説明

音響波取得装置

【課題】 従来の装置では、検出器の回転軸上からのみ光が照射されていたため、被検体内で光照射強度のムラができてしまう可能性があった。
【解決手段】 本発明の音響波取得装置は、光を発生させる光源と、前記光が被検体に照射されることにより前記被検体内から発生する音響波を受信する複数の素子が配置された検出器と、を備える。そして、前記検出器を回転させるための回転手段と、前記光源からの光を前記被検体に照射する複数の光照射部と、を有し、前記複数の光照射部は、前記検出器の回転軸以外の位置に少なくとも設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は音響波取得装置に関する。
【背景技術】
【0002】
音響波(典型的には超音波)を利用して被検体の内部を画像化する技術として、光音響イメージング法が提案されている。光音響イメージング法は、パルスレーザー光を被検体に照射する事により発生する音響波を用い、検体内部の光学特性値に関連した情報を可視化する方法である。
【0003】
特許文献1には、半球面上に配置された複数のトランスデューサーを用いて被検体(乳房)からの音響波を受信し、3次元画像データを生成(画像再構成)する方法が記述されている。図10は特許文献1に記載された検出器の様子を示す模式図である。図10では、光が被検体に照射されている状態を示す。この装置では、被検者は半球状のトランスデューサーが配置された検出器に乳房を挿入し、うつ伏せの姿勢を取る。挿入された乳房とトランスデューサー間には音響マッチングを取るために水が充填されている。測定時にはトランスデューサーが設けられた検出器はステップ回転し、各位置でトランスデューサーは音響波を受信する。その回転の軸は半球の頂点と半球の中心を通る軸である。このように検出器が回転する事で、少ない数のトランスデューサーを用いても、多方向にトランスデューサーが存在しているかのように測定する事を可能としている。乳房は検出器の半球中心付近に位置するよう挿入され、パルス光は検出器の回転軸上の半球頂点部分から照射されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5713356号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
被検体から発生する音響波は発生した位置の光強度に比例する。このため、光音響イメージング法を用いて画像データを生成する際には、被検体に一様な強度の光を照射する事が望ましい。照射した光の強度分布が偏っていると発生する音響波の強度にも偏りが発生し、再構成画像のコントラストが被検体内の対象物(光吸収体)のコントラストとは関係なく分布を生じる。
【0006】
図10の装置で測定を行う際には、被検者はうつ伏せになり、上部に開口を有する検出器内部に乳房を挿入しておこなわれる。パルス光は回転軸方向から乳房に向けて照射されているので、乳頭付近に強い光が入射され、胸壁付近に入射する光強度は減衰により弱くなる。よって、乳頭部分からの音響波が強く画像のコントラストが高くなり、胸壁部分からの音響波は弱く画像のコントラストが低くなる。このように特許文献1の装置では、回転軸方向のみから光を照射しているため、検出器が回転しても、光照射部分は常に同じ位置となり、被検体内で光照射強度のムラができてしまうという課題がある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑み、回転型の検出器において、光照射強度のムラを減少させる音響波取得装置を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の音響波取得装置は、光を発生させる光源と、前記光が被検体に照射されることにより前記被検体内から発生する音響波を受信する複数の素子が配置された検出器と、を備えた音響波取得装置であって、前記検出器を回転させるための回転手段と、前記光源からの光を前記被検体に照射する複数の光照射部と、を有し、前記複数の光照射部は、前記検出器の回転軸以外の位置に少なくとも設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、少なくとも回転軸方向以外の方向から光を被検体に照射することで、被検体に当たる光強度のムラを減少させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態1に係る音響波取得装置を説明する模式図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る装置を説明するブロック図である。
【図3】本発明の実施形態2に係るトランスデューサーと光照射位置を説明する模式図である。
【図4】本発明の実施形態4に係るトランスデューサーと光照射位置を説明する模式図である。
【図5】本発明の実施形態5に係る音響波取得装置を説明する模式図である。
【図6】本発明の実施形態6に係るトランスデューサーと光照射位置を説明する模式図である。
【図7】本発明の実施形態7に係る音響波取得装置を説明する模式図である。
【図8】本発明の実施形態8に係る音響波取得装置を説明する模式図である。
【図9】本発明の実施形態1、2、4に係る効果を説明する模式図である。
【図10】従来例の光照射方法を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明について図面を参照して説明する。
【0012】
図1と図2を用いて本発明を適用できる音響波取得装置の基本的な実施形態を説明する。図1は本発明の適用できる音響波取得装置の構成を示す模式図である。図1(a)は検出器5の周囲の構造や被検体6の配置を示す断面図であり、図1(b)はトランスデューサー7と光照射部4の配置を示す上面図である。図2は本発明の適用できる音響波取得装置の各構成を示すブロック図である。
【0013】
本発明の音響波取得装置は、複数のトランスデューサー7と、パルス光を発生させる光源1と、光源が発生したパルス光を被検体6に照射する複数の光照射部4と、を有する。複数のトランスデューサー7は、被検体6を囲むように、半球面状の検出器5に配置されている。検出器5は、所定の回転軸に沿って、回転手段であるモータ12により回転される。また、光源1が発生した光は、導波手段3により光照射部4まで伝達される。
トランスデューサー7は、音響波を受信し電気信号に変換する素子であり、図1(b)の黒丸で示すように検出器5に配置されている。パルス光を被検体6に照射する光照射部4の位置は、図1(b)の白丸で示す。被検体6に光照射部4から光を照射すると、被検体6内のヘモグロビン等の対象物(光吸収体)が光を吸収し、吸収した光の強度に応じた強度の音響波を発生する。発生した音響波は検出器5に固定されているトランスデューサー7で受信され、電気信号に変換される。
検出器5は回転し、トランスデューサー7と光照射部4と、を回転移動させる。移動後の位置では、また、光照射部4から光が照射され、発生する音響波をトランスデューサー7が受信し、電気信号を出力する。このように、移動と光照射とを繰り返し、被検体6からの音響波を測定する。トランスデューサー7から出力された電気信号は、信号処理部9によってデジタル化された後、受信位置別に記録される。画像再構成部10は、受信位置毎の電気信号を用いて画像再構成し画像データを生成する。生成された画像データは、表示部11に入力され、画像として表示される。
【0014】
上記の形態の装置は、検出器5の回転軸以外の位置に固定された複数の光照射部4を有し、光照射部4がトランスデューサー7と共に回転することで、被検体周囲の複数位置から光を照射する事が可能となる。よって、光照射強度のムラ(ばらつき)を低減することができる。
【0015】
以下、各構成について詳細に説明する。
【0016】
(光源)
光源1は、被検体(例えば生体)を構成する成分のうち特定の成分(例えばヘモグロビン)に吸収される特定の波長の光を照射する手段である。光源としては5ナノから50ナノ秒のパルス光を発生可能なパルス光源を少なくとも一つは備える。光源としては大きな出力が得られるレーザーが好ましいが、レーザーのかわりに発光ダイオードなどを用いることも可能である。レーザーとしては、固体レーザー、ガスレーザー、色素レーザー、半導体レーザーなど様々なレーザーを使用することができる。本発明において光とは、可視光線や赤外線を含む電磁波を示し、具体的には、波長が500nm以上1300nm以下の範囲の光を用いる。前記範囲内の光のうち、測定対象とする成分により特定の波長を選択すると良い。照射のタイミング、波形、強度などは不図示の光源制御部によって制御される。
【0017】
(光照射部)
光照射部4は光源1からの光を被検体6に向けて照射する。本発明においては、検出器の回転軸以外の位置に、光照射部が設けられている。回転軸以外の位置に設けられた光照射部は、検出器の回転により被検体の別の位置からも光を照射することができ、複数位置からの照射が可能となる。また、光照射部は、回転軸上にも設けられていてもよい。光照射部4は、レンズ、拡散板等が挙げられる。また、導波手段3として光ファイバを用いた場合、光照射部4は光ファイバの先端部を示す場合もある。
また、被検体6内に等しい吸収係数を持つ光吸収体がある場合、被検体6内の光吸収体からの音響波の強度は被検体6内の位置によらず一様であることが望ましい。照射する光の照射面積が広い場合、被検体6内の位置による光強度分布が緩やかになるため、音響波の強度分布も緩やかになる。よって、被検体6に照射する際には、光を広げ、被検体6の広い面積に光を照射する事が望ましい。よって、光照射部4には拡散板および平凹レンズが配置され、照射面積を広げることが好ましい。
【0018】
(導波手段)
導波手段3は、光源1から光照射部4まで光を伝達する。導波手段3としては、光ファイバ、積分球のような拡散体、光を反射するミラー、光を集光したり拡大したり形状を変化させるレンズ、光を分散・屈折・反射するプリズム等の光学部材が考えられる。導波手段3はこれらを単独で使用してもよいし、組み合わせて使用してもよい。光入射部2は、光源からの光を導波手段に入射させるものであるが、導波手段3として光ファイバを用いた場合、光入射部2は単に光ファイバの端部(光照射部とは反対側の端部)を示す場合もある。また、光入射部2として、レンズやミラー、プリズム等の光学部材を用いてもよい。
【0019】
(トランスデューサー)
トランスデューサー7は音響波を受信し電気信号に変換する素子である。トランスデューサー7は検出器5に、受信面を被検体6側に向けて配置される。トランスデューサー7の配置は検出器5が回転した際に広域な複数の位置から音響波を受信するように配置されることが望ましい。例えば、トランスデューサー7は図1(b)に示すようならせん状の素子配置を取ることで、広い範囲の音響波を受信する事ができる。トランスデューサー7としては、PZTのような圧電現象を用いた変換素子、光の共振を用いた変換素子、CMUTのような容量変化を用いた変換素子等、音響波を受信して電気信号に変換するものであればどのような素子を用いてもよい。
【0020】
(検出器)
検出器5は、被検体が挿入される容器状であり、トランスデューサー7が配置される。図1(a)では、被検体6を取り囲むように、トランスデューサー7と光照射部4とが、らせん状に配置されている。検出器5は、回転手段であるモータ12により、所定の回転軸を中心として回転する。図1では、回転軸は半球面の頂点と半球の中心点を通る線とした。また、図1では、検出器5は、被検体側の内壁が半球面状の容器であるが、半楕円、直方体、円柱であってもよい。測定時には、トランスデューサー7と被検体6との間には、音響マッチングを取るため、検出器5には音響マッチング材が充填される。音響マッチング材は水やひまし油があげられる。
検出器5の回転は、特定の角度単位に回転するステップ回転を行ってもよく、連続的に回転する連続回転を行ってもよい。回転角度や回転数、測定終了後に初期位置に戻る動き等の回転に関わる制御は制御部8が行う。また、回転角度や回転数は操作者が不図示の入力部から入力する事が可能である。制御部8は検出器5の回転角度および回転回数を信号処理部9に出力する。
【0021】
(信号処理部)
信号処理部9は、トランスデューサー7が出力した電気信号を増幅して、A/D変換を行う。そして、音響波が受信された位置と関連付けて電気信号を記録する。測定中の検出器5が回転している間、信号処理部9は電気信号を記録しており、回転終了後に画像再構成部10へと電気信号を出力する。
【0022】
(画像再構成部)
画像再構成部10は信号処理部9から出力される信号を元に画像再構成を行い、画像データの生成を行う。得られる画像データは、被検体6内の光学特性値に関する情報分布を示す。具体的には、音響波の発生源分布や、被検体内の初期音圧分布、あるいは初期音圧分布から導かれる光エネルギー吸収密度分布や、吸収係数分布、組織を構成する物質の濃度分布を示す。物質の濃度分布とは、例えば、酸素飽和度分布や酸化・還元ヘモグロビン濃度分布などである。
画像データを生成するための画像再構成アルゴリズムとしては、例えば、トモグラフィー技術で通常に用いられるタイムドメインあるいはフーリエドメインでの逆投影などが利用できる。なお、再構成に多くの時間をかけられる場合は、繰り返し処理による逆問題解析法(iterative method)などの画像再構成手法も利用することができる。PATの画像再構成手法には、代表的なものとして、フーリエ変換法、ユニバーサルバックプロジェクション法やフィルタードバックプロジェクション法などがある。
【0023】
(表示部)
表示部11は画像再構成部10から出力された画像データを画像として表示する。表示される画像は、MIP(Maximum Intensity Projection)画像、スライス画像が考えられるが、他の表示方法も適用可能である。3D画像を異なる複数の方向から表示する事や表示画像の傾きや表示領域、ウインドウレベルやウインドウ幅を、表示を確認しながら変更する事が可能である。
【0024】
次に、本発明の各実施形態を説明する。
【0025】
<実施形態1>
本実施形態では、図1に示した音響波取得装置を用いた例を説明する。本実施形態の音響波取得装置は、光源からの光を、導波手段3を介して光照射部4から被検体6に照射する。導波手段3には直径0.1mmから1mm程度の光ファイバを複数本束ねて用いるとよい。本実施形態では、光入射部2として凹レンズと凸レンズを用い、光源からの光は、凹レンズで広げ、凸レンズによって並行光にし、導波手段3である光ファイバに光を入射させている。
トランスデューサー7は、半球面を有する検出器5の、半球の頂点を起点として、らせん状に配置されている。検出器5の直径は被検体よりも大きくする必要があるため、200mm以上350mm以下程度の大きさにするとよい。光照射部4は、回転軸を中心に、トランスデューサー7で形成されるらせんを180度回転させたらせん状に配置した。図2のように、らせん状に光照射部4を設置することで、一回転した際に、挿入された被検体6の略すべての方向から光を照射することができる。図1では、トランスデューサー7はアレイ状に30個配置され、光照射部4も同じく30個配置されているが、本発明はこれに限定されるわけではない。
光音響イメージング法では画像再構成を行う際には被検体6からの音響波は多方向で受信する事が望ましい。本実施形態の検出器5は16ステップに分けてステップ回転し、回転軸を中心に360度回転を行う。検出器5が360度回転するため、トランスデューサー7や光ファイバが絡まないように注意する必要がある。よって、図1(a)に示されるように、回転軸上にそれらのコードをまとめる構造を取るとよい。
本実施形態のように検出器5上の広範囲に光照射部4を配置することによって、被検体6の側面からも光を照射する事ができる。図9は、検出器を上面から見た時の光強度の分布を示す模式図である。図9(b)に本実施形態により形成される光強度分布を示す。図9(a)は、回転軸方向からのみ光を照射した時の光強度分布(従来例)である。図9(b)は図9(a)と比べて、検出器上の広い範囲に光が照射されており、乳房の胸壁側(検出器の辺縁部であり開口部側)に入射する光が多い事が分かる。1方向からのみ光を照射した場合に比べて、本実施形態の構成では胸壁側に入射する光が多いため、被検体6内に入射する光強度のムラが少なくなる。また、取得される画像データのコントラストのムラを減少される。
【0026】
<実施形態2>
本実施形態の音響波取得装置は、複数の光照射部4が、検出器5の回転軸対称に配置されていることを特徴とする。
実施形態1では、検出器5が回転した際に、光照射部4は、トランスデューサー7の位置に対しては同じ位置関係を保つが、被検体6に対しては回転により位置関係が変化する。このことによって、回転位置ごとに被検体6に照射される光の分布が変化する。本実施形態では、検出器5の回転によって光の照射位置が変化しないように、光照射部4は回転軸を中心として回転対称に配列されている。そして、回転ステップの単位角度を、光照射部の配置角度の整数倍とする。光照射部4の配置位置以外は実施形態1と同様であるため、以下では実施形態1と異なる部分を中心に説明を行う。
図3に、検出器5上のトランスデューサー7の位置と光照射部4の位置とを示す。本実施形態では、光照射位置は図3(b)のように回転軸に対して回転対称性を持つように配置されている。図3では、トランスデューサー7が検出器5上に30個配置されている。光照射部4は検出器5の開口から深さ50mmの位置に16個、回転軸周り22.5度の角度単位で配置されている。
光照射部4からの光は3次元的に回転対称であることが望ましいため、回転軸上の点に向かって光を照射する。光照射部4の配置は16軸の対称性を持つ。回転ステップ数を(16/n)回とすることにより(nは整数)、検出器5の回転の前後で光照射部4と被検体6の位置関係が変化しない。
図9(c)に本実施形態により得られる光強度分布を示す。図9(c)に示されるように、本実施形態では、回転を行っても光強度分布の変化が少なく、回転による測定間の光強度のムラが軽減される。
本実施形態では、回転軸に対称に光照射部4を1つの高さのみ(回転軸方向の特定の位置のみ)に設けたが、光照射部4は複数の高さに(回転軸方向において複数の位置に)設けてもよい。そして、各高さで、ステップ数の整数倍(ステップ数×n)個の光照射部が等間隔に配置されている。この時、高さによって対象性の軸数が異なっても構わない。
【0027】
<実施形態3>
本実施形態は、検出器の開口近傍に光照射部4を設けることを特徴とする。図4に、本実施形態における、トランスデューサー7の位置と光照射部4の位置とを示す。図4では、検出器5上に配置されず検出器5の回転とともに移動しない検出器の面外に設けられた光照射部4を備える。検出器5は半球型であり、開口から被検体6(例えば乳房)が挿入される。つまり、被検体6の胸壁は開口高さよりも上方にある。より光の減衰を減少させ被検体6全体に光を照射するには、光照射位置の一部が半球の開口より外側の開口近傍にあることが望ましい。
本実施形態では、検出器5に光照射部4を設けつつ、検出器5の開口の上方にも光照射部4を設けた。図4では、検出器5に設けられた光照射部4の位置は実施形態1と同じである。また、図4では開口近傍の光照射部は、検出器とは離し、開口の上方に設けられているが、検出器5に設けられていてもよい。ただし、胸壁を照射するため、検出器5の開口を胸壁に近づけると、胸壁と検出器5とが接触してしまう可能性がある。よって、開口近傍の光照射部4は、検出器5とは離して開口上方に設け、検出器5とは一緒に回転しない構造にすることが好ましい。開口近傍とは、開口位置又は開口から回転軸方向に±5cm以内の位置を意味する。また、胸壁を照明するための光照射部4は、回転軸を中心として被検体の周囲を囲うように複数配置されていることが好ましい。
図10(d)に本実施形態により得られる光強度分布を示す。実施形態1(図10(b))に比べて、本実施形態では被検体6の胸壁部分(検出器の開口部分)にも光を照射できる。
【0028】
<実施形態4>
本実施形態は、光照射部4と導波手段3の構成が実施形態1〜3とは異なる。実施形態1〜3では、光ファイバを導波手段3として用い、検出器5を回転させて測定を行う。この時、光照射部4となる光ファイバの端部は検出器5に固定されているため移動する。もう一方の端部(光入射部2側)は光源1と接触し固定される。よって、回転によって光ファイバの形状が変化し、回転角度が大きくなると光ファイバへの負担がおおきくなる。
本実施形態では、光ファイバとは異なる導波手段3を用い、導波手段3への負担が少ない形態について説明する。本実施形態では、検出器5と光源1との間に、光を空間伝搬させる部分が形成される。光照射部4と導波手段3以外の構成は実施形態1と同様であるため、以下では実施形態1と異なる部分を中心に説明を行う。
本実施形態の導波手段3は、図5で示すように、対向した半球面に囲まれた構造を有している。この導波手段3を構成する半球面は拡散素材でできており、光源1から入射した光が内壁の拡散素材によって拡散され、導波手段3内に広がる。光照射部4は、導波手段3の一部の拡散素材がない部分であり、光が導波手段3から漏れ出る構成となる。もしくは、光照射部4は光を透過する程度の拡散素材によって構成されていてもよい。
また、導波手段3は、光が導波手段3内に十分に拡散されるように半球面の曲率に合わせて幅(径方向の幅)を調節する必要がある。さらに、アレイ状の複数のトランスデューサー7(配線部分を含む)は導波手段3を横断しているため、導波手段3内部にあるトランスデューサー7の外壁も拡散素材で覆われていることが好ましい。拡散素材の代用として、鏡面(反射面)も考えられる。
導波手段3には、レンズやミラー、プリズム等の光学系を用いて空間伝搬させて光を入射させる。本実施形態では、光は回転軸方向から導波手段3に入射している。よって、本実施形態では、検出器5が回転しても導波手段3の形状変化が起こらない。よって、回転移動による導波手段3の負担が少ない構成とすることができる。
【0029】
<実施形態5>
実施形態4では、検出器5と導波手段3の端部(光照射部4)の回転移動による、光ファイバからなる導波手段3の負担を抑えるために導波手段3の構成を変更した。本実施形態では、導波手段3は光ファイバを使用し、光ファイバの負担を低減するために、検出器5の回転角度を小さくするようにトランスデューサー7の配置を工夫した形態について説明する。
検出器5の回転角度はトランスデューサー7の配置によって決定される。光音響イメージングでは多方向からの音響波を受信する事が望ましいため、実施形態1〜4では検出器5は回転軸に対して360度の回転を行なっていた。これは実施形態1〜4の検出器5に配置されているトランスデューサー7が、回転軸方向の各位置(各高さ)において1つしか配置されておらず、360度回転する事で、その高さに到達する音響波を全方位から受信できたからである。
本実施形態では、図6のように回転軸方向の所定の位置にトランスデューサー7を2つ配置し、そのトランスデューサー7同士の成す角度を180度として、対向位置に配置する。この配置にすることによって、検出器5の回転角度が180度で済み、実施形態1〜4に比べ、2分の1に減少できる。図6では、トランスデューサー7の数は28個あり、14個のトランスデューサーで1つのらせんを構成する。また光照射部4は、トランスデューサー7の配置を90度回転させた配置をしており、28個の位置から光が照射される。
測定では、8回の回転ステップで、180度回転させた。本実施形態の構造により、検出器5の回転角度が減少したため、光ファイバへの負担が減少する。また、本実施形態を用いると測定角度だけでなく、測定時間も2分の1に減少する。
本実施形態は、特定の高さにトランスデューサー7を2つ配置したが、より多くのトランスデューサー7を配置することにより回転角度はより減少させることができる。例えば、特定高さに3つトランスデューサー7がある場合は、回転角度は120度となる。またトランスデューサー7の特定高さはある程度の範囲を持ってもよく、付近の高さにあるトランスデューサー7を対向させることによって回転角度を減少させることも可能である。
【0030】
<実施形態6>
本実施形態は検出器5の回転による、光ファイバからなる導波手段3の負担を低減させるために、導波手段3が検出器5とともに回転し、導波手段3と光入射部2間に空間を設けることを特徴とする。
光源1と光入射部2と導波手段3と検出器5と光照射部4は図7(a)に示すような構成を取る。導波手段3の光が入射する側の端部は一つにまとめられ、回転モータと連結して検出器5とともに回転する光入射部2に接続させる。そして、光入射部2の光源からの光が入射する部分はモータと連結しておらず検出器5とともに回転しない。よって、図7(b)に示すように、光入射部2のうち光源からの光が入射する部分は回転せず、導波手段3が接続されている部分は回転を行う。光入射部2が検出器5とともに回転するため、回転移動による導波手段3の負担が少ない構成とすることができる。
【0031】
<実施形態7>
本実施形態は、検出器5の回転による、光ファイバからなる導波手段3の負担を低減するために、検出器5が回転するのに伴い光入射部2も移動する構造を取る。
図8に実施した形態を示す。測定時、光ファイバを束ねた導波手段3は回転軸とともにモータによって回転移動する。この回転に伴って、光入射位置も回転移動する。つまり、測定開始時に光照射部4と光入射部が図9(a)のような位置関係にあった時、180度回転した時には図9(b)のように光入射位置も180度回転している。光入射部2にはプリズムによって反射および屈折された光源からの光が入射する。検出器5とともに回転移動する光入射部2に光源から光入射させるには、光入射部2の移動に合わせて光源からの光路を変更させる必要がある。このため光源からの光を反射させるプリズムの角度も検出器5とともに回転を行う。プリズムの回転はモータを制御し移動させる制御部8と連動し変更させる。
また、本実施形態では光入射部2が検出器5とともに回転移動を行ったが、光ファイバに負担がかからない程度に移動してもよい。例えば、検出器5の回転に連動して180度の回転でもよいし、直線移動でもよい。光入射部2が1つではなく複数位置にあってもよい。また、光路を変更させるプリズムもミラーでもよいし、プリズムは回転によって光路を変えるだけでなく屈折角や反射角を変更するように移動してもよい。
上記のように本実施形態では検出器5の回転に合わせて光入射位置も同じ角度だけ移動するような構造を持つ。これにより、導波手段3の形状は検出器5が回転を行ってもほとんど変わることなく維持され、回転移動による導波手段3の負担が少ない構成とすることができる。
【符号の説明】
【0032】
1 光源
2 光入射部
3 導波手段
4 光照射部
5 検出器
6 被検体
7 トランスデューサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を発生させる光源と、前記光が被検体に照射されることにより前記被検体内から発生する音響波を受信する複数の素子が配置された検出器と、を備えた音響波取得装置であって、
前記検出器を回転させるための回転手段と、
前記光源からの光を前記被検体に照射する複数の光照射部と、
を有し、
前記複数の光照射部は、前記検出器の回転軸以外の位置に少なくとも設けられていることを特徴とする音響波取得装置。
【請求項2】
前記検出器は、前記被検体を挿入する容器状であり、
前記複数の光照射部は、らせん状に前記検出器に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の音響波取得装置。
【請求項3】
前記検出器は、前記被検体を挿入する容器状であり、
前記複数の光照射部は、前記回転軸に対して回転対称に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の音響波取得装置。
【請求項4】
前記検出器は、前記被検体を挿入する容器状であり、
前記複数の光照射部は、前記容器状の検出器の開口近傍にも設けられていることを特徴とする請求項1に記載の音響波取得装置。
【請求項5】
前記光照射部は、前記回転軸上にも設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の音響波取得装置。
【請求項6】
前記光源が発生させる光を前記光照射部に導く導波手段を備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の音響波取得装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−165809(P2012−165809A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27320(P2011−27320)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】