説明

音声ガイダンスを提供するIP電話システム

【目的】
音声ガイダンスの提供において適切な負荷分散を図りつつ機能拡張に対して容易に対処可能なIP電話システムを提供する。
【構成】
複数のIP電話端末と、該IP電話端末に対して呼制御をなす少なくとも1つの呼制御装置と、該IP電話端末に音声ガイダンス信号を提供するガイダンス装置とを含むIP電話システムであり、該呼制御装置は、該呼制御に並行して、少なくとも1つの指定語を含むガイダンス要求を該ガイダンス装置に供給する。該ガイダンス装置は、該ガイダンス要求に応じて、予め用意されている可変ガイダンスパターンに含まれる少なくとも1つの指定語枠に、該指定語を設定して指定ガイダンスパターンを生成し、該指定ガンダンスパターンに対して音声合成処理をなして得られる音声信号を該音声ガンダンス信号として生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のIP電話にIP電話サービスを提供するIP電話システムに関し、特に、音声ガイダンスを提供するIP電話システムに関する。
【背景技術】
【0002】
IP電話システムにおける電話サービスにおいては、発信、着信あるいは転送等の電話サービスの各段階において電話の話者に対して適切な操作をなすように誘導する音声ガイダンスが用いられる。従来、かかる音声ガイダンスの実施においては、複数の固定ガイダンスを電話サービスの各段階に応じて使い分けることが行われていた。
【0003】
ところで、電話サービスの多様化及び複雑化により、より複雑なメッセージ内容を表現できる可変ガイダンスが使うことが求められるようになった。可変ガイダンスは、固定的な発音パターンの途中に幾つかの可変語が埋めまれ、該可変語の内容がサービス状況の各段階に応じて適切に変更される構成を備える。例えば、「電話番号〇〇〇〇はただいま使われておりません」という発音パターンの内容において、「〇〇〇〇」の可変語の内容が電話サービスの状況により定まる指定語(この場合電話番号)で置き換えられて用いられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、かかる可変語を含むメッセージの音声ガイダンスを編集及び送出する機能をコールエージェント等の呼制御装置に備えることは、能力的に呼制御装置の負担となるばかりか、呼制御装置毎に異なるメッセージが送出されたり、機能拡張に伴うメッセージ内容の追加更新が容易ではない等の問題があった。
【0005】
本発明の目的は、音声ガイダンスの提供において適切な負荷分散を図りつつ機能拡張に対して容易に対処可能なIP電話システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるIP電話システムは、複数のIP電話端末と、該IP電話端末に対して呼制御をなす少なくとも1つの呼制御装置と、該IP電話端末に音声ガイダンス信号を提供するガイダンス装置とを含むIP電話システムであり、該呼制御装置は、該呼制御に並行して、少なくとも1つの指定語を含むガイダンス要求を該ガイダンス装置に供給するガイダンス要求手段を含み、該ガイダンス装置は、該ガイダンス要求に応じて、予め用意されている可変ガイダンスパターンに含まれる少なくとも1つの指定語枠に、該指定語を設定して指定ガイダンスパターンを生成する指定ガイダンス生成手段と、該指定ガンダンスパターンに対して音声合成処理をなして得られる音声信号を該音声ガンダンス信号として生成する音声ガンダンス信号合成手段とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によるIP電話システムによれば、コールエージェント等の呼制御装置とは別異のガイダンス装置が設けられる。該装置は、呼制御装置からの要求に応じて複数パターンの可変ガイダンスに対応した音声ガイダンス信号をIP電話端末に送出する。これにより、音声ガイダンスの提供において適切な負荷分散を図りつつ機能拡張に対して容易に対処可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の実施例について添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0009】
図1は、本発明の実施例を示し、IP電話システム全体の構成を示している。複数のIP電話101〜10m(mは正数)がIP電話網20に繋がれている。IP電話網20には、コールエージェント30と、ガイダンス制御サーバ40と、ガイダンス提供サーバ50とが繋がれている。ガイダンス制御サーバ40とガイダンス提供サーバ50とによりガイダンス装置100が構成される。複数のIP電話101〜10mの各々は、VoIP(Voice over Internet Protocol)技術を用いたIP電話通話を行うIP電話端末である。
【0010】
コールエージェント30は、複数のIP電話101〜10mの各々に対してVoIP技術における呼制御を行う呼制御装置である。また、コールエージェント30は、かかる呼制御の過程において、呼制御の対象となる少なくとも1つのIP電話に音声ガイダンス信号を送信するようにガイダンス制御サーバ40に対してガイダンス要求する機能を有する。該ガイダンス要求は、送受信間にセッションを確立してデータ伝送をなすプロトコルであるSIP(Session Initiation Protocol)を用いたSIPメッセージAによりなされる。音声ガイダンス信号は、例えば、「通話中です、暫くしたらまたお掛け直し下さい」の如き音声信号であり、電話サービスの各段階において、発信側又は着信側の話者に対して適切な操作をなすように誘導するものである。音声ガイダンス信号は、音声や映像などマルチメディアデータのリアルタイム通信を行うRTP(Realtime Transfer Protocol)プロトコルにより伝送される。
【0011】
ガイダンス制御サーバ40は、通常のサーバコンピュータにより実現され得るサーバ装置である。ガイダンス制御サーバ40は、分析部41と、編集部42と、ガイダンステーブル43とを含む。分析部41は、コールエージェント30からのSIPメッセージAの受信に応じて、該SIPメッセージAの内容をガイダンステーブル43の内容に基づいて分析する機能を有する。編集部42は、該分析結果に基づいて音声ガイダンス信号の内容を規定するSIPメッセージBを編集し、これをガイダンス提供サーバ50に供給する機能を有する。
【0012】
ガイダンス提供サーバ50は、通常のサーバコンピュータにより実現され得るサーバ装置である。ガイダンス提供サーバ50は、合成部51と、音源部53、送出部52とを含む。合成部51は、ガイダンス制御サーバ40から受信されるSIPメッセージBに含まれる指定ガイダンスパターンの各音片に対応する音源データを音源部53から取得して、これを順次組み合わせることにより実際の音声ガイダンス信号を合成する機能を有する。音源部53は、各音片を構成する文字に対応する音源データを、例えばPCM方式に基づく波形データとして保持し、これらを合成部51からの要求に応じて提供する機能を有する。送出部52は、合成部51により生成された音声ガイダンス信号を、IP電話11〜1mのうちでコールエージェント30により指定された送出先に送出する。
【0013】
図2は、図1に示されたガイダンステーブルの構成例を示している。ガイダンステーブル43は、ガイダンス番号1〜n(nは正数)により識別される複数の可変ガイダンスパターンG1〜Gnが予め設定されている。
【0014】
例えば、可変ガイダンスパターンG1は、音片ID「0000〜0012」により識別される12個の音片からなる。音片IDに対応する内容は、「固定」と「可変」の何れかに設定される。「固定」である音片は、常に固定的な文字例が設定される。「可変」である音片は、可変語すなわち指定語が設定されるべき指定語枠であり、予めの可変ガイダンスパターンとしてはその可変語の属性が示されている。該音片は使用時に呼制御装置から供給される指定語で置き換えられる。例えば、音片ID「0000」に対応する音片は「固定」であることから、固定の文字例として「着信は」が設定されている。音片ID「0001」に対応する音片は、「可変」であることから、その音片の属性として「月数」が設定されている。該音片は使用時にコールエージェントから供給される指定語、例えば、月数である「8」の文字列で置き換えられる。可変ガイダンスパターンG1〜Gnに対するかかる編集により、指定ガイダンスパターンが生成される。
【0015】
図3は、コールエージェントからガイダンス制御サーバに送出されるSIPメッセージAの構成例を示している。図示されるSIPメッセージA(70)は、SIPプロトコルにおけるインスタントメッセージを用いた例であり、ヘッダ部71とメッセージ部72からなる。ヘッダ部71及びメッセージ部72は、通常のテキスト形式により記述される。ヘッダ部71には、SIPプロトコルにおける制御情報が記述される。メッセージ部72には、送出先のIP電話11〜1mの何れかを指定する電話番号等の識別情報と、ガイダンスG1〜Gnの何れかを指定するガイダンス番号と、電話番号、月及び日等の指定語を含んでいる。本図の例では、ガイダンス番号:0001、電話番号(図中では電番と表記):222−3333、月:08、日:06、時:20、分:11、連続再生の回数を与える繰り返し回数:02が設定されている。
【0016】
尚、送出先のIP電話の識別情報としては、示されたような通常の電話番号表記に限られず、SIPプロトコルにおいて用いられる電話番号表記(例えば、sip:+999999@aaa.bbb.ccc)やIPアドレス(例えば、111.222.333.444)等の識別情報であっても良い。
【0017】
図4は、ガイダンス制御サーバからガイダンス提供サーバに送出されるSIPメッセージBの構成例を示している。図示されるSIPメッセージB(80)は、SIPメッセージAと同様に、SIPプロトコルにおけるインスタントメッセージを用いた例であり、ヘッダ部81とメッセージ部82からなる。ヘッダ部81には、SIPプロトコルにおける制御情報が記述される。メッセージ部82には、送出先のIP電話11〜1mの何れかを指定する電話番号等の識別情報と、指定ガイダンスパターン90とを含む。指定ガイダンスパターン90は、繰り返し回数91と複数の音片からなる。各音片は、各音片の順番を規定するインデックス92と、各音片の識別子である音片ID93と、指定語が有る場合に”1”に設定され、無い場合に”0”に設定される指定語フラグ94と、指定語の内容である指定語95とからなる。
【0018】
本図の例は、SIPメッセージAの内容が、電話番号:222−3333、月:08、日:06、時:20、分:11、繰り返し回数:02であるとする場合におけるSIPメッセージBの内容が示されている。例えば、インデックス0に音片ID:0000が組み込まれ、インデックス1に音片ID:0001、指定語フラグ:1及び指定語:08が組み込まれている。以下、同様にして、インデックス2〜12の各々に対応して音片ID、指定語フラグ及び指定語が組み込まれる。
【0019】
図5は、ガイダンス制御サーバ及びガイダンス提供サーバが協働して行う処理手順を示している。該処理手順について図1に示された構成要素を適宜参照して説明する。
【0020】
先ず、IP電話101〜10mのうちの1つ(以下、IP電話101とする)とコールエージェント30との間で呼制御信号を交換しているとする(ステップS1)。コールエージェント30は、電話サービスの各段階に応じてSIPメッセージAを生成する(ステップS2)。
【0021】
電話サービスの段階としては、例えば、他の電話から着信があった旨を通知する音声ガイダンス信号をIP電話101に送出すべき段階にあったものとする。そこで、コールエージェント30は、ガイダンス番号:0001、電話番号:222−3333、月:08、日:06、時:20、分:11、繰り返し回数:02のSIPメッセージAを生成する。これにより、コールエージェント30は、電話番号222−3333から着信が8月6日20時11分にあった旨の音声ガイダンスを要求したことになる。
【0022】
次に、コールエージェント30は、このSIPメッセージAをガイダンス制御サーバ40に送信する(ステップS3)。送信されたSIPメッセージAを受信したガイダンス制御サーバ40は、受信したSIPメッセージAの内容を分析する(ステップS4)。すなわち、ガイダンス制御サーバ40は、SIPメッセージAに含まれるガイダンス番号に対応する可変ガイダンスパターンをガイダンステーブル43から抽出し、これとSIPメッセージAに含まれる指定語との整合性を確認する。
【0023】
次に、ガイダンス制御サーバ40は、SIPメッセージAの含まれる指定語を基にして、SIPメッセージBの内容を編集する(ステップS5)。かかる編集は、抽出された可変ガイダンスパターンの各音片の指定語枠に、SIPメッセージAの含まれる各指定語を設定することにより指定カイダンスパターン(図4参照)を生成して、これをSIPメッセージBに記述することにより行う。次いで、ガイダンス制御サーバ40は、編集されたSIPメッセージBをガイダンス提供サーバ50に送信する(ステップS6)。
【0024】
送信されたSIPメッセージBを受信したガイダンス提供サーバ50は、SIPメッセージBを基にして、音声ガイダンス信号を合成する(ステップS7)。かかる合成は、各音片に対応する適切な音源データを音源部53から抽出して組み合わせることより行う。次いで、ガイダンス提供サーバ50は、合成された音声ガイダンス信号を、送出先の識別情報で指定されたIP電話、例えばIP電話11に向けて送信する(ステップS8)。
【0025】
以上の実施例において、本発明によるIP電話システムを用いることにより、可変ガイダンス提供サービスにおける編集、合成及び送出機能をコールエージェント等の呼制御装置とは別のコンポーネントで実現することができる。これにより、呼制御装置を含む既存コンポーネントの負担増を防ぐことが出来る。また今後の機能拡張や縮小においても、既存コンポーネントへの影響を少なくすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明によるIP電話システムは、1つの呼制御装置に収容されるIP電話群がある形態に限られず、各々が独立して複数のIP電話を収容する複数の呼制御装置がある形態においても、1つのガイダンス装置を設置することにより可変ガイダンスに対応することができる。また、セントレックス形態のIP−PBXを用いる形態においても本発明は適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施例であり、IP電話システム全体の構成を示しているブロック図である。
【図2】図1に示されたガイダンステーブルの構成例を示している図である。
【図3】コールエージェントからガイダンス制御サーバに送出されるSIPメッセージAの構成例を示している図である。
【図4】ガイダンス制御サーバからガイダンス提供サーバに送出されるSIPメッセージBの構成例を示している図である。
【図5】ガイダンス制御サーバ及びガイダンス提供サーバが協働して行う処理手順を示しているシーケンス図である。
【符号の説明】
【0028】
101〜10m IP電話
20 IP電話網
30 コールエージェント(呼制御装置)
40 ガイダンス制御サーバ
41 分析部
42 編集部
43 ガイダンステーブル
50 ガイダンス提供サーバ
51 合成部
52 送出部
53 音源部
70 SIPメッセージA
71、81 ヘッダ部
72、82 メッセージ部
80 SIPメッセージB
90 指定ガイダンスパターン
100 ガイダンス装置
G1〜Gn 可変ガイダンスパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のIP電話端末と、前記IP電話端末に対して呼制御をなす少なくとも1つの呼制御装置と、前記IP電話端末に音声ガイダンス信号を提供するガイダンス装置とを含むIP電話システムであって、
前記呼制御装置は、前記呼制御に並行して、少なくとも1つの指定語を含むガイダンス要求を前記ガイダンス装置に供給するガイダンス要求手段を含み、
前記ガイダンス装置は、前記ガイダンス要求に応じて、予め用意されている可変ガイダンスパターンに含まれる少なくとも1つの指定語枠に、前記指定語を設定して指定ガイダンスパターンを生成する指定ガイダンス生成手段と、
前記指定ガンダンスパターンに対して音声合成処理をなして得られる音声信号を前記音声ガンダンス信号として生成する音声ガンダンス信号合成手段と、
を含むことを特徴とするIP電話システム。
【請求項2】
前記ガイダンス装置は、前記可変ガイダンスパターンの複数を予め保持する手段をさらに含み、前記呼制御装置は、前記複数の何れか1を指定して前記ガイダンス要求を前記ガイダンス装置に供給することを特徴とする請求項1記載のIP電話システム。
【請求項3】
前記ガイダンス装置は、前記指定ガイダンス生成手段を含むガイダンス制御サーバと、前記音声ガンダンス信号合成手段を含むガイダンス提供サーバと、からなることを特徴とする請求項1記載のIP電話システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−60381(P2007−60381A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−244291(P2005−244291)
【出願日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【出願人】(595125421)沖通信システム株式会社 (131)
【Fターム(参考)】