説明

音声信号処理装置及び音声信号処理プログラム

【課題】
カラオケ装置など、ハウリング抑制機能を備えた装置において、ギターのフィードバック奏法など、ハウリングに類似した効果付与を可能とする。
【解決手段】
本発明の音声信号処理装置は、周囲音のハウリング発生状況を検出する第1の検出手段201と、入力される第2の音声信号についてハウリング発生状況を検出する第2の検出手段202と、入力される第1の音声信号に対してハウリング抑制処理を実行可能する音声処理手段204と、第1の検出手段201の検出結果と第2の検出手段202の検出結果に基づいて、第2の音声信号のハウリングを抑制しないよう、音声処理手段204を制御する制御手段203と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウリング抑制機能を備えた音声処理装置、並びに、音声信号プログラムに関するものであり、特に、エレキギターなどの外部楽器を接続して演奏を楽しむことのできるものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マイクロホンなどから集音し、スピーカーなどの拡声器にて放音する音響機器では、その使用環境を主な原因として正帰還を生じ、特定の周波数で耳障りな音を発生するハウリング現象を生じることが知られている。このような、ハウリング現象を抑制するため、特許文献1に開示されるように、ハウリングが生じている周波数を特定して当該周波数の成分を抑制して出力することが行われている。
【0003】
一方、特許文献2には、自動伴奏を行う音源装置を備えたカラオケ装置において、外部からオーディオ信号を入力するオーディオ信号入力手段を設け、エレキギターなどの外部楽器を接続することが提案されている。このようなカラオケ装置では、カラオケ演奏に利用者の演奏を加えて出力することが可能となる。
【0004】
ところで、エレキギター(電気ギター)では、特許文献3に記載されているように、フィードバック奏法と呼ばれる効果付与が知られている。このフィードバック奏法とは、拡声しているスピーカーに、エレキギターを近づけて、ギターの弦、アンプ、スピーカーとの間で正帰還を生じさせ、ハウリングと同様、所定の周波数で発振を起こす効果付与の方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−102093号公報
【特許文献2】特開2000−89774号公報
【特許文献3】特開平9−305168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
カラオケ装置は、カラオケボックスのような狭い空間で用いられることが多いため、ハウリングの発生には特に注意を払う必要がある。そのため、カラオケ装置には、特許文献1に記載されるようなハウリング抑制機能が搭載されている。このようなカラオケ装置にて、特許文献2のようなエレキギターを接続して利用者の演奏を楽しむとき、フィードバック奏法を実行すると、カラオケ装置では、フィードバック奏法をハウリング発生と認識し、ハウリング抑制機能を動作させてしまう。このような場合、周波数特性や音量を変化させてしまうこととなり、フィードバック奏法による効果付与を抑制してしまうと共に、マイクロホンから入力される歌唱音声に対してもその音質を劣化させてしまう。
【0007】
本発明は、このような実情を鑑み、ハウリング抑制機能を備えたカラオケ装置などの音響機器において、外部楽器によるフィードバック奏法を実行した場合にも、違和感なくフィードバック奏法による効果を付与することのできる音声信号処理装置、並びに、音声信号処理プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係る音声信号処理装置は、周囲音のハウリング発生
状況を検出する第1の検出手段と、入力される第2の音声信号についてハウリング発生状況を検出する第2の検出手段と、入力される第1の音声信号に対してハウリング抑制処理を実行可能する音声処理手段と、前記第1の検出手段の検出結果と前記第2の検出手段の検出結果に基づいて、前記第2の音声信号のハウリングを抑制しないよう、前記音声処理手段を制御する制御手段と、を備えたことを特徴としている。
【0009】
さらに、本発明に係る音声信号処理装置において、前記第1の検出手段は、前記第1の音声信号に基づいて、周囲音のハウリング発生状況を検出することを特徴としている。
【0010】
さらに、本発明に係る音声信号処理装置において、前記第1の検出手段の検出結果は、第1の音声信号にハウリングが発生しているか否かを示す情報であり、前記第2の検出手段の検出結果は、第2の音声信号にハウリングが発生しているか否かを示す情報であり、前記制御手段は、第2の音声信号にハウリングが発生している場合には、前記音声処理手段にハウリング抑制のための処理をさせないことを特徴としている。
【0011】
さらに、本発明に係る音声信号処理装置において、前記第2の検出手段の検出結果は、第2の音声信号で生じているハウリングの周波数を示す情報を含み、前記制御手段は、前記第2の検出結果に含まれるハウリングの周波数については、前記音声処理手段にハウリング抑制のための処理をさせないことを特徴としている。
【0012】
さらに、本発明に係る音声信号処理装置において、前記第1の検出手段の検出結果は、第1の音声信号で生じているハウリングの周波数を示す情報を含み、前記制御手段は、前記第1の音声検出結果に含まれるハウリングの周波数であって、前記第2の検出結果に含まれるハウリングの周波数とは異なるハウリングの周波数について、ハウリング抑制のための処理を実行させることを特徴としている。
【0013】
さらに、本発明に係る音声信号処理プログラムは、周囲音のハウリング発生状況を検出する第1のステップと、入力される第2の音声信号についてハウリング発生状況を検出する第2のステップと、第1の検出手段の検出結果と第2の検出手段の検出結果に基づいて、前記第2の音声信号のハウリングを抑制しないよう、入力される第1の音声信号に対してハウリング抑制処理を実行する第3のステップとを、コンピュータに実行させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、第1の検出手段の検出結果と第2の検出手段の検出結果に基づいて、第2の音声信号のハウリングを抑制しないように音声処理手段を制御することで、第2の音声信として、エレキギターからの出力信号を採用した場合、フィードバック奏法による効果に対して、音声処理手段によるハウリング抑制処理を働かせることがなく、違和感を生じさせることがない。
【0015】
さらに、第1の検出手段は、周囲音のハウリング発生状況を第1の音声信号に基づいて検出することで、周囲音のハウリング発生状況検出のためのマイクロホンなどを設ける必要が無く、装置の簡素化を図ることが可能となる。
【0016】
さらに、第1の検出手段の検出結果、第2の検出手段の検出結果を、ハウリングが発生しているか否かとするとともに、第2の音声信号にハウリングが生じている場合に、音声処理手段にハウリング抑制のための処理をさせないようにしたことで、第1、第2の検出手段によるハウリング検出を簡易なものにするとともに、音声処理手段を制御する制御手段についても簡易化を図ることが可能となる。
【0017】
さらに、第2の音声信号で生じているハウリングの周波数を特定し、当該周波数について音声処理手段にハウリング抑制のための処理をさせないようにしたことで、例えば、周囲環境によるハウリングが発生している中で、外部楽器によるフィードバック奏法が行われた場合においても、周囲環境によるハウリングのみを抑制することが可能となる。
【0018】
さらに、第1の音声信号についてもハウリングの周波数を特定することで、外部楽器によるフィードバック奏法の効果を残しつつ、周囲環境によるハウリングを効果的に取り除くことが可能となる。
【0019】
さらに、本発明の音声処理プログラムは、第1の検出手段の検出結果と第2の検出手段の検出結果に基づいて、第2の音声信号のハウリングを抑制しないようにしたことで、フィードバック奏法による効果を残し、違和感のない演奏を楽しむことができる。また、プログラムで提供することで、コンピュータ装置や、既存の音響機器に対してもこの機能を付加することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係るカラオケシステムの基本構成を示す図。
【図2】本発明の実施形態に係る音声信号処理部の構成例を示す図。
【図3】本発明の実施形態に係るハウリング抑制処理を説明するための図。
【図4】本発明の実施形態に係る音声信号処理を示すフロー図。
【図5】本発明の他の実施形態に係るハウリング抑制処理を説明するための図。
【図6】本発明の他の実施形態に係る音声信号処理を示すフロー図。
【図7】本発明の他の実施形態に係るハウリング抑制処理を説明するための図。
【図8】本発明の他の実施形態に係る音声信号処理を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る音声信号処理装置をカラオケシステムに実装した場合について説明する。図1は、実施形態に係るカラオケシステムの基本構成を示した図である。
【0022】
メイン制御部104は、カラオケシステムの中核をなすコマンダ100を統括制御する。その主な機能としては、外部の通信網と通信を行う通信制御部102の制御、外部に配置されたディスプレイにカラオケの背景映像などの映像信号を出力する映像制御部103の制御、また、音源部108や音声信号処理部200など、カラオケ伴奏のための音声信号を制御する音声制御部107の制御を実行する。
【0023】
本発明では、特に音声制御部107の制御に特徴を有するものとなっている。音声制御部107は、音源部108と音声信号処理部200の制御を行う。音源部108は、入力部101にてユーザーから指定された楽曲に対応する楽曲情報をハードディスク105、106から読み出して音源部108に再生させる。楽曲情報は、MIDIデータ、MPEG音声データなどにて構成されたデータである。
【0024】
コマンダ100は、マイクロホン404を接続するための端子を備えており、歌唱音声をマイク音信号として入力可能としている。入力されたマイク音信号は、マイクアンプ109、AD変換器110を経て音声信号処理部200に取り込まれ、ハウリング抑制処理やエコーなどの効果付与が行われた後、マイク音処理信号として出力される。
【0025】
本実施形態では、さらにエレキギター405(外部楽器)を接続するための端子を備えている。エレキギター405から出力されたギター音信号は、AD変換器111を経て、マイク音信号と同様、音声信号処理部200に取り込まれ、効果付与などの処理が実行された後、ギター音処理信号として出力される。
【0026】
ミキシング部112では、音源部108から出力される再生音と、音声信号処理部200から出力されるマイク音処理信号と、ギター音処理信号とを加算して加算信号を出力する。加算信号は、DA変換器113、プリアンプ114を経て外部に出力され、外部のアンプ401にてスピーカー402から放音される。
【0027】
スピーカー402から放音された音は、その配置環境によっては、マイクロホン404から集音されて正帰還を生じハウリングを生じさせる場合がある。そのため、本実施形態の音声信号処理部200には、ハウリング抑制のための機能を備えられている。
【0028】
一方、エレキギター405にてフィードバック奏法を行った場合、ギター音はスピーカー402から出力されることとなる。このフィードバック奏法によるギター音の効果は、ハウリングと同様、狭い周波数範囲にてピークを有する特性を有するため、従来のハウリング抑制機能では、ハウリングと認識されてしまいハウリング抑制機能を働かせてしまうこととなる。本実施形態では、エレキギター405にてフィードバック奏法を行った場合においても、音声信号処理部200にて、ギター音信号に付加された効果を抑制しない構成としている。
【0029】
図2は、本発明の実施形態に係る音声信号処理部の構成例を示す図である。本実施形態においては、音声信号処理部200には、マイク音信号(本発明でいう「第1の音声信号」)、ギター音信号(本発明でいう「第2の音声信号」)が入力され、それぞれの入力信号に基づき、マイク音処理信号、ギター音処理信号が生成される。
【0030】
第1検出部201(本発明でいう「第1の検出手段」)は、マイク音信号に基づいて周囲音のハウリング発生状況を検出し、ハウリングキャンセラー制御部203に検出結果を出力する。本実施形態では、ハウリング発生状況として、ハウリングが発生しているか否かという簡易な構成を採用している。なお、周囲音のハウリング発生状況を検出する構成としては、マイク音信号によらず、別途、ハウリング検出用に設けたマイクロホンを使用することとしてもよい。
【0031】
図3は、ハウリング抑制処理を説明するための図であって、図3(a)はハウリングが発生した場合の周波数特性が示されている。ここではレベルが所定の閾値を超えた場合をハウリング発生と判断している。
【0032】
第2検出部202(本発明でいう「第2の検出手段」)は、ギター音信号のハウリング発生状況、すなわち、フィードバック奏法が実行されているか否かを検出する。この第2検出部202も第1検出部201と同様の検出方法にて、ハウリング発生状況を検出することが可能であって、本実施形態では、ハウリングが発生しているか否かを検出する構成を採用し、簡易化が図られている。
【0033】
ハウリングキャンセラー204(本発明でいう「音声処理手段」)は、マイク音信号に対してハウリング抑制処理を実行する。ここでは、ローパスフィルターを用いた簡易な構成を採用している。図3(b)には、ハウリング抑制処理を実行した後の周波数特性が示されている。周囲環境によるハウリングが生じた場合、図に示す特性を有するローパスフィルタを動作させることで、ハウリング成分を除去することが可能となる。本実施形態は、周囲環境によるハウリングの周波数がある程度予想できるときに有効である。この場合、周波数帯域F1が除去されることとなり、音質の劣化が伴うことになるが、周囲環境によるハウリング成分を除去することが可能となる。なお、ハウリングキャンセラー204には、このようにローパスフィルターを用いるものに限らず、音量を下げるものや、ノッチフィルターを用いるものなど、各種形態を採用することができる。
【0034】
第1加工部205は、ハウリングキャンセラー204から出力された音声に、エコー効果など各種の音響効果を付与して出力する。また、第2加工部206は、ギター音信号に対して、リミッター、ワウといった、各種エフェクト効果を付与して出力する。これら第1、第2加工部205、206の音響効果、エフェクト効果は、楽曲情報に含ませた制御情報で制御し、楽曲の進行に同期して行うようにしてもよい。なお、第1、第2加工部205、206は必要に応じて設けることとしてよい。
【0035】
以上、本発明の実施形態に係る音声信号処理部200について説明したが、これらの構成はハードウェアで実現してもよく、ハードウェアにプログラムをインストールすることで実現してもよい。
【0036】
ハウリングキャンセラー制御部203は、第1検出部201の検出結果と、第2検出部202の検出結果に基づいて、ハウリングキャンセラー204を制御する。その具体的な処理を図4のフロー図を用いて説明する。
【0037】
処理が開始されると、第1検出部201、第2検出部202は、それぞれマイク音信号、ギター音信号についてハウリングの発生状況を監視する。第1検出部201でハウリングが検出されない場合(S102)は、ハウリングキャンセラー204におけるハウリング抑制処理を実行させない(S106)。
【0038】
一方、第1検出部201にてハウリングが検出され、第2検出部202にてハウリングが検出されない場合(S103)は、周囲環境によるハウリングが発生し、フィードバック奏法が実行されていない場合と判定できるため、ハウリングキャンセラー204におけるハウリング抑制処理を実行させ(S105)、周囲環境を原因として発生したハウリングの抑制を図る。
【0039】
また、第1検出部201にてハウリングが検出され、第2検出部202においてもハウリングが検出された場合(S104)は、エレキギター405によるフィードバック奏法が実行されている都判断し、ハウリングキャンセラー204によるハウリング抑制処理を実行させない。
【0040】
このように、本実施形態では、第2検出部202にてハウリング発生を検出した場合、すなわち、外部楽器としてのエレキギター204にてフィードバック奏法が実行された場合、ハウリングキャンセラー204によるハウリング抑制処理が実行されることがない。
【0041】
この第1の実施形態では、第1検出部201、第2検出部202におけるハウリング発生状況の検出として、ハウリングが発生しているか否かを検出する簡易な構成を採用するとともに、ハウリングキャンセラー204では、予め定められたハウリング抑制処理を実行する簡易な構成を採用したものとなっている。しかしながら、この実施形態では、周囲環境に基づいて発生したハウリングと、フィードバック奏法によるハウリングが同時に発生した場合には、フィードバック奏法を優先させてしまうこととなり、周囲環境によるハウリングが抑制できないこととなってしまう。
【0042】
次に説明する2つの実施形態では、このように周囲環境に基づくハウリングと、フィードバック奏法によるハウリングが同時に発生した場合にも対処できる構成となっている。どちらの構成も図1、図2にて説明した構成と同様の構成で実現できるが、第1検出部201、第2検出部202の検出結果、ハウリングキャンセラー204の動作、そして、ハウリングキャンセラー制御部203の制御の点において異なったものとなっている。
【0043】
図5は、第2の実施形態におけるハウリング抑制処理を説明するための図である。この図は、周囲環境によるハウリングとフィードバック奏法によるハウリングが同時に発生した場合における周波数特性が示されている。図5(a)には、ハウリング発生時の状況が、図5(b)には、ハウリング抑制処理した後の状況が示されている。
【0044】
本実施形態では、図2で説明したギター音信号のハウリング発生状況を検出する第2検出部202において、ハウリング発生周波数f2をハウリング発生状況として出力することとしている。また、ハウリングキャンセラー204は、検出されたハウリング発生周波数f2を残すようにハウリング抑制処理を実行可能としている。
【0045】
すなわち、周囲環境によるハウリングが発生したと判断し、予め定められたハウリング抑制処理(本実施形態では、ローパスフィルター処理を実行)を実行することとなるが、第2検出部202にてハウリングが検出された場合には、当該ハウリング発生周波数f2については抑制しないように、ハウリングキャンセラー204を制御することとしている。本実施形態では、ハウリング発生周波数f2周辺を通過させるバンドパフフィルターを設定することで、フィードバック奏法によるハウリング発生周波数f2を通過させることとしている。
【0046】
図6は、第2の実施形態におけるハウリングキャンセラー制御部203の処理を示すフロー図である。処理が開始されると、第1検出部201、第2検出部202にてハウリングの発生状況が検出される。特に、第2検出部202では、ハウリング発生周波数f2を特定することとしている。
【0047】
第1検出部201にてハウリングを検出しない場合の処理(S208)、第2検出部202にてハウリングを検出しない場合の処理(S207)については、第1の実施形態と同様としている。S204では、第1検出部201に、第2検出部202にて特定したハウリング発生周波数f2以外が含まれていないかが判定される。含まれていると判定された場合には、図5(b)で説明したように、ハウリング発生周波数f2を通過させるようにハウリング抑制処理(S205)が実行される。一方、含まれていないと判断した場合には、発生しているハウリングは、フィードバック奏法によるものだけである可能性が高いため、ハウリングキャンセラー204によるハウリング抑制処理を実行させないように制御する(S206)。
【0048】
このように、本実施形態では、ギター音信号のハウリング発生周波数f2を検出し、ハウリングキャンセラー204では、このハウリング発生周波数f2を阻害しないようにハウリング抑制処理を実行することとしており、周囲環境に基づいて発生したハウリングと、フィードバック奏法によるハウリングが同時に発生した場合においても対応することが可能となっている。
【0049】
では、次に第3の実施形態について、図7、図8を用いて説明を行う。本実施形態では、第1検出部201において、ハウリング発生周波数をハウリング発生状況として出力すると共に、第2検出部202において、ハウリング発生周波数f2をハウリング発生状況として出力することとしている。
【0050】
図7は、第3の実施形態におけるハウリング抑制処理を説明するための図である。この図は、周囲環境によるハウリングとフィードバック奏法によるハウリングが同時に発生した場合における周波数特性が示されている。図7(a)には、ハウリング発生時の状況が、図7(b)には、ハウリング抑制処理した後の状況が示されている。
【0051】
このように周囲環境とフィードバック奏法によるハウリングが同時に発生した場合、第
1検出部201では、2つのハウリング発生周波数f1、f2が特定されるとともに、第2検出部202では、ハウリング発生周波数f2が特定されることとなる。本実施携帯では、第2検出部202にてフィードバック奏法によるハウリング発生周波数f2が特定されるため、ハウリングキャンセラー204にて、ハウリング発生周波数f2を残しつつ、ハウリング発生周波数f1を効果的に取り除くことが可能となっている。
【0052】
図5(a)と同様、図7(a)には、周囲環境によるハウリングとフィードバック奏法によるハウリングが同時に発生した場合における周波数特性が示されている。また、図7(b)には、ハウリング抑制処理適用後の周波数特性が示されている。本実施形態では、ハウリング発生周波数f1、f2の両方を特定し、ハウリング周波数f1を取り除くためにノッチフィルタ(Q値の高いバンドパスフィルタ)を適用し、f1のみを効果的に取り除くこととしている。このように周囲環境によるハウリングのみを取り除くため、例えば、図3(b)に示した帯域F1や、図5(b)に示した帯域F2、F3といったように、周囲環境によるハウリング以外の周波数を余分に取り除くことが無く、音質の劣化を抑えることが可能となる。
【0053】
図8は、この第3の実施形態におけるハウリングキャンセラー制御部203の処理を示すフロー図である。処理が開始されると、第1検出部201、第2検出部202にてハウリングの発生状況が検出される。特に、本実施形態では、第1検出部201にてハウリング周波数f1、f2が、第2検出部202にてハウリング発生周波数f2が特定される。
【0054】
第1検出部201にてハウリングを検出しない場合の処理(S308)は、第1の実施形態と同様としている。本実施形態では、周囲環境によるハウリング周波数f1が特定されるため、第2検出部202にてハウリングを検出しない場合(S307)には、このハウリング周波数f1を抑制するためのハウリング抑制処理が実行される。前述の第1、第2の実施形態では、所定のハウリング抑制処理としていたが、ここでは、ハウリング周波数f1に的を絞った処理を実行できるため、ハウリングを効果的に抑制すると共に、音質の劣化を抑えることが可能となる。
【0055】
S304では、第1検出部201に、第2検出部202にて特定したハウリング発生周波数f2以外が含まれていないかが判定される。含まれていると判定された場合には、図7(b)で説明したような、ハウリング発生周波数f1を抑制させるハウリング抑制処理(S305)が実行される。一方、含まれていないと判断した場合には、発生しているハウリングは、フィードバック奏法によるものだけである可能性が高いため、ハウリングキャンセラー204によるハウリング抑制処理を実行させないように制御する(S306)。
【0056】
以上、本発明によれば、ハウリング抑制機能を備えたカラオケ装置など、各種音響機器において、ユーザーが外部楽器を接続しながらカラオケ歌唱を行った場合においても、フィードバック奏法のような外部楽器特有の演奏効果を打ち消すことなく、歌唱音声に対して違和感を生じさせることもない。
【0057】
なお、本発明はこれらの実施形態のみに限られるものではなく、それぞれの実施形態の構成を適宜組み合わせて構成した実施形態も本発明の範疇となるものである。
【符号の説明】
【0058】
100…コマンダ(カラオケ装置)、101…入力部、102…通信制御部、103…映像制御部、104…メイン制御部、105、106…ハードディスク、107…音声制御部、108…音源部、109…マイクアンプ、110、111…AD変換器、112…ミキシング部、113…DA変換器、114…プリアンプ、200…音声信号処理部(音声
信号処理装置)、201…第1検出部、202…第2検出部、203…ハウリングキャンセラー制御部、204…ハウリングキャンセラー、205…第1加工部、206…第2加工部、401…アンプ、402…スピーカー、403…ディスプレイ装置、404…マイクロホン、405…エレキギター(外部楽器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲音のハウリング発生状況を検出する第1の検出手段と、
入力される第2の音声信号についてハウリング発生状況を検出する第2の検出手段と、
入力される第1の音声信号に対してハウリング抑制処理を実行可能する音声処理手段と、
前記第1の検出手段の検出結果と前記第2の検出手段の検出結果に基づいて、前記第2の音声信号のハウリングを抑制しないよう、前記音声処理手段を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする
音声信号処理装置。
【請求項2】
前記第1の検出手段は、前記第1の音声信号に基づいて、周囲音のハウリング発生状況を検出することを特徴とする
請求項1に記載の音声信号処理装置。
【請求項3】
前記第1の検出手段の検出結果は、第1の音声信号にハウリングが発生しているか否かを示す情報であり、
前記第2の検出手段の検出結果は、第2の音声信号にハウリングが発生しているか否かを示す情報であり、
前記制御手段は、第2の音声信号にハウリングが発生している場合には、前記音声処理手段にハウリング抑制のための処理をさせないことを特徴とする
請求項1または請求項2に記載の音声信号処理装置。
【請求項4】
前記第2の検出手段の検出結果は、第2の音声信号で生じているハウリングの周波数を示す情報を含み、
前記制御手段は、前記第2の検出結果に含まれるハウリングの周波数については、前記音声処理手段にハウリング抑制のための処理をさせないことを特徴とする
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の音声信号処理装置。
【請求項5】
前記第1の検出手段の検出結果は、第1の音声信号で生じているハウリングの周波数を示す情報を含み、
前記制御手段は、前記第1の音声検出結果に含まれるハウリングの周波数であって、前記第2の検出結果に含まれるハウリングの周波数とは異なるハウリングの周波数について、ハウリング抑制のための処理を実行させることを特徴とする
請求項4に記載の音声信号処理装置。
【請求項6】
周囲音のハウリング発生状況を検出する第1のステップと、
入力される第2の音声信号についてハウリング発生状況を検出する第2のステップと、
第1の検出手段の検出結果と第2の検出手段の検出結果に基づいて、前記第2の音声信号のハウリングを抑制しないよう、入力される第1の音声信号に対してハウリング抑制処理を実行する第3のステップとを、コンピュータに実行させることを特徴とする
音声信号処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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