説明

音場制御装置

【課題】音場制御装置の設計の手間を抑制し、利用者に対して適切な音場を提供することができる音場制御装置を提供すること。
【解決手段】音出力手段が設置された空間に対する音の出力を制御する音場制御装置であり、所定の音の出力方法を表す音出力設定情報を設定して記憶する音出力設定手段と、音の出力要求に応じて、この出力要求された音である出力要求音について設定されている音出力設定情報に基づいて、当該出力要求音の出力方法を決定する音出力管理手段と、決定された出力方法にて、出力要求音を前記音出力手段から出力する音出力制御手段と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音場制御装置にかかり、特に、所定の空間に対する音の出力を制御して、当該空間の音場を制御する音場制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な場所に情報システムが用いられており、この情報システムにおけるユーザインタフェースに関わる音の重要度が高まっている。つまり、情報システムは、利用者の聴覚に対し、音情報を提供する機能を備えたものが増加している。例えば、車両におけるエンジン、ブレーキ、トランスミッション等を制御する電子制御装置と、及び、オーディオ、ナビゲーションシステムによるマルチメディアを制御する電子制御装置と、が接続された車両システムがある。このような車両システムでは、ドライバに対してガイド音声や警報を提供し、また、同乗者に対しては音楽などの情報を提供することがある。そのため、各座席における利用者毎のニーズに応じて、要求元(各電子制御装置と連携するアプリケーション)が提供する情報(音)を制御する必要が生じる。
【0003】
そして、上述した情報システムの利用者に対して、最適な表現方法で音を提供できるよう、利用者に複数の音を提供する情報システムがある。このような情報システムでは、出力装置(スピーカ等)の物理構成に従い、主音声(BGM等)に特定の音声(警報等)を割込ませ、音を重ねる技術(ミキシング)を用いて、複数の音を同時に提供している。
【0004】
ここで、上述した車両システムの一例として、特許文献1に開示の技術を説明する。この特許文献1の車両システムでは、まず、乗員位置検出部にて乗員の位置を検出する。そして、主音声信号送出部(CD、外部音声信号等)と割込音声信号送出部(交通情報、ナビゲーション等)とから送出される音声について、動作制御部が複数のミキサー部にてミキシング処理を行う部位を選択する。これによって、上記検出した乗員位置に対応して、主音声に割込音声をミキシングして、出力している。
【0005】
【特許文献1】特開2005−236791号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した技術では、複数の音を出力する情報システムを統合して、新しい情報システムを構築する場合に、容易かつ迅速に、最適な音場を提供することができない、という問題が生じる。例えば、上記割込音声信号送出部に衝突防止通知(エンジンやブレーキと連携する電子制御装置による車両制御機能)による警告音を追加しようとした場合を考える。かかる場合には、追加機能(警告音)と既存機能(交通情報、ナビゲーション等の割込音声)における音出力方法を再度設計する必要がある。これは、各音源自体や当該各音源の競合関係が、搭載される車両システム毎に特徴を有しており、それぞれが固有なためである。このため、出力装置の物理構成や各音源の競合仕様に従って、車両システム自体を一から設計する必要があるが、かかる場合には設計に手間と時間、コストがかかり、最適な音場を容易かつ迅速に提供することが困難となる。
【0007】
このため、本発明の目的は、上述した課題である、音場制御装置の設計を容易にしつつ、利用者に対して適切な音場を提供することができる音場制御装置を提供する、ことにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明の一形態である、音出力手段が設置された空間に対する音の出力を制御する音場制御装置は、
所定の音の出力方法を表す音出力設定情報を設定して記憶する音出力設定手段と、
音の出力要求に応じて、この出力要求された音である出力要求音について設定されている音出力設定情報に基づいて、当該出力要求音の出力方法を決定する音出力管理手段と、
決定された出力方法にて、出力要求音を前記音出力手段から出力する音出力制御手段と、
を備えた、という構成を採る。
【0009】
また、本発明の他の形態である音場制御システムは、
所定の空間に設置された音出力手段と、空間に対して音出力手段から出力する音を制御する音場制御装置と、を備え、
上記音場制御装置は、
所定の音の出力方法を表す音出力設定情報を設定して記憶する音出力設定手段と、
音の出力要求に応じて、この出力要求された音である出力要求音について設定されている音出力設定情報に基づいて、当該出力要求音の出力方法を決定する音出力管理手段と、
決定された出力方法にて、出力要求音を前記音出力手段から出力する音出力制御手段と、を備えた、という構成を採る。
【0010】
また、本発明の他の形態であるプログラムは、
音出力手段が設置された空間に対する音の出力を制御するコンピュータに、
所定の音の出力特性を表す音出力設定情報を設定して記憶する音出力設定手段と、
音の出力要求に応じて、この出力要求された音である出力要求音について設定されている音出力設定情報に基づいて、当該出力要求音の出力方法を決定する音出力管理手段と、
決定された出力方法にて、出力要求音を音出力手段から出力する音出力制御手段と、
を実現させる、という構成を採る。
【0011】
さらに、本発明の他の形態である、音出力手段が設置された空間に対する音の出力を制御する音場制御方法は、
所定の音の出力方法を表す音出力設定情報を設定して記憶する音出力設定工程と、
音の出力要求に応じて、この出力要求された音である出力要求音について設定されている音出力設定情報に基づいて、当該出力要求音の出力方法を決定する音出力管理工程と、
決定された出力方法にて、出力要求音を前記音出力手段から出力する音出力制御工程と、
を有する、という構成を採る。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、以上のように構成されることにより、音場制御装置の設計が容易となり、利用者に対して最適な音場を提供することができる。その結果、利用者の利便性の向上を図ることができる、という優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、所定の空間に音を出力するシステムにて、当該出力する音に適した音場を提供するものである。特に、複数の音を同時に出力する空間を有する場合に適用することに好適である。例えば、車両システム、航空機・鉄道等のコックピットを制御するシステム、住宅(ホームネットワーク)における家電を制御するシステム、に適用可能である。
【0014】
そして、本発明の一形態は、
音出力手段が設置された空間に対する音の出力を制御する音場制御装置であって、
所定の音の出力方法を表す音出力設定情報を設定して記憶する音出力設定手段と、
音の出力要求に応じて、この出力要求された音である出力要求音について設定されている音出力設定情報に基づいて、当該出力要求音の出力方法を決定する音出力管理手段と、
決定された出力方法にて、出力要求音を前記音出力手段から出力する音出力制御手段と、
を備えた、という構成を採る。
【0015】
上記発明によると、まず、システム設計者等が、所定の音の出力特性を表す音出力設定情報を設定して記憶しておく。その後、音場制御装置は、所定の音の出力要求があると、この出力要求音について設定された上記音出力設定情報に基づいて、当該出力要求音の出力方法を決定する。そして、決定された出力方法に基づいて、出力要求された音を音出力手段から空間に出力する。このように、音場制御装置は、音の出力要求があった場合に、予め設定された音出力設定情報に基づいて自動的に音の出力方法を決定して音を出力する。従って、上記音出力設定情報を設定することで、容易に利用者に対して出力要求元に適した音場を得ることができ、利便性の向上を図ることができる。
【0016】
そして、上記音出力設定情報は、所定の音に競合する他の音である競合音に対する当該所定の音の出力方法を表す情報を含み、上記音出力管理手段は、競合音が出力されている場合における所定の音の出力要求に応じて、この出力要求音について設定されている音出力設定情報に基づいて、出力要求音の出力方法を決定する、という構成を採る。
【0017】
さらに、上記音出力設定情報は、所定の音に競合する他の音である競合音の出力特性を表す競合音出力設定情報を含み、上記音出力管理手段は、競合音が出力されている場合における所定の音の出力要求に応じて、この出力要求音について設定されている音出力設定情報に基づいて、出力要求音と当該出力要求音に競合する競合音との出力方法を決定し、上記音出力制御手段は、決定された出力方法に応じて、出力要求音と競合音とを音出力手段から出力制御する、という構成を採る。
【0018】
これにより、音場制御装置は、所定の音に競合する競合音が出力されている場合に、当該所定の音の出力要求があると、この出力要求音の音出力設定情報に基づいて、当該出力要求音と競業音との出力方法を自動的に決定する。そして、決定した出力方法に応じて、出力要求音と競合音とを出力する。従って、上記音出力設定情報を設定することで、利用者に対して複数の音に適した音場を容易に提供することができる。
【0019】
また、上記音出力設定情報は、音出力管理手段にて出力要求音と競合音との出力方法を決定する手順を表す手順情報を含む、という構成を採る。これにより、音場制御装置は、設定された手順情報に基づく手順にて、出力要求音と競合音との出力方法を決定する。従って、音の出力方法の決定処理の迅速化を図ることができる。また、手順情報を設定することで、利用者に対して、より出力要求音と競合音とに適した音場を提供することができる。
【0020】
また、上記競合音出力設定情報は、出力要求音が出力される場合における、競合音の出力動作を表す競合音出力動作情報を含む、という構成を採る。このとき、上記競合音出力動作情報は、競合音の出力時に音量を減衰させて出力する度合いを表す減衰率情報を含む、という構成を採る。さらに、上記競合音出力動作情報は、競合音が出力される音出力手段毎の減衰率情報を含む、という構成を採る。
【0021】
これにより、音場制御装置は、出力要求音が出力される際における競合音の出力動作を、音出力設定情報に基づいて自動的に決定して出力する。例えば、競合音の音量を減衰させて出力し、さらには、音出力手段の位置毎に異なる減衰率にて出力する。従って、利用者に対して、出力要求音や競合音に応じたより望ましい音場を提供することができる。
【0022】
また、上記音出力設定情報は、音を出力する音出力手段を特定する出力位置情報を含み、上記音出力管理手段は、出力要求音の出力位置情報が、当該出力要求音に競合する競合音の出力位置情報と一致する場合に、出力要求音について設定されている音出力設定情報に基づいて競合音の出力方法を決定する、という構成を採る。これにより、出力要求音と競合音との出力位置が一致する場合に、出力要求音と競合音との出力方法を決定する。従って、複数の音が同じスピーカから出力される場合に、予め設定された各音の出力特性に応じて、利用者に対してより望ましい音場を提供することができ、利便性の向上を図ることができる。
【0023】
また、上記音出力設定情報は、他の音に対して優先させて出力することを表す優先度を表す優先度情報を含み、上記音出力管理手段は、出力要求音の優先度が、出力されている競合音の優先度よりも低い場合に、当該出力要求音を出力しないと決定する、という構成を採る。これにより、競合音よりも優先度が低い出力要求音は出力しない。その結果、優先度が低い不要な音の出力を抑制でき、利用者の煩わしさを解消できる。
【0024】
さらに、上記音出力設定手段は、外部から入力された情報に基づいて音出力設定情報を追加及び/又は変更する機能を有する、これにより、新たに音を出力するシステムを追加や変更した場合であっても、音出力設定情報を追加や変更することで、その設定に応じた音の出力を実行することができる。従って、複数の音を出力するシステムの変更に応じて、容易に利用者に対して望ましい音場を提供することができ、さらなる利便性の向上を図ることができる。
【0025】
そして、本発明の他の形態である音場制御システムは、
所定の空間に設置された音出力手段と、空間に対して音出力手段から出力する音を制御する音場制御装置と、を備えた音場制御システムであって、
音場制御装置は、
所定の音の出力方法を表す音出力設定情報を設定して記憶する音出力設定手段と、
音の出力要求に応じて、この出力要求された音である出力要求音について設定されている音出力設定情報に基づいて、当該出力要求音の出力方法を決定する音出力管理手段と、
決定された出力方法にて、出力要求音を音出力手段から出力する音出力制御手段と、を備えた、
という構成を採る。
【0026】
そして、上記音場制御システムにおいて、上記音出力設定情報は、所定の音に競合する他の音である競合音に対する当該所定の音の出力方法を表す情報を含み、上記音出力管理手段は、競合音が出力されている場合における所定の音の出力要求に応じて、この出力要求音について設定されている音出力設定情報に基づいて、出力要求音の出力方法を決定する、という構成を採る。
【0027】
さらに、上記音場制御システムにおいて、上記音出力設定情報は、所定の音に競合する他の音である競合音の出力方法を表す競合音出力設定情報を含み、上記音出力管理手段は、競合音が出力されている場合における所定の音の出力要求に応じて、この出力要求音について設定されている音出力設定情報に基づいて、出力要求音と当該出力要求音に競合する競合音との出力方法を決定し、上記音出力制御手段は、決定された出力方法に応じて、出力要求音と競合音とを音出力手段から出力制御する、という構成を採る。
【0028】
また、本発明の他の形態であるプログラムは、
音出力手段が設置された空間に対する音の出力を制御するコンピュータに、
所定の音の出力方法を表す音出力設定情報を設定して記憶する音出力設定手段と、
音の出力要求に応じて、この出力要求された音である出力要求音について設定されている音出力設定情報に基づいて、当該出力要求音の出力方法を決定する音出力管理手段と、
決定された出力方法にて、出力要求音を前記音出力手段から出力する音出力制御手段と、
を実現させる、という構成を採る。
【0029】
そして、上記プログラムにおいて、上記音出力設定情報は、所定の音に競合する他の音である競合音に対する当該所定の音の出力方法を表す情報を含み、上記音出力管理手段は、競合音が出力されている場合における所定の音の出力要求に応じて、この出力要求音について設定されている音出力設定情報に基づいて、出力要求音の出力方法を決定する、という構成を採る。
【0030】
さらに、上記プログラムにおいて、上記音出力設定情報は、所定の音に競合する他の音である競合音の出力方法を表す競合音出力設定情報を含み、上記音出力管理手段は、競合音が出力されている場合における所定の音の出力要求に応じて、この出力要求音について設定されている音出力設定情報に基づいて、出力要求音と当該出力要求音に競合する競合音との出力方法を決定し、上記音出力制御手段は、決定された出力方法に応じて、出力要求音と競合音とを音出力手段から出力制御する、という構成を採る。
【0031】
さらに、本発明の他の形態である、音出力手段が設置された空間に対する音の出力を制御する音場制御方法は、
所定の音の出力方法を表す音出力設定情報を設定して記憶する音出力設定工程と、
音の出力要求に応じて、この出力要求された音である出力要求音について設定されている音出力設定情報に基づいて、当該出力要求音の出力方法を決定する音出力管理工程と、
決定された出力方法にて、出力要求音を音出力手段から出力する音出力制御工程と、
を有する、という構成を採る。
【0032】
そして、上記音場制御方法において、上記音出力設定情報は、所定の音に競合する他の音である競合音に対する当該所定の音の出力方法を表す情報を含み、上記音出力管理方法は、競合音が出力されている場合における所定の音の出力要求に応じて、この出力要求音について設定されている音出力設定情報に基づいて、出力要求音の出力方法を決定する、という構成を採る。
【0033】
さらに、上記音場制御方法において、上記音出力設定情報は、所定の音に競合する他の音である競合音の出力方法を表す競合音出力設定情報を含み、上記音出力管理工程は、競合音が出力されている場合における所定の音の出力要求に応じて、この出力要求音について設定されている音出力設定情報に基づいて、出力要求音と当該出力要求音に競合する競合音との出力方法を決定し、上記音出力制御工程は、決定された出力方法に応じて、出力要求音と競合音とを音出力手段から出力制御する、という構成を採る。
【0034】
また、上記音出力設定情報は、音を出力する音出力手段を特定する出力位置情報を含み、上記音出力管理工程は、出力要求音の出力位置情報が、当該出力要求音に競合する競合音の出力位置情報と一致する場合に、出力要求音について設定されている音出力設定情報に基づいて競合音の出力方法を決定する、という構成を採る。さらに、上記音出力設定情報は、他の音に対して優先させて出力することを表す優先度を表す優先度情報を含み、上記音出力管理工程は、出力要求音の優先度が、出力されている競合音の優先度よりも低い場合に、当該出力要求音を出力しないと決定する、という構成を採る。
【0035】
上述した構成のシステム、プログラム、方法の発明であっても、上記音場制御装置と同様の作用に作用するため、上述した本発明の目的を達成することができる。
【0036】
以下、本発明の具体的な構成及び動作を、実施形態にて説明する。なお、以下の実施形態では、音場制御装置の一例として、車両内の音場を制御する装置を例示するが、本発明における音場制御装置は、車両内の音場を制御する場合に限定されない。つまり、本発明では、上述したように、航空機のコックピットや住宅内といったあらゆる空間の音場を制御する装置にも適用可能である。
【0037】
<実施形態1>
本発明の第1の実施形態を、図1乃至図14を参照して説明する。図1は、車両に設置された音出力制御システムの全体構成を示す概略図である。図2は、制御装置の構成を示す機能ブロック図である。図3は、音出力要求元システムの一例を示す図である。図4は、音場データ記憶部に記憶されているデータの一例を示す図であり、図5は、その各データの設定状況を示す説明図である。図6はデザインテンプレートの一例を示し、図7は、その内容を説明する図である。図8は音特性データの一例を示し、図9は、出力エリアデータの一例を示す図である。図10乃至図12は、出力ルールデータの一例を示す図であり、図13は、個別設定データの一例を示す図である。図14は、制御装置の動作を示すフローチャートである。
【0038】
[構成]
図1に示すように、本実施形態において音を出力する空間は、運転席と助手席とをからなる前席と、その後方に位置する後席と、を備えた車両100内である。そして、車両100は、その内部の周囲に、音を出力する複数のスピーカSPを備えている。なお、スピーカには、1つあるいは複数が組を形成しており、それぞれが音を出力する領域(出力エリア)を表す情報が割り当てられている。例えば、運転席の前方に位置する2つのスピーカは、符号SP1の出力エリアに位置するスピーカであり、運転席の側方に位置する3つのスピーカは、符号SP2の出力エリアに位置するスピーカとして設定されている。そして、図1の例では、各出力エリアSP1〜SP7に位置するスピーカSPを備えている。
【0039】
また、車両100は、上記車両100内部の空間に上記スピーカSPから音を出力するよう制御する制御装置1(音場制御装置)を備えている。この制御装置1は、演算装置(CPU)及び記憶装置(ハードディスクやフラッシュメモリ)を備えたコンピュータにて構成されており、音出力要求元システム7から音の出力要求を受けて、上記スピーカSPから音を出力制御する機能を有している。
【0040】
具体的に、制御装置1は、CPU(図示せず)に本発明のプログラムが組み込まれることによって、図2に示すように、音出力設定部2と、音出力管理部3と、音出力処理部4と、を備えている。また、制御装置1は、記憶装置(図示せず)内に、デザインテンプレート記憶部5と、音場データ記憶部6と、を備えている。さらに、制御装置1は、音の出力を要求する音出力要求システム7を備えている。以下、各構成について詳述する。
【0041】
まず、音出力要求元システム7は、上述したように、制御装置1自体にスピーカSPから音を出力するよう要求する、カーナビゲーションシステム70や車両制御システム80を備えている。カーナビゲーションシステム70が有する具体的な音出力を要求する要求元アプリケーションとしては、経路案内等を行うガイド音声アプリケーション71、渋滞情報などの通知を行う交通情報通知アプリケーション72、さらには、音楽を再生出力するオーディオアプリケーション73などがある。また、車両制御システム80が有する具体的な音出力を要求する要求元アプリケーションとしては、車両の状態や周囲の状況を検出して衝突防止通知や障害物情報通知等を行う、衝突防止通知アプリケーション81、障害物情報通知アプリケーション82、ガイド音声アプリケーション83などがある。なお、音出力要求を行う要求元アプリケーション(システム)は、上述したものに限定されない。また、上記カーナビゲーションシステム70などの音出力要求元システム7は、制御装置1内に装備されていなくてもよい。
【0042】
また、上記音場データ記憶部6は、図4に示すように、音特性データ61と、出力エリアデータ62と、出力ルールデータ63と、個別データ64と、を記憶する。これら各データ61〜64は、図5に示すように、後述するようにデザインテンプレート記憶部5に記憶されたデザインテンプレートデータ50に基づいて、システム設計者等によって設定され記憶されるデータである。
【0043】
上記音出力設定部2(音出力設定手段)は、基本的には、所定の音の出力方法を表し、音場を定義するデザインテンプレートデータ及び/あるいは音場データ(音出力設定情報)を設定して、音場データ記憶部6に登録する機能を有する。つまり、上述した音出力要求元システム7にて出力要求される音の仕様から、各音が出力されるスピーカの配置や他の音との競合などから音場に影響を与える要因を検討することによって定義された複数の音の出力方法を設定する。なお、音出力設定部2は、システム設計者や利用者からの入力に応じて、上記デザインテンプレートデータや音場データを設定して記憶する。但し、音出力設定部2は、システム設計者や車両100の利用者からの入力によって、各データを設定することに限定されない。また、上記デザインテンプレートデータ50は予め記憶されていて、これに基づいて、音出力設定部2が自動的に上記音場データを設定して記憶してもよい。
【0044】
そして、上記デザインテンプレートデータ50は、出力音の要求元となる各アプリケーション(以下、「要求元アプリケーション」と称する)から出力される各音の出力方法を設定したデータである。ここで、デザインテンプレートデータ50の一例を図6に示す。この図に示すように、デザインテンプレートデータ50は、「要求元アプリケーション」、各要求元アプリケーションによる音出力の「目的」、出力するスピーカを特定する「出力エリア」、「音響効果」、「音量」(図示せず)を含む。
【0045】
また、デザインテンプレートデータ50は、この要求元アプリケーションが出力する音に競合する他の音である競合音を出力する他の要求元アプリケーションを示す「競合相手」の情報を含む。さらに、デザインテンプレートデータ50は、上記競合相手の出力方法を表す競合音出力設定情報を含む。この競合音出力設定情報は、例えば、要求元アプリケーション自体が出力する音と同時に出力される競合音の出力を停止する、といった情報や、競合音の音量を減衰させて出力する度合いを表す減衰率情報、といった競合音の出力動作を表す競合音出力動作情報を含む。なお、上記減衰率情報は、競合音が出力されるスピーカ毎(出力エリア毎)における減衰率を設定した減衰率情報を含む。
【0046】
なお、図7(a)に、上記デザインテンプレートデータ50に設定された出力エリアと、各スピーカ(SP)と対応関係を示している。また、図7(b)に、デザインテンプレートデータ50に設定された、音の出力要求を行う各アプリケーション同士の競合関係を示している。
【0047】
以上のように、デザインテンプレートデータ50は、要求元アプリケーション毎に、その出力方法を表す情報を含んでいる。なお、上記デザインテンプレートデータ50の設定は、例えば、各要求元アプリケーションを設計したメーカ側やシステム設計者が、制御装置1に入力することによって行ってもよく、あるいは、利用者自身が入力して設定してもよい。そして、上記デザインテンプレートデータ50の内容は、システム設計者等の操作に応じて、容易に変更することが可能である。
【0048】
また、上記音出力設定部2は、上述したデザインテンプレートデータ50に含まれる各情報に基づいて、外部からシステム設計者等の入力に応じて、あるいは、自動的に、要求元アプリケーションからの音の出力方法を決定するための音場データとして設定する。そして、具体的には、図4に示すように、音特性データ61と、出力エリアデータ62と、出力ルールデータ63と、個別データ64と、を音場データとして整理して、音場データ記憶部6に記憶する。なお、音場データは、デザインテンプレートデータ50内の情報を整理しただけの情報であってもよく、あるいは、新たに追加されたデータを含んでいてもよい。以下、音場データに含まれる各データ61〜64について説明する。
【0049】
上記音特性データ61は、車両100内に要求元アプリケーションが出力する音の特性を定義する情報である。具体的には、図8に示すように、各要求元アプリケーションの目的に応じて、「主音源」と「割込音源」とに分けて定義している。ここで、「主音源」とは、ユーザ操作に対応して音源を切替えることが可能な音を指し(例えば、CDからラジオへの切替え)、この例ではオーディオデータなどのBGMが対応する。また、「割込音源」とは、上記「主音源」に対し、割込できる1つ以上の音源を指し、利用者に対して通知する性質の音を指す。さらに、音特性データ61は、他の音に対して優先させて出力する優先度を表す優先度情報を含んでいる。具体的には、図8に示すように、「割込音源」の優先度を「主音源」よりも高く定義しており、また、「割込音源」間においても、割込目的に応じて音を出力する優先度を定義している。
【0050】
また、上記出力エリアデータ62は、要求元アプリケーション毎に設定されているスピーカの出力エリアを定義する情報である。図9に示す例では、デザインテンプレートデータ50に記憶された出力エリア毎(SP1,SP2,・・・)に、当該各出力エリアから音を出力する要求元アプリケーションを定義している。なお、ここでは、出力エリアは、スピーカSP等の物理的な出力装置を直接示しているわけではなく、車両システムの物理配置から1つ以上の物理装置を束ねた領域(SP1〜SP7)を指している。さらに、出力エリアデータ62は、各出力エリアにおける要求元アプリケーションが出力要求する音の音響効果(例えば、ステレオ、モノラル等)を定義している。このように、出力エリアデータ62を設定することで、車種等が変化し、物理的なスピーカ(音出力手段)が増減した場合であっても、要求元アプリケーションが希望する適切な出力エリアに、音を出力することができる。
【0051】
また、上記出力ルールデータ63(手順情報)は、要求元アプリケーションからの出力要求音と、このときに既に出力されている音(競合音)と、の出力方法を決定する手順、つまり、複数の音を重ね合わせる適用ルールを定義する情報である。ここで、出力ルールデータの一例を、図10乃至図12に示す。これらの図に示すように、出力ルールデータは、上述した複数の音の出力エリアや優先度などに基づいて各音の出力方法を決定するロジック(フローチャート)にて定義している。なお、出力ルールデータにて出力方法を決定する際には、さらに、各要求元アプリケーションの具体的な出力表現方法を定義している個別データ64を参照して決定する。この個別データ64は、要求元アプリケーション毎の音量(デフォルト値)、この要求元の音と競合相手である競合音の出力動作(減衰、停止等)、競合する出力エリアに対する減衰率、といった情報を定義している。なお、出力ルールデータ63の詳細については、下記動作説明時に詳述する。
【0052】
以上説明したデザインテンプレートデータ50、音場データ6は、車両100に応じて、自由に変更設定可能である。例えば、車両100に搭載された音を出力要求する要求元アプリケーションの競合仕様、システム構成、デバイス構成等の変化に応じて、車両システム設計時に、変更が必要な部分を自由かつ容易に設定することができる。
【0053】
また、図2に示した音出力管理部3(音出力管理手段)は、要求元アプリケーション(7)から音の出力要求があったときに、上述したようにデザインテンプレートデータ50に応じて設定された音場データ6に基づいて、各音の出力方法を決定する。このとき、出力ルールデータ63のフローチャートに従い、音特性データ61、出力エリアデータ62、個別データ64を参照して、各音の出力方法を決定する。例えば、出力エリア、出力音量、音響効果、競合音の出力停止や減衰率、などを決定する。そして、この決定した出力方法に基づいて、音出力処理部4(音出力制御手段)が、各要求元アプリケーションが出力要求している音を各スピーカSPから出力する。
【0054】
[動作]
次に、上記構成のシステムの動作を、主に図14のフローチャートを参照して説明する。なお、システムの動作は、大きく分けて2段階に分かれる。まず、第1段階では、事前に複数の音を重ねて出力する方法を決定する手順を定義する。そして、第2段階では、定義した手順に従って複数の音を鳴らし分ける方法を決定して、実際に音を出力して最適な音場を提供する。以下、詳述する。
【0055】
まず、第1段階では、複数の音を重ねて出力する方法を定義するため、車両システムにおける出力装置(スピーカ、ヘッドフォン等)の物理配置、要求元アプリケーションにおける競合仕様から、デザインテンプレートデータ50を作成して記憶する。そして、デザインテンプレートデータ50に記載した各情報を、さらに、音特性データ61、出力エリアデータ62、出力ルールデータ63、個別データ64、に整理して、音場データとして設定し、記憶しておく(ステップS31、音出力設定工程)。
【0056】
ここで、例えば、車両制御を行うアプリケーションA、ナビゲーション情報を提供するアプリケーションB、マルチメディア情報(例えば、BGM)を提供するアプリケーションC、があるとする。この場合に、以下のように、予め設定記憶されたデザインテンプレートデータ50に基づいて、複数の音を重ねる方法である音場データを定義する。
【0057】
まず、図8に示すように、音特性データ61を定義する。ここでは、アプリケーションA及びBは、状況に応じて利用者に最適な情報を適宜提供するものであるため、割込音源として定義する。また、アプリケーションC(BGM)は、利用者(ドライバ、同乗者)の操作に基づき音源を切り替えるものである(例えば、CDからラジオへ切り替える)ため、主音源として定義する。また、各要求元アプリケーションによる出力音の優先順序を定義する。例えば、図8に示すように、要求元アプリケーションC(BGM)よりも、要求元アプリケーションA,B(ガイド音声)の優先度を高く定義する。そして、それよりも要求元アプリケーションA(障害物情報通知)と要求元アプリケーションB(事故情報通知)の優先度を高く定義し、さらに、アプリケーションA(衝突防止通知)の優先度を高く定義する。
【0058】
次に、デザインテンプレートデータ50に基づいて、図9に示すように、出力エリアデータ62を定義する。例えば、要求元アプリケーションAは運転席を対象にした出力エリア(SP1及びSP2)を定義し、要求元アプリケーションBは運転席及び助手席を対象にした出力エリア(SP1、SP2、SP6、SP7)を定義する。また、要求元アプリケーションCは乗車している全員を対象にした出力エリア(SP1〜SP7の全て)を定義する。
【0059】
最後に、出力方法を決定する出力ルールデータ63を定義する。以下、定義する出力ルールデータ63のロジックを説明する。まず、図10に示すように、図9の出力エリアデータ62を参照して要求元アプリケーションから音を出力するスピーカの出力エリアか同じか否かを判断するよう定義する(ステップS1)。そして、出力エリアが同じ場合に、音の優先度が高いか否かを判断するよう定義する(ステップS2)。このとき、先に出力されている音よりも、出力要求された音の優先度が低い場合には(ステップS2でイエス)、その出力要求を破棄するよう定義する(ステップS3)。
【0060】
一方、優先度が高い場合には(ステップS2でノー)、図11の競合制御処理に進むよう定義する(ステップS4)。そして、図11に示す競合制御処理では、個別データ64を読み出して(ステップS11)、要求元アプリケーションと一致する個別データ部分を抽出するよう定義する(ステップS12)。そして、この抽出した個別データ部分を参照して、出力方法を設定するよう定義する(ステップS13)。その後、図12に示す出力方法の設定処理に進み、出力エリアの確保(ステップS21)、出力要求のあった要求元アプリケーションの音量など出力方法の決定(ステップS22)、既に出力されている競合する要求元アプリケーションからの出力音の設定(ステップS23,S24)、を定義する。
【0061】
なお、上記出力ルールデータ63と共に、要求元アプリケーション毎の詳細な出力方法を表す個別データ64も定義する。例えば、個別データを、デザインテンプレートデータ50に基づいて、図13に示すように定義する。具体的には、要求元アプリケーション、その音量、競合相手となる要求元アプリケーション、その出力動作(減衰率等)、を定義する。
【0062】
その後、第2段階に進み、実際に音の出力要求があった場合に、上述した第1段階で定義した複数の音を重ね合わせる方法を決定する手順に従って、当該複数の音を重ね合わせて出力する方法を決定する(音出力管理工程)。そして、この決定した出力方法に従って複数の音を出力し、最適な音場を提供する(音出力制御工程)。
【0063】
なお、ここでは、要求元アプリケーションCの実行中(全スピーカに対し、BGM再生中)に、要求元アプリケーションAが、ドライバに対して注意情報(前方障害物通知)を提供する場合を考える。すると、制御装置1は、以下のように動作する。
【0064】
まず、既に要求元アプリケーションCが、全スピーカからある音楽(BGM)を再生している(ステップS32)。その最中に、要求元アプリケーションAが運転者に対し、注意情報(前方障害物通知)を提供する状況になると、音出力管理部3は、要求元アプリケーションAからの出力要求(前方障害物通知)を受け付ける(ステップS33でイエス)。すると、音出力管理部3は、上述したように設定された音場データに従って、既にBGMを出力している要求元アプリケーションCと要求元アプリケーションAとの出力方法を決定する。つまり、出力要求音である要求元アプリケーションAからの前方障害物通知と、これに競合する既に出力されている競合音である要求元アプリケーションCからのBGMとを、重ね合わせて出力する方法を決定する(ステップS34)。
【0065】
具体的に、まず、要求元アプリケーションAからの前方障害物通知と、要求元アプリケーションCからのBGMの出力エリアが同じか否かを、図9に示す出力エリアデータを参照して判断する(図10のステップS1)。すると、要求元アプリケーションCは、全スピーカを占有しているため、SP1及びSP2の出力エリアに対し、要求元アプリケーションAと競合することが判明する(図10のステップS1でイエス)。
【0066】
続いて、BGMと前方障害物通知との優先度を図8の音特性データを参照して比較する(図10のステップS2)。すると、割込音源である要求元アプリケーションAが、主音源である要求元アプリケーションCよりも優先度が高いと判断する(図10のステップS2でノー)。そして、後述するように、図11、図12に示すロジック、及び、図13に示す個別データに従って、要求元アプリケーションAの音出力要求(前方障害物通知)に対する要求元アプリケーションCの音出力であるBGMの競合を解決するよう、各音の出力方法を詳細に決定する(図10のステップS4)。
【0067】
そして、図11に示す競合制御処理では、まず、個別データを読み出して(図11のステップS11)、この個別データ内から、要求元アプリケーションAの音出力要求(前方障害物通知)に対応する部分を抽出する(図11のステップS12)。すると、この個別データから抽出した対応部分に従って、図12に示すロジックに基づいて、詳細な出力方法を決定する。具体的には、まず、出力エリア(SP1及びSP2)に対応するスピーカ(No.1〜5)の設定状態を取得し、当該出力エリアであるスピーカを確保する(図12のステップS21)。そして、確保された出力エリアに対して、要求元アプリケーションAの前方障害物通知時の音量等を設定する(図12のステップS22)。また、競合相手であるBGMの出力エリアが一致している場合には、当該競合相手に関する個別データから、要求元アプリケーションCからのBGMの出力設定を行う(図12のステップS23,S24)。例えば、要求元アプリケーションCが出力している音量を、競合しているスピーカからは100%減衰して出力する設定を行う。但し、競合相手である要求元アプリケーションCの減衰率が設定されていない競合しない出力エリアについては、減衰の設定は行わない。
【0068】
以上のようにして、確保した出力エリアに対し、要求元アプリケーションAの前方障害物通知の設定(音量等)、及び、競合相手であるアプリケーションCのBGMの設定(減衰率)、を実施し、出力エリアを要求元アプリケーションAに提供する(図12のステップS25)。これにより、要求元アプリケーションAは、提供された出力エリアに対して設定された出力方法に応じて音を出力する(図14のステップS35)。また、既に出力エリアが提供されている要求元アプリケーションCは、設定された出力方法に応じてBGMを出力する(図14のステップS35)。この場合には、出力エリアSP1,SP2については減衰率100%であるため、かかる出力エリアからの出力を消音し、他の出力エリアからは減衰させずに出力したままとする。
【0069】
以上のように、本実施形態によると、車両内において複数の音が出力される状況であっても、利用者に提供する情報の目的や利用者のニーズから、要求元の特性を考慮して予め設定しておくことで、利用者(ドライバ、同乗者)に対し、最適な音場を提供することができる。従って、車両内において音を出力するシステムを追加したり、変更した場合であっても、最適な音場を提供できるよう柔軟に対応することができる。例えば、車種や仕向け等を考慮した車両システムの派生開発を行う場合であっても、柔軟に対応することができる。具体的には、車両システム設計時に、システム構成の差異(例えば、車種による搭載ECU(電子制御装置)の差異等)、デバイス構成の差異(例えば、国内・海外等の仕向けによるデバイス配置の差異等)に応じて変更が必要な部分について、事前に上述したように音場データを設定しておくことで、自由かつ容易に対応できる。さらには、派生開発に柔軟に対応することができ、製品開発における工数削減や品質の向上を図ることができる。
【0070】
<実施形態2>
次に、本発明の第2の実施形態を、図15を参照して説明する。図15は、本実施形態における個別データを示す図である。
【0071】
本実施形態における車両システムは、上述した実施形態1とほぼ同一の構成を採っている。そして、本実施形態では、上記個別データを変更して設定している点で異なる。つまり、本実施形態では、個別データを、車両システムが提供される仕向けの違いにより、運転席と助手席の物理配置が左右対称になった場合の例(海外仕向けと表記)に対応する内容に設定している。なお、国内仕向けでは、図1に示すように、運転席に対する出力エリアがSP1及びSP2、助手席に対する出力エリアがSP6及びSP7であるのに対し、海外仕向けの場合には、運転席に対する出力エリアがSP6及びSP7であり、助手席に対する出力エリアがSP1及びSP2である。
【0072】
そして、本実施形態にて、要求元アプリケーションAが前方障害物を通知する場合には、競合相手となる要求元アプリケーションBのガイド音声やアプリケーションCのBGMの出力音を、競合する出力エリアでは減衰する必要がある。このとき、上述したように、海外仕向けでは運転席の配置が異なるため、個別データ内の競合相手に対する出力方法(アクション)を図15に示すように変更している。具体的には、各々の出力エリアに対する減衰率を反対に定義している。つまり、国内仕向けにおけるSP1及びSP2の減衰率が100%、SP6及びSP7の減衰率が50%であるのに対して(図13参照)、海外仕向けでは、SP1及びSP2の減衰率を50%、SP6及びSP7の減衰率を100%に定義している(図15参照)。
【0073】
そして、上述した個別データは、利用者や製造業者が制御装置1に対して情報を入力することにより、変更することが可能である。従って、仕向けによる構成に応じて、車両システム設計時に適切な音場データを定義することにより、仕向けによる変更箇所を吸収し、ミキシングにおける音を重ねる手順を車両システム毎に自由に切替えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、所定の空間内で複数の音を提供するエリアをコントロールする(音場制御)装置といった用途に適用できる。例えば、車両システム、航空機・鉄道等のコックピットを制御するシステム、住宅(ホームネットワーク)における家電を制御するシステムに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】車両に設置された音出力制御システムの全体構成を示す概略図である。
【図2】制御装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図3】音出力要求元システムの一例を示す図である。
【図4】音場データ記憶部に記憶されているデータの一例を示す図である。
【図5】音場データ記憶部に記憶されている各データの設定状況を示す説明図である。
【図6】デザインテンプレートデータの一例を示す図である。
【図7】デザインテンプレートデータの内容を説明する図である。
【図8】音特性データの一例を示す図である。
【図9】出力エリアデータの一例を示す図である。
【図10】出力ルールデータの内容の一例を示す図である。
【図11】出力ルールデータの内容の一例を示す図である。
【図12】出力ルールデータの内容の一例を示す図である。
【図13】個別設定データの一例を示す図である。
【図14】制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図15】実施形態2における個別設定データの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0076】
1 制御装置
2 音出力設定部
3 音出力管理部
4 音出力処理部
5 デザインテンプレート記憶部
6 音場データ記憶部
7 音出力要求元システム
50 デザインテンプレート
61 音特性データ
62 出力エリアデータ
63 出力ルールデータ
64 個別データ
70 カーナビゲーションシステム
71 ガイド音声アプリケーション
72 交通情報通知アプリケーション
73 オーディオアプリケーション
80 車両制御システム
81 衝突防止通知アプリケーション
82 障害物情報通知アプリケーション
83 ガイド音声アプリケーション
100 車両
SP スピーカ
SP1〜SP7 出力エリア


【特許請求の範囲】
【請求項1】
音出力手段が設置された空間に対する音の出力を制御する音場制御装置であって、
所定の音の出力方法を表す音出力設定情報を設定して記憶する音出力設定手段と、
音の出力要求に応じて、この出力要求された音である出力要求音について設定されている前記音出力設定情報に基づいて、当該出力要求音の出力方法を決定する音出力管理手段と、
前記決定された出力方法にて、前記出力要求音を前記音出力手段から出力する音出力制御手段と、
を備えたことを特徴とする音場制御装置。
【請求項2】
前記音出力設定情報は、前記所定の音に競合する他の音である競合音に対する当該所定の音の出力方法を表す情報を含み、
前記音出力管理手段は、前記競合音が出力されている場合における前記所定の音の出力要求に応じて、この出力要求音について設定されている前記音出力設定情報に基づいて、前記出力要求音の出力方法を決定する、
ことを特徴とする請求項1記載の音場制御装置。
【請求項3】
前記音出力設定情報は、前記所定の音に競合する他の音である競合音の出力方法を表す競合音出力設定情報を含み、
前記音出力管理手段は、前記競合音が出力されている場合における前記所定の音の出力要求に応じて、この出力要求音について設定されている前記音出力設定情報に基づいて、前記出力要求音と当該出力要求音に競合する前記競合音との出力方法を決定し、
前記音出力制御手段は、決定された出力方法に応じて、前記出力要求音と前記競合音とを前記音出力手段から出力制御する、
ことを特徴とする請求項1又は2記載の音場制御装置。
【請求項4】
前記音出力設定情報は、前記音出力管理手段にて前記出力要求音と前記競合音との出力方法を決定する手順を表す手順情報を含む、
ことを特徴とする請求項3記載の音場制御装置。
【請求項5】
前記競合音出力設定情報は、前記出力要求音が出力される場合における、前記競合音の出力動作を表す競合音出力動作情報を含む、
ことを特徴とする請求項3又は4記載の音場制御装置。
【請求項6】
前記競合音出力動作情報は、前記競合音の出力時に音量を減衰させて出力する度合いを表す減衰率情報を含む、
ことを特徴とする請求項5記載の音場制御装置。
【請求項7】
前記競合音出力動作情報は、前記競合音が出力される前記音出力手段毎の前記減衰率情報を含む、
ことを特徴とする請求項6記載の音場制御装置。
【請求項8】
前記音出力設定情報は、音を出力する前記音出力手段を特定する出力位置情報を含み、
前記音出力管理手段は、前記出力要求音の前記出力位置情報が、当該出力要求音に競合する前記競合音の前記出力位置情報と一致する場合に、前記出力要求音について設定されている前記音出力設定情報に基づいて前記競合音の出力方法を決定する、
ことを特徴とする請求項3,4,5,6又は7記載の音場制御装置。
【請求項9】
前記音出力設定情報は、他の音に対して優先させて出力することを表す優先度を表す優先度情報を含み、
前記音出力管理手段は、前記出力要求音の優先度が、出力されている前記競合音の優先度よりも低い場合に、当該出力要求音を出力しないと決定する、
ことを特徴とする請求項3,4,5,6,7又は8記載の音場制御装置。
【請求項10】
前記音出力設定手段は、外部から入力された情報に基づいて前記音出力設定情報を追加及び/又は変更する機能を有する、
ことを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6,7,8又は9記載の音場制御装置。
【請求項11】
所定の空間に設置された音出力手段と、前記空間に対して前記音出力手段から出力する音を制御する音場制御装置と、を備えた音場制御システムであって、
前記音場制御装置は、
所定の音の出力方法を表す音出力設定情報を設定して記憶する音出力設定手段と、
音の出力要求に応じて、この出力要求された音である出力要求音について設定されている前記音出力設定情報に基づいて、当該出力要求音の出力方法を決定する音出力管理手段と、
前記決定された出力方法にて、前記出力要求音を前記音出力手段から出力する音出力制御手段と、を備えた、
ことを特徴とする音場制御システム。
【請求項12】
前記音出力設定情報は、前記所定の音に競合する他の音である競合音に対する当該所定の音の出力方法を表す情報を含み、
前記音出力管理手段は、前記競合音が出力されている場合における前記所定の音の出力要求に応じて、この出力要求音について設定されている前記音出力設定情報に基づいて、前記出力要求音の出力方法を決定する、
ことを特徴とする請求項11記載の音場制御システム。
【請求項13】
前記音出力設定情報は、前記所定の音に競合する他の音である競合音の出力方法を表す競合音出力設定情報を含み、
前記音出力管理手段は、前記競合音が出力されている場合における前記所定の音の出力要求に応じて、この出力要求音について設定されている前記音出力設定情報に基づいて、前記出力要求音と当該出力要求音に競合する前記競合音との出力方法を決定し、
前記音出力制御手段は、決定された出力方法に応じて、前記出力要求音と前記競合音とを前記音出力手段から出力制御する、
ことを特徴とする請求項11又は12記載の音場制御システム。
【請求項14】
音出力手段が設置された空間に対する音の出力を制御するコンピュータに、
所定の音の出力方法を表す音出力設定情報を設定して記憶する音出力設定手段と、
音の出力要求に応じて、この出力要求された音である出力要求音について設定されている前記音出力設定情報に基づいて、当該出力要求音の出力方法を決定する音出力管理手段と、
前記決定された出力方法にて、前記出力要求音を前記音出力手段から出力する音出力制御手段と、
を実現させるためのプログラム。
【請求項15】
前記音出力設定情報は、前記所定の音に競合する他の音である競合音に対する当該所定の音の出力方法を表す情報を含み、
前記音出力管理手段は、前記競合音が出力されている場合における前記所定の音の出力要求に応じて、この出力要求音について設定されている前記音出力設定情報に基づいて、前記出力要求音の出力方法を決定する、
ことを特徴とする請求項14記載のプログラム。
【請求項16】
前記音出力設定情報は、前記所定の音に競合する他の音である競合音の出力方法を表す競合音出力設定情報を含み、
前記音出力管理手段は、前記競合音が出力されている場合における前記所定の音の出力要求に応じて、この出力要求音について設定されている前記音出力設定情報に基づいて、前記出力要求音と当該出力要求音に競合する前記競合音との出力方法を決定し、
前記音出力制御手段は、決定された出力方法に応じて、前記出力要求音と前記競合音とを前記音出力手段から出力制御する、
ことを特徴とする請求項14又は15記載のプログラム。
【請求項17】
音出力手段が設置された空間に対する音の出力を制御する音場制御方法であって、
所定の音の出力方法を表す音出力設定情報を設定して記憶する音出力設定工程と、
音の出力要求に応じて、この出力要求された音である出力要求音について設定されている前記音出力設定情報に基づいて、当該出力要求音の出力方法を決定する音出力管理工程と、
前記決定された出力方法にて、前記出力要求音を前記音出力手段から出力する音出力制御工程と、
を有することを特徴とする音場制御方法。
【請求項18】
前記音出力設定情報は、前記所定の音に競合する他の音である競合音に対する当該所定の音の出力方法を表す情報を含み、
前記音出力管理方法は、前記競合音が出力されている場合における前記所定の音の出力要求に応じて、この出力要求音について設定されている前記音出力設定情報に基づいて、前記出力要求音の出力方法を決定する、
ことを特徴とする請求項17記載の音場制御方法。
【請求項19】
前記音出力設定情報は、前記所定の音に競合する他の音である競合音の出力方法を表す競合音出力設定情報を含み、
前記音出力管理工程は、前記競合音が出力されている場合における前記所定の音の出力要求に応じて、この出力要求音について設定されている前記音出力設定情報に基づいて、前記出力要求音と当該出力要求音に競合する前記競合音との出力方法を決定し、
前記音出力制御工程は、決定された出力方法に応じて、前記出力要求音と前記競合音とを前記音出力手段から出力制御する、
ことを特徴とする請求項17又は18記載の音場制御方法。
【請求項20】
前記音出力設定情報は、音を出力する前記音出力手段を特定する出力位置情報を含み、
前記音出力管理工程は、前記出力要求音の前記出力位置情報が、当該出力要求音に競合する前記競合音の前記出力位置情報と一致する場合に、前記出力要求音について設定されている前記音出力設定情報に基づいて前記競合音の出力方法を決定する、
ことを特徴とする請求項19記載の音場制御方法。
【請求項21】
前記音出力設定情報は、他の音に対して優先させて出力することを表す優先度を表す優先度情報を含み、
前記音出力管理工程は、前記出力要求音の優先度が、出力されている前記競合音の優先度よりも低い場合に、当該出力要求音を出力しないと決定する、
ことを特徴とする請求項19又は20記載の音場制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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