説明

音叉型圧電振動デバイスの発振装置および発振方法

【課題】音叉型圧電振動デバイスの発振検査において、音叉型圧電振動デバイスの発振を早めて、タイムラグの発生や発生安定時間の遅延を抑える。
【解決手段】音叉型水晶振動子2の発振装置4は、音叉型水晶振動子2を発振させるものであり、音叉型水晶振動子2の共振周波数または当該共振周波数近傍の周波数の発振信号を音叉型水晶振動子2に出力して当該音叉型水晶振動子2を励振させる励振用発振器41と、音叉型水晶振動子2を発振させる検査用発振器42と、が設けられている。この発振装置4では、励振用発振器41により音叉型水晶振動子2を励振させ、この励振させた状態の音叉型水晶振動子2を検査用発振器42により音叉型水晶振動子2の共振周波数で発振させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音叉型圧電振動デバイスの発振装置および発振方法に関し、特に、音叉型圧電振動デバイスの発振の有無を検査する音叉型圧電振動デバイスの発振検査器に用いる発振装置および発振方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水晶振動子などの圧電振動デバイスの製造工程のなかには、圧電振動デバイスの発振特性を検査する工程がある(例えば、特許文献1ご参照。)。
【0003】
この下記する特許文献1に記載の水晶振動子の良否判定方法は、直流入力電圧に従って増幅率が変化する増幅回路を少なくとも一つ有する、判定対象の水晶振動子が接続された水晶発振回路を用い、直流入力電圧を増大させて水晶発振回路が発振を開始したときの直流入力電圧の最大値を測定し、その測定値に従って水晶振動子の良否を判定する方法である。
【0004】
この特許文献1に記載の水晶振動子の良否判定方法によれば、水晶振動子が実際の発振回路で発振する時の動作を定量的に測定し、水晶振動子の良否を確実、且つ正確に判定することができる。
【特許文献1】特開2001−242209号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この圧電振動デバイスにおける発振特性に関して、圧電振動デバイスの発振検査時において発振器での電源のONから実際に発振するまで(発振信号の立ち上がり)にタイムラグ(未発振時間)が発生する。すなわち、発振器での電源のONに対する発振信号の立ち上がり時間が遅い。また、これに比例して発振してから発振が安定するまでにかかる時間(発振安定時間)も遅い。つまり、圧電振動デバイスの発振動作が遅い。具体的に、現在、ATカット水晶振動子の場合、発振安定時間が1〜3mSECであるのに対して、音叉型圧電振動デバイスの場合、発振安定時間は300〜500mSECである。
【0006】
そこで、上記課題を解決するために、本発明は、音叉型圧電振動デバイスの発振検査時において、音叉型圧電振動デバイスの発振を早めて、タイムラグの発生や発振安定時間の遅延を抑える音叉型圧電振動デバイスの発振装置および発振方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明にかかる音叉型圧電振動デバイスの発振装置は、音叉型圧電振動デバイスを発振させる音叉型圧電振動デバイスの発振装置であって、音叉型圧電振動デバイスの共振周波数または当該共振周波数近傍の周波数の発振信号を音叉型圧電振動デバイスに出力して当該音叉型圧電振動デバイスを励振させる励振用発振器と、音叉型圧電振動デバイスを発振させる検査用発振器と、が設けられ、前記励振用発振器により音叉型圧電振動デバイスを励振させ、この励振させた状態の音叉型圧電振動デバイスを前記検査用発振器により当該音叉型圧電振動デバイスの共振周波数で発振させることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、前記励振用発振器と前記検査用発振器とが設けられ、前記励振用発振器により音叉型圧電振動デバイスを励振させ、この励振させた状態の音叉型圧電振動デバイスを前記検査用発振器により当該音叉型圧電振動デバイスの共振周波数で発振させるので、音叉型圧電振動デバイスの発振検査時において、音叉型圧電振動デバイスの発振を早めて、タイムラグ(未発振時間)の発生や発振安定時間の遅延を抑えることが可能となる。その結果、音叉型圧電振動デバイスの製造において生産性を向上させることが可能となる。なお、音叉型圧電振動デバイスの発振検査において音叉型圧電振動デバイスの発振を検知する対象を、音叉型圧電振動デバイスの周波数としてもよく、音叉型圧電振動デバイスの直列共振抵抗値としてもよい。
【0009】
前記構成において、前記励振用発振器と前記検査用発振器とは切替部を介して接続され、前記切替部により前記励振用発振器と音叉型圧電振動デバイスとの接続と、前記検査用発振器と音叉型圧電振動デバイスとの接続とが切り替えられてもよい。
【0010】
この場合、前記励振用発振器と前記検査用発振器とは切替部を介して接続され、前記切替部により前記励振用発振器と音叉型圧電振動デバイスとの接続と、前記検査用発振器と音叉型圧電振動デバイスとの接続とが切り替えられるので、前記励振用発振器によって励振させた音叉型圧電振動デバイスを前記検査用発振器によって発振させるために、前記各発振器と音叉型圧電振動デバイスとの切替を容易にすることが可能となる。
【0011】
前記構成において、前記励振用発振器から前記検査用発振器への前記切替部による音叉型圧電振動デバイスとの接続の切替は、連続して行われてもよい。
【0012】
この場合、前記励振用発振器から前記検査用発振器への前記切替部による音叉型圧電振動デバイスとの接続の切替は連続して行われるので、検査用発振器での電源供給(供給信号がON状態)から実際に発振するまで(発振信号(発振検出信号)の立ち上がり)に発生するタイムラグを抑えるのに好適である。
【0013】
前記構成において、当該発振装置は、音叉型圧電振動デバイスの発振検査器に取り外し可能に外付けされてもよい。
【0014】
前記構成において、前記励振用発振器には、任意の発振信号を出力する任意の発振源が取替え可能に設けられてもよい。
【0015】
この場合、前記励振用発振器には、任意の発振信号を出力する任意の発振源が取替え可能に設けられるので、任意の周波数に対応したあらゆる音叉型圧電振動デバイスに対応させることが可能となり、当該発振装置の自由度をあげることが可能となる。
【0016】
また、上記の目的を達成するため、本発明にかかる音叉型圧電振動デバイスの発振方法は、音叉型圧電振動デバイスを発振させる音叉型圧電振動デバイスの発振方法であって、音叉型圧電振動デバイスの共振周波数または当該共振周波数近傍の周波数の発振信号を音叉型圧電振動デバイスに出力して当該音叉型圧電振動デバイスを励振させる励振用発振工程と、音叉型圧電振動デバイスを発振させる検査用発振工程と、を有し、前記励振用発振工程において音叉型圧電振動デバイスを励振させ、前記検査用発振工程において励振させた状態の音叉型圧電振動デバイスを当該音叉型圧電振動デバイスの共振周波数で発振させることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、前記励振用発振工程と前記検査用発振工程とを有し、前記励振用発振工程において音叉型圧電振動デバイスを励振させ、前記検査用発振工程において励振させた状態の音叉型圧電振動デバイスを当該音叉型圧電振動デバイスの共振周波数で発振させるので、音叉型圧電振動デバイスの発振検査時において、音叉型圧電振動デバイスの発振を早めて、タイムラグ(未発振時間)の発生や発振安定時間の遅延を抑えることが可能となる。その結果、音叉型圧電振動デバイスの製造において生産性を向上させることが可能となる。また、短時間の間隔で発振が要求される音叉型圧電振動デバイスに好適である。特に、本発明は、音叉型圧電振動デバイスの製造工程で用いることが可能であり、この製造工程のうち、周波数調整工程やその前後工程、もしくは出荷前の最終検査工程などに用いることが好適である。なお、音叉型圧電振動デバイスの発振検査において音叉型圧電振動デバイスの発振を検知する対象を、音叉型圧電振動デバイスの周波数としてもよく、音叉型圧電振動デバイスの直列共振抵抗値としてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明にかかる音叉方圧電振動デバイスの発振装置および発振方法によれば、音叉型圧電振動デバイスの発振検査において、音叉型圧電振動デバイスの発振を早めて、タイムラグの発生や発振安定時間の遅延を抑えることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以下に示す実施例では、音叉型圧電振動デバイスとして音叉型水晶振動子に本発明を適用した場合を示す。
【0020】
本実施例にかかる発振検査器11は、図1に示すように、音叉型水晶振動子2の製造装置(図示省略)の製造ラインに組み込まれ、製造ライン上に配された発振検査装置3で用いられる。
【0021】
音叉型水晶振動子2の製造装置は、12個の音叉型水晶振動子2の載置が可能なキャリア31がライン32上を移動しながら、各製造機器による製造工程を行い音叉型水晶振動子2を製造するものである。図1では製造工程の一工程である発振検査工程で用いる発振検査装置3を示した概略図である。この図1に示す発振検査器11では、発振検査器11に接続された発振装置4によりキャリア31上の音叉型水晶振動子2を1つずつ発振させ、音叉型水晶振動子2の発振状態(発振の有無)を発振検査器11で検査する。そして、この発振検査器11において、良品と判断された音叉型水晶振動子2は搬出路33を通って良品用ケース34に搬出され、不良品と判断された音叉型水晶振動子2は搬出路33を通って不良品用ケース35に搬出される。
【0022】
発振検査器11には、図1に示すように音叉型水晶振動子2を発振させる発振装置4が取り外し可能に外付けされる。また、この発振検査器11には、外部機器を接続可能な外部機器接続部(I/Oポート、図示省略)が設けられている。なお、ここでいう外部機器には、自動で検査を行うための自動機全体を制御する制御器などが挙げられ、本実施例では、シーケンサ制御器(図2で示す制御部12)が用いられている。このシーケンサ制御器12からスタート信号が入力されると発振検査を継続する。また、シーケンサ制御器12からスタート信号が入力されると、このスタート信号は、切替用制御部44(下記参照)に出力される。なお、シーケンサ制御器12は、発振装置検査器11および発振装置4だけでなく、音叉型水晶振動子2の周波数選別機構や搬送装置などの他の外部機器も制御している。
【0023】
この発振検査器11に取り外し可能に外付けされた発振装置4は、図2に示すように、音叉型水晶振動子2を発振させる装置であり、発振信号を音叉型水晶振動子2に出力して音叉型水晶振動子2を励振させる励振用発振器41と、音叉型水晶振動子2を発振させる検査用発振器42と、これら励振用発振器41,検査用発振器42と音叉型水晶振動子2との接続を切り替える切替部43と、切替部43を切替制御する切替用制御部44とから構成されている。具体的に、図2に示すように、励振用発振器41と検査用発振器42とは切替部43(図2に示すリレースイッチ(RL))を介して接続され、切替用制御部44による切替制御信号により切替部43において励振用発振器41と音叉型水晶振動子2との接続と、検査用発振器42と音叉型水晶振動子2との接続とが切り替えられる。なお、励振用発振器41は、切替部43による音叉型水晶振動子2との接続の有無により電源供給されて供給信号がON状態となっている。また、検査用発振器42は、切替用制御部44を介してスタート信号の入力のON/OFFに連動して電源供給されて供給信号がON/OFF状態となる。
【0024】
この発振装置4によれば、スタート信号が入力されるまで、切替部43により励振用発振器41と音叉型水晶振動子2とが接続した状態となり励振用発振器41により音叉型水晶振動子2が励振する。そして、発振検査器11を介してシーケンサ制御器12から入力信号が発振装置4に入力されると、この入力信号は切替用制御部44と検査用発振器42とに入力される。この入力信号の切替制御器44への入力により、切替制御器44は切替部43に音叉型水晶振動子2の接続切替を行うための切替制御信号を出力して、切替部43では音叉型水晶振動子2との接続を励振用発振器41から検査用発振器42に切り替える。なお、この切り替えと同時に検査用発振器42により音叉型水晶振動子2を発振させる。ここでいう同時とは、音叉型水晶振動子2との接続の切替が瞬時に連続して行なわれることを意味する。しかしながら、この切換動作は好適な例であり、音叉型水晶振動子2との接続の切替動作は任意に設定できるものとする。
【0025】
次に、上記した発振装置4を用いた発振検査器11における音叉型水晶振動子2の発振検査について、以下に説明する。
【0026】
まず、スタート信号が発振装置4に入力されていない状態では、切替部43により励振用発振器4と音叉型水晶振動子2とが接続された状態となる。なお、本実施例では励振用発振器41は32.768kHzの励振信号を出力(ON状態)している。そのため、励振用発振器41によって32.768kHzの励振信号が音叉型水晶振動子2に出力され、この励振信号の出力により音叉型水晶振動子2が励振する(本発明でいう励振用発振工程)。なお、実施例では、この励振用発振工程において音叉型水晶振動子2に励振信号を約20mSEC出力している。しかしながら、この励振信号の出力時間は各条件によって任意に設定すればよく約20mSECに限定されるものではない。
【0027】
そして、シーケンサ制御器12から発振検査器11にスタート信号が出力されると、設定した条件に従って発振装置4に電源が供給され(スタート信号のON)、励振用発振器41の電源をOFFする。
【0028】
具体的に、シーケンサ制御器12からスタート信号が入力されると(スタート信号のON状態)、発振検査器11を介してシーケンサ制御器12から入力信号が発振装置4の切替用制御部44および検査用発振器42に入力される。この入力信号の切替制御器44の入力により切替制御器44は切替部43に音叉型水晶振動子2との接続の切替を行うための切替制御信号を出力して、切替部43では音叉型水晶振動子2との接続が励振用発振器41から検査用発振器42に切り替えられる。この切替の際、励振用発振器41の電源がOFFされ、同時に検査用発振器42への電源供給が行われる(供給信号のON状態)。検査用発振器42への電源供給が行なわれると検査用発振器による音叉型水晶振動子2の発振が行なわれて(本発明でいう検査用発振工程)、ON時間における発振検出信号の有無により音叉型水晶振動子2の発振を検査する。なお、励振用発振器41から検査用発振器42への切替部43における音叉型水晶振動子2の接続切替は、検査用発振器42による音叉型水晶振動子2の発振と同時に行われる。
【0029】
また、検査用発振工程では音叉型水晶振動子2が発振することを前提に説明しているが、この検査用発振工程において音叉型水晶振動子2が発振しているか否かも同時に検査される。そして、発振検査器11における音叉型水晶振動子2の発振検査の結果に基づいて、良品と判断された音叉型水晶振動子2は搬出路33を通って良品用ケース34に搬出され、不良品と判断された音叉型水晶振動子2は搬出路33を通って不良品用ケース35に搬出される。
【0030】
上記したように、本実施例によれば、音叉型水晶振動子2の発振検査時において、音叉型水晶振動子2の発振を早めて、タイムラグ(未発振時間)の発生や発振安定時間の遅延を抑えることができる。例えば、検査用発振器42での電源供給(供給信号がON状態)から実際に発振するまで(発振信号(発振検出信号)の立ち上がり)に発生するタイムラグを抑えることができる。その結果、音叉型水晶振動子2の製造において生産性を向上させることができる。また、短時間の間隔で発振が要求される音叉型水晶振動子2に好適である。特に、本実施例は、音叉型水晶振動子2の製造工程で用いることができ、この製造工程のうち、周波数調整工程やその前後工程、もしくは出荷前の最終検査工程などに用いることが好適である。
【0031】
また、発振装置4には切替部43および切替用制御部44が設けられているので、励振用発振器41によって励振させた音叉型水晶振動子2を検査用発振器42によって発振させるために、各発振器41,42と音叉型水晶振動子2との切替を容易にできる。
【0032】
また、励振用発振器41から検査用発振器42への切替部43による音叉型水晶振動子2との接続の切替は連続して行われるので、検査用発振器42での電源供給(供給信号がON状態)から実際に発振するまで(発振信号(発振検出信号)の立ち上がり)に発生するタイムラグを抑えるのに好適である。
【0033】
また、発振装置4への電源供給を自動的に行うためのシーケンサ制御器12等の外部機器が当該発振検査器11に外付けされているので、様々な条件の発振に基づいて使用する外部機器を取り替えることで様々な条件に対応させることが容易となる。
【0034】
なお、本実施の形態では発振検査装置3の一工程である発振検査工程のみを図1を用いて説明したが、この図1に示すライン32や各ケース34、35はこれに限定されるものではない。そのため、例えば、本実施の形態にかかる発振検査器11は、図3に示すように任意の形態の発振検査装置3に設けることができる。
【0035】
この図3に示す発振検査装置3には、発振検査器11と、音叉型水晶振動子2の外部接続端子21(以下、リードという)を挟持または解放する検査チャック36と、発振検査器11における音叉型水晶振動子2の検査判定結果に基づいて音叉型水晶振動子2を分類する分類部37と、複数個の音叉型水晶振動子2を検査チャック36による挟持位置まで搬送するライン搬送部38と、が設けられている。また、外部機器にはシーケンサ制御器12が用いられている。
【0036】
ライン搬送部38は、図3に示すように、ランダムに投入された多数個の音叉型水晶振動子2を、音叉型水晶振動子2のリード21が上方に向いた状態にそれぞれ整列させるパーツフィーダ381と、パーツフィーダ381から送出された、リード21が上方に向いた各音叉型水晶振動子2を連続して搬送するリニアフィーダ383と、リニアフィーダ383から連続して搬送された音叉型水晶振動子2を1つずつ個別になるよう分けて配置する位置決め部382とから構成される。
【0037】
位置決め部382はその一部に収納ポケット384を有するとともに、全体として細長い形状で、かつスライド機構を有している。収納ポケット384に1つの音叉型水晶振動子が入ると位置決め部382がスライドし、収納ポケットが後述の地点Aまで移動する。このときリニアフィーダ383の先端(搬出口)は位置決め部382の側壁で遮断され、音叉型水晶振動子2の搬送が停止された構成となっている。
【0038】
検査チャック36は、前述のリード21を挟持する部分にコンタクト電極361が設けられ、位置決め部382に配置された音叉型水晶振動子2のリード21を挟持することによりコンタクト電極361との導通を行う。コンタクト電極361は発振装置4の端子に接続されており、前述のように設定条件に従って電源供給が行われる。また、検査チャック36は図示しないハンドリング装置に取り付けられ、任意動作が可能となっている。具体的構成を例示すると、検査チャック36を地点Aにある位置決め部382の収納ポケット384に移動し、音叉型水晶振動子2のリード21を挟持する。その後、挟持した状態で音叉型水晶振動子2を地点Bに移動させ、この位置Bで特性検査を実行する。位置決め部382は検査チャック36が地点Bに移動した時点で元のリニアフィーダ383の先端の位置へ戻る。
【0039】
分類部37は、前記検査結果に基づき動作する選別シュータ371と、選別シュータ371の投入先に位置する良品用ケース34と不良品用ケース35とからなる。選別シュータ371は音叉型水晶振動子2を滑走させる溝状の面を持ち、検査結果に応じて地点Bを中心に選別シュータ371の下端372が良品用ケース34あるいは不良品用ケース35の位置になるよう旋回し(X方向)、旋回後、検査チャック36は挟持を解放して音叉型水晶振動子2を選別シュータ371に投入すると、滑走して決められたケース34、35に収納される。
【0040】
図3に示す音叉型水晶振動子2は、発振検査が終了し不良品と判断された場合の動作を例示しており、検査チャック36は地点Bの位置にあり、選別シュータ371は、下端372が不良品用ケース35の上部に位置する状態となっている。また、音叉型水晶振動子2を不良品用ケース35に搬出させるために検査チャック36の挟持が解放された状態となっている。音叉型水晶振動子2は選別シュータ371の滑走面を滑走し、不良品用ケース35に搬出される。なお、良品判定された場合は、選別シュータ371が良品用ケース34に旋回移動し良品用ケース34に搬出する。
【0041】
この発振検査装置3によれば、音叉型水晶振動子2の発振を限定することなく、任意の発振(基本波や三倍波などの発振)の音叉型水晶振動子2を検査することができる。特に、発振装置4が音叉型水晶振動子2の発振検査器11に取り外し可能に外付けされているので、基本波や三倍波の発振に対応させるのに好適である。
【0042】
また、本実施例では、圧電振動デバイスに水晶振動子を用いているが、これに限定されるものではなく、圧電振動を行う任意の媒体を用いてもよい。
【0043】
また、本実施の形態では、外部からスタート信号を入力しているが、これに限定されるものではなく、発振検査器内に電源部を設けて、発振装置に電源供給してもよい。
【0044】
また、本実施例では、音叉型水晶振動子2の発振を検知する対象を、音叉型水晶振動子2の周波数としているが、これに限定されるものではなく、音叉型水晶振動子2の発振特性に関連するものであれば他の特性であってもよく、例えば、直列共振抵抗値や直列共振抵抗電圧値であってもよく、または直列共振抵抗電圧値および周波数などであってもよい。
【0045】
また、本実施例では、励振用発振器41によって32.768kHzの励振信号を約20mSECの間、音叉型水晶振動子2に出力して音叉型水晶振動子2を励振させているが、これに限定されるものではなく、励振用発振器41による励振信号の周波数および励振時間を任意に変更してもよい。そのため、本実施例の発振装置4の励振用発振器41の発振源(図示省略)をモジュール化することが好ましく、励振用発振器41に任意の発振信号を出力する任意の発振源が取替え可能に設けられてもよい。例えば、ダイレクトデジタルシンセサイザー(DDS)を用いたユニットを用いてもよい。この場合、任意の周波数に対応したあらゆる音叉型水晶振動子2に対応させることができ、発振装置4の自由度をあげることができる。
【0046】
また、上記した実施例では、32.768kHzの周波数を用いているがこれに限定されるものではなく、任意の周波数を用いてよい。例えば、38.4kHz,40.0kHz,60.0kHz,75.0kHz,77.503kHz,150kHz,250kHzなどの周波数を用いてもよい。
【0047】
上述した本実施例および変形例に基づいて、音叉型水晶振動子2の発振検査の実験を行なった。その結果を、図4〜6に示す。なお、下記する実験では、検査用発振器42における電源供給時間(供給信号のON時間)から、発振を検出した時間(発振検出信号のON時間)及び発振が安定するまでの未検出時間を測定した。また、下記する実験(実施例1,3)では比較例(比較例1,3)として、励振用発振器を用いない従来の検査用発振器のみからなる発振装置を用いて、検査用発振器における電源供給時間(供給信号のON時間)から発振を検出した時間(発振検出信号のON時間)までの未検出時間(発振安定時間ともいう)を測定した。
【0048】
図4に示す実施例1および比較例1では、音叉型水晶振動子2の発振を検知する対象を、音叉型水晶振動子2の直列共振抵抗電圧とし、励振用発振器41の励振信号は32.768kHzであり、検査用発振器41の発振信号(発振検出信号)は32.768kHzである。また、発振検査を行う音叉型水晶振動子2の音叉型水晶振動片の寸法は、長さ3.2mm、幅0.56mm、厚さ0.12mmである。図4(a)に示すように、実施例1では発振が電源供給開始から約20mSECで立ち上がり約80mSECで安定した。これに対して図4(b)に示すように、比較例1では発振が安定するまでに電源供給開始から約350mSECかかった。このことから、実施例1によれば、比較例1に対して、音叉型水晶振動子2の発振検査時において音叉型水晶振動子2の発振を早めることができることは明らかである。
【0049】
図5に示す実施例2では、上記した実施例1とは別形態の音叉型水晶振動子2を使用し、この実施例2の音叉型水晶振動子2の音叉型水晶振動片の寸法は、長さ4.5mm、幅1.00mm、厚さ0.24mmであり上記した実施例1と比べると寸法が大きい音叉型水晶振動片を用いている。その他の構成は格別異なる構成のものを用いているものでなく、ここでの説明は省略する。図5に示すように、実施例2では発振が電源供給開始から約10mSECで立ち上がり約80mSECで安定した。このように、実施例2によれば、上記した実施例1と比較して(図4(a)参照)、発振の立ち上がりの速さの点で音叉型水晶振動子2の発振を早めるのに好ましい。
【0050】
図6に示す実施例3および比較例3では、音叉型水晶振動子2の発振を検知する対象を、音叉型水晶振動子2の発振周波数(具体的に発振周波数の3σ(周波数バラツキ))とし、3σが10.00以下において発振が安定状態であるとしている。また、励振用発振器41の励振信号は32.768kHzであり、検査用発振器41の発振信号(発振検出信号)は32.768kHz(本実施例3では3000逓倍として98.3040MHzとし、発振周波数カウンターのゲート時間を0.1秒としている)であり、同一の音叉型水晶振動子2に対して30回同じ条件で測定した。また、発振検査を行う音叉型水晶振動子2の音叉型水晶振動片の寸法は、長さ4.5mm、幅1.00mm、厚さ0.24mmである。図6に示すように、実施例3では発振が電源供給開始から約20mSECで安定した。これに対して比較例3では発振が安定するまで電源供給開始から約250mSECかかった。このことから、実施例3によれば、比較例3に対して、音叉型水晶振動子2の発振検査時において音叉型水晶振動子2の発振を早めることができることは明らかである。
【0051】
なお、本発明は、その精神や主旨または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、音叉型水晶振動子などの音叉型圧電振動デバイスの発振検査の際に用いる機器に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1は、本実施例にかかる、音叉型水晶振動子の製造工程の一工程である発振検査工程で用いる発振装置を示した概略図である。
【図2】図2は、本実施例にかかる、音叉型水晶振動子の発振検査器および発振装置の概略構成図である。
【図3】図3は、本実施の変形例にかかる、音叉型水晶振動子の製造装置の一工程である発振検査工程を示した概略図である。
【図4】図4は、本実施例1および比較例1における実験結果を示したデータ図である。図4(a)は、本実施例1の実験結果を示したデータ図である。図4(b)は、比較例1の実験結果を示したデータ図である。
【図5】図5は、本実施例2における実験結果を示したデータ図である。
【図6】図6は、本実施例3および比較例3における実験結果を示した表である。
【符号の説明】
【0054】
2 音叉型水晶振動子(音叉型圧電振動デバイス)
4 発振装置
41 励振用発振器
42 検査用発振器
43 切替部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音叉型圧電振動デバイスを発振させる音叉型圧電振動デバイスの発振装置であって、
音叉型圧電振動デバイスの共振周波数または当該共振周波数近傍の周波数の発振信号を音叉型圧電振動デバイスに出力して当該音叉型圧電振動デバイスを励振させる励振用発振器と、
音叉型圧電振動デバイスを発振させる検査用発振器と、が設けられ、
前記励振用発振器により音叉型圧電振動デバイスを励振させ、この励振させた状態の音叉型圧電振動デバイスを前記検査用発振器により当該音叉型圧電振動デバイスの共振周波数で発振させることを特徴とする音叉型圧電振動デバイスの発振装置。
【請求項2】
前記励振用発振器と前記検査用発振器とは切替部を介して接続され、
前記切替部により前記励振用発振器と音叉型圧電振動デバイスとの接続と、前記検査用発振器と音叉型圧電振動デバイスとの接続とが切り替えられることを特徴とする請求項1に記載の音叉型圧電振動デバイスの発振装置。
【請求項3】
前記励振用発振器から前記検査用発振器への前記切替部による音叉型圧電振動デバイスとの接続の切替は、連続して行われることを特徴とする請求項2に記載の音叉型圧電振動デバイスの発振装置。
【請求項4】
当該発振装置は、音叉型圧電振動デバイスの発振検査器に取り外し可能に外付けされたことを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1つに記載の音叉型圧電振動デバイスの発振装置。
【請求項5】
前記励振用発振器には、任意の発振信号を出力する任意の発振源が取替え可能に設けられたことを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか1つに記載の音叉型圧電振動デバイスの発振装置。
【請求項6】
音叉型圧電振動デバイスを発振させる音叉型圧電振動デバイスの発振方法であって、
音叉型圧電振動デバイスの共振周波数または当該共振周波数近傍の周波数の発振信号を音叉型圧電振動デバイスに出力して当該音叉型圧電振動デバイスを励振させる励振用発振工程と、音叉型圧電振動デバイスを発振させる検査用発振工程と、を有し、
前記励振用発振工程において音叉型圧電振動デバイスを励振させ、前記検査用発振工程において励振させた状態の音叉型圧電振動デバイスを当該音叉型圧電振動デバイスの共振周波数で発振させることを特徴とする音叉型圧電振動デバイスの発振方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate