説明

音源検出装置

【課題】複数の集音器の配置態様に拘わらず、音源の方向を精度良く検出可能な音源検出装置を提供する。
【解決手段】3個以上の集音器ユニットから選択した2個集音器ユニットに到達する音の到達時間差を、集音器ユニットが同一直線上に配置されていた場合の到達時間差Δτに補正し、この補正後の到達時間差Δτを用いて、音源検出部が音源検出を行う。従って、3個以上の集音器ユニットが同一直線上に配置されていない場合でも、同一直線上に配置されている場合と同等の精度で音源検出が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の集音器で集音された音に基づいて音源を検出する音源検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
音源検出装置では、複数の集音器が周囲の音をそれぞれ集音し、その各音の到達時間差に基づいて音源(特に、車両の走行音)の位置を特定する。実開平5−92767号公報に記載の装置では、所定の間隔で配設された複数のマイクロホンが出力する電気信号から帯域通過フィルタで低周波領域と高周波領域の周波数成分をそれぞれ除去して補正電気信号に変換し、その補正電気信号から車両の走行音の特徴の現れる所定の周波数帯域のパワーを算出し、そのパワーレベルが所定値より大きい場合に接近車両有りと判定するとともに、その補正電気信号により不要な雑音成分を除去して雑音抑制信号に変換し、複数のマイクロホンの雑音抑制信号間の相互相関を演算し、相関が最大となる到達時間差から接近車両の接近方向を演算する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−92767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような音源を検出する技術は、音の集音器への到達時間差を利用するものであるため、全ての集音器を同一直線上に配置しなければ音源の方向を精度良く出できず、複数の集音器の配置態様に制限があるという課題があった。
【0005】
そこで、本発明の課題は、複数の集音器の配置態様に拘わらず、音源の方向を精度良く検出可能な音源検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明に係る接近車両検出装置は、少なくとも3個以上の集音器で集音された音の到達時間差から所定の音源を検出する音源検出装置であって、3個以上の集音器のうち2個の集音器を選択し、選択した2個の集音器に到達した音の到達時間差を、3個以上の集音器が予め設定された基準直線に沿って配置されていた場合における音の到達時間差に補正する到達時間補正部と、到達時間補正部により補正された到達時間差を用いて所定の音源の方位を検出する音源検出部と、を備える。
【0007】
本発明に係る音源検出装置は、それぞれの集音器に到達する音の到達時間差を、3個以上の集音器が同一直線上に配置されていた場合の到達時間差に補正し、この補正後の到達時間差を用いて音源検出を行う。従って、3個以上の集音器が同一直線上に配置されていない場合でも、同一直線上に配置されている場合と同等の精度で音源検出が可能となる。このため、集音器の配置態様に拘わらず、音源の方向を精度良く検出することができる。
【0008】
この音源検出装置において、予め設定された基準直線は、3個以上の集音器のうち2個の集音器を結ぶ直線であってもよい。この場合においても、集音器の配置態様に拘わらず、精度良く音源を検出することができる。
【0009】
この音源検出装置において、3個以上の集音器は、互いに同一直線上に配置されていない第1集音器、第2集音器及び第3集音器を備え、到達時間補正部は、第1集音器と第2集音器との距離、第2集音器と第3集音器との距離、第1集音器及び第2集音器を結ぶ直線と第2集音器及び第3集音器を結ぶ直線とがなす角度、第1集音器に到達した音と第2集音器に到達した音との到達時間差、並びに音速を用いて、到達時間差を3個の集音器が同一直線上に沿って配置されていた場合における音の到達時間差に補正するようにしてもよい。この場合においても、集音器の配置態様に拘わらず、精度良く音源を検出できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数の集音器の配置態様に拘わらず、音源の方向を精度良く検出可能な音源検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態に係る音源検出装置の概略構成図である。
【図2】本実施形態に係る音源検出装置を搭載した車両前側部の平面図であって集音器の配置を説明する図である。
【図3】本実施形態に係る音源検出装置を搭載した車両の正面図であって集音器の配置を説明する図である。
【図4】本実施形態に係る到達時間差補正処理に用いる各パラメータを説明する図である。
【図5】本実施形態に係る音源検出装置の音源検出処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明に係る音源検出装置の実施形態を説明する。なお、各図において同一又は相当する要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
本実施形態に係る音源検出装置は、車両に搭載され、接近車両の方位を検出するものである。具体的には、本実施形態に係る音源検出装置は、複数の集音器(マイクロホン)で集音された各音に基づいて接近車両を検出し(つまり、周辺車両の走行音の音源の移動方向を特定し)、検出した接近車両の情報を運転支援装置に提供する。
【0014】
なお、車両の走行音としては、主として、ロードノイズ(タイヤ表面と路面との摩擦音)とパターンノイズ(タイヤ溝における空気の渦(圧縮/開放))が挙げられる。この車両の走行音の周波数成分の範囲は、実験等によって予め測定しておいてもよい。
【0015】
まずは、図1〜図3を参照して、本実施形態に係る音源検出装置1について説明する。図1は、本実施形態に係る音源検出装置の構成図である。図2及び図3は集音器ユニットの配置を説明するための図である。音源検出装置1は、集音器アレイ10(集音器ユニット11L,11C,11R)及びECU20[Electronic Control Unit](到達時間補正部21、音源検出部22)とを備えている。
【0016】
集音器ユニット11L,11C,11Rのそれぞれは、少なくとも1つ以上の集音器を用いて構成されている。集音器アレイ10は、3個の集音器ユニット11L,11C,11Rを備え、図2に示すように、集音器ユニット11L(第1集音器)は車幅方向の左側前部、集音器ユニット11C(第2集音器)は車両の前端中央部、集音器ユニット11R(第3集音器)は車幅方向の右側前部、にそれぞれ設けられる。
【0017】
また、図3に示すように、集音器ユニット11Lと集音器ユニット11Rの高さ位置は同一であるが、集音器ユニット11Cは、集音器ユニット11R及び集音器ユニット11Lよりも若干下方に設けられている。集音器ユニット11L,11C,11Rを構成する集音器は、音響電気変換器としての機能を有し、集音した音を電気信号に変換し、ECU20に送信する。なお、集音器ユニット11L,11C,11Rを構成する集音器は、好適には、無指向性の集音器である。
【0018】
ECU20は、CPU[CentralProcessing Unit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]等からなる電子制御ユニットであり、音源検出装置1を統括制御する。ECU20では、ROMに記憶されている接近車両用のアプリケーションをRAMにロードしてCPUで実行する。ECU20は、図1に示すように、到達時間補正部21及び音源検出部22を有し、これらの到達時間補正部21及び音源検出部22は、上記の各アプリケーションに相当する。
【0019】
到達時間補正部21は、3個以上の集音器ユニット11L,11C,11Rのうち任意の2個の集音器ユニット(例えば、集音器ユニット11Lと集音器ユニット11C)を選択し、この選択した2個の集音器ユニットに到達した音の到達時間差を、3個の集音器ユニット11L,11C,11Rが予め定めた基準直線に沿って配置されていた場合における音の到達時間差に補正する機能を有する。
【0020】
到達時間補正部21は、図4に示すように、例えば集音器ユニット11Lと集音器ユニット11Cとの距離d0、集音器ユニット11Cと集音器ユニット11Rとの距離d、並びに集音器ユニット11L及び集音器ユニット11Cと結ぶ直線Lと集音器ユニット11C及び集音器ユニット11Rを結ぶ直線lとのなす角度θ、集音器ユニット11Lに到達した音と集音器ユニット11Cに到達した音の到達時間差Δτ(θ)、並びに音速vsを用いて、下記の式(1)により、到達時間差Δτ(θ)を3個の集音器ユニット11L,11C,11Rが同一直線上に沿って配置されていた場合における到達時間差Δτに補正する。
【数1】

【0021】
音源検出部22は、到達時間補正部21により補正された到達時間差Δτを用いて、例えば接近車両等、所定の音源の方位を検出する。具体的には、音源検出部22は、到達時間差Δτを用いて音源方向分布データを生成し、この音源方向分布データのピークの状況やばらつきから、音源の方位の検出を行う。この音源の検出方法としては、既知の方法を採用することができ、例えばCSP(Cross-power Spectrum Phase Analysis)法が用いられる。
【0022】
また、図1に示す運転支援装置30は、運転者に対して各種運転支援する装置である。特に、運転支援装置30は、音源検出装置1から接近車両情報を受信し、このとき接近車両に関する運転支援を実施する。例えば、自車両への接近車両が存在する場合、自車両に対する接近車両の衝突の可能性を判定し、衝突の可能性があると判定したときには運転者に対して警報を出力したり、接近車両の情報を提供し、さらに、衝突の可能性が高まった場合には自動ブレーキ等の車両制御を行う。
【0023】
次に、図4及び図5を参照して、音源検出装置1の動作について説明する。図4は、到達時間補正部21が到達時間差を補正する処理を説明するための説明図であり、図5は、音源検出装置1のECU20における処理の流れを示すフローチャートである。図5のフローチャートに示される一連の処理は、ECU20によって予め定められた周期で繰り返し実行される。この一連の処理は、集音器ユニット11L,11C,11Rのそれぞれに対して行われる。なお、集音器ユニット11L,11C,11Rによる車外の音の集音、その電気信号への変換、電気信号のECU20への送信、及び集音器ユニット11L,11C,11R間の音の到達時間差の算出は、図5のフローチャートの一連の処理とは別に行われており、各集音器ユニット間の距離(例えば、集音器ユニット11Lと集音器ユニット11Cとの距離d0、集音器ユニット11Cと集音器ユニット11Rとの距離d)等の情報は予めECU20のメモリ(ROM又はRAM)に格納されている。
【0024】
このフローチャートの制御処理は、例えば車両のイグニッションオンによって開始され、まずステップS10(以下、「S10」という。他のステップにおいても同様とする。)にて、到達時間補正部21により、3個の集音器ユニット11L,11C,11Rを同一直線上に配置させるための直線である基準線lの設定を行う。ここでは、図4に示すように、集音器ユニット11C及び集音器ユニット11Rを結ぶ直線を基準線lとして説明する。
【0025】
そして、S12において、到達時間補正部21により、3個の集音器ユニット11L,11C,11Rのうちから任意の2個の集音器ユニットが選択される。ここでは、集音器ユニット11L及び集音器ユニット11Cが選択されるものとする。その後、S14において上記選択した2個の集音器ユニットを結ぶ直線Lが設定され、更にS16において、基準線lと直線Lとがなす角度θが算出される。
【0026】
そして、S18において、到達時間補正部21により、距離d0、集音器ユニット11Cと集音器ユニット11Rとの距離d、並びにS16において算出した角度θ、並びに音速vsを用いて、上述した式(1)により、ECU20のメモリに格納されている集音器ユニット11Lに到達した音と集音器ユニット11Cに到達した音の到達時間差Δτ(θ)が3個の集音器ユニット11L,11C,11Rが基準線l上に沿って配置されていた場合における到達時間差Δτに補正される。その後、S20において、音源検出部22により、S18において補正された到達時間差Δτを用いて、例えば接近車両等、所定の音源の方位が検出されて一連の処理が終了する。
【0027】
以上のように、本実施形態における音源検出装置1においては、それぞれの集音器ユニットに到達する音の到達時間差を、集音器ユニット11L,11C,11Rが同一直線上に配置されていた場合の到達時間差Δτに補正し、この補正後の到達時間差Δτを用いて、音源検出部22が音源検出を行う。従って、集音器ユニット11L,11C,11Rが同一直線上に配置されていない場合でも、同一直線上に配置されている場合と同等の精度で音源検出が可能となる。このため、集音器ユニットの配置態様に拘わらず、音源の方向を精度良く検出することができる。
【0028】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく、様々な変形が可能である。
【0029】
例えば、本実施形態では、到達時間差の補正処理として式(1)を用いた例について説明したが、必ずしも式(1)を用いなければならないわけではなく、任意の選択した2個の集音器ユニットに到達した音の到達時間差を、集音器ユニットが同一直線上に配置された場合における到達時間差に補正できるものであれば、別の処理によって到達時間差を補正してもよい。
【0030】
また、本実施形態では、車両に搭載され、検出した接近車両情報を運転支援装置30に提供する音源検出装置1に適用したが、音源検出装置1の構成としては他の構成でもよく、運転支援装置の中に音源検出装置として組み込まれるものでもよいし、音源検出装置の中に警報機能等を有するものでもよい。また、車両以外の音源を検出する音源検出装置に適用してもよく、更に、ロボット等車両以外の移動体に搭載される音源検出装置に適用してもよい。
【0031】
また、本実施形態では、自車両の前方に車幅方向に3個並ぶように集音器ユニット11L,11C,11Rが配置される構成について説明したが、自車両の後方に集音器ユニットを並べる構成としてもよい。また、集音器ユニットが4個以上設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0032】
1…音源検出装置、10…集音器アレイ、11L…集音器ユニット(第1集音器)、11C…集音器ユニット(第2集音器)、11R…集音器ユニット(第3集音器)、20…ECU、21…到達時間補正部、22…音源検出部、30…運転支援装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3個以上の集音器で集音された音の到達時間差から所定の音源を検出する音源検出装置であって、
前記3個以上の集音器のうち2個の集音器を選択し、前記選択した2個の集音器に到達した音の到達時間差を、前記3個以上の集音器が予め設定された基準直線に沿って配置されていた場合における音の到達時間差に補正する到達時間補正部と、
前記到達時間補正部により補正された到達時間差を用いて前記所定の音源の方位を検出する音源検出部と、
を備えることを特徴とする音源検出装置。
【請求項2】
前記予め設定された基準直線は、前記3個以上の集音器のうち2個の集音器を結ぶ直線である、
請求項1に記載の音源検出装置。
【請求項3】
前記3個以上の集音器は、同一直線上に配置されていない第1集音器、第2集音器及び第3集音器からなり、
前記到達時間補正部は、前記第1集音器と前記第2集音器との距離、前記第2集音器と前記第3集音器との距離、前記第1集音器及び前記第2集音器を結ぶ直線と前記第2集音器及び前記第3集音器を結ぶ直線とがなす角度、前記第1集音器に到達した音と前記第2集音器に到達した音との到達時間差、並びに音速、を用いて、該到達時間差を前記3個の集音器が同一直線上に沿って配置されていた場合における音の到達時間差に補正する、
請求項1又は2に記載の音源検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−68424(P2013−68424A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205108(P2011−205108)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】