説明

音声出力装置、音声出力方法、及びプログラム

【課題】発話者の発声した音声に重畳されたノイズを除去することができる音声出力装置を提供する。
【解決手段】発話者の発声した音声を取得する第1のマイク11と、ノイズを取得する第2のマイク12と、第1のマイク11が取得した音声信号と、第2のマイク12が取得したノイズ信号とを用いて、音声信号からノイズ信号をキャンセルするノイズキャンセル部13と、ノイズキャンセル部13によってノイズのキャンセルされた音声信号を出力する出力部14と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発話者の発話した音声のノイズをキャンセルして出力する音声出力装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、騒音下でも発話者が発話した音声を明瞭にとらえることができるようにするための技術開発が行われてきている。例えば、MRI装置(核磁気共鳴撮像装置)において、被験者との通話を明瞭に行うため、リミッタと、ローパスフィルタとを用いて被験者の声をオペレータが明瞭に聞き取れるようにする通信システムが開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、掘削作業などでの通話に用いられるマスクであって、工事の騒音等をキャンセルすることができるマイクを内蔵している防護マスクが開発されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2000−339000号公報
【特許文献2】特開2003−19218号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1で開示されている技術は、簡易な構成であるというメリットはあるものの、極めて大きな騒音のレベルを被験者の音声レベルに制限することができるのみであって、被験者の音声に重畳されているノイズをキャンセルすることはできないという問題がある。すなわち、被験者の音声を高S/Nで明瞭化するのに有効でないという問題がある。
【0005】
また、上記特許文献2で開示されている技術は、マスク内部にマイクを備えており、それによって、発話者の発話した音声に重畳されている、マスク外からのノイズをキャンセルすることができるものである。したがって、発話者がマスクをしない環境では、使用することができなくなるという問題がある。特に、マスク内で発声された音声を増強し、マスク外からのノイズをキャンセルするように構成されているため、そのマスクを発話者が装着していない場合には、発話者の音声に対するノイズキャンセルが適切に行われなくなり、例えば、発話者の発声した音声自体も、ノイズと同様にキャンセルされてしまう可能性もありうる。また、MRI環境下で発生する電磁誘導ノイズを適切に除去できないという問題もある。
【0006】
MRI装置は医用画像診断装置の一つで、有用性が高く、最近では、脳研究にもよく使われている。しかしながら、強力なパルス状電流を磁場コイルなどに流して、磁場を急激に変化させて撮像するため、電磁誘導ノイズや騒音ノイズ、振動ノイズ、その振動に起因する電磁誘導ノイズなどを含むノイズを発生する。このため、実際の高磁場のMRI装置が稼動しているときでは、100dB(高架線のガード下の騒音レベル)を超えるような強烈な騒音が発生し、検査者と被験者(患者)との通話が不可能となる。MRI装置を用いた脳研究においては、被験者の発声した音声を記録することも必要とされるが、MRI装置が稼動中では被験者の声を明瞭に記録することができなかった。
【0007】
また、MRI装置下で、画像をみながら、手術を行う装置の開発がなされている(例えば、文献「森川他、日磁医誌,第21巻,2号,p.41−47,2001年」等を参照のこと)。高騒音のMRI装置下で、手術がおこなわれる場合は、術者間での手術中の通話が非常に困難となっていた。これまで、騒音の大きいMRI装置の監視下で行われる手術中において術者間での通話用として有用性の高い通話装置はなかった。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、その一つの目的は、発話者の発声した音声に重畳されているノイズを効果的に除去することができる音声出力装置等を提供することである。
【0009】
また、本発明の他の目的は、MRI等に起因する電磁誘導ノイズ等を効果的に除去することができる音声出力装置等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的の少なくともいずれかを達成するため、本発明による音声出力装置は、発話者の発声した音声を取得する第1のマイクと、ノイズを取得する第2のマイクと、前記第1のマイクが取得した音声信号と、前記第2のマイクが取得したノイズ信号とを用いて、前記音声信号から前記ノイズ信号をキャンセルするノイズキャンセル部と、前記ノイズキャンセル部によってノイズのキャンセルされた音声信号を出力する出力部と、を備えたものである。
【0011】
このような構成により、第1のマイクに混入したノイズを、第2のマイクで取得したノイズ信号によって除去することができ、ノイズを低減した音声信号を得ることができる。したがって、例えば、通話や音声の記録の際に、その障害となるノイズを除去することができ、良好な通話システムや、良好な音声記録システム等を実現することができるようになる。
【0012】
また、本発明による音声出力装置では、前記第2のマイクは、前記第1のマイクと同様の電気的特性を有し、空気の振動をとらえないダミーマイクであってもよい。
【0013】
このような構成により、第1のマイクに混入したノイズ、例えば、電磁誘導ノイズ等を、ダミーマイクでとらえることができ、そのダミーマイクでとらえたノイズを用いることによって、ノイズを低減した音声信号を得ることができる。
【0014】
また、本発明による音声出力装置では、前記第2のマイクが取得するノイズは、電磁誘導ノイズ、高騒音ノイズ、振動ノイズ、振動に起因する電磁誘導ノイズのいずれか1以上のノイズであってもよい。
【0015】
このような構成により、例えば、電磁誘導ノイズ、高騒音ノイズ、振動ノイズ、振動に起因する電磁誘導ノイズ等を除去することができうる。
【0016】
また、本発明による音声出力装置では、前記電磁誘導ノイズ、前記高騒音ノイズ、前記振動ノイズ、前記振動に起因する電磁誘導ノイズは、MRI装置に起因するものであってもよい。
【0017】
このような構成により、MRI環境下において、MRI装置に起因する電磁誘導ノイズ等を低減することができる。
【0018】
また、本発明による音声出力装置では、前記第1のマイクが取得した音声信号を蓄積する音声信号蓄積部と、前記第2のマイクが取得したノイズ信号を蓄積するノイズ信号蓄積部と、をさらに備え、前記ノイズキャンセル部は、前記音声信号蓄積部が蓄積した音声信号と、前記ノイズ信号蓄積部が蓄積したノイズ信号とを用いて、前記音声信号から前記ノイズ信号をキャンセルしてもよい。
【0019】
このような構成により、あらかじめノイズキャンセル処理等の処理のされていないデータを蓄積することができるため、各種の設定を変更しながら、何度もノイズキャンセル処理等を行うことができ、ノイズ除去の効率が高く、被験者の音声の変化が少ない設定でのノイズ除去の処理を行いうることになる。
【0020】
また、本発明による音声出力装置では、前記第1のマイクは双指向性のものであり、前記第2のマイクが空気の振動をとらえるものである場合に、当該第2のマイクは双指向性のものであってもよい。
このような構成により、マイクが双指向性であるため、騒音の影響を低減することができる。
【0021】
また、本発明による音声出力装置では、前記第1のマイクの形状は、発話者の口の形状に合うものであってもよい。
このような構成により、出力の対象となる音声を効率よく取得できうることになりうる。
【0022】
また、本発明による音声出力装置では、前記第1のマイク、及び前記第2のマイクは、圧電体素子が有機物中に配置された複合圧電体により構成されたものであってもよい。
【0023】
このような構成により、用途に適した任意の大きさや形状のマイクを実現できるようになる。その結果として、ノイズ除去の効率の高い音声出力装置を実現できうる。
【0024】
また、本発明による音声出力装置では、前記圧電体素子は、分極されていてもよい。
【0025】
また、本発明による音声出力装置では、前記ダミーマイクは、圧電体素子が有機物中に配置された複合圧電体により構成されたものであり、当該複合圧電体は、分極されていなくてもよい。
【0026】
また、本発明による音声出力装置では、平均化処理で用いるサンプル数を示すサンプル数情報が記憶されるサンプル数情報記憶部と、前記ノイズキャンセル部によるノイズキャンセル処理の前、あるいは、前後に音声信号及びノイズ信号に対して、または、ノイズキャンセル処理の後に音声信号のみに対して、前記サンプル数情報の示すサンプル数で平均化処理を行う平均処理部と、をさらに備えていてもよい。
【0027】
このような構成により、ノイズキャンセル処理と共に、平均化処理も併用することによって、さらに高S/Nで音声信号を出力することができるようになる。
【0028】
また、本発明による音声出力装置では、サンプル数を変更する旨の情報である変更情報を受け付ける変更情報受付部と、前記変更情報受付部が受け付けた変更情報に応じて前記サンプル数情報を変更する変更部と、をさらに備えていてもよい。
【0029】
このような構成により、高S/Nとなるように、適宜、サンプル数情報を変更することができるようになる。
【発明の効果】
【0030】
本発明による音声出力装置等によれば、発話者の発声した音声に重畳されているノイズをキャンセルすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明による音声出力装置について、実施の形態を用いて説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素及びステップは同一または相当するものであり、再度の説明を省略することがある。
【0032】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1による音声出力装置について、図面を参照しながら説明する。本実地の形態による音声出力装置は、発話者の発声した音声に重畳されているノイズをキャンセルするものである。
【0033】
図1は、本実施の形態による音声出力装置1の構成を示すブロック図である。本実施の形態による音声出力装置1は、第1のマイク11と、第2のマイク12と、ノイズキャンセル部13と、出力部14と、サンプル数情報記憶部15と、平均処理部16と、変更情報受付部17と、変更部18とを備える。
【0034】
第1のマイク11は、発話者の発声した音声を取得して音声信号に変換する。なお、第1のマイク11は、発話者の発声した音声以外のノイズも取得してしまうものである。したがって、第1のマイク11から得られる音声信号には、ノイズの信号も含まれることになる。第1のマイク11は、例えば、図2で示されるように、枠31と、その枠31によって周辺部が固定されている複合圧電体32とから構成されるものであってもよい。本実施の形態による音声出力装置1がMRIで用いられる場合には、枠31は、磁場の中におかれるため、強磁性体(例えば、鉄など)ではないもの、例えば、樹脂やセラミックなどからなるものが好ましい。樹脂は、例えば、ポリプロピレン(PP)や、塩化ビニル等であってもよい。この枠31は、床や壁、MRI装置等に対して直接的あるいは間接的に固定されることも可能である。また、複合圧電体32は、スピーカやマイクなどの音響機器を構成することができるものである。その複合圧電体32は、圧電体素子が有機物中に配置されたものであり、強磁性体を含まない非磁性のものであるため、MRIで用いるのに好適である。図3は、複合圧電体の構造を示す図である。複合圧電体60は、例えば、有機物61に配置された多数のPZT61から構成される。PZT61は、チタン酸ジルコン酸鉛からなる圧電素子である。なお、複合圧電体32については、すでに公知であり、詳細な説明を省略する。複合圧電体については、例えば、特開昭63−4799等に記載されている。また、圧電体素子は、分極されていることが好適である。また、その分極方向が圧電体素子に明示されていてもよい。分極方向が圧電体素子に明示されていることによって、第1のマイク11を容易に構成することができるようになる。また、本実施の形態による音声出力装置1がMRI以外で用いられる場合には、第1のマイク11は、このような構成に限定されるものではなく、強磁性体を用いたマイク、例えば、ダイナミックマイクや、コンデンサマイク等であってもよい。
【0035】
また、第1のマイク11の形状は、発話者の口の形状に合うものであることが好適である。発話者の口の形状に合うものとは、発話者の発声した音声を効果的にとらえることができる形状であり、例えば、図2で示されるように、発話者の口の位置が中心となるように円弧形状を有する帯状のもの(円筒面形状のもの)であってもよく、パラボラアンテナのような放物曲面状のもの(この場合には、発話者の口の位置が放物曲面の焦点となることが好適である)であってもよく、半球面状のもの(この場合には、発話者の口の位置が球面の中心となることが好適である)であってもよく、楕円面状のものであってもよい。なお、発話者の発声した音声を効果的にとらえることができるのであれば、その他の形状であってもよいことは言うまでもない。また、第1のマイク11は、発話者の発声した音声を効果的にとらえることができる大きさであることが好適である。また、第1のマイク11は、その使用時に発話者の口元に近い位置に配置されることが好適である。発話者の発声した音声を効果的に取得することができるようにするためである。
【0036】
また、第1のマイク11は、図4で示されるように、双指向性のものであってもよい。例えば、本実施の形態による音声出力装置1がMRIで用いられる場合に、MRIでは、ガントリーと呼ばれる、撮影時に人体を格納する円筒状容器の内壁から容器の中心に向かうように騒音が発生し、また逆方向に反射音が発生するが、第1のマイク11が双指向性であることによって、騒音に対する感度を低下させることが可能となる。図4は、双指向性のマイクの側面図を示す。被験者の口元に装着された第1のマイク11に対し、ガントリーの径方向に進行するMRIの騒音は、図に示すように、第1のマイク11の側面から入ってくる。これにより、第1のマイク11が双指向性であれば、第1のマイク11の全面と裏面から入ってきた騒音が打ち消しあう形となるため、騒音に対する感度が低下することになる。
【0037】
第2のマイク12は、ノイズを取得して、信号に変換する。その信号のことをノイズ信号と呼ぶことにする。第2のマイク12は、第1のマイク11と同様に、空気の振動をとらえるもの、すなわち、音を検出することができるものであってもよく、あるいは、第1のマイク11と同様の電気的特性を有し、空気の振動をとらえないダミーマイクであってもよい。ここで、電気的特性は、例えば、静電容量であってもよく、あるいは、周波数1kHz付近での電気インピーダンスであってもよい。同様の電気的特性とは、電気的特性が一致することであってもよく、あるいは、電気的特性が近いことであってもよい。例えば、両者の電気的特性の違いが、いずれかの電気的特性の±15%以下である場合に、両者の電気的特性が近いと考えてもよい。また、第2のマイク12は、第1のマイク11に近接して配置されることが好適である。近接するとは、互いのマイク位置が20mm以内であり、さらには5mm以内であることが望ましい。さらに、第1のマイク11、及び第2のマイク12に複合圧電体を利用した場合には、扁平な構造が可能となるため、近接度をより簡単に高めることができる利点がある。第2のマイク12がダミーマイクである場合でも、第2のマイク12は、電磁誘導ノイズ、振動ノイズ、振動に起因する電磁誘導ノイズのいずれか1以上のノイズを取得することができうる。それらの電磁誘導ノイズ、振動ノイズ、振動に起因する電磁誘導ノイズは、MRIに起因するものであってもよく、あるいは、そうでなくてもよい。前者の場合には、ダミーマイクとしての第2のマイク12は、第1のマイク11に近接しているため、第1のマイク11に発生するMRIの誘導ノイズとほぼ同じMRI誘導ノイズをとらえることができる。ここで、MRI装置に起因するノイズについて説明する。MRI装置では、大きく分けて3種類の磁場、すなわち、静磁場、傾斜磁場、高周波磁場が用いられる。傾斜磁場、高周波磁場の印加手順はパルスシーケンスと呼ばれ、このときに強力な電流パルスが周期的に磁場コイルに流れるため、電磁誘導ノイズや、コイルに生じた振動により大きな騒音を発生する。このように、MRI装置には、電磁誘導ノイズ、騒音、振動、静磁場中での振動による誘導ノイズが発生することになる。また、第2のマイク12がダミーマイクである場合に、上記以外のノイズを取得してもよいことは言うまでもない。
【0038】
第2のマイク12がダミーマイクでない場合には、第2のマイク12は、第1のマイク11と同様のものであってもよい。すなわち、第2のマイク12は、図2で示されるように、枠と複合圧電体によって構成されたものであってもよく、その複合圧電体に含まれる圧電体素子は分極されていてもよく、また、双指向性のものであってもよい。また、MRIで用いられない場合には、第2のマイク12は、強磁性体を用いたマイクであってもよい。ただし、第2のマイク12は、発話者の発声した音声をとらえないことが好適であるため、その形状は、発話者の口の形状に合っていてもよく、合っていなくてもよい。第2のマイクの形状が発話者の口の形状に合っている場合であっても、第2のマイク12は、発話者の発声した音声を取得しないことが好適である。なお、第2のマイク12は、第1のマイク11に近接して配置されることが好適であることは言うまでもない。また、マイクが枠と複合圧電体によって構成された場合には、目的とする形状で近接した構造をより簡単に作ることができる利点がある。したがって、この場合には、第2のマイク12は、第1のマイク11が取得するノイズとほぼ同じノイズをとらえることができるが、第1のマイク11が取得する発話者の発声した音声をとられることができない位置に配置されることが好適である。また、第2のマイク12がダミーマイクでない場合には、第2のマイク12は、電磁誘導ノイズ、高騒音ノイズ、振動ノイズ、振動に起因する電磁誘導ノイズのいずれか1以上のノイズを取得することができうる。
【0039】
また、第2のマイク12がダミーマイクである場合に、そのダミーマイクは、圧電体素子が有機物中に配置された複合圧電体によって構成されてもよく、その圧電体素子は、分極されていてもよく、あるいは、分極されていなくてもよい。圧電体素子が分極されている場合であっても、ダミーマイクは、空気の振動をとらえない、すなわち、音を検出しない(あるいは、音を検出する機能がほとんどない)ものである。第2のマイク12がダミーマイクである場合には、音を検出する機能がないため、第2のマイク12は、第1のマイク11の近傍に配置されてもよく、あるいは、そうでなくてもよい。図5は、第2のマイク12がダミーマイクである場合の、第1のマイク11と、第2のマイク12と、発話者の口41の位置との位置関係の一例を示す図である。図5で示されるように、発話者の口41から出た音声42は、第1のマイク11によって取得される。一方、第2のマイク12は、第1のマイク11の裏側に配置されているが、空気の振動をとらえないものであるため、音声42そのものを取得することはない。一方、第2のマイク12は、第1のマイク11と同様の電気的特定を有するため、第1のマイク11がとらえた電磁誘導ノイズや、振動ノイズと同様のノイズを取得することができる。
【0040】
また、第1のマイク11と、第2のマイク12とは、一般に別々のマイクであるが、両者が一体のマイクとして構成されてもよい。
【0041】
ノイズキャンセル部13は、第1のマイクが取得した音声信号と、第2のマイクが取得したノイズ信号とを用いて、音声信号からノイズ信号をキャンセルする。図6は、ノイズキャンセルの一例について説明するための図である。図6で示されるように、第1のマイク11が取得した音声信号と、第2のマイク12が取得したノイズ信号とを処理回路51が受け取り、ノイズ信号を反転させたものを音声信号に加算することによって、ノイズを除去することができる。なお、ノイズキャンセルの方法については後述する。
【0042】
なお、出力部14は、ノイズキャンセル部13によってノイズのキャンセルされた音声信号を出力する。ここで、この出力は、例えば、所定の機器への通信回線を介した送信でもよく、スピーカによる音声出力でもよく、記録媒体への蓄積でもよく、他の構成要素への引き渡しでもよい。なお、出力部14は、出力を行うデバイス(例えば、スピーカや通信デバイスなど)を含んでもよく、あるいは含まなくてもよい。また、出力部14は、ハードウェアによって実現されてもよく、あるいは、それらのデバイスを駆動するドライバ等のソフトウェアによって実現されてもよい。
【0043】
サンプル数情報記憶部15では、後述する平均処理部16によって行われる平均化処理で用いるサンプル数を示すサンプル数情報が記憶される。サンプル数情報記憶部15に情報が記憶される過程は問わない。例えば、記録媒体を介して情報がサンプル数情報記憶部15で記憶されるようになってもよく、通信回線等を介して送信された情報がサンプル数情報記憶部15で記憶されるようになってもよく、あるいは、入力デバイスを介して入力された情報がサンプル数情報記憶部15で記憶されるようになってもよい。なお、サンプル数情報記憶部15で記憶されているサンプル数情報は、後述する変更部18によって変更されうるものである。サンプル数情報記憶部15での記憶は、RAM等における一時的な記憶でもよく、あるいは、長期的な記憶でもよい。サンプル数情報記憶部15は、所定の記録媒体(例えば、半導体メモリや磁気ディスク、光ディスクなど)によって実現されうる。
【0044】
平均処理部16は、ノイズキャンセル部13によるノイズキャンセル処理の前、あるいは、前後に音声信号及びノイズ信号に対して、または、ノイズキャンセル処理の後に音声信号のみに対して、サンプル数情報の示すサンプル数で平均化処理を行う。平均化処理は、例えば、移動平均処理などで実現することができる。なお、本実施の形態では、平均化処理として、移動平均処理を行う場合について説明する。図7は、サンプル数情報の示すサンプル数が「4」である場合の移動平均処理を行う回路の一例を示す図である。各遅延素子によって、1サンプル時間ずつ遅延されることによって、4個の連続したサンプルが加算され、最後に1/4されることによって、4個の連続したサンプルの平均がとられることになる。この処理が、音声信号の新たなサンプルが入力されるごとに行われることになる。なお、ノイズ信号に対しても、同様にして移動平均処理が行われることになる。また、サンプル数情報の示すサンプル数に応じて、図7で示される処理が変更されることは言うまでもない。
【0045】
変更情報受付部17は、サンプル数を変更する旨の情報である変更情報を受け付ける。この変更情報は、変更後のサンプル数を示す情報であってもよく、サンプル数の差分を示す情報であってもよい。
【0046】
変更情報受付部17は、例えば、入力デバイス(例えば、キーボードやマウス、タッチパネルなど)から入力された情報を受け付けてもよく、有線もしくは無線の通信回線を介して送信された情報を受信してもよく、所定の記録媒体(例えば、光ディスクや磁気ディスク、半導体メモリなど)から読み出された情報を受け付けてもよい。なお、変更情報受付部17は、受け付けを行うためのデバイス(例えば、モデムやネットワークカードなど)を含んでもよく、あるいは含まなくてもよい。また、変更情報受付部17は、ハードウェアによって実現されてもよく、あるいは所定のデバイスを駆動するドライバ等のソフトウェアによって実現されてもよい。
【0047】
変更部18は、変更情報受付部17が受け付けた変更情報に応じてサンプル数情報を変更する。変更情報が、変更後のサンプル数を示す情報である場合には、変更部18は、変更情報を用いて、サンプル数情報記憶部15で記憶されているサンプル数情報を上書きしてもよい。また、変更情報が、サンプル数の差分を示す情報である場合には、変更部18は、その変更情報と、サンプル数情報記憶部15で記憶されているサンプル数情報とを用いて、変更後のサンプル数情報を構成し、そのサンプル数情報で、サンプル数情報記憶部15で記憶されているサンプル数情報を上書きしてもよい。
【0048】
なお、図1では明記していないが、音声出力装置1における各種の処理の際に、音声信号や、ノイズ信号が一時的に図示しない記録媒体等において記憶されていてもよい。
【0049】
また、図1では明記していないが、音声信号やノイズ信号は、適宜、A/D変換や、D/A変換されることによって、デジタル信号に変換されてもよく、また、アナログ信号に変換されてもよいことは言うまでもない。
【0050】
また、この音声出力装置1は、音声通信システムや、音声記録システムとしても用いることができるものであり、音声出力装置1がどのように用いられるのかは限定されるものではない。
【0051】
次に、本実施の形態による音声出力装置1の動作について、図8のフローチャートを用いて説明する。なお、この図8のフローチャートでは、ノイズキャンセルの前に移動平均処理を行う場合について説明する。
【0052】
(ステップS101)音声出力装置1の図示しない制御部は、ノイズキャンセルの処理を開始するかどうか判断する。そして、開始する場合には、ステップS102に進み、そうでない場合には、開始するまで、ステップS101の処理を繰り返す。図示しない制御部は、例えば、ユーザがノイズキャンセルの処理を開始する旨の指示を入力した場合に、ノイズキャンセルの処理を開始すると判断してもよく、あるいは、第1のマイク11や第2のマイク12から、所定のレベル以上の音声信号やノイズ信号が入力されてきた場合に、ノイズキャンセルの処理を開始すると判断してもよい。
【0053】
(ステップS102)平均処理部16は、第1のマイク11から音声信号を取り込み、第2のマイク12からノイズ信号を取り込む。
【0054】
(ステップS103)平均処理部16は、取り込んだ音声信号とノイズ信号に対して、サンプル数情報記憶部15で記憶されているサンプル数情報の示すサンプル数で移動平均処理を行い、その平均処理の結果である音声信号とノイズ信号をノイズキャンセル部13に渡す。
【0055】
(ステップS104)ノイズキャンセル部13は、音声信号と、ノイズ信号とを用いて、音声信号からノイズ成分を除去する。
【0056】
(ステップS105)出力部14は、ノイズキャンセル部13によってノイズのキャンセルされた音声信号を出力する。
【0057】
(ステップS106)図示しない制御部は、ノイズキャンセルの処理を終了するかどうか判断する。そして、終了する場合には、ステップS101に戻り、そうでない場合には、ステップS102に戻る。なお、図示しない制御部は、例えば、ユーザがノイズキャンセルの処理を終了する旨の指示を入力した場合に、ノイズキャンセルの処理を終了すると判断してもよく、あるいは、第1のマイク11や第2のマイク12から音声信号やノイズ信号が入力されなくなった場合や、出力部14の出力する音声信号がしきい値以下のレベルである時間があらかじめ決められている時間以上になった場合(この場合には、発話者があらかじめ決められている時間以上発話を行っていないことになる)に、ノイズキャンセルの処理を終了すると判断してもよい。
なお、図8のフローチャートにおいて、電源オフや処理終了の割り込みにより処理は終了する。
【0058】
また、前述のように、移動平均処理をノイズキャンセルの後に行ってもよい。その場合には、図8のフローチャートに代えて、図9のフローチャートで示されるように処理が実行されることになる。図9のフローチャートにおいて、ステップS201〜S203以外の処理は、図8のフローチャートと同様であり、その説明を省略する。
【0059】
(ステップS201)ノイズキャンセル部13は、第1のマイク11から音声信号を取り込み、第2のマイク12からノイズ信号を取り込む。
【0060】
(ステップS202)ノイズキャンセル部13は、音声信号と、ノイズ信号とを用いて、音声信号からノイズ成分を除去する。
【0061】
(ステップS203)平均処理部16は、ノイズキャンセル後の音声信号に対して、サンプル数情報記憶部15で記憶されているサンプル数情報の示すサンプル数で移動平均処理を行い、その平均処理の結果である音声信号を出力部14に渡す。
【0062】
また、前述のように、移動平均処理をノイズキャンセルの前後に行ってもよい。その場合には、図8、図9のフローチャートに代えて、図10のフローチャートで示されるように処理が実行されることになる。図10のフローチャートにおいて、ステップS301以外の処理は、図8のフローチャートと同様であり、その説明を省略する。
【0063】
(ステップS301)平均処理部16は、ノイズキャンセル後の音声信号に対して、サンプル数情報記憶部15で記憶されているサンプル数情報の示すサンプル数で移動平均処理を行い、その平均処理の結果である音声信号を出力部14に渡す。
【0064】
なお、変更情報受付部17と、変更部18との処理は、変更情報受付部17が変更情報を受け付けると、変更部18がサンプル数情報を変更するものであり、すでに公知の情報変更の方法であるため、その処理のフローチャートの説明は省略する。
【0065】
次に、本実施の形態による音声出力装置1の動作について、具体例を用いて説明する。この具体例では、MRIにおいて音声出力装置1が用いられる場合について説明する。その場合には、図11で示されるように、シールドされているMRI室には、第1のマイク11と、第2のマイク12のみが配置され、音声処理室に、その他の構成要素が配置されることになる。ノイズキャンセル部13や、出力部14等が、MRIに起因する強磁場の影響を受けないようにするためである。また、第2のマイク12は、ダミーマイクであるとする。
【0066】
このような状況において、発話者としての被験者が発話すると、その音声を第1のマイク11が集音して取得し、音声信号に変換する。なお、第1のマイク11は、発話された音声をとらえるのが主たる目的であるが、結果として、MRI室で発生したノイズも一緒にとらえてしまうことになる。また、第2のマイク12は、MRIに起因する電磁誘導ノイズや、振動ノイズ等をとらえて、ノイズ信号に変換する。第2のマイク12は、ダミーマイクであるため、被験者の発話した音声をとらえることはない。
【0067】
その後、ノイズキャンセル部13によるノイズキャンセルや、平均処理部16による移動平均処理等が行われ、ノイズの抑圧された音声信号が出力部14によって出力されることになる。
【0068】
図12は、ノイズキャンセルを行った場合の波形1202と、行わない場合の波形1201との比較結果を示す図である。図12では、MRI実機の騒音を、MRI装置から離れた、電磁誘導ノイズの影響がない位置で録音し、その録音したMRI騒音をラジオカセットレコーダーで出力し、図1の装置にてキャンセル実験を行った例であり、発話者の発声した音声はとらえられていない。図12で示されるとおり、本実施の形態による音声出力装置1により良好なノイズキャンセル効果が得られたことが分かる。
【0069】
次に、本実施の形態で説明した平均化処理の効果について述べる。図15は、電磁誘導ノイズや振動の影響などが強い場での波形とそのキャンセル処理の実験結果を示す。原波形1501は、電磁誘導ノイズなどが強く混入したMRI騒音波形であり、ノイズキャンセル後の波形1502は原波形にキャンセル処理のみを施した結果である。この段階ではスパイク状のノイズが残っているが、ノイズキャンセル後に平均化処理ありの波形1503では、そのノイズが最終的に低減され、平均化処理の効果が示されている。
【0070】
図13,図14は、MRI実機で、被験者がガントリー内に入り、MRI装置が稼働した状態で、被験者の音声を取り、図1の装置にてノイズキャンセルした例である。図13,図14は、発話者の発声した音声も含まれた信号に対するノイズキャンセル処理の結果を示す実験結果である。図13で示されるように、キャンセルされたノイズのレベルよりも、発話者の発声した音声のレベルの方が十分に大きいことが分かる。したがって、ノイズの除去された音声信号によって、発話者の発声した音声をクリアに聞き取ることができうる。
【0071】
なお、図14で示されるように、MRIのトリガー信号も、発話者の音声信号と同時に、計測、記録、表示できるようにしてもよい。また、各実験において、第2のマイク12として、ダミーマイクではなく、通常のマイクを用いた。
【0072】
以上、本実施の形態による音声出力装置1により、MRI室内の被験者の音声を高S/Nにて出力することができ、結果として検査者との自由な通話も可能となることが期待できる。
【0073】
なお、本実施の形態による音声出力装置1は、MRIにおいて用いられるものでなくてもよい。例えば、騒音や電磁誘導ノイズ等の激しいところにおいて用いられてもよい。具体的には、本実施の形態による音声出力装置1は、発電所や空港、ヘリコプター、航空機、船舶、オートレース場等において用いられてもよい。
【0074】
以上のように、本実施の形態による音声出力装置1によれば、第1のマイク11が取得した、発話者の発声した音声に重畳されているノイズを、第2のマイク12が取得したノイズ信号を用いて除去することができる。したがって、S/N(SN比)の高い、クリアな音声を出力できることになる。
【0075】
従来のMRI環境下では、マイクに強烈なMRI誘導ノイズと、MRI騒音が入ると共に音声も入るため、マイクアンプが飽和しないようにするために、アンプのゲインを低く設定せざるを得なかった。そのため、所望の音声に対する感度が低くなっていた。一方、本実施の形態による音声出力装置1を用いることによって、MRI誘導ノイズをキャンセルすることができ、また、MRI騒音に対する低感度化を実現することができているため、マイクアンプゲインを音声を出力するのに適したレベルにまで上げることが可能となり、高S/N化を実現することができる。
【0076】
また、MRIにおいて、被験者との対話をしながらMRI画像を撮影したい場合がある。そのような場合には、被験者があまり動かないことが求められるため、発声における被験者の動きを小さくしたい(すなわち、被験者があまり大きな声を出さなくてもよいようにしたい)という要請がある。そのような状況において、本実施の形態による音声出力装置1を用いることによって、被験者が大きな声を出さなくても、MRIの強烈なノイズ環境下における被験者の発声した音声からノイズを効率的に除去することができ、被験者のクリアな音声を取得することができるようになる。その結果として、例えば、会話中の被験者の脳活動計測を良好に行うことができる。
【0077】
また、ノイズキャンセル処理と共に、移動平均処理を併用することによって、電磁誘導ノイズや騒音に対するキャンセル処理効果を向上させることができ、発話者の発声した音声をさらに高S/Nで取得することができるようになる。
【0078】
なお、本実施の形態では、音声出力装置1がサンプル数情報記憶部15で記憶されているサンプル数情報を変更するために、変更情報受付部17と、変更部18とを備えた場合について説明したが、サンプル数情報を変更しない場合には、音声出力装置1は、変更情報受付部17と、変更部18とを備えていなくてもよい。
【0079】
また、本実施の形態では、音声出力装置1が移動平均処理を行う場合について説明したが、音声出力装置1が移動平均処理を行わない場合には、音声出力装置1は、サンプル数情報記憶部15と、平均処理部16とを備えていなくてもよい。
【0080】
また、本実施の形態では、第1のマイク11、及び第2のマイク12での音声信号やノイズ信号の取得から、ノイズのキャンセルされた音声信号の出力までを一連の処理として実行する場合について説明したが、第1のマイク11で取得した音声信号や、第2のマイク12で取得したノイズ信号を、まず蓄積し、その後に、ノイズキャンセルや、移動平均処理等の処理を実行するようにしてもよい。この場合には、ノイズキャンセル後の音声信号をモニタして、その音声信号の適否を判定した後に、適切でなければ、ノイズキャンセルや、移動平均処理の設定を変更しながら、繰り返してノイズキャンセル等の処理を実行することができるようになる。図16は、音声信号と、ノイズ信号とを蓄積する場合における音声出力装置2の構成を示すブロック図である。図16で示されるように、音声出力装置2は、第1のマイク11と、第2のマイク12と、ノイズキャンセル部13と、出力部14と、サンプル数情報記憶部15と、平均処理部16と、変更情報受付部17と、変更部18と、音声信号蓄積部21と、ノイズ信号蓄積部22とを備える。なお、音声信号蓄積部21と、ノイズ信号蓄積部22以外の構成及び動作は、上記説明と同様であり、その説明を省略する。
【0081】
音声信号蓄積部21は、第1のマイク11が取得した音声信号を所定の記録媒体に蓄積する。この記録媒体は、例えば、半導体メモリや、光ディスク、磁気ディスク等であり、音声信号蓄積部21が有していてもよく、あるいは音声信号蓄積部21の外部に存在してもよい。また、この記録媒体は、音声信号を一時的に記憶するものであってもよく、そうでなくてもよい。
【0082】
ノイズ信号蓄積部22は、第2のマイク12が取得したノイズ信号を所定の記録媒体に蓄積する。この記録媒体は、例えば、半導体メモリや、光ディスク、磁気ディスク等であり、ノイズ信号蓄積部22が有していてもよく、あるいはノイズ信号蓄積部22の外部に存在してもよい。また、この記録媒体は、撮影画像を一時的に記憶するものであってもよく、そうでなくてもよい。
【0083】
なお、第1のマイク11が取得した音声信号と、第2のマイク12が取得したノイズ信号とを記録媒体に蓄積する場合に、両者の時間的な対応をとることができるように蓄積しておくことが好適である。後のノイズキャンセル等の処理において、両者の同期をとることができるようにするためである。例えば、同一のタイムコードを付与して蓄積することによって、両者の時間的な対応をとることができるようにしてもよく、あるいは、同一ファイルの2個のトラックに音声信号とノイズ信号とを蓄積することによって、両者の時間的な対応をとることができるようにしてもよい。
【0084】
ここで、ノイズキャンセルについて簡単に説明しておく。ノイズキャンセルおいては、FIR(Finite Impulse Response)フィルタがよく用いられている。図17は、ノイズキャンセルについて説明するための図である。図17において、第1のマイク11の測定した音声信号をDk、第2のマイク12の測定したノイズ信号をUkとしている。Dkにも、ノイズが混入する。ノイズキャンセルでは、Dkに混入したノイズを、Ukを用いて精度よく推定し、キャンセルしなければならない。具体的には、デジタルフィルタ31が、Dkに混入したノイズの推定値Xkを出力する。そして、減算器32が、その推定値Xkを音声信号Dkから減算することによって、推定誤差Ekを得る。また、フィルタパラメータ計算処理部33は、推定誤差Ekを最小化するようにデジタルフィルタ31のパラメータを計算し、その計算したパラメータをデジタルフィルタ31に設定する。この推定誤差Ekが、ノイズキャンセル部13の出力となる。
【0085】
FIRフィルタでは、次式のように、m個のフィルタパラメータW,…,Wm−1を用い、Xkを推定する計算が行われる。フィルタパラメータWの計算では、最小2乗推定法やLMS(Least Mean Square)法など、各種の計算方法が知られている。
Xk=θ
θ=[W,…,Wm−1
=[U,…,Uk−m+1
【0086】
なお、ノイズキャンセルなどの波形処理については、例えば、次の文献を参照されたい。
文献:足立、佐野、「能動騒音制御におけるシステム同定の役割」、システム/制御/情報、Vol.41,No.2,p.64−72、1997年
【0087】
上記実施の形態によるノイズキャンセル部13では、図6で示される減算処理のみが行われてもよく、図17で示されるFIRフィルタ等を用いたノイズキャンセル処理のみが行われてもよく、あるいは、その両者が行われてもよい。減算処理と、FIRフィルタ等を用いたノイズキャンセル処理との両方を用いる場合には、まず、減算処理を行った後に、FIRフィルタ等によって、ノイズをキャンセルしてもよい。その場合には、減算処理後の複数個(例えば、20個ほど)の過去の信号から、ノイズ波形を予測推定するフィルタを構成し、減算処理後の現在の信号から、その推定値を減算することにより、ノイズをキャンセルするようにしてもよい。その際に、適宜、AD変換や、DA変換等をその処理の前後や途中で行ってもよい。また、それらの処理の前後や途中において平均化処理が行われてもよいことは前述の通りである。
【0088】
また、上記実施の形態では、音声出力装置がスタンドアロンである場合について説明したが、音声出力装置は、スタンドアロンの装置であってもよく、サーバ・クライアントシステムにおけるサーバ装置であってもよい。後者の場合には、出力部は、通信回線を介して情報を出力することになる。また、ノイズキャンセル部13や、平均処理部16も、通信回線を介して第1のマイク11からの音声信号や、第2のマイク12からのノイズ信号を受け付けるようにしてもよい。
【0089】
また、上記実施の形態において、各処理または各機能は、単一の装置または単一のシステムによって集中処理されることによって実現されてもよく、あるいは、複数の装置または複数のシステムによって分散処理されることによって実現されてもよい。
【0090】
また、上記実施の形態において、各構成要素が実行する処理に関係する情報、例えば、各構成要素が受け付けたり、取得したり、選択したり、生成したり、送信したり、受信したりした情報や、各構成要素が処理で用いるしきい値や数式、アドレス等の情報等は、上記説明で明記していない場合であっても、図示しない記録媒体において、一時的に、あるいは長期にわたって保持されていてもよい。また、その図示しない記録媒体への情報の蓄積を、各構成要素、あるいは、図示しない蓄積部が行ってもよい。また、その図示しない記録媒体からの情報の読み出しを、各構成要素、あるいは、図示しない読み出し部が行ってもよい。
【0091】
また、上記実施の形態において、音声出力装置に含まれる2以上の構成要素が通信デバイスや入力デバイス等を有する場合に、2以上の構成要素が物理的に単一のデバイスを有してもよく、あるいは、別々のデバイスを有してもよい。
【0092】
また、上記実施の形態において、各構成要素は専用のハードウェアにより構成されてもよく、あるいは、ソフトウェアにより実現可能な構成要素については、プログラムを実行することによって実現されてもよい。例えば、ハードディスクや半導体メモリ等の記録媒体に記録されたソフトウェア・プログラムをCPU等のプログラム実行部が読み出して実行することによって、各構成要素が実現され得る。なお、上記実施の形態における音声出力装置を実現するソフトウェアは、以下のようなプログラムである。つまり、このプログラムは、コンピュータを、発話者の発声した音声を取得する第1のマイクが取得した音声信号と、ノイズを取得する第2のマイクが取得したノイズ信号とを用いて、前記音声信号から前記ノイズ信号をキャンセルするノイズキャンセル部と、前記ノイズキャンセル部によってノイズのキャンセルされた音声信号を出力する出力部として機能させるためのものである。
【0093】
なお、上記プログラムにおいて、上記プログラムが実現する機能には、ハードウェアでしか実現できない機能は含まれない。例えば、情報を出力する出力部などにおけるモデムやインターフェースカードなどのハードウェアでしか実現できない機能は、上記プログラムが実現する機能には少なくとも含まれない。
【0094】
また、このプログラムは、サーバなどからダウンロードされることによって実行されてもよく、所定の記録媒体(例えば、CD−ROMなどの光ディスクや磁気ディスク、半導体メモリなど)に記録されたプログラムが読み出されることによって実行されてもよい。
【0095】
また、このプログラムを実行するコンピュータは、単数であってもよく、複数であってもよい。すなわち、集中処理を行ってもよく、あるいは分散処理を行ってもよい。
【0096】
図18は、上記プログラムを実行して、上記実施の形態による音声出力装置を実現するコンピュータの外観の一例を示す模式図である。上記実施の形態は、コンピュータハードウェア及びその上で実行されるコンピュータプログラムによって実現される。
【0097】
図18において、コンピュータシステム100は、CD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)ドライブ105、FD(Flexible Disk)ドライブ106を含むコンピュータ101と、キーボード102と、マウス103と、モニタ104とを備える。
【0098】
図19は、コンピュータシステムを示す図である。図19において、コンピュータ101は、CD−ROMドライブ105、FDドライブ106に加えて、CPU(Central Processing Unit)111と、ブートアッププログラム等のプログラムを記憶するためのROM(Read Only Memory)112と、CPU111に接続され、アプリケーションプログラムの命令を一時的に記憶すると共に、一時記憶空間を提供するRAM(Random Access Memory)113と、アプリケーションプログラム、システムプログラム、及びデータを記憶するハードディスク114と、CPU111、ROM112等を相互に接続するバス115とを備える。なお、コンピュータ101は、LANへの接続を提供する図示しないネットワークカードを含んでいてもよい。
【0099】
コンピュータシステム100に、上記実施の形態による音声出力装置の機能を実行させるプログラムは、CD−ROM121、またはFD122に記憶されて、CD−ROMドライブ105、またはFDドライブ106に挿入され、ハードディスク114に転送されてもよい。これに代えて、そのプログラムは、図示しないネットワークを介してコンピュータ101に送信され、ハードディスク114に記憶されてもよい。プログラムは実行の際にRAM113にロードされる。なお、プログラムは、CD−ROM121やFD122、またはネットワークから直接、ロードされてもよい。
【0100】
プログラムは、コンピュータ101に、上記実施の形態による音声出力装置の機能を実行させるオペレーティングシステム(OS)、またはサードパーティプログラム等を必ずしも含んでいなくてもよい。プログラムは、制御された態様で適切な機能(モジュール)を呼び出し、所望の結果が得られるようにする命令の部分のみを含んでいてもよい。コンピュータシステム100がどのように動作するのかについては周知であり、詳細な説明は省略する。
【0101】
また、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0102】
以上より、本発明による音声出力装置等によれば、マイクで取得した音声信号からノイズを除去することができるという効果が得られ、騒音下で発話者の発声した音声を効果的に取得して出力する装置等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明の実施の形態1による音声出力装置の構成を示すブロック図
【図2】同実施の形態におけるマイクの一例を示す図
【図3】同実施の形態における複合圧電体について説明するための図
【図4】同実施の形態におけるマイクの双指向性について説明するための図
【図5】同実施の形態における第1及び第2のマイクの配置について説明するための図
【図6】同実施の形態におけるノイズのキャンセルについて説明するための図
【図7】同実施の形態における移動平均処理について説明するための図
【図8】同実施の形態による音声出力装置の動作を示すフローチャート
【図9】同実施の形態による音声出力装置の動作を示すフローチャート
【図10】同実施の形態による音声出力装置の動作を示すフローチャート
【図11】同実施の形態による音声出力装置の使用の一例を示す図
【図12】同実施の形態における実験結果を示す図
【図13】同実施の形態における実験結果を示す図
【図14】同実施の形態における実験結果を示す図
【図15】同実施の形態における平均化処理の効果を説明するための実験結果を示す図
【図16】同実施の形態による音声出力装置の他の一例を示すブロック図
【図17】ノイズキャンセルについて説明するための図
【図18】同実施の形態におけるコンピュータシステムの外観一例を示す模式図
【図19】同実施の形態におけるコンピュータシステムの構成の一例を示す図
【符号の説明】
【0104】
1、2 音声出力装置
11 第1のマイク
12 第2のマイク
13 ノイズキャンセル部
14 出力部
15 サンプル数情報記憶部
16 平均処理部
17 変更情報受付部
18 変更部
21 音声信号蓄積部
22 ノイズ信号蓄積部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発話者の発声した音声を取得する第1のマイクと、
ノイズを取得する第2のマイクと、
前記第1のマイクが取得した音声信号と、前記第2のマイクが取得したノイズ信号とを用いて、前記音声信号から前記ノイズ信号をキャンセルするノイズキャンセル部と、
前記ノイズキャンセル部によってノイズのキャンセルされた音声信号を出力する出力部と、を備えた音声出力装置。
【請求項2】
前記第2のマイクは、前記第1のマイクと同様の電気的特性を有し、空気の振動をとらえないダミーマイクである、請求項1記載の音声出力装置。
【請求項3】
前記第2のマイクが取得するノイズは、電磁誘導ノイズ、高騒音ノイズ、振動ノイズ、振動に起因する電磁誘導ノイズのいずれか1以上のノイズである、請求項1または請求項2記載の音声出力装置。
【請求項4】
前記電磁誘導ノイズ、前記高騒音ノイズ、前記振動ノイズ、前記振動に起因する電磁誘導ノイズは、MRI装置に起因するものである、請求項3記載の音声出力装置。
【請求項5】
前記第1のマイクが取得した音声信号を蓄積する音声信号蓄積部と、
前記第2のマイクが取得したノイズ信号を蓄積するノイズ信号蓄積部と、をさらに備え、
前記ノイズキャンセル部は、前記音声信号蓄積部が蓄積した音声信号と、前記ノイズ信号蓄積部が蓄積したノイズ信号とを用いて、前記音声信号から前記ノイズ信号をキャンセルする、請求項1から請求項4のいずれか記載の音声出力装置。
【請求項6】
前記第1のマイクは双指向性のものであり、
前記第2のマイクが空気の振動をとらえるものである場合に、当該第2のマイクは双指向性のものである、請求項1から請求項5のいずれか記載の音声出力装置。
【請求項7】
前記第1のマイクの形状は、発話者の口の形状に合うものである、請求項1から請求項6のいずれか記載の音声出力装置。
【請求項8】
前記第1のマイク、及び前記第2のマイクは、圧電体素子が有機物中に配置された複合圧電体により構成されたものである、請求項1から請求項7のいずれか記載の音声出力装置。
【請求項9】
前記圧電体素子は、分極されている、請求項8記載の音声出力装置。
【請求項10】
前記ダミーマイクは、圧電体素子が有機物中に配置された複合圧電体により構成されたものであり、
当該複合圧電体は、分極されていない、請求項2記載の音声出力装置。
【請求項11】
平均化処理で用いるサンプル数を示すサンプル数情報が記憶されるサンプル数情報記憶部と、
前記ノイズキャンセル部によるノイズキャンセル処理の前、あるいは、前後に音声信号及びノイズ信号に対して、または、ノイズキャンセル処理の後に音声信号のみに対して、前記サンプル数情報の示すサンプル数で平均化処理を行う平均処理部と、をさらに備えた、請求項1から請求項10のいずれか記載の音声出力装置。
【請求項12】
サンプル数を変更する旨の情報である変更情報を受け付ける変更情報受付部と、
前記変更情報受付部が受け付けた変更情報に応じて前記サンプル数情報を変更する変更部と、をさらに備えた請求項11記載の音声出力装置。
【請求項13】
発話者の発声した音声を取得する第1のマイクが取得した音声信号と、ノイズを取得する第2のマイクが取得したノイズ信号とを用いて、前記音声信号から前記ノイズ信号をキャンセルするノイズキャンセルステップと、
前記ノイズキャンセルステップでノイズのキャンセルされた音声信号を出力する出力ステップと、を備えた音声出力方法。
【請求項14】
コンピュータを、
発話者の発声した音声を取得する第1のマイクが取得した音声信号と、ノイズを取得する第2のマイクが取得したノイズ信号とを用いて、前記音声信号から前記ノイズ信号をキャンセルするノイズキャンセル部と、
前記ノイズキャンセル部によってノイズのキャンセルされた音声信号を出力する出力部として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−188858(P2009−188858A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−28445(P2008−28445)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(301022471)独立行政法人情報通信研究機構 (1,071)
【出願人】(000153421)株式会社日立アドバンストシステムズ (9)
【Fターム(参考)】