説明

鞘管及びワイヤーハーネス

【課題】高圧電線と低圧電線とを同一経路で配索する配索形態において、低圧電線がノイズ源である高圧電線から電磁ノイズの影響を受けず、低圧電線を含めた全ての電線のノンシールド化を図ることができ、結果的に、配索スペースの削減、軽量化、コストダウンを図ることができ、また、複数本の電線でもスムーズな挿入作業ができる鞘管及びワイヤーハーネスの提供を目的とする。
【解決手段】電磁ノイズ遮断用のシールド部材で形成するとともに、複数本の電線20の挿通を許容する電線挿通空間40を鞘管本体32の内部に有する鞘管30、及び該鞘管30を備えたワイヤーハーネス10であって、電線挿通空間40における管軸方向Xに対して直交する直交断面において、電磁ノイズを発生する高電圧電線20Hの挿通を許容する高電圧用挿通空間40Hと、低電圧電線20Lの挿通を許容する低電圧用挿通空間40Lとに区分けするとともに、高電圧電線20Hと前記低電圧電線20Lとを隔離する隔壁31を、シールド部材により管軸方向Xに沿って電線挿通空間40に形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電線を覆って保護する鞘管及びその鞘管を用いたワイヤーハーネスに関し、例えば、電線の高周波電流による電磁ノイズが周囲に悪影響を与えることを防止するシールド機能を備えた鞘管及びその鞘管を用いたワイヤーハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電気自動車のインバータ装置やモータなどの機器間に接続する電線の中でも、特に、高圧電線は、高周波電流が流れることや機器からの伝播により発生する電磁ノイズの影響が大きいことが知られている。
よって、ノイズ源である高圧電線を、シールド部材を備えたシールド電線として構成することで、他の機器や電線に対して悪影響を及ぼさないように、発生するノイズを遮断していた。
さらに、これら複数本のシールド電線の外周を、合成樹脂製のプロテクタや、特許文献1に開示の蛇腹管で覆うことで、電線を外的損傷から保護していた。
すなわち、従来のワイヤーハーネスは、電磁ノイズに対するシールド機能と外的負荷に対する保護機能とを確保するため、それぞれ別々の部材を備えた構成であるため、部品点数が多くなり、その分、配索スペースやコストが嵩むとともに、重量化するという問題があった。
【0003】
このような問題に対して特許文献2では、複数本のノンシールド電線を金属製のパイプ内に挿通することで、これらノンシールド電線を一括で保護した状態で電磁ノイズをシールドする導電路が提案されている。
【0004】
これにより、従来より、シールド機能と保護機能とを別々の部材で構成していたものを、これら機能を兼ね備えた上述したような金属管を用いることで部品点数を削減でき、配索スペースの省スペース化、コストダウン、及び軽量化が期待できる。
【0005】
ところで、最近では、車両における部品の搭載位置関係の改良や、ワイヤーハーネスの配索スペースの削減などの様々な理由により、図5に示すように、高圧電線20Hと低圧電線20L’とを同じ金属管101に挿通して同一経路でまとめて配索するタイプのワイヤーハーネス100が増加している。
【0006】
しかし、高圧電線20Hと低圧電線20L’とが混在した複数本の電線20を一括して金属管101の1つの内部空間に挿通した構成の従来のワイヤーハーネス100の場合、低圧電線20L’は、ノイズ源である高圧電線20Hからの電磁ノイズの影響を受けるため、ノイズ対策として、導体の外周にシールド部材として例えば、編組物23を被覆した構成のシールド電線を使用する必要があった。
【0007】
このように、高圧電線20Hと低圧電線20L’とが混在した複数本の電線20を金属製のパイプに挿通する場合には、特許文献2における導電路においても、上述と同様に電磁ノイズの影響を受けるという問題が生じることが想定される。
【0008】
すなわち、ノイズ源である高圧電線20Hと低圧電線20L’とをまとめて同じ金属管101に挿通して同一経路で配策する場合、低圧電線20L’を含めた全ての電線20のノンシールド化を実現できず、ノイズ源である高圧電線20H、或いはノイズの影響を受ける低圧電線20L’をシールド電線として構成する必要があり、十分な配索スペースやコストダウンの削減や、軽量化を図れなかった。
【0009】
また、複数本の電線を同じ金属管に挿入しようとした場合、金属管内において電線が撓むなどして互いに接触するため、金属管への挿入作業に手間を要するという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−123461号公報
【特許文献2】特開2004−171952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこでこの発明は、高圧電線と低圧電線とを同一経路で配索する配索形態において、低圧電線がノイズ源である高圧電線から電磁ノイズの影響を受けず、低圧電線を含めた全ての電線のノンシールド化を図ることができ、結果的に、配索スペースの削減、軽量化、コストダウンを図ることができ、また、複数本の電線でもスムーズな挿入作業ができる鞘管及びワイヤーハーネスの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明は、電磁ノイズ遮断用のシールド部材で形成するとともに、複数本の電線の挿通を許容する電線挿通空間を鞘管本体の内部に有する鞘管であって、前記電線挿通空間における管軸方向に対して直交する直交断面において、電磁ノイズを発生する高電圧電線の挿通を許容する高電圧用挿通空間と、低電圧電線の挿通を許容する低電圧用挿通空間とに区分けするとともに、前記高電圧電線と前記低電圧電線とを隔離する隔壁を、前記管軸方向に沿って前記電線挿通空間に形成し、前記隔壁を、前記シールド部材で構成したことを特徴とする。
【0013】
上述した構成により、高圧電線と低圧電線とを同一経路で配索する配索形態において、低圧電線がノイズ源である高圧電線から電磁ノイズの影響を受けず、低圧電線を含めた全ての電線のノンシールド化を図ることができ、結果的に、配索スペースの削減、軽量化、コストダウンを図ることができる。
【0014】
詳しくは、電磁ノイズを発生する高電圧電線と、高電圧電線から発生する電磁ノイズの影響を受ける低電圧電線とからなる複数本の電線を、鞘管本体内部の電線挿通空間にまとめて挿通しても、前記電線挿通空間において、シールド部材で構成した隔壁によって、前記高電圧電線に対して前記低電圧電線を隔離したため、低電圧電線をノンシールド電線で構成したものを用いても、高電圧電線から発生する電磁ノイズの影響を受けることを防ぐことができる。
【0015】
従って、鞘管に挿通する全ての電線をノンシールド電線としたノンシールド化の実現を図ることができ、同一経路で配策する配索スペースの削減、軽量化、及び、コストダウンを図ることができる。
【0016】
さらに、上述した構成により、複数本の電線でも鞘管に対してスムーズな挿入作業を行うことができる。
【0017】
詳しくは、電線挿通空間を隔壁によって高電圧用挿通空間と低電圧用挿通空間とに区分けすることにより、同一空間に挿入する電線の本数を低減することができる。このため、前記電線挿通空間において、撓んだ電線同士が互いに接触し合う機会を低減でき、複数本の電線であっても鞘管に対してスムーズに挿入することができる。
【0018】
この発明の態様として、前記電線挿通空間の前記直交断面を、複数の前記電線の並列配置を許容する断面形態で構成し、前記隔壁を、前記高電圧電線と前記低電圧電線との間に配置することができる。
【0019】
上述した構成によれば、前記電線挿通空間の前記直交断面を、複数の前記電線の並列配置を許容する断面形態で構成することで、例えば、前記電線挿通空間の前記直交断面が円形状の断面形態の場合と比較して鞘管本体の薄肉化を図ることができるため、車体に取り付けたとき嵩張らず、また、取り付け易い形態とすることができる。
【0020】
またこの発明の態様として、前記鞘管本体と前記隔壁とを押し出し成形により一体に構成することができる。
【0021】
上述した構成によれば、例えば、前記鞘管本体と前記隔壁とを別体で構成した場合のように、前記鞘管本体と前記隔壁とを別々に形成した後で、互いに一体に取り付けるといった手間を必要とせず、押し出し成形により、前記鞘管本体と前記隔壁とを一体に構成した鞘管を一気に形成でき、大量生産も可能となる。
【0022】
またこの発明の態様として、前記シールド部材を金属材料で形成することができる。
上記構成によれば、前記シールド部材を金属材料で形成することにより、優れたシールド機能を発揮することができるとともに、強度、耐熱性に優れるため、外的負荷に対して優れた保護機能を確保することができる。さらに、熱伝導性に優れるため、内部に熱が篭ることを回避でき、管の内側と外側との優れた均熱機能を確保することができる。さらにまた、金属材料の中には、材料供給性が安定した材料も多いため、大量生産にも適している。
【0023】
またこの発明の態様として、前記隔壁を、編組物で構成することができる。
編組物は、変形性、屈曲性に優れるため、前記隔壁をこのような編組物で構成することによって、例えば、配策経路に屈曲部分を有する場合においても、その屈曲部分の形状に対応して屈曲させて配策することができる。
なお、前記編組物は、例えば、金属線などの線材を編み上げた構成であり、例えば、銅または銅合金に錫メッキ(以下において、Snメッキとする)を施した導体による編組みや、銅または銅合金にニッケルメッキ(以下において、Niメッキとする)を施した導体による編組みとすることができる。
【0024】
またこの発明は、上述した鞘管と、前記鞘管における前記高電圧用挿通空間に挿通する高圧用電線と、前記鞘管における前記低電圧用挿通空間に挿通する低圧用電線とで構成し、前記低圧用電線を低圧用ノンシールド電線で構成したワイヤーハーネスであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
この発明により、高圧電線と低圧電線とを同一経路で配索する配索形態において、低圧電線がノイズ源である高圧電線から電磁ノイズの影響を受けず、低圧電線を含めた全ての電線のノンシールド化を図ることができ、結果的に、配索スペースの削減、軽量化、コストダウンを図ることができ、また、複数本の電線でもスムーズな挿入作業ができる鞘管及びワイヤーハーネスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1実施形態のワイヤーハーネスの構成説明図。
【図2】第1実施形態のワイヤーハーネスの構成説明図。
【図3】第2実施形態のワイヤーハーネスの構成説明図。
【図4】第3実施形態のワイヤーハーネスの構成説明図。
【図5】従来のワイヤーハーネスの構成説明図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
第1実施形態のワイヤーハーネス10Aは、車両、特に電気自動車のバッテリ、モータなどの装置間を電気的に接続して、高周波電流を流すのに適した構成であり、例えば、車両床下に配策している。
【0028】
ワイヤーハーネス10Aは、図示しない車両床下の定められた取付位置の凹凸形状に応じた適合形状で、該取付位置に対して図示しないクランプによって取り付けている。
【0029】
すなわち、ワイヤーハーネス10Aは、図1(a),(b)、及び図2に示すように、前記適合形状に形作られた形状となるよう管軸方向Xにおいて適宜の屈曲部分を形成している。なお、図1(a)は、ワイヤーハーネス10Aの管軸方向Xにおける一部分、詳しくは、屈曲部分としての第1屈曲部33、及び第2屈曲部34、並びにこれら屈曲部分の周辺部分を一部断面で示した外観図である。図1(b)は図1(a)のA−A線端面図である。図2は、図1で示した鞘管30の構成説明図であり、鞘管本体32の周方向の一部を省略して示した鞘管30の構成説明図である。また、以下の説明においては、図1中のX方向、W方向、T方向のそれぞれを、ワイヤーハーネス10Aの管軸方向X、幅方向W、厚み方向Tとして説明する。
【0030】
ワイヤーハーネス10Aは、3本の電線20と、電磁ノイズ遮断機能を有するシールド機能、および外的負荷に対しての保護機能を兼ね備えたアルミ二ウム合金製の鞘管30とで構成している。
【0031】
3本の電線20のうち、2本の電線20は、高周波電流に対応して定格電流が高く、電磁ノイズを発生する高圧用電線20Hとして構成し、1本の電線20は、高圧用電線20Hよりも定格電流が低く、高圧用電線20Hからの電磁ノイズの影響を受け易い低圧用電線20Lとして構成している。高圧用電線20Hと低圧用電線20Lとは、いずれも、金属線の編組物や、金属箔などのシールド部材で導体21の外周を覆っていないシールドレス電線で構成している。
なお、電線20は、銅合金などの金属性の導体21の外周をポリ塩化ビニルなどの合成樹脂成性の絶縁被覆22で被覆した構成である。
【0032】
鞘管30は、管外周面を構成する鞘管本体32と、鞘管本体32の内部に有する電線挿通空間40を高電圧用挿通空間40Hと低電圧用挿通空間40Lとに区分けする隔壁31とで構成し、押し出し成形により鞘管本体32と隔壁31とを一体に構成している。
【0033】
前記鞘管本体32は、管軸方向Xに対して直交する直交断面が厚み方向Tに対して幅方向Wが長い長孔状の直交断面で形成している。換言すると、鞘管本体32の内部に有する電線挿通空間40は、図1(b)に示すように、3本の電線20が幅方向Wに沿って並列配置した状態での挿通を許容する長孔形状の直交断面で形成している。
【0034】
なお、長孔形状とは、厚み方向Tの長さに対して長い幅方向Wにおける両端側が、幅方向Wにおいて互いの内周面が対向する半円弧形状であり、これら一対の半円弧形状の厚み方向Tの一方の端部同士を幅方向Wに沿って直線状に結ぶとともに、厚み方向Tの他方の端部同士を幅方向Wに沿って直線状に結んだ形状である。
【0035】
前記隔壁31は、高電圧用挿通空間40Hと低電圧用挿通空間40Lとの体積比が略2:1となるよう厚み方向Tと一致する方向に沿った直線状の形態で電線挿通空間40を区分けするように配設している。
【0036】
これにより、隔壁31は、高電圧用挿通空間40Hに挿通した2本の高電圧電線20Hと、低電圧用挿通空間40Lに挿通した1本の低電圧電線20Lとを隔離する。
【0037】
なお、高電圧用挿通空間40Hは、2本の高電圧電線20Hを幅方向Wにおいて互いに隣接させて並列配置した状態での挿通を許容する直交断面で形成している。低電圧用挿通空間40Lは、1本の低電圧電線20Lを、並列配置した2本の高電圧電線20Hに対して、隔壁31を介在させて並列配置した状態での挿通を許容する直交断面で形成している。
【0038】
また、隔壁31は、鞘本体の管軸方向Xにおいて第1屈曲部33、及び第2屈曲部34のそれぞれの屈曲形状に対応して屈曲し、高電圧用挿通空間40Hにおける前記直交断面における高電圧用挿通空間40Hと低電圧用挿通空間40Lとの空間比が前記管軸方向Xの全長に亘って一定となるよう形成している。
【0039】
以上により、ワイヤーハーネス10Aは、低圧用電線20Lと高圧用電線20Hとを鞘管30によって保護した状態で同一経路に配策することができ、以下のような様々な作用、効果を奏することができる。
鞘管30は、高電圧電線20Hに対して低電圧電線20Lを隔離する金属製の隔壁31を、前記管軸方向Xに沿って電線挿通空間40に形成しているため、高電圧電線20Hと低電圧電線20Lとからなる複数本の電線20を、鞘管本体32の内部の電線挿通空間40にまとめて挿通したとき、電線挿通空間40において、シールド機能を有するアルミ合金製の隔壁31によって、高電圧電線20Hと低電圧電線20Lとを互いに隔離した状態で挿通することができる。
【0040】
よって、高電圧電線20Hと、該高電圧電線20Hから発生する電磁ノイズの影響を受ける低電圧電線20Lとが混在する全ての電線20をノンシールド化し、これら複数のノンシールド電線を同一経路で配策しても電磁ノイズの影響を受けることを防ぐことができる。
【0041】
従って、鞘管30に挿通する全ての電線20をノンシールド電線20としたノンシールド化の実現を図ることができ、同一経路で配策した複数本の電線20の軽量化、及び、コストダウンを図ることができる。
【0042】
また、鞘管30は、隔壁31により、電線挿通空間40を、管軸方向Xに対して直交する直交断面において、高電圧用挿通空間40Hと低電圧用挿通空間40Lとに区分けした構成であるため、複数の電線20を鞘管30に挿入する挿入作業をスムーズに行うことができる。
【0043】
このような作用効果について、詳述すると、まず、電線20は、可撓性を有するため、従来のように、隔壁31によって区分けされていない1つの空間からなる電線挿通空間40に複数本の電線20をまとめて挿通する場合、電線挿通空間40において電線20が撓み、電線20の外周側に有する摩擦抵抗の高い絶縁被覆同士22,22が互いに接触するため、鞘管30に対する電線20の挿入作業に手間を要するという問題があった。
【0044】
これに対して、電線挿通空間40を、上述したように隔壁31によって高電圧用挿通空間40Hと低電圧用挿通空間40Lとに区分けして、高電圧用挿通空間40Hに高電圧電線20Hを挿通するとともに、低電圧用挿通空間40Lに低電圧電線20Lを挿通する構成であるため、同一空間に挿通する電線20の数を低減できる。
従って、多数の電線20を鞘管30に挿通する挿入作業をスムーズに行うことができる。
【0045】
また、鞘管30は、前記電線挿通空間40の前記直交断面を、複数の前記電線20が並列配置することを許容する断面形態で構成することで、例えば、前記電線挿通空間40の前記直交断面が円形状の断面形態の場合と比較して鞘管本体32を薄肉化することができるため、車両に取り付けたとき嵩張らず、また、取り付け易い形態とすることができる。
【0046】
さらに、鞘管30は、電線挿通空間40の前記直交断面を、複数の電線20が並列配置することを許容する断面形態で構成しているため、前記高電圧電線20Hと前記低電圧電線20Lとの間に配置する隔壁31は、厚み方向Tと一致する直線状の形態で配置した構成とすることができるなど、電線挿通空間40において、高電圧電線20Hに対して低電圧電線20Lを隔離し易い形態で形成することができる。
【0047】
さらにまた、隔壁31は、厚み方向Tに対して幅方向Wに長い長孔形状の前記電線挿通空間40において、鞘管本体32の厚み方向Tの両端部同士を架設した形態となるため、鞘管30の補強用のリブとしての機能も発揮し、外的負荷に対する強度を向上させることができるという効果も奏する。
【0048】
また、鞘管30は、鞘管本体32と隔壁31とを押し出し成形によって一体に構成することにより、例えば、前記鞘管本体32と前記隔壁31とを別体で構成した場合のように、鞘管本体32と隔壁31とをそれぞれ別々に形成した後で、互いに一体に取り付けるといった手間を必要とせず、押し出し成形により、前記鞘管本体32と前記隔壁31とを一体に構成した鞘管30を一気に形成でき、大量生産も可能となる。
【0049】
また、鞘管本体32と隔壁31とを別体で構成した場合のように、鞘管本体32と隔壁31との境界部分に、継ぎ目や取り付け部材などの電線20の挿通の妨げとなる凹凸ができないため、鞘管本体32に電線20を挿通する際、これら凹凸に電線20が引っ掛かることなく、スムーズに電線20の挿入作業を行うことができる。
【0050】
隔壁31は、アルミ合金材料などの金属材料で形成しているため、電磁ノイズに対する優れたシールド機能を発揮することができるとともに、強度、耐熱性に優れるため、外的負荷に対して優れた保護機能を確保することができる。さらに、合成樹脂と比較して熱伝導性に優れるため、内部に熱が篭ることを回避でき、管の内側と外側との優れた均熱機能を確保することができる、さらにまた、アルミ合金材料は、材料供給性が安定しているため、大量生産にも適している。
【0051】
以下では、他の実施形態のワイヤーハーネス10B,10Cについて説明する。
但し、以下で説明するワイヤーハーネス10B,10Cの構成のうち、上述した実施形態におけるワイヤーハーネス10Aと同様の構成については、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0052】
(第2実施形態)
第2実施形態のワイヤーハーネス10Bは、図3に示すように、鞘管30Bと4本の電線20とで構成している。なお、図3はワイヤーハーネス10Bの前記直交断面を示し、図1(b)に対応する端面図を示す。
【0053】
鞘管本体32Bは、内部に4本の電線20を並列配置した状態での挿通を許容する電線挿通空間40Bを備えている。
【0054】
隔壁31Bは、第1隔壁31Baと第2隔壁31Bbとで構成し、それぞれ幅方向Wにおいて互いに平行になるよう前記電線挿通空間40Bに配置している。
前記電線挿通空間40Bは、第1隔壁31Baと第2隔壁31Bbによって、幅方向Wの一端側から他端側(図3中の左側から右側)へ順に、第1電線挿通空間41、第2電線挿通空間42、第3電線挿通空間43に区分されている。
【0055】
詳しくは、第1電線挿通空間41は、第1隔壁31Baによって、1本の電線20の挿通を許容する空間に区分けされ、第2電線挿通空間42は、第1隔壁31Ba、及び、第2隔壁31Bbによって、これら隔壁31Ba,31Bbの間に1本の電線20の挿通を許容する空間に区分けされ、第3電線挿通空間43は、第2隔壁31Bbによって、2本の電線20の挿通を許容する空間に区分けされている。
【0056】
上述したワイヤーハーネス10Bによれば、2つの隔壁31Bによって、前記電線挿通空間40Bを、3つの空間に区分けすることができる。
このため、図示しないが、4本の電線20のうち、例えば、3本の電線20を高電圧電線20Hとして構成し、1本の電線20を低電圧電線20Lとして構成した組み合わせからなる場合、1本の低電圧電線20Lは、第1電線挿通空間41と第2電線挿通空間42のいずれの空間に挿通しても3本の高電圧電線20Hに対して隔離することができる。
【0057】
従って、高電圧電線20Hと、高電圧電線20Hから発生する電磁ノイズの影響を受ける低電圧電線20Lとが混在する全てをノンシールド化した複数の電線20を同一経路で配策しても電磁ノイズの影響を受けることがなく、鞘管30Bに挿通する全ての電線20をノンシールド電線20としたノンシールド化の実現を図ることができる。
【0058】
さらに、前記ワイヤーハーネス10Bは、電線挿通空間40Bに第1隔壁31Baと第2隔壁31Bbとを配置することによって、例えば、第2隔壁31Bbを配置していない構成と比較して、第2電線挿通空間42、或いは、第3電線挿通空間43に電線20を挿通する際に、第2電線挿通空間42と第3電線挿通空間43との間に第2隔壁31Bbを介在することによって、その分、撓んだ電線20同士が接触することを回避できる。
【0059】
従って、同一空間に挿通する電線20の数を低減できるため、多数の電線20を鞘管30Bに挿通する挿入作業をスムーズに行うことができる。
【0060】
さらにまた、図3に示すように、鞘管30Bは、4本の電線20が、高電圧電線20Hと低電圧電線20Lとの2種類に分類する組み合わせに対応するだけでなく、流れる電流の大きさ、すなわち定格電流の大きさに応じて例えば、高電圧電線20H、中電圧電線20M、低電圧電線20Lの3種類に分類した組み合わせにも対応して電磁ノイズの影響を防ぐことができる。
【0061】
詳しくは、低電圧電線20Lを第1電線挿通空間41に挿通することで、第1隔壁31Baによって、中電圧電線20M、及び、高電圧電線20Hから発生する電磁ノイズの影響を防ぐことができる。さらに、中電圧電線20Mを第2電線挿通空間42に挿通することで、第2隔壁31Bbによって、高電圧電線20Hから発生する電磁ノイズの影響を防ぐことができる。
【0062】
従って、定格電流の帯域が異なる複数の電線20を混在した状態で同一経路で配策しても電磁ノイズの影響を受けることがないため、鞘管30Bに挿通する全ての電線20をノンシールド電線としたノンシールド化の実現を図ることができる。
【0063】
(第3実施形態)
第3実施形態のワイヤーハーネス10Cは、図4(a),(b),(c)に示すように、鞘管30Cを、直線状のアルミ合金パイプにより構成した非屈曲型鞘管構成部30Xと、屈曲自在な屈曲型鞘管構成部30Yとで構成し、これら非屈曲型鞘管構成部30Xと屈曲型鞘管構成部30Yとを管軸方向Xに沿って直列に接続して前記適合形状に形作っている。
なお、図4(a)はワイヤーハーネス10Cの管軸方向Xの一部分の側面図を示し、図4(b)は図4(a)中のB−B線端面図を示し、図4(c)は図4(a)中のC−C線端面図を示す。
【0064】
屈曲型鞘管構成部30Yは、図4(a),(c)に示すように、アルミ鞘管本体32Bと隔壁31Bとを金属線の編組物61で一体に構成し、屈曲部分の管軸方向Xにおける両端部を非屈曲型鞘管構成部30Xと接続している。
【0065】
上記構成により、屈曲型鞘管構成部30Yは、電磁ノイズに対するシールド機能を確保しつつ、屈曲性を備えることができるため、屈曲型鞘管構成部30Yを、凹凸形状の取り付け位置の屈曲部分において、該屈曲部分の屈曲角度に応じて屈曲させて配置することで、ワイヤーハーネス10Cを取り付け位置の凹凸形状の応じた適合形状で配策することができる。
【0066】
この発明の構成と、上述した実施形態との対応において、
金属材料は、アルミ合金材料に対応するも、この発明は、上述した実施形態に限定せず、様々な実施形態で構成することができる。
【0067】
例えば、隔壁は、上述したような形態、位置、数で電線挿通空間に配置するに限らず、様々な形態、位置、数で電線挿通空間に配置することができ、これら隔壁によって電線挿通空間を様々な形態、位置、数の空間に区分けすることができる。
【0068】
具体的には、複数の電線を、定格電流の大きさに応じて、すなわち、電磁ノイズの発生し易さに応じて、例えば、第1,3実施形態では、高電圧電線20H、低電圧電線20Lの2種類に分類した実施例について説明し、第2実施形態では、高電圧電線20H、中電圧電線20M、低電圧電線20Lの3種類に分類した実施例について説明したが、このように3種類以下に分類する実施例に限らず、4種類以上の任意の数で分類し、複数の電線を、これら分類した電線の組み合わせごとに隔離するよう隔壁を電線挿通空間に配置してもよい。
なお、隔壁は、同程度の定格電流からなる複数の電線を互いに区分けするように電線挿通空間に配置してもよい。
【0069】
さらに、鞘管は、第1実施形態から第3実施形態のように、隔壁と鞘管本体とが一体である構成に限らず、例えば、隔壁を鞘管本体に対して管軸方向X、厚み方向T、或いは幅方向Wに抜き差しするなどして、鞘管本体に対して隔壁が着脱自在な構成であってもよく、この場合、鞘管本体に対する隔壁の取り付け位置を変更可能に構成し、隔壁の取り付け位置を変更することによって区分けする空間の形態、位置、数を変更可能な構成としてもよい。
【0070】
さらにまた、鞘管は、電磁ノイズに対するシールド機能を備えたものであれば、アルミ合金に限定せず、様々な材質で形成することができる。例えば、ステンレスなど他の金属材料であってもよく、さらには、例えば、粉末状の金属を合成樹脂に混入して形成しものも含む。
【0071】
また、鞘管は、第3実施形態で説明した屈曲型鞘管構成部30Yのように、隔壁31と鞘管本体32とを金属線の編組物61で一体に構成した構成に限らず、隔壁と鞘管本体とのうち、一方のみを、編組物61で構成した鞘管であってもよい。
【0072】
さらに、隔壁と鞘管本体とのうち、少なくとも一方を金属線の編組物61で構成した構成の鞘管は、第3実施形態で説明した屈曲型鞘管構成部30Yのように、管軸方向Xの屈曲部分に構成するに限定せず、例えば、管軸方向Xの直線部分、或いは、全長に亘って様々な形態で構成することができる。
【0073】
また、鞘管本体は、管軸方向Xに対して直交する直交断面が第1実施形態から第3実施形態のような長孔形状の直交断面で形成した構成の鞘管本体32,32Bに限らず、例えば、楕円形状、円形状、多角形状など、様々な形状の直交断面で形成することができる。多角形状の場合は、例えば、三角形状、四角形状などを挙げることができ、四角形状の場合には菱形形状としてもよい。
なお、鞘管本体32は、管軸方向に沿って一定の前記直交断面に限らず、管軸方向において前記直交断面が変形してもよい。
【符号の説明】
【0074】
10A,10B,10C…ワイヤーハーネス
30,30B,30C…鞘管
32,32B…鞘管本体
31,31B…隔壁
31Ba…第1隔壁
31Bb…第2隔壁
20…電線
20H…高圧用電線
20L…低圧用電線
40,40B…電線挿通空間
40H…高電圧用挿通空間
40L…低電圧用挿通空間
41…第1電線挿通空間
42…第2電線挿通空間
43…第3電線挿通空間
61…編組物
X…管軸方向
W…幅方向
T…厚み方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁ノイズ遮断用のシールド部材で形成するとともに、複数本の電線の挿通を許容する電線挿通空間を鞘管本体の内部に有する鞘管であって、
前記電線挿通空間における管軸方向に対して直交する直交断面において、電磁ノイズを発生する高電圧電線の挿通を許容する高電圧用挿通空間と、低電圧電線の挿通を許容する低電圧用挿通空間とに区分けするとともに、前記高電圧電線と前記低電圧電線とを隔離する隔壁を、前記管軸方向に沿って前記電線挿通空間に形成し、
前記隔壁を、前記シールド部材で構成した
鞘管。
【請求項2】
前記電線挿通空間の前記直交断面を、
複数の前記電線の並列配置を許容する断面形態で構成し、
前記隔壁を、前記高電圧電線と前記低電圧電線との間に配置した
請求項1に記載の鞘管。
【請求項3】
前記鞘管本体と前記隔壁とを押し出し成形により一体に構成した
請求項1、又は、2に記載の鞘管。
【請求項4】
前記シールド部材を金属材料で形成した
請求項1から3のいずれかに記載の鞘管。
【請求項5】
前記隔壁を、編組物で構成した
請求項1から4のいずれかに記載の鞘管。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の鞘管と、
前記鞘管における前記高電圧用挿通空間に挿通する高圧用電線と、
前記鞘管における前記低電圧用挿通空間に挿通する低圧用電線とで構成し、
前記低圧用電線を低圧用ノンシールド電線で構成した
ワイヤーハーネス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−134367(P2012−134367A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286004(P2010−286004)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
【Fターム(参考)】