説明

音声再生システム

【課題】無線接続された複数端末間で、音声再生とLED発光が同期する音声再生システムを提供することを課題とする。
【解決手段】複数端末から任意に選択されたホスト端末10Hから、ホスト端末10Hに選択されなかったクライアント端末10C1,10C2,10C3に対して、シナリオプログラム20C1,20C2,20C3が無線送信されることにより、複数端末間で各端末での音声再生とLED発光を同期させることが可能である。また、複数端末の位置または個数の変動に応じて、音声再生とLED発光において各端末が担う役割を、各端末間で相互にリアルタイムに変更することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数端末を利用する音声再生システムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線送信機から複数スピーカーに音声信号が送信され、各スピーカーが異なる音声を再生する音声再生システムが存在する。この音声再生システムは、立体音響空間を提供することが可能である。
【0003】
下記非特許文献1では、無線送信機とフルレンジおよびウーファースピーカーが無線接続された、小規模の音声再生システムが開示されている。この音声再生システムは小規模であるため、部屋の模様替えなどの際に、各スピーカーの配置を容易に変更することが可能である。
【0004】
また、音声再生システムとは異なるシステムとして、端末が追加されるほどに、複数端末が連携する面白さが倍増するシステムが存在する。
【0005】
下記非特許文献2では、各端末は人間の生活を表示する液晶画面を有し、各端末を電気的に接続することにより、各端末の液晶画面間を往来する人間が交流を深めるというシステムが開示されている。
【0006】
【非特許文献1】“Rio LIVE air”、[online]、Rio Japan、[平成18年11月17日検索]、インターネット<URL:http://www.rioaudio.jp/product/accessories/LIVEair/>
【非特許文献2】竹村 譲、“人間のコミュニケーション性を1辺47ミリのキューブで体験する「Cube World」”、[online]、平成18年1月30日、アイティーメディア株式会社、[平成18年11月17日検索]、インターネット<URL:http://plusd.itmedia.co.jp/lifestyle/articles/0601/30/news006.html>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記非特許文献1では、各スピーカーの配置を容易に変更することが可能である。しかし、各スピーカーが再生する各音声領域を、各スピーカー間で相互に変更することは不可能である。そのため、各音声領域が再生される場所を変更するためには、各スピーカーの配置を変更する必要がある。
【0008】
また、上記非特許文献1に開示された音声再生システムは、上記非特許文献2に開示されたような、端末が追加されるほどに、複数端末が連携する面白さが倍増するシステムとは言えない。スピーカーを追加することは可能であるが、そのスピーカーが再生する音声領域を変更することは不可能だからである。
【0009】
さらに、上記非特許文献1に開示された音声再生システムは、聴覚に訴えるものは存在するが、視覚に訴えるものは存在しない。そのため、視聴覚に同時に訴えることにより、臨場感あふれる癒し空間を提供するシステムとは言えない。
【0010】
そこで、本発明は前記問題点に鑑み、無線接続された複数端末間で、各端末が担う役割を相互に変更し、また、癒し空間を提供する音声再生システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、無線接続された複数端末においてそれぞれ再生される再生音声を同期させる手段と、各端末で再生される前記再生音声を規定した再生音声規則情報を、各端末に設定する規則情報設定手段と、を備え、前記再生音声規則情報は、各端末の位置に応じて、各端末で再生される前記再生音声を規定した情報、
を含むことを特徴とする。
【0012】
請求項2記載の発明は、無線接続された複数端末においてそれぞれ再生される再生音声を同期させる手段と、各端末で再生される前記再生音声を規定した再生音声規則情報を、各端末に設定する規則情報設定手段と、を備え、前記再生音声規則情報は、前記複数端末の個数に応じて、各端末で再生される前記再生音声を規定した情報、を含むことを特徴とする。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の音声再生システムにおいて、前記再生音声規則情報は、前記再生音声の音源情報を指定する情報、を含むことを特徴とする。
【0014】
請求項4記載の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の音声再生システムにおいて、前記再生音声規則情報は、前記再生音声の発音タイミングを指定する情報、を含むことを特徴とする。
【0015】
請求項5記載の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の音声再生システムにおいて、前記再生音声規則情報は、前記再生音声に対する時間経過に伴う音量変化を指定する情報、を含むことを特徴とする。
【0016】
請求項6記載の発明は、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の音声再生システムにおいて、前記再生音声規則情報は、前記再生音声に対する時間経過に伴う高周波成分量変化を指定する情報、を含むことを特徴とする。
【0017】
請求項7記載の発明は、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の音声再生システムにおいて、前記再生音声規則情報は、前記再生音声による立体音響効果に関するパラメータを指定する情報、を含むことを特徴とする。
【0018】
請求項8記載の発明は、請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の音声再生システムにおいて、さらに、前記複数端末からホスト端末を選択する端末選択手段と、前記ホスト端末以外の各端末をクライアント端末に設定する端末設定手段と、各クライアント端末にクライアントIDを設定するID設定手段と、を備え、前記再生音声規則情報は、各端末で再生される前記再生音声を各クライアントIDに基づいて規定した情報、を含むことを特徴とする。
【0019】
請求項9記載の発明は、請求項8に記載の音声再生システムにおいて、前記ID設定手段は、前記ホスト端末からの無線送信による各クライアント端末での受信強度信号値をもとに、各クライアントIDを設定する手段、を含むことを特徴とする。
【0020】
請求項10記載の発明は、請求項8または請求項9に記載の音声再生システムにおいて、前記規則情報設定手段は、前記ホスト端末が保有する前記再生音声規則情報を各クライアント端末に無線送信することにより、各端末に前記再生音声規則情報を設定する手段、を含むことを特徴とする。
【0021】
請求項11記載の発明は、請求項1ないし請求項10のいずれかに記載の音声再生システムにおいて、さらに、前記再生音声と連携して、発光装置を動作制御する手段、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
請求項1記載の発明は、複数端末に設定される、再生音声を規定する再生音声規則情報に基づいて、各端末の位置の変動に応じて、各端末が担う役割を各端末間で相互に変更することが可能である。
【0023】
請求項2記載の発明は、複数端末に設定される、再生音声を規定する再生音声規則情報に基づいて、複数端末の個数の変動に応じて、各端末が担う役割を各端末間で相互に変更することが可能である。
【0024】
請求項3記載の発明は、再生音声規則情報に基づいて、複数端末がいずれの音源データを再生するかが規定されることになる。
【0025】
請求項4記載の発明は、再生音声規則情報に基づいて、複数端末がどのような発音タイミングで再生するかが規定されることになる。
【0026】
請求項5記載の発明は、再生音声規則情報が、再生音声のみならず、再生音量をも設定することにより、さらに臨場感あふれる立体音響空間を提供することが可能である。
【0027】
請求項6記載の発明は、再生音声規則情報が、再生音声のみならず、高周波成分量をも設定することにより、さらに臨場感あふれる立体音響空間を提供することが可能である。
【0028】
請求項7記載の発明は、再生音声規則情報が、立体音響効果に関するパラメータを指定することにより、エコー効果やハーモナイズ効果などの立体音響効果を実現することが可能である。
【0029】
請求項8記載の発明は、複数端末に対して、ホスト端末またはクライアントIDが設定されたクライアント端末と名付けることにより、各端末が担う役割を付与することが可能である。
【0030】
請求項9記載の発明は、ホスト端末からの無線送信によるクライアント端末での受信強度信号値に基づいて、クライアントIDを設定することにより、複数端末の位置または個数の変動に応じて、各端末が担う役割を各端末間で相互にリアルタイムに変更することが容易となる。
【0031】
請求項10記載の発明は、複数端末に再生音声規則情報が設定されるためには、すべての複数端末が再生音声規則情報を記憶する必要はなく、ホスト端末がクライアント端末に再生音声規則情報を無線送信するのみで足りることを可能とする。
【0032】
請求項11記載の発明は、再生音声とLED発光を連携させることにより、さらに臨場感あふれる癒し空間を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
<音声再生システムの概要>
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。まず、本発明に係る音声再生システムの概要について説明する。図1は、本実施の形態に係る無線接続された複数端末の配置図である。
【0034】
ホスト端末10Hは、複数端末から任意に選択される、通常は単一の端末である。クライアント端末10C1,10C2,10C3は、複数端末から任意にホスト端末10Hに選択されなかった、単一または複数の端末である。ホスト端末10Hおよびクライアント端末10C1,10C2,10C3は、音声再生およびLED発光を行う点で共通する。しかし、ホスト端末10Hのみが音声再生システムを統括する点で相違する。
【0035】
ホスト端末10Hからクライアント端末10C1,10C2,10C3に対して、音声再生タイミングを設定する再生音声規則情報60およびLED発光タイミングを設定するLED発光規則情報70が記載されたシナリオプログラム20C1,20C2,20C3が無線送信される。複数端末は、再生音声規則情報60およびLED発光規則情報70に基づいて、各端末での音声再生およびLED発光を同期させることが可能である。
【0036】
ホスト端末10H、クライアント端末10C1,10C2,10C3は、それぞれ、うぐいすの鳴き声、和琴の音色、ししおどしの音、笙の音色を同期して再生している。
【0037】
また、ホスト端末10H、クライアント端末10C1,10C2,10C3は、それぞれ、LED発光部30H、30C1,30C2,30C3を有しており、上述した音声再生と連携して、各端末での発光タイミングで同期してLED発光している。
【0038】
以上のように、複数端末が各端末での音声再生およびLED発光を同期させることにより、本発明に係る音声再生システムは、臨場感あふれる立体音響空間や癒し空間を提供することが可能となっている。
【0039】
<音声再生システム中の個別端末の構成要素>
次に、図1で示した音声再生システム中の個別端末の構成要素について説明する。図2は、本実施の形態に係る端末のブロック図である。端末10は、ホスト端末選択スイッチ40、無線通信部50、音声処理部80、音声出力部81、LED発光部30、制御部100、第一記憶部110、第二記憶部120を備えている。
【0040】
ホスト端末選択スイッチ40は、これをオンにした端末はホスト端末10Hに選択され、これをオフにした端末はクライアント端末10C1,10C2,10C3に選択されるスイッチである。端末10の電源そのものをオン・オフにするスイッチとは異なるスイッチである。
【0041】
無線通信部50は、第二記憶部120に格納されている無線プロトコルコード121、アプリケーションコード122により、動作制御されている。
【0042】
音声処理部80、音声出力部81は、音声データ90、シナリオプログラム20に記載された再生音声規則情報60に基づいて、音声再生することが可能である。また、LED発光部30は、シナリオプログラム20に記載されたLED発光規則情報70に基づいて、LED発光することが可能である。音声処理部80、LED発光部30は、制御部100により、動作制御されている。音声データ90、シナリオプログラム20は、第一記憶部110に格納されている。
【0043】
本実施の形態においては、第二記憶部120、音声処理部80、制御部100について、それぞれ、ファームウェア用のフラッシュメモリ、Audio LSI、マイコンまたはCPUを利用している。
【0044】
上述した構成要素をワンチップに包含することにより、電力消費量と製造コストを削減することが可能である。例えば、本実施の形態においては、シナリオプログラム20、音声データ90は、第一記憶部110に格納されているが、マイコンが内蔵するファームウェア用のエンベディッドメモリに格納されることもできる。
【0045】
<シナリオプログラムの内容>
図1、図2の説明において現れたシナリオプログラム20の内容について説明する。図3は、本実施の形態に係るシナリオプログラム20の内容を示す図である。シナリオプログラム20は、トラックT1,T2,T3,T4ごとに、再生音声規則情報60T1,60T2,60T3,60T4、LED発光規則情報70T1,70T2,70T3,70T4、音声再生およびLED発光を行うべき端末名を記載している。
【0046】
再生音声規則情報60は、各端末での音声再生タイミングを設定している。図3では、再生音声規則情報60は、直線上を左側から右側に進行するに従って、時間が経過していることを示す時系列直線により表現されている。四角形は音声再生中、四角形以外の直線は音声再生停止を表している。四角形の直線方向の長さは、音声の長さを表している。例えば、和琴の一音は持続音ではないため、再生音声規則情報60T2において、四角形の直線方向の長さは短くなっている。一方、笙の一音は持続音であるため、再生音声規則情報60T4において、四角形の直線方向の長さは長くなっている。また、再生音声規則情報60は、再生音量変化を表すことが可能である。
【0047】
再生音声規則情報60は、再生音声の高周波成分量を表すことも可能である。例えば、和琴を強く爪弾かせたり、笙を強く吹かせたりする設定を、再生音声規則情報60において行うことにより、和琴や笙の再生音声の倍音成分を多くすることができる。
【0048】
再生音声規則情報60は、さらに、立体音響効果を実現することも可能である。立体音響効果とは、複数端末が連携して音声再生することにより、空間的な奥行きを演出する効果をいい、例えば、エコー効果やハーモナイズ効果などが挙げられる。ここで、エコー効果とは、直接音に見立てたある端末での再生音声と、反射音に見立てた他の端末での再生音声を重ね合わせることなどをいう。また、ハーモナイズ効果とは、ピッチをわずかにずらした複数端末からの再生音声を重ね合わせることなどをいう。
【0049】
エコー効果を実現するためには、再生音声規則情報60において、直接音と反射音の音声再生タイミングのずれ、反射回数、反射時における再生音声と高周波成分の減衰率などを、パラメータとして設定することなどが考えられる。
【0050】
ハーモナイズ効果を実現するためには、再生音声規則情報60において、後述する音声データ90で表現される音声ピッチを、複数端末間でどの程度わずかにずらすかを、パラメータとして設定することなどが考えられる。このことにより、複数の楽器などが合奏する状態を再現することが可能である。
【0051】
LED発光規則情報70は、各端末でのLED発光タイミングを設定している。図3では、LED発光規則情報70も、時系列直線により表現されている。ランプの図柄はLED発光中、ランプの図柄以外の直線はLED発光停止を表している。また、LED発光規則情報70は、LED発光量変化を表すことが可能である。さらに、再生音声規則情報60、LED発光規則情報70を連携させることが可能である。
【0052】
再生音声規則情報60は、各端末での音声再生タイミングを設定しているテキストデータに過ぎず、音声再生波形をも設定しているわけではない。そこで、音声再生波形を設定する音声データ90が必要となる。
【0053】
<音声データの内容>
図2、図3の説明において現れた音声データ90の内容について説明する。図4は、本実施の形態に係る音声データ90の内容を示す図である。音声データ90は、本実施の形態においては、PCM(Pulsed-Code Modulation)データ、MIDI音源データから構成されている。
【0054】
うぐいすの鳴き声とししおどしの音は、楽譜では表現が困難であるため、音声データ90として、PCMデータを利用している。それぞれについて、ホーホケキョとチョロチョロ・・・カタンというアナログ音声信号がパルス列に変換されることにより、PCMデータが生成される。これらのPCMデータの再生タイミングを設定するものが、図3で示したトラックT1,T3に記載された再生音声規則情報60T1,60T3である。
【0055】
一方、和琴の演奏と笙の演奏は、楽譜で表現が容易であるため、音声データ90として、MIDI音源データを利用している。それぞれについて、MIDI音源データは、和琴の各音階と笙の各音階に相当する。これらのMIDI音源データの再生タイミングを設定するものが、MIDIデータであり、図3で示したトラックT2,T4に記載された再生音声規則情報60T2,60T4である。
【0056】
<無線通信手段>
図1の説明において上述したように、ホスト端末10Hからクライアント端末10C1,10C2,10C3に対して、音声再生タイミングを設定する再生音声規則情報60およびLED発光タイミングを設定するLED発光規則情報70が記載されたシナリオプログラム20C1,20C2,20C3が無線送信される。
【0057】
ここで、無線通信部50は、本実施の形態においては、ZigBee(登録商標)を利用している。その他の無線通信手段として、無線LAN、Bluetooth(登録商標)、300MHz帯電波などを利用することも可能である。しかし、乾電池で駆動する携帯型端末として、電力消費量を抑制するため、ZigBeeを利用する音声再生システムを実施している。
【0058】
ここで、ZigBeeにおける伝送速度(〜250Kbps)は、無線LAN、Bluetoothにおける伝送速度(それぞれ、〜54Mbps,〜1Mbps)と比較して遅いため、伝送速度とデータ容量の関係が問題となるとも考えられる。
【0059】
しかし、ホスト端末10Hからクライアント端末10C1,10C2,10C3に無線送信されるシナリオプログラム20C1,20C2,20C3は、音声再生タイミングとLED発光タイミングを設定する、再生音声規則情報60とLED発光規則情報70から構成されており、これらの規則情報はテキストデータに過ぎない。
【0060】
また、音声データ90は、音声再生波形を設定するため、シナリオプログラム20と比較して、データ容量が圧倒的に大きい。そのため、音声データ90は、ホスト端末10Hからクライアント端末10C1,10C2,10C3に無線送信されず、各端末の第一記憶部110に格納されるべきものである。以上のことから、本実施の形態においては、伝送速度とデータ容量の関係は問題とならない。
【0061】
<音声再生システムの処理の流れ>
[複数端末の配置およびホスト端末の選択]
まず、複数端末を購入する。その後に端末を新たに購入することにより、複数端末が連携して、音声再生およびLED発光を行う面白さが倍増する。
【0062】
図1において、複数端末4個を部屋1に配置する。部屋1は、一辺の長さが10m程度の四角形の形状を有している。この四角形よりさらに複雑な形状を有する部屋においても、本発明に係る音声再生システムを実施することが可能である。図1のように、各端末をランダムに配置することも、<本実施の形態における特別な実施例>(後述)のように、各端末を直線状などに配置することも可能である。
【0063】
複数端末4個の中から、任意に単一のホスト端末10Hを選択する。この選択は、ホスト端末10Hのホスト端末スイッチ40をオンにすることにより行う。ホスト端末10Hに選択されなかった端末は、クライアント端末10C1,10C2,10C3に自動的に選択される。
【0064】
ここで、各クライアント端末を相互に区別する必要がある。各クライアント端末が、図3で示したシナリオプログラム20の中で、いずれの再生音声規則情報60およびLED発光規則情報70に基づいて、音声再生およびLED発光を行うかを決定する必要があるからである。本実施の形態においては、各クライアント端末に対して、クライアントIDを設定することにより、各クライアント端末を相互に区別している。
【0065】
[クライアントID設定手段]
次に、各クライアント端末に対して、クライアントIDを設定する手段について説明する。図5は、本実施の形態に係るクライアントIDを設定する手段を示す図である。図1で示した複数端末の配置図とは、端末数と端末配置が異なる。しかし、図1で示した複数端末の配置図においても、以下に説明するようなクライアントIDを設定する手段を利用している。
【0066】
図5において、端末11Hのホスト端末選択スイッチ40をオンにしているため、端末11Hはホスト端末に選択されている。ホスト端末選択スイッチ40をオフにしている端末11C1,11C2,11C3,11C4,11C5,11C6は、クライアント端末に選択されている。
【0067】
本実施の形態においては、各クライアント端末での受信強度信号値をもとに、各クライアントIDを設定している。具体的には、受信強度信号値が大きい順に、小さいクライアントIDを設定している。部屋1において、パーティションなどの障害物が存在しなければ、通常は、ホスト端末11Hから各クライアント端末までの距離が長くなるに従って、各クライアント端末での受信強度信号値は小さくなる。図5における同心円状の破線は、ホスト端末11Hから各クライアント端末までの距離を測る目安である。
【0068】
図6は、クライアントIDを設定する手段における、各クライアント端末での受信強度信号値を示す図である。部屋1の一辺の長さは10m程度でしかない。しかし、本実施の形態においては、無線通信手段として無線強度が小さいZigBee(登録商標)を利用している。そのため、部屋1の中であっても、ホスト端末11Hから各クライアント端末までの距離が長くなるに従って、各クライアント端末での受信強度信号値は急速に減衰している。よって、ホスト端末11Hからの距離に大差がないクライアント端末11C4,11C5,11C6に対しても、精度良くクライアントID4,5,6を設定することが可能である。
【0069】
[シナリオプログラムおよび音声データの記憶手段]
上述したような過程を経過することにより、図1において、ホスト端末10Hからクライアント端末10C1,10C2,10C3に対して、シナリオプログラム20C1,20C2,20C3を無線送信する準備が整う。無線送信について説明する前に、シナリオプログラム20、音声データ90を第一記憶部110に格納する手段について説明する。
【0070】
第一記憶部110は、内部メモリまたは外部メモリのいずれであってもよい。外部メモリである場合は、ダウンロードしたシナリオプログラム20、音声データ90を、外部メモリカードに保存することにより、利用者によるカスタマイズがより容易になる。
【0071】
また、<無線通信手段>において説明したように、シナリオプログラム20は無線送信されるが、音声データ90は無線送信されない。そのため、音声データ90はすべての複数端末の第一記憶部110に格納しなければならない。しかし、シナリオプログラム20は、複数端末の中から特定端末のみをホスト端末に選択するならば、そのホスト端末の第一記憶部110のみに格納すれば足りる。
【0072】
[シナリオプログラムの無線送信]
次に、ホスト端末10Hからクライアント端末10C1,10C2,10C3に対して、シナリオプログラム20C1,20C2,20C3を無線送信する。この際に、各クライアント端末に対して、図3で示したシナリオプログラム20のすべての内容を無線送信してもよい。しかし、例えば、クライアント端末10C1に対しては、再生音声規則情報60T2、LED発光規則情報70T2のみを無線送信することも可能である。
【0073】
ここで、図3で示した各時系列直線の最左端から、同時刻にすべての音声再生およびLED発光が開始しなければならない。特に、和琴の演奏と笙の演奏がかみ合わなければ、楽曲が完成されないからである。そこで、複数端末は、各端末での音声再生およびLED発光を同期させる必要があり、以下にその手段について説明する。
【0074】
ホスト端末10Hは、クライアント端末10C1,10C2,10C3に対して、同期オフセット確認信号を送信する。各クライアント端末は、ホスト端末10Hに対して、同期オフセット確認信号に対する応答信号を返信する。ホスト端末10Hは、同期オフセット確認信号に対する応答信号の遅延時間から、各クライアント端末の同期オフセット情報を設定し、各クライアント端末に対して、各同期オフセット情報を送信する。
【0075】
次に、ホスト端末10Hは、各クライアント端末に対して、同期信号の送信を開始する。この同期信号は、本発明に係る音声再生システムが動作している間、継続して各クライアント端末に送信される。各クライアント端末の制御部100は、各同期オフセット情報に基づいて、同期信号を調整する。このようにして、複数端末間で同期がとられる。
【0076】
なお、複数端末が電波時計を内蔵するなど、正確な絶対時間情報を保持できる場合には、上述したオフセット調整プロセスは不要である。複数端末は、保持している絶対時間に基づいて、音声再生およびLED発光を行えばよい。
【0077】
[音声再生およびLED発光]
上述した無線送信により送信されたシナリオプログラム20に記載された再生音声規則情報60およびLED発光規則情報70に基づいて、複数端末での音声再生およびLED発光を同期させることが可能である。
【0078】
例えば、ホスト端末10Hでは、再生音声規則情報60T1に基づいて、うぐいすの鳴き声の再生が行われる。再生音声規則情報60T1の中の四角形において、ホーホケキョをデータ内容とするPCMデータが再生される。また、LED発光規則情報70T1に基づいて、うぐいすの鳴き声の開始時と終了時に、LED発光が行われる。
【0079】
さらに、クライアント端末10C3では、再生音声規則情報60T4に基づいて、笙の音色の再生が行われる。再生音声規則情報60T4の中の四角形において、笙の各音階をデータ内容とするMIDI音源データが再生される。また、LED発光規則情報70T4に基づいて、笙の音色の鳴り始めに、LED発光が行われる。
【0080】
以上のように、複数端末が各端末での音声再生およびLED発光を同期させることにより、本発明に係る音声再生システムは、臨場感あふれる立体音響空間や癒し空間を提供することが可能となっている。また、エコー効果やハーモナイズ効果などの立体音響効果により、さらなる臨場感を演出することも可能である。
【0081】
[複数端末間の役割変更手段]
ここで、本発明に係る音声再生システムは、複数端末間で各端末が担う役割を相互に変更することが可能である。例えば、ホスト端末10Hの近傍でくつろいでいる利用者が、うぐいすの鳴き声よりも、ししおどしの音を際立たせたいと思えば、ホスト端末10Hとクライアント端末10C2の役割を相互に変更することができる。このことにより、複数端末が連携して、音声再生およびLED発光を行う面白さがさらに倍増することになる。
【0082】
複数端末間で各端末が担う役割を相互に変更する手段として、(1)ホスト端末とクライアント端末の役割を交換すること、(2)複数端末の位置を変更すること、(3)複数端末の個数を変更すること、を提案する。それらの手段について、以下に説明する。
【0083】
まず、ホスト端末とクライアント端末の役割を交換することについて説明する。役割交換前の初期状態を示す図5において、ホスト端末11Hのホスト端末選択スイッチ40をオフにして、各クライアント端末から任意に選択した端末11C6のホスト端末選択スイッチ40をオンにする。この場合、新たなクライアント端末11H,11C1,11C2,11C3,11C4,11C5での受信強度信号値をもとに、新たなクライアントIDが設定されることになる。
【0084】
新たなクライアントIDの設定に伴って、図3で示したようなシナリオプログラム20が変更されることはない。しかし、シナリオプログラム20に記載された、音声再生およびLED発光を行うべき端末名に基づいて、複数端末の役割を変更することができる。
【0085】
次に、複数端末の位置を変更することについて説明する。図7は、複数端末の位置の変動に応じて、クライアントIDをリアルタイムに変更する手段を示す図である。図5、図7で示した複数端末の配置図の相違点は、図7でのホスト端末11Hからクライアント端末11C3までの距離が、図5での距離と比較して長いことである。
【0086】
そのため、例えば、クライアント端末11C3について、図5で示した配置図では、クライアントIDとして3が設定されていたが、図7で示した配置図では、クライアントIDとして6が設定されることになる。そして、図3で示したようなシナリオプログラム20に基づいて、複数端末の役割を、演奏前または演奏中に関わらず、リアルタイムに変更することが可能である。
【0087】
最後に、複数端末の個数を変更することについて説明する。図8は、複数端末の個数の増減に応じて、クライアントIDをリアルタイムに変更する手段を示す図である。図5、図8で示した複数端末の配置図の相違点は、図8において、端末11C7を新たに追加したことである。
【0088】
そのため、例えば、端末11C7について、クライアントIDとして1が設定されることになる。そして、図3で示したようなシナリオプログラム20に基づいて、複数端末の役割を、演奏前または演奏中に関わらず、リアルタイムに変更することが可能である。複数端末を購入した後であっても、新たに端末を購入することにより、複数端末が連携して、音声再生およびLED発光を行う面白さがさらに倍増することになる。
【0089】
<本実施の形態における特別な実施例>
本実施の形態についての最後の説明として、本発明の効果が顕著に現れる特別な実施例について説明する。図1、図5、図7、図8で示した複数端末の配置図では、複数端末は部屋1でランダムに配置されていた。しかし、複数端末を直線状や円状などに配置する場合も考えられる。この場合においても、各クライアント端末に対して、クライアントIDを設定または変更する手段は、図5、図7、図8の説明における手段と同様である。
【0090】
例えば、複数端末を直線状に配置する場合を考える。利用者は直線の片端でくつろいでおり、直線のその片端にある端末をホスト端末に選択する。すると、直線の別の片端にあるクライアント端末が、フレーズ演奏とLED発光をする。この演奏と発光が終了すると、直線の別の片端にあるクライアント端末に隣接する、利用者により近い位置にあるクライアント端末が、同様のフレーズ演奏とLED発光をする。以上のリレー演奏と発光を繰り返すことにより、演奏と発光が利用者に徐々に迫ってくる臨場感を楽しむことが可能である。
【0091】
その逆のパターンとして、直線の別の片端にある端末をホスト端末に選択すると、演奏と発光が利用者から徐々に遠ざかる臨場感を楽しむことが可能である。
【0092】
また、図1、図5、図7、図8で示した複数端末の配置図では、複数端末は部屋1で床面に配置されていた。しかし、複数端末を3次元的に配置する場合も考えられる。このような配置により、例えば、利用者の上方から神々しい演奏が聞こえるという楽しさも実現できる。
【0093】
<MP3データを無線送信する変形例>
本実施例と一部が異なる変形例として、MP3データを無線送信する変形例について説明する。MP3データは、PCMデータなどの音声波形データを、約10分の1程度にまで圧縮したデータである。
【0094】
本実施の形態においては、無線送信手段として、ZigBee(登録商標)を利用している。しかし、ZigBeeにおける伝送速度(〜250Kbps)を考慮しても,MP3データの容量は小さいため、伝送速度とデータ容量の関係についての問題は生じない。もっとも、この問題が解決できれば、PCMデータを無線送信するようにしてもよい。
【0095】
本変形例においては、MP3データは、図2で示した音声データ90に相当するものである。また、MP3データの再生タイミングを設定するものが、図3で示したシナリオプログラム20における再生音声規則情報60である。本実施の形態と本変形例の相違点は、音声データ90は無線送信されないが、MP3データは無線送信されることである。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本実施の形態に係る無線接続された複数端末の配置図である。
【図2】本実施の形態に係る端末のブロック図である。
【図3】本実施の形態に係るシナリオプログラムの内容を示す図である。
【図4】本実施の形態に係る音声データの内容を示す図である。
【図5】本実施の形態に係るクライアントIDを設定する手段を示す図である。
【図6】クライアントIDを設定する手段における、各クライアント端末での受信強度信号値を示す図である。
【図7】複数端末の位置の変動に応じて、クライアントIDをリアルタイムに変更する手段を示す図である。
【図8】複数端末の個数の増減に応じて、クライアントIDをリアルタイムに変更する手段を示す図である。
【符号の説明】
【0097】
1 部屋
10 端末
10H ホスト端末
10C1,10C2,10C3 クライアント端末
11H ホスト端末
11C1,11C2,11C3,11C4,11C5,11C6,11C7 クライアント端末
20C1,20C2,20C3 シナリオプログラム
30H,30C1,30C2,30C3 LED発光部
60T1,60T2,60T3,60T4 再生音声規則情報
70T1,70T2,70T3,70T4 LED発光規則情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線接続された複数端末においてそれぞれ再生される再生音声を同期させる手段と、
各端末で再生される前記再生音声を規定した再生音声規則情報を、各端末に設定する規則情報設定手段と、
を備え、
前記再生音声規則情報は、
各端末の位置に応じて、各端末で再生される前記再生音声を規定した情報、
を含むことを特徴とする音声再生システム。
【請求項2】
無線接続された複数端末においてそれぞれ再生される再生音声を同期させる手段と、
各端末で再生される前記再生音声を規定した再生音声規則情報を、各端末に設定する規則情報設定手段と、
を備え、
前記再生音声規則情報は、
前記複数端末の個数に応じて、各端末で再生される前記再生音声を規定した情報、
を含むことを特徴とする音声再生システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の音声再生システムにおいて、
前記再生音声規則情報は、
前記再生音声の音源情報を指定する情報、
を含むことを特徴とする音声再生システム。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の音声再生システムにおいて、
前記再生音声規則情報は、
前記再生音声の発音タイミングを指定する情報、
を含むことを特徴とする音声再生システム。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の音声再生システムにおいて、
前記再生音声規則情報は、
前記再生音声に対する時間経過に伴う音量変化を指定する情報、
を含むことを特徴とする音声再生システム。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の音声再生システムにおいて、
前記再生音声規則情報は、
前記再生音声に対する時間経過に伴う高周波成分量変化を指定する情報、
を含むことを特徴とする音声再生システム。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の音声再生システムにおいて、
前記再生音声規則情報は、
前記再生音声による立体音響効果に関するパラメータを指定する情報、
を含むことを特徴とする音声再生システム。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の音声再生システムにおいて、さらに、
前記複数端末からホスト端末を選択する端末選択手段と、
前記ホスト端末以外の各端末をクライアント端末に設定する端末設定手段と、
各クライアント端末にクライアントIDを設定するID設定手段と、
を備え、
前記再生音声規則情報は、
各端末で再生される前記再生音声を各クライアントIDに基づいて規定した情報、
を含むことを特徴とする音声再生システム。
【請求項9】
請求項8に記載の音声再生システムにおいて、
前記ID設定手段は、
前記ホスト端末からの無線送信による各クライアント端末での受信強度信号値をもとに、各クライアントIDを設定する手段、
を含むことを特徴とする音声再生システム。
【請求項10】
請求項8または請求項9に記載の音声再生システムにおいて、
前記規則情報設定手段は、
前記ホスト端末が保有する前記再生音声規則情報を各クライアント端末に無線送信することにより、各端末に前記再生音声規則情報を設定する手段、
を含むことを特徴とする音声再生システム。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のいずれかに記載の音声再生システムにおいて、さらに、
前記再生音声と連携して、発光装置を動作制御する手段、
を備えることを特徴とする音声再生システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−147860(P2008−147860A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−330763(P2006−330763)
【出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(591128453)株式会社メガチップス (322)
【Fターム(参考)】