説明

音像定位制御装置

【課題】ステレオサウンドが作り出した3次元空間を一定に保持したまま、その空間内で別音源を移動させる。
【解決手段】各音像定位位置に対して測定された頭部伝達関数を模擬する音像定位フィルタを用いて構成されるモノラル3D移動処理回路9a〜9dと、ステレオ3Dサラウンド処理機能とモノラル3D移動処理機能の機能の切り替えが可能なステレオ3Dサラウンド処理/モノラル3D移動処理回路8と、フィルタ係数記憶と入力音源の遅延機能を担うRAM6a〜6tと、単一の記憶素子だけで音像定位フィルタの演算を可能にするコントローラ7と、フィルタ演算中にホストから送信される次の定位位置を示す係数を記憶するDPRAM5a,5bと、フィルタ演算後にDPRAM5a,5b中のデータをRAM6a〜6tにロードするFIFOコントローラ4とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル信号処理によって実際のスピーカ位置とは異なる所望の任意の位置に音像を定位させる音像定位制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル信号処理による音像定位制御技術の基本は、音源の各定位位置に対して測定された頭部伝達関数を模擬する音像定位フィルタ係数と、音源波形信号とのデジタルフィルタによる畳み込み演算である。この技術をサラウンド処理に応用した例として、ステレオ3Dサラウンド処理技術がある。
【0003】
ステレオ3Dサラウンド処理技術は、ステレオのLチャネル入力とRチャネル入力のそれぞれに、メイン成分の音像定位フィルタとクロス成分の音像定位フィルタを設け、それぞれの音像定位フィルタの出力をLチャネルの成分同士とRチャネルの成分同士で足し合わせて出力信号を生成するというものである。
【0004】
具体的には、図9に示すように、2チャンネル・ステレオ・プレーヤー91から出力されるLチャネル信号を、音源位置から人間の左耳に到達するまでのその空間音響特性(頭部伝達関数やインパルス応答とも言う)を表す係数を備えた音像定位フィルタFIRLL94aにて演算し、同じくLチャネル信号を、音源位置から人間の右耳に到達するまでの空間音響特性を表す係数を備えた音像定位フィルタFIRLR94cにて演算する。
【0005】
それと同時に、2チャンネル・ステレオ・プレーヤー91から出力されるRチャネル信号を、音源位置から人間の左耳に到達するまでの空間音響特性を表す音像定位フィルタFIRRL94bにて演算し、同じくRチャネル信号を、音源位置から人間の右耳に到達するまでの空間音響特性を表す音像定位フィルタFIRRR94dにて処理する。そして、左耳に到達する成分同士、右耳に到達する成分同士を加算し出力するというものである。この回路に、実際のステレオ音源位置よりも間隔の広いフィルタ係数を使用することでサラウンドが実現できる。
【0006】
ステレオ3Dサラウンド処理技術をさらに応用した技術として音源移動処理技術がある。この技術は、ステレオ3Dサラウンド処理回路の各音像定位フィルタに使用するフィルタ係数を変更し、音源の定位位置をリアルタイムに制御するというものである。これらに関してはいくつかの前例がある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−23299号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、ステレオ入力にのみ対応した音像定位制御では、ステレオサウンドが作り出す3次元空間を拡大/縮小/変形するか、もしくはステレオ入力の片方のチャンネル、つまりモノラル音源を3次元空間内で移動させるといういずれかの制御しか行うことができず、ステレオサウンドが作り出した3次元空間を一定に維持したまま、その空間内で別音源を移動させるということが不可能であった。
【0008】
また、従来、係数の変更による音響効果の制御の実施においては、係数記憶手段に格納されている係数をサンプリング周期毎に1ワードずつ逐次更新していたため、更新中、音響信号の時間波形が不連続となり、ノイズとなって表れるため、音像定位フィルタ全タップの係数の更新が終了するまでの間、フィルタ動作が安定するのを待つ必要があった。
【0009】
そのため、従来、係数の変更による音響効果の制御の実現には、係数記憶手段と音像定位フィルタを2セット備え、一方のセットでフィルタ演算を実施している間、他方の係数記憶手段では記憶されている係数をサンプリング周期毎に1ワードずつ更新し、フィルタ動作が安定したところで入力信号の通過するパスを切り替えるという方法をとっていた。
【0010】
また、従来、音像定位制御装置で、ステレオ3Dサラウンド処理とモノラル3D移動処理の両機能を実現するには、それぞれの機能を持った回路を各々搭載する必要があった。
【0011】
また、従来、音源を定位させるには、各音像定位位置に対して測定された頭部伝達関数を模擬する音像定位フィルタ係数を、定位させたいポイント分全て音像定位制御装置内部のROMまたはホストコントローラのRAMに記憶する必要があり、大規模な記憶素子を必要とした。また、記憶素子を小さくした場合には、定位させることが可能なポイントが少なくなるという事情があった。
【0012】
さらに、従来、ステレオ3Dサラウンド処理回路では、ステレオスピーカの左右の周波数特性がほとんど同特性であるという特性を利用していなかったために、メイン成分の係数記憶素子とクロス成分の係数記憶素子を左右で別々に搭載し、効率的な記憶素子の利用ができていないという事情があった。
【0013】
また、従来、単一の音像定位フィルタでは、1サンプル周期内に定位させることのできる音源数は1音源であったため、1音源をサンプル周期内に2箇所に定位させるには2つの音像定位制御装置を必要としていた。また、従来、単一の音像定位フィルタには、フィルタ係数の記憶のための記憶素子と、入力信号を遅延させるための記憶素子との2つの記憶素子を必要としていた。
【0014】
また、従来、単一の音像定位フィルタ内には、フィルタ係数と遅延させた入力信号との乗算を実施する乗算器をそれぞれのタップで所有していたため、多数の乗算器を内蔵する必要があった。また、それらの乗算結果を加算する加算器もフィルタのタップ数分の入力に対応した加算器が必要であった。
【0015】
さらに、従来、音像定位制御装置内の音像定位フィルタのデバッグには、外部からの入力信号として単位インパルスを入力し、出力端でインパルス応答を確認する必要があった。
【0016】
本発明は、上記従来の事情に鑑みてなされたものであって、ステレオサウンドが作り出した3次元空間を一定に保持したまま、その空間内で別音源を移動させることができる音像定位制御装置を提供することを目的としている。
【0017】
また、本発明は、ステレオ3Dサラウンド処理回路およびモノラル3D移動処理回路内の係数記憶用に要する記憶素子の回路規模を削減することが可能な音像定位制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の音像定位制御装置は、ステレオ音源入力と複数のモノラル移動音源入力を入力信号とし、2チャンネルの最終出力を生成する音像定位制御装置であって、各音像定位位置に対して測定された頭部伝達関数を模擬する音像定位フィルタを用いて構成されたステレオ3Dサラウンド処理回路と、前記音像定位フィルタを用いて構成された複数のモノラル3D移動処理回路と、前記音像定位フィルタの係数を記憶する係数記憶手段と、前記係数記憶手段に記憶されている係数を変更することにより前記音像定位フィルタの特性を操作し、前記ステレオ3Dサラウンド処理回路および複数の前記モノラル3D移動処理回路による音響効果を制御する第1の係数制御手段と、前記ステレオ3Dサラウンド処理回路および複数の前記モノラル3D移動処理回路の出力音量を制御する音量制御手段と、前記ステレオ3Dサラウンド処理回路および複数の前記モノラル3D移動処理回路の出力を加算し、前記2チャンネルの最終出力を生成する加算手段とを具備していることを特徴とする。
【0019】
本発明の音像定位制御装置によれば、従来のようなステレオ入力のみに対する任意の音像定位制御では、ステレオサウンドが作り出す3次元空間の拡大/縮小/変形か、もしくは単一音源の3次元空間内における移動のいずれかの制御しかできなかったのに対し、ステレオ入力と移動音源入力の両方の入力に処理系を設けたことで、ステレオ入力を3次元空間の生成に特化させることができ、また本来音像定位技術を駆使すべきであった移動音源入力を、ステレオ入力の作り出した3次元空間を維持したまま自在に制御することが可能となる。
【0020】
また、本発明の音像定位制御装置において、前記係数記憶手段は、フィルタ演算の実施対象となる定位位置係数を記憶する第1の係数記憶手段と、フィルタ演算実施中にホストから送信される次の定位位置係数を記憶する第2の係数記憶手段とを含み、フィルタ演算実施後に前記第2の係数記憶手段中の係数データを前記第1の係数記憶手段にロードする第2の係数制御手段とを備え、入力信号のサンプリング期間中にサンプリングクロックとは別の高速クロックで係数の更新を行うことを特徴とする。
【0021】
本発明の音像定位制御装置によれば、従来、係数の変更による音響効果の制御方法として、係数記憶手段と音像定位フィルタを2セット備え、一方のセットでフィルタ演算を実施している間、他方の係数記憶手段では記憶されている係数をサンプリング周期毎に1ワード単位で順次更新し、フィルタ動作が安定したところで入力信号の通過するパスを切り替えるという方法をとっていたのに対し、入力信号の1サンプリング周期内に別系統の高速クロックでフィルタ演算と次の係数の更新を実施することにより、係数の切り替えのために音像定位フィルタと係数記憶手段の余分な1セットを持つ必要が無くなる。
【0022】
また、それと同時に、フィルタ演算の安定待ちの必要も無くなるため、係数の更新中に、周波数特性が不連続になることにより発生するノイズの心配がなくなり、さらに、1サンプル期間内での高速な係数の切り替えが可能となることにより、現在の定位位置の近傍を表現する係数を細かくロードすることによる高精度で滑らかな音像定位が表現可能となる。
【0023】
また、本発明の音像定位制御装置において、前記ステレオ3Dサラウンド処理回路または前記モノラル3D移動処理回路は、セレクタの切り替えにより、ステレオ3Dサラウンド処理とモノラル3D移動処理を切り替えることを特徴とする。
【0024】
本発明の音像定位制御装置によれば、従来、ステレオ3Dサラウンド処理とモノラル3D移動処理の両機能を搭載するには、それぞれの機能を持った回路を各々搭載する必要があったのに対し、単一の回路でステレオ3Dサラウンド処理とモノラル3D移動処理の両機能が実現可能となるので、アプリケーションに応じて機能を使い分けることができ、単一音源の3D処理に要する回路規模を半減させることが可能となる。
【0025】
また、本発明の音像定位制御装置において、前記モノラル3D移動処理回路は、作り出した2点の仮想音像の音量バランスを制御することにより、2点の仮想音像間を結ぶ直線上に位置する任意の仮想音像を表現することを特徴とする。
【0026】
本発明の音像定位制御装置によれば、従来、音源を定位させようとするポイントの係数を、全て音像定位制御装置内部のROMまたはホストコントローラのRAMに記憶していたのに対し、代表的な定位位置を示す係数のみをサンプルポイントとしていくつか記憶するだけで、サンプルポイント間の定位を表現することが可能になるため、係数ROMまたはRAMサイズの縮小が可能となり、回路規模を削減できる。
【0027】
また、本発明の音像定位制御装置において、前記ステレオ3Dサラウンド処理回路は、最終出力の先に配置するステレオスピーカの周波数特性が左右同特性である場合に、メイン成分の係数同士およびクロス成分の係数同士を共有する係数記憶用の記憶素子を有することを特徴とする。
【0028】
本発明の音像定位制御装置によれば、従来、メイン成分の係数記憶素子とクロス成分の係数記憶素子を左右で別々に搭載していたのに対し、メイン成分の係数記憶素子とクロス成分の係数記憶素子を左右で共有できるため、ステレオ3Dサラウンド処理回路内の係数記憶用に要する記憶素子の回路規模を半減させることが可能となる。
【0029】
また、本発明の音像定位制御装置において、前記モノラル3D移動処理回路は、出力信号を一時記憶するレジスタと、前記レジスタに記憶した出力信号と次の出力信号を加算する加算器とを備え、フィルタ演算用クロックに通常の倍速のクロックを入力し、単一のフィルタにおいて1サンプル期間内に異なる2音像を生成することを特徴とする。
【0030】
本発明の音像定位制御装置によれば、従来、1音源を1サンプル周期毎に定位させるには、1つの音像定位制御装置を要していたため、1音源をサンプル周期内に2箇所に定位させるには2つの音像定位制御装置を必要としたが、1つの音像定位制御装置に若干の回路を増設することで、1音源を1サンプル周期内に2箇所に定位させることが可能となるため、音像定位制御装置全体の回路規模を削減することが可能となる。さらにクロックの速度を上げ、従来のn(nは整数)倍速のクロックを使用すると、1音源を1サンプル周期内にn箇所に定位させることも可能となる。
【0031】
また、本発明の音像定位制御装置において、前記第1の係数制御手段は、フィルタ演算用の入力信号遅延手段とフィルタ係数記憶手段の2つの機能を単一のRAMを使用して実現するRAMアドレス生成手段を含むことを特徴とする。
【0032】
本発明の音像定位制御装置によれば、従来、単一の音像定位フィルタには、係数記憶のための記憶素子と、入力信号を遅延させるための記憶素子との2つの記憶素子を必要とするのに対し、両機能を1つの記憶素子で実現するため、記憶素子2個による構成よりも回路規模を削減することが可能である。このRAMアドレス生成回路は、音源数の増加に対しても回路変更なしで即対応可能であり、音像定位フィルタのタップ数の増減にも容易な回路変更で対応可能である。
【0033】
また、本発明の音像定位制御装置において、前記ステレオ3Dサラウンド処理回路または前記モノラル3D移動処理回路に内蔵される前記音像定位フィルタは、畳み込み演算に要する回路資源を各タップで共有することを特徴とする。
【0034】
本発明の音像定位制御装置によれば、従来、音像定位フィルタ内において、フィルタ係数と遅延させた入力信号との乗算を実施する乗算器をそれぞれのタップで所有していたのに対し、1つの乗算器を全タップで共有することで、音像定位フィルタに要する回路規模を削減することが可能となる。
【0035】
また、本発明の音像定位制御装置において、前記ステレオ3Dサラウンド処理回路または前記モノラル3D移動処理回路に内蔵される前記音像定位フィルタは、畳み込み演算時にパイプライン処理を行うことを特徴とする。
【0036】
本発明の音像定位制御装置によれば、畳み込み演算時にパイプライン処理を行うので、音像定位フィルタの畳み込み演算に要する処理時間を短縮可能である。
【0037】
また、本発明の音像定位制御装置は、インパルス発生回路を有することを特徴とする。
【0038】
本発明の音像定位制御装置によれば、従来、音像定位制御装置内の音像定位フィルタのデバッグには、外部からの入力信号として単位インパルスを入力し、出力端でインパルス応答を確認するという方法をとっていたのに対し、音像定位制御装置内部で単位インパルスを発生することにより、外部から単位インパルスを入力する必要が無く、デバッグに便利である。
【発明の効果】
【0039】
本発明の音像定位制御装置によれば、ステレオ入力と移動音源入力の両方の入力に処理系を設けたことで、ステレオ入力を3次元空間の生成に特化させることができ、また移動音源入力をステレオ入力の作り出した3次元空間を維持したまま自在に制御することが可能となり、今後想定される複雑なアプリケーションにも容易に対応可能である。
【0040】
また、本発明の音像定位制御装置によれば、入力信号の1サンプリング周期内に別系統の高速クロックでフィルタ演算と次の係数の更新を実施することにより、係数の切り替えのために音像定位フィルタと係数記憶手段の余分な1セットを持つ必要が無くなる。
【0041】
また、それと同時に、フィルタ演算の安定待ちの必要も無くなるため、係数の更新中に、周波数特性が不連続になることにより発生するノイズの心配がなくなり、さらに、1サンプル期間内での高速な係数の切り替えが可能となることにより、現在の定位位置の近傍を表現する係数を細かくロードすることによる高精度で滑らかな音像定位が表現可能となる。
【0042】
また、本発明の音像定位制御装置によれば、単一の回路でステレオ3Dサラウンド処理とモノラル3D移動処理の両機能が実現可能となるので、アプリケーションに応じて機能を使い分けることができ、単一音源の3D処理に要する回路規模を半減させることが可能となる。
【0043】
さらに、本発明の音像定位制御装置によれば、代表的な定位位置を示す係数のみをサンプルポイントとしていくつか記憶するだけで、サンプルポイント間の定位を表現することが可能になるため、係数ROMまたはRAMサイズの縮小が可能となり、回路規模を削減することができる。
【0044】
また、本発明の音像定位制御装置によれば、メイン成分の係数記憶素子とクロス成分の係数記憶素子を左右で共有できるため、ステレオ3Dサラウンド処理回路内の係数記憶用に要する記憶素子の回路規模を半減させることが可能となる。
【0045】
また、本発明の音像定位制御装置によれば、1つの音像定位制御装置に若干の回路を増設することで、1音源を1サンプル周期内に2箇所に定位させることが可能となるため、音像定位制御装置全体の回路規模を削減することが可能となる。さらにクロックの速度を上げ、従来のn(nは整数)倍速のクロックを使用すると、1音源を1サンプル周期内にn箇所に定位させることも可能となる。
【0046】
また、本発明の音像定位制御装置によれば、係数記憶と入力信号の遅延を1つの記憶素子で実現するため、記憶素子2個による構成よりも回路規模を削減することが可能である。このRAMアドレス生成回路は、音源数の増加に対しても回路変更なしで即対応可能であり、音像定位フィルタのタップ数の増減にも容易な回路変更で対応可能である。
【0047】
また、本発明の音像定位制御装置によれば、音像定位フィルタ内において、フィルタ係数と遅延させた入力信号との乗算を実施する乗算器を全タップで共有することにより、音像定位フィルタに要する回路規模を削減することが可能となる。
【0048】
また、本発明の音像定位制御装置によれば、音像定位フィルタの畳み込み演算に要する処理時間を短縮可能である。また、音像定位制御装置内部で単位インパルスを発生することにより、外部から単位インパルスを入力する必要が無く、デバッグに便利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
図1は、本発明の第1の実施形態を説明するための音像定位制御装置100の概略構成を示すブロック図である。本実施形態の音像定位制御装置100は、各音像定位位置に対して測定された頭部伝達関数を模擬する音像定位フィルタを用いて構成されるモノラル3D移動処理回路9a〜9dと、ステレオ3Dサラウンド処理機能とモノラル3D移動処理機能の機能の切り替えが可能なステレオ3Dサラウンド処理/モノラル3D移動処理回路8と、フィルタ係数記憶と入力音源の遅延機能を担うRAM(第1の係数記憶手段)6a〜6tと、単一の記憶素子だけで音像定位フィルタの演算を可能にし且つ最小の資源で高速にフィルタ演算を実施するコントローラ(第1の係数制御手段)7と、フィルタ演算中にホストから送信される次の定位位置を示す係数を記憶するDPRAM(Dual Port Random Access Memory(第2の係数記憶手段、FIFO)5a,5bと、フィルタ演算後にDPRAM5a,5b中のデータをRAM6a〜6tにロードするFIFOコントローラ(第2の係数制御手段)4と、複数の音源の音量バランスを制御するゲイン調整回路10a〜10jと、複数音源の出力を加算し2チャンネルの最終スピーカ出力を生成する加算器11a,11bとを具備する。
【0050】
次に、本実施形態の音像定位制御装置100を利用したアプリケーションの一例として、ゲームに応用した場合の例を示す。音像定位制御装置100の外部ステレオ音源入力(L−ch,R−ch)からゲーム中に流れるBGMを入力し、ステレオ3Dサラウンド処理回路8にて広がりのあるBGMを生成する。または、ステレオ入力の残響音を利用して、部屋や宇宙空間といった特定の3次元空間を生成する。ゲーム等のアプリケーションでは、基本的にこれらのBGMや3次元空間は一定に保つ場合が多いため、係数の更新は頻繁には必要とはしない。ゲーム中、場面が変わった場合等に、ステレオ3Dサラウンド処理回路8の係数を切り替え、次の場面の空間を生成するという制御を行う。
【0051】
ステレオ3Dサラウンド処理回路8による空間生成と同時に、音像定位制御装置100の外部モノラル移動音源入力(ch−1、ch−2,ch−3,ch−4)から、空間内を移動するゲームのキャラクターやその他の物体を表す音源を入力する。
【0052】
ゲームコントローラでキャラクターを操作すると、コントローラからホストに向けて制御信号が送信される。ホストではこの制御信号を解析し、ホストに記憶している係数ROMからキャラクターの次の移動先を示すフィルタ係数を読み出し、ホストインターフェース1を介して音像定位制御装置100に入力する。入力されたにフィルタ係数は、該当するモノラル移動音源が入力されるモノラル3D移動処理回路9a〜9dに入力され、該当するモノラル移動音源は新しい係数が表現する位置に定位する。ゲームコントローラによる制御対象外の物体は、コンピュータ制御により、次の移動先を示すフィルタ係数が自動で更新され、あらかじめゲームに組み込まれた動きの移動を実現する。
【0053】
BGMやキャラクターや他の物体のボリューム調整は、ゲイン調整回路10a〜10jで行う。ゲーム中、画面に近い音を大きくしたり、画面の奥にある音を小さい音にしたりすることで、よりリアルな表現を行う。これらの音は、加算器11a,11bにて足し合わされ、2チャンネルのステレオ信号(L−ch出力、R−ch出力)となり、最終的にステレオスピーカにて擬似3次元出力される。
【0054】
以上のような制御により、本実施形態の音像定位制御装置100は、パソコンや携帯電話、携帯情報端末等の、狭間隔のスピーカを搭載した機器では不可能であった複雑なゲームアプリケーションにおいても適用可能となる。
【0055】
本実施形態の音像定位制御装置100によれば、従来のようなステレオ入力のみに対する任意の音像定位制御では、ステレオサウンドが作り出す3次元空間の拡大/縮小/変形か、もしくは単一音源の3次元空間内における移動のいずれかの制御しかできなかったのに対し、ステレオ入力と移動音源入力の両方の入力に処理系を設けたことで、ステレオ入力を3次元空間の生成に特化させることができ、また本来音像定位技術を駆使すべきであった移動音源入力を、ステレオ入力の作り出した3次元空間を維持したまま自在に制御することが可能となる。
【0056】
本発明の第2の実施形態にかかる音像定位制御装置100は、従来の音像定位制御装置に入力していたサンプリングクロックとは別に、本実施形態の音像定位制御装置100内部もしくは音像定位制御装置100を搭載するシステムLSI内部のPLLで生成する高速クロックを、音像定位制御装置100にも入力し、入力音源をサンプルするクロックと、フィルタ演算を実行するクロックとを別系統で構成する。
【0057】
ここで、係数切り替え時に発生するノイズには、切り替え中に切り替え前後の2係数が混在することによる周波数特性の不連続性によるノイズと、2係数の定位位置間隔が広い場合に切り替えのタイミングで発生する周波数特性の不連続性によるノイズとの2種類がある。従来は、係数の切り替えを1サンプルクロックに1ワード分の係数しか更新できなかったため、両方のノイズを考慮する必要があった。
【0058】
しかし、本実施形態によれば、2係数の混在によるノイズ対策は必要なくなる。つまり、フィルタのペアを搭載する必要はなくなる。また、高速に狭い定位間隔の係数を更新できるため、切り替えタイミングに発生するノイズも考慮する必要がなくなる。つまり、クロスフェード技術を搭載する必要はなくなる。
【0059】
本実施形態の音像定位制御装置100によれば、従来、係数の変更による音響効果の制御方法として、係数記憶手段と音像定位フィルタを2セット備え、一方のセットでフィルタ演算を実施している間、他方の係数記憶手段では記憶されている係数をサンプリング周期毎に1ワード単位で順次更新し、フィルタ動作が安定したところで入力信号の通過するパスを切り替えるという方法をとっていたのに対し、入力信号の1サンプリング周期内に別系統の高速クロックでフィルタ演算と次の係数の更新を実施することにより、係数の切り替えのために音像定位フィルタと係数記憶手段の余分な1セットを持つ必要が無くなる。
【0060】
また、それと同時に、フィルタ演算の安定待ちの必要も無くなるため、係数の更新中に、周波数特性が不連続になることにより発生するノイズの心配がなくなり、さらに、1サンプル期間内での高速な係数の切り替えが可能となることにより、現在の定位位置の近傍を表現する係数を細かくロードすることによる高精度で滑らかな音像定位が表現可能となる。
【0061】
図2は、本発明の第3の実施形態を説明するためのステレオ3Dサラウンド処理/モノラル3D移動処理回路8の概略構成を示すブロック図である。本実施形態は、ステレオ3Dサラウンド処理機能とモノラル3D移動処理機能の両機能を単一の回路で実現している例を示す。図2において、3つのセレクタ27a〜27cは共通の制御信号に接続されている。セレクト信号を1に倒すと、ステレオ3Dサラウンド処理を行い、セレクト信号を0に倒すと、モノラル3D移動処理を行う。
【0062】
本実施形態の音像定位制御装置100によれば、従来、ステレオ3Dサラウンド処理とモノラル3D移動処理の両機能を搭載するには、それぞれの機能を持った回路を各々搭載する必要があったのに対し、単一の回路でステレオ3Dサラウンド処理とモノラル3D移動処理の両機能が実現可能となるので、アプリケーションに応じて機能を使い分けることができ、単一音源の3D処理に要する回路規模を半減させることが可能となる。
【0063】
図3は、本発明の第4の実施形態を説明するためのモノラル3D移動処理回路9の概略構成を示すブロック図である。モノラル3D移動処理回路9は、モノラル入力が供給される信号処理部31,34と、信号処理部31,34の出力を加算し、メイン出力およびクロス出力を生成する加算器38a,38bとを備え、信号処理部31,34は、ホストインターフェース1のバッファメモリ40a,40bから係数データが供給され、それぞれ音像定位フィルタとして機能するメインフィルタ32a,35a、クロスフィルタ32b,35bと、ゲインレジスタ41からゲインデータが供給され、各信号のゲインを調整するゲインアンプ33a,33b,36a,36bとを備える。
【0064】
図3において、ゲインアンプ33a,33bのゲインを1に、ゲインアンプ36a,36bのゲインを0に設定すると、信号処理部31で使用される係数が示すポイントに音源が定位する。逆に、ゲインアンプ33a,33bのゲインを0に、ゲインアンプ36a,36bのゲインを1に設定すると、信号処理部34で使用される係数が示すポイントに音源が定位する。
【0065】
ここで、図4に示すように、信号処理部31によって定位した位置を1、信号処理部34によって定位した位置を2とすると、ゲインレジスタ41の値を、ゲインアンプ33a,33bのゲインを0.3に、ゲインアンプ36a,36bのゲインを0.7に設定することで、図4の1.7付近に音源が定位しているように聞こえさせることができる。即ち、定位ポイント1の係数と定位ポイント2の係数とで定位ポイント1.7の係数を表現できることになる。よって、音像定位制御装置100内部のROMまたはホストコントローラのRAM容量を縮小することが可能となる。
【0066】
本実施形態の音像定位制御装置100によれば、従来、音源を定位させようとするポイントの係数を、全て音像定位制御装置100内部のROMまたはホストコントローラのRAMに記憶していたのに対し、代表的な定位位置を示す係数のみをサンプルポイントとしていくつか記憶するだけで、サンプルポイント間の定位を表現することが可能になるため、係数ROMまたはRAMサイズの縮小が可能となり、回路規模を削減できる。
【0067】
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。図5は、フィルタタップ数が128である場合の、ステレオ3Dサラウンド処理回路8に必要とされる記憶素子のメモリマップを示している。ここで、出力先のステレオスピーカの周波数特性が左右同特性である場合、メモリLLとメモリRRの係数記憶領域には全く同じ係数が記憶されることになり、またメモリLRとメモリRLの係数記憶領域には全く同じ係数が記憶されることになる。したがって、これらの係数を共有することで、係数記憶領域のメモリ容量を半減させることができる。
【0068】
本実施形態の音像定位制御装置100によれば、従来、メイン成分の係数記憶素子とクロス成分の係数記憶素子を左右で別々に搭載していたのに対し、メイン成分の係数記憶素子とクロス成分の係数記憶素子を左右で共有できるため、ステレオ3Dサラウンド処理回路8内の係数記憶用に要する記憶素子の回路規模を半減させることが可能となる。
【0069】
図6は、本発明の第6の実施形態を説明するためのモノラル3D移動処理回路9の概略構成を示すブロック図である。本実施形態のモノラル3D移動処理回路9の信号処理部61は、ホストインターフェース1のバッファメモリ40a,40bから係数データが供給され、音像定位フィルタとして機能するメインフィルタ62a、クロスフィルタ62bと、ゲインレジスタ41からゲインデータが供給され、各信号のゲインを調整するゲインアンプ63a,63bと、ゲインアンプ63a,63bの出力信号を一時記憶するレジスタ64a,64bと、レジスタ64a,64bに記憶した出力信号とゲインアンプ63a,63bから出力される次の出力信号を加算し、メイン出力とクロス出力を生成する加算器65a,65bとを備える。
【0070】
このように本実施形態のモノラル3D移動処理回路9は、従来のモノラル3D移動処理回路の出力部に、出力信号を一時記憶するレジスタ64a,64bと、記憶した出力信号と次の出力信号を加算する加算器65a,65bを増設したものである。そして、音像定位フィルタとして機能するモノラル3D移動処理回路9に従来の倍速クロックを入力し、前半のクロックで、1つ目の係数に対してフィルタ演算を実施し、演算結果をレジスタ64a,64bに記憶する。次に、後半のクロックで、2つ目の係数に対してフィルタ演算を実施し、1つ目の係数での演算結果と足し合わせて出力する。こうすると、単一のモノラル3D移動処理回路9の回路規模を半減させることができる。
【0071】
本実施形態の音像定位制御装置100によれば、従来、1音源を1サンプル周期毎に定位させるには、1つの音像定位制御装置を要していたため、1音源をサンプル周期内に2箇所に定位させるには2つの音像定位制御装置を必要としたが、1つの音像定位制御装置に若干の回路を増設することで、1音源を1サンプル周期内に2箇所に定位させることが可能となるため、音像定位制御装置100全体の回路規模を削減することが可能となる。さらにクロックの速度を上げ、従来のn(nは整数)倍速のクロックを使用すると、1音源を1サンプル周期内にn箇所に定位させることも可能となる。
【0072】
次に、本発明の第7の実施形態にかかる音像定位制御装置100として、ステレオ3Dサラウンド処理回路8およびモノラル3D移動処理回路9a〜9dに内蔵される音像定位フィルタが、畳み込み演算に要する回路資源を各タップで共有する場合、および、畳み込み演算時にパイプライン処理を行う場合について説明する。
【0073】
図7は、音像定位(FIR)フィルタ70内部のブロック図である。FIRフィルタ70は、RAM6から読み出したサンプルデータX(n)を格納するレジスタFFx72と、RAM6から読み出したフィルタ係数H(n)を格納するレジスタFFh71と、サンプルデータX(n)とフィルタ係数H(n)の乗算を行う乗算器73と、その結果が格納されるレジスタFFp74と、レジスタFFp74とレジスタFFs76に格納された値に畳み込み演算を行う加算器75と、畳み込み演算の結果が格納され、演算結果Y(n)を出力するレジスタFFs76とを備える。
【0074】
入力信号の1サンプルデータに対してフィルタ演算を行う際のデータフローは以下のようになる。
【0075】
(1)時刻tにおけるサンプルデータX(t)をRAM6に書き込む。
(2)サンプルデータX(t)との乗算を行うフィルタ係数H(0)をRAM6から読み出し、レジスタFFh71に格納する。
(3)サンプルデータX(t)をRAM6から読み出し、レジスタFFx72に格納する。
(4)フィルタ係数H(0)とサンプルデータX(t)の乗算を行い、結果のH(0)×X(t)をレジスタFFp74に格納する。
(5)レジスタFFp74の値を符号拡張し、アキュムレータ75に足し込む。以後、(2)〜(5)を繰り返す。
【0076】
フロー(1)〜(5)は全て1クロックサイクルで実施する。さらに、(2)+(3)を1ステージ、(4)を1ステージ、(5)を1ステージとする3段のパイプライン構成をとると、パイプラインによるフィルタ演算の高速化が実現可能となる。
【0077】
本実施形態の音像定位制御装置100によれば、従来、音像定位フィルタ内において、フィルタ係数と遅延させた入力信号との乗算を実施する乗算器をそれぞれのタップで所有していたのに対し、1つの乗算器を全タップで共有することで、音像定位フィルタに要する回路規模を削減することが可能となるとともに、音像定位フィルタの畳み込み演算に要する処理時間を短縮することができる。
【0078】
次に、本発明の第8の実施形態として、図1に示すコントローラ7(第1の係数制御手段)が、フィルタ演算用の入力信号遅延手段とフィルタ係数記憶手段の2つの機能を単一のRAMを使用して実現するRAMアドレス生成手段として機能する場合について説明する。
【0079】
図8は、本実施形態のRAMアドレス生成回路の動作をタイミングチャートで示したものである。この図を説明するにあたり、入力信号のサンプリングクロックはLRCKI(図8(2))で32kHzとし、フィルタ演算を実施するシステムクロックはSYSCLK(同(3))で16.384MHzであると仮定する。また、フィルタのタップ数は128であると仮定する。上記仮定に基づいて、前述の(1)〜(5)の流れに沿ってフィルタの動作を説明する。
【0080】
図8(9)に示すcnt_regは、フィルタ演算開始信号start(同(4))の立ち上がりエッジで初期化され、システムクロックSYSCLKをカウントした値を格納するレジスタである。このレジスタ値、即ちカウンタ値の変化と供にフィルタ内部の動作について図7を参照して説明する。
【0081】
cnt_reg=0(図8(9)):サンプルされた入力データX(0)をRAM6に書き込む。
cnt_reg=1:RAM6から1段目の係数データH(0)を読み出し、レジスタFFh71に格納する。
cnt_reg=2:cnt_reg=0のときにRAM6に書き込んだ入力データX(0)をRAM6から読み出し、レジスタFFx72に格納する。
cnt_reg=3:レジスタFFh71の係数データH(0)とレジスタFFx72の入力データX(0)を乗算器73により乗算し、結果のH(0)×X(0)をレジスタFFp74に格納する。それと同時にRAM6の2段目の係数データH(1)をRAM6から読み出し、レジスタFFh71に格納する。
cnt_reg=4:レジスタFFp74のH(0)×X(0)を符号拡張し、アキュムレータレジスタFFs76に格納する。それと同時に1サンプル前の入力データX(−1)をRAM6から読み出し、レジスタFFx72に格納する。
cnt_reg=5:レジスタFFh71の係数データH(1)とレジスタFFx72の入力データX(1)を乗算器73により乗算し、結果のH(1)×X(1)をレジスタFFp74に格納する。それと同時にRAM6の3段目の係数データH(2)をRAM6から読み出し、レジスタFFh71に格納する。
cnt_reg=6:レジスタFFp74のH(1)×X(1)を符号拡張し、アキュムレータレジスタFFs76に足し込む。その結果、アキュムレータレジスタFFs76にはH(0)×X(0)+H(1)×X(−1)が格納される。それと同時に2サンプル前の入力データX(−2)をRAM6から読み出し、レジスタFFx72に格納する。
【0082】
以降は、繰り返しとなる。図8から分かるように、start信号(同(4))から259クロック後に入力データX(n)に対するフィルタ演算結果Y(n)が出力されるフィルタ回路となる。
【0083】
本実施形態の音像定位制御装置100によれば、従来、単一の音像定位フィルタには、係数記憶のための記憶素子と、入力信号を遅延させるための記憶素子との2つの記憶素子を必要とするのに対し、両機能を1つの記憶素子で実現するため、記憶素子2個による構成よりも回路規模を削減することが可能である。このRAMアドレス生成回路は、音源数の増加に対しても回路変更なしで即対応可能であり、音像定位フィルタのタップ数の増減にも容易な回路変更で対応可能である。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の音像定位制御装置は、狭間隔に配置されたステレオスピーカでも広がりのある3D空間を生成することができ、また別音源の定位をその3D空間内で自在に制御することが可能であるため、特にモバイル機器の様々なサウンドアプリケーションに非常に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の第1の実施形態を説明するための音像定位制御装置100の概略構成を示すブロック図
【図2】本発明の第3の実施形態において、セレクタによりステレオ3Dサラウンド処理機能とモノラル3D移動処理機能の切り替えを実現した3D処理回路のブロック図
【図3】本発明の第4の実施形態において、音像定位制御装置100内部のROMまたはホストコントローラのRAM容量削減を実現している図
【図4】本発明の第4の実施形態において、定位ポイント1の係数と定位ポイント2の係数とで定位ポイント1.7の係数を表現する説明図
【図5】本発明の第5の実施形態において、ステレオ3Dサラウンド処理回路に必要とされる記憶素子のメモリマップ
【図6】本発明の第6の実施形態において、モノラル3D移動処理回路9の回路規模をほぼ半減させるための説明図
【図7】本発明の第7の実施形態において、リソースシェアリングとパイプライン処理を実現するFIRフィルタのブロック図
【図8】本発明の第8の実施形態において、RAMアドレス生成回路のフィルタ演算中のタイミングチャート
【図9】従来のステレオ3Dサラウンド処理回路の機能を説明するためのブロック図
【符号の説明】
【0086】
1 ホストインターフェース
2 レジスタブロック
4 FIFOコントローラ
5a,5b 係数バッファ(FIFO)
6a〜6t 入力信号遅延および係数記憶用RAM
7 RAMアドレス生成手段
8 ステレオ3Dサラウンド処理/モノラル3D移動処理回路
9a〜9d モノラル3D移動処理回路
10a〜10d ゲイン調整手段
11a,11b 最終出力生成加算器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステレオ音源入力と複数のモノラル移動音源入力を入力信号とし、2チャンネルの最終出力を生成する音像定位制御装置であって、
各音像定位位置に対して測定された頭部伝達関数を模擬する音像定位フィルタを用いて構成されたステレオ3Dサラウンド処理回路と、
前記音像定位フィルタを用いて構成された複数のモノラル3D移動処理回路と、
前記音像定位フィルタの係数を記憶する係数記憶手段と、
前記係数記憶手段に記憶されている係数を変更することにより前記音像定位フィルタの特性を操作し、前記ステレオ3Dサラウンド処理回路および複数の前記モノラル3D移動処理回路による音響効果を制御する係数制御手段と、
前記ステレオ3Dサラウンド処理回路および複数の前記モノラル3D移動処理回路の出力音量を制御する音量制御手段と、
前記ステレオ3Dサラウンド処理回路および複数の前記モノラル3D移動処理回路の出力を加算し、前記2チャンネルの最終出力を生成する加算手段とを具備していることを特徴とする音像定位制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の音像定位制御装置であって、
前記係数記憶手段は、フィルタ演算の実施対象となる定位位置係数を記憶する第1の係数記憶手段と、フィルタ演算実施中にホストから送信される次の定位位置係数を記憶する第2の係数記憶手段とを含み、
フィルタ演算実施後に前記第2の係数記憶手段中の係数データを入力信号のサンプリング期間中にサンプリングクロックとは別の高速クロックで前記第1の係数記憶手段にロードする係数制御手段とを備えることを特徴とする音像定位制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の音像定位制御装置であって、
前記ステレオ3Dサラウンド処理回路または前記モノラル3D移動処理回路は、セレクタの切り替えにより、ステレオ3Dサラウンド処理とモノラル3D移動処理を切り替えることを特徴とする音像定位制御装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項記載の音像定位制御装置であって、
前記モノラル3D移動処理回路は、作り出した2点の仮想音像の音量バランスを制御することにより、2点の仮想音像間を結ぶ直線上に位置する任意の仮想音像を表現することを特徴とする音像定位制御装置。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれか1項記載の音像定位制御装置であって、
前記ステレオ3Dサラウンド処理回路は、最終出力の先に配置するステレオスピーカの周波数特性が左右同特性である場合に、メイン成分の係数同士およびクロス成分の係数同士を共有する係数記憶用の記憶素子を有することを特徴とする音像定位制御装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項記載の音像定位制御装置であって、
前記モノラル3D移動処理回路は、通常クロックの倍速クロックで実施したフィルタ演算出力信号を一時記憶するレジスタと、前記レジスタに記憶した出力信号と前記倍速クロックで実施した次のフィルタ演算出力信号とを加算する加算器とを備えることを特徴とする音像定位制御装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項記載の音像定位制御装置であって、
前記第1の係数制御手段は、フィルタ演算用の入力信号遅延手段とフィルタ係数記憶手段の2つの機能を単一のRAMを使用して実現するRAMアドレス生成手段を含むことを特徴とする音像定位制御装置。
【請求項8】
請求項7記載の音像定位制御装置であって、
前記ステレオ3Dサラウンド処理回路または前記モノラル3D移動処理回路に内蔵される前記音像定位フィルタは、畳み込み演算に要する回路資源を各タップで共有することを特徴とする音像定位制御装置。
【請求項9】
請求項7または8記載の音像定位制御装置であって、
前記ステレオ3Dサラウンド処理回路または前記モノラル3D移動処理回路に内蔵される前記音像定位フィルタは、畳み込み演算時にパイプライン処理を行うことを特徴とする音像定位制御装置。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項記載の音像定位制御装置であって、
インパルス発生回路を有することを特徴とする音像定位制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2006−33551(P2006−33551A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−211113(P2004−211113)
【出願日】平成16年7月20日(2004.7.20)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】