(23)又は前記ロアアーム(40)と前記車体フレーム(12)とに渡されるクッションユニット(48)とを備える鞍乗り型車両の前輪懸架装置において、
前記アッパアーム(28)の先端と前記フォーク部材(23)とは、車幅方向に延びる円筒軸受機構(80)を介して連結されていることを特徴とする鞍乗り型車両の前輪懸架装置。
【請求項4】
前記円筒軸受機構(80)は、車幅方向への相対移動量を制限する左右のストッパ(85)を有し、これらのストッパ(85)は弾性体で構成されていることを特徴とする請求項3記載の鞍乗り型車両の前輪懸架装置。
【請求項1】
車体フレーム(12)の前部(13)に回転可能に軸支されハンドル操作に伴って回転するステアリング部材(26)と、このステアリング部材(26)に上下スイング可能に取付けられ車両前方へ延びるアッパアーム(28)と、このアッパアーム(28)より下位位置にて前記車体フレーム(12)に上下スイング可能に取付けられ車両前方へ延びるロアアーム(40)と、前記ロアアーム(40)の先端に第1球ジョイント(61)を介して連結され且つ前記アッパアーム(28)の先端に第2球ジョイント(29)を介して連結され前輪(21)を軸支するフォーク部材(23)と、このフォーク部材(23)又は前記ロアアーム(40)と前記車体フレーム(12)とに渡されるクッションユニット(48)とを備える鞍乗り型車両の前輪懸架装置において、
前記アッパアーム(28)の車幅方向左側又は右側に、平面視で前記アッパアーム(28)に略平行に補助ロッド(35)を延ばし、この補助ロッド(35)の一端は第3球ジョイント(36)を介して前記フォーク部材(23)の上部に連結され、前記補助ロッド(35)の他端は第4球ジョイント(34)を介して前記ステアリング部材(26)に連結されていることを特徴とする鞍乗り型車両の前輪懸架装置。
【請求項2】
前記アッパアーム(28)は、車幅方向に延びる上部ピボット軸(27)により前記ステアリング部材(26)に軸支され、
前記第4球ジョイント(34)は、前記上部ピボット軸(27)の一端に連結されていることを特徴とする請求項1記載の鞍乗り型車両の前輪懸架装置。
【請求項3】
車体フレーム(12)の前部(13)に回転可能に軸支されハンドル操作に伴って回転するステアリング部材(26)と、このステアリング部材(26)に上下スイング可能に取付けられ車両前方へ延びるアッパアーム(28)と、このアッパアーム(28)より下位位置にて前記車体フレーム(12)に上下スイング可能に取付けられ車両前方へ延びるロアアーム(40)と、前記ロアアーム(40)の先端に第1球ジョイント(61)を介して連結され且つ前記アッパアーム(28)の先端に連結され前輪(21)を軸支するフォーク部材(23)と、このフォーク部材(23)又は前記ロアアーム(40)と前記車体フレーム(12)とに渡されるクッションユニット(48)とを備える鞍乗り型車両の前輪懸架装置において、
前記アッパアーム(28)の先端と前記フォーク部材(23)とは、車幅方向に延びる円筒軸受機構(80)を介して連結されていることを特徴とする鞍乗り型車両の前輪懸架装置。
【請求項4】
前記円筒軸受機構(80)は、車幅方向への相対移動量を制限する左右のストッパ(85)を有し、これらのストッパ(85)は弾性体で構成されていることを特徴とする請求項3記載の鞍乗り型車両の前輪懸架装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2012−192898(P2012−192898A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60071(P2011−60071)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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