説明

音波出力機構

【課題】構造が簡単で、かつ、振動板の振幅を大きくとることができる音波出力機構を提供する。
【解決手段】開閉構造10aは、コーナの内側から外側に向かって、フレーム20と振動板15との間で広がる開閉自在の構造となっている。そして、エッジ10は、折り目に沿って折り曲げられているときは、図1(a)に示すように開閉構造10aも折りたたまれており、その開度も小さい。エッジ10の直線部分の屈伸が伸びると、それに連動して開閉構造10aの開度も大きくなる(図1(b))。そして、図1(c)は、エッジ10の直線部の屈伸が最も伸びた状態を示しており、開閉構造10aの開度も最大となる。この状態において、開閉構造10aは、コーナの内側から外側に向かって、フレーム20と振動板15との間で広がる開閉自在の構造となっているから、その開度が大きくなっても形状の撓みなは発生しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカやパッシブ振動板などの音波出力機構の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
スピーカのコーン紙やパッシブ振動板には、それらを振動自在に支持するためのエッジが取り付けられる。このエッジは、スピーカフレームとコーン紙の外周部の間、あるいはスピーカエンクロージャーに設けられた開口穴の周囲とパッシブ振動板の外周部との間に設けられる。
【0003】
ここで、図9(a)は、平面スピーカに用いられている従来のエッジのコーナ部分の構成を示す図である。図9(a)に示す1は平面スピーカの振動板であり、平板状の部材によって構成されている。振動板1は、図示せぬボイスコイルの駆動力が伝達されることにより、その表面の法線方向に前後に並行移動する。振動板1の外周部に沿ってエッジ2が取り付けられており、振動板1はエッジ2によって図示せぬスピーカフレームから振動自在に支持されている。
【0004】
エッジ2は所定の折り目に沿って折りたたまれており、折り目に対する屈曲度合いが変化することにより、振動板1の振動を可能にしている。
【0005】
図10は、エッジ2のコーナ部の製作方法の一例を示す図である。図示のように、長方形状のシート部材(和紙など)に対して、長辺に並行な線L1〜L3を等間隔に引く。次に、左の長辺のほぼ中央から線L1に向かって下向きに45°の線を引き、その線と線L1の交点から線L2に向かって上向きに45°の線を引く。この線と線L2の交点から線L3に向かって下向きに45°の線を引き、この線と線L3の交点から右の長辺に向かって上向きに45°の線を引く。
【0006】
以上の状態において、図示のように線L1〜L3の中央から交互に実線と破線に分け、実線を山折りにし、破線を谷折りにすると、図9(a)に示すコーナ部が出来上がる。このコーナ部を4つ作り、それらを組み合わせることでエッジ2は方形の枠となり、方形の振動板1の周囲を支持する構造となる。ここで、図11は、コーナ部を正面から見た図である。なお、ここに言う正面とは、振動板1の正面と同じ方向から見た面をいい、この正面におけるX,Y軸を同図に示す。また、図12はY軸方向からコーナ部を見た状態を示している。この図12では、エッジ2が最大に開いたとき(折り目に対する屈伸が一番のびたとき)の状態を示している。
【0007】
前述した図9(a)に示す状態は、エッジ2が最も折りたたまれている状態、すなわち、折り目に対する屈曲が最も大きい状態を示している。振動板1が駆動されて正面前方に突出すると、折り目に対する屈曲が延びて図9(b)に示す状態になり、さらに、振動板1が正面前方に突出し、折り目に対する屈曲が最も少ない状態となったときが図9(c)である。振動板1はエッジ2が図9(a)に示す状態から図9(c)に示す状態に変化するまでの屈伸のストロークの範囲で振動可能となる。
【0008】
しかしながら、従来のエッジ2には、図9(c)に示すように、屈伸のストロークが大きくなったときには、同図に斜線で示すようにコーナ部の角に不規則な変形(斜線で示すV字形状cvの部分)が生じた。この変形は異音発生の原因となるため、エッジ2の屈伸のストロークをあまり大きくとれないという問題が生じた。この結果、振動板1の振幅が大きくとれず、音量の大きいスピーカが作れないという欠点があった。
【0009】
一方、特許文献1には、長円形や長方形のスピーカに用いることができるエッジが記載されている。このエッジのコーナ部分には、周方向に規則正しく並ぶ多数のプリーツが形成されており、このプリーツにより周方向にしわが出来やすく、スピーカのコーン紙の振動振幅が大きくとれるようになっている。
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載のエッジにおいては、コーン紙(振動板に対応する部材)の面の延長方向にプリーツが形成されているため、しわが出来やすい構造であったとしても、振動板の面の延長方向のしわで吸収できるストロークはあまり大きくないという欠点があった。また、多数のプリーツを形成しなければならないため、その構造が複雑になるという問題もあった。
【0011】
【特許文献1】特開平10−257590号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みてなされ、本願は、構造が簡単で、かつ、振動板の振動振幅を大きくとることができるエッジを有した音波出力機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願発明は上記課題を解決するために、方形の外周を有し、振動源からのエネルギーを受けて振動することにより音波を放出する振動板と、前記振動板の外周部と固定部材との間に、前記外周部に沿って設けられるシート状の部材を有し、前記シート状の部材は、前記方形の辺に沿う直線部分においては所定の折り目に沿って屈曲し、前記折り目に対する屈伸度合いが変化することにより前記振動板を振動自在に支持し、前記外周の角部に対応する部分においてはコーナの内側から外側に向けて前記固定部材と前記振動板との間で広がる開閉自在の開閉構造となっており、前記開閉構造の広がり度合いが前記屈伸に連動して変化するエッジ部材とを有することを特徴とする。
【0014】
この場合、前記振動板は平面スピーカの振動板であり、前記固定部材はスピーカフレームであってもよく、また、前記振動板はパッシブ振動板であり、前記固定部材はスピーカエンクロージャーの一面を構成する部材であってもよい。さらに、前記エッジ部材は前記開閉構造とともに一体成型されてもよい。
【0015】
また、好ましい態様として、 前記エッジ部材の開閉構造は、長方形のシート部材に対して、対向する長辺a,bに並行な直線L10,11,12を等間隔に引き、長辺a,bの中点を結ぶ仮想直線と直線L10,12との交点をP1,P2とし、点P1を通り、線L10に対して左回りに45°の角度を持ち、長辺aと線L11の間で延びる直線L20、および線L10に対して右回りに45°の角度を持ち長辺aと線L11の間で延びる線L21を引き、直線L20,21の長辺aと直線L10との間を山折りとし、直線L10とL11の間を谷折りとし、点P2を通り、直線L12に対して右回りに45°の角度を持ち、長辺bと直線L11の間で延びる直線L30、および線L12に対して左回りに45°の角度を持ち、長辺bと直線L11の間で延びる直線L31を引き、直線L30,31の長辺bと直線L12との間を山折りとし、直線L12とL11の間を谷折りとし、点P1を通り、直線L10に対して左回りに67.5°の角度を持つ直線L40を直線L11と長辺aとの間で引き、直線L10に対して右回りに67.5°の角度を持つ直線L41を直線L11と長辺aとの間で引き、直線L40,41の長辺aと直線L10との間を谷折りとし、直線L10と直線L11との間を山折りとし、点P2を通り、直線L12に対して右回りに67.5°の角度を持つ直線L50を直線L11と長辺aとの間で引き、直線L50、51の長辺bと直線L12の間を谷折りとし、直線L11とL12の間を山折りとすることで形成されるようにしてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照し、この発明の実施の形態を説明する。
<実施形態>
図1(a)は、本実施形態の構成を示す斜視図であり、エッジ10のコーナ部の外観を示している。図に示す15は、平面スピーカの振動板であり、内部がハニカム構造となっている平板状の部材によって構成されている。振動板15は、図示せぬボイスコイルの駆動力が伝達されることにより、その表面の法線方向に前後に並行移動する。
【0017】
20は矩形の枠状のフレームであり、その外形は振動板15の外形とほぼ一致するように形成されている。エッジ10は、振動板15の外周部に沿うようにして、振動板15とフレーム20との間に取り付けられる。エッジ10は所定の折り目に沿って折りたたまれており、折り目に対する屈曲度合いが変化することにより、振動板15の振動を可能にしている。
【0018】
次に、エッジ10の形状の特徴を示すために、エッジ10を長方形のシート状の部材(例えば和紙)などから形成する場合を例にとって説明する。図2は、エッジ10の一つのコーナ部をシート状部材から形成する際の折り目を示す図であり、図において実線が山折り(図面手前側が凸になるように折る)、破線が谷折り(図面奥側が凹となるように折る)を示している。次に、図2に示す各線の形成方法の一例について説明する。
【0019】
まず、図2に示すシート状部材の長辺a,bに並行な直線L10,11,12を等間隔に引く。次に、長辺a,bの中点を結ぶ仮想直線と直線L10,12との交点をP1,P2とし、点P1を通り、線L10に対して左回りに45°の角度を持ち、長辺aと線L11の間で延びる直線L20、および線L10に対して右回りに45°の角度を持ち長辺aと線L11の間で延びる線L21を引く。そして、直線L20,21の長辺aと直線L10との間を実線(山折り)とし、直線L10とL11の間を破線(谷折り)とする。同様にして、点P2を通り、直線L12に対して右回りに45°の角度を持ち、長辺bと直線L11の間で延びる直線L30、および線L12に対して左回りに45°の角度を持ち、長辺bと直線L11の間で延びる直線L31を引く。そして、直線L30,31の長辺bと直線L12との間を実線(山折り)とし、直線L12とL11の間を破線(谷折り)とする。
【0020】
次に、点P1を通り、直線L10に対して左回りに67.5°の角度を持つ直線L40を直線L11と長辺aとの間で引き、直線L10に対して右回りに67.5°の角度を持つ直線L41を直線L11と長辺aとの間で引く。そして、直線L40,41の長辺aと直線L10との間を破線(谷折り)とし、直線L10と直線L11との間を実線(山折り)とする。同様にして、点P2を通り、直線L12に対して右回りに67.5°の角度を持つ直線L50を直線L11と長辺aとの間で引く。そして、直線L50、51の長辺bと直線L12の間を破線(谷折り)とし、直線L11とL12の間を実線(山折り)とする。そして、図2に示す破線を谷折りにし、実線を山折りにすることで、図1(a)に示すようなエッジ10のコーナー部分が形成される。このコーナー部分を4つ作り、それらを方形の枠状に組み合わせることにより、振動板15の外周を支持する枠状のエッジ10が形成される。
【0021】
次に、以上のような直線を折り紙の要領で形成する例について図5を参照して説明する。まず、長方形状のシート(和紙など)を用意し(図5(a)参照)、これを図5(b)に示すように半分に折る。そして、手前側を半分に折り返し(図5(c)参照)、反対側も同様に半分に折る(図5(d)参照)。
【0022】
次に、長尺状になったシートの半分の位置において右側の部分を直角に折る(図5(e)参照)。このように直角に折った際にできる頂点が、コーナ部の頂点になる。同様にして、左側の部分も直角に折る(図5(f)参照)。そして、シートを一端開き(図5(g)参照)、右側の上縁を折り目に合わせるようにして折る。左側についても同様に折る(図5(i)参照)。そして、再び開いたら(図5(j)参照)、今度はシートを完全に開いて元の状態にする。このようにシートを開くと、図2に示す各線がシートに形成されている。次に、シートに形成された各折り目について図2に示す実線と破線を当てはめ、これに従って山折り、谷折りを行って行き、中央部を凸状にする(図5(k))。図5(l)は、図5(k)に示す状態を裏側から見た場合を示す図であり、この図に示すように中央部を表側に凸状にし、左右は裏側に畳むようにする。そして、図5(m)に示すように、裏側から見た場合に、中央部を境に左右に現れるひだが、中央部に挟まらないように折りたたむ。このようにすると、図5(n)に示すように、表側から見た場合に、全体として直角に折りたたまれたシートの角部にくちばし状の開閉構造10aが形成される。この図にしめすコーナ部分を4個作成し、それらを方形状に繋ぐことによって方形の枠を形成するエッジ10が形成される。
【0023】
図5(n)に示すコーナ部分を立体的に見た図が前述した図1(a)であり、開閉構造10aは、上述した作成方法からも明らかなように、コーナの内側から外側に向かって、フレーム20(固定部材)と振動板15との間で広がる開閉自在の構造となり、開閉構造10aの広がり度合いが、エッジ10の直線部分の屈伸に連動して変化する。
【0024】
すなわち、エッジ10は、折り目に沿って折り曲げられているときは、図1(a)に示すように開閉構造10aも折りたたまれており、その開度も小さい。エッジ10の直線部分の屈伸が伸びると、それに連動して開閉構造10aの開度も大きくなる(図1(b)参照)。そして、図1(c)は、エッジ10の直線部の屈伸が最も伸びた状態を示しており、開閉構造10aの開度も最大となる。この状態において、開閉構造10aは、コーナの内側から外側に向かって、フレーム20と振動板15との間で広がる開閉自在の構造となっているから、その開度が大きくなっても形状の撓みなは発生しない。これに対し、図9に示す従来例においては、エッジ2の直線部分における折り目がコーナ部分まで伸びているため、エッジ2の直線部分の屈伸が伸びて行くとコーナ部分のV字形状cvの開度が直ぐに限界になって、直線部の屈伸の伸びに追いつかず、図9(c)に示すようにV字形状cvに撓みを生じてしまう。
【0025】
このように、本実施形態においては、コーナ部分をコーナの内側から外側に向かって、フレーム20と振動板15との間で広がる開閉自在の構造としたために、エッジ10が広がってもコーナ部分に撓みが生じることがない。したがって、振動板の振動幅を大きく設定することができ、大きな音量を得ることができる。
【0026】
<変形例>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、他の様々な形態で実施可能である。以下にその一例を示す。
【0027】
(1)上述した実施形態は、本発明を平面スピーカの振動板に適用した例であったが、振動板15をパッシブ振動板として構成することもできる。この場合においては、フレーム20に代わり、スピーカエンクロージャーの一面(例えばバッフル板)が位置し、また、その一面のエッジ10で囲まれる領域は、フレーム20の内部空間のように開口するように構成される。
ここで、図6はパッシブ振動板の一例を示す斜視図である。図6において、SPは、ボイスコイル、マグネット等を備えたスピーカであり、スピーカエンクロージャー50の前面に取り付けられている。スピーカエンクロージャー50は、直方体状の密閉型のエンクロージャーであり、6面とも板状の部材により形成されている。スピーカエンクロージャー50の前面のバッフル板50a(図7参照)には薄い板状の振動板(パッシブ振動板)30が取り付けられている。振動板30はスピーカエンクロージャー50の前面と同じ大きさに形成され、スピーカエンクロージャー50の前面全体を覆っている。振動板30とバッフル板50aを貫通してスピーカ取付穴が設けられ、このスピーカ取付穴に前述したスピーカSPが挿入されている。この場合、スピーカSPの前面のフレームがネジにより振動板30およびバッフル板50aに固定されている。
【0028】
図7は、振動板30を取り外した状態のスピーカエンクロージャー20の正面図である。この図に示すように、バッフル板20aは、スピーカエンクロージャー50の前面の上半分だけに形成されている。上記構成においては、振動板30の上部は、バッフル板50aに固定されているが、振動板30の下部は開口部に対向した自由端になっており、振動板30の弾性によって自由に振動できるようになっている。そして、40は、振動板30の振動部位30aの外周縁と開口部の縁部との間に設けられ、スピーカエンクロージャー20の気密性を保持するエッジである。ここで、図7でハッチングを示した部分が方形枠状のエッジ40である。この例に示すエッジ40は、上述した実施形態におけるエッジ10と同様の構成であるが、四角形の枠の一辺(上辺)が省略された形になっている。図7に示すエッジ40の外周縁部は、振動板30の振動部位の外周縁部に接着され、これにより、スピーカエンクロージャー50の気密性が保持される。また、エッジ40の折れ線部分が自由に折れ曲がることにより、振動部位30aの振動は妨げられることなく、自由振動となる。
【0029】
また、図8はこの発明を適用したスピーカシステムの他の構成例を示す図であり、図8の(a)は正面図、(b)は(a)に示すA−A線断面図、(c)は(a)に示すB−B線断面図である。また、同図(d)は、側断面で示す分解組み立て図である。
このスピーカエンクロージャー90は、密閉型のエンクロージャーであり、奥方向に扁平な直方体状に形成され、各面は板状の部材(例えば、木材、合成樹脂、金属もしくはそれらを張り合わせた合成材等)により形成されている。スピーカエンクロージャー90の前面には、バッフル板90aが設けられている。このバッフル板90aにはスピーカ取付孔が設けられ、このスピーカ取付孔にボイスコイル、マグネット等を備えたスピーカSPが挿入されている。この場合、スピーカSPの前面のフレームがネジによりバッフル板90aに固定されている。
【0030】
また、図8の(b)に示すように、バッフル板90aの下部には開口部90bが形成され、この開口部90bからスピーカエンクロージャー90の内部空間が露出している。このバッフル板90aの前面上端部には、幅方向に延びる角柱状の支持部90cが取り付けられている。
【0031】
バッフル板90aの前方には、薄い板状の振動板91が設けられている。この振動板91は、スピーカエンクロージャー90の前面とほぼ同じ大きさに形成され、スピーカエンクロージャー90のほぼ前面全体を覆っている。振動板91の後面上端部は、支持部90cに固定されているが、振動板91の下部はスピーカエンクロージャー90の下端付近で自由端となっており、これにより振動板91は支持部90cを支点として振動自在となっている。この場合、振動板91は、上端部分が支持部90cに固定されているため、片持ち梁構造となり、振動板91の弾性によって振動する状態となっている。この場合、振動板91は弾性振動するため、支点である支持部90cから離れている振動板91の下部の振動が大きくなる。すなわち、振動板91の開口部90bに対向している部分が主なる振動部位となる。以下においては、振動板91の下部を振動部位91aという。
【0032】
振動板91のスピーカSPと対応する位置には、スピーカSPのコーン紙の径とほぼ同じ径の孔91b、91bが設けられており、スピーカSPから前方に放音される音はこの孔91b、91bを介して出力されるようになっている。
次に、40は、振動板91の振動部位91aの外周縁と開口部90bの縁部との間に設けられ、スピーカエンクロージャー90の気密性を保持するエッジである。エッジ40の外周縁部は、振動板91の振動部位91aの外周縁部に接着され、これにより、スピーカエンクロージャー90の気密性が保持される。また、エッジ40は上述した実施形態におけるエッジ10と同様に形成されており、その蛇腹形状が自由に折れ曲がることにより、振動部位91aの振動は妨げられることなく、自由振動となる。
【0033】
(2)上述した実施形態においては、シート状の部材を折りたたんでエッジを形成する例を説明したが、上述の構造が形成されるのであれば、シート状の部材を折りたたんで形成しなくてもよい。例えば、樹脂を一体成形することで上述の構造を生成してもよい。
【0034】
(3)また、上述した実施形態においては、シート状の部材の一例として和紙を例示したが、これに限らず、紙、樹脂フィルム、皮革なども使用することができる。
【0035】
(4)また、上述した実施形態においては、シート状の部材を用いて一つのコーナー部分を作り、これを4つ組み合わせて方形状の枠を形成する例を説明したが、長尺のシート状部材を用いて、一端から他端に向けて4つのコーナー部分を順次形成し、最後に一端と他端とを接合することにより、方形状の枠を形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施形態であるエッジ10の構造を示す斜視図である。
【図2】同実施形態のコーナ部分をシート状の部材で形成する際の折り目を示す図である。
【図3】図1に示すコーナ部分を正面から見た図である。
【図4】図1に示すコーナ部分をY軸方向からコーナ部を見た状態を示す図である。
【図5】図1に示すエッジのコーナ部分をシート状の部材で形成する際の折り目を示す図である。
【図6】本発明をパッシブ振動板に適用した場合のスピーカエンクロージャーの斜視図である。
【図7】図6に示すスピーカエンクロージャーの正面図である。
【図8】本発明をパッシブラジエータに適用した場合のスピーカエンクロージャーの他の例を示す図である。
【図9】従来のエッジの構成例を示す斜視図である。
【図10】図9に示すエッジのコーナ部分をシート状の部材で形成する際の折り目を示す図である。
【図11】図9に示すコーナ部分を正面から見た図である。
【図12】図9に示すコーナ部分をY軸方向からコーナ部を見た状態を示す図である。
【符号の説明】
【0037】
10…エッジ、10a…開閉構造、15…振動板、20…フレーム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
方形の外周を有し、振動源からのエネルギーを受けて振動することにより音波を放出する振動板と、
前記振動板の外周部と固定部材との間に、前記外周部に沿って設けられるシート状の部材を有し、前記シート状の部材は、前記方形の辺に沿う直線部分においては所定の折り目に沿って屈曲し、前記折り目に対する屈伸度合いが変化することにより前記振動板を振動自在に支持し、前記外周の角部に対応する部分においてはコーナの内側から外側に向けて前記固定部材と前記振動板との間で広がる開閉自在の開閉構造となっており、前記開閉構造の広がり度合いが前記屈伸に連動して変化するエッジ部材と
を有することを特徴とする音波出力機構。
【請求項2】
前記振動板は平面スピーカの振動板であり、前記固定部材はスピーカフレームであることを特徴とする請求項1記載の音波出力機構。
【請求項3】
前記振動板はパッシブ振動板であり、前記固定部材はスピーカエンクロージャーの一面を構成する部材であることを特徴とする請求項1記載の音波出力機構。
【請求項4】
前記エッジ部材は前記開閉構造とともに一体成型されていることを特徴とする請求項1から3いずれかに記載の音波出力機構。
【請求項5】
前記エッジ部材の開閉構造は、長方形のシート部材に対して、
対向する長辺a,bに並行な直線L10,L11,L12を等間隔に引き、長辺a,bの中点を結ぶ仮想直線と直線L10,L12との交点をP1,P2とし、点P1を通り、線L10に対して左回りに45°の角度を持ち、長辺aと線L11の間で延びる直線L20、および線L10に対して右回りに45°の角度を持ち長辺aと線L11の間で延びる線L21を引き、直線L20,21の長辺aと直線L10との間を山折りとし、直線L10とL11の間を谷折りとし、
点P2を通り、直線L12に対して右回りに45°の角度を持ち、長辺bと直線L11の間で延びる直線L30、および線L12に対して左回りに45°の角度を持ち、長辺bと直線L11の間で延びる直線L31を引き、直線L30,31の長辺bと直線L12との間を山折りとし、直線L12とL11の間を谷折りとし、
点P1を通り、直線L10に対して左回りに67.5°の角度を持つ直線L40を直線L11と長辺aとの間で引き、直線L10に対して右回りに67.5°の角度を持つ直線L41を直線L11と長辺aとの間で引き、直線L40,41の長辺aと直線L10との間を谷折りとし、直線L10と直線L11との間を山折りとし、
点P2を通り、直線L12に対して右回りに67.5°の角度を持つ直線L50を直線L11と長辺aとの間で引き、直線L50、51の長辺bと直線L12の間を谷折りとし、直線L11とL12の間を山折りとすることで形成されること
を特徴とする請求項1から3いずれかに記載の音波出力機構。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2008−16960(P2008−16960A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−183670(P2006−183670)
【出願日】平成18年7月3日(2006.7.3)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】