説明

音あるいは振動発生箇所検出装置

【目的】特に、作業現場内を移動する騒音源,および固定騒音源に対しての騒音源発生箇所の検出、監視を可能とする検出装置を提供することを目的とするものである。
【構成】音検出箇所となる音源箇所を含む監視エリアを二次元座標上に表示すると共に、X軸方向に所定距離離した状態でマイクを2セット、Y軸方向に前記の所定距離と同様の距離を離した一対のマイクを1セット、合計6台のマイクが二次元座標配置状態となるよう監視エリアに設置して音検出器を形成し、検出すべき音源からの音を音検出器の6台のマイクで各々検出し、検出したそれぞれのマイクからの音到達時間と6台のマイクが配置された二次元座標上の値とを用いて演算し、検出すべき音の発生箇所を算出する、ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば工事現場における工事騒音や工事振動をモニタリングしてその発生箇所を検出する音あるいは振動発生箇所検出装置に関するものである。

【背景技術】
【0002】
従来、本件の発明者らは、すでに、いわゆる主要騒音源と住宅等の騒音監視地点に各々配置したマイクロホンによりそれぞれの音圧を計測し、当該測定した音圧に基づき、例えば騒音の異常発生時に、いわゆる暗騒音の影響を自動判別し、影響騒音源を自動解析、警報発信する、騒音源の影響度解析システム「特開2008−298568」を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−298568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記音圧の測定による騒音源の影響度解析システムは、工事作業現場内のブルドーザやダンプトラックなど移動する音源への解析については考慮してシステムを構築してはおらず、もって工事作業現場内のブルドーザやダンプトラックなど移動する音源への解析精度は著しく低下しているものであった。
【0005】
また、従来のシステムではそのシステムの構成上、騒音監視地点において,作業現場内から発生する騒音とそれ以外から到来する騒音の影響を充分に分離し評価することがあまりできない構成ともなっていた。さらに、騒音監視地点において,作業現場から発生する騒音とそれ以外から到来する騒音の判別条件を,現場条件毎に初期設定し直し,また現場条件が改変された場合に再設定する必要がある構成ともなっていた。
また、従来のシステムでは、マイクロホンとシステム本体を専用ケーブルで接続する必要があり,ケーブル敷設に掛かるコストが多大でもあった。
さらに、従来のシステムでは、上記ケーブルの最大延長は200mであり,システム本体から200m以上離れた騒音源や住宅等への監視に適さないものであった。
【0006】
かくして、本発明は、前記従来の課題を解消するため、及び従来システムをステップアップするために創案されたものであって、特に、作業現場内を移動する騒音源,および固定騒音源に対しての騒音源発生箇所の検出、監視を可能とする検出装置を提供することを目的とするものである。
さらに、騒音監視地点に対して,作業現場内から発生する騒音のみを評価する、すなわち騒音源発生箇所が作業現場内なのか、あるいは作業現場外なのかをも判別する構成の検出装置であると共に、従来のシステムのように、詳細な判別条件の設定を必要とせず、また、長距離のケーブル敷設を必要としない低コストな検出装置を構築でき、検出装置配置箇所から騒音源や騒音監視地点との位置を詳細に設定する必要のない検出装置を提供することを目的とするものである。しかも本発明による検出装置は騒音のみならず振動についても同様に検出しうるものとなっている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かくして、本発明は、
音検出箇所となる音源箇所を含む監視エリアを二次元座標上に表示すると共に、2台のマイクを所定距離離した状態で一対とするセットにして、X軸方向あるいはY軸方向のいずれかの方向に2セット、他の方向には1セット配置し、合計6台のマイクが前記二次元座標配置状態となるよう前記監視エリアに設置して音検出器を形成し、
検出すべき音源からの音を前記音検出器の6台のマイクで各々検出し、検出したそれぞれのマイクからの音到達時間と前記6台のマイクが配置された二次元座標上の値とを用いて演算し、前記検出すべき音の発生箇所を算出する、
ことを特徴とし、
または、
音発生箇所となる音源箇所を含む監視エリアを三次元座標上に表示すると共に、X軸方向に所定距離離して1セット、Y軸方向に所定距離離して1セット及びZ軸方向に所定距離離して1セット、合計6台のマイクが前記三元座標配置状態となるよう前記監視エリアに設置して音検出器を形成し、
検出すべき音源からの音を前記音検出器の6台のマイクで検出し、検出したそれぞれのマイクからの音到達時間と前記6台のマイクの三次元座標上の値とを用いて演算し、前記検出すべき音の発生箇所を算出する、
ことを特徴とし、
または、
前記検出すべき音発生箇所は、移動する音発生箇所である、
ことを特徴とし、
または、
前記音検出器は6台以上のマイクでセット構成された、
ことを特徴とし、
または、
前記音検出器を振動検出器で構成し、検出すべき振動の発生箇所を特定する、
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明による音発生箇所の検出装置及び振動発生箇所の検出装置であれば、固定騒音源や固定振動源に対しての検出、監視のみならず、特に、工事作業現場内を移動する騒音源,振動源や固定騒音源や固定振動源に対しての検出、監視を可能とすると共に、騒音あるいは振動の監視地点に対して,作業現場内から発生する騒音や振動のみを検出、評価でき、さらには、工事現場条件の改変時に判別条件の設定を必要とせず、また装置の構築に際し、長距離のケーブル敷設を必要とせず低コストで構築できるとの優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】二次元座標上に配置した音検出器の配置例(その1)である。
【図2】二次元座標上に配置した音検出器の配置例(その2)である。
【図3】二次元座標上に配置した音検出器の配置例(その3)である。
【図4】三次元座標上に配置した音検出器の配置例である。
【図5】本発明を使用した騒音検出・監視システムの概略構成図である。
【図6】本発明の動作を説明する動作説明図である。
【図7】音源箇所を画面表示した例を説明する概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明を図に示す実施例に従って説明する。
【実施例】
【0011】
まず、騒音を検出し、監視する音発生箇所である音源箇所を含む監視エリアである工事現場1を描写した図面(平面図、立面図)あるいは写真をスキャナー等で読み込み、これをデジタルデータ化する。そして該デジタルデータをコンピュータ2に取り込み、コンピュータ2上に形成した二次元座標上に重ね合わせる。
【0012】
そして、実際の工事現場1において、例えば6台のマイク3・・・からなる音検出器4を前記工事現場1上のいわゆる評価地点に配置する。
この評価地点での配置状態については、前記二次元座標のX軸方向に所定距離離した一対のマイクを2セット、Y軸方向に前記の所定距離と同様の距離を離した一対のマイクを1セット、合計6台のマイク3・・・が、前記二次元座標配置状態となるよう前記実際の工事現場上に配置される。
【0013】
しかして、二次元座標上での音検出器4である6台のマイク3・・・の配置状態を図1に示す。
すなわち、図1では、間隔dをあけて、マイク3−1とマイク3−2とで1セット、またマイク3−3とマイク3−4とで1セットにして、都合2セットをX軸方向に配置し、また、同様に間隔dをあけて、マイク3−5とマイク3−6との1セットをY軸方向に配置するものとしてある。
【0014】
そして、例えば、工事現場1内の音源5からの騒音などが発生したとき、前記6台のマイク3・・・がその音を検出し、下記の計算式すなわち数1の式により、音源5のX,Y軸方向の座標値が計測でき、もってその座標値から実際の工事現場1での位置が検出出来るのである。
【0015】
すなわち、間隔dのマイク2台のセットをX軸方向に2セット、Y軸方向に1セット配置し、各マイクセットAB(3−1,3−2)、CD(3−3,3−4)、EF(3−5,3−6)について、音が到達するそれぞれの到達時間の差により到達方向(入射角)が算出出来る。
ここで、
【0016】
【数1】



このように、音源5の箇所であるX,Y軸方向の座標値が解析できるものとなり、その結果、実際の工事現場1における音源5の箇所が検出できるものとなる。
【0017】
なお、たとえ音源5が移動するもの、すなわち、作業現場1内のブルドーザーあるいはダンプカーなどが騒音の音源であっても、本発明であれば、瞬時に音源5の箇所が検出できるものとなる。
すなわち、本発明で使用するコンピュータ2の例えば前記数1による計算頻度は0.125秒毎であり、充分に移動する音源5を追尾してその移動する位置を検出できるのである。
また、騒音の発生源としては、ブレーカ,コンプレッサ,油圧ショベル,ロードホールダンプ,ベッセルダンプ,コンクリートミキサー車,他が考えられる。
【0018】
なお、二次座標上でのマイク3・・・の配置状態は、図2の状態でもかまわない。この場合は、正三角形のアレイを点対称にして配置したものであり、やはり音の到達時間差により騒音などの音源5の発生箇所を算出するものである。この場合において、音源5位置の充分な距離精度を求めるには、充分なアレイ半径や離隔距離が必要となる。
さらに、図3では二次座標における原点より放射状に一対のマイクセットを3セット配置したものである。このような配置状態であると、X軸方向及びY軸方向ともに音源5における計測位置の死角が少ないとの利点がある。
【0019】
次に、検出すべき騒音発生源などの音源5が高さ方向に移動しているときなどいわゆる三次元座標上での計測が必要な場合につき述べる。
例えば、建設中のダム上にブルドーザーあるいはダンプカーなどが移動しながら騒音を発生しているような場合の騒音発生箇所の検出、監視である。
【0020】
このような場合、作業現場1の図面は平面図とあわせて立面図も表示して用いられ、かかる平面図、立面図がスキャナで読み込まれ、これがデジタルデータ化される。そして該デジタルデータがコンピュータ2に取り込まれ、コンピュータ2上に形成された三次元座標上に重ね合わされる。
【0021】
しかして、三次元座標上に配置した前記音検出器4である6台のマイク3・・・の配置状態を図4に示す。図4では三次元座標の原点あるいは原点よりd(m)離れたX軸、Y軸、Z軸方向に6台のマイク3・・・を使用して、いわゆるマイクアレイを構築したものである。
ここで、それぞれのマイクをA(3−1),B(3−2),C(3−3),D(3−4),E(3−5),F(5−6)として、音源よりマイクA(3−1)に到達時間t、音速V、音源5の座標を(X,Y,Z)とするとA〜Fについては音源5とマイク3・・・との距離の関係式より、
【0022】
【数2】



となり、以上の演算により、音源5の発生位置、すなわち三次元座標値が検出できるものとなる。
【0023】
しかして、図4に示すように、三次元座標の原点及びX,Y,Z軸方向の等距離の点の都合6点にマイク3・・・を配置し、その音の到達時間差から、音源5のX,Y,Z座標値を求め、もって実際の配置箇所を算出するのである。ここで、音源5の充分な距離精度を求めるには、アレイ半径を大きくとる必要がある。例えば16KHZサンプリングの場合には全幅8m程度必要となる。
【0024】
次に、本発明を使用して、実際の工事現場などで騒音発生箇所を検出、監視するシステムについて図5を参照して説明する。
【0025】
図5において、音源測定点に6台のマイク3・・・が配置されている。そしてさらに、当該箇所には温度を電圧等で表示する温度計6が設置されている。しかして、この温度計6での温度計測はコンピュータ2に取り込まれ、例えば数1や数2の式において、音速Vの値の補正に用いられる。たとえ、一日間の計測においても温度上昇(例えば30度C)により音速Vも速くなり、温度下降(例えば15度C)すると音速Vも遅くなる。そのため、たえず温度の変化を計測し、これを音速Vの値に反映して、算出精度の向上を図っているのである。所定の計算は工事現場近傍の詰所7などのコンピュータ2で行われるが、ここで求められた検出データはインターネットなどを介して現場より離れた現場事務所8のホストコンピュータ9に送出され、当該現場事務所8では受信したデータにより、当該騒音がどこから発生したかなどが把握され、場合によっては警報がなされる。なお、図5において、符号10はADボードなどで構成されたAD変換器をしめす。
【0026】
次に、図6は本発明の使用状態を示すフローであり、まず、工事現場1など監視エリアからの騒音が前記音検出器4により取得、検出され(ステップ100)、該データはコンピュータ2に送出される。
【0027】
コンピュータ2では、騒音の評価計算がなされ(ステップ102)、この騒音が基準値をオーバーしていると判断されたときには(ステップ104でYES)、前記それぞれのマイク3・・・が検出した音の到達時間差と、あらかじめ騒音発生箇所を含んだ監視エリアが二次元座標あるいは三次元座標上に表された前記音検出器4のそれぞれのマイク3・・・の座標の値とが共に用いられて前記数1あるいは数2の式による演算が行われる(ステップ106)。そして、それにより騒音発生箇所の領域判別が行われ(ステップ108)、その騒音派生箇所が監視すべき工事現場などで発生してないのであれば(ステップ108でNO)計測は終了する(ステップ200)。
【0028】
しかし、その騒音発生箇所が、工事現場1内のものであったときには(ステップ108でYES)、図7に示すように、音源5が画面表示される(ステップ202)。ここで図7(a)は固定音源の表示、図7(b)は移動音源を表示したものである。
【0029】
ところで、本発明では騒音発生箇所の検出、監視のみならず、振動発生箇所の検出、監視も充分に行える。すなわち、音検出器4を構成する6台以上のマイク3・・・の変わりに振動検出器を使用すれば、数1あるいは数2の式を使用して振動発生箇所を特定することが出来るのである。
【符号の説明】
【0030】
1 工事現場
2 コンピュータ
3 マイク
4 音検出器
5 音源
6 温度計
7 詰所
8 現場事務所
9 ホストコンピュータ
10 AD変換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音検出箇所となる音源箇所を含む監視エリアを二次元座標上に表示すると共に、2台のマイクを所定距離離した状態で一対とするセットにして、X軸方向あるいはY軸方向のいずれかの方向に2セット、他の方向には1セット配置し、合計6台のマイクが前記二次元座標配置状態となるよう前記監視エリアに設置して音検出器を形成し、
検出すべき音源からの音を前記音検出器の6台のマイクで各々検出し、検出したそれぞれのマイクからの音到達時間と前記6台のマイクが配置された二次元座標上の値とを用いて演算し、前記検出すべき音の発生箇所を算出する、
ことを特徴とする音発生箇所の検出装置。
【請求項2】
音発生箇所となる音源箇所を含む監視エリアを三次元座標上に表示すると共に、X軸方向に所定距離離して1セット、Y軸方向に所定距離離して1セット及びZ軸方向に所定距離離して1セット、合計6台のマイクが前記三元座標配置状態となるよう前記監視エリアに設置して音検出器を形成し、
検出すべき音源からの音を前記音検出器の6台のマイクで検出し、検出したそれぞれのマイクからの音到達時間と前記6台のマイクの三次元座標上の値とを用いて演算し、前記検出すべき音の発生箇所を算出する、
ことを特徴とする音発生箇所の検出装置。
【請求項3】
前記検出すべき音発生箇所は、移動する音発生箇所である、
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載の音発生箇所の検出装置。
【請求項4】
前記音検出器は6台以上のマイクでセット構成された、
ことを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載の音発生箇所の検出装置。
【請求項5】
前記音検出器を振動検出器で構成し、検出すべき振動の発生箇所を特定する、
ことを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3または請求項4記載の振動発生箇所の検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−27687(P2011−27687A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−176500(P2009−176500)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【出願人】(000235543)飛島建設株式会社 (132)
【Fターム(参考)】