説明

音声および画像圧縮の動的割当て

【課題】本発明は、通信システム、より詳細には、圧縮された音声通信および/あるいは圧縮された画像通信を提供するシステムに関する。
【解決手段】本発明による音声通信システムは、ある与えられたサービスエリア内の音声トラヒックが増加したとき有効音声容量を増加し、音声トラヒックが減少したとき有効音声容量を低減するための手段を提供するが、ここで、有効音声容量の低減は、音声品質の向上を与える。一例としての実施態様においては、音声トラヒックがある与えられた閾値レベルに増加すると、システムは、選択されたチャネル上での音声圧縮を実現し、そのサービスエリアに対する有効容量を増加させる。もう一つの実施例においては、システムは、二つの圧縮されたチャネルを結合することによって、有効容量をさらに増加させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システム、より詳細には、圧縮された音声通信および/あるいは圧縮された画像通信を提供するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
今日、無線および有線の音声および/あるいはビデオ通信システムは、アナログ符号化、デジタル符号化、あるいは、硬直的な、分離可能な、これらの組合せを使用して、音声および/あるいはビデオサービスをユーザに提供する。このようなシステムにおいては、ある与えられたサービスエリア内の音声および/あるいはビデオトラヒックおよび通信資源に応じて、ある音声およびビデオ圧縮スキームが実現(使用)され、これによってシステム容量が増加される。結果として、今日のシステムを使用して、ある与えられたサービスエリアに対して音声および/あるいはビデオサービスを提供するに当たっては、品質と容量の間に、トレードオフが存在するが、このトレードオフは、そのサービスエリアに対して採用される圧縮率に依存する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
例えば、今日のシステムは、音声および/あるいはビデオ通信に対してより高い圧縮率を採用することによって、より多くのサービスを、より多数のユーザあるいは呼者に対して提供することができる。ただし、通常は、これを達成するためには、音声および/あるいはビデオの品質が犠牲となる。そして、今日の音声および/あるいはビデオ通信システムは、いったんある与えられた圧縮システムを使用するように設計されると、システムの品質および容量がそれに固定され、このために、サービス需要のランダムな、および周期的な変動に対して、並びに、ユーザのニーズおよびシステムサービスの変化に対して、柔軟に対応できないという課題を持つ。従って、今日のシステムは、このような音声および/あるいはビデオ通信を提供するためには、あまり望ましいとは言えず、改善の余地を残す。
【課題を解決するための手段】
【0004】
従って、本発明は、システムユーザへのサービスのブロック(閉塞)を回避し、同時に、システム上での音声および/あるいはビデオ通信の品質を維持するための通信システムおよび方法を提供する。これを達成するために、有効システム容量が、動的に制御される。つまり、有効システム容量が、トラヒックのピーク時には増加され、音声トラヒックが低減したときは低減される。ここで、有効容量が低減されると、通信(つまり、音声および/あるいはビデオ)の品質は、増加する。
【0005】
一つの実施例においては、本発明によって提供される通信システムは、ある与えられたサービスエリア内の音声およびビデオトラヒックをモニタし、選択されたチャネル上の通信を動的に制御し、これによって、そのサービスエリアに対する有効システム容量を制御する。
【0006】
もう一つの実施例においては、本発明は、与えられたサービスエリア内にある与えられた数の音声チャネルを有する音声通信システムを提供するが、特徴として、網コントローラが、これら複数の音声チャネルのアベイラビリィティ(空き状態)を定期的にモニタし、将来の呼がシステム上でブロックされる確率を決定する。こうして決定されたブロッキング確率が、次に、許容ブロッキング確率と比較され、これに基づいて、ブロッキングを阻止するために、システム容量を調節する必要があるか否か決定される。決定されたブロッキング確率が許容ブロッキング確率より大きな場合は、網コントローラは、ある与えられた数のチャネルを選択し、それらの上で、ある圧縮スキームを実現、あるいはその変更を行なう。
【0007】
代替として、もう一つの実施例においては、ある与えられた発見的あるいは近似手段が、ブロッキングが発生する確率を決定するために使用される。このような実施例においては、ブロッキング確率が所定のレベルより高いときは、選択されたチャネルを圧縮することによって、そのエリア内の有効音声容量が増加される。この実施例においては、有効音声容量は、選択されたチャネル上の音声圧縮を、増加することによって、さらに増加することも可能である。
【0008】
もう一つの実施例においては、圧縮された音声および/あるいはビデオチャネルが、一つのチャネルに結合される。例えば、二つの選択された圧縮されたチャネルが、一つのチャネルに結合され、これによって、システム上に自由なチャネルが将来の音声呼に対して残され、これによってシステム容量がさらに増加される。
【0009】
さらにもう一つの実施例においては、音声通信システムは、ブロッキングの確率が、あるクリティカルなレベル以下に落ちたとき、選択されたチャネル上の音声圧縮を除去し、以前に結合されたチャネルを分離する。選択されたチャネル上の音声圧縮の除去に起因する性能の劣化を低減するために、システムは、この音声圧縮の解除を、音声トラヒックが比較的軽いとき(つまり、少数のチャネルがブロッキングを回避するために必要とされるとき)にのみ遂行する。このようなシステムは、従来の技術と比較して、性能を向上させる。これは、チャネルの圧縮解除および分離が、ある与えられたサービスエリア内のシステムの音声品質を増加あるいは回復するように機能するためである。結果として、本発明は、システムの容量および音声品質を動的に制御することによって、システム需要のピーク時に呼がブロックするのを回避するための、音声通信システムおよび方法を提供する。こうして、本発明は、従来の技術の制約を大幅に克服する。
【0010】
本発明のこれらおよび他の特徴が、図面を参照しての本発明の実施例の以下の詳細な説明においてより詳細に説明される。ただし、本発明は、特許請求の範囲によってのみ限定されるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1には、本発明に従う動的性能制御を提供する通信システム10の一つの実施例のブロック図が示される。図示されるように、システム10は、スイッチ13を通じて通信網11に電気的に結合された複数のユーザ14を有する。通信システム10は、ある与えられたN個の数のチャネルを、ある与えられたサービスエリアに対して提供する。
【0012】
動作において、網コントローラ12は、このある与えられたサービスエリア内の、このある与えられたN個の数のチャネル上の音声および/あるいはビデオトラヒックをモニタすることによって、トラヒックが、ある与えられた時点において、その与えられたエリア内のシステム容量に接近しているか否かを決定する。つまり、網コントローラ12は、N個のチャネルの内の幾つのチャネルが、ある与えられた時間において、使用中であり、従って、幾つのチャネルが、システム上の潜在的な追加の呼者に対して残されているかを決定する。この情報から、網コントローラは、潜在的なユーザが、使用可能なチャネルNの不足のために、網11上の音声および/あるいはビデオサービスをブロックあるいは拒絶される可能性について決定する。
【0013】
ブロックされる確率が、ある所定の許容できないレベルを超えた場合は、網コントローラ12は、システム容量を増加するための手段を始動することによって、より多くの音声および/あるいはビデオトラヒックを、システム10が単位時間当たりに扱えるようにする。このシステム容量の増加は、システム10に対して、多くの手段の任意の一つを選択あるいは設計することによって達成することができる。
【0014】
音声容量を増加する一つの方法は、システム10上の選択された任意の数のチャネル上の音声を圧縮する方法である。つまり、ある与えられたサービスエリア内において、選択されたチャネルの音声を圧縮することによって、システム10の有効容量(単位時間当たりに扱われる呼の数)が増加され、これによって、ブロッキング(閉塞)の確率が、許容できるレベルに低減される。加えて、有効容量は、任意の選択されたチャネル上の圧縮を増加することによってさらに増加することも可能である。
【0015】
同様にして、網コントローラ12が、使用可能なチャネルの数がある与えられた数より大きなこと、あるいは、ブロッキングの確率がある与えられた最小ブロッキング確率以下であることを決定した場合は、その選択されたチャネル上の音声の圧縮が、低減あるいは除去され(つまり、圧縮解除され)、こうして、音声品質が、音声トラヒックの速度が低い時間において増加される。こうして、システム10は、有効容量および音声品質に対する動的制御を提供し、システム10の性能を音声トラヒックの変動の際に大きく向上させる。
【0016】
図2には、本発明による通信システム20のもう一つの実施例を示すブロック図が示される。図示されるように、通信システム20は、回路セレクタ22を通じて回路グループ23に結合されたトラヒック分類器21を有する。回路グループ23は、共有媒体(例えば、自由空間内のRFチャネルあるいは同軸ケーブル)あるいはスイッチ26および圧縮コーダ27を通じてユーザ25に結合される。
【0017】
動作においては、トラヒック分類器21は、絶えず、回路セレクタ22を通じて、回路グループ23の全てのトラヒックラインの間をサイクルし、運ばれているトラヒックが音声であるか、あるいはデータであるかを決定する。データトラヒックである場合は、トラヒック分類器21は、現在使用されている通信標準を、ビット速度を含めて、決定する。音声トラヒックである場合は、トラヒック分類器21は、様々な圧縮アルゴリズムの能力について、音声トラヒックを過多な歪みなしに圧縮できるか、評価する。つまり、トラヒック分類器21は、各可能な圧縮率について、その圧縮によって生じると考えられる歪みを決定し、圧縮許容レーティングを各チャネルに割当てることによって、そのチャネルを圧縮するに当たっての、圧縮許容度あるいは圧縮要望度について示す。この情報から、網コントローラ(図示なし)は、ブロッキング確率があるクリティカルなレベルに到達したときに、どのチャネルを圧縮すきべきかを決定あるいは選択する。これによって、システム20上の通信の性能が、図1のシステム10に対して示される実施例によって提供される性能と比較して向上させる。
【0018】
もう一つの実施例においては、システムは、顧客の好み(要望)のデータベース(例えば、音声圧縮を望まない顧客のリスト)を維持する。システムの動作の際に、このデータベースがチェックされ、ある呼に参加している各顧客の特定の好み(要望)が決定される。結果として、このようなシステムにおいては、どのチャネルを圧縮すべきかの決定は、サービスエリアの圧縮許容レーティングおよび顧客の好み(要望)の両方を考慮した上で行なわれる。
【0019】
図3には、図2に示されるシステム20の音声性能をさらに向上させるための方法30が示される。図示されるように、ステップ31において、新たな呼がある与えられたサービスエリアから入って来ると、ステップ32において、そのエリアに対するチャネルのアベイラビリィティ(空き状況)が決定される。一つ以上の使用可能な(空いた)チャネルが存在する場合は、ステップ33において、入り呼が次のチャネルに割当てられる。ただし、使用可能なチャネルがたった一つしか存在しない場合は、ステップ34において、最後のチャネルが入り呼に割当てられ、次に、ステップ35において、与えられた複数のチャネルをチェックすることによって、どのチャネルが圧縮された音声トラヒックを有し、そして、どのチャネルが他のチャネルと結合できるかが決定される。
【0020】
結合されてない圧縮されたチャネルが存在する場合は、ステップ36において、これら圧縮されたチャネルの二つが結合され、その後、ステップ32において、チャネルアベイラビリィティが再びチェックされ、その後、上に説明されたように進む。ただし、結合されてない圧縮されたチャネルが存在しない場合は、ステップ37において、上に説明された高い圧縮許容度を有する所定の数の呼が、識別される。いったん識別されたら、ステップ38において、これらチャネル上の音声の圧縮の増加が要請される。ステップ39において、要請された(ユーザ圧縮)ユニットが圧縮を増加すると、方法30は、ステップ40において、各ユニットからの圧縮が実現されたことの報告を待つ。最後に、ステップ41において、二つの圧縮されたチャネルが使用可能であるかチェックされる。二つの結合されていない圧縮されたチャネルが使用可能である場合は、これらが一つのチャネルに結合され、これによって、有効システム容量がさらに増加される。
【0021】
音声トラヒックをモニタするための幾つかの手段が当業者においては説明から明らかになると思われるが、殆どの通信システムに対する典型的な例は、網コントローラが、定期的に、その与えられたサービスエリアに対して蓄積された音声トラヒック測定値をモニタする方法である。これは、幾つかの通信システムにおいては、一般的な動作である。これら音声トラヒック測定値が、占拠されているチャネルの数および/あるいは新たなトラヒックの到着速度の両方の観点から考慮して、クリティカル閾値に到達した場合は、(例えば、ブロッキング確率が許容できないレベルに達したり、使用可能なチャネルの数が、最小許容数に達したりした場合は)網コントローラは、所定の数のユーザに対して、デジタル音声圧縮率を低減(増加)することを指示する。これは、結果として、そのサービスエリア内の利用可能な音声チャネルの数を増加させ、こうして、サービスをより多くの新たなユーザに提供できるようにする。
【0022】
圧縮率を変更するための(つまり、ユーザに対するビデオおよび/あるいは音声サービスがブロックされる確率が高いときは、圧縮を増加させ、一方、ビデオおよび/あるいは音声サービスがブロックされる確率が低いときは、圧縮を低減するための)幾つかの手段を使用することができる。音声通信に対してこのようなスキームを実現するための典型的な例としては、8Kb/s音声圧縮率(現在のTDMA無線システムにおいて通常使用されている)から、4Kb/s音声圧縮率に(あるいはこの逆に)スイッチする方法がある。このようなスイッチは、音声通信に対して必要なユーザ当たりのタイムスロットの数を低減することを可能にする。こうして、新たな呼に対してより多数の論理チャネルが提供されるが、ただし、これは、音声品質の低減を通じて行なわれる。同様にして、低トラヒック状態の下では、(例えば、音声トラヒックが所定の閾値以下であるときは)、網コントローラは、より高い圧縮率からより低い圧縮率へのスイッチを始動し、音声品質を、最大化する。この場合、これに伴って、新たなユーザからの呼を扱う能力は低減される。こうして、本発明は、音声トラヒックの状態が変動したとき、様々な音声圧縮スキームを選択的に実現することによって、音声システムの性能を動的に制御することを可能にする。
【0023】
このシステム性能の動的制御は、ハイブリッドなアナログ/デジタル通信システム内でも遂行することが可能である。このようなシステム内においては、ユーザは、デジタル音声圧縮技術およびアナログ音声圧縮技術の両方を使用して通信する。上に説明された幾つかの実施例と同様に、本発明によるシステム性能の動的制御を、網コントローラを使用して、絶えず、音声トラヒック測定値をモニタし、トラヒック状態が変化したときに、音声圧縮を変動することを指示することによって実現することが可能である。つまり、(例えば、音声トラヒックが増加した場合)現在アナログ圧縮技術を使用している所定の数のユーザが、デジタル圧縮技術にスイッチされる。この結果、使用可能な音声チャネルの数が増加し、システムは、より多数のユーザを収容できるようになる。ただし、音声品質は、これに伴って低下する。一方、音声トラヒックがある与えられた閾値以下に低減すると、網コントローラは、所定の数のデジタル圧縮ユーザを、アナログ音声圧縮技術にスイッチし、音声品質を向上させる。ただし、これに伴って、新たな呼を扱うシステム容量は低減する。
【0024】
無線通信システム内において、この方法を使用する一つの典型的な例としては、呼の際に、周波数分割多重(FDMA)アクセス技術からの無線ポートチャネルを、時分割多重アクセス(TDMA)アクセス技術にスイッチすることが考えられる。このような実現の一例としては、音声トラヒックの状態の変化に応答して、アナログ音声圧縮から、デジタル音声圧縮に、あるいはこの逆に、絶えず、調節を行ない、同時に、ユーザに対して実質的に高い音声品質を維持するような動的システムが考えられる。
【0025】
上の説明は、本発明を実現する一例としての実施例および方法を開示する。この説明内での特定の実施例についての言及は、本発明を、いかようにも、限定するものではなく、単に、本発明の一般的な原理を説明する目的として提供されたものである。当業者においては、本発明は、他の実施例を通じても実現できることは明白である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に従う動的性能制御を有する通信システムの実施例を示す図である。
【図2】本発明に従う動的性能制御を提供する通信システムのもう一つの実施例を示す図である。
【図3】本発明に従う通信システム内において動的性能制御を提供するための一つの方法の流れ図を示す図である。
【符号の説明】
【0027】
10 通信システム
11 通信網
12 網コントローラ
13 スイッチ
14 ユーザ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある与えられたサービスエリア内である与えられた数のチャネルをある与えられたユーザに提供するための通信システムの性能を動的に制御するための方法であって、この方法が、
a.前記のある与えられたエリア内の使用可能なチャネルの数をある与えられた時間において決定するステップ、
b.前記のある与えられた時間においてある与えられたユーザに向けてのサービスが前記の通信システム上でブロック(閉塞)される確率を決定するステップ、および
c.前記のサービスがブロックされる確率が所定の最大の許容ブロッキング確率を超えた場合に、前記のある与えられたサービスエリア内の少なくとも一つの所定のチャネル上の通信を圧縮するステップを含むことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−178139(P2008−178139A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−59064(P2008−59064)
【出願日】平成20年3月10日(2008.3.10)
【分割の表示】特願平9−303233の分割
【原出願日】平成9年11月6日(1997.11.6)
【出願人】(390035493)エイ・ティ・アンド・ティ・コーポレーション (130)
【氏名又は名称原語表記】AT&T CORP.
【Fターム(参考)】