説明

音声放送提供方法及び装置

【課題】音声放送(既存のラジオ放送等)の難聴エリアを救済することが可能な音声放送提供方法及び装置を提供する。
【解決手段】音声データ取得部2が取得した音声放送用の音声データ、及び再生する音声放送を選択するための選択画面を受信端末に表示させるために選択画面データ生成部3が生成した選択画面データに基づいて、TSパケット生成部4がTSパケットを生成する。多重化部6は、TSパケット生成部4から供給されるTSパケットを多重化してワンセグ放送用のトランスポートストリーム(TS)を生成し、ワンセグ送信機7が、多重化部6から供給されるTSを、指定された地上デジタルテレビジョン放送チャンネルのワンセグ放送用の放送波に変換して送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地上デジタルテレビジョン放送のワンセグ放送波を用いて音声放送を提供する音声放送提供方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ラジオ放送やテレビ放送の受信が困難な難聴エリアや難視聴エリアが存在する。特にAM放送は、夜間の外国放送の混信によって難聴エリアが多数発生することが知られている。
【0003】
しかし、地上デジタルテレビ放送については、難視聴エリアを解消するために、地上デジタルテレビ放送波を受信し、難視聴エリアに向けて再送信するように構成された受信障害対策中継局、いわゆるギャップフィラーによる救済策が進められているところである(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−134020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
テレビ放送の難視聴エリアは、OFDM(直交波周波数分割多重方式)の特徴を生かしたSFN(Single Frequency Network)技術により解消することが可能となったが、ラジオ放送の難聴エリアは、周波数の割り当てに限界があり、多くの難聴改善要望があるにもかかわらず、これを解消することができないという問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するために、音声放送(既存のラジオ放送等)の難聴エリアを救済することが可能な音声放送提供方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に当たり発明者は、日本で実用化されている地上デジタルテレビジョン放送(ISDB−T方式)に着目した。
このISDB−T方式では、1チャンネル分の放送信号を伝送する周波数帯域(帯域幅6MHz)を13のセグメントで構成し、多くの場合は、A階層1セグメントとB階層12セグメントの2階層で放送が行われている。そして、周波数帯域の中央に位置するA階層1セグメントが部分受信、即ち、ポータブル受信機での受信を想定して実施されるサービスを提供するいわゆるワンセグ放送に用いられ、B階層12セグメントが固定受信機向けサービスに用いられている。
【0008】
また、地上デジタルテレビジョン放送の運用規定「ARIB TR−B14」には、送り手側は、ワンセグ放送波として、次のサービス信号を多重することが規定されている。即ち、「簡易動画」「AAC音声」「データカルーセル」「字幕」「イベントメッセージ」である。また、「AAC音声」は、デジタル圧縮方式であるMPEG2の音声圧縮方式であり、モノ、ステレオ、マルチチャンネル、デュアルモノおよび音質の高低(Sampling Rate )を指定することができる。但し、ワンセグ放送は、他のセグメント群の放送とは異なり、モノ、ステレオ、デュアルモノのみ(マルチチャンネル以外)を利用できる規格になっている。
【0009】
そして、上記目的を達成するためになされた請求項1に記載の発明は、地上デジタルテレビジョン放送波1チャンネルのうち中央のワンセグメントのみを使用して、複数の音声放送を提供する音声放送提供方法であって、ワンセグサービスで利用可能な音声モードの一つであるデュアルモノラルを用い、このデュアルモノラルを構成する二つのモノラル音声として、二つの音声放送を提供することを特徴とする。
【0010】
つまり、ワンセグサービスにおいて、簡易映像や音声を用いたテレビジョン番組の視聴等を可能とするために用意されている機能を利用して、複数の音声放送を提供する。なお、音声放送とは、具体的には既存のラジオ放送(AM/FM)であってもよいし、自主制作のラジオ放送等であってもよい。
【0011】
従って、本発明の音声放送提供方法によれば、既存のラジオ放送の難聴エリアであっても、地上デジタルテレビジョン放送の視聴が可能であれば、ワンセグ放送波を利用することによって、音声放送の難聴エリアの救済を図ることができる。
【0012】
また、ワンセグ放送では、通常の簡易映像、音声による番組視聴(サイマル放送)に加え、データ放送が利用でき、そのデータ放送において、動画や音声、静止画、図形、テキストなど、データ放送画面を構成する個々の要素をモノメディアと呼ぶ。そして、デジタル放送信号の中には、これらモノメディアのほかに、モノメディアを画面上に配置するための情報や、視聴者がリモコンを使って対話的に情報を取得する仕組みなどを記載した情報を、別途パケット化して伝送されている。
【0013】
そこで、ワンセグ放送波を利用した音声放送の別の提供方法としては、請求項2に記載のように、ワンセグサービスが提供するデータ放送(データカルーセル)を用い、このデータ放送を構成するモノメディアの一つとして、少なくとも一つの音声放送を提供してもよい。
【0014】
これら請求項1,2のいずれの方法でも、受信端末側に新たな機能の追加を強いることなく、既存の機能を用いて、ワンセグ放送波を利用した音声放送の提供を実現することができる。
【0015】
次に、請求項3に記載の発明は、地上デジタルテレビジョン放送波1チャンネルのうち中央のワンセグメントのみを使用して携帯端末向けサービスを提供するワンセグサービス用の放送波を用いて音声放送を提供する音声放送提供装置であって、取得手段が、音声放送用の音声信号を符号化した符号化データ列を取得し、TSパケット生成手段の音声パケット生成部が、その取得した符号化データ列をエレメントストリームとして、該エレメントストリームから、ワンセグサービスで利用可能な音声モードの一つであるデュアルモノラルのモノラル音声として受信機で再生されるように設定されたTSパケットを生成する。
【0016】
そして、多重化手段が、TSパケット生成手段によって生成されたTSパケットを多重化してワンセグサービス用のトランスポートストリームを生成し、送信手段が、多重化手段にて生成されたトランスポートストリームを、予め指定されたチャンネルのワンセグサービス用の放送波として送信する。
【0017】
つまり、本発明の音声放送提供装置は、請求項1に記載の音声放送提供方法を実現する装置であり、これと同様の効果を得ることができる。
なお、本発明の音声放送提供装置が提供する音声放送には、請求項6に記載のように、少なくとも、既存のラジオ放送が含まれていることが望ましが、これに限らず、多様な自主制作された音声放送が含まれていてもよい。
【0018】
また、本発明の音声放送提供装置は、請求項4に記載のように構成されていてもよい。
即ち、文書データ生成手段が、予め規定されたデータ放送用記述言語で記述され、再生するモノメディアを選択させるための選択画面を受信機に表示させると共に、選択画面上での選択結果に従ったモノメディアの再生を行う処理を受信機に実行させるための文書データを生成する。この時、文書データ生成手段は、符号化データ列によって再生される音声放送を、データ放送を構成するモノメディアの一つとして含んだ文書データを生成する。
【0019】
そして、TSパケット生成手段のデータパケット生成部が、文書データ生成手段が生成した文書データ、及び取得手段が取得した符号化データ列から、ワンセグサービスが提供するデータ放送用のTSパケットを生成する。
【0020】
つまり、本発明の音声放送提供装置は、請求項2に記載の音声放送提供方法を実現する装置であり、これと同様の効果を得ることができる。
次に、請求項5に記載の音声放送提供装置では、受信手段が、緊急警報放送を受信すると、緊急時制御手段が、取得手段に緊急警報放送の音声信号の符号化を行わせる。これにより、緊急警報放送の音声信号は、TSパケット生成手段、多重化手段、送信手段を介して、ワンセグサービス用の放送波として送信される。
【0021】
これように構成された音声放送提供装置によれば、例えば、ワンセグサービス用の放送波を用いた音声放送として自主制作された音声放送を提供している場合であっても、速やかに緊急警報放送に切り替えて、これを提供することができる。
【0022】
なお、本発明は、地上デジタルテレビジョン放送1チャンネル13セグメントのうち、中央のワンセグメントのみを利用してサービスする方法であり、現実には、免許制度が存在しないことから、あくまでも将来の放送形態の一つのあり方である。
【0023】
他にも、将来の放送形態の他のあり方としては、複数の、例えば7波の地上デジタル放送の信号から7つのワンセグ信号を取り出し、これら7つのワンセグ信号と自主放送のための6つのワンセグ信号とを束ね、地上波1チャンネル分の信号と同じ13セグメントで構成するOFDM信号を生成し、これらをまとめて放送するワンセグ連結再送信システムが提案されている(例えば、特開2008−153958号参照)。
【0024】
しかしながら、アナログ放送が終了し、ワンセグ受信機の普及を見越した将来の放送形態のあり方を考えるならば、NHKが提案する連結再送信ならびにワンセグのみの放送や現行音声デジタル放送方式である、ワンセグ〜最大3セグまで可能な方式の制度化等が想定される。
【0025】
ところで、海底トラフ近傍に設置された地震計により大地震発生または発生の兆候を事前に検知して、大地震到来の10秒以内に緊急警報放送を発信するシステムの開発が始まろうとしているところである。
【0026】
しかし、多くの人々は、いざというとき、ラジオやテレビを視聴しているとは限らず、むしろ携帯端末を常時身近なところに置いているか身につけていることが圧倒的に多く、今後は更にその傾向が強まるものと考えられる。従って、早晩、ワンセグ機能付き携帯が最も重要な情報受信手段になることは確実である。
【0027】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたもので、現状において物理的には実現できるが、国家の放送制度としては存在しない方式を前提としている。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】音声放送提供装置の全体構成を示すブロック図。
【図2】携帯端末で表示される音声放送の選択画面の一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
<全体構成>
図1は、本発明が適用された音声放送提供装置1の全体構成を示すブロック図である。
【0030】
なお、音声放送提供装置1は、ワンセグサービス用の放送波を用いて、複数の音声放送(AM/FMラジオ放送や自主制作ラジオ放送)を提供する装置である。
図1に示すように、音声放送提供装置1は、音声放送用の音声データを取得する音声データ取得部2と、再生する音声放送を選択するための選択画面を受信端末に表示させる選択画面データを生成する選択画面データ生成部3と、音声データ取得部2により取得された音声データ及び選択画面データ生成部3で生成された選択画面データに基づいてTSパケットを生成するTSパケット生成部4と、TSパケット生成部4から供給されるTSパケットを多重化してワンセグ放送用のトランスポートストリーム(TS)を生成する多重化部6と、多重化部6から供給されるTSを、予め指定された地上デジタルテレビジョン放送チャンネルのワンセグ放送用の放送波に変換して送信するワンセグ送信機7と、上記各部を制御する制御部8とを備えている。
【0031】
<音声データ取得部>
音声データ取得部2は、それぞれが異なるラジオ放送を受信する複数のラジオ放送受信機からなるラジオ放送受信機群21と、自主制作のラジオ放送番組を制作するための自主放送制作設備22と、ラジオ放送受信機群21及び自主放送制作設備22からの供給される音声信号を、制御部8からの選択信号に従ってM個(本実施形態ではM=3)選択するセレクタ23と、セレクタ23で選択された音声信号をそれぞれA/D変換して符号化するM個のAD変換/符号化部24〜26とを備えている。
【0032】
ラジオ放送受信機群21を構成するラジオ放送受信機は、既存のアナログラジオ(AM/FM)放送波を受信するものであり、指定された周波数の放送波を受信し、その受信信号を復調してアナログの音声信号をセレクタ23に供給する。また、自主放送制作設備22も、アナログの音声信号をセレクタ23に供給する。特に、ラジオ放送受信機群21では、いずれかのラジオ放送受信機が緊急警報放送信号を受信した場合は、その旨を制御部8に通知するように構成されている。
【0033】
AD変換/符号化部24〜26は、いずれも制御部8からの指令によって設定されたサンプリング速度,符号化方式により、セレクタ23を介して供給される音声信号をAD変換し、更に、AD変換されたデータを符号化する。
【0034】
このうち、二つのAD変換/符号化部24,25は、ストリーム型の伝送を行うための符号化データ列(ES)を作成するものであり、設定可能なサンプリング速度や符号化方式がARIB標準規格で規定されている(MPEG−2AAC音声,48kHz又は24kHz、モノラル)。
【0035】
一方、他の一つのAD変換/符号化部26は、ワンセグ放送が提供するデータ放送(カルーセル型の伝送を行う)によって提供する符号化データ列(セグメント)を作成するものであり、サンプリング速度や符号化方式について、特に規定されてはいないため、任意のサンプリング速度、符号化方式に設定することが可能である。
【0036】
<TSパケット生成部>
TSパケット生成部4は、AD変換/符号化部24,25から供給される音声信号を符号化した符号化データ列をES(Elementary Stream )とし、このESからストリーム型で伝送されるTSパケット(以下「音声放送用パケット」とも言う)を生成する音声放送用パケット生成部41と、AD変換/符号化部26から供給される音声信号を符号化した符号化データ列や、選択画面データ生成部3から供給される選択画面データをセグメント化し、これらセグメントから、カルーセル型で伝送されるTSパケット(以下「データ放送用パケット」とも言う)を生成するデータ放送用パケット生成部42とを備えている。
【0037】
なお、音声放送用パケット生成部41では、ESを、デコードや提示に都合のよい長さに区切ってヘッダを付加することによって、可変長の音声PES(Packetized Elementary Stream)を生成し、この音声PESを分割することで、固定長のTSパケットを生成する。
【0038】
また、PESのヘッダには、ストリーム形式を識別するストリームIDが含まれ、また、TSパケットのヘッダには、どのESに属するかを識別するPID(Packet Identifier )が含まれている。
【0039】
つまり、PIDによって、当該TSパケットは、どのESに属するかがわかり、また、TSパケットから再生されたPESのヘッダに含まれるストリームIDから、符号化形式等の識別が可能となる。
【0040】
一方、データ放送用パケット生成部42では、一つ又は複数のセグメントによってTSパケットを構成する。また、各セグメントは、上述したように、選択画面データ生成部3で生成された選択画面データや、データ放送によって再生可能なモノメディアの実体である符号化データ列によって構成される。
【0041】
<多重化部>
多重化部6では、TSパケット生成部4から供給されるTSパケットを、TSパケットによってどのような信号(映像,音声,データ放送)がどのような信号形式で送られているか等の情報であるPSI(Program Specific Information)を格納したTSパケットと共に多重化してワンセグ放送用のTSを生成する。
【0042】
なお、PSIは、ISO/IEC13818−1(MPEG−2 Systems)に定義される信号であり、TSに含まれる番組毎に用意され、その番組を構成する信号(映像,音声,データ放送)と、当該信号の伝送に用いるTSパケットのPIDとの対応関係を記述したPMT(Program Map Table )や、PID=0に設定されたTSパケットに格納され、TSに含まれる番組と、その番組のPMTを格納するTSパケットのPIDとの対応関係を記述したPAT(Program Association Table )等からなる周知のものである。
【0043】
<送信機>
送信機7では、一次変調としてQPSK(またはDQPSK)を用い、例えば、ガード比が1/8,畳み込み符号化率が1/2となるよにOFDM変調を行ってのワンセグ放送を生成する。なお、この場合、ワンセグ放送の伝送レートは312kbpsとなる。
【0044】
<選択画面データ生成部>
ここで、図2は、選択画面データ生成部3が生成する選択画面データによって、受信端末Tで表示される選択画面の一例である。
【0045】
図2に示すように、選択画面には、音声モードとして、デュアルモノ音声を提供する機能を用いて提供される二つの音声放送のいずれかを選択して再生するための表示D1と、データ放送を構成するモノメディアの一つとして提供される音声放送を選択して再生するための表示D2とからなる。
【0046】
この選択画面上では、携帯のボタン操作によってカーソルを移動させることによって、再生する音声放送を選択することができ、更に、確定用のボタン操作によって再生を開始するように構成されている。
【0047】
なお、上述したように、デュアルモノ音声を利用した音声放送は、「ストリーム型」であり、リアルタイムでの長時間の連続放送が可能となる。一方、データ放送により提供される音声放送は、「カルーセル型」であり、ある制限された時間分の放送内容が、繰り返し提供され、時間帯毎に提供内容を変更するように構成されている。
【0048】
なお、選択画面データは、XMLをベースとする放送用マルチメディア記述言語(BML:Broadcast Markup Language 等)によって記述される。
<制御部>
制御部8は、周知のマイクロコンピュータからなり、図示しない外部入力インタフェース(キーボード,マウス,リモートコントローラ等)からの入力やサイマル放送部5からの通知に従って、各種指令を生成する。
【0049】
具体的に、制御部8は、音声データ取得部2に対しては、どの音源(ラジオ放送受信機群21,自主放送制作設備22)からの音声信号を、デュアルモノの音声とするか、データ放送のモノメディアとするかを、セレクタ23に選択させるための選択信号を生成すると共に、その選択に応じて、AD変換/符号化部24〜26におけるサンプリング速度や符号化方式を設定するための設定信号を出力する。
【0050】
また、制御部8は、その設定に応じて、選択画面データ生成部3に対して、選択画面データの生成に必要な情報(セレクタ23によって選択されたチャンネルや放送内容等)を提供する。
【0051】
なお、制御部8は、緊急警報放送信号を受信した旨を表す通知をラジオ放送受信機群21から受けた場合、セレクタ23に対して、緊急警報放送信号を受信したラジオ放送受信機からの音声信号を全てのAD変換符号化部24〜26に供給させるための指令を出力する。
【0052】
<音声放送提供装置での動作>
このように構成された音声放送提供装置1では、ワンセグ放送によって、セレクタ23を介して選択されたラジオ放送又は自主放送のうちいずれか二つの音声放送をストリーム形式(デュアルモノ)により、また、これらの音声放送から抽出した少なくとも一つの番組をデータ放送のモノメディアとして提供する。このとき、再生する音声放送を選択するための選択画面を受信端末に表示させる選択画面データも提供する。
【0053】
但し、ラジオ放送受信機群21が緊急警報放送信号を受信した場合には、ワンセグ放送によって提供される全ての音声放送の内容が緊急警報放送に切り替わる。
<受信端末での動作>
ワンセグ放送の受信端末では、地上デジタル放送波を受信し、使用者によって指定されたチャンネルのワンセグ放送信号(TS)を抽出する。そのTSは、TSデコード処理により、PIDの違いに基づいて分離され、映像、音声、その他のデータを格納するパケットに仕分けされる。このうち、映像・音声を格納しているパケット(ES)は、各々の情報源符号化の逆の処理が施される。
【0054】
一方、その他のデータを格納するパケット(セグメント)は、いったんメモリに格納され、CPUによるソフトウェア処理が施される。このソフトウェア処理によって選択画面データが処理されることにより、受信端末の表示画面には選択画面(図2参照)が表示される。
【0055】
この選択画面上で、提供可能な音声放送の提示が行われ、ストリーム形式の音声放送が選択された場合は、上述した情報源符号化の逆の処理が施されたデータを再生することによって音声放送が提供される。また、データ放送のモノメディア(ここでは音声放送)が選択された場合は、メモリ上に蓄積されたモノメディアの実体(音声データ)が再生されることによって音声放送が提供される。
【0056】
<効果>
以上説明したように、音声放送提供装置1では、ワンセグサービスで利用可能な音声モードの一つであるデュアルモノラルを用い、このデュアルモノラルを構成する二つのモノラル音声として、二つの音声放送を提供すると共に、ワンセグサービスが提供するデータ放送(データカルーセル)を用い、このデータ放送を構成するモノメディアの一つとして、少なくとも一つの音声放送を提供する。
【0057】
従って、音声放送提供装置1によれば、受信端末側に新たな機能の追加を強いることなく、既存の機能を用いて、ワンセグ放送波を利用した音声方法の提供を実現することができる。
【0058】
また、音声放送提供装置1によれば、既存のラジオ放送の難聴エリアであっても、地上デジタルテレビジョン放送の視聴が可能であれば、ワンセグ放送波を利用することによって、音声放送の難聴エリアの救済を図ることができる。
【0059】
また、音声放送提供装置1によれば、ワンセグ放送によって自主制作された音声放送を提供している場合であっても、緊急警報放送信号を受信した場合には、速やかに緊急警報放送に切り替えて、これを提供することができる。
【0060】
<他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において様々な態様にて実施することが可能である。
【0061】
例えば、上記実施形態では、地上デジタルテレビ放送に割り当てられた一つのチャンネルの13からなるセグメントのうち中央のワンセグメントのみを使用して、複数の音声放送をサービスしているが、複数チャンネルの各中央のワンセグメントを使用してもよいし、残るセグメントを利用して独自のテレビ放送を提供したり、NHKが提案するワンセグ連結再送信システムを実現したりしてもよい。なお、ワンセグ連結再送信システムに適用した場合は、連結された任意のセグメントでの音声放送の提供が可能となる。
【0062】
また、上記実施形態では、ワンセグ放送のみを提供する装置について説明したが、この装置は、地上デジタルテレビ放送用のギャップフィラー等と一体に構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1…音声放送提供装置 2…音声データ取得部 3…選択画面データ生成部 4…TSパケット生成部 6…多重化部 7…ワンセグ送信機 8…制御部 21…ラジオ放送受信機群 22…自主放送制作設備 23…セレクタ 24〜26…AD変換/符号化部 41…音声放送用パケット生成部 42…データ放送用パケット生成部 T…受信端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上デジタルテレビジョン放送波1チャンネルのうち中央のワンセグメントのみを使用して、複数の音声放送を提供する音声放送提供方法であって、
前記ワンセグサービスで利用可能な音声モードの一つであるデュアルモノラルを用い、該デュアルモノラルを構成する二つのモノラル音声として、二つの音声放送を提供することを特徴とする音声放送提供方法。
【請求項2】
前記ワンセグサービスが提供するデータ放送を用い、該データ放送を構成するモノメディアの一つとして、少なくとも一つの音声放送を提供することを特徴とする請求項1に記載の音声放送提供方法。
【請求項3】
地上デジタルテレビジョン放送波1チャンネルのうち中央のワンセグメントのみを使用して携帯端末向けサービスを提供するワンセグサービス用の放送波を用いて音声放送を提供する音声放送提供装置であって、
前記音声放送用の音声信号を符号化した符号化データ列を取得する取得手段と、
前記取得手段が取得した符号化データ列をエレメントストリームとして、該エレメントストリームから、前記ワンセグサービスで利用可能な音声モードの一つであるデュアルモノラルのモノラル音声として受信機で再生されるように設定されたTSパケットを生成する音声パケット生成部を少なくとも有したTSパケット生成手段と、
前記TSパケット生成手段が生成する前記TSパケットを多重化したワンセグサービス用のトランスポートストリームを生成する多重化手段と、
前記多重化手段にて生成されたトランスポートストリームを、予め指定されたチャンネルのワンセグサービス用の放送波として送信する送信手段と、
を備えることを特徴とする音声放送提供装置。
【請求項4】
予め規定されたデータ放送用記述言語で記述され、再生するモノメディアを選択させるための選択画面を受信機に表示させ、前記選択画面上での選択結果に従ったモノメディアの再生を行う処理を前記受信機に実行させるための文書データを生成する文書データ生成手段を備え、
前記TSパケット生成手段は、前記文書データ生成手段が生成した文書データ、及び前記取得手段が取得した符号化データ列から、前記ワンセグサービスが提供するデータ放送用のTSパケットを生成するデータパケット生成部を有し、
前記文書データ生成手段は、前記符号化データ列によって再生される音声放送を、前記データ放送を構成する前記モノメディアの一つとして含んだ文書データを生成することを特徴とする請求項3に記載の音声放送提供装置。
【請求項5】
複数種類の音声放送波を受信する受信手段と、
前記受信手段が緊急警報放送を受信すると、前記取得手段に前記緊急警報放送の音声信号の符号化を行わせる緊急時制御手段と、
を備えることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の音声放送提供
【請求項6】
前記音声放送には、少なくとも、AMラジオ放送,FMラジオ放送のいずれかを含むことを特徴とする請求項3乃至請求項5のいずれか1項に記載の音声放送提供装置。
装置。

【図1】
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【図2】
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