説明

音叉型水晶振動片の製造方法

【課題】 本発明は、一対の振動腕の両外側に形成される支持腕の幅を調整することで、頂点温度を調整する音叉型水晶振動片の製造方法を提供する。
【解決手段】 第1方向に伸びた一対の振動腕と、一対の振動腕が連結された基部と、一対の振動腕の両外側で基部から第1方向に伸びる一対の支持腕とを有する音叉型水晶振動片の製造方法であって、音叉型の水晶振動片の頂点温度を算出する算出工程(S102)と、第1方向と直交する第2方向の支持腕の腕幅と頂点温度との関連を示すデータに基づいて、一対の支持腕の腕幅を調整する調整工程(S106)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持腕を有する音叉型水晶振動片の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
音叉型水晶振動片は、周囲温度の影響を受け周囲温度の変化により発振周波数が微妙に変化する。この周波数温度特性は、例えば特定の温度で周波数が最も高くなるという放物線を描く。その最も周波数が高くなる温度が頂点温度(ZTC)と呼ばれている。この頂点温度は音叉型水晶振動片の周波数温度特性の一つの基準とされている。
【0003】
頂点温度は、ランバード加工された人工水晶原石からのカット角度によって変化するが、同じカット角度で切り出すことが困難である。そこで、特許文献1に開示される音叉型の水晶振動片は、一対の振動腕の溝部の深さを変化させて頂点温度を調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−261558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、音叉型水晶振動片が小型化されていく中、振動腕の腕幅及び厚みが100μm以下になると、溝部の深さがそもそも30〜40μm程度しかない。エッチング液の温度及びエッチング時間等を調整して、溝部の深さを調整することは非常に困難である。
【0006】
本発明は、一対の振動腕の両外側に形成される支持腕の幅を調整することで、頂点温度を調整する音叉型水晶振動片の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1観点の音叉型水晶振動片の製造方法は、第1方向に伸びた一対の振動腕と、一対の振動腕が連結された基部と、一対の振動腕の両外側で基部から第1方向に伸びる一対の支持腕とを有する音叉型水晶振動片の製造方法である。その方法は、音叉型の水晶振動片の頂点温度を算出する算出工程と、第1方向と直交する第2方向の支持腕の腕幅と頂点温度との関連を示すデータに基づいて、一対の支持腕の腕幅を調整する調整工程と、を備える。
【0008】
第1観点において、第2観点の音叉型水晶振動片の算出工程は、水晶振動片のクリスタルインピーダンス値(CI値)を計測した結果に基づいて頂点温度を算出する。
【0009】
第1観点または第2観点において、第3観点の調整工程は、一対の支持腕の腕幅を一対の振動腕の腕幅に対する割合を調整する。
【0010】
第4観点の音叉型水晶振動片において、支持腕は、基部側の第1支持腕部と第1支持腕部の先端側でパッケージ内に導電性接着剤により載置される第2支持腕部とを有する。そして、調整工程は、一対の第1支持腕の腕幅を一対の振動腕の腕幅に対する割合を調整する。
【0011】
第5観点の振動腕と支持腕とは、基部の第1方向の同じ位置から伸びており、支持腕の腕幅が細くなるように調整されると、第2方向に基部の幅が狭くなる。
【0012】
第6観点の音叉型水晶振動片において、音叉型水晶振動片は一対の支持腕と接続され、一対の振動腕と基部とを囲む外枠を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の音叉型水晶振動片の製造方法によれば、小型化された音叉型水晶振動片であっても容易に頂点温度を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)は、水晶デバイス100の斜視図である。 (b)は、図1(a)のA−A断面図である。 (c)は、図1(b)のB−B断面図である。
【図2】音叉型水晶振動片30の平面図である。
【図3】音叉型水晶振動片100の製造方法を示したフローチャートである。
【図4】音叉型水晶振動片30のCI値と頂点温度(ZTC)との関係を示したグラフである。
【図5】音叉型水晶振動片30の第1支持腕部33aの腕幅W2と振動腕32の腕幅W1との比W2/W1と頂点温度(ZTC)との関係を示したグラフである。
【図6A】(a)は、第1支持腕部33a及び基部31が細くされた音叉型水晶振動片30aの平面図である。 (b)は、第1支持腕部33a、第2支持腕部33b及び基部31が細くされた音叉型水晶振動片30bの平面図である。
【図6B】(c)は、第1支持腕部33aの腕幅W2及び第2支持腕部33bの腕幅W3が細くされた音叉型水晶振動片30cの平面図である。
【図7】(a)は、水晶デバイス200の斜視図である。 (b)は、図7(a)のC−C分解断面図である。
【図8】音叉型水晶振動片230の平面図である。
【図9】音叉型水晶振動片330の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明の範囲は以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0016】
(第1実施形態)
<水晶デバイス100の構成>
図1(a)は、水晶デバイス100の斜視図である。水晶デバイス100は主に、リッド10と、ベース20と、音叉型水晶振動片30(図1(b)参照)とにより構成されている。以下、水晶デバイス100の高さ方向をZ軸方向とし、リッド10及びベース20の主面の長辺方向をY軸方向、短辺方向をX軸方向として説明する。
【0017】
水晶デバイス100は、+Z軸方向にリッド10が配置され、−Z軸方向にベース20が配置されている。ベース20の−Z軸側の面には外部電極21が形成されている。また、ベース20の+Z軸側の面には凹部24(図1(b)参照)が形成され、凹部24には音叉型水晶振動片30(図1(b)参照)が配置される。
【0018】
図1(b)は、図1(a)のA−A断面図である。ベース20の+Z軸側の面には凹部24が形成されており、凹部24はリッド10とベース20とが封止材40により接合されることにより密閉されている。凹部24には接続電極22が形成されており、接続電極22は外部電極21と貫通電極(不図示)を通して電気的に接続されている。また、音叉型水晶振動片30は接続電極22上に導電性接着剤41を介して載置される。
【0019】
図1(c)は、図1(b)のB−B断面図である。また図1(c)は、水晶デバイス100からリッド10を取り外して上方より見下ろした場合の平面図でもある。音叉型水晶振動片30は、互いに平行に伸びた一対の振動腕32と、一対の振動腕32が連結された基部31と、一対の振動腕32の両外側で基部31から振動腕32と同じ方向に伸びる一対の支持腕33(33a、33b)とにより形成されている。各支持腕33は、支持腕33の先端側の領域である第2支持腕部33bと、第2支持腕部33bと基部31とをつないでいる第1支持腕部33aとにより構成されている。音叉型水晶振動片30は、第2支持腕部33bの−Z軸側の面と接続電極22とが導電性接着剤41により接着されることによって凹部24に載置される。図1(c)では、導電性接着剤41が塗布される領域が点線によって示されている。また、各振動腕32の+Z軸側の面及び−Z軸側の面にはY軸方向に伸びる溝部35が形成されている。
【0020】
図2は、音叉型水晶振動片30の平面図である。振動腕32と支持腕33とは、基部31の+Y軸方向に対して同じ位置から伸びている。図2では、基部31から振動腕32と支持腕33とが伸びる位置が点線37で示されている。音叉型水晶振動片30には二つの電極が形成されている。この二つの電極間に電圧がかけられることにより振動腕32は振動する。一方の電極は、−X軸側の支持腕33と、基部31の−X軸側の領域と、+X軸側の振動腕32の溝部35と、−X軸側の振動腕32の先端領域及び+X軸側及び−X軸側の側面とに形成され、互いに電気的に接続されている。また、他方の電極は、+X軸側の支持腕33と、基部31の+X軸側と、−X軸側の振動腕32の溝部35と、+X軸側の振動腕32の先端領域及び+X軸側及び−X軸側の側面とに形成され、互いに電気的に接続されている。これら2つの電極は、図2では異なるハッチングにより区別されて表わされている。
【0021】
音叉型水晶振動片30は、振動腕32の腕幅をW1、第1支持腕部33aの腕幅をW2、第2支持腕部33bの腕幅をW3、基部31の幅をW4とする。音叉型水晶振動片30では、振動腕32の腕幅W1は70μmとして形成される。また、第1支持腕部33aの腕幅W2は、第2支持腕部33bの腕幅W3よりも狭く形成される。
【0022】
<頂点温度の調整方法>
音叉型水晶振動片30は、ベース20に載置される前に頂点温度が調整される。以下、図3を参照して音叉型水晶振動片30の頂点温度の調整方法を説明する。
【0023】
図3は、音叉型水晶振動片30の製造方法が示されたフローチャートである。図3の開始時点では、音叉型水晶振動片30は外形及び電極が形成された図2に示された状態にある。
【0024】
まず、ステップS101で、音叉型水晶振動片30のクリスタルインピーダンス値(CI値)が測定される。音叉型水晶振動片30のCI値の測定は、音叉型水晶振動片30の各第2支持腕部33bにCI値測定用のプローブを接触させることにより行われる。
【0025】
つぎに、ステップS102で、音叉型水晶振動片30の頂点温度が算出される。頂点温度の算出方法を、図4を参照して説明する。
図4は、音叉型水晶振動片30のCI値と頂点温度(ZTC)との関係を示したグラフである。図4では横軸にCI値[kΩ]、縦軸に頂点温度[℃]が設定されている。また、図中の黒い菱形は実際に音叉型水晶振動片30を形成してCI値及び頂点温度を測定することにより求められたCI値と頂点温度との関係を示しており、一点鎖線50はこの実験値から求められた一次関数を示している。一点鎖線50は、例えば、CI値が約44.5kΩの時に頂点温度が約30℃であり、CI値が約52.5kΩの時に頂点温度が約26℃になることを示している。ステップS102では、この一次関数により表わされたCI値と頂点温度との関係を参考にしてステップS101で測定されたCI値を基に音叉型水晶振動片30の頂点温度が導かれる。
【0026】
つぎに、ステップS103で、ステップS102で算出された頂点温度が製品の仕様として規定された範囲内の値かどうかが判断される。音叉型水晶振動片100の頂点温度が製品の仕様範囲内にあれば頂点温度を調整する必要がない。このため、頂点温度の調整工程としてはここで終了する。頂点温度が製品の仕様範囲内にない場合は、ステップS104に進む。音叉型水晶振動片30の頂点温度は、音叉型水晶振動片30の使用温度範囲内において振動周波数の変動を小さくするために、例えば一般的な室温である25℃に調整されることが好ましい。
【0027】
ステップS104では、音叉型水晶振動片100の頂点温度が製品の仕様温度範囲よりも高いかどうかが判断される。頂点温度が製品の仕様温度範囲よりも高い場合は、この音叉型水晶振動片100は規格外品として取り扱われる(ステップS107)。頂点温度が製品の仕様温度範囲よりも高くない場合、つまり、仕様温度範囲よりも低い場合はステップS105に進む。
【0028】
ステップS105では、音叉型水晶振動片30の第1支持腕部33aの腕幅の調整する長さが決められる。以下、図5を参照して第1支持腕部33aの腕幅の調整する長さの求め方を説明する。
【0029】
図5は、音叉型水晶振動片30の第1支持腕部33aの腕幅W2と振動腕32の腕幅W1(図2を参照。)との比W2/W1と頂点温度(ZTC)との関係を示したグラフである。図5では、横軸にW2/W1[%]、縦軸に頂点温度[℃]が設定されている。図5のグラフは、実際に複数の音叉型水晶振動片30を作製し、頂点温度を測定することにより作成されている。図中の黒い菱形は、同じW2/W1の比で作製された音叉型水晶振動片30の頂点温度の平均値を示している。また、同じW2/W1における頂点温度の最大値及び最小値が横棒により示されており、互いに縦線によりつながれている。また、黒い菱形で示された平均値は図中の直線51に示されるように直線上に並んでいる。図5では、W2/W1が43%の時に頂点温度の平均値は約25.1℃となり、W2/W1が57%の時に頂点温度の平均値は約24.1℃となり、W2/W1が71%の時に頂点温度の平均値は約23.1℃となることが示されている。音叉型水晶振動片30では、振動腕32の腕幅W1は70μmであるので、W2/W1が43%の時は第1支持腕部33aの腕幅W2が30μm、W2/W1が57%の時は第1支持腕部33aの腕幅W2が40μm、W2/W1が71%の時は第1支持腕部33aの腕幅W2が50μmであることに相当する。つまり、各第1支持腕部33aの腕幅W2の幅をそれぞれ10μm狭くすることにより、頂点温度を約1℃上げることができる。
【0030】
実際に頂点温度が調整される場合の例を説明する。例えば、音叉型水晶振動片30の製品の仕様が25℃であり、ステップS101で測定された音叉型水晶振動片30のCI値が約56.5kΩであり、図4から算出された頂点温度が24℃であったとする。この場合、図5より頂点温度を約1℃上げるためにW2/W1が約14%下げられると、つまり音叉型水晶振動片30では第1支持腕部33aの腕幅W2が10μm狭くされれば良い。
【0031】
図3に戻って、ステップS106では、第1支持腕部33aの腕幅W2が細くされる。ドライエッチングまたはサンドブラストを使用する方法がある。ドライエッチングによる腕幅W2を細くする方法は、領域36以外の領域に金属膜等のマスクを形成し、領域36のみをドライエッチングすることにより行われる。サンドブラストによる腕幅W2を細くする方法は、領域36以外の領域に金属マスク等を配置し、領域36に研磨材を吹き付けることによって領域36を削ることにより行われる。
【0032】
また、第1支持腕部33aの腕幅W2を細くする際には、それに対応して基部31の幅W4も狭くしたり、第2支持腕部33bの腕幅W3も細くしたりしても良い。図6を参照して腕幅W2が細くされた音叉型水晶振動片について説明する。
【0033】
図6A(a)は、第1支持腕部33aの腕幅W2が細くされ基部31の幅W4が狭くされた音叉型水晶振動片30aの平面図である。図6A(a)には、ステップS106で削られる領域36が斜線で示されている。実際に音叉型水晶振動片30の第1支持腕部33aの腕幅W2及び基部31の幅W4の一部が削られた結果、図6A(a)に示される音叉型水晶振動片30aのように第1支持腕部33aの腕幅はW2aとなり、基部31の幅はW4aとなっている。例えば、ステップS105で頂点温度を約1℃上げる必要がある場合、腕幅W2aは腕幅W2よりも10μm細く、基部31の幅W4aは幅W4よりも20μm狭く形成される。
【0034】
図6A(b)は、第1支持腕部33aの腕幅W2及び第2支持腕部33bの腕幅W3が細くされ、基部31の幅W4が狭くされた音叉型水晶振動片30bの平面図である。音叉型水晶振動片30bでは、音叉型水晶振動片30aに比べて第2支持腕部33bも削られており、その腕幅がW3からW3aに細く形成されている。ステップS106では音叉型水晶振動片30bに示されるように、第2支持腕部33bの腕幅も第1支持腕部33a及び基部31と共に細く形成されても良い。これは、第1支持腕部33aの腕幅W2の腕幅が頂点温度に影響を与えており、第2支持腕部33bの腕幅W3は頂点温度に大きな影響を与えないと考えられるためである。第1支持腕部33aの腕幅W2が細くなることにより振動腕32で発生した振動エネルギーは音叉型水晶振動片30の外部に伝わりにくくなるため、音叉型水晶振動片30のCI値は低くなる。図4に示されるようにCI値と頂点温度とには相関があるためCI値が低くなると頂点温度は高くなる。つまり、第1支持腕部33aの腕幅W2と頂点温度との間に相関が見られることになる。
【0035】
図6B(c)は、第1支持腕部33aの腕幅W2及び第2支持腕部33bの腕幅W3が細くされた音叉型水晶振動片30cの平面図である。音叉型水晶振動片30cでは、基部31の幅W4が狭く形成されていない。ステップS106では音叉型水晶振動片30cに示されるように、基部31の幅W4が狭く形成されなくても良い。これは、図6A(b)と同様に第1支持腕部33aの腕幅W2の腕幅が頂点温度に影響を与えており、基部31の幅W4は頂点温度に大きな影響を与えないと考えられるためである。
【0036】
音叉型水晶振動片30では図5に示されるようにW2/W1と頂点温度との間に相関があるため、腕幅W1及び腕幅W2を仕様通りに作製することで頂点温度が制御される。しかし、腕幅W1及び腕幅W2は仕様からずれて作製されることがあり、また腕幅W1及び腕幅W2が仕様通りに作製されても図5に示されるように頂点温度の誤差が1℃以上生じてしまう場合がある。このような時に、図3に示された頂点温度の調整方法で音叉型水晶振動片30の頂点温度を調整しなおすことができる。また、腕幅W1及び腕幅W2以外の要因により頂点温度がずれてしまった場合でも、図3に示された頂点温度の調整方法で音叉型水晶振動片30の頂点温度を調整しなおすことができる。
【0037】
(第2実施形態)
音叉型水晶振動片30の周囲には、外枠が形成されていても良い。以下、外枠が形成された音叉型水晶振動片230を備える水晶デバイス200について説明する。
【0038】
<水晶デバイス200の構成>
図7(a)は、水晶デバイス200の斜視図である。水晶デバイス200は主に、リッド210と、ベース220と、音叉型水晶振動片230とにより構成されている。水晶デバイス200の+Z軸側にはリッド210が配置され、−Z軸側にはベース220が配置される。また、水晶デバイス200は、音叉型水晶振動片230がリッド210とベース220とにより挟まれるように配置されることにより形成されている。ベース220の−Z軸側の面には外部電極221が形成されている。この外部電極221は、水晶デバイス200がプリント基板等に実装される際に水晶デバイス200とプリント基板等とを電気的に接続する。
【0039】
図7(b)は、図7(a)のC−C分解断面図である。リッド210の−Z軸側の面には凹部214が形成されている。また、ベース220の+Z軸側の面には凹部224が形成されている。水晶デバイス200が形成された時に、凹部214と凹部224とにより水晶デバイス200内に密閉された空間であるキャビティ201が形成される。音叉型水晶振動片230は、主に振動腕232と、基部231と、支持腕233(図8参照)と、外枠237とにより形成されている。外枠237は、振動腕232と、基部231と、支持腕233とを囲むように形成されている。また、外枠237の+Z軸側の面及び−Z軸側の面にはリッド210及びベース220がそれぞれ接合される。音叉型水晶振動片230の振動腕232、基部231及び支持腕233はキャビティ201内に配置される。ベース220の+Z軸側の面には接続電極222が形成されており、貫通電極(不図示)を通して外部電極221と電気的に接続されている。また接続電極222は、音叉型水晶振動片230の外枠237の−Z軸側の面に形成された電極と電気的に接続される。
【0040】
図8は、音叉型水晶振動片230の平面図である。音叉型水晶振動片230は、互いに平行に伸び溝部235が形成された一対の振動腕232と、一対の振動腕232が連結された基部231と、一対の振動腕32の両外側で基部231から振動腕232と同じ方向に伸びる一対の支持腕233と、振動腕232、基部231及び支持腕233を囲むように形成されている外枠237とにより形成されている。振動腕232と支持腕233とは基部231のY軸方向に対して同じ位置(点線238)から+Y軸方向に伸びている。振動腕232は、振動腕232の−Y軸側に形成されている第1振動腕部232aと振動腕232の+Y軸側に形成されている第2振動腕部232bとにより構成されており、溝部235は第1振動腕部232aに形成されている。音叉型水晶振動片は小型化されると振動周波数が高くなる傾向がある。第2振動腕部232aは錘として振動腕232の振動を安定化させ、音叉型水晶振動片の振動周波数を低くする役割がある。また、音叉型水晶振動片230の第1振動腕部232aの腕幅をW21、第2振動腕部232bの腕幅をW23、支持腕233の腕幅をW22、基部231の幅をW24とする。第2振動腕部232bの腕幅W23は第1振動腕部232aの腕幅W21よりも広く形成されている。
【0041】
図8には、振動腕232と基部231、支持腕233と基部231とのY軸方向の境界が点線238で示されている。また図2と同様に、振動腕232、基部231及び支持腕233には2つの電極が形成されており、各電極はそれぞれの支持腕233から更に外枠237の角まで形成されている。各電極は、外枠237の−Z軸側の面の角でベース220に形成されている接続電極222と電気的に接続される。
【0042】
音叉型水晶振動片230も図3と同様の方法により頂点温度が調整されることができる。溝部235が形成されている第1振動腕部232aと支持腕233との腕幅の比W22/W21は、図5のW2/W1と同様に頂点温度に比例する。そのため図3のステップS105で、支持腕233の腕幅W22を腕幅W22a、基部231の幅W24を幅W24aに狭く形成することにより頂点温度を調整できる。調整する際には、ステップS106で、ステップS105で計算された幅になるように音叉型水晶振動片230が削られる。図8にはステップS106で削られる領域236が斜線で示されている。領域236は、+X軸側の支持腕233の+X軸側の面及び−X軸側の支持腕233の−X軸側の面と、基部231の+X軸側の面及び−X軸側の面とを含んでいる。また、領域236を削る場合は、音叉型水晶振動片30と同様にドライエッチング又はサンドブラストの方法を用いることにより行うことができる。
【0043】
また図8の音叉型水晶振動片230では、音叉型水晶振動片230に外枠237が形成されず、図1(c)に示された音叉型水晶振動片30と同様に支持腕233の先端側の領域で導電性接着剤41によりベース20の凹部24に載置されてもよい。その場合でも、第1振動腕部232aと支持腕233との腕幅の比W22/W21が図5のW2/W1と同様に頂点温度に比例し、支持腕233の腕幅W22を腕幅W22a、基部231の幅W24を幅W24aに狭く形成することにより頂点温度を調整できる。
【0044】
(第3実施形態)
音叉型水晶振動片30では、振動腕32の腕幅が徐々に狭くテーパー状に形成され、そこから広くなるように形成されていても良い。以下、外枠が形成された音叉型水晶振動片330について説明する。
【0045】
<音叉型水晶振動片330の構成>
図9は、音叉型水晶振動片330の平面図である。音叉型水晶振動片330は、互いに平行に伸びた一対の振動腕332と、一対の振動腕332が連結された基部331と、一対の振動腕332の両外側で基部331から振動腕332と同じ方向に伸びる一対の支持腕333とにより形成されている。各振動腕332は、先端側の領域である第2振動腕部332bと、第2振動腕部332bと基部331とをつないでいる第1振動腕部332aとにより構成されている。また、各支持腕333は、支持腕333の先端側の領域である第2支持腕部333bと、第2支持腕部333bと基部331とをつないでいる第1支持腕部333aとにより構成されている。さらに、第1振動腕部332aと第1支持腕333aとは、基部331の+Y軸方向に対して同じ位置から伸びている。図9では、基部331から第1振動腕部332aと第1支持腕333aとが伸びる位置が点線337で示されている。
【0046】
振動腕332の第1振動腕部332a及び第2振動腕部332bは一方の先端の腕幅と他方の先端の腕幅とが異なっている。第1振動腕部332aは、基部331と接続されている部分の腕幅が最も広く形成されており、+Y軸側に向かって腕幅が徐々に狭くなるように形成されている。また、第2振動腕部332bは、第1振動腕部332aと接続されている部分が最も狭く+Y軸側に向かって腕幅が徐々に広くなるように形成されている。その他の構成は音叉型水晶振動片30と同様であるのでその説明を省略する。また、音叉型水晶振動片330の第1振動腕部332aの腕幅の平均値をW31、第2振動腕部332bの+Y軸側の腕幅をW35、第1支持腕部333aの腕幅をW32、第2支持腕部333bの腕幅をW33、基部331の幅をW34とする。
【0047】
音叉型水晶振動片330も図3と同様の方法により頂点温度が調整されることができる。溝部335が形成されている第1振動腕部332aの腕幅の平均値と第1支持腕333aとの腕幅の比W32/W31は、図5のW2/W1と同様に頂点温度に比例する。そのため図3のステップS105で、図6A(a)または図6A(b)と同様に第1支持腕部333aの腕幅W32及び基部331の幅W34等を狭く形成することにより頂点温度を調整できると算出された場合は、ステップS106で、ステップS105で計算された幅になるように音叉型水晶振動片330が削られる。音叉型水晶振動片330を削る方法は、音叉型水晶振動片30と同様にドライエッチング又はサンドブラストの方法を用いることにより行うことができる。
【0048】
様々な製品の小型化に伴って、音叉型水晶振動片にも小型化が求められている。しかし、小型化された音叉型水晶振動片では振動腕の剛性が低下するために不要振動が発生し、音叉型水晶片のCI値を増加させる。音叉型水晶振動片330では、第1振動腕部332aの基部331との接続部の腕幅が広くそこから徐々に狭くなっていることにより振動腕332の剛性が増加され、CI値が低減されている。また、第2支持腕部333bの+Y軸側の腕幅が広がっていることは、音叉型水晶振動片230の第2振動腕部232aと同様に、錘となって振動腕332の振動を安定化させ、音叉型水晶振動片330の振動周波数を低くする役割がある。
【符号の説明】
【0049】
10、210 リッド
20、220 ベース
21、221 外部電極
22、222 接続電極
24、214、224 凹部
30、230、330 音叉型水晶振動片
31、231、331 基部
32、232、332 振動腕
33、233、333 支持腕
33a、333a 第1支持腕部
33b、333b 第2支持腕部
35、235,335 溝部
40 封止材
41 導電性接着剤
100、200 水晶デバイス
201 キャビティ
232a、332a 第1振動腕部
232b、332b 第2振動腕部
237 外枠


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に伸びた一対の振動腕と、前記一対の振動腕が連結された基部と、前記一対の振動腕の両外側で前記基部から前記第1方向に伸びる一対の支持腕とを有する音叉型水晶振動片の製造方法であって、
前記音叉型の水晶振動片の頂点温度を算出する算出工程と、
前記第1方向と直交する第2方向の前記支持腕の腕幅と前記頂点温度との関連を示すデータに基づいて、前記一対の支持腕の腕幅を調整する調整工程と、
を備える音叉型水晶振動片の製造方法。
【請求項2】
前記算出工程は、前記水晶振動片のクリスタルインピーダンス値(CI値)を計測した結果に基づいて前記頂点温度を算出する請求項1に記載の音叉型水晶振動片の製造方法。
【請求項3】
前記調整工程は、前記一対の支持腕の腕幅を前記一対の振動腕の腕幅に対する割合を調整する請求項1又は請求項2に記載の音叉型水晶振動片の製造方法。
【請求項4】
前記支持腕は、前記基部側の第1支持腕部と前記第1支持腕部の先端側でパッケージ内に導電性接着剤により載置される第2支持腕部とを有し、
前記調整工程は、前記一対の第1支持腕の腕幅を前記一対の振動腕の腕幅に対する割合を調整する請求項3に記載の音叉型水晶振動片の製造方法。
【請求項5】
前記振動腕と前記支持腕とは、前記基部の前記第1方向の同じ位置から伸びており、前記支持腕の腕幅が細くなるように調整されると、前記第2方向に前記基部の幅が狭くなる請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の音叉型水晶振動片の製造方法。
【請求項6】
前記音叉型水晶振動片は前記一対の支持腕と接続され、前記一対の振動腕と前記基部とを囲む外枠を有する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の音叉型水晶振動片の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−75063(P2012−75063A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220308(P2010−220308)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】