説明

鞍乗型車両のフレーム構造

【課題】車体フレームの剛性を確保しつつ、車体フレームの重量の増加を低減することができる鞍乗型車両のフレーム構造を提供すること。
【解決手段】ヘッドパイプ11から下後方に向けて延びるアッパーフレーム12と、アッパーフレーム12の下方に配置されヘッドパイプ11から下後方に向けて延びるダウンフレーム13と、ダウンフレーム13の下端から後方に向けて延びるアンダーフレーム14と、アッパーフレーム12の下部から上後方に向けて延びるリアフレーム15と、パワーユニット45を有するスイングユニット40と、アッパーフレーム12の下部と前記アンダーフレーム14の後部とを連結するピボットブラケット83と、を備え、ピボットブラケット83は、アッパーフレーム12が延びる方向に沿ってアッパーフレーム12の前方に接合されており、スイングユニット40は、ピボットブラケット83に揺動可能に支持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイングユニットを支持するブラケットを備える鞍乗型車両のフレーム構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車体フレームを構成するフレーム同士をブラケットで連結することにより、剛性を高めた鞍乗型車両のフレーム構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の鞍乗型車両のフレーム構造は、車両の前後方向の中央付近でフレーム同士をブラケットにより連結している。そして、後輪を保持するスイングアームが、ブラケットのピボット軸を介して、車体フレームに揺動可能に支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4249331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、スイングアームとエンジン(パワーユニット)とが一体的に設けられるスイングユニットの場合には、スイングユニットの重量は、エンジンを設けないスイングアームよりも増加する。よって、スイングユニットを支持するブラケットは、高い剛性を必要とする。そのため、剛性を高めるために補強部材を設けたり、フレームやブラケットの肉厚を厚くするなどにより、フレームが大型化することで、車体フレームの重量が増加する可能性がある。
【0005】
本発明は、車体フレームの剛性を確保しつつ、車体フレームの重量の増加を低減することができる鞍乗型車両のフレーム構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、ヘッドパイプと、前記ヘッドパイプから下後方に向けて延びるアッパーフレームと、前記アッパーフレームの下方に配置され、前記ヘッドパイプから下後方に向けて延びるダウンフレームと、前記ダウンフレームの下端から後方に向けて延びるアンダーフレームと、前記アッパーフレームの下部から上後方に向けて延びるリアフレームと、駆動力を発生するパワーユニットを有し、後輪を回転自在に保持するスイングユニットと、前記アッパーフレームの下部と前記アンダーフレームの後部とを連結するピボットブラケットと、を備える鞍乗型車両のフレーム構造であって、前記ピボットブラケットは、前記アッパーフレームが延びる方向に沿って前記アッパーフレームの前方に接合されており、前記スイングユニットは、前記ピボットブラケットに揺動可能に支持されていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明においては、請求項1に記載の構成に加えて、前記リアフレームは、前記アッパーフレームの下部における前記ピボットブラケットが連結されている部分の後側に接合されることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明においては、請求項2に記載の構成に加えて、前記アッパーフレームの下部の後側と前記リアフレームの前部の下側とを連結するサブブラケットを更に備え、前記サブブラケットは、前記アッパーフレームが延びる方向に沿って前記アッパーフレームに接合され、かつ、前記リアフレームが延びる方向に沿って前記リアフレームに接合されることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明においては、請求項3に記載の構成に加えて、一端が前記スイングユニットに支持されると共に他端が前記サブブラケットに支持され、前記スイングユニットの前後方向の動きを規制するリンク部材を更に備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、スイングユニットを支持するピボットブラケットは、アッパーフレームが延びる方向に沿って、アッパーフレームの前方に接合されている。そのため、ピボットブラケットとアッパーフレームとの接合する面積を広くすることができる。これにより、フレームやピボットブラケットを大型化せずに、ピボットブラケットの剛性を確保することができる。従って、車体フレームの剛性を確保しつつ、車体フレームの重量の増加を低減できる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、リアフレームは、アッパーフレームの下部におけるピボットブラケットが連結されている部分の後側に接合される。そのため、ピボットブラケットにより剛性が高められたアッパーフレームの下部の部分の剛性を更に高めることができる。これにより、車体フレームの剛性を一層高めることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、サブブラケットは、アッパーフレームが延びる方向に沿ってアッパーフレームに接合され、かつ、リアフレームが延びる方向に沿ってリアフレームに接合される。そのため、サブブラケットとアッパーフレームとの接合する面積を広くすることができる。また、サブブラケットとリアフレームとの接合する面積を広くすることができる。これにより、車体フレームの剛性を一層高めることができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、サブブラケットに支持されるスイングユニットの前後方向の動きを規制するリンク部材を更に備える。これにより、サブブラケットを利用して、スイングユニットの前後方向の動きを規制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る鞍乗型車両としてのスクータ型の自動二輪車のフレーム構造を示す左側面図である。
【図2】図1に示す自動二輪車のフレーム構造を拡大した左側面図である。
【図3】図1に示す自動二輪車のフレーム構造におけるピボットブラケット及びサブブラケットを示す斜視図である。
【図4】図1に示す自動二輪車のフレーム構造のリンク機構の構成を示す斜視図である。
【図5】図1に示す自動二輪車のフレーム構造のリンク機構における前後方向の動きを規制する構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る鞍乗型車両を、スクータ型の自動二輪車に適用した場合の自動二輪車のフレーム構造の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
なお、以下の説明における前後、左右及び上下の方向の記載は、特に明記がない限り、電動二輪車に乗車する乗員(運転者)から見た方向に従う。また、図中、矢印FRは車両の前方(進行方向)、矢印UPは車両の上方、矢印LHは車両の進行方向から見て左方をそれぞれ示す。
【0016】
まず、図1を参照しながら、本実施形態の自動二輪車1の全体構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る鞍乗型車両としてのスクータ型の自動二輪車のフレーム構造を示す左側面図である。
図1に示すように、本実施形態の自動二輪車1は、車体フレーム10と、前輪21と、前輪21の上方に配置されるフロントフェンダ211と、前輪21を軸支する左右一対のフロントフォーク22と、一対のフロントフォーク22を、ボトムブリッジ221を介してヘッドパイプ11に対して左右に回動自在に支持するステアリングステム23と、ステアリングステム23の上端に連結され前輪21を操舵するハンドル24と、後輪25と、後輪25を後端側で軸支するスイングユニット40と、車両の前後方向の略中央でスイングユニット40と車体フレーム10との間に介在するリンク部材としてのリンク機構51と、車両の後方でスイングユニット40と車体フレーム10との間に介在するリアクッション26と、運転者が着座する前部シート71と、同乗者が着座する後部シート72と、車両の各部を覆うカバー部材70と、前部収納ボックス73と、後部収納ボックス74と、燃料タンク75とを主体として構成される。
【0017】
車体フレーム10は、複数種の鋼材が溶接により一体的に結合されて構成される。車体フレーム10は、ヘッドパイプ11と、アッパーフレーム12と、ダウンフレーム13と、アンダーフレーム14と、リアフレーム15と、シートレール16と、複数のクロスメンバ(第1クロスパイプ32及び第2クロスパイプ33等)と、締結用ブラケット80と、を含んで構成される。
【0018】
本実施形態の自動二輪車1のフレーム構造50は、一対のアッパーフレーム12、一対のダウンフレーム13、一対のアンダーフレーム14、一対のリアフレーム15、スイングユニット40、ピボットブラケット83、サブブラケット86を主体として、構成される。
フレーム構造50の詳細については後述する。
【0019】
ヘッドパイプ11は、車体フレーム10の前端部に配置される。
アッパーフレーム12は、左右に一対設けられている。一対のアッパーフレーム12は、側面視で、前端部においてヘッドパイプ11に連結されている。一対のアッパーフレーム12の後端部側は、斜め下後方に向けて延びている。
【0020】
ダウンフレーム13は、左右に一対設けられている。一対のダウンフレーム13は、アッパーフレーム12の下方に配置されている。一対のダウンフレーム13は、側面視で、前端部においてヘッドパイプ11に連結されている。一対のダウンフレーム13の後端部側は、ヘッドパイプ11から斜め下後方に向けて延びている。
【0021】
アンダーフレーム14は、左右に一対設けられている。一対のアンダーフレーム14の前端部は、一対のダウンフレーム13の下端に連結されている。一対のアンダーフレーム14の後端部は、一対のダウンフレーム13から後方に向けて延びている。
【0022】
シートレール16は、左右に一対設けられている。一対のシートレール16は、前部シート71及び後部シート72の下方に設けられる。一対のシートレール16は、側面視で、一端側において車両の前後方向の中央部近傍における一対のアッパーフレーム12に連結されている。一対のシートレール16の他端側は、後方に向かって延びている。
【0023】
リアフレーム15は、左右に一対設けられている。一対のリアフレーム15は、一端側において一対のアッパーフレーム12の下部に連結されている。詳細には、リアフレーム15の一端側は、アッパーフレーム12の下部における後述するピボットブラケット83が連結されている部分の後側に、接合部15aで溶接されることにより接合されている(図2参照)。一対のリアフレーム15の他端側は、斜め上後方に向けて延び、一対のシートレール16の後部側に連結されている。
【0024】
クロスメンバは、左右方向に延びるパイプ部材からなり、左右一対のアッパーフレーム12、ダウンフレーム13、アンダーフレーム14、リアフレーム15及びシートレール16を左右方向に連結する。クロスメンバは、一対のクロスパイプ32,33を含んで構成される。
一対のクロスパイプ32,33は、一対のシートレール16の後部において、一対のシートレール16を左右方向に連結する。一対のクロスパイプ32,33は、一対のシートレール16の後部において左右方向に延びている。一対のクロスパイプ32,33は、車両の前後に所定距離離間して設けられる。
【0025】
締結用ブラケット80は、車体フレーム10を補強して車体フレーム10の剛性を高めるためのものであり、車体フレーム10の各箇所に取り付けられる。
締結用ブラケット80は、第1フロントブラケット81と、第2フロントブラケット82と、ピボットブラケット83と、第1リアブラケット84と、第2リアブラケット85と、サブブラケット86と、上端支持ブラケット87とを含んで構成される。
【0026】
第1フロントブラケット81は、左右に一対設けられる。一対の第1フロントブラケット81は、アッパーフレーム12における前部側の下側と、ダウンフレーム13における中央近傍の後側と、を連結する。
第2フロントブラケット82は、左右に一対設けられる。一対の第2フロントブラケット82は、アッパーフレーム12における中央近傍の下側と、アンダーフレーム14における中央近傍の上側と、を連結する。
【0027】
ピボットブラケット83は、左右に一対設けられる。一対のピボットブラケット83は、アッパーフレーム12における下部の前側と、アンダーフレーム14における後部と、を連結する。一対のピボットブラケット83は、アッパーフレーム12が延びる方向に沿って、アッパーフレーム12に接合されている。
ピボットブラケット83の詳細については後述する。
【0028】
第1リアブラケット84は、左右に一対設けられる。一対の第1リアブラケット84は、アッパーフレーム12における中央よりも後部側の上側と、シートレール16における前部の下側と、を連結する。
第2リアブラケット85は、左右に一対設けられる。一対の第2リアブラケット85は、シートレール16における中央よりも前部側の下側と、リアフレームにおける中央近傍の上側と、を連結する。
【0029】
サブブラケット86は、車幅方向における左側に配置される。サブブラケット86は、アッパーフレーム12における下部の後側と、リアフレーム15における前部の下側と、を連結する。サブブラケット86は、アッパーフレーム12が延びる方向に沿ってアッパーフレーム12に接合され、かつ、リアフレーム15が延びる方向に沿ってリアフレーム15に接合される。
サブブラケット86の詳細については後述する。
【0030】
上端支持ブラケット87は、前後に一対設けられるクロスパイプ32,33を連結する。上端支持ブラケット87は、リアクッション26の上端部を支持するためのブラケットである。上端支持ブラケット87は、左右方向に離間して一対設けられている。
【0031】
スイングユニット40は、車体フレーム10に揺動可能に支持されている。スイングユニット40は、前側において、後述するリンク機構51を介して車体フレーム10に揺動自在に支持され、後端部において、リアクッション26を介して車体フレーム10に揺動自在に支持される。また、スイングユニット40は、後方側において後輪25を回転自在に保持する。
【0032】
スイングユニット40は、エンジン45と、動力伝達機構47とが一体的に設けられることにより構成される。
エンジン45は、自動二輪車1の駆動力を発生するパワーユニット(原動機)であり、車体における前後方向の略中央部に搭載される。エンジン45は、後部側にクランクケース46を有しており、クランクケース46の前部の下端において、後述するリンク機構51の第1ピボット軸55に連結されている。
【0033】
動力伝達機構47は、エンジン45の駆動力を後輪25に伝達するものである。動力伝達機構47は、エンジン45の後部側に配置され、エンジン45に取り付けられることで、エンジン45と共にスイングユニット40を構成する。動力伝達機構47は、車幅方向における左側に配置される。動力伝達機構47は、ベルト式無段変速機(図示せず)を備える。
【0034】
ベルト式無段変速機は、エンジン45の出力軸であるクランク軸に連結した駆動プーリ(図示せず)と、後輪用車軸に連結した従動プーリ(図示せず)と、駆動プーリ及び従動プーリに巻き掛けられるVベルト(図示せず)と、を主体に構成されている。ベルト式無段変速機は、駆動プーリ及び従動プーリに対するVベルトの巻き掛け、径を連続的に変えることにより、変速比を制御する。
【0035】
リンク機構51は、スイングユニット40の上下方向及び前後方向の揺動を許容して、路面から後輪25に入力された衝撃加重を吸収するものである。リンク機構51は、スイングユニット40に支持される。
リンク機構51の詳細については後述する。
【0036】
リアクッション26は、路面から後輪25に入力された衝撃加重を、その緩衝作用により吸収する。リアクッション26は、左右に一対設けられる。一対のリアクッション26の上端部は、上端支持ブラケット87に連結されている。リアクッション26の下端部は、スイングユニット40の後端部(一端)に連結されている。
【0037】
リアクッション26は、上端支持ブラケット87とスイングユニット40の後端部とをつなぐ直線状で延びている。リアクッション26は、圧縮される範囲(ストローク)を確保した状態で設けられる。リアクッション26は、リアクッション26が圧縮される方向であるストローク方向に傾斜している。リアクッション26は、下後方に延びるように傾いている。
【0038】
前部収納ボックス73及び後部収納ボックス74は、ヘルメットや荷物等を収納するための箱である。前部収納ボックス73及び後部収納ボックス74は、前部シート71及び後部シート72の下方において、一対のシートレール16に沿って配置されている。
【0039】
前部収納ボックス73は、車両の前後方向の略中央において、一対のシートレール16の間に設けられる。前部収納ボックス73は、一対のシートレール16に支持される。
後部収納ボックス74は、前部収納ボックス73の後方において、一対のシートレール16の間に設けられる。後部収納ボックス74は、一対のシートレール16に支持される。
【0040】
前部シート71は、走行時に運転者が着座するための乗員着座用のシートであり、前部収納ボックス73の上方に配置される。前部シート71は、前部収納ボックス73の開口を開閉可能に構成され、前部収納ボックス73の蓋部材としても機能する。
【0041】
後部シート72は、走行時に同乗者が着座するための乗員着座用のシートであり、前部シート71の後方において、後部収納ボックス74の上方に配置される。後部シート72は、後部収納ボックス74の開口を開閉可能に構成され、後部収納ボックス74の蓋部材としても機能する。
【0042】
カバー部材70は、ハンドル24の前方及び前輪21の上方を覆うフロントカバー、車体フレーム10の前部の両側面を覆うセンターカバー、車両の後部及び後輪25の上方を覆うリヤカバーと、車体フレーム10の下部の両側面を覆うアンダーカバー等により構成される。
【0043】
燃料タンク75は、一対のアッパーフレーム12の下方側において、一対のダウンフレーム13及び一対のアンダーフレーム14により保持されている。
【0044】
次に、図1から図4により、本発明の特徴部分であるフレーム構造50の詳細について説明する。図2は、図1に示す自動二輪車のフレーム構造を拡大した左側面図である。図3は、図1に示す自動二輪車のフレーム構造におけるピボットブラケット及びサブブラケットを示す斜視図である。図4は、図1に示す自動二輪車のフレーム構造のリンク機構の構成を示す斜視図である。図5は、図1に示す自動二輪車のフレーム構造のリンク機構における前後方向の動きを規制する構成を示す斜視図である。
【0045】
本実施形態のフレーム構造50は、前述の通り、一対のアッパーフレーム12、一対のダウンフレーム13、一対のアンダーフレーム14、一対のリアフレーム15、スイングユニット40、ピボットブラケット83、サブブラケット86を主体として、構成される。
【0046】
ピボットブラケット83は、前述の通り、図2及び図3に示すように、左右に一対設けられる。一対のピボットブラケット83は、アッパーフレーム12における下部の前側と、アンダーフレーム14における後部と、を連結する。
【0047】
ピボットブラケット83は、図3に示すように、板部材を主体に構成されており、下面において下面接合部834で端部同士が前後方向に沿って溶接されている。ピボットブラケット83の内側には、図2に示すように、後述するリンク機構51の第1リンク52の上方側の部分が支承される。
【0048】
ピボットブラケット83は、図3に示すように、ピボットブラケット外側部分831と、ピボットブラケット内側部分832と、ピボットブラケット筒状体833とを有する。
ピボットブラケット外側部分831は、ピボットブラケット83における左右方向の外側に配置されている。ピボットブラケット内側部分832は、ピボットブラケット83における左右方向の内側に配置されている。
【0049】
ピボットブラケット外側部分831及びピボットブラケット内側部分832は、左右方向に対向して配置されており、アンダーフレーム14の後部、及び、アッパーフレーム12の下部を、左右方向から挟み込んでいる。ピボットブラケット外側部分831及びピボットブラケット内側部分832が互いに下面接合部834で溶接されることにより、ピボットブラケット83の下方側は接合されている。
【0050】
ピボットブラケット83の下面接合部834を含む下部は、後方側に延びる延出部835として構成される。延出部835は、アッパーフレーム12の下方側に配置されており、アッパーフレーム12の底板として機能する。
【0051】
ピボットブラケット外側部分831及びピボットブラケット内側部分832は、アッパーフレーム12の下部の前側において、アッパーフレーム12の前方から覆うようにして、アッパーフレーム12が延びる方向に沿って、後接合部83aで溶接されることにより、アッパーフレーム12の前方に接合されている。ピボットブラケット外側部分831及びピボットブラケット内側部分832は、アンダーフレーム14の後部において、アンダーフレーム14の周方向に沿って、前接合部83bで溶接されることにより、アンダーフレーム14に接合されている。
【0052】
ピボットブラケット筒状体833は、左右方向に延びている。ピボットブラケット筒状体833は、ピボットブラケット外側部分831及びピボットブラケット内側部分832に亘っており、ピボットブラケット外側部分831及びピボットブラケット内側部分832を左右方向に貫通するように配置される。
【0053】
ピボットブラケット筒状体833は、アッパーフレーム12の下部の前側において、ピボットブラケット外側部分831及びピボットブラケット内側部分832に貫通するように配置された状態で、ピボットブラケット外側部分831及びピボットブラケット内側部分832に溶接により接合されている。ピボットブラケット筒状体833の内部には、後述するリンク機構51の第2ピボット軸61が挿通される。
【0054】
サブブラケット86は、前述の通り、図2及び図3に示すように、車幅方向における左側に配置される。サブブラケット86は、アッパーフレーム12における下部の後側と、リアフレーム15における前部の下側と、を連結する。
サブブラケット86は、図3に示すように、板部材を主体に構成されており、後方側に向けて一部が開口すると共に、下方側に向けて開口している。サブブラケット86の内部には、リンク機構51の連結ロッド54の上方側の部分が配置される。
【0055】
サブブラケット86は、サブブラケット外側部分861と、サブブラケット内側部分862と、サブブラケット中間板部863と、を有する。サブブラケット外側部分861及びサブブラケット内側部分862には、上部側取り付け穴部864と、下部側取り付け穴部865とが形成されている。サブブラケット内側部分862には、切り欠き866が形成されている。
【0056】
サブブラケット外側部分861は、サブブラケット86における左右方向の外側に配置されている。サブブラケット内側部分862は、サブブラケット86における左右方向の内側に配置されている。
【0057】
サブブラケット外側部分861及びサブブラケット内側部分862は、左右方向に対向して配置されており、アッパーフレーム12の下部の後側、及び、リアフレーム15の前部の下側を左右方向から挟み込んでいる。サブブラケット86の上方側の部分は、サブブラケット外側部分861及びサブブラケット内側部分862が互いに溶接により接合されている。
【0058】
サブブラケット中間板部863は、左右方向に延びている。サブブラケット中間板部863は、後方側に面しており、サブブラケット86の後方側の開口の上下方向の略中央の部分を塞ぐように、サブブラケット外側部分861の上方側及びサブブラケット内側部分862を左右方向に連結している。サブブラケット86は、サブブラケット中間板部863を挟んで上方側及び下方側において、後方側に向けて開口している。
【0059】
サブブラケット外側部分861及びサブブラケット内側部分862は、アッパーフレーム12の下部の後側において、アッパーフレーム12が延びる方向に沿って、前接合部86bで溶接されることにより、アッパーフレーム12に接合されている。サブブラケット外側部分861及びサブブラケット内側部分862は、リアフレーム15が延びる方向に沿って、上接合部86aで溶接されることにより、リアフレーム15に接合されている。
【0060】
上部側取り付け穴部864及び下部側取り付け穴部865は、サブブラケット外側部分861及びサブブラケット内側部分862それぞれに設けられる。上部側取り付け穴部864は、サブブラケット86の上方側に設けられる。下部側取り付け穴部865は、サブブラケット86の下方側に設けられる。上部側取り付け穴部864及び下部側取り付け穴部865は、それぞれ、サブブラケット86を左右方向に貫通する。
【0061】
切り欠き866は、サブブラケット内側部分862の下部に形成されている。切り欠き866は、下方に向けて開放しており、サブブラケット内側部分862の下側縁から上方側に窪むように形成されている。切り欠き866は、図5に示すように、前縁部866a、後縁部866b及び上縁部866cを有する。切り欠き866には、後述する連結ロッド54の突起541が配置される。
【0062】
リンク機構51は、図2及び図4に示すように、第1リンク52と、第2リンク53と、連結ロッド54と、第1ピボット軸55と、第2ピボット軸61と、第3ピボット軸62と、第4ピボット軸63と、中間軸64と、を含んで構成される。スイングユニット40は、第1ピボット軸55を中心に揺動可能である。
【0063】
第1リンク52は、左右に一対設けられる。第1リンク52は、略上下方向に延びている。第1リンク52の上方側の部分は、ピボットブラケット83の内部に配置される。
【0064】
第1リンク52の上端部は、第2ピボット軸61を介してピボットブラケット83に回動可能に支持される。第2ピボット軸61は、図4に示すように、左右方向に延び、両端部より内側の部分において、左右に一対の第1リンク52の上端部を支持する。第2ピボット軸61は、両端部において、ピボットブラケット83のピボットブラケット筒状体833(図3参照)に回転可能に支持されている。
【0065】
第1リンク52の下端部は、第3ピボット軸62を介して第2リンク53の前端部に回動可能に支持される。第3ピボット軸62は、左右方向に延び、両端部において、左右に一対の第1リンク52の下端部を支持すると共に、左右に一対の第2リンク53の前端部を支持する。
【0066】
第2リンク53は、左右に一対設けられる。第2リンク53は、略前後方向に延びている。
第2リンク53の前端部は、第1リンク52の下端部に第3ピボット軸62を介して第1リンク52の下端部に回動可能に支持される。
第2リンク53の後端部は、第1ピボット軸55を介して、スイングユニット40の後端部に支持されると共に、連結ロッド54の下端部に回動可能に支持される。第1ピボット軸55は、左右方向に延び、両端部側において、第2リンク53における内側アーム部材531の後端部を支持する。第1ピボット軸55は、左側端部において、連結ロッド54の下端部を支持すると共に、スイングユニット40の後端部に連結される。
【0067】
連結ロッド54は、車両の左側のみに設けられる。連結ロッド54は、略上下方向に延びている。連結ロッド54の上方側の部分は、サブブラケット86の内部に配置される。
【0068】
連結ロッド54の後端としての上端部は、第4ピボット軸63を介してサブブラケット86の上端部に回動可能に支持される。第4ピボット軸63は、左右方向に延び、サブブラケット86の上部側取り付け穴部864(図3参照)に回動可能に支持される。
連結ロッド54の下端部は、第1ピボット軸55を介して、スイングユニット40の一端に連結されると共に、第2リンク53の後端部に回動可能に支持される。
【0069】
連結ロッド54の略中央の部分は、中間軸64を介してサブブラケット86の下端部に、前後方向に揺動可能に連結される。中間軸64は、左右方向に延び、サブブラケット内側部分862の下部側取り付け穴部865に連結される。詳細には、中間軸64は、下部側取り付け穴部865に貫通して配置される。中間軸64と下部側取り付け穴部865との間には、ゴム部材(不図示)が配置されている。中間軸64は、ゴム部材を変形させつつ、前後方向に揺動可能である。
【0070】
このように構成されるリンク機構51において、第2リンク53は、前後方向に延びると共に、第1リンク52を介してピボットブラケット83のピボットブラケット筒状体833を中心に回動する。第2リンク53の後端部は、第1ピボット軸55を介して、スイングユニット40に連結されている。そのため、第2リンク53は、スイングユニット40の上下方向の移動を許容する。
【0071】
また、第1リンク52及び連結ロッド54は、互いが略平行になるように配置されており、リンク機構を構成する。連結ロッド54の下端部は、第1ピボット軸55を介して、スイングユニット40に連結されている。そのため、第1リンク52及び連結ロッド54は、スイングユニット40の前後方向の移動を許容する。
【0072】
リンク機構51は、更に、図2及び図5に示すように、突起541を有する。突起541は、連結ロッド54の内面において、上方に向けて突出すると共に、サブブラケット86の切り欠き866に挿入されている。サブブラケット86の切り欠き866は、リンク機構51の突起541の前後方向の移動を規制することにより、スイングユニット40の前後方向の動きを規制する。
【0073】
詳細には、スイングユニット40が前後方向に移動した場合に、リンク機構51の突起541が前縁部866a又は後縁部866bに当接することで、リンク機構51の前後方向の動きは、サブブラケット86に対して規制される。その結果。スイングユニット40の前後方向の動きが規制される。
【0074】
以上のように構成される本実施形態のフレーム構造30は、路面から後輪25に衝撃荷重が入力されたときに、リアクッション26を介して車体フレーム10に伝達される衝撃荷重を、一対の上端支持ブラケット87及び一対のクロスパイプ32,33を介して一対のシートレール16で受け止める。また、本実施形態のフレーム構造30は、路面から後輪25に衝撃荷重が入力されたときに、リンク機構51を介して車体フレーム10に伝達される衝撃荷重を、ピボットブラケット83及びサブブラケット86を介して車体フレーム10で受け止める。
【0075】
以上説明した本実施形態の自動二輪車1のフレーム構造30によれば、例えば、以下のような効果を奏する。
本実施形態においては、スイングユニット40を支持するピボットブラケット83は、アッパーフレーム12が延びる方向に沿って、アッパーフレーム12の前方に接合されている。そのため、ピボットブラケット83とアッパーフレーム12との接合する面積を広くすることができる。これにより、フレームやピボットブラケット83を大型化せずに、ピボットブラケット83の剛性を確保することができる。従って、車体フレーム10の剛性を確保しつつ、車体フレーム10の重量の増加を低減できる。
【0076】
本実施形態においては、リアフレーム15は、アッパーフレーム12の下部におけるピボットブラケット83が連結されている部分の後側に接合される。そのため、ピボットブラケット83により剛性が高められたアッパーフレーム12の下部の部分の剛性を更に高めることができる。これにより、車体フレーム10の剛性を一層高めることができる。
【0077】
本実施形態においては、サブブラケット86は、アッパーフレーム12が延びる方向に沿ってアッパーフレーム12に接合され、かつ、リアフレーム15が延びる方向に沿ってリアフレーム15に接合される。そのため、サブブラケット86とアッパーフレーム12との接合する面積を広くすることができる。また、サブブラケット86とリアフレーム15との接合する面積を広くすることができる。これにより、車体フレーム10の剛性を一層高めることができる。
【0078】
本実施形態においては、サブブラケット86に支持されるスイングユニット40の前後方向の動きを規制するリンク機構51を更に備える。これにより、サブブラケット86を利用して、スイングユニット40の前後方向の動きを規制することができる。
【0079】
以上、本発明の好ましい各実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に制限されることなく、種々の形態で実施することができる。
例えば、上記実施形態では、本発明を、エンジン(内燃機関)で発生する動力により後輪を回転駆動させて走行する自動二輪車に適用した例について説明したが、本発明の適用はこれに限定されない。すなわち、本発明を、電動モータで発生する動力のみにより後輪を回転駆動させて走行する電動二輪車に適用することもできる。また、エンジンで発生させた動力、及び電動モータで発生させた動力の2つの動力を組み合わせて後輪を回転駆動させて走行するハイブリッド型の鞍乗型車両に適用することもできる。
【0080】
更に、本発明は、運転者及び同乗者が着座するそれぞれのシートを備えた車両であれば、スクータ型の鞍乗型車両に限らず、モータサイクル型、カブ型の鞍乗型車両に適用することもできる。また、運転者及び同乗者が着座するそれぞれのシートを備えた車両であれば、三輪又は四輪の鞍乗型車両に適用することもできる。すなわち、鞍乗型車両は、乗員が車体に跨って乗車する乗り物全般を含む。
【符号の説明】
【0081】
1 電動二輪車(鞍乗型車両)
11 ヘッドパイプ
12 アッパーフレーム
13 ダウンフレーム
14 アンダーフレーム
15 リアフレーム
16 シートレール
25 後輪
40 スイングユニット
45 エンジン(パワーユニット)
50 フレーム構造
51 リンク機構(リンク部材)
83 ピボットブラケット
86 サブブラケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドパイプ(11)と、
前記ヘッドパイプ(11)から下後方に向けて延びるアッパーフレーム(12)と、
前記アッパーフレーム(12)の下方に配置され、前記ヘッドパイプ(11)から下後方に向けて延びるダウンフレーム(13)と、
前記ダウンフレーム(13)の下端から後方に向けて延びるアンダーフレーム(14)と、
前記アッパーフレーム(12)の下部から上後方に向けて延びるリアフレーム(15)と、
駆動力を発生するパワーユニット(45)を有し、後輪(25)を回転自在に保持するスイングユニット(40)と、
前記アッパーフレーム(12)の下部と前記アンダーフレーム(14)の後部とを連結するピボットブラケット(83)と、を備える鞍乗型車両(1)のフレーム構造(50)であって、
前記ピボットブラケット(83)は、前記アッパーフレーム(12)が延びる方向に沿って前記アッパーフレーム(12)の前方に接合されており、
前記スイングユニット(40)は、前記ピボットブラケット(83)に揺動可能に支持されている
鞍乗型車両(1)のフレーム構造(50)。
【請求項2】
前記リアフレーム(15)は、前記アッパーフレーム(12)の下部における前記ピボットブラケット(83)が連結されている部分の後側に接合される
請求項1に記載の鞍乗型車両(1)のフレーム構造(50)。
【請求項3】
前記アッパーフレーム(15)の下部の後側と前記リアフレーム(15)の前部の下側とを連結するサブブラケット(86)を更に備え、
前記サブブラケット(86)は、前記アッパーフレーム(12)が延びる方向に沿って前記アッパーフレーム(12)に接合され、かつ、前記リアフレーム(15)が延びる方向に沿って前記リアフレーム(15)に接合される
請求項2に記載の鞍乗型車両(1)のフレーム構造(50)。
【請求項4】
一端が前記スイングユニット(40)に支持されると共に他端が前記サブブラケット(86)に支持され、前記スイングユニット(40)の前後方向の動きを規制するリンク部材(51)を更に備える
請求項3に記載の鞍乗型車両(1)のフレーム構造(50)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−201242(P2012−201242A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68169(P2011−68169)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】