音響構造体および音響室
【課題】音響部材のサイズの大型化を抑制しつつ、効果的に音を吸音・散乱させるとともに広い周波数帯で吸音・散乱効果を得る。
【解決手段】吸音効果は、開口面20から放射する音波と、開口面20及び反射面2に対して入射する入射波との位相干渉により奏するものであり、開口面20の正面方向にある吸音領域で主に奏する。一方、散乱効果は、上記入射波と反射面2からの反射波との位相干渉と、上記入射波と開口面20から放射される音波との位相干渉との相互作用によって奏するものである。開口面20及び反射面2のそれそれから放射される音波の位相が異なることにより、それらの面に直交しない斜め方向に気体分子の運動エネルギーの流れが発生じて音の散乱が起こる。音響構造体1においては、このような互いに異なる位相干渉を近接した空間で生じさせることによって、音の散乱、及び吸音を同時に発現させる。
【解決手段】吸音効果は、開口面20から放射する音波と、開口面20及び反射面2に対して入射する入射波との位相干渉により奏するものであり、開口面20の正面方向にある吸音領域で主に奏する。一方、散乱効果は、上記入射波と反射面2からの反射波との位相干渉と、上記入射波と開口面20から放射される音波との位相干渉との相互作用によって奏するものである。開口面20及び反射面2のそれそれから放射される音波の位相が異なることにより、それらの面に直交しない斜め方向に気体分子の運動エネルギーの流れが発生じて音の散乱が起こる。音響構造体1においては、このような互いに異なる位相干渉を近接した空間で生じさせることによって、音の散乱、及び吸音を同時に発現させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸音及び音を散乱する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ホールや劇場等の音響空間においてフラッタエコー等の音響障害を除去するために、音を散乱させるための音響部材が設置される。例えば特許文献1には、1方向に延在する空洞が形成され、その空洞と外部空間とを連通させる開口部を有する部材が複数並べられた音響構造体が開示されており、その空洞に音波が入射すると、開口部から音響再放射されて散乱効果を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−30744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
住宅の居室や会議室、音楽室等の比較的小さい空間では、適度な散乱効果とともに吸音効果を得ることが求められる。そのために、散乱効果を得るための音響部材と、吸音効果を得るための音響部材とを別々に空間に設けようとするとスペースを取ってしまうし、フェルト等の多孔質吸音材を用いて低周波数帯域に対する吸音効果を高めようとすると、厚み方向へのサイズが大型化してしまい、空間をさらに狭めてしまう。
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、音響部材のサイズの大型化を抑制しつつ、効果的に音を吸音・散乱させるとともに広い周波数帯で吸音・散乱効果を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明に係る第1の構成の音響構造体は、音波を透過する音波透過領域と、前記音波透過領域に隣接し、入射する音波に応じた反射波を放射する反射領域とを有する反射体と、外部空間から前記反射体に入射した音波に応じて前記反射領域が前記外部空間に反射波を放射するときに、前記音波透過領域における位相が前記反射波の前記反射領域における位相と異なり、且つピーダンスで除した値の実数部をほぼ0とする音波を、前記音波透過領域を介して前記外部空間に放射する音波放射手段とを備えることを特徴とする。
【0006】
本発明に係る第2の構成の音響構造体は、上記第1の構成の音響構造体において、前記音波放射手段は、外部空間から前記反射体に入射した音波に応じて前記反射領域が前記外部空間に反射波を放射するときに、前記音波透過領域の比音響インピーダンスを、当該音波透過領域の媒質の特性インピーダンスで除した値の絶対値が1未満とする音波を放射することを特徴とする。
本発明に係る第3の構成の音響構造体は、上記第1又は2の構成の音響構造体において、前記音波放射手段は、外部空間から前記反射体に入射した音波に応じて前記反射領域が前記外部空間に反射波を放射するときに、前記反射領域における反射波の位相に対して前記音波透過領域において逆位相となる音波を放射することを特徴とする。
【0007】
本発明に係る第4の構成の音響構造体は、上記第1〜3のいずれか1の構成の音響構造体において、前記音波放射手段は、所定周波数帯の音波が前記音波透過領域を介して前記外部空間から入射すると、当該音波に応じた共鳴によって生じる反射波を、当該音波透過領域を介して当該外部空間に放射する共鳴体であることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る第5の構成の音響構造体は、上記第4の音響構造体において、前記音波透過領域を通る孔部を備え、前記共鳴体は、前記孔部と、当該孔部を介して前記外部空間と連通する閉空間とにより構成されたヘルムホルツ共鳴器であることを特徴とする。
本発明に係る第6の構成の音響構造体は、上記第1の構成の音響構造体において、前記音波放射手段は、収音手段と、前記音波透過領域を介して前記外部空間に音波を放射する放音手段と、前記収音手段によって収音された音声信号を解析して、前記収音手段により収音された前記外部空間から前記反射体に入射する音波の位相を特定し、特定した位相に基づいて、前記音波透過領域における位相が前記反射波の前記反射領域における位相と異なり、且つ前記音波透過領域における比音響インピーダンスを、当該音波透過領域の媒質の特性インピーダンスで除した値の実数部をほぼ0とする音波を放射させるよう、前記放音手段を制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
また、本発明の音響室は、第1〜6のいずれか1の構成の音響構造体を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、音響部材のサイズの大型化を抑制しつつ、効果的に音を吸音・散乱させるとともに広い周波数帯で吸音・散乱効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】音響構造体の外観を示す斜視図である。
【図2】音響構造体を図1の矢印II方向(上面)から見た図である。
【図3】yz平面で音響構造体を切断したときの断面を表した図である。
【図4】比音響インピーダンス比ζと、位相変化量φとの関係を表したグラフである。
【図5】比音響インピーダンス比ζと、複素音圧反射係数の振幅|R|との関係を示すグラフである。
【図6】開口面付近における音波の挙動を説明する図である。
【図7】図6のときにおいて、開口面付近における音波の挙動を説明する図である。
【図8】開口面から見た各方向における反射波の伝搬の様子を表した図である。
【図9】音響構造体を反射面の垂直方向から見た図である。
【図10】図9の切断線VIII-VIIIで音響構造体を切断したときの断面を表した図である。
【図11】音響構造体を、図1に示すyz平面で切断したときの断面を表した図である。
【図12】共鳴体の構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施形態]
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0012】
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態について説明する。
図1は、音響構造体1の外観を示す斜視図である。図2は、音響構造体1を図1の矢印II方向(上面)から見た図である。
音響構造体1は、アクリル樹脂等の剛性率の高い材質の反射性の材料からなり、厚さ方向の長さが比較的小さな直方体状の部材である。音響構造体1の平滑な上面には、開口面20−1〜20〜4が設けられている。これら開口面20−1〜20〜4は、一方の面側から入射された音波を、反対側へと透過させる音波透過領域である。音響構造体1の上面において、反射面2は、開口面20−1〜20−4と隣接する構成となっており、外部空間から入射した音波に応じて、反射波をその外部空間に放射する反射領域である。これら開口面20−1〜20−4、及び反射面2からなる音響構造体1の上面が、反射体として機能する。
なお、以下では、説明の便宜のために、図1に示すように、音響構造体1の反射面2の一辺に平行な1方向を「x方向」とし、それに直交する方向を「y方向」とする。また、反射面2の法線方向であり、音響構造体1の厚さ方向を「z方向」とする。
【0013】
図3は、yz平面で音響構造体1を切断したときの断面を表した図であり、同図(a)は、図2に示す切断線III−IIIで切断したときの断面を表した図であり、同図(b)は、図2に示す切断線IV−IVで切断したときの断面を表した図である。
図3に示すように、音響構造体1の内部には中空領域30−1,30−2,30−3,30−4という4つの隔絶された中空領域が形成されており、図2に示す点線の位置に隔壁が設けられて、その各々が隔てられている。中空領域30−1〜30−4は、開口面20−1〜20−4をそれぞれ通る孔部を介して、外部空間と連通する。孔部21−1は、開口面20−1を通って、音響構造体1の中空領域30−1と外部空間とを連通させ、孔部21−2は、開口面20−1を通って、中空領域30−2と外部空間とを連通させる。また、孔部21−3は、開口面20−3を通って中空領域30−3と外部空間とを連通させ、孔部21−4は、開口面20−4を通って中空領域30−4と外部空間とを連通させる。また、開口面20−1〜20−4の面積はSであり、孔部21−1〜21−4の各位置をxy平面で切断したときの断面積もSである。
【0014】
音響構造体1において、孔部21−1〜21−4及び中空領域30−1〜30−4のそれぞれに対応する部分が、音波放射手段であるヘルムホルツ共鳴器として機能する。これらがヘルムホルツ共鳴器として機能するのは、孔部21−1〜21−4の内部にある気体を質量成分とし、閉空間である中空領域30−1〜30−4の気体層をバネ成分としたバネマス系を形成する。中空領域30−1〜30−4の気体層の体積はそれぞれV1,V2,V3,V4であり、音響構造体1が持つ共鳴周波数f01,f02,f03,f04は、式(1)の関係を満たす。ただし、式(1)において、cは音速を表し、Leは孔部21−1〜21−4の有効長を表す。図3に示すように、有効長Leは、それぞれの孔部と中空領域との境界面から、外部空間との境界面である開口面までの距離を開口端補正により補正した値で、ここでは各共鳴体で有効長は一致している。
f0i=c/2π・(S/Le・Vi)1/2 (i=1,2,3,4)・・・(1)
【0015】
ここで、V1≠V2≠V3≠V4であり、式(1)に示す関係から、音響構造体1は異なる4つの共鳴周波数を持つ。音響構造体1の構成は、以上説明した通りである。
このような構成の音響構造体1は、共鳴周波数f01〜f04を含む周波数帯で、高い吸音効果を発揮すると共に、音を散乱させる散乱効果を発現させる。
【0016】
続いて、音響構造体1によって得られる吸音効果及び散乱効果について説明する。なお、各ヘルムホルツ共鳴器の構成は、その共鳴周波数が異なるだけで、同じ構造的特徴を有している。よって、以下では、共鳴体を成す各構成を、「開口面20」、「孔部21」、「中空領域30」と総称して説明する。
【0017】
音響構造体1は、ヘルムホルツ共鳴器に共鳴現象が生じているとみなせるときに、吸音効果及び散乱効果を奏するものである。続いて、音響構造体1の吸音及び散乱に係る作用について説明する。
ここで、開口面20に対して垂直な方向(z方向)に外部空間から入射波が入射したときの比音響インピーダンス比ζは、式(2)の関係を満たす。ただし、ρは、開口面20の媒質(空気)の密度を表し、p0は、開口面20における音圧であって、入射波の音圧と、その音圧に応じて、ヘルムホルツ共鳴器として機能する中空領域30が共鳴によって放射する反射波の音圧とを合成させた音圧である。u0は、開口面20の法線方向に作用する気体分子の粒子速度であり、開口面20から外部空間の方向に作用する速度を正の値で表し、開口面20から中空領域30の方向に作用する速度を負の値で表す。tは、時刻を表す変数である。
【数1】
【0018】
式(2)に示すように、比音響インピーダンス比ζは、開口面20の比音響インピーダンスp0/u0を、開口面20の媒質(空気)の特性インピーダンスρcで除した値である。要するに、比音響インピーダンス比ζは、音場内の或る点の比音響インピーダンスと、その点の媒質の特性インピーダンスとの比を表す値である。ただし、ここでは、開口面20に接する外部空間の特性インピーダンス(固有音響抵抗)は、開口面20の特性インピーダンスと同義である。開口面20に対して垂直方向に共鳴周波数に属する入射波が入射すると、式(2)の関係を満たす比音響インピーダンス比ζの大きさに応じて、共鳴によって生じる反射波が、中空領域30から開口面20を介して外部空間に放射される。
【0019】
ここで、比音響インピーダンス比ζ=r+jxと定める。rは、比音響インピーダンス比ζの実数部(つまり、Re(ζ))であり、比音響抵抗比と呼ばれることがある値である。xは、比音響インピーダンス比ζの虚数部(つまり、Im(ζ))であり、比音響リアクタンス比と呼ばれることがある値である。次に、比音響インピーダンス比ζと反射波との関係について説明する。
【0020】
(I)ζ=0、すなわちr=0かつx=0の場合
ζ=0(r=0かつx=0)を満たす領域に対して入射波が入射すると、共鳴によって生じる反射波として、入射波と振幅が同じで、位相が180°変位した反射波がその領域から放射される。これにより、入射波と反射波とが干渉により、互いの振幅を完全に打ち消しあうように作用する。このような共鳴を「完全共鳴」と呼ぶこととする。
(II)ζ=1、すなわちr=1かつx=0の場合
ζ=1(r=1かつx=0)を満たす領域に対して入射波が入射すると、その領域からは反射波は放射されない。この現象を「完全吸音」と呼ぶこととする。
(III)ζ=∞、すなわちr=∞かつx=0の場合
ζ=∞(r=∞かつx=0)を満たす領域(すなわち、剛体)に入射波が入射すると、反射によって生じる反射波として、入射波と振幅が同じで、位相の変位がない(位相の変位が0°の)反射波が放射される。この場合、入射波と反射波とが干渉して定在波が生じる。この現象を「完全反射」と呼ぶこととする。
【0021】
上記(I)ではr=0であり、音響構造体1が抵抗成分を有しない場合であるが、音響構造体1が抵抗成分を有している場合もある。この場合に、ヘルムホルツ共鳴器の共鳴周波数の音波が中空領域30に入射すると、例えば上記(II),(III)の場合のように、開口面20における比音響インピーダンス比ζの実数部rは0でない値をとることがある。このときに、開口面20に対して垂直に入射波が入射すると、開口面20から放射される共鳴によって生じる反射波にあっては、その振幅は音響構造体1が有する抵抗成分に応じて減衰する。このように、開口面20の比音響インピーダンス比ζが0となる完全共鳴の場合以外にも、共鳴体が共鳴による反射波を放射する「共鳴現象」が発生しているとみなすことができる場合がある。
【0022】
ところで、或る部材上の領域の点における比音響インピーダンス比ζ=r+jxと、複素音圧反射係数R=|R|exp(jφ)とは、R=(ζ−1)/(ζ+1)という関係を満たす。複素音圧反射係数は、空間のある1点における反射波と入射波の複素数比を表す物理量である。|R|は、入射波に対する反射波の相対的な振幅の大きさを表す値であり、その値が大きいほど、反射波の振幅が相対的に大きくなることを意味している。φは、入射波に対する反射波の位相の変化の大きさを表す値(以下、「位相変化量」という。)である。上記関係式からも明らかなように、比音響インピーダンス比ζ、及び複素音圧反射係数Rのうちの一方が定まれば、もう一方も一義的に定まる。例えば、ζ=0(つまり、完全共鳴)の場合にはR=−1となり、このときの反射波は、入射波に対して逆位相となり、且つ振幅は互いに同一である。ζ=1(つまり、完全吸音)の場合にはR=0となり、このときは反射波は放射されず、その振幅は0である。ζ=∞(つまり、完全反射)の場合には、R=1となり、このときの反射波は、入射波に対して同位相となり、且つ振幅は互いに同一である。
【0023】
続いて、上記共鳴現象によって奏する吸音・散乱効果について、位相からの観点と、振幅からの観点とに分けてそれぞれ説明する。なお、吸音効果については、音響構造体1が開口面20から放射する反射波によって奏する効果であり、散乱効果については、音響構造体1が開口面20から放射する反射波と、反射面2から放射する反射波との相互作用によって奏する効果である。これら各効果を奏するための作用については詳しくは後述する。
まず、位相の観点から説明する。
図4は、比音響インピーダンス比ζと、位相変化量φとの関係を表したグラフである。このグラフにおいて、横軸は比音響インピーダンス比ζの実数部であるr=Re(ζ)を表し、縦軸は比音響インピーダンス比ζの虚数部であるx=Im(ζ)を表している。同図においてζ=∞の場合となる点では、原点からの距離が∞となる。このときには、上記完全反射が生じて、位相変化量φは0°となる。
【0024】
|ζ|<1となる場合は、図4にハッチングで示した領域で表され、この場合の位相変化量φは90°よりも大きい。この条件を満たす場合、|ζ|の値が小さくなるほど位相変化量φは±180°に近づく。より具体的には、x=Im(ζ)>0であれば位相変化量φは180°に近づいていき、x=Im(ζ)<0であれば位相変化量φは−180°に近づいていく。また、横軸上に位置する点であり、0≦Re(ζ)<1、且つIm(ζ)=0となる場合は、上記完全共鳴が生じて位相変化量φは±180°となる。このように、図4に示すグラフにおいてハッチングで示した領域であり、原点を中心とした半径が「1」の円の内側で表される領域(ただし、線上の領域を含まず。)で表されるζの値の場合には、入射波と反射波との位相干渉による吸音効果を、特に効果的に奏することができる。一方、例えば図4に破線で図示した領域のように、|ζ|の値が1以上となる場合には、位相変化量φが90°よりも小さい。この領域においては、吸音効果を奏することはできるが、|ζ|の値が1未満となる場合よりは位相干渉による吸音効果は低くなる。また、上記散乱効果については、開口面20から放射する反射波と、反射面2から放射する反射波とに同位相でない位相差があり、特に逆位相の関係に近いほど、より顕著にその効果を奏する。よって、この散乱効果の発現においても、|ζ|の値が1以上となる場合にもその効果を奏するが、|ζ|<1となることが好ましく、更に好ましくは、|ζ|がなるべく0に近く、位相変化量φが±180°に近い条件が実現されるとよい。
【0025】
すなわち、吸音・散乱効果を奏するための共鳴現象においては、φ=±180°となるように、Im(ζ)=0となることが理想的であるが、90°≦φ≦180°又は−180°≦φ≦−90°という関係を満たしており、すなわち|ζ|の値が1未満となっていれば、共鳴による吸音・散乱効果を効果的に奏する。また、|ζ|の値が1未満となる条件下において、より好ましくは、135°≦φ≦180°又は−180°≦φ≦−135°という条件を満たし、更に好ましくは160°≦φ≦180°又は−180°≦φ≦−160°という条件を満たしているとよい。
【0026】
続いて、振幅の観点から説明する。
図5は、比音響インピーダンス比ζと、複素音圧反射係数の振幅|R|との関係を示すグラフである。同図には、|R|=0.0,0.1,0.3,0.5,0.7,0.8,0.9,1.0という各値をとるときのRe(ζ)及びIm(ζ)の値を示している。同図に示すように、Re(ζ)=1で、且つIm(ζ)=0の場合、|R|=0となり、振幅が0で極小となる。つまり、上記完全吸音が生じており、反射波は生じない。
同図に破線で示した領域は、図4を用いて説明した|ζ|=1となる領域であり、この内側の領域(ただし、線上の領域を含まず。)においては、共鳴現象より、入射波と反射波との間に90°〜180°の位相差が生じている。また、この領域では、|R|>0であるから反射波の振幅が0を超えている。
【0027】
続いて、縦軸上の位置であり、Re(ζ)=0となる場合、Im(ζ)の値とは無関係に|R|は1.0となる。このとき、入射波と同じ振幅の反射波が放射されるので、振幅の観点からは、入射波と反射波との位相が異なる条件下において、吸音・散乱効果を奏する場合において最も好ましい。同図から分かるように、Re(ζ)<1である条件では、Im(ζ)を仮に一定とした場合に、Re(ζ)の値が小さいほど|R|の値が大きくなっていることが分かる。つまり、比音響インピーダンス比ζの実数部Re(ζ)の値が小さく、特にその値がほぼ0である場合には、Im(ζ)の値に関係なく反射波の振幅が大きいから、入射波と反射波との位相が異なるときに、位相干渉により奏する吸音・散乱効果においては好適である。
【0028】
この実施形態の音響構造体1において、開口面20はヘルムホルツ共鳴器と直接接続されている構成となっている。よって、このヘルムホルツ共鳴器の各々の共鳴周波数付近の周波数では、開口面20において|Im(ζ)|<1という条件を満たす。よって、この場合、開口面20からの反射波の位相は入射波に対して90°以上変位する。そして、例えばRe(ζ)=0.30である場合、反射波の振幅|R|=0.54であるから、入射波の振幅に対して1/2以上の振幅の反射波が放射される。このように、開口面20のRe(ζ)とIm(ζ)がともに十分に小さい場合には、開口面20に隣接する反射面からの反射波に対して、開口面20からは振幅が十分に大きく、且つ位相変化の大きな反射波が得られる。理想的には、Re(ζ)=0、且つIm(ζ)=0となれば、|R|=1.0となり、入射波と反射波との振幅が同じになる上記完全共鳴が実現されるとよいが、|R|が1.0未満である場合について詳述すると、以下のとおりである。
【0029】
例えば|R|=0.5の場合、およそ1/4のエネルギーが開口面20から放射されて、この場合も、吸音・散乱効果を効果的に得ることができる。なお、Im(ζ)=0である場合には、Re(ζ)≒0.335であり、比音響インピーダンスの実数部の値は、およそ139.025Kg/m2・sec以下となる。より好ましくは、|R|=0.7という条件を満たしているとよく、この場合、およそ1/2のエネルギーが開口面20から放射され、上述の効果をより強く奏する。この場合にIm(ζ)=0であれば、Re(ζ)≒0.175であり、比音響インピーダンスの実数部の値は、およそ72.625Kg/m2・sec以下となる。さらに好ましくは、|R|=0.9という条件を満たしているとよく、この場合、およそ4/5のエネルギーが開口面20から放射され、吸音・散乱効果を顕著に得ることができる。この場合にIm(ζ)=0とであれば、Re(ζ)≒0.055であり、比音響インピーダンスの実数部の値は、およそ22.825Kg/m2・sec以下となる。
例えば、図5に示したように、好ましい態様である|R|≧0.7である場合には、Re(ζ)はおよそ0.175以下となるし、さらに好ましい態様である|R|≧0.9である場合には、Re(ζ)はおよそ0.055以下となるから、これらの結果に鑑みても、Re(ζ)の値をほぼ0とするように音響構造体1を構成することが、良好な吸音・散乱効果を奏するためには好適であることが分かる。
【0030】
ところで、音響構造体1にあっては、ヘルムホルツ共鳴器を構成する孔部21や中空領域30に、気体分子の運動を阻害する抵抗材などの部材が設けられていない。これにより、ヘルムホルツ共鳴器が共鳴することにより生じる大きな粒子速度を、開口面20に生み出すことができる。また、開口面20に隣接するヘルムホルツ共鳴器の共鳴により、開口面20では|ζ|<1という条件を満たしているから、その場所での音圧は、共鳴現象の発現によりかなり低くなる(理想的には0)。音響構造体1においては、開口面20に気体分子の粒子速度が大きく、且つ音圧が低いという現象を、ヘルムホルツ共鳴器の共鳴により発現させることで、開口面20における比音響インピーダンス比ζの実数部r=Re(ζ)がほぼ0となるという条件が実現されるようにしている。上述のように、Re(ζ)の値は0に近いほど好ましいが、音響構造体1の構成によれば、ヘルムホルツ共鳴器の共鳴によってその条件を実現し得る。
【0031】
続いて、吸音効果及び散乱効果を奏するための作用について説明する。
図6は、音響構造体1の開口面20周辺の外部空間をyz平面に直交するx方向から見たときの、共鳴時における反射波の挙動を説明する図である。同図は、反射面2及び開口面20に対して垂直に入射波の音圧が極大となる「山」が反射面2に到達し、それに対応する反射波が生成される様子を示している。ただし、ここでは、開口面20の比音響インピーダンス比ζ=0で、上述した“完全共鳴”が生じているとする。また、同図には、反射波を実線と破線とで示しているが、実線は、反射波の音圧が極大となる「山」の位置を表しており、破線は、音圧が極小(逆位相)となる「谷」の位置を表している。
【0032】
音響構造体1の中空領域30に対して、共鳴周波数に属する入射波が開口面20に垂直方向に入射すると、ヘルムホルツ共鳴器として機能する中空領域30は、共鳴によって生じる反射波として、入射波に対して位相が180°変位した逆位相の反射波を開口面20から外部空間に放射する。この共鳴現象により、同図に示すように、開口面20での反射波は「谷」となり、そこでの音圧は極小となる。一方で、音響構造体1は、上述したようにアクリル樹脂等の剛性率の高い材質のもので形成されているから、その比音響インピーダンス比はかなり大きい。よって、反射面2が放射する反射波の位相は、入射波の位相に対する変位がほとんどない。反射面2を剛体とみなすと、上述した“完全反射”が生じて、反射面2が放射する反射波の位相は、入射波の位相に対する変位がゼロで、入射波と同位相の反射波を放射する。したがって、開口面20の比音響インピーダンス比ζがゼロで完全共鳴し、反射面2の比音響インピーダンス比が∞で完全反射した場合には、開口面20における反射波の位相と、反射面2における反射波の位相とは常に逆位相の関係となり、且つそれらの振幅は同じとなる。
【0033】
図7は、図6に示す時刻において、反射面2及び開口面20が放射する反射波(球面波)の「山」、及び「谷」の様子を表した図である。
図6に示す領域C1,C2は、図7に示す「吸音領域」に相当する。この吸音領域では、位置P1,P2のように、開口面20からの反射波の「山」と、反射面2からの反射波の「谷」とが重なっているか、或いは開口面20からの反射波の「谷」と、反射面2からの反射波の「山」とが重なっている。すなわち、開口面20から見てz方向にある「吸音領域」では、干渉により互いの音波の振幅を打ち消しあうような位相差でそれらが重なり合うから、この吸音領域で共鳴による吸音効果が得られる。特に、比音響インピーダンス比の絶対値|ζ|が0≦|ζ|<1を満たす場合には、それらの反射波は位相角度に応じて互いに打ち消しあうように作用して、特に効果的な吸音効果が得られる。
【0034】
また、図6に図に楕円で示した、反射面2からの反射波と開口面20からの反射波とが互いに隣接する領域C1,C2では、両者の反射波の位相が不連続となる現象が発生する。以上の作用により、吸音効果は、開口面20付近の領域での共鳴現象により発現する。散乱効果は、反射面2に入射する入射波と反射波との位相干渉と、開口面20付近に入射する入射波と共鳴により生じる反射波との位相干渉との相互作用によって生じるものであり、これを原因として開口面20付近で気体分子の流れが生じて発現する。このように、開口面20からの反射波と反射面2からの反射波とは、それらの位相角度が異なり、その位相差に応じて異なる現象が近接した空間で発現するので、音響構造体1によれば、音の散乱、及び吸音を同時に発現させることができる。
【0035】
図8は、開口面20から見た各方向に対する音響エネルギーの伝搬の様子を模式的に表した図である。なお、ここでは、yz平面上での音響エネルギーの伝搬の様子を説明すると共に、開口面20の中心点Oから見たyz平面上における各方向を、y方向と成す鋭角(角度θ)を用いて表す。
同図に示すように、開口面20から見てθ=90°付近の領域に、図7に示した吸音領域が形成され、伝搬する音響エネルギーが小さい領域として形成されている。これにより、その領域では高い吸音効果が得られるとともに、例えば平行対向した反射面間におけるカラーレーション(フラッタ)等の音響障害の抑制にも寄与する。一方で、図8に示す角度θが小さい領域ほど、伝搬する音響エネルギーが大きくなっており、45°≦θ≦90°の方向にある領域では、そのエネルギーが特に大きい。これは、開口面20からの反射波と反射面2からの反射波との位相差により、気体分子の流れが生じたことを理由としており、この気体分子の流れにより、その粒子速度において、x方向、及びy方向に比較的大きな速度成分を持つようになるからである。よって、図7に示す「散乱領域」のような、θが小さい方向では良好な散乱効果が得られる。
【0036】
以上説明した実施形態の音響構造体1によれば、反射面2に入射する入射波と反射波との位相干渉と、開口面20付近に入射する入射波と共鳴により生じる反射波との位相干渉との相互作用によって、反射面2及び開口面20に直交しない斜め方向に気体分子の運動エネルギーの流れが発生して散乱効果が得られる。また、共鳴現象により開口面20付近の外部空間において、開口面20からの反射波が、開口面20への入射波を位相差により振幅を打ち消すことによる吸音効果も得られる。
また、開口面20から音波を放射させるための構成は、ヘルムホルツ共鳴器のような簡素な構成の共鳴体でよいし、ヘルムホルツ共鳴器の共鳴周波数が、それぞれf01〜f04と異なるように構成されているため、それらを含む広い周波数帯域で高い吸音効果を奏する。また、開口面20の比音響インピーダンス比の絶対値|ζ|が小さくなるようにすれば、より広い周波数帯で吸音効果、及び散乱効果が発現するし、また、音響構造体に対する入射波の進行方向と角度θ(例えば、0度付近)の方向にも散乱効果を生じさせて、広角度の領域に散乱効果を発現させることができる。
よって、このような音響構造体1によれば、サイズの大型化を抑制した音響部材により、音を散乱させるとともに広い周波数帯で吸音効果を得ることができる。
【0037】
[第2実施形態]
続いて、本発明の第2実施形態について説明する。
この第2実施形態の音響構造体1aは、第1実施形態の音響構造体1における音波放射手段であるヘルムホルツ共鳴器に代えて、音響ユニットから外部空間に音波を放射する構成にしたことにある。すなわち、上述した第1実施形態で説明した吸音効果及び散乱効果が発現するときと同等の音波の挙動が、音響ユニットの制御により実現されるようにしている。なお、以下の説明において、第1実施形態の音響構造体1と同一、或いは対応する構成については、同等の機能を実現するものであり、その詳細な説明を省略する。なお、音響構造体1に対応する構成については符号の末尾に「a」を付して表す。
【0038】
図9は、音響構造体1aを反射面2aと垂直な方向(図1の矢印II方向と同じ方向)から見た図である。同図に示すように、音響構造体1aには、反射面2aの中心付近に、音圧透過面である開口面20aが1つ設けられている。また、図示しないが、音響構造体1aは厚さ方向の長さが小さい直方体状の部材で、内部空間(中空領域)が形成されている。
【0039】
図10は、図9に示す切断線VIII-VIII(yz平面)で音響構造体1aを切断したときの開口面20a付近の断面、及びその周辺の構成を表した図である。同図に示すように、音響構造体1aにおいて、開口面20aが接する音響構造体1aの内部空間であって、開口面20aに対して外部空間と反対側の空間には、筐体40と、マイクロホン50と、スピーカ60,60と、制御装置70とが設けられている。音響構造体1aにおいて、これらマイクロホン50、スピーカ60,60及び制御装置70により音響ユニット(音波放射手段)が構成されている。また、音響構造体1aの上面にある反射面を「反射面2a」とする。
【0040】
筐体40は、上面が開口した箱型の部材であり、開口面20aを通る孔部21a及び開口面20aを介して、内部空間が外部空間と連通するようになっている。筐体40内には、スピーカ60,60が収容されている。この筐体40は、スピーカ60,60からの音波が開口面20a以外から漏れ出さないように、或る程度高い遮音性を有した材料で形成されていることが好ましい。マイクロホン50は、例えば小型のコンデンサマイクであり、開口面20a近傍の外部空間に設けられた収音手段である。このマイクロホン50は、収音した音声を表す音声信号を生成して、制御装置70に供給する。スピーカ60は放音手段であり、制御装置70から供給される音声信号に応じた音波を外部空間に放射する。このスピーカ60,60は、スピーカボックスと、このスピーカボックス内に収容されたスピーカユニットとを有した構成となっており、それらが互いに向き合うようにして設けられている。制御装置70は、マイクロホン50から供給される音声信号の振幅や位相を制御して音声信号を生成する音声処理回路(イコライザ等)や、増幅回路等を有している。この制御装置70は、生成した音声信号をスピーカ60,60に供給することにより、音波を放射させる制御を行う。
【0041】
続いて、制御装置70の制御について説明する。
制御装置70は、マイクロホン50によって収音された反射波を表す音声に基づいて、図6に示した音波の挙動と同じ現象を作り出すための制御を行う。すなわち、制御装置70は、外部空間から音響構造体1aの上面に入射した音波に応じて反射面2aが外部空間に反射波を放射するときに、反射面2aにおける位相がその反射波の反射面2aにおける位相と異なり、且つそのときの開口面20aにおける比音響インピーダンスを、開口面20aの媒質の特性インピーダンスで除した値の実数部をほぼ0とする音波を、開口面20aを介して外部空間に放射させるよう、スピーカ60,60を制御する。制御装置70がスピーカ60に放射させる音波として好ましい位相の音波は、開口面20aにおける比音響インピーダンス比の絶対値|ζ|が0≦|ζ|<1となる音波であり、更に好ましくは、反射面2aにおける反射波の位相に対して開口面2aにおいて逆位相となる音波である。振幅については、制御装置70は、音響構造体1aの上面に入射する音波になるべく近い振幅の音波をスピーカ60に放射させることが好ましい。
【0042】
例えば、好ましい態様である、“完全共鳴”が生じた場合と同じ音波の挙動を実現させる場合には、制御装置70は、マイクロホン50から供給された音声信号を解析して、開口面20aに入射する入射波の位相を特定する。そして、制御装置70は、反射面2aにおける反射波の位相に対して、開口面20aにおいて逆位相となる音波を開口面20aから放射させる位相制御と、両者の音波の振幅を一致させる振幅制御とを含めた音声処理(制御)を行う。なお、反射面2aの剛性率は高いが故に、入射波の位相と反射波の位相とが同位相であるとみなせば、制御装置70の制御により、図6に示すような、反射面2aで音圧が極大である「山」となっているときに、開口面20aで音圧が極小となる「谷」となるような音波が放射されるという、音波の挙動を実現することができる。
【0043】
以上説明した音響構造体1aの音響ユニットの制御により、開口面20aの周辺の外部空間において、高い吸音効果を得られるとともに、音を効果的に散乱させることができる。また、制御装置70は、マイクロホン50の収音音声に基づいて上記制御を行うから、図6に示すような完全共鳴に近い音波の挙動を実現させる制御を、比較的容易に行うことができる。また、制御装置70は、上記制御を行う周波数帯をも制御することができるから、吸音効果、及び散乱効果を得たい周波数帯域の音波に対してその制御を行うことができるし、共鳴体を用いる場合よりも、音響構造体全体としての寸法を小さくすることができる。
【0044】
[実施形態のまとめ]
以上説明したように、本発明の第1、第2実施形態に係る音響構造体によれば、上記第1、第2実施形態で述べた作用による、吸音効果及び放音効果を発現させることができる。したがって、これと同様の現象を作り出すことができるのであれば、上記条件で音波を放射する音波放音手段の構成はどのようなものであってもよい。従って、上述した第1、第2実施形態のヘルムホルツ共鳴器や音響ユニットは、音波放射手段の一例に過ぎない。
また、音響構造体に抵抗材のような気体分子の振動を妨げる部材を音響構造体1,1aに設けることなく、敢えて開口面20,20aにおける気体分子の粒子速度を高め、且つ吸音効果によりの場所での音圧を低くすることによって、その付近の領域で高い吸音・散乱効果が発現するようにしている。また、抵抗材を設けると、共鳴周波数が移動したり、共鳴の鋭さが変化したりするため、共鳴周波数と吸音効果とを厳密に制御したい場合に、不具合が生じることにもなる。このため、抵抗材を設けないようにすることで、吸音・散乱効果を厳密に制御することが可能となり、吸音構造体の設計を容易にすることができるという効果もある。このような本発明によって得られる知見に基づいた今後の音響部材の開発への応用にも期待される。
【0045】
[変形例]
本発明は、上述した実施形態と異なる形態で実施することが可能である。本発明は、例えば、以下のような形態で実施することも可能である。また、以下に示す変形例は、各々を適宜に組み合わせてもよい。
[変形例1]
上述した第1実施形態の音響構造体1では、開口面20を介して外部空間に音波を放射する共鳴体として、ヘルムホルツ共鳴器が構成されるようにしていたが、音響構造体が備える共鳴体の種類はこれに限定されない。例えば、管共鳴を利用してもよい。
図11は、図1の音響構造体1と同等の形状を有する音響構造体を、開口面20を含むyz平面で切断したときの断面を表した図である。図12は、本変形例の共鳴体を説明する図である。
3つの管状部材80,81,82は、音響構造体の内部空間に収容され、図11に示すように、開口面20に対して開口面90,91,92が平行で、延在方向が反射面2対して垂直となるよう設けられている。また、図11に示すように、管状部材80,81,82は、それぞれ一端が開口し、他端が閉じた閉管であり、それぞれ円筒状の空洞100,101,102が形成されている。その延在方向の長さはそれぞれl1,l2,l3で異なり、管状部材80,81,82の共鳴周波数fは、式(2)の関係式を満たす。なお、式(2)において、cは音波の伝搬速度、nは1以上の整数であり、ここでは開口端補正を無視している。
f=(2n−1)・c/4li (i=1,2,3) ・・・(2)
【0046】
ここでは、管状部材80,81,82の一端が閉じられた構成となっているが、両端が開口した開管あってもよく、その場合の共鳴周波数fは、式(3)の関係式を満たす。なお、ここでも開端補正を無視している。
f=n・c/2li (i=1,2,3) ・・・(3)
【0047】
このような管共鳴を利用した構成であっても、共鳴とみなせる現象が生じる。これにより、実施形態と同じ作用による吸音効果及び散乱効果を得ることができる。また、これ以外の共鳴体であってもよいのはもちろんである。
【0048】
[変形例2]
上述した第1、第2実施形態では音響構造体の1つの面を反射面としていたが、その面の反対側の面にも開口面を設けて、音響構造体の両面で、実施形態で述べたような、吸音効果及び散乱効果を得られるようにしてもよい。また、音響構造体は、直方体状でなくてもよく、その形状や寸法はいかなるものでもよいし、開口面の形状も円形や多角形等の形状であってもよい。また、音響構造体が例えば多面体のように、それぞれ異なる方向を向いた複数の面を有し、そこに開口面を設けることで、複数方向に吸音領域及び散乱領域が形成されるようにしてもよい。
また、音響構造体は、内部空間が形成された直方体状であったが、反射面2,2aの反対側の面は、吸音効果及び散乱効果に寄与するものではない。よって、例えば開口面である音圧透過領域と、そこに隣接する反射面(反射領域)とを有する板状の反射体の背後に、共鳴体等の音波放射手段が設けられた音響構造体とすることもできる。
また、開口面は、音圧透過性及び通気性(粒子速度透過性)があって、抵抗成分が媒質(空気)の固有音響抵抗に対して十分小さい不織布状の布材やメッシュ、ネット等によって覆われていてもよく、この音波を透過させる音波透過領域は、一方の側から入射した音波を他方の側へと透過させる領域であればよく、開口している構成が必須というわけではない。
【0049】
[変形例3]
上述した第1実施形態において、反射面2には4つの開口面20−1〜20−4が設けられ、その各々に対して、共鳴による反射音を放射するヘルムホルツ共鳴器が備えられていたが、開口面、及びヘルムホルツ共鳴器を構成する中空領域の数はいくつであってもよいし、その位置もどこであってもよい。例えば、共鳴体及び開口面の数を多くすれば、さらに広い領域で吸音効果及び散乱効果を得られるし、開口面の位置によってそれらの効果が発揮される領域は変わるから、音響構造体の設置位置や、用途等に応じて自在に変化させることができる。
また、発明者らは、開口面20(例えば、一辺50mmの正方形)の中心点(重心)から、xy平面上の成分についてはおよそ100mmまでの距離、すなわち開口面20の大きさのおよそ2倍の距離の範囲での吸音率が閾値以上となり、高い吸音効果が発現していることを確認した。よって、反射面2の全体に亘って吸音率が閾値以上となる所定距離以下の間隔で開口面を設ければ、音響構造体の反射面2側全体の周辺の外部空間で、高い吸音効果を得ることができる。従って、前記発明者らの確認によれば、隣り合う開口面の中心点から中心点までの間隔が、該開口面の大きさのおよそ4倍の距離に設ければよいこととなる。
【0050】
また、上述した第2実施形態において、スピーカ60の数や設置位置は、実施形態の態様に限定されないし、スピーカ60の数はさらに多くても少なくてもよい。また、音響構造体1aに開口面20aを複数設け、各開口面から音波を放射する音響ユニットを別々に設けてもよい。このようにすれば、音響構造体の各位置に応じて最適な条件で音波を放射可能である。この場合も、音響ユニット及び開口面の数を多くすれば、さらに広い空間で吸音効果を得られるようになるし、開口面の位置によって吸音効果が発揮される領域を自在に変化させることができる。
また、1つの音響構造体に、第1実施形態で説明したような共鳴体(ヘルムホルツ共鳴器)と、第2実施形態で説明したような音響ユニットとの両方が備えられていてもよい。
【0051】
[変形例4]
上述した第2実施形態において、反射面は平面状でなくてもよく、例えば凸部や凹部が形成されてもよく、その表面形状はどのようなものでもよい。この場合、反射面の表面形状によって反射波が進む方向は様々である。よって、反射面における反射波の伝搬方向と、スピーカ60が放射する音波の開口面における伝搬方向とが一致し、図6に示す領域C1,C2のように位相が不連続となる領域が形成されるよう、表面形状に応じて、スピーカ60の設置位置や設置方向等の設置条件が定められているとよい。ただし、この場合も、制御装置70は、反射面2aにおける反射波の位相に対して、開口面20における位相の異なる音波を放射するような制御を行う。
【0052】
[変形例5]
開口面20aから放射する音波の放射方向を、制御装置が変更する制御を行う構成としてもよい。
この構成において、外部空間に音波を放射する放音手段は、例えば、スピーカが回動可能に設けられ、モータ等からなる駆動手段によりスピーカが回動される構成を採る等して、スピーカによる音波の放射方向が変更可能な構成となっているようにする。そして、外部装置から吸音領域及び散乱効果を発現させたい方向(例えば、角度θ)が指示される等して、制御装置が音波の放射方向を特定すると、特定した放射方向に基づいて駆動手段を制御し、スピーカによる音波の放射方向を変更してから、音波を放射させる。
また、この構成において、音響構造体が設置される空間の形状や、寸法、壁面等の材料等の設置環境条件や、どの方向に対する吸音効率や散乱効率を高めたいかという設置目的に応じて、制御装置が音波の放射方向を変更する構成としてもよい。例えば、設置環境条件や設置目的に対応付けて、音波を放射する角度を制御装置が予め記憶しておく。そして、制御装置は、その対応関係に基づき、音波を放射する角度を特定して、その方向に音波を放射させる。例えば、開口面の中心点Oから見てθ=70〜90°の方向に音の散乱が少ない音場であれば、そこに散乱領域が形成されるよう、制御装置は音波の放射方向を制御する。この構成において、変形例4の構成のように、反射面の表面形状が凹凸であるような場合には、制御装置は、その形状を表す形状情報を取得し、形状情報や、反射面における反射波の位相を表す位相情報を用いて演算を行い、スピーカによる音波の放射方向を演算により求めてもよい。
【0053】
[変形例6]
上述した第1,第2実施形態では、音響構造体の開口面が、外部空間である音響空間に面するよう音響室の内壁面や天井面に設置される場合を説明した。これに対し、音響構造体は、壁面内部や天井内部に埋め込まれることにより設置されていてもよい。また、音響構造体の側面にキャスタ等の移動手段を設ける等して、移動可能なパネル体として構成されていてもよい。
[変形例7]
上述した実施形態又は変形例に係る音響構造体は、音響特性を制御する各種の音響室に配置することが可能である。ここで各種音響室は、防音室、ホール、劇場、音響機器のリスニングルーム、会議室等の居室、各種輸送機器の空間、スピーカや楽器などの筐体等である。
また、第2実施形態又は変形に係る音響構造体の制御装置が行う制御は、複数のハードウェアの協働により行われてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1,1a…音響構造体、2,2a…反射面、20,20a…開口面、21…孔部、30…中空領域、40…筐体、50…マイクロホン、60…スピーカ、70…制御装置、80,81,82…管状部材、90,91,92…開口面、100,101,102…空洞。
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸音及び音を散乱する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ホールや劇場等の音響空間においてフラッタエコー等の音響障害を除去するために、音を散乱させるための音響部材が設置される。例えば特許文献1には、1方向に延在する空洞が形成され、その空洞と外部空間とを連通させる開口部を有する部材が複数並べられた音響構造体が開示されており、その空洞に音波が入射すると、開口部から音響再放射されて散乱効果を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−30744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
住宅の居室や会議室、音楽室等の比較的小さい空間では、適度な散乱効果とともに吸音効果を得ることが求められる。そのために、散乱効果を得るための音響部材と、吸音効果を得るための音響部材とを別々に空間に設けようとするとスペースを取ってしまうし、フェルト等の多孔質吸音材を用いて低周波数帯域に対する吸音効果を高めようとすると、厚み方向へのサイズが大型化してしまい、空間をさらに狭めてしまう。
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、音響部材のサイズの大型化を抑制しつつ、効果的に音を吸音・散乱させるとともに広い周波数帯で吸音・散乱効果を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明に係る第1の構成の音響構造体は、音波を透過する音波透過領域と、前記音波透過領域に隣接し、入射する音波に応じた反射波を放射する反射領域とを有する反射体と、外部空間から前記反射体に入射した音波に応じて前記反射領域が前記外部空間に反射波を放射するときに、前記音波透過領域における位相が前記反射波の前記反射領域における位相と異なり、且つピーダンスで除した値の実数部をほぼ0とする音波を、前記音波透過領域を介して前記外部空間に放射する音波放射手段とを備えることを特徴とする。
【0006】
本発明に係る第2の構成の音響構造体は、上記第1の構成の音響構造体において、前記音波放射手段は、外部空間から前記反射体に入射した音波に応じて前記反射領域が前記外部空間に反射波を放射するときに、前記音波透過領域の比音響インピーダンスを、当該音波透過領域の媒質の特性インピーダンスで除した値の絶対値が1未満とする音波を放射することを特徴とする。
本発明に係る第3の構成の音響構造体は、上記第1又は2の構成の音響構造体において、前記音波放射手段は、外部空間から前記反射体に入射した音波に応じて前記反射領域が前記外部空間に反射波を放射するときに、前記反射領域における反射波の位相に対して前記音波透過領域において逆位相となる音波を放射することを特徴とする。
【0007】
本発明に係る第4の構成の音響構造体は、上記第1〜3のいずれか1の構成の音響構造体において、前記音波放射手段は、所定周波数帯の音波が前記音波透過領域を介して前記外部空間から入射すると、当該音波に応じた共鳴によって生じる反射波を、当該音波透過領域を介して当該外部空間に放射する共鳴体であることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る第5の構成の音響構造体は、上記第4の音響構造体において、前記音波透過領域を通る孔部を備え、前記共鳴体は、前記孔部と、当該孔部を介して前記外部空間と連通する閉空間とにより構成されたヘルムホルツ共鳴器であることを特徴とする。
本発明に係る第6の構成の音響構造体は、上記第1の構成の音響構造体において、前記音波放射手段は、収音手段と、前記音波透過領域を介して前記外部空間に音波を放射する放音手段と、前記収音手段によって収音された音声信号を解析して、前記収音手段により収音された前記外部空間から前記反射体に入射する音波の位相を特定し、特定した位相に基づいて、前記音波透過領域における位相が前記反射波の前記反射領域における位相と異なり、且つ前記音波透過領域における比音響インピーダンスを、当該音波透過領域の媒質の特性インピーダンスで除した値の実数部をほぼ0とする音波を放射させるよう、前記放音手段を制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
また、本発明の音響室は、第1〜6のいずれか1の構成の音響構造体を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、音響部材のサイズの大型化を抑制しつつ、効果的に音を吸音・散乱させるとともに広い周波数帯で吸音・散乱効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】音響構造体の外観を示す斜視図である。
【図2】音響構造体を図1の矢印II方向(上面)から見た図である。
【図3】yz平面で音響構造体を切断したときの断面を表した図である。
【図4】比音響インピーダンス比ζと、位相変化量φとの関係を表したグラフである。
【図5】比音響インピーダンス比ζと、複素音圧反射係数の振幅|R|との関係を示すグラフである。
【図6】開口面付近における音波の挙動を説明する図である。
【図7】図6のときにおいて、開口面付近における音波の挙動を説明する図である。
【図8】開口面から見た各方向における反射波の伝搬の様子を表した図である。
【図9】音響構造体を反射面の垂直方向から見た図である。
【図10】図9の切断線VIII-VIIIで音響構造体を切断したときの断面を表した図である。
【図11】音響構造体を、図1に示すyz平面で切断したときの断面を表した図である。
【図12】共鳴体の構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施形態]
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0012】
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態について説明する。
図1は、音響構造体1の外観を示す斜視図である。図2は、音響構造体1を図1の矢印II方向(上面)から見た図である。
音響構造体1は、アクリル樹脂等の剛性率の高い材質の反射性の材料からなり、厚さ方向の長さが比較的小さな直方体状の部材である。音響構造体1の平滑な上面には、開口面20−1〜20〜4が設けられている。これら開口面20−1〜20〜4は、一方の面側から入射された音波を、反対側へと透過させる音波透過領域である。音響構造体1の上面において、反射面2は、開口面20−1〜20−4と隣接する構成となっており、外部空間から入射した音波に応じて、反射波をその外部空間に放射する反射領域である。これら開口面20−1〜20−4、及び反射面2からなる音響構造体1の上面が、反射体として機能する。
なお、以下では、説明の便宜のために、図1に示すように、音響構造体1の反射面2の一辺に平行な1方向を「x方向」とし、それに直交する方向を「y方向」とする。また、反射面2の法線方向であり、音響構造体1の厚さ方向を「z方向」とする。
【0013】
図3は、yz平面で音響構造体1を切断したときの断面を表した図であり、同図(a)は、図2に示す切断線III−IIIで切断したときの断面を表した図であり、同図(b)は、図2に示す切断線IV−IVで切断したときの断面を表した図である。
図3に示すように、音響構造体1の内部には中空領域30−1,30−2,30−3,30−4という4つの隔絶された中空領域が形成されており、図2に示す点線の位置に隔壁が設けられて、その各々が隔てられている。中空領域30−1〜30−4は、開口面20−1〜20−4をそれぞれ通る孔部を介して、外部空間と連通する。孔部21−1は、開口面20−1を通って、音響構造体1の中空領域30−1と外部空間とを連通させ、孔部21−2は、開口面20−1を通って、中空領域30−2と外部空間とを連通させる。また、孔部21−3は、開口面20−3を通って中空領域30−3と外部空間とを連通させ、孔部21−4は、開口面20−4を通って中空領域30−4と外部空間とを連通させる。また、開口面20−1〜20−4の面積はSであり、孔部21−1〜21−4の各位置をxy平面で切断したときの断面積もSである。
【0014】
音響構造体1において、孔部21−1〜21−4及び中空領域30−1〜30−4のそれぞれに対応する部分が、音波放射手段であるヘルムホルツ共鳴器として機能する。これらがヘルムホルツ共鳴器として機能するのは、孔部21−1〜21−4の内部にある気体を質量成分とし、閉空間である中空領域30−1〜30−4の気体層をバネ成分としたバネマス系を形成する。中空領域30−1〜30−4の気体層の体積はそれぞれV1,V2,V3,V4であり、音響構造体1が持つ共鳴周波数f01,f02,f03,f04は、式(1)の関係を満たす。ただし、式(1)において、cは音速を表し、Leは孔部21−1〜21−4の有効長を表す。図3に示すように、有効長Leは、それぞれの孔部と中空領域との境界面から、外部空間との境界面である開口面までの距離を開口端補正により補正した値で、ここでは各共鳴体で有効長は一致している。
f0i=c/2π・(S/Le・Vi)1/2 (i=1,2,3,4)・・・(1)
【0015】
ここで、V1≠V2≠V3≠V4であり、式(1)に示す関係から、音響構造体1は異なる4つの共鳴周波数を持つ。音響構造体1の構成は、以上説明した通りである。
このような構成の音響構造体1は、共鳴周波数f01〜f04を含む周波数帯で、高い吸音効果を発揮すると共に、音を散乱させる散乱効果を発現させる。
【0016】
続いて、音響構造体1によって得られる吸音効果及び散乱効果について説明する。なお、各ヘルムホルツ共鳴器の構成は、その共鳴周波数が異なるだけで、同じ構造的特徴を有している。よって、以下では、共鳴体を成す各構成を、「開口面20」、「孔部21」、「中空領域30」と総称して説明する。
【0017】
音響構造体1は、ヘルムホルツ共鳴器に共鳴現象が生じているとみなせるときに、吸音効果及び散乱効果を奏するものである。続いて、音響構造体1の吸音及び散乱に係る作用について説明する。
ここで、開口面20に対して垂直な方向(z方向)に外部空間から入射波が入射したときの比音響インピーダンス比ζは、式(2)の関係を満たす。ただし、ρは、開口面20の媒質(空気)の密度を表し、p0は、開口面20における音圧であって、入射波の音圧と、その音圧に応じて、ヘルムホルツ共鳴器として機能する中空領域30が共鳴によって放射する反射波の音圧とを合成させた音圧である。u0は、開口面20の法線方向に作用する気体分子の粒子速度であり、開口面20から外部空間の方向に作用する速度を正の値で表し、開口面20から中空領域30の方向に作用する速度を負の値で表す。tは、時刻を表す変数である。
【数1】
【0018】
式(2)に示すように、比音響インピーダンス比ζは、開口面20の比音響インピーダンスp0/u0を、開口面20の媒質(空気)の特性インピーダンスρcで除した値である。要するに、比音響インピーダンス比ζは、音場内の或る点の比音響インピーダンスと、その点の媒質の特性インピーダンスとの比を表す値である。ただし、ここでは、開口面20に接する外部空間の特性インピーダンス(固有音響抵抗)は、開口面20の特性インピーダンスと同義である。開口面20に対して垂直方向に共鳴周波数に属する入射波が入射すると、式(2)の関係を満たす比音響インピーダンス比ζの大きさに応じて、共鳴によって生じる反射波が、中空領域30から開口面20を介して外部空間に放射される。
【0019】
ここで、比音響インピーダンス比ζ=r+jxと定める。rは、比音響インピーダンス比ζの実数部(つまり、Re(ζ))であり、比音響抵抗比と呼ばれることがある値である。xは、比音響インピーダンス比ζの虚数部(つまり、Im(ζ))であり、比音響リアクタンス比と呼ばれることがある値である。次に、比音響インピーダンス比ζと反射波との関係について説明する。
【0020】
(I)ζ=0、すなわちr=0かつx=0の場合
ζ=0(r=0かつx=0)を満たす領域に対して入射波が入射すると、共鳴によって生じる反射波として、入射波と振幅が同じで、位相が180°変位した反射波がその領域から放射される。これにより、入射波と反射波とが干渉により、互いの振幅を完全に打ち消しあうように作用する。このような共鳴を「完全共鳴」と呼ぶこととする。
(II)ζ=1、すなわちr=1かつx=0の場合
ζ=1(r=1かつx=0)を満たす領域に対して入射波が入射すると、その領域からは反射波は放射されない。この現象を「完全吸音」と呼ぶこととする。
(III)ζ=∞、すなわちr=∞かつx=0の場合
ζ=∞(r=∞かつx=0)を満たす領域(すなわち、剛体)に入射波が入射すると、反射によって生じる反射波として、入射波と振幅が同じで、位相の変位がない(位相の変位が0°の)反射波が放射される。この場合、入射波と反射波とが干渉して定在波が生じる。この現象を「完全反射」と呼ぶこととする。
【0021】
上記(I)ではr=0であり、音響構造体1が抵抗成分を有しない場合であるが、音響構造体1が抵抗成分を有している場合もある。この場合に、ヘルムホルツ共鳴器の共鳴周波数の音波が中空領域30に入射すると、例えば上記(II),(III)の場合のように、開口面20における比音響インピーダンス比ζの実数部rは0でない値をとることがある。このときに、開口面20に対して垂直に入射波が入射すると、開口面20から放射される共鳴によって生じる反射波にあっては、その振幅は音響構造体1が有する抵抗成分に応じて減衰する。このように、開口面20の比音響インピーダンス比ζが0となる完全共鳴の場合以外にも、共鳴体が共鳴による反射波を放射する「共鳴現象」が発生しているとみなすことができる場合がある。
【0022】
ところで、或る部材上の領域の点における比音響インピーダンス比ζ=r+jxと、複素音圧反射係数R=|R|exp(jφ)とは、R=(ζ−1)/(ζ+1)という関係を満たす。複素音圧反射係数は、空間のある1点における反射波と入射波の複素数比を表す物理量である。|R|は、入射波に対する反射波の相対的な振幅の大きさを表す値であり、その値が大きいほど、反射波の振幅が相対的に大きくなることを意味している。φは、入射波に対する反射波の位相の変化の大きさを表す値(以下、「位相変化量」という。)である。上記関係式からも明らかなように、比音響インピーダンス比ζ、及び複素音圧反射係数Rのうちの一方が定まれば、もう一方も一義的に定まる。例えば、ζ=0(つまり、完全共鳴)の場合にはR=−1となり、このときの反射波は、入射波に対して逆位相となり、且つ振幅は互いに同一である。ζ=1(つまり、完全吸音)の場合にはR=0となり、このときは反射波は放射されず、その振幅は0である。ζ=∞(つまり、完全反射)の場合には、R=1となり、このときの反射波は、入射波に対して同位相となり、且つ振幅は互いに同一である。
【0023】
続いて、上記共鳴現象によって奏する吸音・散乱効果について、位相からの観点と、振幅からの観点とに分けてそれぞれ説明する。なお、吸音効果については、音響構造体1が開口面20から放射する反射波によって奏する効果であり、散乱効果については、音響構造体1が開口面20から放射する反射波と、反射面2から放射する反射波との相互作用によって奏する効果である。これら各効果を奏するための作用については詳しくは後述する。
まず、位相の観点から説明する。
図4は、比音響インピーダンス比ζと、位相変化量φとの関係を表したグラフである。このグラフにおいて、横軸は比音響インピーダンス比ζの実数部であるr=Re(ζ)を表し、縦軸は比音響インピーダンス比ζの虚数部であるx=Im(ζ)を表している。同図においてζ=∞の場合となる点では、原点からの距離が∞となる。このときには、上記完全反射が生じて、位相変化量φは0°となる。
【0024】
|ζ|<1となる場合は、図4にハッチングで示した領域で表され、この場合の位相変化量φは90°よりも大きい。この条件を満たす場合、|ζ|の値が小さくなるほど位相変化量φは±180°に近づく。より具体的には、x=Im(ζ)>0であれば位相変化量φは180°に近づいていき、x=Im(ζ)<0であれば位相変化量φは−180°に近づいていく。また、横軸上に位置する点であり、0≦Re(ζ)<1、且つIm(ζ)=0となる場合は、上記完全共鳴が生じて位相変化量φは±180°となる。このように、図4に示すグラフにおいてハッチングで示した領域であり、原点を中心とした半径が「1」の円の内側で表される領域(ただし、線上の領域を含まず。)で表されるζの値の場合には、入射波と反射波との位相干渉による吸音効果を、特に効果的に奏することができる。一方、例えば図4に破線で図示した領域のように、|ζ|の値が1以上となる場合には、位相変化量φが90°よりも小さい。この領域においては、吸音効果を奏することはできるが、|ζ|の値が1未満となる場合よりは位相干渉による吸音効果は低くなる。また、上記散乱効果については、開口面20から放射する反射波と、反射面2から放射する反射波とに同位相でない位相差があり、特に逆位相の関係に近いほど、より顕著にその効果を奏する。よって、この散乱効果の発現においても、|ζ|の値が1以上となる場合にもその効果を奏するが、|ζ|<1となることが好ましく、更に好ましくは、|ζ|がなるべく0に近く、位相変化量φが±180°に近い条件が実現されるとよい。
【0025】
すなわち、吸音・散乱効果を奏するための共鳴現象においては、φ=±180°となるように、Im(ζ)=0となることが理想的であるが、90°≦φ≦180°又は−180°≦φ≦−90°という関係を満たしており、すなわち|ζ|の値が1未満となっていれば、共鳴による吸音・散乱効果を効果的に奏する。また、|ζ|の値が1未満となる条件下において、より好ましくは、135°≦φ≦180°又は−180°≦φ≦−135°という条件を満たし、更に好ましくは160°≦φ≦180°又は−180°≦φ≦−160°という条件を満たしているとよい。
【0026】
続いて、振幅の観点から説明する。
図5は、比音響インピーダンス比ζと、複素音圧反射係数の振幅|R|との関係を示すグラフである。同図には、|R|=0.0,0.1,0.3,0.5,0.7,0.8,0.9,1.0という各値をとるときのRe(ζ)及びIm(ζ)の値を示している。同図に示すように、Re(ζ)=1で、且つIm(ζ)=0の場合、|R|=0となり、振幅が0で極小となる。つまり、上記完全吸音が生じており、反射波は生じない。
同図に破線で示した領域は、図4を用いて説明した|ζ|=1となる領域であり、この内側の領域(ただし、線上の領域を含まず。)においては、共鳴現象より、入射波と反射波との間に90°〜180°の位相差が生じている。また、この領域では、|R|>0であるから反射波の振幅が0を超えている。
【0027】
続いて、縦軸上の位置であり、Re(ζ)=0となる場合、Im(ζ)の値とは無関係に|R|は1.0となる。このとき、入射波と同じ振幅の反射波が放射されるので、振幅の観点からは、入射波と反射波との位相が異なる条件下において、吸音・散乱効果を奏する場合において最も好ましい。同図から分かるように、Re(ζ)<1である条件では、Im(ζ)を仮に一定とした場合に、Re(ζ)の値が小さいほど|R|の値が大きくなっていることが分かる。つまり、比音響インピーダンス比ζの実数部Re(ζ)の値が小さく、特にその値がほぼ0である場合には、Im(ζ)の値に関係なく反射波の振幅が大きいから、入射波と反射波との位相が異なるときに、位相干渉により奏する吸音・散乱効果においては好適である。
【0028】
この実施形態の音響構造体1において、開口面20はヘルムホルツ共鳴器と直接接続されている構成となっている。よって、このヘルムホルツ共鳴器の各々の共鳴周波数付近の周波数では、開口面20において|Im(ζ)|<1という条件を満たす。よって、この場合、開口面20からの反射波の位相は入射波に対して90°以上変位する。そして、例えばRe(ζ)=0.30である場合、反射波の振幅|R|=0.54であるから、入射波の振幅に対して1/2以上の振幅の反射波が放射される。このように、開口面20のRe(ζ)とIm(ζ)がともに十分に小さい場合には、開口面20に隣接する反射面からの反射波に対して、開口面20からは振幅が十分に大きく、且つ位相変化の大きな反射波が得られる。理想的には、Re(ζ)=0、且つIm(ζ)=0となれば、|R|=1.0となり、入射波と反射波との振幅が同じになる上記完全共鳴が実現されるとよいが、|R|が1.0未満である場合について詳述すると、以下のとおりである。
【0029】
例えば|R|=0.5の場合、およそ1/4のエネルギーが開口面20から放射されて、この場合も、吸音・散乱効果を効果的に得ることができる。なお、Im(ζ)=0である場合には、Re(ζ)≒0.335であり、比音響インピーダンスの実数部の値は、およそ139.025Kg/m2・sec以下となる。より好ましくは、|R|=0.7という条件を満たしているとよく、この場合、およそ1/2のエネルギーが開口面20から放射され、上述の効果をより強く奏する。この場合にIm(ζ)=0であれば、Re(ζ)≒0.175であり、比音響インピーダンスの実数部の値は、およそ72.625Kg/m2・sec以下となる。さらに好ましくは、|R|=0.9という条件を満たしているとよく、この場合、およそ4/5のエネルギーが開口面20から放射され、吸音・散乱効果を顕著に得ることができる。この場合にIm(ζ)=0とであれば、Re(ζ)≒0.055であり、比音響インピーダンスの実数部の値は、およそ22.825Kg/m2・sec以下となる。
例えば、図5に示したように、好ましい態様である|R|≧0.7である場合には、Re(ζ)はおよそ0.175以下となるし、さらに好ましい態様である|R|≧0.9である場合には、Re(ζ)はおよそ0.055以下となるから、これらの結果に鑑みても、Re(ζ)の値をほぼ0とするように音響構造体1を構成することが、良好な吸音・散乱効果を奏するためには好適であることが分かる。
【0030】
ところで、音響構造体1にあっては、ヘルムホルツ共鳴器を構成する孔部21や中空領域30に、気体分子の運動を阻害する抵抗材などの部材が設けられていない。これにより、ヘルムホルツ共鳴器が共鳴することにより生じる大きな粒子速度を、開口面20に生み出すことができる。また、開口面20に隣接するヘルムホルツ共鳴器の共鳴により、開口面20では|ζ|<1という条件を満たしているから、その場所での音圧は、共鳴現象の発現によりかなり低くなる(理想的には0)。音響構造体1においては、開口面20に気体分子の粒子速度が大きく、且つ音圧が低いという現象を、ヘルムホルツ共鳴器の共鳴により発現させることで、開口面20における比音響インピーダンス比ζの実数部r=Re(ζ)がほぼ0となるという条件が実現されるようにしている。上述のように、Re(ζ)の値は0に近いほど好ましいが、音響構造体1の構成によれば、ヘルムホルツ共鳴器の共鳴によってその条件を実現し得る。
【0031】
続いて、吸音効果及び散乱効果を奏するための作用について説明する。
図6は、音響構造体1の開口面20周辺の外部空間をyz平面に直交するx方向から見たときの、共鳴時における反射波の挙動を説明する図である。同図は、反射面2及び開口面20に対して垂直に入射波の音圧が極大となる「山」が反射面2に到達し、それに対応する反射波が生成される様子を示している。ただし、ここでは、開口面20の比音響インピーダンス比ζ=0で、上述した“完全共鳴”が生じているとする。また、同図には、反射波を実線と破線とで示しているが、実線は、反射波の音圧が極大となる「山」の位置を表しており、破線は、音圧が極小(逆位相)となる「谷」の位置を表している。
【0032】
音響構造体1の中空領域30に対して、共鳴周波数に属する入射波が開口面20に垂直方向に入射すると、ヘルムホルツ共鳴器として機能する中空領域30は、共鳴によって生じる反射波として、入射波に対して位相が180°変位した逆位相の反射波を開口面20から外部空間に放射する。この共鳴現象により、同図に示すように、開口面20での反射波は「谷」となり、そこでの音圧は極小となる。一方で、音響構造体1は、上述したようにアクリル樹脂等の剛性率の高い材質のもので形成されているから、その比音響インピーダンス比はかなり大きい。よって、反射面2が放射する反射波の位相は、入射波の位相に対する変位がほとんどない。反射面2を剛体とみなすと、上述した“完全反射”が生じて、反射面2が放射する反射波の位相は、入射波の位相に対する変位がゼロで、入射波と同位相の反射波を放射する。したがって、開口面20の比音響インピーダンス比ζがゼロで完全共鳴し、反射面2の比音響インピーダンス比が∞で完全反射した場合には、開口面20における反射波の位相と、反射面2における反射波の位相とは常に逆位相の関係となり、且つそれらの振幅は同じとなる。
【0033】
図7は、図6に示す時刻において、反射面2及び開口面20が放射する反射波(球面波)の「山」、及び「谷」の様子を表した図である。
図6に示す領域C1,C2は、図7に示す「吸音領域」に相当する。この吸音領域では、位置P1,P2のように、開口面20からの反射波の「山」と、反射面2からの反射波の「谷」とが重なっているか、或いは開口面20からの反射波の「谷」と、反射面2からの反射波の「山」とが重なっている。すなわち、開口面20から見てz方向にある「吸音領域」では、干渉により互いの音波の振幅を打ち消しあうような位相差でそれらが重なり合うから、この吸音領域で共鳴による吸音効果が得られる。特に、比音響インピーダンス比の絶対値|ζ|が0≦|ζ|<1を満たす場合には、それらの反射波は位相角度に応じて互いに打ち消しあうように作用して、特に効果的な吸音効果が得られる。
【0034】
また、図6に図に楕円で示した、反射面2からの反射波と開口面20からの反射波とが互いに隣接する領域C1,C2では、両者の反射波の位相が不連続となる現象が発生する。以上の作用により、吸音効果は、開口面20付近の領域での共鳴現象により発現する。散乱効果は、反射面2に入射する入射波と反射波との位相干渉と、開口面20付近に入射する入射波と共鳴により生じる反射波との位相干渉との相互作用によって生じるものであり、これを原因として開口面20付近で気体分子の流れが生じて発現する。このように、開口面20からの反射波と反射面2からの反射波とは、それらの位相角度が異なり、その位相差に応じて異なる現象が近接した空間で発現するので、音響構造体1によれば、音の散乱、及び吸音を同時に発現させることができる。
【0035】
図8は、開口面20から見た各方向に対する音響エネルギーの伝搬の様子を模式的に表した図である。なお、ここでは、yz平面上での音響エネルギーの伝搬の様子を説明すると共に、開口面20の中心点Oから見たyz平面上における各方向を、y方向と成す鋭角(角度θ)を用いて表す。
同図に示すように、開口面20から見てθ=90°付近の領域に、図7に示した吸音領域が形成され、伝搬する音響エネルギーが小さい領域として形成されている。これにより、その領域では高い吸音効果が得られるとともに、例えば平行対向した反射面間におけるカラーレーション(フラッタ)等の音響障害の抑制にも寄与する。一方で、図8に示す角度θが小さい領域ほど、伝搬する音響エネルギーが大きくなっており、45°≦θ≦90°の方向にある領域では、そのエネルギーが特に大きい。これは、開口面20からの反射波と反射面2からの反射波との位相差により、気体分子の流れが生じたことを理由としており、この気体分子の流れにより、その粒子速度において、x方向、及びy方向に比較的大きな速度成分を持つようになるからである。よって、図7に示す「散乱領域」のような、θが小さい方向では良好な散乱効果が得られる。
【0036】
以上説明した実施形態の音響構造体1によれば、反射面2に入射する入射波と反射波との位相干渉と、開口面20付近に入射する入射波と共鳴により生じる反射波との位相干渉との相互作用によって、反射面2及び開口面20に直交しない斜め方向に気体分子の運動エネルギーの流れが発生して散乱効果が得られる。また、共鳴現象により開口面20付近の外部空間において、開口面20からの反射波が、開口面20への入射波を位相差により振幅を打ち消すことによる吸音効果も得られる。
また、開口面20から音波を放射させるための構成は、ヘルムホルツ共鳴器のような簡素な構成の共鳴体でよいし、ヘルムホルツ共鳴器の共鳴周波数が、それぞれf01〜f04と異なるように構成されているため、それらを含む広い周波数帯域で高い吸音効果を奏する。また、開口面20の比音響インピーダンス比の絶対値|ζ|が小さくなるようにすれば、より広い周波数帯で吸音効果、及び散乱効果が発現するし、また、音響構造体に対する入射波の進行方向と角度θ(例えば、0度付近)の方向にも散乱効果を生じさせて、広角度の領域に散乱効果を発現させることができる。
よって、このような音響構造体1によれば、サイズの大型化を抑制した音響部材により、音を散乱させるとともに広い周波数帯で吸音効果を得ることができる。
【0037】
[第2実施形態]
続いて、本発明の第2実施形態について説明する。
この第2実施形態の音響構造体1aは、第1実施形態の音響構造体1における音波放射手段であるヘルムホルツ共鳴器に代えて、音響ユニットから外部空間に音波を放射する構成にしたことにある。すなわち、上述した第1実施形態で説明した吸音効果及び散乱効果が発現するときと同等の音波の挙動が、音響ユニットの制御により実現されるようにしている。なお、以下の説明において、第1実施形態の音響構造体1と同一、或いは対応する構成については、同等の機能を実現するものであり、その詳細な説明を省略する。なお、音響構造体1に対応する構成については符号の末尾に「a」を付して表す。
【0038】
図9は、音響構造体1aを反射面2aと垂直な方向(図1の矢印II方向と同じ方向)から見た図である。同図に示すように、音響構造体1aには、反射面2aの中心付近に、音圧透過面である開口面20aが1つ設けられている。また、図示しないが、音響構造体1aは厚さ方向の長さが小さい直方体状の部材で、内部空間(中空領域)が形成されている。
【0039】
図10は、図9に示す切断線VIII-VIII(yz平面)で音響構造体1aを切断したときの開口面20a付近の断面、及びその周辺の構成を表した図である。同図に示すように、音響構造体1aにおいて、開口面20aが接する音響構造体1aの内部空間であって、開口面20aに対して外部空間と反対側の空間には、筐体40と、マイクロホン50と、スピーカ60,60と、制御装置70とが設けられている。音響構造体1aにおいて、これらマイクロホン50、スピーカ60,60及び制御装置70により音響ユニット(音波放射手段)が構成されている。また、音響構造体1aの上面にある反射面を「反射面2a」とする。
【0040】
筐体40は、上面が開口した箱型の部材であり、開口面20aを通る孔部21a及び開口面20aを介して、内部空間が外部空間と連通するようになっている。筐体40内には、スピーカ60,60が収容されている。この筐体40は、スピーカ60,60からの音波が開口面20a以外から漏れ出さないように、或る程度高い遮音性を有した材料で形成されていることが好ましい。マイクロホン50は、例えば小型のコンデンサマイクであり、開口面20a近傍の外部空間に設けられた収音手段である。このマイクロホン50は、収音した音声を表す音声信号を生成して、制御装置70に供給する。スピーカ60は放音手段であり、制御装置70から供給される音声信号に応じた音波を外部空間に放射する。このスピーカ60,60は、スピーカボックスと、このスピーカボックス内に収容されたスピーカユニットとを有した構成となっており、それらが互いに向き合うようにして設けられている。制御装置70は、マイクロホン50から供給される音声信号の振幅や位相を制御して音声信号を生成する音声処理回路(イコライザ等)や、増幅回路等を有している。この制御装置70は、生成した音声信号をスピーカ60,60に供給することにより、音波を放射させる制御を行う。
【0041】
続いて、制御装置70の制御について説明する。
制御装置70は、マイクロホン50によって収音された反射波を表す音声に基づいて、図6に示した音波の挙動と同じ現象を作り出すための制御を行う。すなわち、制御装置70は、外部空間から音響構造体1aの上面に入射した音波に応じて反射面2aが外部空間に反射波を放射するときに、反射面2aにおける位相がその反射波の反射面2aにおける位相と異なり、且つそのときの開口面20aにおける比音響インピーダンスを、開口面20aの媒質の特性インピーダンスで除した値の実数部をほぼ0とする音波を、開口面20aを介して外部空間に放射させるよう、スピーカ60,60を制御する。制御装置70がスピーカ60に放射させる音波として好ましい位相の音波は、開口面20aにおける比音響インピーダンス比の絶対値|ζ|が0≦|ζ|<1となる音波であり、更に好ましくは、反射面2aにおける反射波の位相に対して開口面2aにおいて逆位相となる音波である。振幅については、制御装置70は、音響構造体1aの上面に入射する音波になるべく近い振幅の音波をスピーカ60に放射させることが好ましい。
【0042】
例えば、好ましい態様である、“完全共鳴”が生じた場合と同じ音波の挙動を実現させる場合には、制御装置70は、マイクロホン50から供給された音声信号を解析して、開口面20aに入射する入射波の位相を特定する。そして、制御装置70は、反射面2aにおける反射波の位相に対して、開口面20aにおいて逆位相となる音波を開口面20aから放射させる位相制御と、両者の音波の振幅を一致させる振幅制御とを含めた音声処理(制御)を行う。なお、反射面2aの剛性率は高いが故に、入射波の位相と反射波の位相とが同位相であるとみなせば、制御装置70の制御により、図6に示すような、反射面2aで音圧が極大である「山」となっているときに、開口面20aで音圧が極小となる「谷」となるような音波が放射されるという、音波の挙動を実現することができる。
【0043】
以上説明した音響構造体1aの音響ユニットの制御により、開口面20aの周辺の外部空間において、高い吸音効果を得られるとともに、音を効果的に散乱させることができる。また、制御装置70は、マイクロホン50の収音音声に基づいて上記制御を行うから、図6に示すような完全共鳴に近い音波の挙動を実現させる制御を、比較的容易に行うことができる。また、制御装置70は、上記制御を行う周波数帯をも制御することができるから、吸音効果、及び散乱効果を得たい周波数帯域の音波に対してその制御を行うことができるし、共鳴体を用いる場合よりも、音響構造体全体としての寸法を小さくすることができる。
【0044】
[実施形態のまとめ]
以上説明したように、本発明の第1、第2実施形態に係る音響構造体によれば、上記第1、第2実施形態で述べた作用による、吸音効果及び放音効果を発現させることができる。したがって、これと同様の現象を作り出すことができるのであれば、上記条件で音波を放射する音波放音手段の構成はどのようなものであってもよい。従って、上述した第1、第2実施形態のヘルムホルツ共鳴器や音響ユニットは、音波放射手段の一例に過ぎない。
また、音響構造体に抵抗材のような気体分子の振動を妨げる部材を音響構造体1,1aに設けることなく、敢えて開口面20,20aにおける気体分子の粒子速度を高め、且つ吸音効果によりの場所での音圧を低くすることによって、その付近の領域で高い吸音・散乱効果が発現するようにしている。また、抵抗材を設けると、共鳴周波数が移動したり、共鳴の鋭さが変化したりするため、共鳴周波数と吸音効果とを厳密に制御したい場合に、不具合が生じることにもなる。このため、抵抗材を設けないようにすることで、吸音・散乱効果を厳密に制御することが可能となり、吸音構造体の設計を容易にすることができるという効果もある。このような本発明によって得られる知見に基づいた今後の音響部材の開発への応用にも期待される。
【0045】
[変形例]
本発明は、上述した実施形態と異なる形態で実施することが可能である。本発明は、例えば、以下のような形態で実施することも可能である。また、以下に示す変形例は、各々を適宜に組み合わせてもよい。
[変形例1]
上述した第1実施形態の音響構造体1では、開口面20を介して外部空間に音波を放射する共鳴体として、ヘルムホルツ共鳴器が構成されるようにしていたが、音響構造体が備える共鳴体の種類はこれに限定されない。例えば、管共鳴を利用してもよい。
図11は、図1の音響構造体1と同等の形状を有する音響構造体を、開口面20を含むyz平面で切断したときの断面を表した図である。図12は、本変形例の共鳴体を説明する図である。
3つの管状部材80,81,82は、音響構造体の内部空間に収容され、図11に示すように、開口面20に対して開口面90,91,92が平行で、延在方向が反射面2対して垂直となるよう設けられている。また、図11に示すように、管状部材80,81,82は、それぞれ一端が開口し、他端が閉じた閉管であり、それぞれ円筒状の空洞100,101,102が形成されている。その延在方向の長さはそれぞれl1,l2,l3で異なり、管状部材80,81,82の共鳴周波数fは、式(2)の関係式を満たす。なお、式(2)において、cは音波の伝搬速度、nは1以上の整数であり、ここでは開口端補正を無視している。
f=(2n−1)・c/4li (i=1,2,3) ・・・(2)
【0046】
ここでは、管状部材80,81,82の一端が閉じられた構成となっているが、両端が開口した開管あってもよく、その場合の共鳴周波数fは、式(3)の関係式を満たす。なお、ここでも開端補正を無視している。
f=n・c/2li (i=1,2,3) ・・・(3)
【0047】
このような管共鳴を利用した構成であっても、共鳴とみなせる現象が生じる。これにより、実施形態と同じ作用による吸音効果及び散乱効果を得ることができる。また、これ以外の共鳴体であってもよいのはもちろんである。
【0048】
[変形例2]
上述した第1、第2実施形態では音響構造体の1つの面を反射面としていたが、その面の反対側の面にも開口面を設けて、音響構造体の両面で、実施形態で述べたような、吸音効果及び散乱効果を得られるようにしてもよい。また、音響構造体は、直方体状でなくてもよく、その形状や寸法はいかなるものでもよいし、開口面の形状も円形や多角形等の形状であってもよい。また、音響構造体が例えば多面体のように、それぞれ異なる方向を向いた複数の面を有し、そこに開口面を設けることで、複数方向に吸音領域及び散乱領域が形成されるようにしてもよい。
また、音響構造体は、内部空間が形成された直方体状であったが、反射面2,2aの反対側の面は、吸音効果及び散乱効果に寄与するものではない。よって、例えば開口面である音圧透過領域と、そこに隣接する反射面(反射領域)とを有する板状の反射体の背後に、共鳴体等の音波放射手段が設けられた音響構造体とすることもできる。
また、開口面は、音圧透過性及び通気性(粒子速度透過性)があって、抵抗成分が媒質(空気)の固有音響抵抗に対して十分小さい不織布状の布材やメッシュ、ネット等によって覆われていてもよく、この音波を透過させる音波透過領域は、一方の側から入射した音波を他方の側へと透過させる領域であればよく、開口している構成が必須というわけではない。
【0049】
[変形例3]
上述した第1実施形態において、反射面2には4つの開口面20−1〜20−4が設けられ、その各々に対して、共鳴による反射音を放射するヘルムホルツ共鳴器が備えられていたが、開口面、及びヘルムホルツ共鳴器を構成する中空領域の数はいくつであってもよいし、その位置もどこであってもよい。例えば、共鳴体及び開口面の数を多くすれば、さらに広い領域で吸音効果及び散乱効果を得られるし、開口面の位置によってそれらの効果が発揮される領域は変わるから、音響構造体の設置位置や、用途等に応じて自在に変化させることができる。
また、発明者らは、開口面20(例えば、一辺50mmの正方形)の中心点(重心)から、xy平面上の成分についてはおよそ100mmまでの距離、すなわち開口面20の大きさのおよそ2倍の距離の範囲での吸音率が閾値以上となり、高い吸音効果が発現していることを確認した。よって、反射面2の全体に亘って吸音率が閾値以上となる所定距離以下の間隔で開口面を設ければ、音響構造体の反射面2側全体の周辺の外部空間で、高い吸音効果を得ることができる。従って、前記発明者らの確認によれば、隣り合う開口面の中心点から中心点までの間隔が、該開口面の大きさのおよそ4倍の距離に設ければよいこととなる。
【0050】
また、上述した第2実施形態において、スピーカ60の数や設置位置は、実施形態の態様に限定されないし、スピーカ60の数はさらに多くても少なくてもよい。また、音響構造体1aに開口面20aを複数設け、各開口面から音波を放射する音響ユニットを別々に設けてもよい。このようにすれば、音響構造体の各位置に応じて最適な条件で音波を放射可能である。この場合も、音響ユニット及び開口面の数を多くすれば、さらに広い空間で吸音効果を得られるようになるし、開口面の位置によって吸音効果が発揮される領域を自在に変化させることができる。
また、1つの音響構造体に、第1実施形態で説明したような共鳴体(ヘルムホルツ共鳴器)と、第2実施形態で説明したような音響ユニットとの両方が備えられていてもよい。
【0051】
[変形例4]
上述した第2実施形態において、反射面は平面状でなくてもよく、例えば凸部や凹部が形成されてもよく、その表面形状はどのようなものでもよい。この場合、反射面の表面形状によって反射波が進む方向は様々である。よって、反射面における反射波の伝搬方向と、スピーカ60が放射する音波の開口面における伝搬方向とが一致し、図6に示す領域C1,C2のように位相が不連続となる領域が形成されるよう、表面形状に応じて、スピーカ60の設置位置や設置方向等の設置条件が定められているとよい。ただし、この場合も、制御装置70は、反射面2aにおける反射波の位相に対して、開口面20における位相の異なる音波を放射するような制御を行う。
【0052】
[変形例5]
開口面20aから放射する音波の放射方向を、制御装置が変更する制御を行う構成としてもよい。
この構成において、外部空間に音波を放射する放音手段は、例えば、スピーカが回動可能に設けられ、モータ等からなる駆動手段によりスピーカが回動される構成を採る等して、スピーカによる音波の放射方向が変更可能な構成となっているようにする。そして、外部装置から吸音領域及び散乱効果を発現させたい方向(例えば、角度θ)が指示される等して、制御装置が音波の放射方向を特定すると、特定した放射方向に基づいて駆動手段を制御し、スピーカによる音波の放射方向を変更してから、音波を放射させる。
また、この構成において、音響構造体が設置される空間の形状や、寸法、壁面等の材料等の設置環境条件や、どの方向に対する吸音効率や散乱効率を高めたいかという設置目的に応じて、制御装置が音波の放射方向を変更する構成としてもよい。例えば、設置環境条件や設置目的に対応付けて、音波を放射する角度を制御装置が予め記憶しておく。そして、制御装置は、その対応関係に基づき、音波を放射する角度を特定して、その方向に音波を放射させる。例えば、開口面の中心点Oから見てθ=70〜90°の方向に音の散乱が少ない音場であれば、そこに散乱領域が形成されるよう、制御装置は音波の放射方向を制御する。この構成において、変形例4の構成のように、反射面の表面形状が凹凸であるような場合には、制御装置は、その形状を表す形状情報を取得し、形状情報や、反射面における反射波の位相を表す位相情報を用いて演算を行い、スピーカによる音波の放射方向を演算により求めてもよい。
【0053】
[変形例6]
上述した第1,第2実施形態では、音響構造体の開口面が、外部空間である音響空間に面するよう音響室の内壁面や天井面に設置される場合を説明した。これに対し、音響構造体は、壁面内部や天井内部に埋め込まれることにより設置されていてもよい。また、音響構造体の側面にキャスタ等の移動手段を設ける等して、移動可能なパネル体として構成されていてもよい。
[変形例7]
上述した実施形態又は変形例に係る音響構造体は、音響特性を制御する各種の音響室に配置することが可能である。ここで各種音響室は、防音室、ホール、劇場、音響機器のリスニングルーム、会議室等の居室、各種輸送機器の空間、スピーカや楽器などの筐体等である。
また、第2実施形態又は変形に係る音響構造体の制御装置が行う制御は、複数のハードウェアの協働により行われてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1,1a…音響構造体、2,2a…反射面、20,20a…開口面、21…孔部、30…中空領域、40…筐体、50…マイクロホン、60…スピーカ、70…制御装置、80,81,82…管状部材、90,91,92…開口面、100,101,102…空洞。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音波を透過する音波透過領域と、前記音波透過領域に隣接し、入射する音波に応じた反射波を放射する反射領域とを有する反射体と、
外部空間から前記反射体に入射した音波に応じて前記反射領域が前記外部空間に反射波を放射するときに、前記音波透過領域における位相が前記反射波の前記反射領域における位相と異なり、且つ前記音波透過領域における比音響インピーダンスを、当該音波透過領域の媒質の特性インピーダンスで除した値の実数部をほぼ0とする音波を、前記音波透過領域を介して前記外部空間に放射する音波放射手段と
を備えることを特徴とする音響構造体。
【請求項2】
前記音波放射手段は、
外部空間から前記反射体に入射した音波に応じて前記反射領域が前記外部空間に反射波を放射するときに、前記音波透過領域の比音響インピーダンスを、当該音波透過領域の媒質の特性インピーダンスで除した値の絶対値が1未満とする音波を放射する
ことを特徴とする請求項1に記載の音響構造体。
【請求項3】
前記音波放射手段は、
外部空間から前記反射体に入射した音波に応じて前記反射領域が前記外部空間に反射波を放射するときに、前記反射領域における反射波の位相に対して前記音波透過領域において逆位相となる音波を放射することを特徴とする請求項1又は2に記載の音響構造体。
【請求項4】
前記音波放射手段は、
所定周波数帯の音波が前記音波透過領域を介して前記外部空間から入射すると、当該音波に応じた共鳴によって生じる反射波を、当該音波透過領域を介して当該外部空間に放射する共鳴体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の音響構造体。
【請求項5】
前記音波透過領域を通る孔部を備え、
前記共鳴体は、前記孔部と、当該孔部を介して前記外部空間と連通する閉空間とにより構成されたヘルムホルツ共鳴器である
ことを特徴とする請求項4に記載の音響構造体。
【請求項6】
前記音波放射手段は、
収音手段と、
前記音波透過領域を介して前記外部空間に音波を放射する放音手段と、
前記収音手段によって収音された音声信号を解析して、前記収音手段により収音された前記外部空間から前記反射体に入射する音波の位相を特定し、特定した位相に基づいて、前記音波透過領域における位相が前記反射波の前記反射領域における位相と異なり、且つ前記音波透過領域における比音響インピーダンスを、当該音波透過領域の媒質の特性インピーダンスで除した値の実数部をほぼ0とする音波を放射させるよう、前記放音手段を制御する制御手段と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の音響構造体。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の音響構造体を備えることを特徴とする音響室。
【請求項1】
音波を透過する音波透過領域と、前記音波透過領域に隣接し、入射する音波に応じた反射波を放射する反射領域とを有する反射体と、
外部空間から前記反射体に入射した音波に応じて前記反射領域が前記外部空間に反射波を放射するときに、前記音波透過領域における位相が前記反射波の前記反射領域における位相と異なり、且つ前記音波透過領域における比音響インピーダンスを、当該音波透過領域の媒質の特性インピーダンスで除した値の実数部をほぼ0とする音波を、前記音波透過領域を介して前記外部空間に放射する音波放射手段と
を備えることを特徴とする音響構造体。
【請求項2】
前記音波放射手段は、
外部空間から前記反射体に入射した音波に応じて前記反射領域が前記外部空間に反射波を放射するときに、前記音波透過領域の比音響インピーダンスを、当該音波透過領域の媒質の特性インピーダンスで除した値の絶対値が1未満とする音波を放射する
ことを特徴とする請求項1に記載の音響構造体。
【請求項3】
前記音波放射手段は、
外部空間から前記反射体に入射した音波に応じて前記反射領域が前記外部空間に反射波を放射するときに、前記反射領域における反射波の位相に対して前記音波透過領域において逆位相となる音波を放射することを特徴とする請求項1又は2に記載の音響構造体。
【請求項4】
前記音波放射手段は、
所定周波数帯の音波が前記音波透過領域を介して前記外部空間から入射すると、当該音波に応じた共鳴によって生じる反射波を、当該音波透過領域を介して当該外部空間に放射する共鳴体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の音響構造体。
【請求項5】
前記音波透過領域を通る孔部を備え、
前記共鳴体は、前記孔部と、当該孔部を介して前記外部空間と連通する閉空間とにより構成されたヘルムホルツ共鳴器である
ことを特徴とする請求項4に記載の音響構造体。
【請求項6】
前記音波放射手段は、
収音手段と、
前記音波透過領域を介して前記外部空間に音波を放射する放音手段と、
前記収音手段によって収音された音声信号を解析して、前記収音手段により収音された前記外部空間から前記反射体に入射する音波の位相を特定し、特定した位相に基づいて、前記音波透過領域における位相が前記反射波の前記反射領域における位相と異なり、且つ前記音波透過領域における比音響インピーダンスを、当該音波透過領域の媒質の特性インピーダンスで除した値の実数部をほぼ0とする音波を放射させるよう、前記放音手段を制御する制御手段と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の音響構造体。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の音響構造体を備えることを特徴とする音響室。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−85989(P2010−85989A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−202086(P2009−202086)
【出願日】平成21年9月1日(2009.9.1)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月1日(2009.9.1)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]