説明

順次アニオン/ラジカル重合することにより耐衝撃性ビニル芳香族(コ)ポリマーを製造するための半連続統合プロセス

ブタジエンを、低沸点無極性溶媒中で有機リチウム化合物の存在下、アニオン重合(又はスチレンとブロック共重合)する。重合の最後に、無極性溶媒をスチレンに交換し、新しい溶液を得られたポリブタジエン(又はスチレンとのそのブロックコポリマー)のタイプに応じてタンクに蓄える。次に、所望の特性を備えたポリブタジエン溶液(及び/又はスチレンとのそのブロックコポリマー)を、耐衝撃性ビニル芳香族(コ)ポリマーの製造プラントに送る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アニオン/ラジカル順次重合(anionic/radical polymerization in sequence)によって耐衝撃性ビニル芳香族(コ)ポリマーを製造するための半連続統合(integrated)プロセスに関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、アニオン/ラジカル順次重合によって耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)又はアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂を製造するための半連続統合プロセスに関する。
【0003】
もっとより具体的には、本発明は、アニオン/ラジカル順次重合によって耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)又はアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂を製造するための、HIPSの場合はブタジエン及びスチレンから、ABSの場合はブタジエン、スチレン及びアクリロニトリルから始める半連続統合プロセスに関する。
【背景技術】
【0004】
従来の別個のプロセス((1)ポリブタジエン(又はスチレンとのそのブロックコポリマー)の合成及び仕上げ、(2)このポリブタジエン(及び/又はスチレンとのそのブロックコポリマー)のモノマー中での溶解及びそれに続くラジカル重合)に関して、統合プロセススキームには以下の:
(a)プロセス(1)に関わるポリブタジエン(又はスチレンとのそのブロックコポリマー)仕上げセクションの排除、
(b)プロセス(2)に関わるポリブタジエン(及び/又はスチレンとのそのブロックコポリマー)溶解セクションの排除
という利点がある。
【0005】
HIPS又はABSの製造で通常使用されるこのポリブタジエン(及び/又はスチレンとのそのブロックコポリマー)は、低沸点無極性溶媒、例えば、n−ヘキサン、シクロヘキサン等中で有機リチウム化合物を重合開始剤として使用してアニオン重合されるブタジエン(又はブタジエン+スチレン)モノマーから合成される。
【0006】
アニオン重合プロセスは、バッチ方式(バッチ反応器)又は連続方式(「CSTR」型反応器)で行われる。この結果、重合反応終了時、約20%のポリブタジエン(又はスチレンとのそのブロックコポリマー)溶液が、脂肪族又は脂環式の炭化水素溶媒中で得られる。フェノール系の一次酸化防止剤、及び典型的には三価リンの有機化合物である二次酸化防止剤から成る一組の酸化防止剤を添加した後、通常のプロセスでは次に溶媒の除去を図り、この除去は攪拌ストリッパにおける水と蒸気との複合作用によって達成される。水中のポリブタジエン(又はスチレンとのそのブロックコポリマー)顆粒の懸濁液が得られ、ネットへの滴下後、この懸濁液から、ポリブタジエン(又はスチレンとのそのブロックコポリマー)を、2種類の機械的押出機から成る乾燥セクションに送る。
【0007】
第1の押出機(エキスペラ)において、殆どの水がポリブタジエン(又はスチレンとのそのブロックコポリマー)から搾り出されて押出機の側方開口部から排出されるのに対して、完全な乾燥は第2の押出機(エキスパンダ)で行われ、この押出機において、機械的な作用に供された後のポリブタジエン(又はスチレンとのそのブロックコポリマー)は160〜180℃に加熱される。蒸気の一部は押出機の端部に配置された通気孔から除去され、一部はヘッドの流出口から除去される。次に、ポリブタジエン(又はスチレンとのそのブロックコポリマー)顆粒は、ベルト又はその他のコンベヤ方法によって包装機に送られ、梱に整えられる。
【0008】
ポリブタジエン(又はスチレンとのそのブロックコポリマー)(不飽和ゴム)の性質上、仕上げ条件を厳格に制御する必要があるが、これは一般に仕上げ領域、特にはエキスパンダ内で形成される不溶性物質の塊(ゲル)に由来する弊害が当業者に知られているからである。
【0009】
これらのゲルは、重大な表面欠陥の発生により、プラスチック材料を改質するためのポリブタジエン(及び/又はスチレンとのそのブロックコポリマー)の質の低下を引き起こす。従って、ポリブタジエン(又はスチレンとのそのブロックコポリマー)の仕上げ条件を定めるにあたっては十分な注意が必要であり、これに伴ってプロセス及び生成物を制御するための多数の分析を行う必要がある。
【0010】
HIPS又はABS製造スキームにおいては、以下の操作が従来から行われている。すなわち、ポリブタジエン(及び/又はスチレンとのそのブロックコポリマー)をスチレンモノマーに適切な濃度(一般に、最終生成物に対して1〜25%)で溶解させ、次に、このポリブタジエン(及び/又はスチレンとのそのブロックコポリマー)溶解液を不活性溶媒(例えば、エチルベンゼン)及びアクリロニトリル(ABSを製造する場合)で希釈する。得られた溶液が続いて過酸化物によって開始される連続マスラジカル重合を経ることによって、所望のHIPS又はABSが得られる。
【0011】
欧州特許出願第334715号(EP334715)明細書は、有機リチウム化合物によって開始される、溶媒としての(n−ヘキサン及び/又はシクロヘキサン等の一般に低沸点の無極性溶媒の代わりの)エチルベンゼン中でのブタジエンのアニオン重合について記載している。この特定の特許において、プロセススキームには溶媒の交換(switch)セクションがないが、これはHIPS又はABSの製造においてはエチルベンゼンが通常使用されるからである。次に、エチルベンゼン中のポリブタジエンの溶液をスチレン(及び、最終的にはアクリロニトリル)で希釈し、過酸化物を開始剤とした連続マスラジカル重合による(共)重合によって、所望のHIPS又はABSを得る。
【0012】
国際特許出願第9822518号(WO98/22518)パンフレットは、ブタジエンから始める連続プロセスによるHIPS/ABSの合成について記載している。ポリブタジエンは、「プラグ流型(plug−flow type)」反応器内でブタジエンから有機リチウム化合物を開始剤としてアニオン合成される。ポリブタジエンの合成で使用される溶媒は、130℃より低い沸点を有する脂肪族の溶媒、例えばヘキサンである。特に、国際特許出願第9822518号パンフレットは、ポリブタジエンホモポリマー及びスチレンとのそのコポリマー(PBu−PS)の両方の合成について記載している。このようにして得られた低沸点脂肪族溶媒中のポリブタジエン溶液を、要求されるHIPS/ABSの合成のためにスチレンで希釈し、第1のCSTR反応器に直接送り、ラジカル重合する(ABSを製造する場合は、任意でアクリロニトリルを添加する)。
【0013】
使用されるCSTR反応器は気化型であるが、これはHIPS/ABSの合成によって発生する重合熱の利用により、ポリブタジエンの合成に使用した低沸点溶媒が除去されるからである。
【0014】
米国特許第6143833号明細書及び第6471865号明細書は、ブタジエンから始める連続プロセスによるHIPSの合成について記載している。ポリブタジエンは、「プラグ流」型反応器内でブタジエンから有機リチウム化合物を開始剤としてアニオン合成される。ポリブタジエンの合成で使用される溶媒は、130℃未満の沸点を有する脂肪族の溶媒、例えばヘキサンである。この特許は、ポリブタジエンホモポリマー又はPBu−PSコポリマーの合成について記載している。このようにして得られた低沸点脂肪族溶媒中のポリブタジエン溶液を、要求されるHIPSの合成に必要なスチレンで希釈し、2つの連続する揮発分除去装置(devolatilizer)又は蒸留塔に送ることによって、ポリブタジエン合成由来の低沸点溶媒及び残留ブタジエンを除去する。
【0015】
このようにして得られたスチレン中のポリブタジエン溶液を、要求されるHIPSの合成のための第1のCSTR反応器に送る。
【0016】
米国特許第6437043号明細書は、連続プロセスによるブタジエンからの透明耐衝撃性ポリスチレンの合成について記載している。ポリブタジエンは、「プラグ流」型反応器内でブタジエンから有機リチウム化合物を開始剤としてアニオン合成される。ポリブタジエンの合成で使用される溶媒は、130℃未満の沸点を有する脂肪族の溶媒、例えばヘキサンである。合成されるポリブタジエンは、ランダムブタジエン−スチレン(SBR)コポリマーである。このようにして得られた低沸点脂肪族溶媒中のSBR溶液を、要求されるHIPSの合成に必要なスチレンで希釈し、2つの揮発分除去装置装置又は蒸留塔から成る溶媒交換(exchange)セクションに送る。次に、このようにして得られたスチレン中のSBR溶液を、HIPSの製造に必要なCSTR反応器に送る。
【0017】
上記のプロセス様式の欠点は以下のとおりである。すなわち、欧州特許第334715号明細書には、溶媒交換領域を回避した、エチルベンゼン中でのポリブタジエンの合成が記載されているが、続くビニル芳香族(コ)ポリマーの合成において、HIPS又はABS最終生成物中のポリブタジエン濃度が低いという欠点を有する。
【0018】
国際特許出願第9822518号は、ABSの場合、生成物が、第1のCSTR反応器のヘッドに存在する低沸点溶媒に不適合であるという事実によって制限される。
【0019】
米国特許第6143833号、第6471865号、第6437043号明細書及び、ブタジエンから始めるHIPS又はABSを製造するための連続プロセスの利用について記載した国際特許出願第9822518号パンフレットにおいて、この連続プロセスには大きな欠点がある。この場合、実際、規格外のポリブタジエン(及び/又はスチレンとのそのブロックコポリマー)溶解液及びキャンペーン変更を管理することが不可能であるが、これはHIPS(又はABS)の合成に適さないポリブタジエン(及び/又はスチレンとのそのブロックコポリマー)溶解液を貯蔵する可能性がないからである。更に、連続プロセスでは、ブタジエンのアニオン合成から得られるポリブタジエン(及び/又はスチレンとのそのブロックコポリマー)溶液の物理化学的パラメータの制御ができない。
【発明の概要】
【0020】
出願人は、ブタジエンから始まり、順次アニオン/ラジカル重合することによって、耐衝撃性ビニル芳香族(コ)ポリマーを製造するための統合半連続プロセスを見出した。このプロセスは既知の技術の欠点を克服する。特に、本プロセスは、
(a)バッチ反応器において、有機リチウム化合物の存在下、低沸点無極性溶媒中でブタジエン(及び、もし必要であれば、ブロックコポリマーPS−Pbuを得るためにスチレン)をアニオン重合すること、
(b1)重合の最後に、一般式:
3−M−X (1)
(式中、Xは塩素又は臭素等のハロゲンを表し、Mは炭素又はケイ素等のIVA族の元素を表し、RはC1〜C8アルキルラジカルである)
を有する少なくとも1種のハロゲン誘導体、又は一般式:
1−COOH (2)
(式中、R1は炭素原子の数が6以上、例えば6〜18のアルキルラジカルである)
を有する、低沸点無極性溶媒に可溶性であるカルボン酸により、ポリブタジエン(又はスチレンとのそのブロックコポリマー)の連鎖停止をすること、及び/又は
(b2)一般式:
4-y−M−Xy (3)
(式中、X、M及びRは上記で定義された意味を有し、yは極値を含む2〜4の範囲内の整数である)
を有するものから選択される少なくとも1種のハロゲン誘導体により、ポリマー鎖の第1のカップリングをすること、及び/又は
(b3)一般式:
(R’)n−Ar (4)
(式中、R’はC2〜C5アルケニルラジカルを表し、Arは場合によっては非電子吸引基(non−electron attractor group)によって置換されたC6〜C18芳香族ラジカルを表し、nは2〜10の整数である)
を有するものから選択される少なくとも1種の芳香族誘導体により、第2のカップリングをすること、
(c)低沸点溶媒をビニル芳香族モノマーにバッチモードで(in batch mode)交換すること、
(d)得られたポリマーのグレードに従って、ビニル芳香族モノマー中のポリブタジエン(又はスチレンとのそのブロックコポリマー)のポリマー溶液をタンクに蓄えること、
(e)ビニル芳香族モノマー中のポリブタジエン(及び/又はスチレンとのそのブロックコポリマー)溶液を、慣用の重合添加剤及び必要であればコモノマーと共に連続マス重合プラントに送り、ラジカル重合を介して耐衝撃性ビニル芳香族(コ)ポリマーを製造すること、及び
(f)重合プラントから耐衝撃性ビニル芳香族(コ)ポリマーを回収することを含む。
【0021】
本発明において、ブタジエン又はブタジエン−スチレンをベースとしたポリマーの上記の停止反応及びカップリング反応(b1、b2、b3)は、交互に又は順次行うことができる。従って、有効リチウムとカップリング剤との当量比をカップリング反応において採用していない場合、停止反応がカップリング反応に続くことが予想される。
【0022】
上記の構造(1)又は(2)を有する、例えば、塩化ケイ素のC1〜C4アルキル誘導体、好ましくはトリメチルクロロシラン、又は、例えば、(F.CiardelliのMacromolecole Scienza e Tecnologia、第1巻、Pacini ed.、ピサ(1982)及びこの文献中で挙げられた参考文献に記載されるような)ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸等の有機酸から選択される停止剤を使用する場合、本質的にポリブタジエン型(ブタジエンをベースとしたポリマー)又はブタジエン−スチレンジブロックコポリマーの線状ゴム又はエラストマーが得られ、その重合度は、重合反応器に供給されるブタジエン(又はブタジエン+スチレン)のモル数と重合開始時に存在する有効リチウムのモル数との比によって一義的に決定される。用語「有効リチウム(active lithium)」は、供給されるリチウムの総量から、モノマー又は溶媒中に存在する想定されるごくわずかな湿気又はその他のスカベンジャと反応するリチウムの量を引いたものを意味する。
【0023】
カップリング剤を使用する場合、ブタジエン(又はブタジエン−スチレン)をベースとした線状又は分岐ポリマーが得られる。
【0024】
yが2である前出の定義の式(3):R2−M−X2のタイプのカップリング剤、例えば、ジメチルクロロシラン、ビフェニルジクロロシラン、又はメチルフェニルジクロロシランを使用する場合、ブタジエン(又はブタジエン−スチレン)をベースとした線状ポリマーが得られる。この場合、最終ポリブタジエンの重合度は、上記で定義したブタジエン(又はブタジエン+スチレン)と有効リチウムとのモル比の2倍になる。
【0025】
更に、当量より少ない量のカップリング剤の考えられ得る添加によってカップリング度の低下が引き起こされ、分子量クロマトグラムおいて、カップリングされていない親ポリマーに対応するピークが出現する。用語、カップリング有効性(coupling efficacy)は、ゲルクロマトグラフィ分析によって得られた信号の面積の比を意味し、カップリングされた種(ACS)のピークの面積及びカップリングされた種(ACS)とカップリングされていない種(ANCS)に対応する面積の合計を測定することによって得られる。
カップリング有効性=ACS/(ACS+ANCS)×100
【0026】
yが2ではない前出の定義の式(3):RMX3及びRMX4のタイプのカップリング剤、例えば、トリクロロメチルシラン、トリクロロフェニルシラン又は四塩化ケイ素を使用する場合、分岐ブタジエンをベースとした(又はブタジエン−スチレン)ポリマーが得られる。この場合、分岐の数は3又は4に等しく、当量より少ない量のカップリング剤の使用は、カップリング効率(coupling efficiency)の低下を引き起こす。
【0027】
分岐ブタジエンをベースとしたポリマーは、式(4)のカップリング剤としてポリビニル芳香族種、例えば、ジビニルベンゼン異性体の混合物を使用しても得られる。この場合、適切な比の採用により、4より高く10より低い高い分岐度を有するポリマーが得られる。
【0028】
本発明において、ブタジエンのアニオン(共)重合は、有機リチウムをベースとした触媒、例えば、ブチルリチウムの存在下及び130℃より低い沸点、例えば、50〜130℃)、4〜10個、好ましくは6〜9個の炭素原子を有する脂肪族又は脂環式無極性溶媒、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン及び関連する純粋及び混合異性体の両方、シクロヘキサン、シクロペンタンの存在下で起きる。トルエン、エチルベンゼン又はベンゼン等の芳香族溶媒を使用することも可能である。
【0029】
ブタジエンの一般的な重合条件に加え、有機リチウムをベースとしたその他の触媒及びその他の溶媒を、例えば、H.R.KricheldorfのHandbook of Polymer Synthesis、Dekker、ニューヨーク(1991)及びこの文献中で挙げられた参考文献又はKirk−OthmerのEncyclopedia of Chemical Technology、第5版、第14巻、Wiley−Interscience、ニューヨーク(2004)及びこの文献中で挙げられた参考文献に見つけることができる。
【0030】
ブタジエンを単独で重合してブタジエンホモポリマーを得ることも、そのブタジエンと適合可能なその他の1種以上のコモノマー(全体に対して1〜50質量%の量で存在)と混合して共重合することもできる。これらのモノマーの例はビニル芳香族モノマー、例えば、スチレン、α−メチルスチレンその他である。
【0031】
ブタジエンの重合又は(共)重合の最後に、低沸点溶媒を蒸留しビニル芳香族モノマーに交換することによって、(コ)ポリマーの最終濃度5〜25質量%を維持する。低沸点溶媒のビニル芳香族モノマーでの置き換えは、米国特許第6143833号明細書に記載されるような揮発分除去又は米国特許第6471865号明細書に記載されるような蒸留塔によって行うことができる。
【0032】
本発明において、溶媒交換操作は、ビニル芳香族モノマーを半バッチモードでポリブタジエン(又はスチレンとのそのブロックコポリマー)と低沸点溶媒との混合物に添加することから成る単純な蒸留によって達成される。このようにして得られた低及び高沸点溶媒の蒸留物を、2種類の異なる操作モードに従って処理することができる。第1の操作モードは、蒸留塔による蒸気の混合物の凝縮後の連続分離である。第2の操作モードは、溶媒交換操作で使用のオートクレーブに取り付けられた蒸留塔による非連続分離である。
【0033】
本説明及び請求項で使用の用語「ビニル芳香族モノマー(vinyl aromatic monomer)」は本質的に以下の一般式:
【化1】

式中、Rは水素又はメチル基であり、nは0又は1〜5の整数であり、Yは塩素若しくは臭素等のハロゲン又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル若しくはアルコシルラジカルである、
に対応する生成物について言及している。
【0034】
上記の一般式を有するビニル芳香族モノマーの例は、スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、ブチルスチレン、ジメチルスチレン、モノ−、ジ−、トリ−、テトラ及びペンタ−クロロスチレン、ブロモスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレンその他である。好ましいビニル芳香族モノマーはスチレン及びα−メチルスチレンである。
【0035】
ビニル芳香族(コ)ポリマーの調製中、一般式(I)を有するビニル芳香族モノマーは、単体又は共重合可能なその他のモノマーとの最高50質量%の混合物中で使用することができる。これらのモノマーの例は、(メタ)クリル酸、(メタ)クリル酸のC1〜C4アルキルエステル、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、(メタ)クリル酸のアミド及びニトリル、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ブタジエン、エチレン、ジビニルベンゼン、無水マレイン酸その他である。アクリロニトリル及びメチルメタクリレートが好ましい共重合可能なモノマーである。
【0036】
低沸点溶媒からビニル芳香族モノマーへの交換の終了時に、新しい溶液をタンクに貯蔵し、このタンクから正しい溶液を連続的に回収して連続マスプラントに送り、ビニル芳香族(コ)ポリマー、例えば、HIPS及び/又はABSを製造する。
【0037】
本発明の半連続プラントのスキームは、従来技術の文献に記載の連続プラントよりも、ポリブタジエン(又はスチレンとのそのブロックコポリマー)の製造における規格外製造管理及びキャンペーン変更を大幅に単純化できるという利点を有する。「1工程(one−step)」プロセスでは、(1)70センチポイズ未満の溶液粘度を有する線状ポリブタジエン(固体では許容できない「低温流れ(cold flow)」問題を引き起こす可能性がある)、(2)極めて高いムーニー(80より高い)及び70センチポイズより高い溶液での粘度を有する星型ポリブタジエン(現時点では、エラストマーの仕上げプラントに関係した技術上の制約から製造できない)からHIPS及び/又はABSを製造することもできる。
【0038】
上記に基づき、ビニル芳香族モノマー中のブタジエンポリマー又はコポリマーの正しい溶液を、関連する貯蔵タンクから連続的に回収し、ビニル芳香族モノマーの重合に適した溶媒、例えば、エチルベンゼンで希釈し、考えられ得る(コ)モノマー、アクリロニトリル(例えば、耐衝撃性ビニル芳香族(コ)ポリマーを製造するための慣用の重合剤を含有する)で改質し、重合セクションに送ることができる。耐衝撃性ビニル芳香族(コ)ポリマーをラジカル合成するためのプロセスは、欧州特許第400479号(EP400479)明細書に見ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の目的である統合プロセスのスキームが図解されている。
【発明を実施するための形態】
【0040】
特に、このスキームは、ポリブタジエン(又はスチレンとのそのブロックコポリマー)をアニオン合成するためのバッチ型反応器R1を備え、この反応器に、新鮮な又は再循環させられた無極性低沸点溶媒(ヘキサン)、新鮮な又は再循環させられたブタジエン、ブタジエンの考えられ得るコモノマー及びリチウム触媒が、カップリング及び/又は停止添加剤に加えて供給される。
【0041】
D1はオートクレーブを表し、ビニル芳香族モノマー、例えば、スチレンとの溶媒の交換(switch)が行われる。
【0042】
C1は、スチレン及びヘキサンの蒸気の混合物が送られる蒸留塔を表し、これらの蒸気はヘッド及びテールでそれぞれ回収され、P1及びP2における精製後、再循環させられる。
【0043】
D2、D3及びD4は受取りタンクを表し、これらのタンク中にブタジエンのポリマー又は(コ)ポリマーの交換されたスチレン溶液が蓄えられる。
【0044】
CSTRは混合タンクを表し、このタンクにブタジエンの(コ)ポリマーのスチレン溶液及び更なる添加剤、例えば、溶媒、パラフィン油、酸化防止剤などが送られる。
【0045】
PFR1及びPFR2は、連続マス状(in continuous−mass)ラジカル重合のための管状又はプラグ流反応器であり、反応流れ(reaction flow)に対して順次配置され、CSTRから来る溶液及びR1、R2で事前に混合される化学薬品、例えば、開始剤、連鎖移動剤が送られる。
【0046】
最後に、Devは温度200〜250℃で作動する脱蔵装置(devolatizer)を表し、この装置に最終的な高分子溶液が送られ、溶媒及び未反応のモノマーが回収され、CSTRに再循環させられる。
【0047】
本発明をより良く理解し具体化するために、幾つかの比較例及び非限定的な実施例を以下で挙げる。
【実施例】
【0048】
実施例1(比較)
32.53kgのスチレンモノマー及び2.8kgのエチルベンゼン中の1.8kgのポリブタジエンINTENE P30(Polimeri Europa)(スチレン(SM)中の5%溶液での粘度=49CP)、2.8kgの鉱油PRIMOL 382(ESSO)、20gの酸化防止剤IRGANOX 245及び30gのステアリン酸亜鉛を、温度調節機能及び攪拌システムを備えた60リットルバッチ型オートクレーブ内で溶解させ、5時間に亘って85℃で加熱する。次に、6gの移動剤n−ドデシルメルカプタン(NDM)及び14gの開始剤1,1−ジ(ターブチルペルオキシ)シクロヘキサン(Tx22E50)を添加する。
【0049】
得られた溶液を攪拌器及び温度調節システムを備えた第1のPFR反応器に送り、反応器の熱プロファイルを125℃から145℃に上昇させると、予備重合がグラフト及び転相を伴って行われる。
【0050】
第1の反応器を後にした混合物を、同じく攪拌器及び温度調節システムを備えた第2のPFR反応器に移し、反応器の熱プロファイルを150℃から165℃に上昇させる。
【0051】
得られる混合物は第2のPFR反応器の頭頂部からの排出物であり、揮発分除去装置(235℃の真空下で作動)を通過し、ゴム相が更に架橋され、残留モノマー及びエチルベンゼンは重合混合物から除去される。このようにして得られた成形ポリマー(mould polymer)を、切断機に通して顆粒化する。
【0052】
実施例2
9.9kgの無水シクロヘキサン及び1.8kgの無水ブタジエンを、攪拌器及び温度調節システムを備えた60リットルバッチ反応器に窒素雰囲気下で供給する。このようにして得られた混合物を40℃に加熱し、1.67gのリチウムn−ブチルを添加する。
【0053】
重合反応が一旦完了したら、4.46gの無水四塩化ケイ素を、更に30分間に亘って攪拌しながら添加する。ポリブタジエンの特性(分子量分布及びスチレン中の5%溶液での粘度)は、INTENE P30と同様である。
【0054】
得られた溶液を、温度調節機能、攪拌器、真空調節システム及び凝縮物の回収システムを備えた第2の60リットルバッチオートクレーブに移す。反応器は25℃にサーモスタット調節され、圧力70mbarの真空下におかれる。凝縮物回収システム内で液体の存在が観察されたらすぐに、37.38kgのスチレンをゆっくりと添加し、反応器の温度を同時に66℃に上昇させる。14.75kgの凝縮物が回収された時点で操作を停止する。スチレン溶解液中のシクロヘキサンの濃度は500ppm未満である。最終溶液をタンクに3日間に亘って貯蔵する。
【0055】
2.8kgの鉱油PRIMOL 382(ESSO)、20gの酸化防止剤IRGANOX 245、30gのステアリン酸亜鉛、2.8kgのエチルベンゼン、6gのNDM移動剤及び14gの開始剤Tx22E50を、得られた溶液に添加する。
【0056】
得られた溶液を、攪拌器及び温度調節システムを備えた第1のPFR反応器に送り、反応器の熱プロファイルを125℃から145℃に上昇させると、予備重合がグラフト及び転相を伴って行われる。
【0057】
第1の反応器を後にした混合物を、同じく攪拌器及び温度調節システムを備えた第2のPFR反応器に移し、反応器の熱プロファイルを150℃から165℃に上昇させる。
【0058】
得られる混合物は第2のPFR反応器の頭頂部からの排出物であり、揮発分除去装置(235℃の真空下で作動)を通過し、ゴム相が更に架橋され、残留モノマー及びエチルベンゼンは重合混合物から除去される。このようにして得られた成形ポリマーを、切断機に通して顆粒化する。
【0059】
実施例3
9.9kgの無水トルエン及び1.8kgの無水ブタジエンを、加熱及び攪拌システムを備えた40リットルバッチ反応器に不活性窒素雰囲気下で流し込む。このようにして得られた混合物を40℃に加熱し、1.67gのn−ブチルリチウムを添加する。
【0060】
重合反応が一旦完了したら、4.46gの無水四塩化ケイ素を、更に30分間に亘って攪拌しながら添加する。ポリブタジエンの特性(分子量分布、5%スチレン溶液での粘度)は、INTENE P30と同様である。
【0061】
得られた溶液を、温度制御機能、攪拌システム、真空調節システム及び凝縮物の回収システムを備えた第2の60リットルバッチオートクレーブに移す。反応器は38℃にサーモスタット調節され、70mbarの真空下におかれる。凝縮物回収システム内で液体の存在が観察されたらすぐに、49.79kgのスチレンをゆっくりと添加し、反応器の温度を同時に74℃に上昇させる。27.16kgの凝縮物が回収された時点で操作を停止する。スチレン溶解液中のトルエンの濃度は900ppmである。最終溶液をタンクに3日間に亘って貯蔵する。
【0062】
2.8kgの鉱油PRIMOL 382(ESSO)、20gの酸化防止剤IRGANOX 245、30gのステアリン酸亜鉛、2.8kgのエチルベンゼン、6gのNDM移動剤及び14gの開始剤Tx22E50。
【0063】
得られた溶液を攪拌器及び温度調節システムを備えた第1のPFR反応器に移し、反応器の熱プロファイルを125℃から145℃に上昇させると、グラフト重合が行われる。
【0064】
第1の反応器を後にした混合物を、同じく攪拌器及び温度調節システムを備えた第2のPFR反応器に送り、反応器の熱プロファイルを150℃から165℃に上昇させる。
【0065】
得られる混合物は第2のPFR反応器の頭頂部からの排出物であり、揮発分除去装置(235℃の真空下で作動)を通過し、ゴム相が更に架橋され、残留モノマー及びエチルベンゼンは重合混合物から除去される。このようにして得られた成形ポリマーを、切断機に通して顆粒化する。
【0066】
実施例1〜3の特性を表1に示す。
【0067】
【表1】

【0068】
実施例4(比較)
21.6kgのスチレンモノマー及び7.8kgのエチルベンゼン中の3.4kgのポリブタジエンINTENE P30(Polimeri Europa)(SM中の5%溶液での粘度=40CP)、60gの酸化防止剤IRGANOX 1076を、温度調節機能及び攪拌システムを備えた60リットルバッチオートクレーブ内で溶解させ、6時間に亘って60℃で加熱する。次に、14gの移動剤ter−デシルメルカプタン(TDM)、12gの開始剤Tx22E50及び7.2kgのアクリロニトリルを添加する。
【0069】
得られた溶液を、攪拌器及び温度調節システムを備えた第1のPFR反応器に移し、反応器の熱プロファイルを108℃から115℃に上昇させると、予備重合がグラフト及び転相を伴って行われる。
【0070】
第1の反応器を後にした混合物を、同じく攪拌器及び温度調節システムを備えた第2のPFR反応器に送り、反応器の熱プロファイルを150℃から165℃に上昇させる。
【0071】
得られる混合物は第2のPFR反応器の頭頂部からの排出物であり、揮発分除去装置(235℃の真空下で作動)を通過し、ゴム相が更に架橋され、残留モノマー及びエチルベンゼンは重合混合物から除去される。このようにして得られた成形ポリマーを、切断機に通して顆粒化する。
【0072】
実施例5
18.7kgの無水シクロヘキサン及び3.4kgの無水ブタジエンを、加熱及び攪拌システムを備えた60リットル反応器に窒素雰囲気下で供給する。このようにして得られた混合物を40℃に加熱し、3.16gのn−ブチルリチウムを添加する。重合反応が一旦完了したら、8.42gの無水四塩化ケイ素を、更に30分間に亘って攪拌しながら添加する。ポリブタジエンの特性(分子量分布、スチレン中の5%溶液での粘度)は、INTENE P30と同様である。
【0073】
得られた溶液を、温度調節装置、攪拌システム、真空調節システム及び凝縮物を回収するためのシステムを備えた第2の60リットルバッチオートクレーブに移す。反応器は25℃にサーモスタット調節され、圧力70mbarの真空下におかれる。凝縮物回収システム内で液体の存在が観察されたらすぐに、32.8kgのスチレンをゆっくりと添加し、反応器の温度を同時に66℃に上昇させる。27.86kgの凝縮物が回収された時点で操作を停止する。スチレン溶解液中のシクロヘキサンの濃度は500ppm未満である。最終溶液をタンクに3日間に亘って貯蔵する。
【0074】
7.8kgのエチルベンゼン、60gの酸化防止剤IRGANOX 1076、14gのTDM移動剤、12gの開始剤Tx22E50及び7.2kgのアクリロニトリルを、得られた溶液に添加する。
【0075】
このようにして得られた溶液を、攪拌器及び温度調節システムを備えた第1のPFR反応器に移し、反応器の熱プロファイルを125℃から145℃に上昇させると、予備重合がグラフト及び転相を伴って行われる。
【0076】
第1の反応器を後にした混合物を、同じく攪拌器及び温度調節システムを備えた第2のPFR反応器に移し、反応器の熱プロファイルを150℃から165℃に上昇させる。
【0077】
得られる混合物は第2のPFR反応器の頭頂部からの排出物であり、揮発分除去装置(235℃の真空下で作動)を通過し、ゴム相が更に架橋され、残留モノマー及びエチルベンゼンは重合混合物から除去される。このようにして得られた成形ポリマーを、切断機に通して顆粒化する。
【0078】
実施例6
18.7kgの無水トルエン及び3.4kgの無水ブタジエンを、加熱及び攪拌システムを備えた60リットル反応器に窒素雰囲気下で供給する。このようにして得られた混合物を40℃に加熱し、3.16gのn−ブチルリチウムを添加する。重合反応が一旦完了したら、8.42gの無水四塩化ケイ素を、更に30分間に亘って攪拌しながら添加する。ポリブタジエンの特性(分子量分布、スチレン中の5%溶液での粘度)は、INTENE P30と同様である。
【0079】
このようにして得られた溶液を、温度調節装置、攪拌システム、真空調節システム及び凝縮物を回収するためのシステムを備えた第2の60リットルバッチオートクレーブに移す。反応器は38℃にサーモスタット調節され、圧力70mbarの真空下におかれる。凝縮物回収システム内で液体の存在が観察されたらすぐに、54.2kgのスチレンをゆっくりと添加し、反応器の温度を同時に74℃に上昇させる。51.3kgの凝縮物が回収された時点で操作を停止する。スチレン溶解液中のトルエンの濃度は900ppmである。最終溶液をタンクに3日間に亘って貯蔵する。
【0080】
7.8kgのエチルベンゼン、60gの酸化防止剤IRGANOX 1076、14gのTDM移動剤、12gの開始剤Tx22E50及び7.2kgのアクリロニトリルを、このようにして得られた溶液に添加する。
【0081】
得られた溶液を、攪拌器及び温度調節システムを備えた第1のPFR反応器に移し、反応器の熱プロファイルを125℃から145℃に上昇させると、予備重合がグラフト及び転相を伴って行われる。
【0082】
第1の反応器を後にした混合物を、同じく攪拌器及び温度調節システムを備えた第2のPFR反応器に移し、反応器の熱プロファイルを150℃から165℃に上昇させる。
【0083】
得られる混合物は第2のPFR反応器の頭頂部からの排出物であり、揮発分除去装置(235℃の真空下で作動)を通過し、ゴム相が更に架橋され、残留モノマー及びエチルベンゼンは重合混合物から除去される。このようにして得られた成形ポリマーを、切断機に通して顆粒化する。
【0084】
実施例4〜6の特性を表2に示す。
【0085】
【表2】

【0086】
実施例7(比較)
27.1kgのスチレンモノマー及び2.6kgのエチルベンゼン中の1.8kgのポリブタジエンINTENE 50(Polimeri Europa)(スチレン(SM)中の5%溶液での粘度=170CP)、0.64kgの鉱油PRIMOL 382(ESSO)、16gの酸化防止剤IRGANOX 245及び30gのステアリン酸亜鉛を、加熱及び攪拌システムを備えた60リットル反応器内で溶解させ、5時間に亘って85℃で加熱する。次に、5の移動剤TDM及び8gの開始剤Tx22E50を添加する。
【0087】
このようにして得られた溶液を、攪拌器及び温度調節システムを備えた第1のPFR反応器に送り、反応器の熱プロファイルを125℃から135℃に上昇させると、予備重合が、グラフト及び転相を伴って行われる。
【0088】
第1の反応器を後にした混合物を、同じく攪拌器及び温度調節システムを備えた第2のPFR反応器に移し、反応器の熱プロファイルを145℃から165℃に上昇させる。
【0089】
得られる混合物は第2のPFR反応器の頭頂部からの排出物であり、揮発分除去装置(235℃の真空下で作動)を通過し、ゴム相が更に架橋され、残留モノマー及びエチルベンゼンは重合混合物から除去される。このようにして得られた成形ポリマーを、切断機に通して顆粒化する。
【0090】
実施例8
8.1kgの無水シクロヘキサン及び1.8kgの無水ブタジエンを、加熱及び攪拌システムを備えた60リットル反応器に窒素雰囲気下で供給する。得られた混合物を50℃に加熱し、0.88gのn−ブチルリチウムを添加する。重合反応が一旦完了したら、1.62gのヘプタン酸を添加し、混合物を更に30分間に亘る攪拌下におく。ポリブタジエンの特性(分子量分布、スチレン中の5%溶液での粘度)は、INTENE 50と同様である。
【0091】
得られた溶液を、温度調節装置、攪拌システム、真空調節システム及び凝縮物を回収するためのシステムを備えた第2の60リットルバッチオートクレーブに移す。反応器は25℃にサーモスタット調節され、圧力70mbarの真空下におかれる。凝縮物回収システム内で液体の存在が観察されたらすぐに、31.1kgのスチレンをゆっくりと添加し、反応器の温度を同時に66℃に上昇させる。12.07kgの凝縮物が回収された時点で操作を停止する。スチレン溶解液中のシクロヘキサンの濃度は500ppmである。最終溶液をタンクに3日間に亘って貯蔵する。
【0092】
0.64kgの鉱油PRIMOL 382(ESSO)、16gの酸化防止剤IRGANOX 245、30gのステアリン酸亜鉛、2.6kgのエチルベンゼン、5gのTDM移動剤及び8gの開始剤Tx22E50を、得られた溶液に添加する。
【0093】
得られた溶液を、攪拌器及び温度調節システムを備えた第1のPFR反応器に移し、反応器の熱プロファイルを125℃から135℃に上昇させると、予備重合がグラフト及び転相を伴って行われる。
【0094】
第1の反応器を後にした混合物を、同じく攪拌器及び温度調節システムを備えた第2のPFR反応器に移し、反応器の熱プロファイルを145℃から165℃に上昇させる。
【0095】
得られる混合物は第2のPFR反応器の頭頂部からの排出物であり、揮発分除去装置(235℃の真空下で作動)を通過し、ゴム相が更に架橋され、残留モノマー及びエチルベンゼンは重合混合物から除去される。このようにして得られた成形ポリマーを、切断機に通して顆粒化する。
【0096】
実施例9
8.1kgの無水トルエン及び1.8kgの無水ブタジエンを、加熱及び攪拌システムを備えた60リットルバッチ反応器に窒素雰囲気下で流し込む。得られた混合物を50℃に加熱し、0.88gのn−ブチルリチウムを添加する。
【0097】
重合反応が一旦完了したら、1.62gのヘプタン酸を更に30分間に亘って攪拌しながら添加する。ポリブタジエンの特性(分子量分布、スチレン中の5%溶液での粘度)は、INTENE 50と同様である。
【0098】
得られた溶液を、温度制御及び攪拌システム、真空調節システム並びに凝縮物を回収するためのシステムを備えた第2の60リットルバッチオートクレーブに移す。反応器は38℃にサーモスタット調節され、圧力70mbarの真空下におかれる。凝縮物回収システム内で液体の存在が観察されたらすぐに、41.25kgのスチレンをゆっくりと添加し、反応器の温度を同時に74℃に上昇させる。22.22kgの凝縮物が回収された時点で操作を停止する。スチレン溶解液中のトルエンの濃度は500ppm未満である。最終溶液をタンクに3日間に亘って貯蔵する。
【0099】
0.64kgの鉱油PRIMOL 382(ESSO)、16gの酸化防止剤IRGANOX 245、30gのステアリン酸亜鉛、2.6kgのエチルベンゼン、5gのTDM移動剤及び8gの開始剤Tx22E50を、得られた溶液に添加する。
【0100】
得られた溶液を、攪拌器及び温度調節システムを備えた第1のPFR反応器に移し、反応器の熱プロファイルを125℃から135℃に上昇させると、予備重合がグラフト及び転相を伴って行われる。
【0101】
第1の反応器を後にした混合物を、同じく攪拌器及び温度調節システムを備えた第2のPFR反応器に送り、反応器の熱プロファイルを145℃から165℃に上昇させる。
【0102】
得られる混合物は第2のPFR反応器の頭頂部からの排出物であり、揮発分除去装置(235℃の真空下で作動)を通過し、ゴム相が更に架橋され、残留モノマー及びエチルベンゼンは重合混合物から除去される。このようにして得られた成形ポリマーを、切断機に通して顆粒化する。
【0103】
実施例7〜9において得られた生成物の特性を表3に示す。
【0104】
【表3】

【0105】
実施例10(比較)
22.2kgのスチレンモノマー及び7.4kgのエチルベンゼン中の3.4kgのポリブタジエンINTENE 50(Polimeri Europa)(SM中の5%溶液での粘度=100CP)及び20gの酸化防止剤ANOX 245 PP18を、温度調節機能及び攪拌システムを備えた60リットルバッチ反応器内で溶解させ、6時間に亘って60℃で加熱する。次に、20gの移動剤NDM、12gの開始剤Tx22E50及び7.2kgのアクリロニトリルを添加する。
【0106】
得られた溶液を、攪拌器及び温度調節システムを備えた第1のPFR反応器に送り、反応器の熱プロファイルを110℃から120℃に上昇させると、予備重合がグラフト及び転相を伴って行われる。
【0107】
第1の反応器を後にした混合物を、同じく攪拌器及び温度調節システムを備えた第2のPFR反応器に移し、反応器の熱プロファイルを145℃から155℃に上昇させる。
【0108】
得られる混合物は第2のPFR反応器の頭頂部からの排出物であり、揮発分除去装置(235℃の真空下で作動)を通過し、ゴム相が更に架橋され、残留モノマー及びエチルベンゼンは重合混合物から除去される。このようにして得られた成形ポリマーを、切断機に通して顆粒化する。
【0109】
実施例11
14.4kgの無水シクロヘキサン及び3.2kgの無水ブタジエンを、加熱及び攪拌システムを備えた60リットルバッチ反応器に窒素雰囲気下で流し込む。得られた混合物を50℃に加熱し、1.70gの無水n−ブチルリチウムを添加する。
【0110】
重合反応が一旦完了したら、3.12gのヘプタン酸を更に30分間に亘って攪拌しながら添加する。ポリブタジエンの特性(分子量分布、スチレン中の5%溶液での粘度)は、INTENE 50と同様である。
【0111】
得られた溶液を、温度制御機能、攪拌システム、真空調節システム及び凝縮物を回収するためのシステムを備えた第2の60リットルバッチオートクレーブに移す。反応器は25℃にサーモスタット調節され、圧力70mbarの真空下におかれる。凝縮物回収システム内で液体の存在が観察されたらすぐに、29.25kgのスチレンをゆっくりと添加し、反応器の温度を同時に66℃に上昇させる。21.45kgの凝縮物が回収された時点で操作を停止する。スチレン溶解液中のシクロヘキサンの濃度は500ppm未満である。最終溶液をタンクに3日間に亘って貯蔵する。
【0112】
7.4kgのエチルベンゼン、20gの酸化防止剤ANOX PP18、20gのNDM、12gの開始剤Tx22E50及び7.2kgのアクリロニトリルを、得られた溶液に添加する。
【0113】
得られた溶液を、攪拌器及び温度調節システムを備えた第1のPFR反応器に移し、反応器の熱プロファイルを110℃から120℃に上昇させると、予備重合がグラフト及び転相を伴って行われる。
【0114】
第1の反応器を後にした混合物を、同じく攪拌器及び温度調節システムを備えた第2のPFR反応器に送り、反応器の熱プロファイルを145℃から155℃に上昇させる。
【0115】
得られる混合物は第2のPFR反応器の頭頂部からの排出物であり、揮発分除去装置(235℃の真空下で作動)を通過し、ゴム相が更に架橋され、残留モノマー及びエチルベンゼンは重合混合物から除去される。このようにして得られた成形ポリマーを、切断機に通して顆粒化する。
【0116】
実施例12
14.4kgの無水トルエン及び3.2kgの無水ブタジエンを、加熱及び攪拌システムを備えた60リットルバッチ反応器に窒素雰囲気下で流し込む。得られた混合物を50℃に加熱し、1.70gのn−ブチルリチウムを添加する。
【0117】
重合反応が一旦完了したら、3.12gのヘプタン酸を更に30分間に亘って攪拌しながら添加する。ポリブタジエンの特性(分子量分布、スチレン中の5%溶液での粘度)は、INTENE 50と同様である。
【0118】
得られた溶液を、温度調節機能、攪拌システム、真空調節システム及び凝縮物を回収するためのシステムを備えた第2の60リットルバッチオートクレーブに移す。反応器は38℃にサーモスタット調節され、圧力70mbarの真空下におかれる。凝縮物回収システム内で液体の存在が観察されたらすぐに、47.30kgのスチレンをゆっくりと添加し、反応器の温度を同時に66℃に上昇させる。39.50kgの凝縮物が回収された時点で操作を停止する。スチレン溶解液中のトルエンの濃度は500ppm未満である。最終溶液をタンクに3日間に亘って貯蔵する。
【0119】
7.4kgのエチルベンゼン、20gの酸化防止剤ANOX PP18、20gのNDM、12gの開始剤Tx22E50及び7.2kgのアクリロニトリルを、得られた溶液に添加する。
【0120】
得られた溶液を、攪拌器及び温度調節システムを備えた第1のPFR反応器に移し、反応器の熱プロファイルを110℃から120℃に上昇させると、予備重合がグラフト及び転相を伴って行われる。
【0121】
第1の反応器を後にした混合物を、同じく攪拌器及び温度調節システムを備えた第2のPFR反応器に送り、反応器の熱プロファイルを145℃から155℃に上昇させる。
【0122】
得られる混合物は第2のPFR反応器の頭頂部からの排出物であり、揮発分除去装置(235℃の真空下で作動)を通過し、ゴム相が更に架橋され、残留モノマー及びエチルベンゼンは重合混合物から除去される。このようにして得られた成形ポリマーを、切断機に通して顆粒化する。
【0123】
実施例10〜12において得られた生成物の特性を表4に示す。
【0124】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブタジエンから始まり、順次アニオン/ラジカル重合することによって、耐衝撃性ビニル芳香族(コ)ポリマーを製造するための半連続統合プロセスであって、
(b)バッチ反応器において、有機リチウム化合物及び低沸点無極性溶媒の存在下、ブタジエンの少なくとも1種のモノマーをアニオン重合すること、
(b1)重合の最後に、一般式:
3−M−X (1)
(式中、Xは塩素又は臭素等のハロゲンを表し、Mは炭素又はケイ素等のIVA族の元素を表し、RはC1〜C8アルキルラジカルである)
を有する少なくとも1種のハロゲン誘導体、又は一般式:
1−COOH (2)
(式中、R1は炭素原子の数が6以上、例えば、6〜18のアルキルラジカルである)
を有する、前記低沸点無極性溶媒に可溶性であるカルボン酸により、ブタジエンをベースとしたポリマーの連鎖停止段階を行うこと、及び/又は
(b2)一般式:
4-y−M−Xy (3)
(式中、X、M及びRは上記で定義された意味を有し、yは極値を含む2〜4の範囲内の整数である)
を有するものから選択される少なくとも1種のハロゲン誘導体により、ポリマー鎖の第1のカップリング段階を行うこと、及び/又は
(b3)一般式:
(R’)n−Ar (4)
(式中、R’はC2〜C5アルケニルラジカルを表し、Arは場合によっては非電子吸引基によって置換されたC6〜C18芳香族ラジカルを表し、nは2〜10の整数である)
を有するものから選択される少なくとも1種の芳香族誘導体により、第2のカップリング段階を行うこと、
(c)前記低沸点無極性溶媒をビニル芳香族モノマーとバッチで交換すること、
(d)得られたポリマーのグレードに従って、ビニル芳香族モノマー中のブタジエンをベースとしたポリマー溶液をタンクに蓄えること、
(e)前記ビニル芳香族モノマー中の前記ブタジエンをベースとしたポリマー溶液を、慣用の重合添加剤及び場合によってはコモノマーと共に重合プラントに送り、ラジカル重合により耐衝撃性ビニル芳香族(コ)ポリマーを製造すること、及び
(f)前記重合プラントから前記耐衝撃性ビニル芳香族(コ)ポリマーを回収すること
を含むことを特徴とするプロセス。
【請求項2】
溶媒交換操作によって発生した低沸点溶媒及びビニル芳香族モノマーの蒸気の混合物を、蒸留塔により蒸気混合物を凝縮させた後、連続して分離する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
溶媒交換操作によって発生した低沸点溶媒及びビニル芳香族モノマーの蒸気混合物を、溶媒交換操作のために使用されるオートクレーブに直接取り付けられた蒸留塔によりバッチで分離する、請求項1に記載のプロセス。

【図1】
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【公表番号】特表2011−506648(P2011−506648A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−537289(P2010−537289)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【国際出願番号】PCT/EP2008/010166
【国際公開番号】WO2009/074244
【国際公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(508128303)ポリメーリ エウローパ ソシエタ ペル アチオニ (24)
【Fターム(参考)】