説明

音再生装置

【課題】イヤホンを装着してジョギングやサイクリングなどの運動を行う場合において事故などの危険を回避する。
【解決手段】イヤホン10の収音部13及び14により、利用者Pがジョギングしている最中にその後方から近づいてくる移動体Mの放出音を収音する。携帯音楽プレーヤ20の抽出部24は、収音部13及び14により収音された音の音信号Xの時間勾配を解析する。再生制御部25は、抽出部24によって解析された音信号Xの時間勾配が閾値TH2以上になると再生部22がイヤホン10の放音部17に供給している音信号Zのレベルを低下させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イヤホンにより音楽を聴きながら運動を行う者の安全を確保する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
薄型化・軽量化された携帯音楽プレーヤの普及に伴い、好きな音楽を聴きながらジョギングなどの運動を楽しみたい、という希望を持つ利用者が増えてきている。このような利用者の要求に応えるため、耳への密着性に優れ、ジョギング中においても耳から脱落しないカナル型イヤホンなどの密閉型イヤホンが提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−96070号公報
【特許文献2】特開昭58−150314号公報
【特許文献3】特開平8−2339号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、屋外の路上において、カナル型イヤホンなどのイヤホンを装着してジョギングやサイクリングなどの運動を行う場合、利用者が耳の奥までイヤホンを装着していると、後方から利用者に向かって近づいてくる車両の音の聞き取りが妨げられ、事故などの危険を回避し難くなるという問題がある。
【0005】
本発明は、このような背景の下に案出されたものであり、イヤホンを装着してジョギングやサイクリングなどの運動を行う場合において事故などの危険を回避できる技術的手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、音信号を耳の中に音として放音する放音部と、耳の外の音を収音する収音部と、音信号を指定されたレベルの音信号として前記放音部に供給する再生部と、前記収音部が収音した音の音量の時間勾配が閾値以上になったとき、前記放音部に供給する音信号の再生レベルを制御する再生制御部とを具備する音再生装置を提供する。
【0007】
本発明では、音再生装置を装着して音楽を聴きながらジョギングをしている最中に後方から自動車やバイクが近づいてきている場合、自動車やバイクが放出する放出音が収音部によって収音される。そして、再生制御部は、耳の外の音の音量の時間勾配が閾値以上になると放音部の入力信号の再生レベルを低下させる。よって、本発明では、利用者の後方の移動体がある速度をもって移動体に近接してきた場合に、利用者の耳の中に放音する音の音量が低下する。従って、本発明によると、利用者にその後方から移動体が近づいていることを知らせ、道路の端に寄るなどといった危険回避行動をとらせることができる。
【0008】
ここで、交通安全等の目的のために音楽再生の音量制御を行う技術に関する文献として、特許文献1〜3がある。特許文献1に開示された技術では、自動車内で音楽を再生する際、自動車外の音をマイクによって収音し、この自動車外の音の音量が閾値を越えた場合あるいはこの音の波形がパルス状である場合に音楽の音量を低下させる。
【0009】
特許文献2に開示の技術は、緊急車両の接近を車両内の利用者に知らせるために、車外のノイズをマイクによって収音し、この収音した外部ノイズの音量が所定値以上となり、所定時間経過した後も所定値以上である場合に、車両内における音楽再生の音量を低下させるものである。
【0010】
特許文献3に開示の技術は、パトカーのサイレン音、踏切の警報音など、車両内の利用者にとって有益な音を予め登録しておき、車外音を収音するマイクによってそれらの登録された音が収音された場合に、車両内における音楽再生の音量を低下させるものである。
【0011】
以上の特許文献1〜3に開示の技術は、自動車に乗っている利用者を危険から守ることに役立つと考えられるが、本発明のように、イヤホンを装着してジョギング等を行っている利用者に自動車等が接近しているときに、自動車接近の危険を利用者に知らせて、利用者を危険から守るものではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態である音再生装置の構成を示す図である。
【図2】同装置のヘッドホンを利用者の耳に装着した状態を示す図である。
【図3】同装置における2つの収音部と減算部とにより利用者の前方と後方に指向軸を持った収音手段が実現されることを説明するための図である。
【図4】同装置の再生制御部による音信号のレベルの制御を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
図1は、この発明の一実施形態である音再生装置1の構成を示す図である。この音再生装置1は、音楽を聴きながらジョギングしている利用者Pの後方から自動車CまたはバイクB(以下、自動車C及びバイクBを適宜「移動体M」と総称する)が近づいている場合に、その移動体Mの近接の程度に応じて利用者Pに聴かせる音の音量を変化させ、利用者Pに注意を促すものである。この音再生装置1は、右耳用及び左耳用の一対の各イヤホン10と携帯音楽プレーヤ20とを有する。図1では、左耳用のイヤホン10の図示を割愛する。各イヤホン10は、利用者Pの両耳に各々装着される。携帯音楽プレーヤ20は、当該携帯音楽プレーヤ20が連結されたネックストラップ90を利用者Pの首から提げることによって、利用者Pに携帯される。イヤホン10と携帯音楽プレーヤ20はケーブル50により接続されている。
【0014】
イヤホン10は、本体部11の側方の一端面12に2つの収音部13及び14を設けるとともに、本体部11の側方の他端面15における収音部13の裏側の位置から挿入部16を突出させ、挿入部16の先端に放音部17を設けたものである。このイヤホン10における収音部13及び14は本体部11の延在方向(後頭部から顔面に向かう方向)に沿って離間しており、収音部13及び14間は距離D1の間隔がある。図2に示すように、イヤホン10は、本体部11の端面15から突出している挿入部16を利用者Pの耳の外耳道EAC内に挿入することにより、利用者Pの耳に装着される。通常、イヤホン10は2つの収音部13及び14が利用者Pの前後方向(図1の双方向矢印方向)と平行に並ぶような姿勢で、利用者Pの耳に装着される。
【0015】
この通常の装着状態において、イヤホン10における収音部13及び14は、利用者Pの耳の外の音を収音し、各々が収音した音の音信号X1及びX2をケーブル50を介して携帯音楽プレーヤ20に出力する。イヤホン10における放音部17は、携帯音楽プレーヤ20からケーブル50を介して当該放音部17に供給される音信号Zを耳の中に音として放音する。
【0016】
図1において、携帯音楽プレーヤ20は、記憶部21、再生部22、減算部23、抽出部24、及び再生制御部25を有する。記憶部21は、MP3(MPEG Audio Layer-3)やAAC(Advanced Audio
Coding)などの音楽フォーマットによりエンコードされた各種オーディオファイルを記憶している。再生部22は、記憶部21内におけるオーディオファイルをデコードし、そのデコード結果である音信号を再生制御部25により指定された再生レベルLEVを有する音信号Zとしてイヤホン10の放音部17に供給する。再生制御部25による音信号Zの再生レベルLEVの制御の詳細については、後述する。
【0017】
減算部23は、イヤホン10の収音部13及び14から出力された音信号X1及びX2を受け取り、音信号X1から音信号X2を減算し、この減算結果を音信号Xとして出力する。ここで、上述した通常の装着状態においては、この減算部23とイヤホン10の収音部13及び14は、利用者Pの前方及び後方に指向軸を有する双指向性の収音手段として機能する。その理由は次の通りである。図3に示すように、通常の装着状態における収音部13から収音部14に向かう方向(利用者Pの前方)を基準方向とし、利用者Pの耳から見た音源ASの方向と基準方向とがなす角度をθ(0≦θ≦180)とすると、θ=90度付近の方向(すなわち、利用者Pの真横の方向)の音源ASから収音部13までの音の伝搬距離と収音部14までの音の伝搬距離はほぼ同じになる。従って、この場合における収音部13の出力信号X1と収音部14の出力信号X2は、ほぼ同相かつ同レベルとなり、減算部23の出力信号Xのレベルはほぼ0となる。しかし、利用者Pから見た音源ASの方向がθ=90度の方向から大きくずれると、音源ASから収音部13までの音の伝搬距離と収音部14までの音の伝搬距離との間に大きな距離差ΔLが生じ、この距離差ΔLに応じた位相差Δφが収音部13の出力信号X1と収音部14の出力信号X2との間に発生する。このため、収音対象である音声の帯域全体に着目すると、利用者Pの耳から見た音源ASの方向がθ=90度の方向からθ=0度、180度の各方向に向けてずれるに従って、減算部23の出力信号Xのレベルが大きくなる傾向となる。以上の理由により、収音部13及び14と減算部23は、全体として、利用者Pの前方(θ=0度)と後方(θ=180度)に指向軸を有する双指向性の収音手段として機能することになる。
【0018】
図1において、抽出部24は、減算部23の出力信号Xが示す波形における自動車CまたはバイクBの放出音(エンジン音、タイヤノイズなど)に対応する音響的特徴を持った信号を取り出し、この取り出した信号が表す音の音量の時間勾配を求め、この時間勾配と閾値TH1との比較を行う。より詳細に説明すると、抽出部24は、減算部23の出力信号Xに対して自動車Cの放出音が属する帯域Wを通過帯域とするBPF(Band Pass Filter)処理とバイクBの放出音が属する帯域Wを通過帯域とするBPF処理とを個別に施し、帯域Wの通過成分または帯域Wの通過成分が閾値TH1を上回ったか否かを判断する。そして、抽出部24は、帯域Wの通過成分または帯域Wの通過成分が閾値TH1を上回った場合に次の処理を行う。
a1.帯域Wの通過成分が閾値TH1を上回った場合
この場合、抽出部24は、利用者Pの後方における所定距離範囲内を走行中の自動車Cがあるとみなす。抽出部24は、帯域Wの通過成分が閾値TH1を上回ってから閾値TH1を下回るまでの間の減算部23の出力信号Xを自動車Cの放出音の収音信号とし、この間の減算部23の出力信号Xの時間勾配(微分値)を算出する。抽出部24は、この時間勾配を利用者Pに対する自動車Cの近接の速度を示す信号Yとして出力する。
a2.帯域Wの通過成分が閾値TH1を上回った場合
この場合、抽出部24は、利用者Pの後方における所定距離範囲内を走行中のバイクBがあるとみなす。抽出部24は、帯域Wの通過成分が閾値TH1を上回ってから閾値TH1を下回るまでの間の減算部23の出力信号XをバイクBの放出音の収音信号とし、この間の減算部23の出力信号Xの時間勾配(微分値)を算出する。抽出部24は、この時間勾配を利用者Pに対するバイクBの近接の速度を示す信号Yとして出力する。
【0019】
ここで、利用者P及び移動体M(自動車CまたはバイクB)が障害物の全くない半自由空間を走行していると仮定した場合、移動体Mにおいて発生した音の球面波(移動体Mを点音源とする球面波)が利用者Pに伝わるときの音量は、移動体M及び利用者P間の距離の2乗に反比例する。よって、利用者Pの後方から利用者Pに近接する移動体Mの速度が速いほど音信号Yの振幅である時間勾配(微分値)は大きくなる。
【0020】
再生制御部25は、抽出部24の出力信号Yの振幅である音量の時間勾配が閾値TH2以上になったか否かを判断する。そして、時間勾配が閾値TH2以上になったと判断した場合、この判断時における信号Yの振幅に応じた勾配で再生部22からイヤホン10の放音部17に供給する音信号ZのレベルLEVを低下させ、この判断時から時間長Tが経過すると音信号ZのレベルLEVを元のレベルに戻す。信号Yの振幅に応じた勾配で音信号ZのレベルLEVを低下させる処理は、例えば、次の2つの態様によって行う。
【0021】
図4(A)に示すように、第1の態様では、再生制御部25は、抽出部24の出力信号Yの振幅が閾値TH2以上になったと判断した時刻tから時間長T1(T1<T)が経過するまでの間に音信号ZのレベルLEVをΔLEV(たとえば、ΔLEV=10dB)だけ低下させ、低下後のレベルLEV−ΔLEVを時間長T2(T2=T−T1)に亙って維持する。そして、この態様では、時刻tにおける信号Yの振幅が大きいほどこの時間長T1を短くする。この態様によると、利用者Pの後方の移動体Mが利用者Pに近づく速度が大きいほど利用者Pの耳内における音の音量の低下に要する時間が短くなる。よって、この態様によると、前方を向いて走っている利用者Pは、後方から近づいてくる移動体Mがどの程度危険な速度で近づいているのかを、視覚的に認識せずとも聴覚的に知ることができる。
【0022】
図4(B)に示すように、第2の態様では、再生制御部25は、抽出部24の出力信号Yの振幅が閾値TH2以上になったと判断した時刻tから時間長T1が経過するまでの間に音信号ZのレベルLEVをΔLEVだけ低下させ、低下後のレベルLEV−ΔLEVを時間長T2(T2=T−T1)に亙って維持する。そして、この態様では、時刻tにおける信号Yの振幅が大きいほどレベルLEVの低下量ΔLEVを大きくする。この態様によると、利用者Pの後方の移動体Mが利用者Pに近づく速度が大きいほど利用者Pの耳内における音の音量の低下幅が大きくなる。よって、この態様によっても、前方を向いて走っている利用者Pは、後方から近づいてくる移動体Mがどの程度危険な速度で近づいてきているのかを、視覚的に認識せずとも聴覚的に知ることができる。
【0023】
以上説明した本実施形態では、利用者Pがその耳に挿入部16を挿入して音楽を聴きながらジョギングをしている最中に後方から移動体M(自動車CまたはバイクB)が近づいてきている場合、その移動体Mが放出する放出音が収音部13及び14によって収音される。そして、挿入部16が耳に挿入された状態における耳の外の音の音量の時間勾配を解析し、この時間勾配が閾値TH2以上になると放音部17の入力信号ZのレベルLEVを低下させる。よって、本実施形態では、利用者Pの後方の移動体Mがある速度をもって移動体Pに近接してきた場合に、利用者Pの耳の中に放音する音の音量が低下する。従って、本実施形態によると、利用者Pにその後方から移動体Mが近づいていることを知らせ、道路の端に寄るなどといった危険回避行動をとらせることができる。
【0024】
また、本実施形態では、挿入部16が耳に挿入された状態における耳の外の音の音量そのものではなく、音量の時間勾配を解析対象としている。よって、利用者Pに対して、その後方の移動体Mがどの程度危険な速度で近づいているのかを適切に報知することができる。
【0025】
また、本実施形態では、距離Dを空けて並ぶ2つの収音部13及び14と減算部23とにより、利用者の前方及び後方に指向軸を有する収音手段が構成される。よって、後方以外の方向から到来する音に誤反応して利用者Pの耳の中に放音される音の音量が小さくなってしまう、という事態の発生を回避することができる。
【0026】
また、本実施形態では、減算部23の出力信号Yが示す波形における自動車CまたはバイクBの放出音と同様の特徴を持った波形部分を解析対象とする。よって、自動車CとバイクB以外の物の音に誤反応して利用者Pの耳に放出される音の音量が小さくなってしまう、という事態の発生を回避することができる。
【0027】
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明には他にも実施形態があり得る。例えば、以下の通りである。
(1)上記実施形態では、再生制御部25は、抽出部24の出力信号Yの振幅が閾値TH2よりも大きい場合、再生部22から放音部17に供給される音信号Zの全帯域のレベルを低下させた。しかし、減算部23の出力信号Xが示す波形の特徴に応じて、音信号Zにおける音量のレベルを低下させる周波数帯域を制御させてもよい。この実施形態は、例えば、次のようにして実現する。再生制御部25は、減算部23の出力信号Xが示す波形の特徴が自動車Cの放出音の波形の特徴と同様であった場合、音信号Zにおける帯域W(自動車Cの放出音が属する帯域)の成分のレベルだけを低下させる。また、減算部23の出力信号Xが示す波形の特徴がバイクBの放出音の波形の特徴と同様であった場合、音信号Zにおける帯域W(バイクBの放出音が属する帯域)の成分のレベルだけを低下させる。この実施形態によると、利用者Pの後方から自動車Cが近づいてきている場合は、利用者Pの耳の中に放音される音のうち自動車Cの放出音が属する帯域Wの成分だけが低下するため、利用者Pに自動車Cの放出音が聞こえ易くなる。また、利用者Pの後方からバイクBが近づいてきている場合は、利用者Pの耳の中に放音される音のうちバイクBの放出音が属する帯域Wの成分だけが低下するため、利用者PにバイクBの放出音が聴こえ易くなる。よって、この実施形態によると、利用者Pに音楽を聞かせながら、後方の自動車CやバイクBに対する注意を促すことができる。
【0028】
(2)上記実施形態では、2つの収音部13及び14と減算部23とにより、通常の装着状態において利用者Pの前方および後方に指向軸を有する双指向性の収音手段が構成された。しかし、収音部13及び14と減算部23を、通常の装着状態において利用者Pの後方に指向軸を有する指向性のマイクロホンにより置き換えてもよい。
【0029】
(3)上記実施形態は、利用者Pがイヤホン10を装着してジョギングを行う場合における事故を回避する技術的手段として本発明を適用したものであった。しかし、利用者Pがイヤホン10を装着して自転車を漕ぐ場合における事故を回避する技術的手段として本発明を適用してもよい。ここで、利用者Pがジョギングを行う場合と自転車を漕ぐ場合とでは、単位時間当たりに移動できる範囲が異なる。よって、自転車を漕ぐ場合は音量の低下によって移動体Mの近接を知らせる時刻をジョギングの場合より遅くしたとしても、利用者Pは危険を回避する行動をある程度の余裕を持って行うことが可能である。よって、自動車を漕ぐ場合は、抽出部24のBPF処理における閾値TH1をジョギングを行う場合のそれよりも高くしてもよい。
【0030】
(4)上記実施形態において、利用者Pが2車線の道路の一方の車線の側を走っている場合、利用者Pの反対側の車線上を走行する移動体M’(即ち、利用者Pに前方から接近する移動体M’)の放出音の音量の時間勾配が閾値TH2を超えたときの再生レベルの低下量ΔLEVを、利用者Pと同じ車線上を走行する移動体M(即ち、利用者Pの後方から接近する移動体M)の放出音の音量の時間変化が閾値TH2を超えたときの再生レベルの低下量ΔLEVより小さくしてもよい。また、利用者Pの斜め後方を走行する移動体Mの放出音の音量の時間勾配が閾値TH2を超えたときの再生レベルLEVの低下量ΔLEVを、真後ろを走行する移動体Mの放出音の音量の時間勾配が閾値TH2を超えたときの再生レベルLEVの低下量ΔLEVより小さくしてもよい。即ち、移動体が利用者Pに接近する方向の角度(水平方向の方位角)に応じて低下させる再生レベルΔLEVを設定してもよい。
【0031】
(5)上記実施形態において、自動車CまたはバイクB以外の移動体Mが利用者Pの後方から利用者Pに近づいている場合にも利用者Pの耳の中に放音する音の音量を低下させるようにしてもよい。この場合において、自動車CまたはバイクB以外の移動体Mが利用者Pに近づいている場合の音量の低下量ΔLEVを、自動車CまたはバイクBが利用者Pに近づいている場合の音量の低下量ΔLEVより小さくするとよい。
【0032】
(6)上記実施形態では、抽出部24は、減算部23の出力信号Xにおける帯域W(自動車Cの放出音が属する帯域)の成分が閾値TH1を上回った場合に利用者Pの後方を走行中の自動車Cがあるとみなし、信号Xにおける帯域W(バイクBの放出音が属する帯域)の成分が閾値TH1を上回った場合に利用者Pの後方を走行中のバイクBがあるとみなした。しかし、減算部23の出力信号XにFFT(Fast Fourier Transform)処理を施し、その処理結果として得られるパワースペクトルから利用者Pの自動車CとバイクBの何れが近づいているのかを判定するようにするとよい。
【0033】
(7)上記実施形態において、携帯音楽プレーヤ20を利用者Pの首から提げずに、利用者Pの衣服のポケットに収めるようにしてもよい。
(8)上記実施形態では、本発明を携帯音楽プレーヤにより実現した。しかし、携帯電話機によりこれを実現してもよい。この場合、携帯電話機のCPUに、記憶部21、再生部22、減算部23、抽出部24、及び再生制御部25の各部を実現させるプログラムをインストールするとよい。
【0034】
(9)上記実施形態において、信号Yの振幅に応じた勾配で音信号ZのレベルLEVを低下させる処理の手順は、第1の態様(図4(A))や第2の態様(図4(B))に限らない。これら2つの態様と別の態様でレベルLEVを低下させる処理を行ってもよいし、第1の態様と第2の態様を併用してその処理を行ってもよい。
【符号の説明】
【0035】
1…音再生装置、10…イヤホン、11…本体部、12,15…端面、13,14…収音部、16…挿入部、17…放音部、20…携帯音楽プレーヤ、21…記憶部、22…再生部、23…減算部、24…抽出部、25…再生制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音信号を耳の中に音として放音する放音部と、
耳の外の音を収音する収音部と、
音信号を指定されたレベルの音信号として前記放音部に供給する再生部と、
前記収音部が収音した音の音量の時間勾配が閾値以上になったとき、前記放音部に供給する音信号の再生レベルを制御する再生制御部と
を具備することを特徴とする音再生装置。
【請求項2】
前記再生制御部は、前記収音部が収音した音の音量の時間勾配が閾値以上になったとき、所定時間の間前記放音部に供給する音信号のレベルを低下させることを特徴とする請求項1に記載の音再生装置。
【請求項3】
前記収音部の出力信号から所定の音に対応する音響的特徴を持った音信号を取り出す抽出部を具備し、前記再生制御部は、前記抽出部によって取り出された音信号の時間勾配を求め、前記閾値との比較を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の音再生装置。
【請求項4】
前記再生制御部は、前記放音部の出力信号が示す波形の特徴に応じて、前記放音部に供給する音信号におけるレベルを低下させる周波数帯域を制御することを特徴とする請求項1から3のいずれか1の請求項に記載の音再生装置。
【請求項5】
前記収音部は、前記利用者の後方に収音の指向軸を有する収音部であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1の請求項に記載の音再生装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−248964(P2012−248964A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117351(P2011−117351)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】