説明

音速ジェットバーナー

【課題】 燃焼筒と接続される基板部内に、助燃媒体の分配機構を一体的に組み込み、構造を簡単にすると共に部品点数を少なくし、補修,分解,部品の取替交換を効率的に行えるようにした音速ジェットバーナーの提供。
【解決手段】 多筒構造の燃焼筒の先端にノズル口を開口し、基部に基板部Bを備えて、基板部B内に燃料着火部10を有する初期燃焼域11を形成すると共に、基板部Bには燃料供給部及び高圧空気等の助燃媒体供給部12などを設けた音速ジェットバーナーにおいて、基板部Bは、上下方の円形状基板3,4と、之等両円形状基板3,4を接続する内外の同心異径の外壁筒体5と内壁筒体6とより成り、之等両筒体5,6による環状の助燃媒体分配室7を形成すると共に、前記助燃媒体供給部12は前記助燃媒体分配室7に通ずる上方の円形状基板3に設け、下方の円形状基板4に設けた流通孔8及び内壁筒体6に設けた小孔9より助燃媒体を分配供給できるようにしたことを特徴とする音速ジェットバーナー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝撃波を発生できる音速ジェットバーナーであって、構成が簡単かつ機能的な音速ジェットバーナーに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に衝撃波発生バーナーに相当する音速ジェットバーナーは、高圧空気をバーナー燃焼(1300℃)以上の火炎で燃焼させこのガス膨脹体積を小さな穴(吐出口)から噴射させ、秒速1,000m前後の速い速度、即ち衝撃波(340m/sec)を超える速度のガスを噴射させ、このエネルギーを利用して破壊、粉砕、乾燥に利用し分子の変換(高速分子衝突による)等に利用され効率良く産業廃棄物、生ゴミ、魚介類、一般下水、汚物処理、焼却前処理することができる。
【0003】
そして、この種の音速ジェットバーナーの代表的なものとして、本発明者らのうちの一人が開発した、特許文献1のジェットバーナーが知られている。
【特許文献1】特開2004−3695号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、引用文献1の発明にあっては、多筒構造の燃焼筒内に高圧空気を供給する構成として、配分用管体24を設け、この管体24内に高圧燃焼用空気を一旦供給し、この配分用管体24とバーナー本体1の円形状基板1aとの間に接続した多数の高圧空気導入管23で分配された空気を、バーナー本体1に設けた多数の流通孔18を経て外筒部14cと中筒部14bとの間で形成される高圧空気流通路15に供給すると共に、傾斜孔19を介して第一燃焼室4内へ吐出させているので、助燃空気の供給構造が複雑であると同時に部品点数も多く、分解補修にも多くの手間が掛かるという問題があった。
【0005】
本発明は叙上の点に着目して成されたもので、燃焼筒と接続される基板部内に、助燃媒体の分配機構を一体的に組み込み、構造を簡単にすると共に部品点数を少なくし、補修,分解,部品の取替交換を効率的に行えるようにした音速ジェットバーナーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の構成を備えることにより、上記課題を解決できる。
【0007】
(1)多筒構造の燃焼筒の先端にノズル口を開口し、基部に基板部を備えて、基板部内に燃料着火部を有する初期燃焼域を形成すると共に、基板部内には燃料供給部及び高圧空気等の助燃媒体供給部などを設けた音速ジェットバーナーにおいて、基板部は、上下方の円形状基板と、之等両円形状基板を接続する内外の同心異径の外壁筒体と内壁筒体とより成り、之等両筒体による環状の助燃媒体分配室を形成すると共に、前記助燃媒体供給部は、前記助燃媒体分配室に通ずる上方の円形状基板に設け、下方の円形状基板に設けた流通孔及び内壁筒体に設けた小孔より助燃媒体を分配供給できるようにしたことを特徴とする音速ジェットバーナー。
【0008】
(2)流通孔は、外筒、中筒、及び内筒の多筒構造の燃焼筒の外筒と中筒との間で形成される環状の通路に向けて所望間隔を保持して多数開口して成ることを特徴とする前記(1)記載の音速ジェットバーナー。
【0009】
(3)内壁筒体の小孔は、基板部の燃料着火部を有する初期燃焼域に向けて傾斜して所望間隔を保持して多数開口させて旋回燃焼状態を形成できるようにしたことを特徴とする前記(1)記載の音速ジェットバーナー。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、多筒構造の燃焼筒の基部に設けられる基板部に、環状の助燃媒体分配室を形成してあるので、多筒構造体側への助燃媒体の供給は流通孔を介して均等に供給され、また、小孔を介して燃焼着火部を有する初期燃焼域に向けて均等に供給されるので、音速ジェットバーナーとしてきわめて効率の良い高圧空気などの助燃媒体の供給が可能である。
【0011】
さらに、分配機構が基板部内に設けられているので、小型化,コンパクト化が可能となると共に、部品点数も少なくて済み、分解補修も簡単に行えるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施例を以下に説明する。なお、多筒構造体は、最外層に設けた外筒に対し、中筒および最内層の内筒の三つの筒で構成される同心筒の場合について以下に説明してあるが、それ以上の多重筒の場合についても同様に実施できる。
【実施例】
【0013】
1は、中心軸上に沿って燃焼路2を有する全体が円筒状の高温高圧の燃焼装置本体を示し、この燃焼装置本体1は、外筒A,中筒A及び内筒Aの3筒構造の燃焼筒Aとこの燃焼筒Aと接続される円盤状の基板部Bとより構成される。
【0014】
そして、この基板部Bは、上下方にそれぞれ同径の円形状基板3及び4が配せられ、かつ、之等両円形状基板3,4間に、同心異径の外壁筒体5と内壁筒体6を配設して、環状の高圧空気などの助燃媒体分配室7を形成している。そして、この助燃媒体分配室7には3筒構造の燃焼筒Aに対し、外筒Aと中筒Aとに向って多数の流通孔8を下方の円形状基板4に設けると共に、多数の小孔9を内壁筒体6を介して内壁筒体6と上方の円形状基板3とで形成される燃料着火部10を有する初期燃焼域11に向けて傾斜状に開口して吐出する高圧空気を旋回渦巻状に形成させることができるように穿ってある。
【0015】
12は、高圧空気などの助燃媒体供給部で、高圧空気タンクなどとパイプ等を介して着脱可能に設けてある。
【0016】
ところで、この実施例では、前記上方の円形状基板3は、中央部を開口し、この開口を開閉する蓋板13が設けられ、この蓋板13に点火プラグ14,液体または気体などの燃料を自動的に供給できる燃料供給手段(図示せず)と通ずる燃料噴射ノズル15及び温度検出手段を取付ける取付孔16などが設けられて内壁筒体6との間で、前記燃料着火部10を有する初期燃焼域11を形成している。17は止着用の止ビスを示す。
【0017】
また、上下方の円形状基板3,4と外壁筒体5とは、ボルト,ナットの止具18で外周数個処を固着すると共に、内壁筒体6は予め下方の円形状基板4に止ビス19で固着しておき、上方の円形状基板3の係止部と係止させて固定させている。
【0018】
さらに、上方の円形状基板3と同様に下方の円形状基板4には、中央孔20を開口して置き、内筒Aの先端を摺動自在に臨ませて基板部B内の初期燃焼域11の内筒Aへの接続部として形成してある。
【0019】
次に、3筒構造の燃焼筒Aについてさらに詳細に説明する。
【0020】
最外層の外筒Aと中筒Aと内筒Aは、いずれも同心異径の円筒体構成を有し、外筒Aと中筒Aとは、その基部は、基板部Bの下方の円形状基板4にロウ付けなどで一体的に固着されており、内筒Aはその先端には狭穿状衝撃波変換部21を備えたノズル部材22を介して、外筒Aの先端に固着した止板23に着脱自在に支持させ、基端部は、前記したように基板部Bの下方の円形状基板4の中央孔20内に摺動自在に臨ませて構成してある。
【0021】
さらに内筒Aには、その外周に旋回羽根24を設けると共に、基部近くに、前記流通孔8を通り、中筒Aを迂回,蛇行して来て熱交換される高圧空気を燃焼路2内に吐出させるための多数の小孔ノズル25を穿ってある。
【0022】
以上の構成により、燃料噴射ノズル15で噴射された燃料ガスは、燃料着火部10で引火燃焼し、温度を上げる。高圧空気はその助燃媒体供給部12より助燃媒体分配室7内に供給され、内壁筒体6に穿った小孔9を通って助燃媒体分配室7内に旋回流として吐出されるので、燃焼効率は著しく向上し、初期燃焼域11内で高温状態を呈する。
【0023】
また、助燃媒体分配室7内の高圧空気は、多数の流通孔8を通って外筒A,中筒A及び内筒Aの間を通って冷却作用を呈し乍ら熱交換されつつ、高圧空気を旋回させて内筒Aの小孔ノズル25より内筒A内の上部に吐出し、高温状態の加熱ガスはさらに高温となり、渦巻高温燃焼部26を経て、さらにノズル部材22の衝撃波変換部21を通り、吐出孔27より求める音速ジェット流体の衝撃波を得ることができる。
【0024】
ところで、本発明の実施例によれば、高圧空気の助燃媒体の分配構成が基板部B内に設けた助燃媒体分配室7によって有効に処理され、基板部B以外の個処に設けていないので、全体がコンパクトに形成でき、また、基板部Bが上下方の円形状基板3,4と外壁筒体5,内壁筒体6とによる止ビス17,19及びボルト,ナット18の着脱操作によって簡単に組立分解できる。したがって、故障,メインテナンスの際の修理交換などの作業もきわめて能率よく実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施例を示す音速ジェットバーナーの縦断面図
【図2】図1のII−II線拡大断面図
【符号の説明】
【0026】
A 3筒構造の燃焼筒
外筒
中筒
内筒
B 基板部
1 燃焼装置本体
2 燃焼路
3 上方の円形状基板
4 下方の円形状基板
5 外壁筒体
6 内壁筒体
7 助燃媒体分配室
8 流通孔
9 小孔
10 燃料着火部
11 初期燃焼域
12 助燃媒体供給部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多筒構造の燃焼筒の先端にノズル口を開口し、基部に基板部を備えて、基板部内に燃料着火部を有する初期燃焼域を形成すると共に、基板部内には燃料供給部及び高圧空気等の助燃媒体供給部などを設けた音速ジェットバーナーにおいて、基板部は、上下方の円形状基板と、之等両円形状基板を接続する内外の同心異径の外壁筒体と内壁筒体とより成り、之等両筒体による環状の助燃媒体分配室を形成すると共に、前記助燃媒体供給部は、前記助燃媒体分配室に通ずる上方の円形状基板に設け、下方の円形状基板に設けた流通孔及び内壁筒体に設けた小孔より助燃媒体を分配供給できるようにしたことを特徴とする音速ジェットバーナー。
【請求項2】
流通孔は、外筒、中筒、及び内筒の多筒構造の燃焼筒の外筒と中筒との間で形成される環状の通路に向けて所望間隔を保持して多数開口して成ることを特徴とする請求項1記載の音速ジェットバーナー。
【請求項3】
内壁筒体の小孔は、基板部の燃料着火部を有する初期燃焼域に向けて傾斜して所望間隔を保持して多数開口させて旋回燃焼状態を形成できるようにしたことを特徴とする請求項1記載の音速ジェットバーナー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2006−46851(P2006−46851A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−231094(P2004−231094)
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【特許番号】特許第3720834号(P3720834)
【特許公報発行日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(593172278)
【出願人】(501098049)シンテック株式会社 (2)
【出願人】(593009055)神和工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】