音響パネル及び吸音・遮音装置
【課題】 低周波域においても所望の音響インピーダンスを容易に実現することができる音響パネルを得る。吸音・遮音性及びコンパクト性等の性能向上並びに低コスト化を図ることができる吸音・遮音装置を得る。
【解決手段】 板厚方向に貫通する多数の微細孔2a・・・を設けた微細孔板2からなる音響パネル200であって、該微細孔板2の板厚方向に直交する切断面において、周壁により囲まれる微細孔形状を非円形とする。空気の粘性に起因する摩擦損失を、円形微細孔音響パネルにおける摩擦損失よりも大きくすることができる。また、該音響パネル200の音響レジスタンスと音響リアクタンスに適切な値を持たせるための設計が容易となる。
【解決手段】 板厚方向に貫通する多数の微細孔2a・・・を設けた微細孔板2からなる音響パネル200であって、該微細孔板2の板厚方向に直交する切断面において、周壁により囲まれる微細孔形状を非円形とする。空気の粘性に起因する摩擦損失を、円形微細孔音響パネルにおける摩擦損失よりも大きくすることができる。また、該音響パネル200の音響レジスタンスと音響リアクタンスに適切な値を持たせるための設計が容易となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の内装材等に適用される音響パネル、及び、建築物の内装壁、天井又は仕切壁等に適用される吸音・遮音装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
物体の内部に連続気泡を持つ多孔質材料は、該気泡内を音波が流動する時に、壁面との摩擦損失を生じ、音響パネル用吸音材料として使用することができる。ここで、多孔質材料としては、グラスウール等の繊維質材料が使用されることが多い(例えば、非特許文献1の80ないし83頁参照。)。また、小さな開孔で外部空間と通じている空洞の内部の空気は単一共振系を形成し、その共振周波数の狭い周波数範囲で吸音作用を持ち、吸音器として利用されている(例えば、非特許文献1の85ないし86頁参照。)。
【0003】
板厚方向に貫通する多数の円形微細孔を備えた、1枚以上の微細孔板を、音源と音響的に剛な壁体との中間に所定距離を隔てて配置する場合において、該微細孔の内部の空気と該微細孔板及び壁体間の空気層とで振動系が形成されるため、該振動系の固有振動数に前記音源の周波数が一致すると共振が生じて前記微細孔の内部の空気が激しく振動することになる。したがって、前記微細孔の内部の管壁面と空気の粘性抵抗による摩擦により音響エネルギーの消耗が発生して吸音効果が生じることから、吸音装置として利用できることが知られている(例えば、非特許文献2参照)。
【0004】
また、本願の発明者により、板厚方向に貫通する多数の円形微細孔を設けた2層以上の音響パネルを所定間隙を介して相対して配置し、これら音響パネルを音源に対して所定距離を隔てて配置して構成させ、前記微細孔からの微量な空気漏れに基づく有効な音響レジスタンスの存在により、広い周波数域にわたって吸音効果を発揮させることができる吸音装置に係る発明がなされている(特願2003−415577号参照。以下において、「先願1」という。)。
【0005】
さらに、本願の発明者により、板厚方向に貫通する多数の円形微細孔を備えた微細孔板と、前記微細孔を設けない無孔板とを密着積層又は所定距離を隔てて相対配置してなる、微細孔付き音響パネルの2枚を、孔明き側を内側にして所定距離を隔てて相対し、共振を生じることなく、高い透過損失を得ることができる吸音・遮音装置に係る発明がなされている(特願2004−87488号。以下において、「先願2」という。)。
【0006】
【非特許文献1】前川純一,森本政之,阪上公博著,「建築・環境音響学」,第2版,共立出版 株式会社,2000年9月25日,p.80−83,p.85−86
【非特許文献2】Maa Dah-You, "Potential of microperforated panel absorber", Journal of the Acoustical Society of America,(U.S.A.), Nov. 1998, Vol.104, No .5, p.2861-2866
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献2の原理に基づく吸音装置は、グラスウールで代表される繊維質吸音材又は多孔質吸音材に比べ、低周波音域においても確実に吸音性能を実現できるものである。また、繊維質の塵埃の発生がないため環境へ悪影響を及ぼすことがなく、微細孔板の材質の制約がないため耐薬品性及び耐温度性等においても優れた特性を持つものである。
【0008】
しかし、低周波音域において吸音を実現しようとすると、目的とする低周波域において共鳴を発生させる必要があるため、微細孔板と音響的に剛な壁体との間の空気層(中間空気層)の厚さを大きく設定する必要があり、空間的な制約から使用可能な用途が限定されるという問題点がある。
【0009】
例えば、63Hzの吸音を有効ならしめるためには、微細孔の直径を1.0mm、微細孔のピッチを13.0mm、板厚を3.0mm、前記中間空気層の厚さを600mm程度とする必要があり、この場合には吸音率の最大値は0.99、吸音率の帯域巾は約3倍を確保できる。これに対して、装置全体のコンパクト化等の要請に応えるべく、前記中間空気層の厚さを180mm程度まで狭めると、最適な吸音性能を実現することが困難となり、微細孔の直径を1.75mm、微細孔のピッチを40mm、板厚を3.8mmとした場合には、吸音率の最大値は0.9であるものの、吸音率の帯域巾は約1.5倍まで低下する。これは、微細孔板の音響インピーダンスが適切な数値範囲を逸脱してしまったことに起因するものである。
【0010】
また、先願1及び2記載の発明は、前記特徴を有するものであるが、吸音・遮音装置の、さらなる吸音率、吸音帯域巾及び透過損失等の性能向上、並びに、さらなるコンパクト化及び低コスト化等の観点からは、改善の余地があるものである。
【0011】
本発明は、前記のような問題点を解決するためになされたものであり、音響パネルの音響レジスタンスと音響リアクタンスに適切な値を持たせるための設計が容易となるため、低周波域においても所望の音響インピーダンスを容易に実現することができる音響パネルを得ることを目的とする。また、吸音・遮音性能の向上並びにコンパクト化及び低コスト化を図ることができる吸音・遮音装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る音響パネルは、前記課題解決のために、板厚方向に貫通する多数の微細孔を設けた微細孔板からなる音響パネルであって、該微細孔板の板厚方向に直交する切断面において、周壁により囲まれる微細孔形状を非円形としてなるものである。
【0013】
本発明に係る吸音装置は、前記課題解決のために、板厚方向に貫通する多数の微細孔を設けた微細孔板からなる音響パネルの2枚以上を、音源と壁体との中間に、所定距離を隔てて相対配置した吸音装置において、該音響パネルの少なくとも1枚を前記微細孔形状が非円形の音響パネルとしてなるものである。
【0014】
本発明に係る吸音・遮音装置は、前記課題解決のために、板厚方向に貫通する多数の微細孔を設けた微細孔板からなる音響パネルの2枚以上を所定距離を隔てて相対配置した吸音・遮音装置において、該音響パネルの少なくとも1枚を前記微細孔形状が非円形の音響パネルとしてなるものである。
【0015】
本発明に係る遮音装置は、前記課題解決のために、板厚方向に貫通する多数の微細孔を設けた微細孔板からなる微細孔音響パネルと前記微細孔を設けない無孔板からなる無孔音響パネルとで一対の音響パネルを構成し、該微細孔音響パネル及び無孔音響パネルを密着積層又は所定距離を隔てて相対配置すると共に、該一対の音響パネルの2組を、それぞれの微細孔音響パネルが相対するように所定距離を隔てて配置した遮音装置において、該微細孔板音響パネルの少なくとも一方を前記微細孔形状が非円形の音響パネルとしてなるものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る音響パネルによれば、板厚方向に貫通する多数の微細孔を設けた微細孔板からなる音響パネルであって、該微細孔板の板厚方向に直交する切断面において、周壁により囲まれる微細孔形状を非円形としてなるので、空気の粘性に起因する摩擦損失を、円形微細孔音響パネルにおける摩擦損失よりも大きくすることができる。また、該音響パネルの音響レジスタンスと音響リアクタンスに適切な値を持たせるための設計幅が広がると共に設計が容易となるため、低周波域においても所望の音響インピーダンスを容易に実現することができる。さらに、該音響パネルと空気層で構成する吸音・遮音装置において、吸音・遮音性能の向上並びにコンパクト化及び低コスト化を図ることができる。
【0017】
本発明に係る吸音装置によれば、板厚方向に貫通する多数の微細孔を設けた微細孔板からなる音響パネルの2枚以上を、音源と壁体との中間に、所定距離を隔てて相対配置した吸音装置において、該音響パネルの少なくとも1枚を前記微細孔形状が非円形の音響パネルとしてなるので、吸音性能の向上並びにコンパクト化及び低コスト化を図ることができる。
【0018】
本発明に係る吸音・遮音装置によれば、板厚方向に貫通する多数の微細孔を設けた微細孔板からなる音響パネルの2枚以上を所定距離を隔てて相対配置した吸音・遮音装置において、該音響パネルの少なくとも1枚を前記微細孔形状が非円形の音響パネルとしてなるので、吸音・遮音性能の向上並びにコンパクト化及び低コスト化を図ることができる。
【0019】
本発明に係る遮音装置によれば、板厚方向に貫通する多数の微細孔を設けた微細孔板からなる微細孔音響パネルと前記微細孔を設けない無孔板からなる無孔音響パネルとで一対の音響パネルを構成し、該微細孔音響パネル及び無孔音響パネルを密着積層又は所定距離を隔てて相対配置すると共に、該一対の音響パネルの2組を、それぞれの微細孔音響パネルが相対するように所定距離を隔てて配置した遮音装置において、該微細孔板音響パネルの少なくとも一方を前記微細孔形状が非円形の音響パネルとしてなるので、遮音性能の向上並びにコンパクト化及び低コスト化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本発明の実施の形態を添付図面に基づき詳細に説明するが、本発明は、添付図面に示された形態に限定されず特許請求の範囲に記載の要件を満たす実施形態の全てを含むものである。本発明は、板厚方向に貫通する多数の微細孔が設けられた微細孔板における該微細孔の形状に着目してなされたものであり、以下において、微細孔形状を、板厚方向に直交する平面により切断された断面形状により定義する。すなわち、微細孔形状を、前記平面切断形状において、該微細孔の管壁(周壁)により囲まれる形状により、例えば、該形状が円形の場合の微細孔を円形微細孔、該形状が矩形の場合の微細孔を矩形微細孔という。そして、例えば、円形微細孔が設けられた微細孔板を円形微細孔板、矩形微細孔が設けられた微細孔板を矩形微細孔板という。また、該微細孔形状の面積を微細孔面積という。さらに、各微細孔形状の微細孔板からなる音響パネルを微細孔音響パネルという。
【0021】
実施の形態1.
本発明は、非円形微細孔が設けられた非円形微細孔板についてのものであるが、先ず、比較検討のために、円形微細孔板について説明する。図34は、板厚方向に貫通する多数の円形微細孔1aが設けられた円形微細孔板1で構成した音響パネル(円形微細孔音響パネル)100を示したものである。非特許文献2によれば、音の周波数をf、角周波数をω(=2πf)、虚数単位をj、(大気を基準とする)基準化音響レジスタンスをr、(大気を基準とする)基準化音響リアクタンスをmとすると、微細孔1aが設けられた円形微細孔板1の(大気を基準とする)基準化音響インピーダンスzは、複素数表現z=r+jωmで表すことができる。
【0022】
図35は、基準化音響インピーダンスzの電気的等価回路を示したものである。円形微細孔1aの直径をd、円形微細孔1a・・・のピッチをb、円形微細孔板1の板厚をtとすると、音が円形微細孔板1に垂直に入射する場合の基準化音響レジスタンスr、及び、基準化音響リアクタンスmは、それぞれ下記式で表すことができる。
【0023】
即ち、円形微細孔板1の材質が非金属材料である場合には、次式(数1)ないし(数3)により表すことができる。
【0024】
【数1】
【0025】
【数2】
【0026】
【数3】
【0027】
また、円形微細孔板1の材質が金属材料である場合には、次式(数4)ないし(数6)により表すことができる。
【0028】
【数4】
【0029】
【数5】
【0030】
【数6】
【0031】
ここに、cは空気中の音速で一般的に340m/s、μは空気の動粘性係数で一般的に1.56・10―5m2/s、νは空気の熱伝導係数で一般的に2.0・10―5m2/sである。また、(数1)、(数2)、(数4)及び(数5)の右辺第2項は管端補正項である。
【0032】
円形微細孔板1の諸元として、円形微細孔1a・・・の直径d、円形微細孔1a・・のピッチb、板厚t、及び、材質が金属であるか非金属であるか、を決定すれば、円形微細孔板1の規準化音響インピーダンスz、上記式(数1)ないし(数3)又は(数4)ないし(数6)により一意に決定できる。
【0033】
図36は、円形微細孔1a・・・のピッチbを5.0mm、円形微細孔板1の厚さtを1.0mm、音の周波数を500Hz、円形微細孔板1の材質を金属とし、円形微細孔1a・・・の直径を0.1mmから1.6mmまで変化させた時の、規準化音響レジスタンスr及び規準化音響リアクタンスmの周波数特性を示したものである。
【0034】
図36から、規準化音響レジスタンスr及び規準化音響リアクタンスmは、円形微細孔1aの直径dが小さくなるにしたがって単調にかつ急激に増大するが、規準化音響リアクタンスmの最大値/最小値の比率は10の2乗であるのに比べて、規準化音響レジスタンスrの最大値/最小値の比率は10の4乗以上であり、規準化音響リアクタンスmに比べて、規準化音響レジスタンスrが変動する度合が著しく大きいことがわかる。
【0035】
円形微細孔板1と、厚さDの空気層から構成される音響系を、インダクタンスL、キャパシタンスC及び抵抗Rで構成される電気系と対比すれば、規準化音響レジスタンスrは電気系の抵抗Rと、規準化音響リアクタンスmは電気系のインダクタンスLと、円形微細孔板1と音響的に剛な壁体間に存在する、又は、円形微細孔板1と円形微細孔板1との間に存在する、厚さDの空気層の基準化音響キャパシタンス(次式)は電気系のキャパシタンスCと等価である。
【0036】
【数7】
【0037】
図37は、厚さDの空気層の基準化音響インピーダンスの電気的等価回路を示したものである。インダクタンスLとキャパシタンスCからなる振動系において、共振周波数frは、
【0038】
【数8】
【0039】
で計算できるが、共振周波数frを低くするためには、インダクタンスLとキャパシタンスCの積が大きくなるようにLとCを設定しなければならない。音響系においても同様に、共振周波数を低くするためには、(1)基準化音響リアクタンスを大きくするために微細孔の直径dを小さくすること、及び(2)基準化音響キャパシタンスを大きくするために空気層の厚さDを大きくすることが必要となるが、基準化音響リアクタンスを所望の数値に変化させようとすると、図36から明らかなように、基準化音響レジスタンスが更に大きく変動してしまうという問題が生じる。
【0040】
すなわち、円形微細孔音響パネルの音響レジスタンスは微細孔直径が増加すると急激に減少してしまうが(図36参照。)、円形微細孔音響パネルの音響リアクタンスの変化の度合は音響レジスタンスの変化の度合に比べれば小さいので、所望の音響レジスタンス及び音響リアクタンスを選定することが困難な場合が度々生じる。
【0041】
共振周波数における吸音率は、基準化音響レジスタンスに大きく依存し、例えば非特許文献2の原理に基づく吸音装置におけるような音響共振系の場合、吸音率の最大値αは、次式で計算することができる。
【0042】
【数9】
【0043】
基準化音響レジスタンスrを0.12から8.0まで変化させた時の、吸音率の最大値αの値を図38に示す。基準化音響レジスタンスrが0.8から1.25の範囲ならば、吸音率は100パーセントに近づくが、rが0.8より小さいか、1.25よりも大きくなれば、吸音率は100パーセントから急激に低下する。
【0044】
即ち、吸音率を100パーセントに近づけるためには、基準化音響レジスタンスrを1に近い範囲内に保持する必要があるが、基準化音響レジスタンスrを該範囲内に保持しようとすると、基準化音響リアクタンスmを変動させる必要があるため、その結果として共振周波数の変動が惹起される。逆に、基準化音響リアクタンスmを変動しないようにすれば、基準化音響レジスタンスrの望ましい値を得ることができないため、目的とする吸音率の最大値を得ることができなくなり、その結果として、円形微細孔板1の適切な寸法決定が困難になる。
【0045】
特に、共振周波数を低くして使用可能な周波数範囲を低周波音域まで拡張するためには、前記(2)のように空気層の厚さDを大きくすれば良いわけであるが、空気層の厚さDを大きくすると装置全体の寸法が大きくなるため、装置を設置するための寸法上の制約が生じることになる。
【0046】
微細孔の基準化音響レジスタンスは、微細孔の管壁(周壁)と管内空気の摩擦によって発生する摩擦損失によって発生するものであり、管壁からの距離が増すにつれて急速に損失が少なくなるという現象は、ハーゲン・ポアズイユの円管内摩擦式として公知である。また、空気に触れる面積が大きくなれば、空気の粘性に起因する摩擦損失が増大する
【0047】
したがって、微細孔を、例えば図1のような本発明の実施の形態1に係る非円形微細孔とし、アスペクト比(縦横比、例えば、図1のA/B)を調整することで、所望の基準化レジスタンスを設定することができる。そして、微細孔面積を略一定に保持すれば、基準化音響リアクタンスの変化を少なくすることができるので、所望の基準化音響レジスタンスと基準化音響リアクタンスを容易に設定することができる。
【0048】
このような非円形微細孔板の第1の具体例として、矩形微細孔板について説明する。音波は圧縮性流体の微小振幅の振動であり、その挙動はナヴィエ・ストークスの式及び連続の式によって記述することができる(例えば、エリ・ランダウ,イエ・リフシッツ著(竹内均訳),「流体力学2」,東京図書株式会社,1971年,p.281参照。)。
【0049】
図2は、板厚方向に貫通する多数の矩形微細孔2aが設けられた矩形微細孔板2で構成した音響パネル(矩形微細孔音響パネル)200を示しており、図3は、矩形微細孔2aの形状を示す説明図であり、D1及びD2は矩形微細孔管壁の直交する2辺の長さを示している。
【0050】
直交座標系のx軸方向の粒子速度をu、y軸方向の粒子速度をv、z軸方向の粒子速度をw、圧力をP、空気の密度をρ、音速をc、粘性係数をη、動粘性係数をμ、音の角周波数をω、虚数単位をjとするとき、連続の式は(数10)で、ナヴィエ・ストークスの式は(数11)〜(数13)で表すことができる。
【0051】
【数10】
【0052】
【数11】
【0053】
【数12】
【0054】
【数13】
【0055】
また、(数14)〜(数17)のように変数分離を行う。
【0056】
【数14】
【0057】
【数15】
【0058】
【数16】
【0059】
【数17】
【0060】
更に、微細孔板の微細孔は、板厚方向に断面形状が一定であるので、
【0061】
【数18】
【0062】
【数19】
【0063】
【数20】
ということを考慮すれば、(数13)は、
【0064】
【数21】
【0065】
と書き表すことができる。単位長さ当たりのz軸方向の圧力損失P0は一定で、zの増分に対して負速度勾配と見做せるから、
【0066】
【数22】
【0067】
が得られる。故に、(数21)は、
【0068】
【数23】
【0069】
と書き表すことができて、これが矩形微細孔における音の基本式であり、定数は、
【0070】
【数24】
【0071】
【数25】
【0072】
であり、(数23)は変数wについて線形であるから、
【0073】
【数26】
【0074】
と正規化できる。また、微細孔の管壁で粒子速度がゼロになるので、
【0075】
【数27】
【0076】
が境界条件となり、矩形微細孔における音波の挙動、即ち、変数wは(数23)を境界条件(数27)の元に、一般的には有限差分法などの数値解法を応用して、求めることができる。そして、変数wを求めることができれば、微細孔面積の平均粒子速度は(数28)により計算することができる。
【0077】
【数28】
【0078】
z軸方向の単位長さ当たりの音響インピーダンスは、z軸方向の単位長さ当たりの圧力損失を、粒子速度の平均値で除したものであり、z軸方向の単位長さ当たりの圧力損失を1に正規化した場合のものであることを考慮して、(数29)のように書き表すことができる。
【0079】
【数29】
【0080】
それ故、微細孔のz軸方向の長さがH、開孔率がp((数3)参照)である矩形微細孔の基準化音響レジスタンス及び基準化音響リアクタンスは(数30)〜(数33)と書き表すことができる。
【0081】
【数30】
【0082】
【数31】
【0083】
【数32】
【0084】
【数33】
【0085】
ここに、(数30)及び(数31)において、Reは複素数の実数部を、Imは複素数の虚数部を表し、(数30)及び(数31)の第2項は管端補正項であり、deqは、2辺の長さがD1及びD2である矩形微細孔面積と等しい微細孔面積を持つ円形微細孔の直径である。
【0086】
上記(数30)、(数31)で与えられる基準化音響レジスタンス及び基準化音響リアクタンスは、微細孔板の材質が非金属である場合のものであり、微細孔板の材質が金属である場合は、(数24)に代えて、
【0087】
【数34】
【0088】
を、(数26)に代えて、
【0089】
【数35】
【0090】
を、(数32)に代えて、
【0091】
【数36】
【0092】
を用いて、(数23)、(数27)、(数28)を解いて、(数30)から基準化音響レジスタンスを、(数31)から基準化音響リアクタンスを求めれば良い。
【0093】
円形微細孔音響パネルと矩形微細孔音響パネルとの基準化音響インピーダンスの相違点を、数値例を以って説明する。円形微細孔音響パネル及び矩形微細孔音響パネルの板厚を0.5mm、微細孔のピッチを5.0mmとし、微細孔面積及び材質(非金属)を等しく設定した場合において、円形微細孔の直径を0.5mmとし、矩形微細孔管壁の短辺に対する長辺の比である矩形微細孔アスペクト比(D2/D1)を、1(矩形#1),2(矩形#2),・・・,6(矩形#6)とした場合の基準化音響レジスタンスの周波数特性の数値計算例を図4に、円形微細孔音響パネルの基準化音響レジスタンスに対する矩形微細孔音響パネルの基準化音響レジスタンスの相対比の周波数特性の数値計算例を図5に示す。また、同様に、基準化音響リアクタンスの周波数特性の数値計算例を図6に、円形微細孔音響パネルの基準化音響リアクタンスに対する矩形微細孔音響パネルの基準化音響リアクタンスの相対比の周波数特性の数値計算例を図7に示す。
【0094】
図4において、円形微細孔音響パネルの基準化音響レジスタンスは63Hzにおいて0.4であり、2500Hzにおいて0.78まで増加する。図4から、矩形微細孔音響パネルの基準化音響レジスタンスにおいて、矩形微細孔アスペクト比が1(矩形#1)の場合、63Hzにおいて0.47、2500Hzにおいて0.93と、円形微細孔音響パネルの値に近い値を持っているが、該アスペクト比が大きくなるにつれて、基準化音響レジスタンスの値が大きくなり、該アスペクト比が6(矩形#6)の場合、63Hzにおいて1.26、2500Hzにおいて1.57と非常に大きな値を持つことがわかる。
【0095】
図5から、円形微細孔音響パネルの基準化音響レジスタンスに対する矩形微細孔音響パネルの、基準化音響レジスタンスの相対比の周波数特性を見ると、矩形微細孔アスペクト比が1(矩形#1)の場合、63Hzにおいて1.16倍、2500Hzにおいて1.2倍と、円形微細孔音響パネルの値に近い値を持っているが、該アスペクト比が大きくなるにつれて、基準化音響レジスタンスの値が大きくなり、該アスペクト比が6(矩形#6)の場合、63Hzにおいて3.18倍、2500Hzにおいて2.03倍と非常に大きな値を持ち、中間の周波数帯域において、略直線的な変化をすることがわかる。
【0096】
図6において、円形微細孔音響パネルの基準化音響リアクタンスは63Hzにおいて4.06・10-4であり、2500Hzにおいて3.76・10-4まで単調に減少する。図6から、矩形微細孔音響パネルの基準化音響リアクタンスにおいて、矩形微細孔アスペクト比が1(矩形#1)の場合、63Hzにおいて4.31・10-4、2500Hzにおいて3.95・10-4と、円形微細孔音響パネルの値よりやや大きい値を持っているが、該アスペクト比が大きくなるにつれて、基準化音響リアクタンスの値が小さくなり、該アスペクト比が6(矩形#6)の場合、63Hzから500Hzの範囲において4.08・10-4、2500Hzにおいて4.02・10-4と変化が少ないことがわかる。
【0097】
図7から、円形微細孔音響パネルの基準化音響リアクタンスに対する矩形微細孔音響パネルの基準化音響リアクタンスの相対比の周波数特性を見ると、円形微細孔音響パネルの場合より最も乖離している事例が、矩形微細孔アスペクト比が1(矩形#1)で、400〜630Hzにおいて1.08倍であり、それ以外の事例は、円形微細孔音響パネルの値に殆ど近い値を持っていることがわかる。
【0098】
要約すれば、(イ)円形微細孔音響パネルと同じ微細孔面積を持つ矩形微細孔音響パネルの音響リアクタンスは、円形微細孔音響パネルの音響リアクタンスと殆ど同じであり、(ロ)円形微細孔音響パネルと同じ微細孔面積を持つ矩形微細孔音響パネルの音響レジスタンスは、矩形微細孔アスペクト比を調整することで、円形微細孔音響パネルの音響レジスタンスよりも大幅に大きくすることができる。それ故に、所望の基準化音響レジスタンスと基準化音響リアクタンスを持つ、矩形微細孔音響パネルを、容易に実現することができる。
【0099】
次に、非円形微細孔の第2の具体例として、菱形微細孔板について説明する。図8は、菱形微細孔の形状を示す説明図であり、D1及びD2は菱形微細孔管壁の対角線方向(直交するx軸及びy軸方向)の対角距離を示している。また、これら対角線の交点をx−y座標系の原点とする。
【0100】
矩形微細孔板の場合と同様に、(数23)〜(数26)が成り立ち、また、微細孔の管壁で粒子速度がゼロになることから、第1象限の管壁面上において、
【0101】
【数37】
【0102】
第2象限の管壁面上において、
【0103】
【数38】
【0104】
第3象限の管壁面上において、
【0105】
【数39】
【0106】
第4象限の管壁面上において、
【0107】
【数40】
【0108】
が境界条件となり、菱形微細孔における音波の挙動、即ち、変数wは(数23)を境界条件(数37)〜(数40)の元に、一般的には有限差分法などの数値解法を応用して、求めることができる。また、直交する対角距離がD1及びD2である菱形微細孔面積と等しい円形微細孔面積を持つ円形微細孔の直径deqは、次式により求めることができる。
【0109】
【数41】
【0110】
矩形微細孔板の場合と同様に、変数wを(数23)〜(数26)から算出し、微細孔面積の平均粒子速度は(数28)から、基準化音響レジスタンス及び基準化音響リアクタンスは、(数30)、(数31)で算出することができる。
【0111】
円形微細孔音響パネルと菱形微細孔音響パネルとの基準化音響インピーダンスの相違点を、数値例を以って説明する。円形微細孔音響パネル及び菱形微細孔音響パネルの板厚を0.5mm、微細孔のピッチを5.0mmとし、微細孔面積及び材質(非金属)を等しく設定した場合において、円形微細孔の直径を0.5mmとし、菱形微細孔管壁の短い対角距離に対する長い対角距離の比である菱形微細孔アスペクト比(D2/D1)を、1(菱形#1),2(菱形#2),・・・,6(菱形#6)とした場合の基準化音響レジスタンスの周波数特性の数値計算例を図9に、円形微細孔音響パネルの基準化音響レジスタンスに対する菱形微細孔音響パネルの基準化音響レジスタンスの相対比の周波数特性の数値計算例を図10に示す。また、同様に、基準化音響リアクタンスの周波数特性の数値計算例を図11に、円形微細孔音響パネルの基準化音響リアクタンスに対する菱形微細孔音響パネルの基準化音響リアクタンスの相対比の周波数特性の数値計算例を図12に示す。
【0112】
図9において、円形微細孔音響パネルの基準化音響レジスタンスは63Hzにおいて0.4であり、2500Hzにおいて0.78まで増加する。図9から、菱形微細孔音響パネルの基準化音響レジスタンスにおいて、菱形微細孔アスペクト比が1(菱形#1)の場合、63Hzにおいて0.46、2500Hzにおいて0.93と、円形微細孔音響パネルの値に近い値を持っているが、該アスペクト比が大きくなるにつれて、基準化音響レジスタンスの値が大きくなり、該アスペクト比が6(菱形#6)の場合、63Hzにおいて1.20、2500Hzにおいて1.79と非常に大きな値を持つことがわかる。
【0113】
図10から、円形微細孔音響パネルの基準化音響レジスタンスに対する菱形微細孔音響パネルの、基準化音響レジスタンスの相対比の周波数特性を見ると、菱形微細孔アスペクト比が1(菱形#1)の場合、63Hzにおいて1.14倍、2500Hzにおいて1.19倍と、円形微細孔音響パネルの値に近い値を持っているが、該アスペクト比が大きくなるにつれて、基準化音響レジスタンスの値が大きくなり、該アスペクト比が6(菱形#6)の場合、63Hzにおいて2.97倍、2500Hzにおいて2.32倍と非常に大きな値を持ち、中間の周波数帯域において、略直線的な変化をすることがわかる。
【0114】
図11において、円形微細孔音響パネルの基準化音響リアクタンスは63Hzにおいて4.06・10-4であり、2500Hzにおいて3.76・10-4まで単調に減少する。図11から、菱形微細孔音響パネルの基準化音響リアクタンスにおいて、菱形微細孔アスペクト比が1(菱形#1)の場合、63Hzにおいて4.27・10-4、2500Hzにおいて3.91・10-4と、円形微細孔音響パネルの値よりやや大きい値を持っているが、該アスペクト比が大きくなるにつれて、基準化音響リアクタンスの値が小さくなり、該アスペクト比が6(菱形#6)の場合、63Hzにおいて4.56・10-4、2500Hzにおいて4.15・10-4と変化が少ないくことがわかる。
【0115】
図12から、円形微細孔音響パネルの基準化音響リアクタンスに対する菱形微細孔音響パネルの基準化音響リアクタンスの相対比の周波数特性を見ると、63Hz〜2500Hzのすべての周波数域において、菱形微細孔アスペクト比が1から6の領域において、最小値は1.04倍であり、最大値は1.14倍という狭い範囲内に存在していることがわかる。
【0116】
要約すれば、(イ)円形微細孔音響パネルと同じ微細孔面積を持つ菱形微細孔音響パネルの音響リアクタンスは、円形微細孔音響パネルの音響リアクタンスに殆ど同じであり、(ロ)円形微細孔音響パネルと同じ微細孔面積を持つ菱形微細孔音響パネルの音響レジスタンスは、菱形微細孔アスペクト比を調整することで、円形微細孔音響パネルの音響レジスタンスよりも大幅に大きくすることができる。それ故に、所望の基準化音響レジスタンスと基準化音響リアクタンスを持つ、菱形微細孔音響パネルを、容易に実現することができる。
【0117】
次に、非円形微細孔の第3の具体例として、2等辺3角形微細孔板について説明する。図13は、菱形微細孔の形状を示す説明図であり、D及びHは2等辺3角形微細孔管壁の底辺の長さ及び高さを示している。また、直交座標系のx軸を2等辺3角形の底辺上におき、原点を底辺の中点とする。
【0118】
矩形微細孔板の場合と同様に、(数23)〜(数26)が成り立ち、また、微細孔の管壁で粒子速度がゼロになることから、底辺上において、
【0119】
【数42】
【0120】
x≦0の斜辺上において、
【0121】
【数43】
【0122】
x>0斜辺上において、
【0123】
【数44】
【0124】
が境界条件となり、2等辺3角形微細孔における音波の挙動、即ち、変数wは(数23)を境界条件(数42)〜(数44)の元に、一般的には有限差分法などの数値解法を応用して、求めることができる。また、底辺の距離がD、高さがHである2等辺3角形の矩形微細孔面積と等しい微細孔面積を持つ円形微細孔の直径deqは、次式により求めることができる。
【0125】
【数45】
【0126】
矩形微細孔板の場合と同様に、変数wを(数23)〜(数26)から算出し、微細孔面積の平均粒子速度は(数28)から、基準化音響レジスタンス及び基準化音響リアクタンスは、(数30)、(数31)で算出することができる。
【0127】
円形微細孔音響パネルと2等辺3角形微細孔音響パネルとの基準化音響インピーダンスの相違点を、数値例を以って説明する。円形微細孔音響パネル及び2等辺3角形微細孔音響パネルの板厚を0.5mm、微細孔のピッチを5.0mmとし、微細孔面積及び材質(非金属)を等しく設定した場合において、円形微細孔の直径を0.5mmとし、2等辺3角形菱形微細孔管壁の底辺に対する高さの比である2等辺3角形微細孔アスペクト比(H/D)を、0.87(3角形#1),1.73(3角形#2),2.60(3角形#3),3.46(3角形#4),4.33(3角形#5),5.20(3角形#6)とした場合の基準化音響レジスタンスの周波数特性の数値計算例を図14に、円形微細孔音響パネルの基準化音響レジスタンスに対する2等辺3角形微細孔音響パネルの基準化音響レジスタンスの相対比の周波数特性の数値計算例を図15に示す。また、同様に、基準化音響リアクタンスの周波数特性の数値計算例を図16に、円形微細孔音響パネルの基準化音響リアクタンスに対する2等辺3角形微細孔音響パネルの基準化音響リアクタンスの相対比の周波数特性の数値計算例を図17に示す。
【0128】
図14において、円形微細孔音響パネルの基準化音響レジスタンスは63Hzにおいて0.4であり、2500Hzにおいて0.78まで増加する。図14から、2等辺3角形微細孔音響パネルの基準化音響レジスタンスにおいて、2等辺3角形微細孔アスペクト比が0.87(3角形#1)の場合、63Hzにおいて0.46、2500Hzにおいて0.89と、円形微細孔音響パネルの値に近い値を持っているが、3角形アスペクト比が大きくなるにつれて、基準化音響レジスタンスの値が大きくなり、3角形アスペクト比が5.20(3角形#6)の場合、63Hzにおいて1.0、2500Hzにおいて1.50と非常に大きな値を持つことがわかる。
【0129】
図15から、円形微細孔音響パネルの基準化音響レジスタンスに対する2等辺3角形微細孔音響パネルの、基準化音響レジスタンスの相対比の周波数特性を見ると、2等辺3角形微細孔アスペクト比が0.87(3角形#1)の場合、63Hzにおいて1.14倍、2500Hzにおいて1.15倍と、円形微細孔音響パネルの値に近い値を持っているが、3角形アスペクト比が大きくなるにつれて、基準化音響レジスタンスの値が大きくなり、3角形アスペクト比が5.20(3角形#6)の場合、63Hzにおいて2.47倍、2500Hzにおいて2.94倍と非常に大きな値を持ち、中間の周波数帯域において、略直線的な変化をすることがわかる。
【0130】
図16において、円形微細孔音響パネルの基準化音響リアクタンスは63Hzにおいて4.06・10-4であり、2500Hzにおいて3.76・10-4まで単調に減少する。図16から、2等辺3角形微細孔音響パネルの基準化音響リアクタンスにおいて、2等辺3角形微細孔アスペクト比が0.87(3角形#1)の場合、63Hzにおいて3.98・10-4、2500Hzにおいて3.60・10-4と、円形微細孔音響パネルの値よりやや小さい値を持っているが、該アスペクト比が大きくなるにつれて、基準化音響リアクタンスの値が大きくなり、該アスペクト比が5.20(3角形#6)の場合、63Hzにおいて4.17・10-4、2500Hzにおいて3.80・10-4と円形微細孔音響パネルの値に近づくことがわかる。
【0131】
図17から、円形微細孔音響パネルの基準化音響リアクタンスに対する2等辺3角形微細孔音響パネルの基準化音響リアクタンスの相対比の周波数特性を見ると、63Hz〜2500Hzのすべての周波数域において、2等辺3角形微細孔アスペクト比が0.87(3角形#1)から5.20(3角形#6)の領域において、最小値は0.96倍であり、最大値は1.04倍という狭い範囲内に存在していることがわかる。
【0132】
要約すれば、(イ)円形微細孔音響パネルと同じ微細孔面積を持つ2等辺3角形微細孔音響パネルの音響リアクタンスは、円形微細孔音響パネルの音響リアクタンスと殆ど同じであり、(ロ)円形微細孔音響パネルと同じ微細孔面積を持つ2等辺3角形微細孔音響パネルの音響レジスタンスは、2等辺3角形微細孔アスペクト比を調整することで、円形微細孔音響パネルの音響レジスタンスよりも大幅に大きくすることができる。それ故に、所望の基準化音響レジスタンスと基準化音響リアクタンスを持つ、2等辺3角形微細孔音響パネルを、容易に実現することができる。
【0133】
以上のとおり、本発明の非円形微細孔音響パネルにおいて、該非円形微細孔は、微細孔面積が等しい円形微細孔よりも微細孔の管壁(周壁)が空気に触れる面積が大きくなり、さらに、アスペクト比を大きくすると該面積が増加する。そして、アスペクト比が大きくなれば、微細孔がより細長くなるため、空気に触れる面積が大きい対向面間の距離が狭くなる。よって、空気の粘性に起因する摩擦損失を、円形微細孔音響パネルにおける摩擦損失よりも大きくすることができて、前記のような音響レジスタンスの調整幅を広げることができる。
【0134】
以上の説明においては、非円形微細孔形状を、矩形、菱形、2等辺3角形等の細長形状(縦横の長さが異なる形状)として、該細長形状のアスペクト比を変えることにより非円形微細孔音響パネルの音響レジスタンスを調整する場合を説明したが、本発明の微細孔形状はこのような場合に限定されるものではない。すなわち、例えば非円形微細孔として任意の微細孔形状のアスペクト比を変えることにより、非円形微細孔音響パネルの音響レジスタンスを調整することができる。
【0135】
また、以上の説明においては、非円形微細孔のアスペクト比を変えることにより非円形微細孔音響パネルの音響レジスタンスを調整する場合を説明したが、非円形微細孔を十字形、星形、歯車形、楕円形等としてもよい。このような形状によっても、微細孔面積が等しい円形微細孔よりも微細孔の管壁(周壁)が空気に触れる面積が大きくなり、さらに、微細孔の細長い部分の存在により、空気に触れる面積が大きい対向面間の距離が狭くなる。よって、空気の粘性に起因する摩擦損失を、円形微細孔音響パネルにおける摩擦損失よりも大きくすることができて、前記のような音響レジスタンスの調整幅を広げることができる。
【0136】
以上のように、本発明の非円形微細孔は、微細孔面積に対して該微細孔の周の長さ(該微細孔を形成する管壁(周壁)の内周の長さ)を長くすることにより、該非円形微細孔を通過する空気の粘性に起因する摩擦損失を増大させるものである。そして、非円形微細孔音響パネルの音響レジスタンスと音響リアクタンスに適切な値を持たせるための設計幅が広がると共に設計が容易となるものである。したがって、該音響パネルと空気層で構成する吸音・遮音装置の性能向上を図ることが容易となる。なお、本発明の非円形微細孔は、レーザー又はパンチ等により形成することができる。
【0137】
実施の形態2.
微細孔音響パネルを、音響的に剛な壁体と音源との中間に、該壁体に対して所定距離Dを隔てて配置する時、大気が持つ音響レジスタンス1と、音響パネルが持つ(大気を規準とする)基準化音響レジスタンスr(数1)、及び、(大気を規準とする)基準化音響リアクタンスm(数2)、微細孔板と該壁体との中間に介在する空気層が持つ(大気を規準とする)基準化音響キャパシタンス(数7)からなる音響系は、図18に示すような電気的等価回路で表すことができて、この回路は直列共振回路を形成することが知られている。
【0138】
図18の回路に、角周波数ω、音速cの音波が上記音響パネルに垂直に入射する時の吸音率は、次式で計算することができる。
【0139】
【数46】
【0140】
それ故に、実施の形態1の非円形微細孔音響パネルを用いれば、音響インピーダンスを最適の範囲に設定することができて、円形微細孔音響パネルからなる吸音装置よりも、(イ)吸音率のピーク値を高め、吸音帯域巾を拡大することができて、(ロ)吸音性能を損なうことなく、空気層の厚さを薄くする事ができて、(ハ)吸音性能を損なうことなく、微細孔のピッチを広げることができて、(ニ)吸音性能を損なうことなく、微細孔板の厚さを薄くすることができる。このことを、以下において、数値例にて説明する。
【0141】
表1は、1層円形微細孔音響パネルと空気層とで構成される吸音装置の寸法諸元表である。また、表2は、1層矩形微細孔音響パネルと空気層とで構成される吸音装置2種類の寸法諸元表であり、これら2種類の矩形微細孔面積は表1の円形微細孔面積と等しく、矩形微細孔アスペクト比が、表2の矩形#1では4.64、矩形#2では2.19である。
【0142】
表2の矩形#1は空気層厚さを表1と同一にして、吸音性能の向上を図ったものであり、矩形#2は空気層厚さを表1よりも薄くして吸音性能を表1と同程度にし、その代わりに微細孔ピッチを大きく、微細孔板の厚さを薄くすることを目的にしたものである。
【0143】
【表1】
【0144】
【表2】
【0145】
表1及び表2の微細孔音響パネルで構成される吸音装置の吸音率の周波数特性の数値計算例を図19に示す。矩形#2(表2)は、円形(表1)よりも、空気層厚さを約33%薄くすることができ、矩形#1(表2)は、円形(表1)よりも、吸音帯域巾を約1.38倍に拡大することができる。また、単位面積当たりの微細孔の数は、円形(表1)よりも、矩形#1(表2)は約29%少なく、矩形#2(表2)は約43%少なくすることができ、該孔数の減少分に比例して生産コストを削減することができる。さらに、音響パネルの板厚は、円形(表1)よりも、矩形#1(表2)は約42%薄く、矩形#2(表2)は約19%薄くすることができ、該板厚の減少分に比例して材料費を削減することができる。
【0146】
表3は、2層円形微細孔音響パネルと空気層とで構成される吸音装置の寸法諸元表であり、表4は、2層矩形微細孔音響パネルと空気層とで構成される吸音装置2種類の寸法諸元表であり、これら2種類の矩形微細孔面積は、表3の円形微細孔面積に等しく、矩形微細孔アスペクト比が、表4の矩形#1では4.16、矩形#2では4.37である。
【0147】
表4の矩形#1は空気層厚さを表3と略同一にして、吸音性能の向上を図ったものであり、矩形#2は空気層厚さを表3よりも薄くして吸音性能を表3と同程度にし、その代わりに微細孔ピッチを大きく、微細孔板の厚さを薄くすることを目的にしたものであるが、略全周波数域で、表3よりも優れた吸音性能を持つ。
【0148】
【表3】
【0149】
【表4】
【0150】
表3及び表4の微細孔音響パネルで構成される吸音装置の吸音率の周波数特性の数値計算例を図20に示す。矩形#2(表4)は、円形(表3)よりも、空気層厚さを約20%薄くすることができ、矩形#1(表4)は、円形(表3)よりも、吸音帯域巾を1.15倍に拡大することができる。また、単位面積当たりの微細孔の数は、円形(表3)よりも、矩形#1(表4)は約15%少なく、矩形#2(表4)は27%少なくすることができ、該微細孔数の減少分に比例して生産コストを削減することができる。さらに、音響パネルの板厚は、円形(表3)よりも、矩形#1(表4)は約21%薄く、矩形#2(表4)は約18%薄くすることができ、該板厚の減少分に比例して材料費を削減することができる。
【0151】
以上のように、矩形微細孔音響パネルで構成される吸音装置が、円形微細孔音響パネルで構成される吸音装置よりも、吸音性能並びにコンパクト化及び低コスト化等でより優位であるためには、矩形微細孔アスペクト比が約2よりも大きいことが望ましいといえる。
【0152】
表5は、1層菱形微細孔音響パネルと空気層とで構成される吸音装置2種類の寸法諸元表であり、これら2種類の菱形微細孔面積は、表1の円形微細孔面積に等しく、菱形微細孔アスペクト比が、表5の菱形#1では4.98、菱形#2では2.83である。表5の菱形#1は空気層厚さを表1と同一にして、吸音性能の向上を図ったものであり、表5の菱形#2は空気層厚さを表1よりも薄くして吸音性能を表1と同程度にし、その代わりに微細孔ピッチを大きく、微細孔板の厚さを薄くすることを目的にしたものである。
【0153】
【表5】
【0154】
表1及び表5の微細孔音響パネルで構成される吸音装置の吸音率の周波数特性の数値計算例を図21に示す。菱形#2(表5)は、円形(表1)よりも、空気層厚さを約33%薄くすることができ、菱形#1(表5)は、円形(表1)よりも、吸音帯域巾を約1.38倍に拡大することができる。また、単位面積当たりの微細孔の数は、円形(表1)よりも、菱形#1(表5)は約14%少なく、菱形#2(表5)は約58%少なくすることができて、該孔数の減少分に比例して生産コストを削減することができる。さらに、音響パネルの板厚は、円形(表1)よりも、菱形#1(表5)は約31%薄く、菱形#2(表5)では46%薄くすることができて、板厚の減少分に比例して材料費を削減することができる。
【0155】
以上のように、菱形微細孔音響パネルで構成される吸音装置が、円形微細孔音響パネルで構成される吸音装置よりも、吸音性能並びにコンパクト化及び低コスト化等でより優位であるためには、菱形微細孔アスペクト比が約2.8よりも大きいことが望ましいといえる。
【0156】
表6は、1層2等辺3角形微細孔音響パネルと空気層とで構成される吸音装置2種類の寸法諸元表であり、これら2種類の2等辺3角形微細孔面積は、表1の円形微細孔面積に等しく、2等辺3角形微細孔アスペクト比は、表6の設計#1では5.0、設計#2では1.41である。
【0157】
表6の2等辺3角形#1は空気層厚さを表1と同一にして、吸音性能の向上を図ったものであり、表6の2等辺3角形#2は空気層厚さを表1よりも薄くして吸音性能を表1と同程度にし、その代わりに微細孔ピッチを大きく、微細孔板の厚さを薄くすることを目的にしたものである。
【0158】
【表6】
【0159】
表1及び表6の微細孔音響パネルで構成される吸音装置の吸音率の周波数特性の数値計算例を図22に示す。2等辺3角形#2(表6)は、円形(表1)よりも、空気層厚さを約33%薄くすることができ、2等辺3角形#1(表6)は、円形(表1)よりも、吸音帯域巾を約1.38倍に拡大することができる。また、単位面積当たりの微細孔の数は、円形(表1)よりも、2等辺3角形#1(表6)は約37%少なく、2等辺3角形#2(表6)は約49%少なくすることができて、該孔数の減少分に比例して生産コストを削減することができる。さらに、音響パネルの板厚は、円形(表1)よりも、2等辺3角形#1(表6)は約59%薄く、2等辺3角形#2(表6)は約26%薄くすることができて、該板厚の減少分に比例して材料費を削減することができる。
【0160】
以上のように、2等辺3角形微細孔音響パネルで構成される吸音装置が、円形微細孔音響パネルで構成される吸音装置よりも、吸音性能並びにコンパクト化及び低コスト化等でより優位であるためには、2等辺3角形微細孔アスペクト比が約1.4よりも大きいことが望ましいといえる。
【0161】
実施の形態3.
微細孔音響パネルの2枚以上を所定距離を隔てて相対配置し、これら音響パネルを音源に対して所定距離を隔てて配置してなる、先願1の吸音・遮音装置によれば、2層の音響パネルで構成される吸音・遮音装置(音響系の電気的等価回路が図23にて示される)において、1番目の音響パネルの基準化音響レジスタンスをr1、基準化音響リアクタンスをm1、2番目の音響パネルの基準化音響レジスタンスをr2、基準化音響リアクタンスをm2、2層の音響パネルの間隔をD1、音速をc、音波の角周波数をωとすると、音波が音響パネルに垂直に入射する場合の音波のエネルギー吸収率Pdは、下記(数47)〜(数54)で計算できる。
【0162】
【数47】
【0163】
【数48】
【0164】
【数49】
【0165】
【数50】
【0166】
【数51】
【0167】
【数52】
【0168】
【数53】
【0169】
【数54】
【0170】
また、上記P2Aは出力側空気インピーダンスで消費する基準化音響エネルギーであるから、透過損失は、
【0171】
【数55】
【0172】
と書き表すことができる。それ故に、音響パネルとして、実施の形態1の非円形微細孔音響パネルを用いれば、先願1の構成の吸音・遮音装置において、円形微細孔音響パネルからなる吸音・遮音装置よりも、(イ)エネルギー吸収率のピーク値を高め、帯域巾を拡大することができて、(ロ)エネルギー吸収性能を損なうことなく、空気層の厚さを薄くする事ができて、(ハ)エネルギー吸収性能を損なうことなく、微細孔のピッチを広げることができて、(ニ)エネルギー吸収性能を損なうことなく、微細孔板の厚さを薄くすることができる。このことを、以下において、数値例にて説明する。
【0173】
表7は、2層円形微細孔音響パネルと空気層とで構成される先願1の吸音・遮音装置の寸法諸元表であり、表8は、2層矩形微細孔音響パネルと空気層とで構成される先願1の吸音・遮音装置2種類の寸法諸元表であり、これら2種類の矩形微細孔面積は、表7の円形微細孔面積と等しく、矩形微細孔アスペクト比は、表8の矩形#1では5.41、矩形#2では3.22である。
【0174】
表8の矩形#1は空気層厚さを表7と同一にして、吸音性能の向上を図ったものであり、表8の矩形#2は空気層厚さを表7よりも薄くして、吸音性能を表7と同程度にし、その代わりに微細孔ピッチを大きく、微細孔板の厚さを薄くすることを目的にしたものである。
【0175】
【表7】
【0176】
【表8】
【0177】
表7及び表8の微細孔音響パネルで構成される吸音・遮音装置のエネルギー吸収率の周波数特性の数値計算例を図24に、透過損失の周波数特性の数値計算例を図25に示す。矩形#2(表8)は、円形(表7)よりも、空気層厚さを約16%薄くすることができる。また、円形(表7)よりも、矩形#1(表8)は吸音帯域巾を約1.38倍、矩形#2(表8)は吸音帯域巾を約1.09倍に拡大することができる。さらに、単位面積当たりの微細孔の数は、円形(表7)よりも、矩形#1及び矩形#2(表8)共に、約22%少なくすることができ、該孔数の減少分に比例して生産コストを削減することができる。さらにまた、音響パネルの板厚は、円形(表7)よりも、矩形#1(表8)は約54%薄く、矩形#2(表8)は約28%薄くすることができ、該板厚の減少分に比例して材料費を削減することができる。
【0178】
以上のように、矩形微細孔音響パネルで構成される吸音・遮音装置が、円形微細孔音響パネルで構成される吸音・遮音装置よりも、吸音・遮音性能並びにコンパクト化及び低コスト化等でより優位であるためには、矩形微細孔アスペクト比が約3.2よりも大きいことが望ましいといえる。
【0179】
表9は、2層菱形微細孔音響パネルと空気層とで構成される先願1の吸音・遮音装置2種類の寸法諸元表であり、これら2種類の矩形微細孔面積は、表7の円形微細孔面積に等しく、菱形微細孔アスペクト比は、表9の菱形#1では6.0、菱形#2では3.34である。
【0180】
表9の菱形#1は空気層厚さを表7と同一にして、吸音性能の向上を図ったものであり、表9の菱形#2は空気層厚さを表7よりも薄くして、吸音性能を表7と同程度にし、その代わりに微細孔ピッチを大きく、微細孔板の厚さを薄くすることを目的にしたものである。
【0181】
表7及び表9の微細孔音響パネルで構成される吸音・遮音装置の吸音率の周波数特性の数値計算例を図26に、透過損失の周波数特性の数値計算例を図27に示す。菱形#2(表9)は、円形(表7)よりも、空気層厚さを約6%薄くすることができる。また、円形(表7)よりも、菱形#1(表9)は吸音帯域巾を約1.38倍に、菱形#2(表9)は吸音帯域巾を約1.09倍に拡大することができる。さらに、単位面積当たりの微細孔の数は、円形(表7)よりも、菱形#1及び菱形#2(表9)共に、約21%少なくすることができ、該孔数の減少分に比例して生産コストを削減することができる。さらにまた、音響パネルの板厚は、円形(表7)よりも、表9の菱形#1(表9)は約54%薄く、菱形#2(表9)は約26%薄くすることができ、該板厚の減少分に比例して材料費を削減することができる。
【0182】
以上のように、菱形微細孔音響パネルで構成される吸音・遮音装置が、円形微細孔音響パネルで構成される吸音・遮音装置よりも、吸音・遮音性能並びにコンパクト化及び低コスト化等でより優位であるためには、菱形微細孔アスペクト比が約3.3よりも大きいことが望ましいといえる。
【0183】
表10は、2層2等辺3角形微細孔音響パネルと空気層とで構成される先願1の吸音・遮音装置2種類の寸法諸元表であり、これら2種類の矩形微細孔面積は、表7の円形微細孔面積と等しく、2等辺3角形微細孔アスペクト比が、表10の2等辺3角形#1では4.65、2等辺3角形#2では2.76である。
【0184】
表10の2等辺3角形#1は空気層厚さを表7と同一にして、吸音性能の向上を図ったものであり、表10の2等辺3角形#2は空気層厚さを表7よりも薄くして、吸音性能を表7と同程度にし、その代わりに微細孔ピッチを大きく、微細孔板の厚さを薄くすることを目的にしたものである。
【0185】
【表9】
【0186】
【表10】
【0187】
表7及び表10の微細孔音響パネルで構成される吸音・遮音装置のエネルギー吸収率の周波数特性の数値計算例を図28に、透過損失の周波数特性の数値計算例を図29に示す。2等辺3角形#2(表10)は、円形(表7)よりも、空気層厚さを約2.5%薄くすることができる。また、円形(表7)よりも、2等辺3角形#1(表10)は、吸音帯域巾を約1.38倍に、2等辺3角形#2(表10)は吸音帯域巾を約1.09倍に拡大することができる。さらに、単位面積当たりの微細孔の数は、円形(表7)よりも、2等辺3角形#1(表10)は約21%、2等辺3角形#2(表10)は約22%少なくすることができ、該孔数の減少分に比例して生産コストを削減することができる。さらにまた、音響パネルの板厚は、円形(表7)よりも、2等辺3角形#1(表10)は約54%薄く、2等辺3角形#2(表10)では約37%薄くすることができ、該板厚の減少分に比例して材料費を削減することができる。
【0188】
以上のように、2層2等辺3角形微細孔音響パネルで構成される吸音・遮音装置が、円形微細孔音響パネルで構成される吸音・遮音装置よりも、吸音・遮音性能並びにコンパクト化及び低コスト化等でより優位であるためには、2層2等辺3角形微細孔アスペクト比が約2.7よりも大きいことが望ましいといえる。
【0189】
実施の形態4.
微細孔板音響パネルと無孔音響パネルとで一対の音響パネルを構成し、該微細孔板音響パネル及び無孔音響パネルを密着積層又は所定距離を隔てて相対配置すると共に、該一対の音響パネルの2組を、それぞれの微細孔音響パネルが相対するように所定距離を隔てて配置してなる、先願2の遮音装置において、一方の一対の音響パネルの微細孔板の基準化音響レジスタンスをr1、基準化音響リアクタンスをm1、無孔板の面密度をM1、微細孔板と無孔板との間隔をD1、他方の一対の音響パネルの微細孔板の基準化音響レジスタンスをr2、基準化音響リアクタンスをm2、無孔板の面密度をM2、微細孔板と無孔板との間隔をD3、2層の音響パネルの間隔をD2、音速をc、音波の角周波数をωとすると、音波が音響パネルに垂直に入射する場合の音波の透過損失TLは、下記(数56)〜(数67)で計算できる。
【0190】
なお、該遮音装置の音響系の電気的等価回路(図30)において、Z0、Z1、Z2、Z3及びZ4は、其々の回路の接合点から、出力側へのインピーダンスを表している。
【0191】
【数56】
【0192】
【数57】
【0193】
【数58】
【0194】
【数59】
【0195】
Z4におけるエネルギー消費P4及び第1の壁体から第2の壁体への透過損失TLは、
【0196】
【数60】
【0197】
【数61】
【0198】
【数62】
【0199】
【数63】
【0200】
【数64】
【0201】
【数65】
【0202】
【数66】
【0203】
【数67】
【0204】
で計算することができる。それ故に、音響パネルとして、実施の形態1の非円形微細孔音響パネルを用いれば、先願2の構成の遮音装置において、円形微細孔音響パネルからなる遮音装置よりも、共鳴を起すことなく、より高い透過損失を実現することができる。このことを、以下において、数値例にて説明する。
【0205】
表11は、2層の無孔音響パネルから構成される遮音装置の寸法諸元表(設計例#4)であり、無孔板の面密度は8kg/m2、空気層、即ち音響パネルの間隔は60mmである。表12は、2層の無孔板、2層の円形微細孔板からなる音響パネル、及び、空気層で構成される、先願2の遮音装置の寸法諸元表(設計例#1)であり、無孔板の面密度は8kg/m2、空気層、即ち音響パネルの間隔は60mmであり、円形微細孔の直径は0.51mm、板厚は0.76mm、孔のピッチは20.27mmであり、無孔板と円形微細孔板は隙間無く密接して、音響パネルを構成し、円形微細孔板側が遮音装置の内側を向いて、配置されている。
【0206】
【表11】
【0207】
【表12】
【0208】
表13は、2層の無孔板、2層の矩形微細孔板からなる音響パネル、及び、空気層で構成される、遮音装置2種類の寸法諸元表(設計例#2、設計例#3)であり、これら2種類の矩形微細孔面積は、表12の円形微細孔面積に等しく、矩形微細孔アスペクト比が、設計例#2では6.17であり、設計例#3では3.54である。
【0209】
また、表13の無孔板の面密度は8kg/m2、空気層、即ち音響パネルの間隔は60mmであり、矩形微細孔板の板厚は0.76mm、孔のピッチは設計例#2では20.32mm、設計例#3では20.4mmであり、無孔板と矩形微細孔板は隙間無く密接して、音響パネルを構成し、矩形微細孔板側が遮音装置の内側を向いて、配置されている。
【0210】
【表13】
【0211】
図31は、表11〜13の遮音装置の透過損失の周波数特性の数値計算例を示す図であり、表11の2層無孔板のみからなる遮音装置(設計例#4)は、125Hzにおいて共鳴が起り、透過損失が略ゼロdBとなって、遮音が不可能となっていることがわかる。これに対して、表12の先願2の遮音装置(設計例#1)は、低周波域から100Hzまでは、略20dBの透過損失を保ち、共鳴を起すことなく、周波数が増すと共に、透過損失が増加して行く。また、表13の矩形微細孔板を用いた遮音装置(設計例#2、設計例#3)は、31Hzにおける透過損失が、設計例#2では30dB、設計例#3では26dBを実現できて、共鳴を起すことなく、周波数が増すと共に、更に大きな透過損失を実現できる。それ故に、本実施の形態において、円形断面微細孔よりも、矩形断面微細孔を用いる方がより高い透過損失を容易に実現できる特長を持つ。
【0212】
表14は、2層の無孔板と、2層の菱形微細孔板からなる音響パネルと、空気層とで構成される、遮音装置2種類の寸法諸元表(設計例#2、設計例#3)であり、これら2種類の菱形微細孔面積は、表12の円形微細孔面積に等しく、菱形微細孔アスペクト比が、設計#2では5.96であり、設計#3では3.5である。
【0213】
表14の無孔板の面密度は8kg/m2、空気層、即ち音響パネルの間隔は60mmであり、菱形微細孔板の板厚は0.75mm、孔のピッチは設計例#2では20.4mm、設計例#3では20.38mmであり、無孔板と菱形微細孔板は隙間無く密接して、音響パネルを構成し、菱形微細孔板側が遮音装置の内側を向いて、配置されている。
【0214】
【表14】
【0215】
図32は、表11、表12、表14の遮音装置の透過損失の周波数特性の数値計算例を示す図であり、表11の2層無孔板のみからなる遮音装置(設計例#4)は、125Hzにおいて共鳴が起り、透過損失が略ゼロdBとなって、遮音が不可能となっていることがわかる。これに対して、表14の菱形微細孔板を用いた遮音装置(設計例#2、設計例#3)は、31Hzにおける透過損失が、設計例#2では31dB、設計例#3では26dBを実現できて、共鳴を起すことなく、周波数が増すと共に、更に大きな透過損失を実現できる。それ故に、本実施の形態において、円形断面微細孔よりも、菱形断面微細孔を用いる方がより高い透過損失を容易に実現できる特長を持つ。
【0216】
表15は、2層の無孔板と、2層の2等辺3角形微細孔板からなる音響パネルと、空気層とで構成される、遮音装置2種類の寸法諸元表(設計例#2、設計例#3)であり、これら2種類の2等辺3角形微細孔面積は、表12の円形微細孔面積に等しく、2等辺3角形微細孔アスペクト比が、設計#2では5.14であり、設計#3では3.0である。
【0217】
表15の無孔板の面密度は8kg/m2、空気層、即ち音響パネルの間隔は60mmであり、2等辺3角形微細孔板の板厚は0.76mm、孔のピッチは設計例#2では20.21mm、設計例#3では20.35mmであり、無孔板と2等辺3角形微細孔板は隙間無く密接して、音響パネルを構成し、2等辺3角形微細孔板側が遮音装置の内側を向いて、配置されている。
【0218】
【表15】
【0219】
図33は、表11、表12、表15の遮音装置の透過損失の周波数特性の数値計算例を示す図であり、表11の2層無孔板のみからなる遮音装置(設計例#4)は、125Hzにおいて共鳴が起り、透過損失が略ゼロdBとなって、遮音が不可能となっていることがわかる。これに対して、表15の2等辺3角形微細孔板を用いた遮音装置(設計例#2、設計例#3)は、31Hzにおける透過損失が、設計例#2では31dB、設計例#3では26dBを実現できて、共鳴を起すことなく、周波数が増すと共に、更に大きな透過損失を実現できる。それ故に、本実施の形態において、円形断面微細孔よりも、2等辺3角形微細孔を用いる方がより高い透過損失を容易に実現できる特長を持つ。
【図面の簡単な説明】
【0220】
【図1】本発明の実施の形態1に係る非円形微細孔の例を示す斜視図である。
【図2】矩形微細孔音響パネルの斜視図である。
【図3】矩形微細孔形状の説明図である。
【図4】矩形微細孔音響パネルの基準化音響レジスタンスの周波数特性の数値計算例を示す図である。
【図5】円形微細孔音響パネルの基準化音響レジスタンスに対する矩形微細孔音響パネルの基準化音響レジスタンスの相対比の周波数特性の数値計算例を示す図である。
【図6】矩形微細孔音響パネルの基準化音響リアクタンスの周波数特性の数値計算例を示す図である。
【図7】円形微細孔音響パネルの基準化音響リアクタンスに対する矩形微細孔音響パネルの基準化音響リアクタンスの相対比の周波数特性の数値計算例を示す図である。
【図8】菱形微細孔形状の説明図である。
【図9】菱形微細孔音響パネルの基準化音響レジスタンスの周波数特性の数値計算例を示す図である。
【図10】円形微細孔音響パネルの基準化音響レジスタンスに対する菱形微細孔音響パネルの基準化音響レジスタンスの相対比の周波数特性の数値計算例を示す図である。
【図11】菱形微細孔音響パネルの基準化音響リアクタンスの周波数特性の数値計算例を示す図である。
【図12】円形微細孔音響パネルの基準化音響リアクタンスに対する菱形微細孔音響パネルの基準化音響リアクタンスの相対比の周波数特性の数値計算例を示す図である。
【図13】2等辺3角形微細孔形状の説明図である。
【図14】2等辺3角形微細孔音響パネルの基準化音響レジスタンスの周波数特性の数値計算例を示す図である。
【図15】円形微細孔音響パネルの基準化音響レジスタンスに対する2等辺3角形微細孔音響パネルの基準化音響レジスタンスの相対比の周波数特性の数値計算例を示す図である。
【図16】2等辺3角形微細孔音響パネルの基準化音響リアクタンスの周波数特性の数値計算例を示す図である。
【図17】円形微細孔音響パネルの基準化音響リアクタンスに対する2等辺3角形微細孔音響パネルの基準化音響リアクタンスの相対比の周波数特性の数値計算例を示す図である。
【図18】本発明の実施の形態2に係る微細孔音響パネルを音響的に剛な壁体と音源との中間に配置した場合の音響系の電気的等価回路を示す図である。
【図19】1層円形微細孔音響パネルと空気層とで構成される吸音装置及び1層矩形微細孔音響パネルと空気層とで構成される吸音装置の吸音率の周波数特性の数値計算例を示す図である。
【図20】2層円形微細孔音響パネルと空気層とで構成される吸音装置及び2層矩形微細孔音響パネルと空気層とで構成される吸音装置の吸音率の周波数特性の数値計算例を示す図である。
【図21】1層円形微細孔音響パネルと空気層とで構成される吸音装置及び1層菱形微細孔音響パネルと空気層とで構成される吸音装置の吸音率の周波数特性の数値計算例を示す図である。
【図22】1層円形微細孔音響パネルと空気層とで構成される吸音装置及び1層2等辺3角形微細孔音響パネルと空気層とで構成される吸音装置の吸音率の周波数特性の数値計算例を示す図である。
【図23】本発明の実施の形態3に係る2層の音響パネルで構成される吸音・遮音装置の音響系の電気的等価回路を示す図である。
【図24】2層円形微細孔音響パネルと空気層とで構成される吸音・遮音装置及び2層矩形微細孔音響パネルと空気層とで構成される吸音・遮音装置のエネルギー吸収率の周波数特性の数値計算例を示す図である。
【図25】同じく透過損失の周波数特性の数値計算例を示す図である。
【図26】2層円形微細孔音響パネルと空気層とで構成される吸音・遮音装置及び2層菱形微細孔音響パネルと空気層とで構成される吸音・遮音装置のエネルギー吸収率の周波数特性の数値計算例を示す図である。
【図27】同じく透過損失の周波数特性の数値計算例を示す図である。
【図28】2層円形微細孔音響パネルと空気層とで構成される吸音・遮音装置及び2層2等辺三角形微細孔音響パネルと空気層とで構成される吸音・遮音装置のエネルギー吸収率の周波数特性の数値計算例を示す図である。
【図29】同じく透過損失の周波数特性の数値計算例を示す図である。
【図30】本発明の実施の形態4に係る2層の音響パネルからなる遮音装置の音響系の電気的等価回路を示す図である。
【図31】遮音装置の透過損失の周波数特性の数値計算例を示す図である。
【図32】遮音装置の透過損失の周波数特性の数値計算例を示す図である。
【図33】遮音装置の透過損失の周波数特性の数値計算例を示す図である。
【図34】円形微細孔音響パネルの斜視図である。
【図35】基準化音響インピーダンスzの電気的等価回路を示す図である。
【図36】微細孔の直径dによる規準化音響レジスタンスr及び規準化音響リアクタンスmの変化を示す図である。
【図37】厚さDの空気層の基準化音響インピーダンスの電気的等価回路を示す図である。
【図38】基準化音響レジスタンスrによる吸音率の最大値αの変化を示す図である。
【符号の説明】
【0221】
1 円形微細孔板
1a 円形微細孔
2 矩形微細孔板
2a 矩形微細孔
100 円形微細孔音響パネル
200 矩形微細孔音響パネル
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の内装材等に適用される音響パネル、及び、建築物の内装壁、天井又は仕切壁等に適用される吸音・遮音装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
物体の内部に連続気泡を持つ多孔質材料は、該気泡内を音波が流動する時に、壁面との摩擦損失を生じ、音響パネル用吸音材料として使用することができる。ここで、多孔質材料としては、グラスウール等の繊維質材料が使用されることが多い(例えば、非特許文献1の80ないし83頁参照。)。また、小さな開孔で外部空間と通じている空洞の内部の空気は単一共振系を形成し、その共振周波数の狭い周波数範囲で吸音作用を持ち、吸音器として利用されている(例えば、非特許文献1の85ないし86頁参照。)。
【0003】
板厚方向に貫通する多数の円形微細孔を備えた、1枚以上の微細孔板を、音源と音響的に剛な壁体との中間に所定距離を隔てて配置する場合において、該微細孔の内部の空気と該微細孔板及び壁体間の空気層とで振動系が形成されるため、該振動系の固有振動数に前記音源の周波数が一致すると共振が生じて前記微細孔の内部の空気が激しく振動することになる。したがって、前記微細孔の内部の管壁面と空気の粘性抵抗による摩擦により音響エネルギーの消耗が発生して吸音効果が生じることから、吸音装置として利用できることが知られている(例えば、非特許文献2参照)。
【0004】
また、本願の発明者により、板厚方向に貫通する多数の円形微細孔を設けた2層以上の音響パネルを所定間隙を介して相対して配置し、これら音響パネルを音源に対して所定距離を隔てて配置して構成させ、前記微細孔からの微量な空気漏れに基づく有効な音響レジスタンスの存在により、広い周波数域にわたって吸音効果を発揮させることができる吸音装置に係る発明がなされている(特願2003−415577号参照。以下において、「先願1」という。)。
【0005】
さらに、本願の発明者により、板厚方向に貫通する多数の円形微細孔を備えた微細孔板と、前記微細孔を設けない無孔板とを密着積層又は所定距離を隔てて相対配置してなる、微細孔付き音響パネルの2枚を、孔明き側を内側にして所定距離を隔てて相対し、共振を生じることなく、高い透過損失を得ることができる吸音・遮音装置に係る発明がなされている(特願2004−87488号。以下において、「先願2」という。)。
【0006】
【非特許文献1】前川純一,森本政之,阪上公博著,「建築・環境音響学」,第2版,共立出版 株式会社,2000年9月25日,p.80−83,p.85−86
【非特許文献2】Maa Dah-You, "Potential of microperforated panel absorber", Journal of the Acoustical Society of America,(U.S.A.), Nov. 1998, Vol.104, No .5, p.2861-2866
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献2の原理に基づく吸音装置は、グラスウールで代表される繊維質吸音材又は多孔質吸音材に比べ、低周波音域においても確実に吸音性能を実現できるものである。また、繊維質の塵埃の発生がないため環境へ悪影響を及ぼすことがなく、微細孔板の材質の制約がないため耐薬品性及び耐温度性等においても優れた特性を持つものである。
【0008】
しかし、低周波音域において吸音を実現しようとすると、目的とする低周波域において共鳴を発生させる必要があるため、微細孔板と音響的に剛な壁体との間の空気層(中間空気層)の厚さを大きく設定する必要があり、空間的な制約から使用可能な用途が限定されるという問題点がある。
【0009】
例えば、63Hzの吸音を有効ならしめるためには、微細孔の直径を1.0mm、微細孔のピッチを13.0mm、板厚を3.0mm、前記中間空気層の厚さを600mm程度とする必要があり、この場合には吸音率の最大値は0.99、吸音率の帯域巾は約3倍を確保できる。これに対して、装置全体のコンパクト化等の要請に応えるべく、前記中間空気層の厚さを180mm程度まで狭めると、最適な吸音性能を実現することが困難となり、微細孔の直径を1.75mm、微細孔のピッチを40mm、板厚を3.8mmとした場合には、吸音率の最大値は0.9であるものの、吸音率の帯域巾は約1.5倍まで低下する。これは、微細孔板の音響インピーダンスが適切な数値範囲を逸脱してしまったことに起因するものである。
【0010】
また、先願1及び2記載の発明は、前記特徴を有するものであるが、吸音・遮音装置の、さらなる吸音率、吸音帯域巾及び透過損失等の性能向上、並びに、さらなるコンパクト化及び低コスト化等の観点からは、改善の余地があるものである。
【0011】
本発明は、前記のような問題点を解決するためになされたものであり、音響パネルの音響レジスタンスと音響リアクタンスに適切な値を持たせるための設計が容易となるため、低周波域においても所望の音響インピーダンスを容易に実現することができる音響パネルを得ることを目的とする。また、吸音・遮音性能の向上並びにコンパクト化及び低コスト化を図ることができる吸音・遮音装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る音響パネルは、前記課題解決のために、板厚方向に貫通する多数の微細孔を設けた微細孔板からなる音響パネルであって、該微細孔板の板厚方向に直交する切断面において、周壁により囲まれる微細孔形状を非円形としてなるものである。
【0013】
本発明に係る吸音装置は、前記課題解決のために、板厚方向に貫通する多数の微細孔を設けた微細孔板からなる音響パネルの2枚以上を、音源と壁体との中間に、所定距離を隔てて相対配置した吸音装置において、該音響パネルの少なくとも1枚を前記微細孔形状が非円形の音響パネルとしてなるものである。
【0014】
本発明に係る吸音・遮音装置は、前記課題解決のために、板厚方向に貫通する多数の微細孔を設けた微細孔板からなる音響パネルの2枚以上を所定距離を隔てて相対配置した吸音・遮音装置において、該音響パネルの少なくとも1枚を前記微細孔形状が非円形の音響パネルとしてなるものである。
【0015】
本発明に係る遮音装置は、前記課題解決のために、板厚方向に貫通する多数の微細孔を設けた微細孔板からなる微細孔音響パネルと前記微細孔を設けない無孔板からなる無孔音響パネルとで一対の音響パネルを構成し、該微細孔音響パネル及び無孔音響パネルを密着積層又は所定距離を隔てて相対配置すると共に、該一対の音響パネルの2組を、それぞれの微細孔音響パネルが相対するように所定距離を隔てて配置した遮音装置において、該微細孔板音響パネルの少なくとも一方を前記微細孔形状が非円形の音響パネルとしてなるものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る音響パネルによれば、板厚方向に貫通する多数の微細孔を設けた微細孔板からなる音響パネルであって、該微細孔板の板厚方向に直交する切断面において、周壁により囲まれる微細孔形状を非円形としてなるので、空気の粘性に起因する摩擦損失を、円形微細孔音響パネルにおける摩擦損失よりも大きくすることができる。また、該音響パネルの音響レジスタンスと音響リアクタンスに適切な値を持たせるための設計幅が広がると共に設計が容易となるため、低周波域においても所望の音響インピーダンスを容易に実現することができる。さらに、該音響パネルと空気層で構成する吸音・遮音装置において、吸音・遮音性能の向上並びにコンパクト化及び低コスト化を図ることができる。
【0017】
本発明に係る吸音装置によれば、板厚方向に貫通する多数の微細孔を設けた微細孔板からなる音響パネルの2枚以上を、音源と壁体との中間に、所定距離を隔てて相対配置した吸音装置において、該音響パネルの少なくとも1枚を前記微細孔形状が非円形の音響パネルとしてなるので、吸音性能の向上並びにコンパクト化及び低コスト化を図ることができる。
【0018】
本発明に係る吸音・遮音装置によれば、板厚方向に貫通する多数の微細孔を設けた微細孔板からなる音響パネルの2枚以上を所定距離を隔てて相対配置した吸音・遮音装置において、該音響パネルの少なくとも1枚を前記微細孔形状が非円形の音響パネルとしてなるので、吸音・遮音性能の向上並びにコンパクト化及び低コスト化を図ることができる。
【0019】
本発明に係る遮音装置によれば、板厚方向に貫通する多数の微細孔を設けた微細孔板からなる微細孔音響パネルと前記微細孔を設けない無孔板からなる無孔音響パネルとで一対の音響パネルを構成し、該微細孔音響パネル及び無孔音響パネルを密着積層又は所定距離を隔てて相対配置すると共に、該一対の音響パネルの2組を、それぞれの微細孔音響パネルが相対するように所定距離を隔てて配置した遮音装置において、該微細孔板音響パネルの少なくとも一方を前記微細孔形状が非円形の音響パネルとしてなるので、遮音性能の向上並びにコンパクト化及び低コスト化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本発明の実施の形態を添付図面に基づき詳細に説明するが、本発明は、添付図面に示された形態に限定されず特許請求の範囲に記載の要件を満たす実施形態の全てを含むものである。本発明は、板厚方向に貫通する多数の微細孔が設けられた微細孔板における該微細孔の形状に着目してなされたものであり、以下において、微細孔形状を、板厚方向に直交する平面により切断された断面形状により定義する。すなわち、微細孔形状を、前記平面切断形状において、該微細孔の管壁(周壁)により囲まれる形状により、例えば、該形状が円形の場合の微細孔を円形微細孔、該形状が矩形の場合の微細孔を矩形微細孔という。そして、例えば、円形微細孔が設けられた微細孔板を円形微細孔板、矩形微細孔が設けられた微細孔板を矩形微細孔板という。また、該微細孔形状の面積を微細孔面積という。さらに、各微細孔形状の微細孔板からなる音響パネルを微細孔音響パネルという。
【0021】
実施の形態1.
本発明は、非円形微細孔が設けられた非円形微細孔板についてのものであるが、先ず、比較検討のために、円形微細孔板について説明する。図34は、板厚方向に貫通する多数の円形微細孔1aが設けられた円形微細孔板1で構成した音響パネル(円形微細孔音響パネル)100を示したものである。非特許文献2によれば、音の周波数をf、角周波数をω(=2πf)、虚数単位をj、(大気を基準とする)基準化音響レジスタンスをr、(大気を基準とする)基準化音響リアクタンスをmとすると、微細孔1aが設けられた円形微細孔板1の(大気を基準とする)基準化音響インピーダンスzは、複素数表現z=r+jωmで表すことができる。
【0022】
図35は、基準化音響インピーダンスzの電気的等価回路を示したものである。円形微細孔1aの直径をd、円形微細孔1a・・・のピッチをb、円形微細孔板1の板厚をtとすると、音が円形微細孔板1に垂直に入射する場合の基準化音響レジスタンスr、及び、基準化音響リアクタンスmは、それぞれ下記式で表すことができる。
【0023】
即ち、円形微細孔板1の材質が非金属材料である場合には、次式(数1)ないし(数3)により表すことができる。
【0024】
【数1】
【0025】
【数2】
【0026】
【数3】
【0027】
また、円形微細孔板1の材質が金属材料である場合には、次式(数4)ないし(数6)により表すことができる。
【0028】
【数4】
【0029】
【数5】
【0030】
【数6】
【0031】
ここに、cは空気中の音速で一般的に340m/s、μは空気の動粘性係数で一般的に1.56・10―5m2/s、νは空気の熱伝導係数で一般的に2.0・10―5m2/sである。また、(数1)、(数2)、(数4)及び(数5)の右辺第2項は管端補正項である。
【0032】
円形微細孔板1の諸元として、円形微細孔1a・・・の直径d、円形微細孔1a・・のピッチb、板厚t、及び、材質が金属であるか非金属であるか、を決定すれば、円形微細孔板1の規準化音響インピーダンスz、上記式(数1)ないし(数3)又は(数4)ないし(数6)により一意に決定できる。
【0033】
図36は、円形微細孔1a・・・のピッチbを5.0mm、円形微細孔板1の厚さtを1.0mm、音の周波数を500Hz、円形微細孔板1の材質を金属とし、円形微細孔1a・・・の直径を0.1mmから1.6mmまで変化させた時の、規準化音響レジスタンスr及び規準化音響リアクタンスmの周波数特性を示したものである。
【0034】
図36から、規準化音響レジスタンスr及び規準化音響リアクタンスmは、円形微細孔1aの直径dが小さくなるにしたがって単調にかつ急激に増大するが、規準化音響リアクタンスmの最大値/最小値の比率は10の2乗であるのに比べて、規準化音響レジスタンスrの最大値/最小値の比率は10の4乗以上であり、規準化音響リアクタンスmに比べて、規準化音響レジスタンスrが変動する度合が著しく大きいことがわかる。
【0035】
円形微細孔板1と、厚さDの空気層から構成される音響系を、インダクタンスL、キャパシタンスC及び抵抗Rで構成される電気系と対比すれば、規準化音響レジスタンスrは電気系の抵抗Rと、規準化音響リアクタンスmは電気系のインダクタンスLと、円形微細孔板1と音響的に剛な壁体間に存在する、又は、円形微細孔板1と円形微細孔板1との間に存在する、厚さDの空気層の基準化音響キャパシタンス(次式)は電気系のキャパシタンスCと等価である。
【0036】
【数7】
【0037】
図37は、厚さDの空気層の基準化音響インピーダンスの電気的等価回路を示したものである。インダクタンスLとキャパシタンスCからなる振動系において、共振周波数frは、
【0038】
【数8】
【0039】
で計算できるが、共振周波数frを低くするためには、インダクタンスLとキャパシタンスCの積が大きくなるようにLとCを設定しなければならない。音響系においても同様に、共振周波数を低くするためには、(1)基準化音響リアクタンスを大きくするために微細孔の直径dを小さくすること、及び(2)基準化音響キャパシタンスを大きくするために空気層の厚さDを大きくすることが必要となるが、基準化音響リアクタンスを所望の数値に変化させようとすると、図36から明らかなように、基準化音響レジスタンスが更に大きく変動してしまうという問題が生じる。
【0040】
すなわち、円形微細孔音響パネルの音響レジスタンスは微細孔直径が増加すると急激に減少してしまうが(図36参照。)、円形微細孔音響パネルの音響リアクタンスの変化の度合は音響レジスタンスの変化の度合に比べれば小さいので、所望の音響レジスタンス及び音響リアクタンスを選定することが困難な場合が度々生じる。
【0041】
共振周波数における吸音率は、基準化音響レジスタンスに大きく依存し、例えば非特許文献2の原理に基づく吸音装置におけるような音響共振系の場合、吸音率の最大値αは、次式で計算することができる。
【0042】
【数9】
【0043】
基準化音響レジスタンスrを0.12から8.0まで変化させた時の、吸音率の最大値αの値を図38に示す。基準化音響レジスタンスrが0.8から1.25の範囲ならば、吸音率は100パーセントに近づくが、rが0.8より小さいか、1.25よりも大きくなれば、吸音率は100パーセントから急激に低下する。
【0044】
即ち、吸音率を100パーセントに近づけるためには、基準化音響レジスタンスrを1に近い範囲内に保持する必要があるが、基準化音響レジスタンスrを該範囲内に保持しようとすると、基準化音響リアクタンスmを変動させる必要があるため、その結果として共振周波数の変動が惹起される。逆に、基準化音響リアクタンスmを変動しないようにすれば、基準化音響レジスタンスrの望ましい値を得ることができないため、目的とする吸音率の最大値を得ることができなくなり、その結果として、円形微細孔板1の適切な寸法決定が困難になる。
【0045】
特に、共振周波数を低くして使用可能な周波数範囲を低周波音域まで拡張するためには、前記(2)のように空気層の厚さDを大きくすれば良いわけであるが、空気層の厚さDを大きくすると装置全体の寸法が大きくなるため、装置を設置するための寸法上の制約が生じることになる。
【0046】
微細孔の基準化音響レジスタンスは、微細孔の管壁(周壁)と管内空気の摩擦によって発生する摩擦損失によって発生するものであり、管壁からの距離が増すにつれて急速に損失が少なくなるという現象は、ハーゲン・ポアズイユの円管内摩擦式として公知である。また、空気に触れる面積が大きくなれば、空気の粘性に起因する摩擦損失が増大する
【0047】
したがって、微細孔を、例えば図1のような本発明の実施の形態1に係る非円形微細孔とし、アスペクト比(縦横比、例えば、図1のA/B)を調整することで、所望の基準化レジスタンスを設定することができる。そして、微細孔面積を略一定に保持すれば、基準化音響リアクタンスの変化を少なくすることができるので、所望の基準化音響レジスタンスと基準化音響リアクタンスを容易に設定することができる。
【0048】
このような非円形微細孔板の第1の具体例として、矩形微細孔板について説明する。音波は圧縮性流体の微小振幅の振動であり、その挙動はナヴィエ・ストークスの式及び連続の式によって記述することができる(例えば、エリ・ランダウ,イエ・リフシッツ著(竹内均訳),「流体力学2」,東京図書株式会社,1971年,p.281参照。)。
【0049】
図2は、板厚方向に貫通する多数の矩形微細孔2aが設けられた矩形微細孔板2で構成した音響パネル(矩形微細孔音響パネル)200を示しており、図3は、矩形微細孔2aの形状を示す説明図であり、D1及びD2は矩形微細孔管壁の直交する2辺の長さを示している。
【0050】
直交座標系のx軸方向の粒子速度をu、y軸方向の粒子速度をv、z軸方向の粒子速度をw、圧力をP、空気の密度をρ、音速をc、粘性係数をη、動粘性係数をμ、音の角周波数をω、虚数単位をjとするとき、連続の式は(数10)で、ナヴィエ・ストークスの式は(数11)〜(数13)で表すことができる。
【0051】
【数10】
【0052】
【数11】
【0053】
【数12】
【0054】
【数13】
【0055】
また、(数14)〜(数17)のように変数分離を行う。
【0056】
【数14】
【0057】
【数15】
【0058】
【数16】
【0059】
【数17】
【0060】
更に、微細孔板の微細孔は、板厚方向に断面形状が一定であるので、
【0061】
【数18】
【0062】
【数19】
【0063】
【数20】
ということを考慮すれば、(数13)は、
【0064】
【数21】
【0065】
と書き表すことができる。単位長さ当たりのz軸方向の圧力損失P0は一定で、zの増分に対して負速度勾配と見做せるから、
【0066】
【数22】
【0067】
が得られる。故に、(数21)は、
【0068】
【数23】
【0069】
と書き表すことができて、これが矩形微細孔における音の基本式であり、定数は、
【0070】
【数24】
【0071】
【数25】
【0072】
であり、(数23)は変数wについて線形であるから、
【0073】
【数26】
【0074】
と正規化できる。また、微細孔の管壁で粒子速度がゼロになるので、
【0075】
【数27】
【0076】
が境界条件となり、矩形微細孔における音波の挙動、即ち、変数wは(数23)を境界条件(数27)の元に、一般的には有限差分法などの数値解法を応用して、求めることができる。そして、変数wを求めることができれば、微細孔面積の平均粒子速度は(数28)により計算することができる。
【0077】
【数28】
【0078】
z軸方向の単位長さ当たりの音響インピーダンスは、z軸方向の単位長さ当たりの圧力損失を、粒子速度の平均値で除したものであり、z軸方向の単位長さ当たりの圧力損失を1に正規化した場合のものであることを考慮して、(数29)のように書き表すことができる。
【0079】
【数29】
【0080】
それ故、微細孔のz軸方向の長さがH、開孔率がp((数3)参照)である矩形微細孔の基準化音響レジスタンス及び基準化音響リアクタンスは(数30)〜(数33)と書き表すことができる。
【0081】
【数30】
【0082】
【数31】
【0083】
【数32】
【0084】
【数33】
【0085】
ここに、(数30)及び(数31)において、Reは複素数の実数部を、Imは複素数の虚数部を表し、(数30)及び(数31)の第2項は管端補正項であり、deqは、2辺の長さがD1及びD2である矩形微細孔面積と等しい微細孔面積を持つ円形微細孔の直径である。
【0086】
上記(数30)、(数31)で与えられる基準化音響レジスタンス及び基準化音響リアクタンスは、微細孔板の材質が非金属である場合のものであり、微細孔板の材質が金属である場合は、(数24)に代えて、
【0087】
【数34】
【0088】
を、(数26)に代えて、
【0089】
【数35】
【0090】
を、(数32)に代えて、
【0091】
【数36】
【0092】
を用いて、(数23)、(数27)、(数28)を解いて、(数30)から基準化音響レジスタンスを、(数31)から基準化音響リアクタンスを求めれば良い。
【0093】
円形微細孔音響パネルと矩形微細孔音響パネルとの基準化音響インピーダンスの相違点を、数値例を以って説明する。円形微細孔音響パネル及び矩形微細孔音響パネルの板厚を0.5mm、微細孔のピッチを5.0mmとし、微細孔面積及び材質(非金属)を等しく設定した場合において、円形微細孔の直径を0.5mmとし、矩形微細孔管壁の短辺に対する長辺の比である矩形微細孔アスペクト比(D2/D1)を、1(矩形#1),2(矩形#2),・・・,6(矩形#6)とした場合の基準化音響レジスタンスの周波数特性の数値計算例を図4に、円形微細孔音響パネルの基準化音響レジスタンスに対する矩形微細孔音響パネルの基準化音響レジスタンスの相対比の周波数特性の数値計算例を図5に示す。また、同様に、基準化音響リアクタンスの周波数特性の数値計算例を図6に、円形微細孔音響パネルの基準化音響リアクタンスに対する矩形微細孔音響パネルの基準化音響リアクタンスの相対比の周波数特性の数値計算例を図7に示す。
【0094】
図4において、円形微細孔音響パネルの基準化音響レジスタンスは63Hzにおいて0.4であり、2500Hzにおいて0.78まで増加する。図4から、矩形微細孔音響パネルの基準化音響レジスタンスにおいて、矩形微細孔アスペクト比が1(矩形#1)の場合、63Hzにおいて0.47、2500Hzにおいて0.93と、円形微細孔音響パネルの値に近い値を持っているが、該アスペクト比が大きくなるにつれて、基準化音響レジスタンスの値が大きくなり、該アスペクト比が6(矩形#6)の場合、63Hzにおいて1.26、2500Hzにおいて1.57と非常に大きな値を持つことがわかる。
【0095】
図5から、円形微細孔音響パネルの基準化音響レジスタンスに対する矩形微細孔音響パネルの、基準化音響レジスタンスの相対比の周波数特性を見ると、矩形微細孔アスペクト比が1(矩形#1)の場合、63Hzにおいて1.16倍、2500Hzにおいて1.2倍と、円形微細孔音響パネルの値に近い値を持っているが、該アスペクト比が大きくなるにつれて、基準化音響レジスタンスの値が大きくなり、該アスペクト比が6(矩形#6)の場合、63Hzにおいて3.18倍、2500Hzにおいて2.03倍と非常に大きな値を持ち、中間の周波数帯域において、略直線的な変化をすることがわかる。
【0096】
図6において、円形微細孔音響パネルの基準化音響リアクタンスは63Hzにおいて4.06・10-4であり、2500Hzにおいて3.76・10-4まで単調に減少する。図6から、矩形微細孔音響パネルの基準化音響リアクタンスにおいて、矩形微細孔アスペクト比が1(矩形#1)の場合、63Hzにおいて4.31・10-4、2500Hzにおいて3.95・10-4と、円形微細孔音響パネルの値よりやや大きい値を持っているが、該アスペクト比が大きくなるにつれて、基準化音響リアクタンスの値が小さくなり、該アスペクト比が6(矩形#6)の場合、63Hzから500Hzの範囲において4.08・10-4、2500Hzにおいて4.02・10-4と変化が少ないことがわかる。
【0097】
図7から、円形微細孔音響パネルの基準化音響リアクタンスに対する矩形微細孔音響パネルの基準化音響リアクタンスの相対比の周波数特性を見ると、円形微細孔音響パネルの場合より最も乖離している事例が、矩形微細孔アスペクト比が1(矩形#1)で、400〜630Hzにおいて1.08倍であり、それ以外の事例は、円形微細孔音響パネルの値に殆ど近い値を持っていることがわかる。
【0098】
要約すれば、(イ)円形微細孔音響パネルと同じ微細孔面積を持つ矩形微細孔音響パネルの音響リアクタンスは、円形微細孔音響パネルの音響リアクタンスと殆ど同じであり、(ロ)円形微細孔音響パネルと同じ微細孔面積を持つ矩形微細孔音響パネルの音響レジスタンスは、矩形微細孔アスペクト比を調整することで、円形微細孔音響パネルの音響レジスタンスよりも大幅に大きくすることができる。それ故に、所望の基準化音響レジスタンスと基準化音響リアクタンスを持つ、矩形微細孔音響パネルを、容易に実現することができる。
【0099】
次に、非円形微細孔の第2の具体例として、菱形微細孔板について説明する。図8は、菱形微細孔の形状を示す説明図であり、D1及びD2は菱形微細孔管壁の対角線方向(直交するx軸及びy軸方向)の対角距離を示している。また、これら対角線の交点をx−y座標系の原点とする。
【0100】
矩形微細孔板の場合と同様に、(数23)〜(数26)が成り立ち、また、微細孔の管壁で粒子速度がゼロになることから、第1象限の管壁面上において、
【0101】
【数37】
【0102】
第2象限の管壁面上において、
【0103】
【数38】
【0104】
第3象限の管壁面上において、
【0105】
【数39】
【0106】
第4象限の管壁面上において、
【0107】
【数40】
【0108】
が境界条件となり、菱形微細孔における音波の挙動、即ち、変数wは(数23)を境界条件(数37)〜(数40)の元に、一般的には有限差分法などの数値解法を応用して、求めることができる。また、直交する対角距離がD1及びD2である菱形微細孔面積と等しい円形微細孔面積を持つ円形微細孔の直径deqは、次式により求めることができる。
【0109】
【数41】
【0110】
矩形微細孔板の場合と同様に、変数wを(数23)〜(数26)から算出し、微細孔面積の平均粒子速度は(数28)から、基準化音響レジスタンス及び基準化音響リアクタンスは、(数30)、(数31)で算出することができる。
【0111】
円形微細孔音響パネルと菱形微細孔音響パネルとの基準化音響インピーダンスの相違点を、数値例を以って説明する。円形微細孔音響パネル及び菱形微細孔音響パネルの板厚を0.5mm、微細孔のピッチを5.0mmとし、微細孔面積及び材質(非金属)を等しく設定した場合において、円形微細孔の直径を0.5mmとし、菱形微細孔管壁の短い対角距離に対する長い対角距離の比である菱形微細孔アスペクト比(D2/D1)を、1(菱形#1),2(菱形#2),・・・,6(菱形#6)とした場合の基準化音響レジスタンスの周波数特性の数値計算例を図9に、円形微細孔音響パネルの基準化音響レジスタンスに対する菱形微細孔音響パネルの基準化音響レジスタンスの相対比の周波数特性の数値計算例を図10に示す。また、同様に、基準化音響リアクタンスの周波数特性の数値計算例を図11に、円形微細孔音響パネルの基準化音響リアクタンスに対する菱形微細孔音響パネルの基準化音響リアクタンスの相対比の周波数特性の数値計算例を図12に示す。
【0112】
図9において、円形微細孔音響パネルの基準化音響レジスタンスは63Hzにおいて0.4であり、2500Hzにおいて0.78まで増加する。図9から、菱形微細孔音響パネルの基準化音響レジスタンスにおいて、菱形微細孔アスペクト比が1(菱形#1)の場合、63Hzにおいて0.46、2500Hzにおいて0.93と、円形微細孔音響パネルの値に近い値を持っているが、該アスペクト比が大きくなるにつれて、基準化音響レジスタンスの値が大きくなり、該アスペクト比が6(菱形#6)の場合、63Hzにおいて1.20、2500Hzにおいて1.79と非常に大きな値を持つことがわかる。
【0113】
図10から、円形微細孔音響パネルの基準化音響レジスタンスに対する菱形微細孔音響パネルの、基準化音響レジスタンスの相対比の周波数特性を見ると、菱形微細孔アスペクト比が1(菱形#1)の場合、63Hzにおいて1.14倍、2500Hzにおいて1.19倍と、円形微細孔音響パネルの値に近い値を持っているが、該アスペクト比が大きくなるにつれて、基準化音響レジスタンスの値が大きくなり、該アスペクト比が6(菱形#6)の場合、63Hzにおいて2.97倍、2500Hzにおいて2.32倍と非常に大きな値を持ち、中間の周波数帯域において、略直線的な変化をすることがわかる。
【0114】
図11において、円形微細孔音響パネルの基準化音響リアクタンスは63Hzにおいて4.06・10-4であり、2500Hzにおいて3.76・10-4まで単調に減少する。図11から、菱形微細孔音響パネルの基準化音響リアクタンスにおいて、菱形微細孔アスペクト比が1(菱形#1)の場合、63Hzにおいて4.27・10-4、2500Hzにおいて3.91・10-4と、円形微細孔音響パネルの値よりやや大きい値を持っているが、該アスペクト比が大きくなるにつれて、基準化音響リアクタンスの値が小さくなり、該アスペクト比が6(菱形#6)の場合、63Hzにおいて4.56・10-4、2500Hzにおいて4.15・10-4と変化が少ないくことがわかる。
【0115】
図12から、円形微細孔音響パネルの基準化音響リアクタンスに対する菱形微細孔音響パネルの基準化音響リアクタンスの相対比の周波数特性を見ると、63Hz〜2500Hzのすべての周波数域において、菱形微細孔アスペクト比が1から6の領域において、最小値は1.04倍であり、最大値は1.14倍という狭い範囲内に存在していることがわかる。
【0116】
要約すれば、(イ)円形微細孔音響パネルと同じ微細孔面積を持つ菱形微細孔音響パネルの音響リアクタンスは、円形微細孔音響パネルの音響リアクタンスに殆ど同じであり、(ロ)円形微細孔音響パネルと同じ微細孔面積を持つ菱形微細孔音響パネルの音響レジスタンスは、菱形微細孔アスペクト比を調整することで、円形微細孔音響パネルの音響レジスタンスよりも大幅に大きくすることができる。それ故に、所望の基準化音響レジスタンスと基準化音響リアクタンスを持つ、菱形微細孔音響パネルを、容易に実現することができる。
【0117】
次に、非円形微細孔の第3の具体例として、2等辺3角形微細孔板について説明する。図13は、菱形微細孔の形状を示す説明図であり、D及びHは2等辺3角形微細孔管壁の底辺の長さ及び高さを示している。また、直交座標系のx軸を2等辺3角形の底辺上におき、原点を底辺の中点とする。
【0118】
矩形微細孔板の場合と同様に、(数23)〜(数26)が成り立ち、また、微細孔の管壁で粒子速度がゼロになることから、底辺上において、
【0119】
【数42】
【0120】
x≦0の斜辺上において、
【0121】
【数43】
【0122】
x>0斜辺上において、
【0123】
【数44】
【0124】
が境界条件となり、2等辺3角形微細孔における音波の挙動、即ち、変数wは(数23)を境界条件(数42)〜(数44)の元に、一般的には有限差分法などの数値解法を応用して、求めることができる。また、底辺の距離がD、高さがHである2等辺3角形の矩形微細孔面積と等しい微細孔面積を持つ円形微細孔の直径deqは、次式により求めることができる。
【0125】
【数45】
【0126】
矩形微細孔板の場合と同様に、変数wを(数23)〜(数26)から算出し、微細孔面積の平均粒子速度は(数28)から、基準化音響レジスタンス及び基準化音響リアクタンスは、(数30)、(数31)で算出することができる。
【0127】
円形微細孔音響パネルと2等辺3角形微細孔音響パネルとの基準化音響インピーダンスの相違点を、数値例を以って説明する。円形微細孔音響パネル及び2等辺3角形微細孔音響パネルの板厚を0.5mm、微細孔のピッチを5.0mmとし、微細孔面積及び材質(非金属)を等しく設定した場合において、円形微細孔の直径を0.5mmとし、2等辺3角形菱形微細孔管壁の底辺に対する高さの比である2等辺3角形微細孔アスペクト比(H/D)を、0.87(3角形#1),1.73(3角形#2),2.60(3角形#3),3.46(3角形#4),4.33(3角形#5),5.20(3角形#6)とした場合の基準化音響レジスタンスの周波数特性の数値計算例を図14に、円形微細孔音響パネルの基準化音響レジスタンスに対する2等辺3角形微細孔音響パネルの基準化音響レジスタンスの相対比の周波数特性の数値計算例を図15に示す。また、同様に、基準化音響リアクタンスの周波数特性の数値計算例を図16に、円形微細孔音響パネルの基準化音響リアクタンスに対する2等辺3角形微細孔音響パネルの基準化音響リアクタンスの相対比の周波数特性の数値計算例を図17に示す。
【0128】
図14において、円形微細孔音響パネルの基準化音響レジスタンスは63Hzにおいて0.4であり、2500Hzにおいて0.78まで増加する。図14から、2等辺3角形微細孔音響パネルの基準化音響レジスタンスにおいて、2等辺3角形微細孔アスペクト比が0.87(3角形#1)の場合、63Hzにおいて0.46、2500Hzにおいて0.89と、円形微細孔音響パネルの値に近い値を持っているが、3角形アスペクト比が大きくなるにつれて、基準化音響レジスタンスの値が大きくなり、3角形アスペクト比が5.20(3角形#6)の場合、63Hzにおいて1.0、2500Hzにおいて1.50と非常に大きな値を持つことがわかる。
【0129】
図15から、円形微細孔音響パネルの基準化音響レジスタンスに対する2等辺3角形微細孔音響パネルの、基準化音響レジスタンスの相対比の周波数特性を見ると、2等辺3角形微細孔アスペクト比が0.87(3角形#1)の場合、63Hzにおいて1.14倍、2500Hzにおいて1.15倍と、円形微細孔音響パネルの値に近い値を持っているが、3角形アスペクト比が大きくなるにつれて、基準化音響レジスタンスの値が大きくなり、3角形アスペクト比が5.20(3角形#6)の場合、63Hzにおいて2.47倍、2500Hzにおいて2.94倍と非常に大きな値を持ち、中間の周波数帯域において、略直線的な変化をすることがわかる。
【0130】
図16において、円形微細孔音響パネルの基準化音響リアクタンスは63Hzにおいて4.06・10-4であり、2500Hzにおいて3.76・10-4まで単調に減少する。図16から、2等辺3角形微細孔音響パネルの基準化音響リアクタンスにおいて、2等辺3角形微細孔アスペクト比が0.87(3角形#1)の場合、63Hzにおいて3.98・10-4、2500Hzにおいて3.60・10-4と、円形微細孔音響パネルの値よりやや小さい値を持っているが、該アスペクト比が大きくなるにつれて、基準化音響リアクタンスの値が大きくなり、該アスペクト比が5.20(3角形#6)の場合、63Hzにおいて4.17・10-4、2500Hzにおいて3.80・10-4と円形微細孔音響パネルの値に近づくことがわかる。
【0131】
図17から、円形微細孔音響パネルの基準化音響リアクタンスに対する2等辺3角形微細孔音響パネルの基準化音響リアクタンスの相対比の周波数特性を見ると、63Hz〜2500Hzのすべての周波数域において、2等辺3角形微細孔アスペクト比が0.87(3角形#1)から5.20(3角形#6)の領域において、最小値は0.96倍であり、最大値は1.04倍という狭い範囲内に存在していることがわかる。
【0132】
要約すれば、(イ)円形微細孔音響パネルと同じ微細孔面積を持つ2等辺3角形微細孔音響パネルの音響リアクタンスは、円形微細孔音響パネルの音響リアクタンスと殆ど同じであり、(ロ)円形微細孔音響パネルと同じ微細孔面積を持つ2等辺3角形微細孔音響パネルの音響レジスタンスは、2等辺3角形微細孔アスペクト比を調整することで、円形微細孔音響パネルの音響レジスタンスよりも大幅に大きくすることができる。それ故に、所望の基準化音響レジスタンスと基準化音響リアクタンスを持つ、2等辺3角形微細孔音響パネルを、容易に実現することができる。
【0133】
以上のとおり、本発明の非円形微細孔音響パネルにおいて、該非円形微細孔は、微細孔面積が等しい円形微細孔よりも微細孔の管壁(周壁)が空気に触れる面積が大きくなり、さらに、アスペクト比を大きくすると該面積が増加する。そして、アスペクト比が大きくなれば、微細孔がより細長くなるため、空気に触れる面積が大きい対向面間の距離が狭くなる。よって、空気の粘性に起因する摩擦損失を、円形微細孔音響パネルにおける摩擦損失よりも大きくすることができて、前記のような音響レジスタンスの調整幅を広げることができる。
【0134】
以上の説明においては、非円形微細孔形状を、矩形、菱形、2等辺3角形等の細長形状(縦横の長さが異なる形状)として、該細長形状のアスペクト比を変えることにより非円形微細孔音響パネルの音響レジスタンスを調整する場合を説明したが、本発明の微細孔形状はこのような場合に限定されるものではない。すなわち、例えば非円形微細孔として任意の微細孔形状のアスペクト比を変えることにより、非円形微細孔音響パネルの音響レジスタンスを調整することができる。
【0135】
また、以上の説明においては、非円形微細孔のアスペクト比を変えることにより非円形微細孔音響パネルの音響レジスタンスを調整する場合を説明したが、非円形微細孔を十字形、星形、歯車形、楕円形等としてもよい。このような形状によっても、微細孔面積が等しい円形微細孔よりも微細孔の管壁(周壁)が空気に触れる面積が大きくなり、さらに、微細孔の細長い部分の存在により、空気に触れる面積が大きい対向面間の距離が狭くなる。よって、空気の粘性に起因する摩擦損失を、円形微細孔音響パネルにおける摩擦損失よりも大きくすることができて、前記のような音響レジスタンスの調整幅を広げることができる。
【0136】
以上のように、本発明の非円形微細孔は、微細孔面積に対して該微細孔の周の長さ(該微細孔を形成する管壁(周壁)の内周の長さ)を長くすることにより、該非円形微細孔を通過する空気の粘性に起因する摩擦損失を増大させるものである。そして、非円形微細孔音響パネルの音響レジスタンスと音響リアクタンスに適切な値を持たせるための設計幅が広がると共に設計が容易となるものである。したがって、該音響パネルと空気層で構成する吸音・遮音装置の性能向上を図ることが容易となる。なお、本発明の非円形微細孔は、レーザー又はパンチ等により形成することができる。
【0137】
実施の形態2.
微細孔音響パネルを、音響的に剛な壁体と音源との中間に、該壁体に対して所定距離Dを隔てて配置する時、大気が持つ音響レジスタンス1と、音響パネルが持つ(大気を規準とする)基準化音響レジスタンスr(数1)、及び、(大気を規準とする)基準化音響リアクタンスm(数2)、微細孔板と該壁体との中間に介在する空気層が持つ(大気を規準とする)基準化音響キャパシタンス(数7)からなる音響系は、図18に示すような電気的等価回路で表すことができて、この回路は直列共振回路を形成することが知られている。
【0138】
図18の回路に、角周波数ω、音速cの音波が上記音響パネルに垂直に入射する時の吸音率は、次式で計算することができる。
【0139】
【数46】
【0140】
それ故に、実施の形態1の非円形微細孔音響パネルを用いれば、音響インピーダンスを最適の範囲に設定することができて、円形微細孔音響パネルからなる吸音装置よりも、(イ)吸音率のピーク値を高め、吸音帯域巾を拡大することができて、(ロ)吸音性能を損なうことなく、空気層の厚さを薄くする事ができて、(ハ)吸音性能を損なうことなく、微細孔のピッチを広げることができて、(ニ)吸音性能を損なうことなく、微細孔板の厚さを薄くすることができる。このことを、以下において、数値例にて説明する。
【0141】
表1は、1層円形微細孔音響パネルと空気層とで構成される吸音装置の寸法諸元表である。また、表2は、1層矩形微細孔音響パネルと空気層とで構成される吸音装置2種類の寸法諸元表であり、これら2種類の矩形微細孔面積は表1の円形微細孔面積と等しく、矩形微細孔アスペクト比が、表2の矩形#1では4.64、矩形#2では2.19である。
【0142】
表2の矩形#1は空気層厚さを表1と同一にして、吸音性能の向上を図ったものであり、矩形#2は空気層厚さを表1よりも薄くして吸音性能を表1と同程度にし、その代わりに微細孔ピッチを大きく、微細孔板の厚さを薄くすることを目的にしたものである。
【0143】
【表1】
【0144】
【表2】
【0145】
表1及び表2の微細孔音響パネルで構成される吸音装置の吸音率の周波数特性の数値計算例を図19に示す。矩形#2(表2)は、円形(表1)よりも、空気層厚さを約33%薄くすることができ、矩形#1(表2)は、円形(表1)よりも、吸音帯域巾を約1.38倍に拡大することができる。また、単位面積当たりの微細孔の数は、円形(表1)よりも、矩形#1(表2)は約29%少なく、矩形#2(表2)は約43%少なくすることができ、該孔数の減少分に比例して生産コストを削減することができる。さらに、音響パネルの板厚は、円形(表1)よりも、矩形#1(表2)は約42%薄く、矩形#2(表2)は約19%薄くすることができ、該板厚の減少分に比例して材料費を削減することができる。
【0146】
表3は、2層円形微細孔音響パネルと空気層とで構成される吸音装置の寸法諸元表であり、表4は、2層矩形微細孔音響パネルと空気層とで構成される吸音装置2種類の寸法諸元表であり、これら2種類の矩形微細孔面積は、表3の円形微細孔面積に等しく、矩形微細孔アスペクト比が、表4の矩形#1では4.16、矩形#2では4.37である。
【0147】
表4の矩形#1は空気層厚さを表3と略同一にして、吸音性能の向上を図ったものであり、矩形#2は空気層厚さを表3よりも薄くして吸音性能を表3と同程度にし、その代わりに微細孔ピッチを大きく、微細孔板の厚さを薄くすることを目的にしたものであるが、略全周波数域で、表3よりも優れた吸音性能を持つ。
【0148】
【表3】
【0149】
【表4】
【0150】
表3及び表4の微細孔音響パネルで構成される吸音装置の吸音率の周波数特性の数値計算例を図20に示す。矩形#2(表4)は、円形(表3)よりも、空気層厚さを約20%薄くすることができ、矩形#1(表4)は、円形(表3)よりも、吸音帯域巾を1.15倍に拡大することができる。また、単位面積当たりの微細孔の数は、円形(表3)よりも、矩形#1(表4)は約15%少なく、矩形#2(表4)は27%少なくすることができ、該微細孔数の減少分に比例して生産コストを削減することができる。さらに、音響パネルの板厚は、円形(表3)よりも、矩形#1(表4)は約21%薄く、矩形#2(表4)は約18%薄くすることができ、該板厚の減少分に比例して材料費を削減することができる。
【0151】
以上のように、矩形微細孔音響パネルで構成される吸音装置が、円形微細孔音響パネルで構成される吸音装置よりも、吸音性能並びにコンパクト化及び低コスト化等でより優位であるためには、矩形微細孔アスペクト比が約2よりも大きいことが望ましいといえる。
【0152】
表5は、1層菱形微細孔音響パネルと空気層とで構成される吸音装置2種類の寸法諸元表であり、これら2種類の菱形微細孔面積は、表1の円形微細孔面積に等しく、菱形微細孔アスペクト比が、表5の菱形#1では4.98、菱形#2では2.83である。表5の菱形#1は空気層厚さを表1と同一にして、吸音性能の向上を図ったものであり、表5の菱形#2は空気層厚さを表1よりも薄くして吸音性能を表1と同程度にし、その代わりに微細孔ピッチを大きく、微細孔板の厚さを薄くすることを目的にしたものである。
【0153】
【表5】
【0154】
表1及び表5の微細孔音響パネルで構成される吸音装置の吸音率の周波数特性の数値計算例を図21に示す。菱形#2(表5)は、円形(表1)よりも、空気層厚さを約33%薄くすることができ、菱形#1(表5)は、円形(表1)よりも、吸音帯域巾を約1.38倍に拡大することができる。また、単位面積当たりの微細孔の数は、円形(表1)よりも、菱形#1(表5)は約14%少なく、菱形#2(表5)は約58%少なくすることができて、該孔数の減少分に比例して生産コストを削減することができる。さらに、音響パネルの板厚は、円形(表1)よりも、菱形#1(表5)は約31%薄く、菱形#2(表5)では46%薄くすることができて、板厚の減少分に比例して材料費を削減することができる。
【0155】
以上のように、菱形微細孔音響パネルで構成される吸音装置が、円形微細孔音響パネルで構成される吸音装置よりも、吸音性能並びにコンパクト化及び低コスト化等でより優位であるためには、菱形微細孔アスペクト比が約2.8よりも大きいことが望ましいといえる。
【0156】
表6は、1層2等辺3角形微細孔音響パネルと空気層とで構成される吸音装置2種類の寸法諸元表であり、これら2種類の2等辺3角形微細孔面積は、表1の円形微細孔面積に等しく、2等辺3角形微細孔アスペクト比は、表6の設計#1では5.0、設計#2では1.41である。
【0157】
表6の2等辺3角形#1は空気層厚さを表1と同一にして、吸音性能の向上を図ったものであり、表6の2等辺3角形#2は空気層厚さを表1よりも薄くして吸音性能を表1と同程度にし、その代わりに微細孔ピッチを大きく、微細孔板の厚さを薄くすることを目的にしたものである。
【0158】
【表6】
【0159】
表1及び表6の微細孔音響パネルで構成される吸音装置の吸音率の周波数特性の数値計算例を図22に示す。2等辺3角形#2(表6)は、円形(表1)よりも、空気層厚さを約33%薄くすることができ、2等辺3角形#1(表6)は、円形(表1)よりも、吸音帯域巾を約1.38倍に拡大することができる。また、単位面積当たりの微細孔の数は、円形(表1)よりも、2等辺3角形#1(表6)は約37%少なく、2等辺3角形#2(表6)は約49%少なくすることができて、該孔数の減少分に比例して生産コストを削減することができる。さらに、音響パネルの板厚は、円形(表1)よりも、2等辺3角形#1(表6)は約59%薄く、2等辺3角形#2(表6)は約26%薄くすることができて、該板厚の減少分に比例して材料費を削減することができる。
【0160】
以上のように、2等辺3角形微細孔音響パネルで構成される吸音装置が、円形微細孔音響パネルで構成される吸音装置よりも、吸音性能並びにコンパクト化及び低コスト化等でより優位であるためには、2等辺3角形微細孔アスペクト比が約1.4よりも大きいことが望ましいといえる。
【0161】
実施の形態3.
微細孔音響パネルの2枚以上を所定距離を隔てて相対配置し、これら音響パネルを音源に対して所定距離を隔てて配置してなる、先願1の吸音・遮音装置によれば、2層の音響パネルで構成される吸音・遮音装置(音響系の電気的等価回路が図23にて示される)において、1番目の音響パネルの基準化音響レジスタンスをr1、基準化音響リアクタンスをm1、2番目の音響パネルの基準化音響レジスタンスをr2、基準化音響リアクタンスをm2、2層の音響パネルの間隔をD1、音速をc、音波の角周波数をωとすると、音波が音響パネルに垂直に入射する場合の音波のエネルギー吸収率Pdは、下記(数47)〜(数54)で計算できる。
【0162】
【数47】
【0163】
【数48】
【0164】
【数49】
【0165】
【数50】
【0166】
【数51】
【0167】
【数52】
【0168】
【数53】
【0169】
【数54】
【0170】
また、上記P2Aは出力側空気インピーダンスで消費する基準化音響エネルギーであるから、透過損失は、
【0171】
【数55】
【0172】
と書き表すことができる。それ故に、音響パネルとして、実施の形態1の非円形微細孔音響パネルを用いれば、先願1の構成の吸音・遮音装置において、円形微細孔音響パネルからなる吸音・遮音装置よりも、(イ)エネルギー吸収率のピーク値を高め、帯域巾を拡大することができて、(ロ)エネルギー吸収性能を損なうことなく、空気層の厚さを薄くする事ができて、(ハ)エネルギー吸収性能を損なうことなく、微細孔のピッチを広げることができて、(ニ)エネルギー吸収性能を損なうことなく、微細孔板の厚さを薄くすることができる。このことを、以下において、数値例にて説明する。
【0173】
表7は、2層円形微細孔音響パネルと空気層とで構成される先願1の吸音・遮音装置の寸法諸元表であり、表8は、2層矩形微細孔音響パネルと空気層とで構成される先願1の吸音・遮音装置2種類の寸法諸元表であり、これら2種類の矩形微細孔面積は、表7の円形微細孔面積と等しく、矩形微細孔アスペクト比は、表8の矩形#1では5.41、矩形#2では3.22である。
【0174】
表8の矩形#1は空気層厚さを表7と同一にして、吸音性能の向上を図ったものであり、表8の矩形#2は空気層厚さを表7よりも薄くして、吸音性能を表7と同程度にし、その代わりに微細孔ピッチを大きく、微細孔板の厚さを薄くすることを目的にしたものである。
【0175】
【表7】
【0176】
【表8】
【0177】
表7及び表8の微細孔音響パネルで構成される吸音・遮音装置のエネルギー吸収率の周波数特性の数値計算例を図24に、透過損失の周波数特性の数値計算例を図25に示す。矩形#2(表8)は、円形(表7)よりも、空気層厚さを約16%薄くすることができる。また、円形(表7)よりも、矩形#1(表8)は吸音帯域巾を約1.38倍、矩形#2(表8)は吸音帯域巾を約1.09倍に拡大することができる。さらに、単位面積当たりの微細孔の数は、円形(表7)よりも、矩形#1及び矩形#2(表8)共に、約22%少なくすることができ、該孔数の減少分に比例して生産コストを削減することができる。さらにまた、音響パネルの板厚は、円形(表7)よりも、矩形#1(表8)は約54%薄く、矩形#2(表8)は約28%薄くすることができ、該板厚の減少分に比例して材料費を削減することができる。
【0178】
以上のように、矩形微細孔音響パネルで構成される吸音・遮音装置が、円形微細孔音響パネルで構成される吸音・遮音装置よりも、吸音・遮音性能並びにコンパクト化及び低コスト化等でより優位であるためには、矩形微細孔アスペクト比が約3.2よりも大きいことが望ましいといえる。
【0179】
表9は、2層菱形微細孔音響パネルと空気層とで構成される先願1の吸音・遮音装置2種類の寸法諸元表であり、これら2種類の矩形微細孔面積は、表7の円形微細孔面積に等しく、菱形微細孔アスペクト比は、表9の菱形#1では6.0、菱形#2では3.34である。
【0180】
表9の菱形#1は空気層厚さを表7と同一にして、吸音性能の向上を図ったものであり、表9の菱形#2は空気層厚さを表7よりも薄くして、吸音性能を表7と同程度にし、その代わりに微細孔ピッチを大きく、微細孔板の厚さを薄くすることを目的にしたものである。
【0181】
表7及び表9の微細孔音響パネルで構成される吸音・遮音装置の吸音率の周波数特性の数値計算例を図26に、透過損失の周波数特性の数値計算例を図27に示す。菱形#2(表9)は、円形(表7)よりも、空気層厚さを約6%薄くすることができる。また、円形(表7)よりも、菱形#1(表9)は吸音帯域巾を約1.38倍に、菱形#2(表9)は吸音帯域巾を約1.09倍に拡大することができる。さらに、単位面積当たりの微細孔の数は、円形(表7)よりも、菱形#1及び菱形#2(表9)共に、約21%少なくすることができ、該孔数の減少分に比例して生産コストを削減することができる。さらにまた、音響パネルの板厚は、円形(表7)よりも、表9の菱形#1(表9)は約54%薄く、菱形#2(表9)は約26%薄くすることができ、該板厚の減少分に比例して材料費を削減することができる。
【0182】
以上のように、菱形微細孔音響パネルで構成される吸音・遮音装置が、円形微細孔音響パネルで構成される吸音・遮音装置よりも、吸音・遮音性能並びにコンパクト化及び低コスト化等でより優位であるためには、菱形微細孔アスペクト比が約3.3よりも大きいことが望ましいといえる。
【0183】
表10は、2層2等辺3角形微細孔音響パネルと空気層とで構成される先願1の吸音・遮音装置2種類の寸法諸元表であり、これら2種類の矩形微細孔面積は、表7の円形微細孔面積と等しく、2等辺3角形微細孔アスペクト比が、表10の2等辺3角形#1では4.65、2等辺3角形#2では2.76である。
【0184】
表10の2等辺3角形#1は空気層厚さを表7と同一にして、吸音性能の向上を図ったものであり、表10の2等辺3角形#2は空気層厚さを表7よりも薄くして、吸音性能を表7と同程度にし、その代わりに微細孔ピッチを大きく、微細孔板の厚さを薄くすることを目的にしたものである。
【0185】
【表9】
【0186】
【表10】
【0187】
表7及び表10の微細孔音響パネルで構成される吸音・遮音装置のエネルギー吸収率の周波数特性の数値計算例を図28に、透過損失の周波数特性の数値計算例を図29に示す。2等辺3角形#2(表10)は、円形(表7)よりも、空気層厚さを約2.5%薄くすることができる。また、円形(表7)よりも、2等辺3角形#1(表10)は、吸音帯域巾を約1.38倍に、2等辺3角形#2(表10)は吸音帯域巾を約1.09倍に拡大することができる。さらに、単位面積当たりの微細孔の数は、円形(表7)よりも、2等辺3角形#1(表10)は約21%、2等辺3角形#2(表10)は約22%少なくすることができ、該孔数の減少分に比例して生産コストを削減することができる。さらにまた、音響パネルの板厚は、円形(表7)よりも、2等辺3角形#1(表10)は約54%薄く、2等辺3角形#2(表10)では約37%薄くすることができ、該板厚の減少分に比例して材料費を削減することができる。
【0188】
以上のように、2層2等辺3角形微細孔音響パネルで構成される吸音・遮音装置が、円形微細孔音響パネルで構成される吸音・遮音装置よりも、吸音・遮音性能並びにコンパクト化及び低コスト化等でより優位であるためには、2層2等辺3角形微細孔アスペクト比が約2.7よりも大きいことが望ましいといえる。
【0189】
実施の形態4.
微細孔板音響パネルと無孔音響パネルとで一対の音響パネルを構成し、該微細孔板音響パネル及び無孔音響パネルを密着積層又は所定距離を隔てて相対配置すると共に、該一対の音響パネルの2組を、それぞれの微細孔音響パネルが相対するように所定距離を隔てて配置してなる、先願2の遮音装置において、一方の一対の音響パネルの微細孔板の基準化音響レジスタンスをr1、基準化音響リアクタンスをm1、無孔板の面密度をM1、微細孔板と無孔板との間隔をD1、他方の一対の音響パネルの微細孔板の基準化音響レジスタンスをr2、基準化音響リアクタンスをm2、無孔板の面密度をM2、微細孔板と無孔板との間隔をD3、2層の音響パネルの間隔をD2、音速をc、音波の角周波数をωとすると、音波が音響パネルに垂直に入射する場合の音波の透過損失TLは、下記(数56)〜(数67)で計算できる。
【0190】
なお、該遮音装置の音響系の電気的等価回路(図30)において、Z0、Z1、Z2、Z3及びZ4は、其々の回路の接合点から、出力側へのインピーダンスを表している。
【0191】
【数56】
【0192】
【数57】
【0193】
【数58】
【0194】
【数59】
【0195】
Z4におけるエネルギー消費P4及び第1の壁体から第2の壁体への透過損失TLは、
【0196】
【数60】
【0197】
【数61】
【0198】
【数62】
【0199】
【数63】
【0200】
【数64】
【0201】
【数65】
【0202】
【数66】
【0203】
【数67】
【0204】
で計算することができる。それ故に、音響パネルとして、実施の形態1の非円形微細孔音響パネルを用いれば、先願2の構成の遮音装置において、円形微細孔音響パネルからなる遮音装置よりも、共鳴を起すことなく、より高い透過損失を実現することができる。このことを、以下において、数値例にて説明する。
【0205】
表11は、2層の無孔音響パネルから構成される遮音装置の寸法諸元表(設計例#4)であり、無孔板の面密度は8kg/m2、空気層、即ち音響パネルの間隔は60mmである。表12は、2層の無孔板、2層の円形微細孔板からなる音響パネル、及び、空気層で構成される、先願2の遮音装置の寸法諸元表(設計例#1)であり、無孔板の面密度は8kg/m2、空気層、即ち音響パネルの間隔は60mmであり、円形微細孔の直径は0.51mm、板厚は0.76mm、孔のピッチは20.27mmであり、無孔板と円形微細孔板は隙間無く密接して、音響パネルを構成し、円形微細孔板側が遮音装置の内側を向いて、配置されている。
【0206】
【表11】
【0207】
【表12】
【0208】
表13は、2層の無孔板、2層の矩形微細孔板からなる音響パネル、及び、空気層で構成される、遮音装置2種類の寸法諸元表(設計例#2、設計例#3)であり、これら2種類の矩形微細孔面積は、表12の円形微細孔面積に等しく、矩形微細孔アスペクト比が、設計例#2では6.17であり、設計例#3では3.54である。
【0209】
また、表13の無孔板の面密度は8kg/m2、空気層、即ち音響パネルの間隔は60mmであり、矩形微細孔板の板厚は0.76mm、孔のピッチは設計例#2では20.32mm、設計例#3では20.4mmであり、無孔板と矩形微細孔板は隙間無く密接して、音響パネルを構成し、矩形微細孔板側が遮音装置の内側を向いて、配置されている。
【0210】
【表13】
【0211】
図31は、表11〜13の遮音装置の透過損失の周波数特性の数値計算例を示す図であり、表11の2層無孔板のみからなる遮音装置(設計例#4)は、125Hzにおいて共鳴が起り、透過損失が略ゼロdBとなって、遮音が不可能となっていることがわかる。これに対して、表12の先願2の遮音装置(設計例#1)は、低周波域から100Hzまでは、略20dBの透過損失を保ち、共鳴を起すことなく、周波数が増すと共に、透過損失が増加して行く。また、表13の矩形微細孔板を用いた遮音装置(設計例#2、設計例#3)は、31Hzにおける透過損失が、設計例#2では30dB、設計例#3では26dBを実現できて、共鳴を起すことなく、周波数が増すと共に、更に大きな透過損失を実現できる。それ故に、本実施の形態において、円形断面微細孔よりも、矩形断面微細孔を用いる方がより高い透過損失を容易に実現できる特長を持つ。
【0212】
表14は、2層の無孔板と、2層の菱形微細孔板からなる音響パネルと、空気層とで構成される、遮音装置2種類の寸法諸元表(設計例#2、設計例#3)であり、これら2種類の菱形微細孔面積は、表12の円形微細孔面積に等しく、菱形微細孔アスペクト比が、設計#2では5.96であり、設計#3では3.5である。
【0213】
表14の無孔板の面密度は8kg/m2、空気層、即ち音響パネルの間隔は60mmであり、菱形微細孔板の板厚は0.75mm、孔のピッチは設計例#2では20.4mm、設計例#3では20.38mmであり、無孔板と菱形微細孔板は隙間無く密接して、音響パネルを構成し、菱形微細孔板側が遮音装置の内側を向いて、配置されている。
【0214】
【表14】
【0215】
図32は、表11、表12、表14の遮音装置の透過損失の周波数特性の数値計算例を示す図であり、表11の2層無孔板のみからなる遮音装置(設計例#4)は、125Hzにおいて共鳴が起り、透過損失が略ゼロdBとなって、遮音が不可能となっていることがわかる。これに対して、表14の菱形微細孔板を用いた遮音装置(設計例#2、設計例#3)は、31Hzにおける透過損失が、設計例#2では31dB、設計例#3では26dBを実現できて、共鳴を起すことなく、周波数が増すと共に、更に大きな透過損失を実現できる。それ故に、本実施の形態において、円形断面微細孔よりも、菱形断面微細孔を用いる方がより高い透過損失を容易に実現できる特長を持つ。
【0216】
表15は、2層の無孔板と、2層の2等辺3角形微細孔板からなる音響パネルと、空気層とで構成される、遮音装置2種類の寸法諸元表(設計例#2、設計例#3)であり、これら2種類の2等辺3角形微細孔面積は、表12の円形微細孔面積に等しく、2等辺3角形微細孔アスペクト比が、設計#2では5.14であり、設計#3では3.0である。
【0217】
表15の無孔板の面密度は8kg/m2、空気層、即ち音響パネルの間隔は60mmであり、2等辺3角形微細孔板の板厚は0.76mm、孔のピッチは設計例#2では20.21mm、設計例#3では20.35mmであり、無孔板と2等辺3角形微細孔板は隙間無く密接して、音響パネルを構成し、2等辺3角形微細孔板側が遮音装置の内側を向いて、配置されている。
【0218】
【表15】
【0219】
図33は、表11、表12、表15の遮音装置の透過損失の周波数特性の数値計算例を示す図であり、表11の2層無孔板のみからなる遮音装置(設計例#4)は、125Hzにおいて共鳴が起り、透過損失が略ゼロdBとなって、遮音が不可能となっていることがわかる。これに対して、表15の2等辺3角形微細孔板を用いた遮音装置(設計例#2、設計例#3)は、31Hzにおける透過損失が、設計例#2では31dB、設計例#3では26dBを実現できて、共鳴を起すことなく、周波数が増すと共に、更に大きな透過損失を実現できる。それ故に、本実施の形態において、円形断面微細孔よりも、2等辺3角形微細孔を用いる方がより高い透過損失を容易に実現できる特長を持つ。
【図面の簡単な説明】
【0220】
【図1】本発明の実施の形態1に係る非円形微細孔の例を示す斜視図である。
【図2】矩形微細孔音響パネルの斜視図である。
【図3】矩形微細孔形状の説明図である。
【図4】矩形微細孔音響パネルの基準化音響レジスタンスの周波数特性の数値計算例を示す図である。
【図5】円形微細孔音響パネルの基準化音響レジスタンスに対する矩形微細孔音響パネルの基準化音響レジスタンスの相対比の周波数特性の数値計算例を示す図である。
【図6】矩形微細孔音響パネルの基準化音響リアクタンスの周波数特性の数値計算例を示す図である。
【図7】円形微細孔音響パネルの基準化音響リアクタンスに対する矩形微細孔音響パネルの基準化音響リアクタンスの相対比の周波数特性の数値計算例を示す図である。
【図8】菱形微細孔形状の説明図である。
【図9】菱形微細孔音響パネルの基準化音響レジスタンスの周波数特性の数値計算例を示す図である。
【図10】円形微細孔音響パネルの基準化音響レジスタンスに対する菱形微細孔音響パネルの基準化音響レジスタンスの相対比の周波数特性の数値計算例を示す図である。
【図11】菱形微細孔音響パネルの基準化音響リアクタンスの周波数特性の数値計算例を示す図である。
【図12】円形微細孔音響パネルの基準化音響リアクタンスに対する菱形微細孔音響パネルの基準化音響リアクタンスの相対比の周波数特性の数値計算例を示す図である。
【図13】2等辺3角形微細孔形状の説明図である。
【図14】2等辺3角形微細孔音響パネルの基準化音響レジスタンスの周波数特性の数値計算例を示す図である。
【図15】円形微細孔音響パネルの基準化音響レジスタンスに対する2等辺3角形微細孔音響パネルの基準化音響レジスタンスの相対比の周波数特性の数値計算例を示す図である。
【図16】2等辺3角形微細孔音響パネルの基準化音響リアクタンスの周波数特性の数値計算例を示す図である。
【図17】円形微細孔音響パネルの基準化音響リアクタンスに対する2等辺3角形微細孔音響パネルの基準化音響リアクタンスの相対比の周波数特性の数値計算例を示す図である。
【図18】本発明の実施の形態2に係る微細孔音響パネルを音響的に剛な壁体と音源との中間に配置した場合の音響系の電気的等価回路を示す図である。
【図19】1層円形微細孔音響パネルと空気層とで構成される吸音装置及び1層矩形微細孔音響パネルと空気層とで構成される吸音装置の吸音率の周波数特性の数値計算例を示す図である。
【図20】2層円形微細孔音響パネルと空気層とで構成される吸音装置及び2層矩形微細孔音響パネルと空気層とで構成される吸音装置の吸音率の周波数特性の数値計算例を示す図である。
【図21】1層円形微細孔音響パネルと空気層とで構成される吸音装置及び1層菱形微細孔音響パネルと空気層とで構成される吸音装置の吸音率の周波数特性の数値計算例を示す図である。
【図22】1層円形微細孔音響パネルと空気層とで構成される吸音装置及び1層2等辺3角形微細孔音響パネルと空気層とで構成される吸音装置の吸音率の周波数特性の数値計算例を示す図である。
【図23】本発明の実施の形態3に係る2層の音響パネルで構成される吸音・遮音装置の音響系の電気的等価回路を示す図である。
【図24】2層円形微細孔音響パネルと空気層とで構成される吸音・遮音装置及び2層矩形微細孔音響パネルと空気層とで構成される吸音・遮音装置のエネルギー吸収率の周波数特性の数値計算例を示す図である。
【図25】同じく透過損失の周波数特性の数値計算例を示す図である。
【図26】2層円形微細孔音響パネルと空気層とで構成される吸音・遮音装置及び2層菱形微細孔音響パネルと空気層とで構成される吸音・遮音装置のエネルギー吸収率の周波数特性の数値計算例を示す図である。
【図27】同じく透過損失の周波数特性の数値計算例を示す図である。
【図28】2層円形微細孔音響パネルと空気層とで構成される吸音・遮音装置及び2層2等辺三角形微細孔音響パネルと空気層とで構成される吸音・遮音装置のエネルギー吸収率の周波数特性の数値計算例を示す図である。
【図29】同じく透過損失の周波数特性の数値計算例を示す図である。
【図30】本発明の実施の形態4に係る2層の音響パネルからなる遮音装置の音響系の電気的等価回路を示す図である。
【図31】遮音装置の透過損失の周波数特性の数値計算例を示す図である。
【図32】遮音装置の透過損失の周波数特性の数値計算例を示す図である。
【図33】遮音装置の透過損失の周波数特性の数値計算例を示す図である。
【図34】円形微細孔音響パネルの斜視図である。
【図35】基準化音響インピーダンスzの電気的等価回路を示す図である。
【図36】微細孔の直径dによる規準化音響レジスタンスr及び規準化音響リアクタンスmの変化を示す図である。
【図37】厚さDの空気層の基準化音響インピーダンスの電気的等価回路を示す図である。
【図38】基準化音響レジスタンスrによる吸音率の最大値αの変化を示す図である。
【符号の説明】
【0221】
1 円形微細孔板
1a 円形微細孔
2 矩形微細孔板
2a 矩形微細孔
100 円形微細孔音響パネル
200 矩形微細孔音響パネル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板厚方向に貫通する多数の微細孔を設けた微細孔板からなる音響パネルであって、
該微細孔板の板厚方向に直交する切断面において、周壁により囲まれる微細孔形状を非円形としてなる音響パネル。
【請求項2】
板厚方向に貫通する多数の微細孔を設けた微細孔板からなる音響パネルの2枚以上を、音源と壁体との中間に、所定距離を隔てて相対配置した吸音装置において、該音響パネルの少なくとも1枚を請求項1記載の音響パネルとしてなる吸音装置。
【請求項3】
板厚方向に貫通する多数の微細孔を設けた微細孔板からなる音響パネルの2枚以上を所定距離を隔てて相対配置した吸音・遮音装置において、該音響パネルの少なくとも1枚を請求項1記載の音響パネルとしてなる吸音・遮音装置。
【請求項4】
板厚方向に貫通する多数の微細孔を設けた微細孔板からなる微細孔音響パネルと前記微細孔を設けない無孔板からなる無孔音響パネルとで一対の音響パネルを構成し、該微細孔音響パネル及び無孔音響パネルを密着積層又は所定距離を隔てて相対配置すると共に、該一対の音響パネルの2組を、それぞれの微細孔音響パネルが相対するように所定距離を隔てて配置した遮音装置において、該微細孔板音響パネルの少なくとも一方を請求項1記載の音響パネルとしてなる遮音装置。
【請求項1】
板厚方向に貫通する多数の微細孔を設けた微細孔板からなる音響パネルであって、
該微細孔板の板厚方向に直交する切断面において、周壁により囲まれる微細孔形状を非円形としてなる音響パネル。
【請求項2】
板厚方向に貫通する多数の微細孔を設けた微細孔板からなる音響パネルの2枚以上を、音源と壁体との中間に、所定距離を隔てて相対配置した吸音装置において、該音響パネルの少なくとも1枚を請求項1記載の音響パネルとしてなる吸音装置。
【請求項3】
板厚方向に貫通する多数の微細孔を設けた微細孔板からなる音響パネルの2枚以上を所定距離を隔てて相対配置した吸音・遮音装置において、該音響パネルの少なくとも1枚を請求項1記載の音響パネルとしてなる吸音・遮音装置。
【請求項4】
板厚方向に貫通する多数の微細孔を設けた微細孔板からなる微細孔音響パネルと前記微細孔を設けない無孔板からなる無孔音響パネルとで一対の音響パネルを構成し、該微細孔音響パネル及び無孔音響パネルを密着積層又は所定距離を隔てて相対配置すると共に、該一対の音響パネルの2組を、それぞれの微細孔音響パネルが相対するように所定距離を隔てて配置した遮音装置において、該微細孔板音響パネルの少なくとも一方を請求項1記載の音響パネルとしてなる遮音装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【公開番号】特開2006−257811(P2006−257811A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−79251(P2005−79251)
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【出願人】(000211695)中西金属工業株式会社 (222)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【出願人】(000211695)中西金属工業株式会社 (222)
【Fターム(参考)】
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